(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183954
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H02K1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097780
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】深山 義浩
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE03
5H601EE18
5H601EE39
5H601FF02
5H601FF04
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA32
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB13
5H601GB28
5H601GB33
5H601GB34
5H601GB41
5H601GB49
5H601GC02
5H601GC12
(57)【要約】
【課題】トルクリップルを低減できる回転電機を提供する。
【解決手段】ティース先端形状が異なる複数種類の固定子コア部を軸方向に組み合わせて回転電機の固定子コアを構成することで、それぞれの固定子コア部で発生するトルクリップルの位相が異なるため、モータ全体のトルクリップルを、より効率的に抑制することができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コアを有する固定子、
回転子コアと、前記回転子コアに固定されている複数の永久磁石とを有しており、前記固定子に対して回転可能な回転子、を備え、
前記固定子コアは、円環状のコアバックと、前記コアバックから径方向へ突出した複数のティースとを有しており、前記固定子コアの前記ティースの間には、スロットが設けられている回転電機において、
前記固定子コアは、ティース先端形状が異なる複数種類の固定子コア部が前記回転子の回転軸方向に組み合わされて構成され、少なくとも1種類のティース先端形状が前記ティースから周方向に延伸したつばを有し、そのティース先端幅の電気角の最小値が前記ティースの幅よりも大きくなる固定子コア部と、少なくとも1種類のティース先端形状が、前記ティースを周方向に切削された形状であり、そのティース先端幅の電気角の最大値が前記ティースの幅よりも小さくなる固定子コア部を有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記複数のティースに、分布巻構造となるように固定子コイルが巻線されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
固定子コアを有する固定子、
回転子コアと、前記回転子コアに固定されている複数の永久磁石とを有しており、前記固定子に対して回転可能な回転子、を備え、
前記固定子コアは、円環状のコアバックと、前記コアバックから径方向へ突出した複数のティースとを有しており、前記固定子コアの前記ティースの間には、スロットが設けられている回転電機において、
前記固定子コアは、ティース先端形状が、周方向に延伸したつばを有し、ティース先端幅の電気角が異なる複数種類の固定子コア部が前記回転子の回転軸方向に組み合わされて構成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
前記回転子は、前記回転子コアに固定された永久磁石が2層に配置された構造を有し、
前記回転子の回転中心と前記永久磁石の回転子表面側の2つの角部とを結ぶ2本の直線がなす角度である磁石極弧角の1層目と2層目の電気角をそれぞれβ1、β2とすると
【数3】
ただし、Cは98.5≦C≦100.0を満たす実数、を満たすことを特徴とする請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記固定子コアは、ティース先端幅の電気角が異なる2種類の固定子コア部が軸方向に組み合わされて構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記固定子コアは、ティース先端幅の電気角が異なる少なくとも3種類の固定子コア部が軸方向に組み合わされて構成された請求項1に記載の回転電機。
【請求項7】
前記固定子コアは、ティース先端幅の電気角が異なる固定子コア部が前記回転軸方向に対称となるように積み上げられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記固定子コアの回転軸方向長さをL、それぞれの固定子コア部の回転軸方向の長さをLk、それぞれの固定子コア部で発生するN次トルクリップルの振幅をAk、および位相をθkとし、回転角度の電気角をtとすると、それぞれの固定子コア部で発生するN次トルクリップルを足し合わせた値Hは、
【数4】
であり、前記N次トルクリップルを足し合わせた値Hを最小とする複数の固定子コア部を組合わせることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項9】
前記回転子は、前記永久磁石が径方向に2層に配置された構造を有し、
前記回転子の回転中心と前記永久磁石の回転子表面側の2つの角部とを結ぶ2本の直線がなす角度を磁石極弧角とし、
回転子外周に切り欠きがd軸を対称として4箇所形成され、前記回転軸の回転中心と前記切り欠きを構成する円弧の中心とを結ぶ2本の直線のなす角度を切り欠き角とすると、
前記切り欠き角が、1層目の磁石極弧角の電気角よりも小さい位置と、1層目の磁石極弧角の電気角よりも大きく、かつ2層目の磁石極弧角の電気角よりも小さい位置に前記切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のモータには、高効率化および高出力密度化はもちろん、低振動特性についても要求が高まっており、振動の原因となるトルクの脈動を抑制する方法が提案されている。トルクの脈動には、電流を通電していないときに発生するコギングトルクと、通電時に発生するトルクリップルがある。コギングトルクとトルクリップルの両方を抑制するために、隣り合うティース先端部の間に空隙が存在する開スロット形状の固定子コアと、隣り合うティース先端部が連結している閉スロットの固定子コアでは、コギングトルクとトルクリップルの大小関係が逆の特性を有する。このような2種類の固定子コアを組み合わせることで、モータ全体のトルク脈動をバランスよく抑制できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような構成では、コギングトルクとトルクリップルをバランスよく低減できるが、トルクリップルの抑制が十分でなかった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、トルクリップルをより効率的に抑制することができる回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される回転電機は、
固定子コアを有する固定子、
回転子コアと、回転子コアに固定されている複数の永久磁石とを有しており、固定子に対して回転可能な回転子、を備え、
固定子コアは、円環状のコアバックと、コアバックから径方向へ突出した複数のティースとを有しており、固定子コアのティースの間には、スロットが設けられているものであって、
固定子コアは、ティース先端形状が異なる複数種類の固定子コア部が回転子の回転軸方向に組み合わされて構成され、少なくとも1種類のティース先端形状がティースから周方向に延伸したつばを有し、そのティース先端幅の電気角の最小値が前記ティースの幅よりも大きくなる固定子コア部と、少なくとも1種類のティース先端形状が、ティースを周方向に切削された形状であり、そのティース先端幅の電気角の最大値がティースの幅よりも小さくなる固定子コア部を有することを特徴とする。
【0007】
また、本願に開示される回転電機は、
固定子コアを有する固定子、
回転子コアと、回転子コアに固定されている複数の永久磁石とを有しており、固定子に対して回転可能な回転子、を備え、
固定子コアは、円環状のコアバックと、コアバックから径方向へ突出した複数のティースとを有しており、固定子コアのティースの間には、スロットが設けられているものであって、
固定子コアは、ティース先端形状が、周方向に延伸したつばを有し、ティース先端幅の電気角が異なる複数種類の固定子コア部が回転子の回転軸方向に組み合わされて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される回転電機によれば、
ティース先端形状が異なる複数種類の固定子コア部を軸方向に組み合わせて固定子コアを構成することで、それぞれの固定子コア部で発生するトルクリップルの位相が異なるため、モータ全体のトルクリップルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの回転軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図9】実施の形態1に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図10】モデルA、モデルBおよびモデルCのトルクリップルを比較した図である。
【
図11】実施の形態2に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図12】実施の形態3に係る回転電機の異なる2種類の固定子を軸方向に順に積み上げた構成の周方向8分の1の断面の斜視図である。
【
図13】実施の形態3に係る回転電機の異なる2種類の固定子を軸方向にそれぞれ2分割して交互に積み上げた構成の周方向8分の1の断面を斜視図である。
【
図14】実施の形態4に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図15】実施の形態4に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図16】実施の形態4に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図17】実施の形態4に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図18】実施の形態4に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図19】実施の形態4に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図20】実施の形態5に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図21】実施の形態5に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図22】実施の形態5に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図23】実施の形態5に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図24】実施の形態5に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図25】実施の形態6に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図26】実施の形態6に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図27】実施の形態6に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図28】実施の形態6に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図29】実施の形態6に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図30】実施の形態6に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図31】実施の形態7に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図32】実施の形態7に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図33】実施の形態7に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図34】実施形態7に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図35】実施の形態7に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図36】実施の形態7に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図37】実施の形態8に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図38】実施の形態8に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図41】実施の形態8に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図42】実施の形態8に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図43】実施の形態8に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図44】実施の形態8に係る回転電機の固定子コアのティース先端幅αを19.0≦α≦27.5の範囲で変化させたときに24次トルクリップルの位相が90deg以上変化する磁石極弧角の組み合わせを示す図である。
【
図45】実施の形態9に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図46】実施の形態9に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図47】実施の形態9に係る固定子コアのティース先端幅がα3である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図48】実施の形態9に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図49】実施の形態9に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変換を示す図である。
【
図50】実施の形態9に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【
図51】実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図52】実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図53】実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα3である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図54】実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα3である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
【
図55】実施の形態10に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
【
図56】実施の形態10に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
【
図57】実施の形態10に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願に係る回転電機の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、同一内容および相当部については同一符号を配し、その詳しい説明は省略する。以降の実施形態も同様に、同一符号を付した構成について重複した説明は省略する。実施の形態1~7は、ティース先端形状が周方向に延伸したつばを有する固定子コアと、ティース先端形状が、周方向に切削された形状である固定子コアを軸方向に組み合わせて固定子を形成している。実施の形態8は、ティース先端形状がティースから周方向に延伸したつばを有する2種類の固定子コアを軸方向に組み合わせて固定子を形成している。実施の形態9は、3種類のティース先端形状を有する固定子コアを軸方向に組み合わせて固定子を形成している。実施の形態10は、4種類のティース先端形状を有する固定子コアを組み合わせて固定子を形成している。以下それぞれの実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.[2重V字状スロット、固定子コア2種類、回転子切欠き、位相差180deg]
図1は、実施の形態1に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転子の回転軸(以下回転軸と称す)に垂直な方向の断面図であり、
図2は、そのティース部分の拡大図である。
図3は、実施の形態1に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転軸に垂直な方向の断面図であり、
図4は、そのティース部分の拡大図である。
図5は、実施の形態1に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図6は、実施の形態1に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの回転軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示す図である。
図7は、実施の形態1に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの回転軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示す図である。
図8と
図9は、実施の形態1に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
図10は、モデルA、モデルBおよびモデルCのトルクリップルの比較を示す図である。モデルAは1種類の固定子10aのみで構成され、回転子外周部の切り欠き221、切り欠き222を有しない構造である。モデルBは、1種類の固定子10aのみで構成されたモデルAの回転電機の回転子外周部に切り欠き221と切り欠き222が配置された構造である。モデルCは実施の形態1の構成であり、2種類の固定子10a、固定子10bを組み合わせて構成され、回転子外周部に切り欠き221と切り欠き222が配置された構造である。
【0012】
図1において、回転電機であるモータ1は、固定子10aと固定子10aの内径側に同軸に配置された回転子20で構成される。
図1に示すように、固定子10aは円環状の固定子バックコア11から内径側に延伸された固定子ティース12aと、隣り合う固定子ティース12aと固定子バックコア11によってU字型に囲まれた領域である固定子スロットに配置された固定子コイル13で構成される。
【0013】
本実施の形態において、固定子ティース12aは、周方向に均等に48個構成されており、48個の固定子スロットには同じように4個の固定子コイル13が配置されている。固定子コイル13は周方向に6個隣の固定子スロットに配置された固定子コイル13と直列に接続され、分布巻構造となるように巻線されている。
【0014】
図2に示すように、固定子ティース12aは、固定子バックコア11から内径側に延伸されたティース延伸部121とティース延伸部121から周方向に双方向対称に突出したティース先端形状を有するティース先端部122で構成される。ここで、ティース延伸部121の幅寸法であるティース幅の電気角をλとし、ティース先端の幅寸法であるティース先端幅の電気角をαとすると、ティース先端部122のティース先端幅の電気角はαがα1であるとき、α1≧λを満たし、λ=19.0deg、α1=27.5degである。αの算出方法は、回転軸に垂直な断面において、回転子20の回転中心と1本の固定子ティース12aの先端の幅方向の両端部とを結ぶ2本の直線が回転子20の回転方向になす角度とした。
【0015】
図3において、回転電機であるモータ1は、固定子10bと固定子10bの内径側に同軸に配置された回転子20で構成される。
図3に示すように、固定子10bは円環状の固定子バックコア11から内径側に延伸された固定子ティース12bと隣り合う固定子ティース12bと固定子バックコア11によってコの字型に囲まれた領域である固定子スロットに配置された固定子コイル13で構成される。実施の形態1において、固定子ティース12bは周方向に均等に48個構成されており、48個の固定子スロットには同じように4個の固定子コイル13が配置されている。固定子コイル13は周方向に6個隣の固定子スロットに配置された固定子コイル13と直列に接続されている。
【0016】
図4に示すように、固定子ティース12bは、固定子バックコア11から内径側に延伸されたティース延伸部121とティース延伸部121を周方向に双方向対称に切削したティース先端形状を有するティース先端部122で構成される。また、ティース先端部122のティース先端幅の電気角はαがα2であるとき、λ>α2を満たし、α2=5.0degである。αの算出方法は、上述と同様である。
以下固定子ティース12aを有する固定子コアを固定子コア12a、固定子ティース12bを有する固定子コアを固定子コア12bと称す。固定子コア12c、固定子コア12dも同様である。
【0017】
図5に示すように、回転子20は、円環状の回転子コア21を有し、回転子コア21のd軸を中心として内径側にいくにつれて距離が狭まるように対向して、1対の1層目の磁石スロット211、および2層目の磁石スロット212がそれぞれV字状に設けられる。1対の1層目の磁石スロット211と1対の2層目の磁石スロット212に、1対の1層目磁石201、および2層目磁石202がそれぞれ挿入される。1対の1層目の磁石201、および2層目の磁石202は平板上の形状をしており、短辺に配向され径方向にすべて同じ方向を向くように着磁されている。
【0018】
これら4個で1組の磁石が周方向に均等に8組配置されている。8組は、周方向隣り合うものの着磁方向が径方向内側および外側に交互に向くように同様に配置されている。ここで、回転軸の垂直な断面において、回転子20の回転中心と回転子20内部に配置された磁石の回転子表面側の角部とを結ぶ2本の直線が回転子20の回転方向になす角度の電気角である極弧角をβとすると、
図5に示すように1層目の磁石201の極弧角はβ1、2層目の磁石202の極弧角はβ2となる。
【0019】
そして、回転子コア21の外周上に、d軸に対称に、1層目の磁石201の極弧角の内側に円形形状の切り欠き221、および1層目の磁石201の極弧角と2層目の磁石202の極弧角の間に円形形状の切り欠き222が合計4個配置されている。
【0020】
そして、回転軸の垂直な断面において、回転子20の回転中心と、d軸を対称に回転子外周上に配置された切り欠きを構成する円弧の中心と、を結ぶ2本の直線が回転子20の回転方向になす角度の電気角である切り欠き角をγとすると、
図5に示すように、切り欠き221の切り欠き角はγ1、切り欠き222の切り欠き角はγ2となる。
【0021】
従って、実施の形態1の極弧角と切り欠き角は、β2>γ2>β2>γ1を満たし、β1=50.0deg、β2=127.5deg、γ1=35.0deg、γ2=100.0degである。このようにして、8極48スロットの分布巻モータに構成されている。
【0022】
図6に示すように、ティース先端幅αを変化させることで24次トルクリップルの振幅が変化する。また、
図7に示すように、ティース先端幅を変化させることで24次トルクリップルの位相を変えることができる。このときの、ティース先端幅がα1およびα2である固定子コアの回転軸方向長さをそれぞれL1とL2とし、固定子コアの回転軸方向長さがLのときのティース先端幅がα1およびα2である固定子コアで発生する24次トルクリップルの振幅をそれぞれA1とA2(
図6参照)、α1=27.5deg、α2=5.0degである固定子コアの24次トルクリップルの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差をそれぞれθ1とθ2(
図7参照)とすると、実施の形態1の回転電機で発生する24次トルクリップルHは、
【0023】
【数1】
で与えられる。ただし、n=2であり、tは回転角度の電気角である。また、Lは、組み合わせた固定子コア全体の回転軸方向の長さである。
【0024】
そして、θ1=0.0deg、θ2=180degあり、θ2-θ1=180.0degであることから、Hを最小にするL1およびL2は、L1:L2=A2:A1によって得られ、L1とL2の比率であるL1/L2は約2.33となる。
【0025】
図8に示すように、モータ1は回転軸方向長さL1である固定子コア12aと回転軸方向長さL2である固定子コア12bで構成され、L1およびL2は、L1/L2が約2.33を満たす。そして、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は、回転軸方向に対称になるように構成されており、固定子コア12bが回転軸方向に2分割された固定子コア12aで挟み込まれた構造である。このような構成にすることで、ティース先端幅αが異なる2つの固定子コアを回転軸方向にL1/L2が約2.33で組み合わせているため、24次トルクリップルをほぼ完全に抑制することができる。
【0026】
また、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は回転軸方向に対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。すなわち、回転子のそれぞれの軸方向位置で働く磁気吸引力を軸方向で対称とすることで、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
【0027】
また、
図9に示すように、3分割した固定子コア12bのうち1個を2分割した固定子コア12aで挟み込み、それらを3分割した残った2個の固定子コア12bで挟んだ構造としてもよい。このような構成においても、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は、回転軸方向に対称になるように構成されているため、磁気吸引力を平衡化することができる。これにより、上述したように回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
【0028】
このとき、固定子コア12aと固定子コア12bの位置関係は逆にしてもよい。このとき、それぞれの固定子コアの軸方向分割数は、積み上げた後の固定子コアが軸方向に対称となっていればいくつでも構わない。また、分割後の固定子コアの軸方向長さは等分になっていなくてもよく、積み上げた後の固定子コアが軸方向に対称となっていれば分割後の軸方向長さはいくつでも構わない。
【0029】
図10に示すモデルAは、1種類の固定子10aのみで構成され、回転子外周部の切り欠き221、切り欠き222を有しない構造である。モデルBは、1種類の固定子10aのみで構成されたモデルAの回転電機の回転子外周部に切り欠き221と切り欠き222が配置された構造である。モデルCは、本実施の形態の構成であり、2種類の固定子10a、固定子10bを組み合わせて構成され、回転子外周部に切り欠き221と切り欠き222が配置された構造である。
図10のモデルAとモデルBを比較すると、12次トルクリップルを低減できる一方で、24次トルクリップルが増大している。本実施の形態のモータ1であるモデルCは、それぞれの固定子で発生する24次トルクリップルの位相差が180degであるため、12次および24次トルクリップルを同時に抑制できることがわかる。
【0030】
このように、回転子に切り欠きを配置することによって、エアギャップ中の磁束密度分布を変化させることで、異なるティース先端形状の固定子コアを組み合わせることで抑制できる次数成分とは別のトルクリップルを低減できる。
【0031】
このように、ティース先端形状が異なる複数種類の固定子コアを軸方向に組み合わせることで、それぞれの固定子コアで発生するトルクリップルの位相が異なるため、モータ全体のトルクリップルを低減することができる。特に、8極48スロットモータにおいては、ティース先端形状を変えると、24次トルクリップルの位相を変化させることができる。そして、N種類の固定子コアで発生する24次トルクリップルの位相差がそれぞれ360/Ndegのときには、それぞれの固定子コアの軸方向長さを調整することによって、ほぼ完全に24次トルクリップルを抑制することができる。なお、ティース先端形状が異なる2種類の固定子コアを軸方向に組み合わせる場合は、それぞれの固定子コアで発生するトルクリップルの位相差が90~180degとなり、モータ全体のトルクリップルを低減することができる。この効果は、この後の実施の形態においても同様に効果を奏する。
【0032】
また、分布巻構造の固定子コアのティース幅は小さいため、ティース先端から延伸したつばのある固定子コアとティース先端を切削した固定子コアを組み合わせることで、ティース先端幅の変化量を大きくし、トルクリップルの位相変化量を大きくすることができる。これにより、トルクリップルの位相差を大きくし、トルクリップルをより効果的に抑制することができる。
【0033】
実施の形態2.[実施の形態1とコア比率相違]
図11は、実施の形態2に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
図11に示すように、固定子コア12aの回転軸方向長さであるL1と固定子コア12bの回転軸方向長さであるL2を、L1/L2が約5.67となるように構成する。その他の構造は実施の形態1と同様である。
【0034】
このような構成とすることにより、24次トルクリップルを低減しつつ、ティース先端幅の小さい固定子コア12bの割合を小さくすることによって、トルクを向上させることができる。また、L1/L2は、24次トルクリップルが最小となるときの値よりも大きく、24次トルクリップルを低減することができる値であれば、同様の効果を奏する。
【0035】
実施の形態3.[実施の形態1とコア積み上げ方相違]
図12は、実施の形態3に係る回転電機の固定子であって、異なる2種類の固定子を回転軸方向に順に積み上げた構成の周方向8分の1の断面の斜視図である。
図13は、異なる2種類の固定子を回転軸方向にそれぞれ2分割して交互に積み上げた構成の周方向8分の1の断面の斜視図である。
【0036】
図12に示す固定子は、回転軸方向長さがL1である固定子コア12aと回転軸方向長さがL2である固定子コア12bを回転軸方向に順に積み上げて構成されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。このような構成にすることで、固定子を構成する固定子コアの数を最も少なくすることができるため製造性が向上する。
【0037】
また、
図13に示す固定子は、固定子コア12aと固定子コア12bをそれぞれ回転軸方向に2分割して、交互になるように回転軸方向に順に積み上げて構成されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。このような構成にすることで、固定子を構成する2種類の固定子コアをそれぞれ複数に分割する場合、固定子コアの数を少なくすることができるため製造性が向上する。
【0038】
実施の形態4.[2重V字状スロット、固定子コア2種類、位相差180deg]
図14は、実施の形態4に係る固定子コアであり、ティース先端幅がα1である、回転軸に垂直な方向の断面図である。
図15は、実施の形態4に係る固定子コアのティース先端幅がα2である、回転軸に垂直な方向の断面図である。
図16は、実施の形態4に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図17は、実施の形態1に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの回転軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化を示した図である。
図18は、実施の形態1に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの回転軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化を示した図である。
図19は、実施の形態4に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【0039】
図14に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図1と同様であり、α1=27.5degである。また、
図15に示すように、固定子コア12bのティース幅がα2である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図3と同様であるが、α2=10.0degである。
【0040】
図16に示すように、回転子20は、円環状の回転子コア21を有し、回転子コア21のd軸を中心として内径側にいくにつれて距離が狭まるように対向して1対の1層目の磁石スロット211、および2層目の磁石スロット212がそれぞれV字状に設けられる。1対の1層目の磁石スロット211と1対の2層目の磁石スロット212に、1対の1層目の磁石201、および2層目の磁石202がそれぞれ挿入される。1対の1層目の磁石201、および2層目の磁石202は、平板上の形状をしており、短辺に配向され径方向にすべて同じ方向を向くように着磁されている。これら4個で1組の磁石が周方向に均等に8組、周方向隣り合うものの着磁方向が径方向内側および外側に交互に向くように同様に配置されている。1層目の磁石201の極弧角をβ1、2層目の磁石202の極弧角をβ2とすると、β1=57.5deg、β2=125.0degである。
【0041】
図17および
図18に示すように、実施の形態1と同様に、固定子コアのティース先端幅αを変化させることで24次トルクリップルの振幅および位相が変化する。そして、θ1=0.0deg、θ2=180degであり、θ2-θ1=180.0degであることから、Hを最小にする固定子コア12aおよび固定子コア12bの回転軸方向長さL1、L2は、L1:L2=A2:A1によって得られ、L1とL2の比率であるL1/L2が約0.212となる。
【0042】
図19に示すように、実施の形態4に係る回転電機は回転軸方向長さL1である固定子コア12aと回転軸方向長さL2である固定子コア12bで構成され、L1とL2は、L1/L2が約0.212を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様である。
このような構成にすると、ティース先端幅αが異なる2種類の固定子コアを回転軸方向にL1/L2が約0.212で組み合わせているため、24次トルクリップルをほぼ完全に抑制することができる。
【0043】
また、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は回転軸方向対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向分割数を変えても同じ効果が得られる。
【0044】
また、本実施の形態の回転電機は、実施の形態1のように回転子コアの外周部に切り欠きを配置すると、実施の形態1と同様に、12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態の回転電機は、実施の形態2のように2種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、実施の形態2と同様に、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0046】
また、本実施の形態の回転電機は、実施の形態3のように固定子コアを回転軸方向非対称になるように積み上げると、実施の形態3と同様に、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
【0047】
実施の形態5.[2重V字状スロット、固定子コア2種類、位相差90~180deg]
図20は、実施の形態5に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転軸に垂直な方向の断面図である。
図21は、実施の形態5に係る回転電機の固定子コアのティース先端幅がα2である回転軸に垂直な方向の断面図である。
図22は、実施の形態5に係る回転電機のティース先端幅に対する24次トルクリップルの振幅の変化である。
図23は、実施の形態5に係る回転電機のティース先端幅に対する24次トルクリップルのティース先端幅が27.5degであるときの位相を基準とした位相差の変化である。
図24は、実施の形態5に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【0048】
図20に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であり、α1=22.5degである。
図21に示すように、固定子コア12bのティース幅がα2である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図15と同様であるが、α2=7.5degである。また、図示していないが、本実施の形態の回転子の構成は
図16と同様であるが、β1=60.0deg、β2=135.0degである。
【0049】
図22と
図23は、実施の形態1と同様に、ティース先端幅αを変えると、24次トルクリップルの振幅および位相が変化することが分かる。そして、θ1=-45.2deg、θ2=98.3degであり、θ2-θ1=143.5degであり、90deg以上で、180deg以下であるため、24次トルクリップルを低減することができる。そして、回転電機で発生する24次トルクリップルHは、実施の形態1同様、(式1)で与えられる。ただし、n=2であり、tは回転角度の電気角である。
【0050】
そして、Hを最小にするためのL1とL2は、L1とL2の比率であるL1/L2が約1.5となるときである。
【0051】
図24に示すように、本実施の形態に係る回転電機は回転軸方向長さL1である固定子コア12aおよび回転軸方向長さL2である固定子コア12bで構成され、L1とL2は、L1/L2が約1.5を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様である。
【0052】
このような構成にすると、ティース先端幅αが、異なる2種類の固定子コアを軸方向にL1/L2が約1.5で組み合わせているため、24次トルクリップルを抑制することができる。また、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子コアが回転軸方向に対称になるように構成されているため、回転子前端に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
【0053】
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向分割数を変えても同じ効果が得られる。また、実施の形態1のように回転子コアの外周部に切り欠きを配置すると、実施の形態1と同様、12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0054】
また、実施の形態2のように2種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、実施の形態2と同様、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0055】
また、実施の形態3のように固定子コアを回転軸方向非対称になるように積み上げると、実施の形態3同様、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
【0056】
実施の形態6.[1V字状スロット、固定子コア2種類、位相差180deg]
図25は、実施の形態6に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転軸に垂直な方向の断面図である。
図26は、実施の形態6に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転軸に垂直な方向の断面図である。
図27は、実施の形態6に係る回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図28は、実施の形態6に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化である。
図29は、実施の形態6に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化である。
図30は、実施の形態6に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面を斜視図で示したものである。
【0057】
図25に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であり、α1=27.5degである。
図26に示すように、固定子コア12bのティース幅がα2である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図15と同様であるが、α2=17.5degである。
【0058】
また、
図27に示すように、回転子20は、円環状の回転子コア21を有し、回転子コア21のd軸を中心として内径側にいくにつれて距離が狭まるように対向して、1対の磁石スロット211がV字状に設けられる。1対の磁石スロット211に、1対の磁石201が挿入される。1対の磁石201は平板上の形状をしており、短辺に配向され径方向にすべて同じ方向を向くように着磁されている。
【0059】
これら2個で1組の磁石が周方向に均等に8組、周方向隣り合うものの着磁方向が径方向内側および外側に交互に向くように同様に配置されている。ここで、回転軸の垂直な断面において、回転子20の回転中心と回転子20内部に配置された磁石の回転子表面側の角部とを結ぶ2本の直線が回転子20の回転方向になす角度の電気角である極弧角をβとすると、磁石201の極弧角はβ1となり、β1=130.0degである。
【0060】
図28と
図29は、実施の形態1と同様に、ティース先端幅αを変えると、24次トルクリップルの振幅および位相が変化することが分かる。そして、θ1=0.0deg、θ2=180.0degであり、θ2-θ1=180.0degであることから、実施の形態6に係る回転電機で発生する24次トルクリップルHを最小にする固定子コア12aおよび固定子コア12bの軸方向長さL1、L2は、L1:L2=A2:A1によって得られ、L1とL2の比率であるL1/L2が約1.22となる。
【0061】
図30に示すように、本実施の形態に係る回転電機は、回転軸方向長さL1である固定子コア12aおよび回転軸方向長さL2である固定子コア12bで構成され、L1とL2は、L1/L2が約1.22を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様である。
【0062】
このような構成により、ティース先端幅αが異なる2種類の固定子コアを回転軸方向にL1/L2が約1.22となるように組み合わせているため、24次トルクリップルをほぼ完全に抑制することができる。また、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は軸方向対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
【0063】
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向の分割数を変えても同じ効果が得られる。また、実施の形態1のように回転子コアの外周部に切り欠きを配置すると、12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0064】
また、実施の形態2のように2種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0065】
また、実施の形態3のように固定子コアを軸方向非対称になるように積み上げると、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
【0066】
また、実施の形態5のように、2種類の固定子コアで発生する24次トルクリップル位相差が90deg以上で、180deg以下となるような2種類の固定子コアを組み合わせると、24次トルクリップルを低減することができる。
【0067】
実施の形態7.[3重V字状スロット、固定子コア2種類、位相差180deg]
図31は、実施の形態7に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転軸に垂直な方向の断面図である。
図32は、実施の形態7に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転軸に垂直な方向の断面図である。
図33は、実施の形態7に係る回転電機の回転子の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図34は、実施の形態7に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化である。
図35は、実施の形態7に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化である。
図36は、実施の形態7に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面の斜視図である。
【0068】
図31に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であり、α1=27.5degである。
図32に示すように、固定子コア12bのティース幅がα1である実施形態7の回転電機の基本的な構成は、
図15と同様であるが、α2=14.0degである。
【0069】
図33に示すように、回転子20は、円環状の回転子コア21を有し、回転子コア21のd軸を中心として内径側にいくにつれて距離が狭まるように対向して1対の1層目の磁石スロット211、2層目の磁石スロット212、3層目の磁石スロット213がそれぞれV字状に設けられる。1対の1層目の磁石スロット211、1対の2層目の磁石スロット212、1対の3層目の磁石スロットに、1対の1層目の磁石201、2層目の磁石202および3層目の磁石203がそれぞれ挿入される。1対の1層目の磁石201、2層目の磁石202および3層目の磁石203は、平板上の形状をしており、短辺に配向され径方向にすべて同じ方向を向くように着磁されている。
【0070】
これら6個で1組の磁石が周方向に均等に8組、周方向隣り合うものの着磁方向が径方向内側および外側に交互に向くように同様に配置されている。ここで、回転軸の垂直な断面において、回転子20の回転中心と回転子20内部に配置された磁石の回転子表面側の角部とを結ぶ2本の直線が回転子20の回転方向になす角度の電気角である極弧角をβとすると、1層目の磁石201の極弧角をβ1、2層目の磁石202の極弧角をβ2、3層目の磁石203の極弧角をβ3となり、β1=76.0deg、β2=104.0deg、β3=140.0degである。
【0071】
図34と
図35は、実施の形態1と同様に、ティース先端幅αを変えると、24次トルクリップルの振幅および位相が変化することが分かる。そして、θ1=0.0deg、θ2=180.0degであり、θ2-θ1=180.0degであることから、本実施の形態に係る回転電機で発生する24次トルクリップルHを最小にする固定子コア12aおよび固定子コア12bの回転軸方向長さL1、L2は、L1:L2=A2:A1によって得られ、L1とL2の比率であるL1/L2が約0.54となる。
【0072】
図36に示すように、本実施の形態に係る回転電機は回転軸方向長さL1である固定子コア12aおよび回転軸方向長さL2である固定子コア12bで構成され、L1とL2は、L1/L2が約0.54を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様である。このような構成にすると、ティース先端幅αが異なる2種類の固定子コアを回転軸方向にL1/L2が約0.54で組み合わせているため、24次トルクリップルをほぼ完全に抑制することができる。
【0073】
また、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は、回転軸方向対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向分割数を変えても同じ効果が得られる。
【0074】
また、本形態の回転電機は、実施の形態1のように回転子コアの外周部に切り欠きを配置すると、実施の形態1と同様に、12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0075】
また、本実施の形態の回転電機は、実施の形態2のように2種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0076】
また、実施の形態3のように固定子コアを回転軸方向非対称になるように積み上げると、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
【0077】
また、実施の形態5のように、2種類の固定子コアで発生する24次トルクリップル位相差が90deg以上で、180deg以下となるような2種類の固定子コアを組み合わせると、24次トルクリップルを低減することができる。
【0078】
実施の形態8.[2重V字状スロット(β1=50deg、β2=130deg)、固定子コア2種類]
図37は、実施の形態8に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図38は、実施の形態8に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図39および
図40は、
図37と
図38のティース部分の拡大図である。
図41は、実施の形態8に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化である。
図42は、実施の形態8に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化である。
図43は、実施の形態8に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面を斜視図で示したものである。
図44は、実施の形態8に係る回転電機の固定子コアのティース先端幅αを19.0≦α≦27.5で変化させたときに24次トルクリップルの位相が90deg以上変化する磁石極弧角の組み合わせである。
【0079】
図37、
図39に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態に係る回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であり、α1=27.5degである。
図38、
図40に示すように、固定子コア12bのティース幅がα2である本実施の形態に係る回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であるが、α2=20.0degである。
【0080】
このように、本実施の形態において、ティース先端部122のティース先端幅はそれぞれα1>α2≧λを満たしている。図示していないが、本実施の形態の回転子20の構成は
図16と同様であるが、β1=50.0deg、β2=130.0degである。
【0081】
そして、θ1=0.0deg、θ2=147.6degであり、θ2-θ1=147.6degであり、90deg以上で、180deg以下であるため、24次トルクリップルを低減することができる。回転電機で発生する24次トルクリップルHは、実施の形態1同様、(式1)で与えられる。ただし、n=2であり、tは回転角度の電気角である。また、Hを最小にするためのL1とL2は、L1とL2の比率であるL1/L2が約0.82となるときである。
【0082】
図43に示すように、本実施の形態に係る回転電機は回転軸方向長さL1である固定子コア12aおよび回転軸方向長さL2である固定子コア12bで構成され、L1/L2が約0.82を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様である。
【0083】
このような構成にすると、ティース先端幅αが異なる2種類の固定子コアを回転軸方向にL1/L2が約0.82で組み合わせているため、24次トルクリップルを抑制することができる。また、固定子コア12aと固定子コア12bを組み合わせた固定子は回転軸方向対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
【0084】
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向分割数を変えても同じ効果が得られる。また、実施の形態1のように回転子コアの外周部に切り欠きを配置すると、12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0085】
また、実施の形態2のように2種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0086】
また、実施の形態3のように固定子コアを回転軸方向非対称になるように積み上げると、実施の形態3と同様に、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
【0087】
また、既出の実施の形態のような、ティース先端部に周方向に延伸したつばを有する固定子コアとティース先端部を切削した固定子コアを組み合わせた構造を用いる代わりに、ティース先端部につばを有する固定子コアを複数種類組み合わせたときでも、既出の実施の形態と同様の効果を得るために、回転子に2層に配置された磁石構造と各層の磁石極弧角を最適化した構造としている。
【0088】
図44に示すように、ティース先端幅αを、つばを有する先端幅である19.0≦α≦27.5で変化させると、斜線部の磁石極弧角組み合わせである
【0089】
【数2】
において、24次トルクリップルの位相が90deg以上変化する。ただし、Cは98.5≦C≦100.0を満たす実数である。
【0090】
従って、本実施の形態のようにティース先端部につばを有する固定子コアを複数種類組み合わせながら、2層に磁石が配置された回転子構造と磁石極弧角を、(式2)とすることによって、実施の形態5と同様に、24次トルクリップルを抑制することができる。
すなわち、ティース先端形状が周方向に延伸したつばを有する複数種類の固定子コアを組み合わせたとき、それぞれの固定子コアで発生するトルクリップルの位相変化を大きくすることができ、トルクリップルを効果的に抑制することができる。
【0091】
実施の形態9.[2重V字状スロット、固定子コア3種類、位相差120deg]
図45は、実施の形態9に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図46は、実施の形態9に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図47は、実施の形態9に係る固定子コアのティース先端幅がα3である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図48は、実施の形態9に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの回転軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化である。
図49は、実施の形態9に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化である。
図50は、実施の形態9に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面を斜視図で示したものである。
【0092】
図45に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であり、α1=27.5degである。
図46に示すように、固定子コア12bのティース幅がα2である本実施の形態の回転電機の基本的な構成も、
図15と同様であるが、α2=18.9degである。
図47に示すように、固定子コア12cのティース幅がα3である本実施の形態の回転電機の基本的な構成も、
図15と同様であり、α3=10.0degである。
【0093】
このように、本実施の形態において、ティース先端部122のそれぞれのティース先端幅は、α1≧λ>α3、かつα1>α2>α3を満たしている。なお、図示していないが、本実施の形態の回転子の構成は
図16と同様であり、β1=52.5deg、β2=130.0degである。
【0094】
図48と
図49は、実施の形態1と同様に、ティース先端幅αを変えると、24次トルクリップルの振幅および位相が変化することが分かる。ここで、本実施の形態に係る回転電機で発生するトルクリップルHは、実施の形態1同様、(式1)で与えられる。ただし、n=3であり、tは回転角度の電気角である。
【0095】
そして、θ1=0.0deg、θ2=120.0deg、θ3=240.0degであり、それぞれの固定子コアで発生する24次トルクリップルの位相は120degずつずれていることから、Hを最小にする固定子コア12a、固定子コア12bおよび固定子コア12cの回転軸方向長さL1、L2、L3は、L1:L2:L3=59.2:33.7:27.1となる。
【0096】
図50に示すように、実施の形態9に係る回転電機は回転軸方向長さL1である固定子コア12a、回転軸方向長さL2である固定子コア12bおよび回転軸方向長さL3である固定子コア12cで構成され、L1、L2、L3は、L1:L2:L3=59.2:33.7:27.1を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様であり、回転軸方向に対称構造である。
【0097】
このような構成にすると、ティース先端幅αが異なる3種類の固定子コアを軸方向にL1:L2:L3=59.2:33.7:27.1で組み合わせているため、24次トルクリップルをほぼ完全に抑制することができる。さらに、24次トルクリップルの2倍次成分である48次トルクリップルも抑制することができる。
【0098】
また、固定子コア12a、固定子コア12bおよび固定子コア12cを組み合わせた固定子は軸方向対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向分割数を変えても同じ効果が得られる。
【0099】
また、実施の形態1のように回転子コアの外周部に切り欠きを配置すると、実施の形態1と同様に、12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0100】
また、実施の形態2のように3種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、実施の形態2と同様に、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0101】
また、実施の形態3のように固定子コアを回転軸方向非対称になるように積み上げると、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
また、実施の形態5のように、3種類のうちの1種類の固定子コアで発生する24次トルクリップルを基準として、ほかの2種類の固定子コアで発生する24次トルクリップルの位相差がそれぞれ90deg以上で、180deg以下となるように固定子コアを組み合わせると、24次トルクリップルを低減することができる。
【0102】
実施の形態10.[2重V字状スロット、固定子コア4種類、位相差90deg]
図51は、実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα1である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図52は、実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα2である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図53は、実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα3である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図54は、実施の形態10に係る固定子コアのティース先端幅がα4である回転電機の回転軸に垂直な方向の断面図である。
図55は、実施の形態10に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対する24次トルクリップルの振幅の変化である。
図56は、実施の形態10に係る回転電機の回転子を用いた固定子コアの軸方向長さがLのときの固定子コアのティース先端幅αに対するティース先端幅の電気角が27.5degであるときの位相を基準とした24次トルクリップルの位相差の変化である。
図57は、実施の形態10に係る回転電機の固定子の構成例を8分割した断面を斜視図で示したものである。
【0103】
図51に示すように、固定子コア12aのティース幅がα1である本実施の形態の回転電機の基本的な構成は、
図14と同様であり、α1=27.5degである。
図52に示すように、固定子コア12bのティース幅がα2である本実施の形態の回転電機の基本的な構成も、
図14と同様であるが、α2=21.5degである。
図53に示すように、固定子コア12cのティース幅がα3である本実施の形態の回転電機の基本的な構成も、
図15と同様であるが、α3=18.5degである。
図54に示すように、固定子コア12dのティース幅がα4である本実施の形態の回転電機の基本的な構成も、
図15と同様であるが、α4=7.5degである。
【0104】
このように、本実施の形態において、各ティース先端部122は、α1≧λ>α4、かつα1>α2>α3>α4を満たしている。
【0105】
また、図示していないが、本実施の形態の回転子の構成は
図16と同様であり、β1=50.0deg、β2=130.0degである。
【0106】
図55と
図56は、実施の形態1と同様に、ティース先端幅αを変えると、24次トルクリップルの振幅および位相が変化することが分かる。ここで、本実施の形態に係る回転電機で発生するトルクリップルHは、実施の形態1同様、(式1)で与えられる。ただし、n=4であり、tは回転角度の電気角である。
【0107】
そして、θ1=0.0deg、θ2=90.0deg、θ3=180.0deg、θ4=270.0degであり、それぞれの固定子コアで発生する24次トルクリップルの位相は90degずつずれていることから、Hを最小にするHは固定子コア12a、固定子コア12b、固定子コア12cおよび固定子コア12dの回転軸方向長さL1、L2、L3、L4は、L1:L2:L3:L4=27.5:22.5:32.5:17.5を満たせばよい。
【0108】
図57に示すように、本実施の形態に係る回転電機は回転軸方向長さL1である固定子コア12a、回転軸方向長さL2である固定子コア12b、回転軸方向長さL3である固定子コア12cおよび回転軸方向長さL4である固定子コア12dで構成され、L1、L2、L3、L4は、L1:L2:L3:L4=27.5:22.5:32.5:17.5を満たす。そして、固定子コアの積み上げ方は、
図8と同様であり、回転軸方向に対称構造である。
【0109】
このような構成にすると、ティース先端幅αが異なる4種類の固定子コアを軸方向にL1:L2:L3:L4=27.5:22.5:32.5:17.5で組み合わせているため、24次トルクリップルをほぼ完全に抑制することができる。さらに、24次トルクリップルの2倍次成分である48次トルクリップルも抑制することができる。また、固定子コア12a、固定子コア12bおよび固定子コア12cを組み合わせた固定子は回転軸方向対称になるように構成されているため、回転子全体に働く磁気吸引力を回転軸方向位置について対称にし、平衡化することができる。これにより、回転子の軸方向に働く力を低減し、振動およびベアリングの損傷を防ぐことができる。
これは、
図9のように、固定子コアの回転軸方向分割数を変えても同じ効果が得られる。
【0110】
また、実施の形態1のように固定子コアの外周部に切り欠きを配置すると12次トルクリップルと24次トルクリップルを同時に抑制することができる。
【0111】
また、実施の形態2のように3種類の固定子コアのうちティース先端幅αが大きい方の固定子コアの割合が多くなるように積み上げると、24次トルクリップルを低減しつつ、高トルク化が可能となる。
【0112】
また、実施の形態3のように固定子コアを回転軸方向非対称になるように積み上げると、固定子コアの数を減らすことができ、製造性を向上できる。
【0113】
また、実施の形態5のように、4種類のうちの1種類の固定子コアで発生する24次トルクリップルを基準として、ほかの3種類の固定子コアで発生する24次トルクリップルの位相差がそれぞれ90deg以上で、180deg以下となるように固定子コアを組み合わせると、24次トルクリップルを低減することができる。
【0114】
実施の形態1~10は、ティース幅λは複数の固定子コアですべて同一としたが、複数のコアでそれぞれ異なっていてもよい。このような構成においても、実施の形態1~10と同様の効果を得ることができる。
【0115】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0116】
1:モータ、10a、10b:固定子、11:固定子バックコア、12a、12b、12c、12d:固定子コア、13:固定子コイル、20:回転子、21:回転子コア、121:ティース延伸部、122:ティース先端部、201、202、203:磁石、211、212、213:磁石スロット、221,222:切り欠き