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特開2023-183962定着構造、及び、定着構造の施工方法
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  • 特開-定着構造、及び、定着構造の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183962
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】定着構造、及び、定着構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20231221BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04B1/41 502C
E04H9/02 331A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097802
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】坂井 利光
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
【Fターム(参考)】
2E125AA45
2E125AC01
2E125AE12
2E125AG41
2E125AG60
2E125BA02
2E125BA23
2E125BA24
2E125BB01
2E125BB08
2E125BB19
2E125BB22
2E125BC09
2E125BD01
2E125BE07
2E125BF08
2E125CA01
2E125CA81
2E125EA07
2E125EA33
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA02
(57)【要約】
【課題】ねじ棒のコンクリート部材への定着長さを確保しつつ、埋め込み長さの短縮を図る。
【解決手段】コンクリート部材に定着される定着構造であって、前記コンクリート部材に埋設されたねじ棒と、前記ねじ棒の一端側に設けられて前記コンクリート部材に埋設された定着板と、前記ねじ棒の他端側に設けられて、前記ねじ棒とは反対側に前記コンクリート部材の表面側に露出したねじ孔を有するナットと、を備え、前記定着板および前記ナットは、それぞれ、前記ねじ棒に螺合されるとともに、接着材で前記ねじ棒に回転防止固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材に定着される定着構造であって、
前記コンクリート部材に埋設されたねじ棒と、
前記ねじ棒の一端側に設けられて前記コンクリート部材に埋設された定着板と、
前記ねじ棒の他端側に設けられて、前記ねじ棒とは反対側に前記コンクリート部材の表面側に露出したねじ孔を有するナットと、
を備え、
前記定着板および前記ナットは、それぞれ、前記ねじ棒に螺合されるとともに、接着材で前記ねじ棒に回転防止固定されている、
ことを特徴とする定着構造。
【請求項2】
請求項1に記載の定着構造であって、
前記定着板は、中央に前記ねじ棒に螺合するように形成された貫通ねじ孔を有し、前記貫通ねじ孔を介して前記ねじ棒に螺合される、
ことを特徴とする定着構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の定着構造であって、
前記ナットの前記ねじ孔の露出部分の周囲に接続され、前記ねじ棒の螺進方向を法線方向とする板材を有する、
ことを特徴とする定着構造。
【請求項4】
請求項3に記載の定着構造であって、
前記板材の表面側に設けられる面材と、
前記面材を前記板材に支圧接合する支圧接合部材と、
を有することを特徴とする定着構造。
【請求項5】
請求項4に記載の定着構造であって、
前記面材は、免震装置のフランジである、
ことを特徴とする定着構造。
【請求項6】
コンクリート部材に定着される定着構造の施工方法であって、
ねじ棒の一端側に、定着板を螺合させるとともに、接着材で回転防止固定する工程と、
前記ねじ棒の他端側に、ナットを螺合させるとともに、接着材で回転防止固定する工程と、
前記ナットの前記ねじ棒とは反対側のねじ孔が前記コンクリート部材の表面側に露出するように、前記ねじ棒及び前記定着板を前記コンクリート部材に埋設させる工程と、
を有することを特徴とする定着構造の施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の定着構造の施工方法であって、
前記定着板の中央に前記ねじ棒に螺合する貫通ねじ孔を形成する工程を有し、
前記定着板は、前記貫通ねじ孔を介して、前記ねじ棒に螺合される、
ことを特徴とする定着構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着構造、及び、定着構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート部材への定着構造として、例えば、免震装置を設置したコンクリートの基礎部分(以下、免震基礎)にアンカーボルト(ねじ棒)を埋設させ、免震基礎に定着させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。アンカーボルトは、地震時に免震装置にかかる引抜荷重を負担する重要な部材であるため、設計上で要求される性能に基づき、部材の寸法(例えば、コンクリート部材への定着長さなど)が詳細に定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-204364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンカーボルトには、通常、後述するように、定着板を固定するための部材(ナット)等が設けられているが、ナットの厚さは定着長さに含まないため、上記の定着長さを確保するように設計すると、アンカーボルトの全長(換言すると、埋め込み長さ)が、ナットの厚さ分長くなってしまう。このため、例えば、免震層の高さを低く(免震基礎の高さを低く)する設計が求められる場合に、アンカーボルトが免震基礎の直上または直下の、梁を構成する鉄骨などと干渉して、低くできないおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ねじ棒のコンクリート部材への定着長さを確保しつつ、埋め込み長さの短縮を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、コンクリート部材に定着される定着構造であって、前記コンクリート部材に埋設されたねじ棒と、前記ねじ棒の一端側に設けられて前記コンクリート部材に埋設された定着板と、前記ねじ棒の他端側に設けられて、前記ねじ棒とは反対側に前記コンクリート部材の表面側に露出したねじ孔を有するナットと、を備え、前記定着板および前記ナットは、それぞれ、前記ねじ棒に螺合されるとともに、接着材で前記ねじ棒に回転防止固定されていることを特徴とする定着構造である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ねじ棒のコンクリート部材への定着長さを確保しつつ、埋め込み長さの短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】免震構造の説明図である。
図2】比較例の定着構造の説明図である。
図3】本実施形態の定着構造の説明図である。
図4】本実施形態の定着構造の施工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
コンクリート部材に定着される定着構造であって、前記コンクリート部材に埋設されたねじ棒と、前記ねじ棒の一端側に設けられて前記コンクリート部材に埋設された定着板と、前記ねじ棒の他端側に設けられて、前記ねじ棒とは反対側に前記コンクリート部材の表面側に露出したねじ孔を有するナットと、を備え、前記定着板および前記ナットは、それぞれ、前記ねじ棒に螺合されるとともに、接着材で前記ねじ棒に回転防止固定されていることを特徴とする定着構造が明らかとなる。
【0012】
このような定着構造によれば、定着板を固定するための部材(ナット)等を設けなくてもよいので、ねじ棒のコンクリート部材への定着長さを確保しつつ、埋め込み長さの短縮を図ることができる。
【0013】
かかる定着構造であって、前記定着板は、中央に前記ねじ棒に螺合するように形成された貫通ねじ孔を有し、前記貫通ねじ孔を介して前記ねじ棒に螺合されることが望ましい。
【0014】
このような定着構造によれば、定着板とねじ棒を確実に螺合させることができる。
【0015】
かかる定着構造であって、前記ナットの前記ねじ孔の露出部分の周囲に接続され、前記ねじ棒の螺進方向を法線方向とする板材を有することが望ましい。
【0016】
このような定着構造によれば、コンクリート部材に所定の部材(例えば免震装置)を設置することができる。また、荷重などの応力を、板材を介してコンクリート部材に伝達することができる。
【0017】
かかる定着構造であって、前記板材の表面側に設けられる面材と、前記面材を前記板材に支圧接合する支圧接合部材と、を有することが望ましい。
【0018】
このような定着構造によれば、コンクリート部材に面材を固定することができる。
【0019】
かかる定着構造であって、前記面材は、免震装置のフランジであることが望ましい。
【0020】
このような定着構造によれば、免震装置のフランジをコンクリート部材(免震基礎)に固定できる。
【0021】
また、コンクリート部材に定着される定着構造の施工方法であって、ねじ棒の一端側に、定着板を螺合させるとともに、接着材で回転防止固定する工程と、前記ねじ棒の他端側に、ナットを螺合させるとともに、接着材で回転防止固定する工程と、前記ナットの前記ねじ棒とは反対側のねじ孔が前記コンクリート部材の表面側に露出するように、前記ねじ棒及び前記定着板を前記コンクリート部材に埋設させる工程と、を有することを特徴とする定着構造の施工方法が明らかとなる。
【0022】
このような定着構造の施工方法によれば、ねじ棒のコンクリート部材への定着長さを確保しつつ、埋め込み長さの短縮を図ることができる。
【0023】
かかる定着構造の施工方法であって、前記定着板の中央に前記ねじ棒に螺合する貫通ねじ孔を形成する工程を有し、前記定着板は、前記貫通ねじ孔を介して、前記ねじ棒に螺合されることが望ましい。
【0024】
このような定着構造の施工方法によれば、定着板とねじ棒を確実に螺合させることができる。
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
===本実施形態===
<<免震構造について>>
図1は、免震構造の概略説明図である。図1に示す免震構造は、建物の下層部(下部構造1)と上層部(上部構造2)の間に免震装置10を設置した免震層4を設けた中間層免震である。
【0027】
下部構造1は、水平方向に沿った梁1Aと、鉛直方向に沿った柱1Bを有している。なお、本実施形態の建物は鉄骨造であり、梁1A及び柱1Bの躯体内には鉄骨5が配置されている。また、梁1Aと柱1Bの接続部にはコンクリートで形成された免震基礎100(コンクリート部材に相当)が上方に突出するように設けられている。
【0028】
上部構造2は、下部構造1よりも上方に設けられており、水平方向に沿った梁2Aと、鉛直方向に沿った柱2Bを有している。また、下部構造1と同様に、梁2A及び柱2Bの躯体内には鉄骨5が配置されている。また、梁2Aと柱2Bの接続部にはコンクリートで形成された免震基礎200(コンクリート部材に相当)が、下方に突出するように設けられている。
【0029】
免震層4は、下部構造1と上部構造2との間の層であり、免震層4には免震装置10が配置されている。
【0030】
免震装置10は、図1に示すように、上部構造2と下部構造1との間に介在されている。より具体的には、免震装置10は、免震基礎100と、免震基礎200との間に設けられている。
【0031】
本実施形態の免震装置10は、図1に示すように、積層ゴム12(例えば、円形の薄い鋼板とゴム層とを上下に交互に積層してなる円柱状の弾性体)を、上下一対のフランジ14で挟んで構成されている。
【0032】
フランジ14は、例えば、円形の鋼板であり、積層ゴム12よりも外側に複数の貫通孔14aが設けられている。そして、下側のフランジ14は、ベースプレート20を介して、免震基礎100の上面に固定されている。また、上側のフランジ14も同様に、ベースプレート20を介して、免震基礎200の下面に固定されている。
【0033】
なお、ベースプレート20には、高ナット22が接合されており、高ナット22にはアンカーボルト30が螺合されている。そして、アンカーボルト30は、免震基礎100,200に定着されている。この構造(定着構造)については後述する。
【0034】
以上の構成により、免震装置10は、上部構造2を支承するとともに、上部構造2と下部構造1との相対変位による水平力に応じて積層ゴム12が水平方向に剪断変形して、上部構造2の水平振動を長周期化する(免震支承として機能する)。
【0035】
<<定着構造について>>
以下、免震基礎100,200における定着構造について説明する。本実施形態について説明する前に比較例について説明する。
【0036】
<比較例>
図2は、比較例の定着構造の説明図である。この比較例は、従来、一般的に用いられている構造である。なお、図2では、下部構造1の免震基礎100への定着構造について示しているが、上部構造2側(免震基礎200側)についても同様の構成である。
【0037】
比較例の定着構造は、ベースプレート20、高ナット22、アンカーボルト31、定着板41、ナット51~53、及び取付ボルト60を有している。
【0038】
ベースプレート20は、免震基礎(ここでは免震基礎100)に対する免震装置10の設置用の板材(例えば鋼板)であり、フランジ14の複数の貫通孔14aと対応する位置に、それぞれ、貫通孔20aが設けられている。なお、フランジ14の貫通孔14a、及び、ベースプレート20の貫通孔20aは、ねじ切りなしの単純な貫通孔である。ただし、貫通孔20aは、高ナット22のねじ孔22b(後述)とねじ切りみぞが合っている場合(例えば、後述するように、高ナット22の外周を切削し、ベースプレート20の開孔に嵌合して接合した場合)は、ねじ切り有りのねじ孔(ボルト孔)でもよい。
【0039】
高ナット(長ナットともいう)22は、両端にねじ孔(ねじ孔22a,22b)を有している。一方のねじ孔(ねじ孔22a)にはアンカーボルト30が螺合され、他方のねじ孔(ねじ孔22b)には、取付ボルト60が、フランジ14の貫通孔14a及びベースプレート20の貫通孔20aを介して螺合される。
【0040】
また、高ナット22のねじ孔22b側の端部(図では上端)は、ベースプレート20と溶接により接合されている。より具体的には、高ナット22の軸方向(後述するアンカーボルト31の螺進方向)がベースプレート20の法線方向となり、高ナット22のねじ孔22bとベースプレート20の貫通孔20aが重なるように接合されている。
【0041】
このため、免震装置10(フランジ14)及び取付ボルト60を設けていない状態では、高ナット22のねじ孔22bは、免震基礎100の表面側に露出することになる。すなわち、ベースプレート20は、高ナット22のねじ孔22bの露出部分の周囲に接続されている。
【0042】
アンカーボルト31は、免震基礎100への定着用の部材であり、免震基礎100に埋設されている。アンカーボルト31は、頭部の無い寸切りボルトであり、全長に亘って周囲に雄ねじが形成されている。
【0043】
定着板41は、地震等の振動により、高ナット22やアンカーボルト31を免震基礎100から引き抜こうと働く応力に対抗するための鋼製の板状部材(鋼板)であり、アンカーボルト31の所定位置に固定されている。具体的には、定着板41の中央には、ねじ切りの無い貫通孔41aが形成されており、貫通孔41aにアンカーボルト31を挿通させて、ナット51、52によって、定着板41を挟んで締め付けている。これにより、定着板41をアンカーボルト31の所定位置(ここでは下端側)に固定している。
【0044】
ナット51、52は、上述したように定着板41をアンカーボルト31の所定位置に固定するための部材であり、定着板41を挟むように設けられている(アンカーボルト31に螺合されている)。また、ナット53は、アンカーボルト31が高ナット22に対して回転することを防止するための部材であり、高ナット22のねじ孔22a側端に設けられている(アンカーボルト31に螺合されている)。
【0045】
取付ボルト60は、頭付きのボルトであり、ボルト部分は、フランジ14の貫通孔14a、ベースプレート20の貫通孔20aを介して、高ナット22のねじ孔22bに螺合している。これにより、取付ボルト60は、フランジ14、ベースプレート20、高ナット22を一体的に締結し、フランジ14をベースプレート20に支圧接合する。
【0046】
このような構成において、アンカーボルトの免震基礎への必要な定着長さが規定されている。具体的には、図に示すように、定着長さをh、ボルト径をdとしたとき、例えば、h≧3.5dと設計図書に指定されることがある。なお、この数値は一例であり、必要な定着長さは建物の構造設計によって変化する。
【0047】
この比較例の場合、定着板41を固定するナット51,52や、高ナット22とアンカーボルト31の回転を防止するナット53は、構造上必要ない部材である。このようなナット51~53を設けていることにより、比較例では、上記の定着長さhを確保しようとすると、アンカーボルト31の長さH´が大きく(長く)なる。よって、アンカーボルト31の免震基礎100(コンクリート部材)への埋め込み長さも長くなってしまう。
【0048】
そこで、本実施形態では、アンカーボルトの免震基礎への定着長さh(例えばh≧3.5d)を確保しつつ、アンカーボルトの免震基礎への埋め込み長さの短縮を図っている。
【0049】
<本実施形態>
図3は、本実施形態の定着構造の説明図である。図3では、比較例と同様に、下部構造1側の免震基礎100と免震装置10の下側のフランジ14との接合部分について示しているが、上部構造2側についても同様の構成である。また比較例(図2)と同一構成の部分には同一符号を付し、説明を省略することがある。
【0050】
本実施形態の定着構造は、ベースプレート20と、高ナット22と、アンカーボルト30と、定着板40と、取付ボルト60を備えている。なお、本実施形態において、ベースプレート20は、「板材」に相当し、高ナット22は、「ナット」に相当し、アンカーボルト30は、「ねじ棒」に相当する。また、免震装置10のフランジ14は「面材」に相当し、取付ボルト60は、「支圧接合部材」に相当する。
【0051】
高ナット22は、比較例と同じ部材であり、ねじ孔22aと、ねじ孔22bを有している。また、高ナット22は、比較例と同様にベースプレート20に溶接されている。本実施形態では、高ナット22(具体的にはねじ孔22a)は、アンカーボルト30の端部(ここでは上端側)に螺合されるとともに、接着材Sによって接合(回転防止固定)されている。なお、接着材Sは、例えば樹脂系の接着材であり、金属と金属を接着する接着材である。このような接着材Sとしては、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製の「ねじロック263(商品名)」等を例示できる。
【0052】
アンカーボルト30は、比較例のアンカーボルト31と同様に、頭部の無い寸切りボルトであり、全長に亘って周囲に雄ねじが形成されている。また、アンカーボルト30のボルト径は、比較例のアンカーボルト31のボルト径dと等しい。ただし、本実施形態のアンカーボルト30の全長Hは、比較例のアンカーボルト31の全長H´よりも短い。
【0053】
定着板40は、比較例の定着板41と同様の機能を有する部材である。ただし、比較例の定着板41には中央に貫通孔41aが形成されていたのに対し、本実施形態の定着板40には、中央にアンカーボルト30と螺合するねじ孔40a(貫通ねじ孔に相当)が形成されている。そして、定着板40は、ねじ孔40aを介してアンカーボルト30の端部(ここでは下端側)に螺合されるとともに、接着材Sによって接合(回転防止固定)されている。
【0054】
なお、本実施形態では、定着板40の厚さを、比較例の定着板41の厚さよりも大きく(厚く)している。これは、比較例のナット51,52を設けていないことによるナットの螺合部分の強度低下を考慮したためである。ただし、十分な強度が得られれば、定着板40の厚さを、定着板41の厚さと同じにしてもよい。
【0055】
このように、本実施形態では、定着板40および高ナット22は、それぞれの部材に形成されているねじ孔を介して、アンカーボルト30に螺合されるとともに、接着材Sでアンカーボルト30に回転防止固定されている。よって比較例のような固定用のナット51~53を設けなくてもよい。これにより、本実施形態では、アンカーボルト30の免震基礎100への埋め込み長さhを確保しつつ、アンカーボルト30の長さHを、比較例(アンカーボルト31)の長さH´よりも短くできる。すなわち、アンカーボルト30の免震基礎100への埋め込み長さを、比較例の場合よりも短縮することができる。
【0056】
例えば、図1の場合、免震基礎200の高さが低い(鉛直方向の長さが短い)ことにより、免震基礎200の表面(この場合、下面)から、上部構造2に設けられている鉄骨5までの距離が短い。このため、比較例の定着構造では、アンカーボルト31が鉄骨5に干渉するおそれがある。これに対し、本実施形態では、定着長さhを確保しつつ、アンカーボルト30の長さを短くできる(埋め込み深さを短くできる)ので、鉄骨5と干渉しないようにすることができる。
【0057】
<<定着構造の施工方法について>>
次に、定着構造の施工方法について説明する。
図4A図4Eは、本実施形態の定着構造の施工方法の一例を示す図である。なお、ここでも、免震基礎100側について説明するが、免震基礎200側についても同様である。
【0058】
まず、図示していないが、定着板40の中央にアンカーボルト30に螺合するねじ孔40aを形成する。そして、図4Aに示すように、アンカーボルト30の一端側の所定位置に、定着板40を、ねじ孔40aを介して螺合させるとともに、接着材S(図3参照)で回転防止固定する。
【0059】
より具体的には、例えば、予め、アンカーボルト30における定着板40との接合部分と非接合部分との境界部分にマーキングをし、接合部分に接着材Sを塗布する。そして、定着板40(ねじ孔40a)をアンカーボルト30の接合部分まで螺合させる。所定の硬化時間を経た後、定着板40がアンカーボルト30に対して回転しないことを確認する。
【0060】
次に、図4Bに示すように、アンカーボルト30と定着板40の場合と同様に、アンカーボルト30の他端側を高ナット22のねじ孔22aに螺合するとともに、接着材S(図3参照)で回転防止固定する。なお、高ナット22のねじ孔22aの開口部が上を向くようにし、アンカーボルト30に接着材Sを塗布するとともに、ねじ孔22a内に接着材Sを滴下してアンカーボルト30を螺合させてもよい。
【0061】
次に、図4Cに示すように、高ナット22のねじ孔22b側の部分を、ベースプレート20の所定位置(貫通孔20aの形成部分)に溶接し、高ナット22とベースプレート20を接合する。図では一つの接合部分しか示していないが、ベースプレート20の全ての貫通孔20aにおいて、同様に、高ナット22(アンカーボルト30が設けられた高ナット22)の接合を行う。
【0062】
なお、各部材(ベースプレート20、高ナット22、アンカーボルト30、定着板40)の接合の順序は、上述したものには限られない。例えば、ベースプレート20と高ナット22を予め溶接してもよい。そして、アンカーボルト30を高ナット22に接合し、最後に、アンカーボルト30に定着板40を接合してもよい。あるいは、定着板40を接合したアンカーボルト30を高ナット22に接合してもよい。
【0063】
次に、図4Dに示すように、図4Cの接合体(ベースプレート20、高ナット22、アンカーボルト30、定着板40)を、型枠内(不図示)に設置して、型枠内にコンクリートを打設する。これにより、免震基礎(ここでは免震基礎100)が形成され、アンカーボルト30及び定着板40は、免震基礎100に埋設される。また、高ナット22のねじ孔22bは、ベースプレート20の貫通孔20aを介して、免震基礎100の表面側に露出する。
【0064】
次に、図4Eに示すように、ベースプレート20の上に、免震装置10のフランジ14を配置し、取付ボルト60のボルト部分を、フランジ14の貫通孔14a、ベースプレート20の貫通孔20aを介して、高ナット22のねじ孔22bに螺合させる。そして、取付ボルト60によって、フランジ14、ベースプレート20、高ナット22を一体的に締結し、フランジ14をベースプレート20に支圧接合する。
【0065】
以上、説明した施工方法により、定着長さhを確保しつつ、埋め込み長さを、比較例の場合よりも短縮した定着構造を実現することができる。
【0066】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0067】
前述の実施形態では、本発明の定着構造を中間層免震に適用した場合について説明したが、中間層免震には限られない。例えば、基礎免震にも適用することができる。
【0068】
また、前述の実施形態では、下部構造1及び上部構造2は、鉄骨造であったがこれには限られない。例えば鉄骨鉄筋コンクリート造でもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、免震基礎(免震基礎100,200)における定着構造の例について説明したが、これには限られない。例えば、建物の天井に吊り材を設置する場合のコンクリート部材との定着部分などにも同様に適用することができる。なお、免震基礎以外に適用する場合には、高ナット22をベースプレート20(板材)に溶接しなくてもよい(ベースプレート20は設けなくてもよい)。
【0070】
また、前述の実施形態では、高ナット22のねじ孔が、ねじ孔22aとねじ孔22bに分離されていたが、分離されていなくてもよい(一つのねじ孔が貫通していてもよい)
【0071】
また、前述の実施形態では、アンカーボルト30は、全長に亘って周囲に雄ねじが形成されているとしているが、高ナット22のねじ孔22aと、定着板40のねじ孔40aに挿通できるまで雄ねじが形成されている(アンカーボルト30の両端に雄ねじが形成されている)形態でもよい。
【0072】
また、前述の実施形態では、ベースプレート20と高ナット22のねじ孔22b側の端部とを接面して、溶接により接合する仕様で説明していたが、この接合の仕様には限られない。例えば、高ナット22の外周を、ねじ孔22bに影響せず、かつベースプレート20に力が十分に伝達できる程度に切削し、一方のベースプレート20には高ナット22の切削した外周形状に合わせて開孔し、双方を嵌合した後、高ナット22とベースプレート20の接触部を溶接して接合してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 下部構造
1A 梁
1B 柱
2 上部構造
2A 梁
2B 柱
4 免震層
5 鉄骨
10 免震装置
12 積層ゴム
14 フランジ
20 ベースプレート
20a 貫通孔
22 高ナット(ナット)
22a ねじ孔
22b ねじ孔
30 アンカーボルト(ねじ棒)
40 定着板
40a ねじ孔(貫通ねじ孔)
60 取付ボルト
S 接着材
図1
図2
図3
図4