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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183960
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ダクト
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20231221BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04B1/70 A
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097796
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA35
2E001GA12
2E001NC03
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】浸水時の浮力による破損や、他室への水の流出を抑制することを可能としたダクトを提案する。
【解決手段】底面31に複数の孔が形成されたダクト本体部3と、ダクト本体部3内を通流方向と交差する向きで区分する仕切り板4と、底面31に上載されて孔を塞ぐ蓋材5と、ダクト本体部3の下方に設けられて仕切り板4または蓋材5に連結された浮力受板6とを備え、浮力受板6は建物1に浸水した水の水位に応じて上下動し、仕切り板4および蓋材5は浮力受板6の上下動に伴って移動可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設けられたダクトであって、
底面に複数の孔が形成されたダクト本体部と、
前記ダクト本体部内を通流方向と交差する向きで区分する仕切り板と、
前記底面に上載されて前記孔を塞ぐ蓋材と、
前記ダクト本体部の下方に設けられて、前記仕切り板または前記蓋材に連結された浮力受板と、を備え、
前記浮力受板は、前記建物に浸水した水の水位に応じて上下動し、
前記仕切り板および前記蓋材は、前記浮力受板の上下動に伴って移動可能であることを特徴とする、ダクト。
【請求項2】
前記仕切り板に連結された前記浮力受板の高さ位置が、前記蓋材に連結された浮力受板の高さ位置よりも下であることを特徴とする、請求項1に記載のダクト。
【請求項3】
前記孔の周縁に前記蓋材と当接する止水部材が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のダクト。
【請求項4】
前記ダクト本体部の内面に、前記仕切り板と当接する止水部材が設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気路として建物に設けられたダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の天井部には、換気や排煙等を目的として、円筒状や角筒状のダクトが設けられている場合がある。建物の1つのフロアが複数の空間(例えば、居室)に分割されている場合には、天井部に設けられたダクトは、複数の空間に跨って配設されている場合が多い。気体の輸送に使用されるダクトは、天井部において吊下されるのが一般的であるため、気密性を確保するとともに、軽量であることが望まれる。このようなダクトとして、例えば、特許文献1には、複数の金属板を組み合わせることにより形成された角筒状のダクトであって、金属板の端部を折り曲げることによりフランジが形成されたダクトが開示されている。
豪雨災害等により建物内部に流入した浸水が天井部付近まで達すると、ダクトが浮力で破損したり、ダクト内に浸入した水の重みによってダクトが落下する場合がある。また、天井部付近に到達した浸水は、破損したダクトを介してあるいは、ダクトが落下することにより形成された貫通孔を介して、他の空間(部屋)に流出する場合がある。
ダクトが破損すると、ダクトの復旧に手間がかかるとともに、浸水後の各空間(部屋)の清掃に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-173447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、浸水時の浮力による破損や、他室への水の流出を抑制することを可能としたダクトを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、建物内に設けられたダクトであって、底面に複数の孔が形成されたダクト本体部と、前記ダクト本体部内を通流方向と交差する向きで区分する仕切り板と、前記底面に上載されて前記孔を塞ぐ蓋材と、前記ダクト本体部の下方に設けられて、前記仕切り板または前記蓋材に連結された浮力受板とを備えている。前記浮力受板は前記建物に浸水した水の水位に応じて上下動し、前記仕切り板および前記蓋材は前記浮力受板の上下動に伴って移動可能である。
かかるダクトによれば、建物内に浸水した水がダクトに到達した場合であっても、孔が水の浮力によって開口し、孔が存在しないダクトに比べてダクトに作用する浮力が小さくなるため、浮力によってダクトが破損することを抑制あるいは最小限に抑えることができる。また、ダクト内に流入した水は、孔から排出されるため、水の重量によってダクトが落下することも抑制できる。したがって、破損したダクトの復旧作業に要する手間を省略あるいは低減できる。
さらに、水の浮力によって仕切り板がダクト本体部の内部空間を区分するため、ダクト内に浸入した水がダクトを介して他室に流出することもない。そのため、浸水後の清掃作業に要する手間を最小限に抑えることができる。
【0006】
なお、前記仕切り板に連結された前記浮力受板の高さ位置が、前記蓋材に連結された浮力受板の高さ位置よりも下であれば、孔が開口する前に、仕切り板によりダクト本体部を区分することができる。そのため、ダクト内に水が浸入した場合であっても、他室へ水が流出することがない。
また、前記孔の周縁に前記蓋材と当接する止水部材が設けられていれば、ダクトの気密性が向上する。
さらに、前記ダクト本体部の内面に前記仕切り板と当接する止水部材が設けられていれば、ダクト本体部を区分する際の止水性が向上する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のダクトによれば、建物内に天井部にまで到達する浸水があった場合であっても、破損することなく、また、他室への水の流出を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るダクトを示す断面図である。
図2】仕切り板を示す斜視図である。
図3】蓋材と流出入孔とを示す断面図である。
図4】建物内浸水時のダクトを示す断面図であって、(a)は浸水初期、(b)は仕切り板上昇時、(c)はダクト内浸水時である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、建物1内に設けられたダクト2について説明する。図1に本実施形態のダクト2を示す。ダクト2は、図1に示すように、壁11により分割された複数の空間(部屋等)12,12に跨って配設された通気路である。本実施形態のダクト2は、底面31に複数の貫通孔(流出入孔32,仕切り板用孔33)が形成されたダクト本体部3と、ダクト本体部3内を通流方向と交差する向きで区分する仕切り板4と、底面31に上載されて貫通孔を塞ぐ蓋材5と、ダクト本体部3の下方に設けられた複数の浮力受板6,6,…とを備えている。
ダクト本体部3は、角筒状を呈している。ダクト本体部3の底面31には、仕切り板用孔33,33が形成されているとともに、仕切り板用孔33同士の間に複数の流出入孔32が貫通している。仕切り板用孔33は、各部屋の両端部(壁11側)に形成されており、仕切り板4の断面形状(平面形状)と同等の形状を呈していて、仕切り板4を挿通可能である。また、流出入孔32は、蓋材5の外形よりも小さい形状を有している。
【0010】
仕切り板4は、ダクト本体部3の底面31に形成された貫通孔(仕切り板用孔33)を貫通した状態で、上下方向に移動可能に設けられている。仕切り板4は、ダクト本体部3の内空高以上の高さ(上下方向の長さ)と、ダクト本体部3の内空幅と同等の幅(左右の長さ)を有した板材からなる。図2に仕切り板4を示す。図2に示すように、仕切り板4の上端には係止部41が形成されている。本実施形態の係止部41は、仕切り板用孔33よりも大きな形状を有した板材を仕切り板4の上端に固定することにより形成されている。仕切り板4が下がり、係止部41がダクト本体部3の底面31に載置されると、仕切り板用孔33が係止部41によって塞がれる。仕切り板4の下端には、浮力受板6(第一浮力受板61)が固定されている。なお、浮力受板6は、仕切り板4の下端に連結部材を介して固定してもよい。図2に示すように、ダクト本体部3の内面には、仕切り板4と当接する止水部材7(例えば、ゴムパッキン)が設けられている。止水部材7は、底面に形成された仕切り板用孔33の周縁と、側壁内面と、天井面に設けられていて、仕切り板4と当接する。通常時の仕切り板4は、係止部41が仕切り板用孔33の縁に係止された状態で、ダクト本体部3の下面から吊架されている。このとき、仕切り板用孔33は、係止部41により塞がれているため、ダクト本体部3内を流通する気体が仕切り板用孔33から漏れ出すことが防止されている。
【0011】
蓋材5は、ダクト本体部3内において、上下方向に移動可能に設けられている。図1に示すように、蓋材5の下面には、連結部材51が固定されている。連結部材51は、流出入孔32を貫通している。連結部材51は、板材または棒材等からなり、連結部材51の下端は、浮力受板6(第二浮力受板62)の上面に固定されている。連結部材51の断面積は、流出入孔32の面積よりも小さく、連結部材51と流出入孔32の縁との間には、隙間が形成されている。蓋材5は、常時はダクト本体部3の底面に載置されていて、流出入孔32を塞いでいる。そのため、ダクト本体部3内を流通する気体が流出入孔32から漏れ出すことが防止されている。図3に流出入孔32と蓋材5を示す。図3に示すように、流出入孔32の周縁には蓋材5と当接する止水部材7(例えば、ゴムパッキン)が設けられている。
【0012】
図1に示すように、浮力受板6は、仕切り板4または蓋材5に連結されている。浮力受板6は、建物1(空間12)に浸水した水の水位に応じて上下動する。浮力受板6の上下動に伴い、当該浮力受板6に連結された仕切り板4または蓋材5が移動する。
仕切り板4に連結された浮力受板6(第一浮力受板61)の高さ位置は、蓋材5に連結された浮力受板6(第二浮力受板62)の高さ位置よりも下である。すなわち、仕切り板4のダクト本体部3下面からの突出長は、連結部材51のダクト本体部3からの突出長よりも大きい。本実施形態の仕切り板4において、係止部41の上面から仕切り板4の下端までの高さ(上下方向の長さ)は、ダクト本体部3の内空高に連結部材51の高さ(上下方向の長さ)を加えた長さである。
【0013】
図4(a)~(c)に浸水時のダクト2を示す。空間12に水が浸水すると、図4(a)に示すように、仕切り板4に連結された第一浮力受板61が最初に水面に接する。第一浮力受板61は、水位の上昇に伴って上昇する。第一浮力受板61が上昇すると、図4(b)に示すように、仕切り板4が上昇する。これにより、ダクト本体部3が壁11の手前において、仕切り板4によって区画される。
さらに水位が上昇すると、第二浮力受板62が水面に接して、水位のさらなる上昇に伴って第二浮力受板62が上昇する。第二浮力受板62が上昇すると、蓋材5が上昇し、流出入孔32が開口する。そのため、図4(c)に示すように、浸水した水位がダクト本体部3にまで到達した場合であっても、水は流出入孔32からダクト本体部3の内部に流入し、ダクト本体部3に作用する浮力が軽減される。
【0014】
なお、浸水時の水位の上昇速度が速く、ダクト2内外の水位差(ダクト2外の浸水位とダクト2内の浸水位の差)が大きくなると、ダクト2の底面にある流出入孔32の開口部以外にはたらく浮力によりダクト2が変形、破損することが考えられる。そのため、浮力によるダクト2の破損を防ぐためには、浸水時の水位の上昇速度が速い場合であっても、ダクト2内外の水位差が小さくなるように、流出入孔32の開口面積を設定する必要がある。水位差は浸水規模などにより異なるが、水深差が設定できれば開口面積を求めることが可能となる。開口面積は、式1に示す水理公式により設定する。
A=b×w≧S×(h-h‘)/v =(B×W)×Δh /(2gΔh)^0.5)
・・・式1
S:ダクト底面の面積(開口部含む)
B:流出入孔の長幅
W:流出入孔の短幅
A:ダクト底面の開口面積
b:流出入孔の長幅
w:流出入孔の短幅
h:ダクト外の浸水位
h‘:ダクト内の浸水位
Δh:ダクト内外の水位差
v:流入速度
【0015】
本実施形態のダクト2によれば、建物1内に浸水した水がダクト2に到達した場合であっても、流出入孔32が水の浮力によって開口し、ダクト本体部3内に水が流入するので、流出入孔32が存在しないダクトに比べてダクト2に作用する浮力が小さくなる。そのため、浮力によってダクト2が破損することを抑制あるいは最小限に抑えることができる。
また、ダクト2内に流入した水は、水位が下降した際に流出入孔32から排出されるため、ダクト2内に浸水した水の重量によってダクト2が落下することも抑制できる。したがって、破損したダクト2の復旧作業に要する手間を省略あるいは低減できる。
さらに、水の浮力を受けた仕切り板4がダクト本体部3の内部空間を区分するため、ダクト2内に浸入した水がダクト2を介して他室に流出することが防止される。そのため、浸水後の清掃作業に要する手間を最小限に抑えることができる。
また、仕切り板4に連結された第一浮力受板61の高さ位置が、蓋材5に連結された第二浮力受板62の高さ位置よりも下であるため、流出入孔32が開口する前に、仕切り板4によりダクト本体部3を区分することができる。そのため、ダクト2内に水が浸入した場合であっても、他室へ水が流出することを防止できる。
また、流出入孔32の周縁に蓋材5と当接する止水部材7が設けられているため、通常時においてはダクト2の気密性が確保される。
また、ダクト本体部3の内面に仕切り板4と当接する止水部材7が設けられているため、ダクト本体部3を区分する際の止水性が確保されている。
【0016】
本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
仕切り板4の高さ(上下方向の長さ)は、前記実施形態で示した大きさに限定されるものではない。仕切り板4は、ダクト本体部3内に浸入した水の水位よりも仕切り板4の上端(係止部41の上面)が常に高くなるように構成されていればよい。
また、第一浮力受板61の高さ位置は、第二浮力受板62の高さ位置よりも下である必要はない。
また、止水部材7は、必要に応じて設ければよい。
ダクト本体部3の底面31に水の重さで開く扉を設けてもよい。こうすることで、ダクト2内に浸水した場合であっても、室内の水位が低下した際に、扉が開くことで、ダクト2内に水が排水される。
また、ダクト本体部3に底部には、仕切りが形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 建物
11 壁
12 空間
2 ダクト
3 ダクト本体部
31 底面
32 流出入孔(孔)
33 仕切り板用孔(孔)
4 仕切り板
41 係止部
5 蓋材
51 連結部材
6 浮力受板
61 第一浮力受板
62 第二浮力受板
図1
図2
図3
図4