(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183963
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スイングドア
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20231221BHJP
G09F 19/22 20060101ALI20231221BHJP
E06B 3/32 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E06B7/28 Z
G09F19/22 Z
E06B3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097804
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】390008534
【氏名又は名称】株式会社ユニフロー
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】石橋 さゆみ
(72)【発明者】
【氏名】布施 哲志
(72)【発明者】
【氏名】平田 敏明
(72)【発明者】
【氏名】玉山 弘司
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014CA04
(57)【要約】
【課題】デジタルサイネージを新たな有効な設置場所で活用できるようにする。
【解決手段】戸尻側の上隅部を回動可能に軸支する上部ヒンジ12および戸尻側の下隅部を回動可能に軸支する下部ヒンジ13を介してドア枠に対して前後方向に回動可能なドア板11と、ドア板11に組み込まれた表示モニタ14とを備えたスイングドア1を構成することにより、通行人の流れに対峙する場所や比較的多くの人が利用する場所、通行人が無意識に眺める可能性の高い場所と言えるがこれまでデジタルサイネージの設置場所としては活用されてこなかったスイングドア1を、デジタルサイネージとして新たに活用することができるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠に対して前後方向に回動可能なドア板と、
上記ドア板の戸尻側の上隅部を回動可能に軸支する上部ヒンジと、
上記ドア板の戸尻側の下隅部を回動可能に軸支する下部ヒンジと、
上記ドア板に組み込まれた表示モニタとを備えた
ことを特徴とするスイングドア。
【請求項2】
上記表示モニタは、所定の厚さを有する平面型モニタであり、
上記ドア板は、上記表示モニタの平面サイズより大きい所定サイズの収容空間を有し、
上記収容空間に収容された上記表示モニタの表示面とは反対側の裏面の一部を押さえた状態で上記ドア板に固定される押さえ固定具を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のスイングドア。
【請求項3】
上記収容空間に収容された上記表示モニタの側面と上記収容空間との隙間に緩衝材が配置されることを特徴とする請求項2に記載のスイングドア。
【請求項4】
上記収容空間が有する上下左右の4方向の側面のうち上方の側面を除く3方向の側面と、当該収容空間に収容された上記表示モニタとの隙間に上記緩衝材が配置されることを特徴とする請求項3に記載のスイングドア。
【請求項5】
上記表示モニタは、所定の厚さを有する平面型モニタであり、
上記ドア板は、3つの面材を対向配置して結合させた層構造から成り、上記表示モニタの平面サイズより大きい所定サイズの収容空間を有し、
上記3つの面材のうち中央に配置される芯材は、側面の一部から上記収容空間まで、配線を通すためのスリットを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のスイングドア。
【請求項6】
上記スリットは、上記上部ヒンジまたは上記下部ヒンジが配置される部位の端部から上記収容空間まで形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のスイングドア。
【請求項7】
上記上部ヒンジは、上記ドア板の上記上隅部を上記ドア枠に対して回動可能に吊るとともに、上記ドア板を開位置から閉位置にオートリターンさせる機能を有するヒンジであり、
上記スリットは、上記下部ヒンジが配置される部位の端部から上記収容空間まで形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のスイングドア。
【請求項8】
上記下部ヒンジは、
上記ドア枠に固定される基底面、および、上記基底面から上方に離間した位置に設けられた摺動面を有し、上記摺動面に貫通穴を有して成るドア枠側ヒンジ部材と、
上記ドア板に取り付けられる取付部、および、上記取付部の基端面から下方に突出した回転軸を有し、上記回転軸が上記貫通穴に挿通され、上記基端面を上記摺動面に摺動させながら上記ドア枠側ヒンジ部材に対して回動するドア板側ヒンジ部材とを備え、
上記回転軸は中空になっており、上記回転軸の端部が上記スリットの端部の近傍に位置するように構成されている
ことを特徴とする請求項7に記載のスイングドア。
【請求項9】
上記収容空間に収容された上記表示モニタの表示面とは反対側の裏面の一部を押さえた状態で上記ドア板に固定される押さえ固定具を備えた
ことを特徴とする請求項5~8の何れか1項に記載のスイングドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイングドアに関し、特に、ドア枠に対して前後方向にスイング可能なドア板を備えてなるスイングドアに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅や空港をはじめ、店舗、オフィス、大学、ホテルなどの各種施設に、ディスプレイやプロジェクタなどの表示装置を設置して情報を発信するデジタルサイネージが広く用いられている。デジタルサイネージは、従来のポスターや看板に比べ、より多くの情報を、手軽に、タイムリーに発信できることから、近年大きな注目を集めている。
【0003】
デジタルサイネージは、人が集まる場所や、通行人が無意識にモニタを眺める可能性の高い場所に設置するのが好ましい。例えば、施設内のエスカレータ付近やエントランス付近、待ち合わせに使われるホールなどが有効な設置場所として挙げられる。エレベータの乗り場ドア本体にモニタを組み込み、乗りかご内の映像や広告、異常事態情報などをモニタに表示するようにしたデジタルサイネージも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、デジタルサイネージを新たな有効な設置場所で活用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明では、戸尻側の上隅部を回動可能に軸支する上部ヒンジおよび戸尻側の下隅部を回動可能に軸支する下部ヒンジを介してドア枠に対して前後方向に回動可能なドア板と、ドア板に組み込まれた表示モニタとを備えたスイングドアを構成する。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、ドア枠に対して前後方向に回動可能になされたドア板に対して表示モニタが組み込まれたスイングドアをデジタルサイネージとして活用することができる。スイングドアは、百貨店、ショッピングモール、スーパーマーケット、ホームセンターなどを含む各種の商業施設のほか、公共施設、飲食店、工場、物流倉庫などを含む多くの施設の出入口で幅広く用いられている。スイングドアが設置される場所は、通行人の流れに対峙する場所や比較的多くの人が利用する場所、通行人が無意識に眺める可能性の高い場所と言えるが、これまでデジタルサイネージの設置場所としては活用されてこなかった。本発明によれば、スイングドアという新たな有効な設置場所でデジタルサイネージを活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態によるスイングドアの全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態によるドア板に対する表示モニタの組み込みに関する構成例を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態によるドア板に対する表示モニタの組み込みに関する構成例を示す一部拡大図である。
【
図4】本実施形態によるドア板における配線通路の構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態による下部ヒンジの構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態による上部ヒンジの構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態によるスイングドアの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるスイングドア1の全体構成例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態のスイングドア1は、図示しないドア枠に対して前後方向(人の通り抜ける方向)に回動(スイング)可能なドア板11を備えている。このドア板11は、ドア板11の戸尻側の上隅部を回動可能に軸支する上部ヒンジ12と、ドア板11の戸尻側の下隅部を回動可能に軸支する下部ヒンジ13とを介して、ドア枠に回動可能に取り付けられている。以下の説明において、戸尻側とはドア板11を回動支持する端縁側をいい、戸先側とはドア板11の開閉する自由端縁側をいうものとする。
【0011】
上部ヒンジ12および下部ヒンジ13は、それらの位置が鉛直軸上に揃っておらず、ずれた位置に設置されている。これにより、ドア板11は、上部ヒンジ12の位置と下部ヒンジ13の位置とを結ぶ傾斜軸TAxの周りに回動するように構成されている。このような構成により、ドア板11は、通行人に押されることでせり上がって開き、閉時よりも開時に重心が高く位置することとなる。その後、通行人がドア板11から離れると、ドア板11は自重で閉位置に自動的に戻るようになっている(これに関する具体的な構成は、
図6を用いて後述する)。
【0012】
本実施形態のスイングドア1は、ドア板11に組み込まれた表示モニタ14を備えている。
図1に示すように、表示モニタ14は、ドア板11の上下方向の中央位置よりも上側寄りの位置に組み込まれている。表示モニタ14は、その表示面が
図1(a)に示す正面側に向くようにドア板11に組み込まれる。そして、
図1(b)に示すように、ドア板11に組み込まれた表示モニタ14の裏面が裏カバー17によって塞がれる。なお、表示モニタ14の組み込みに関する構成の詳細については
図2および
図3を用いて後述する。
【0013】
表示モニタ14には、商品やサービスの案内をするコンテンツ、各種イベントを案内するコンテンツ、ディスカウントやセール、期間限定販売などを案内するコンテンツ、流行や話題性に関するコンテンツ、災害発生時における避難方法を案内するコンテンツなどを含む各種の情報が表示される。これらの情報を表示するためのデータは、外部からの通信によって提供される。これにより、表示モニタ14が組み込まれたスイングドア1をデジタルサイネージとして用いることが可能である。
【0014】
表示モニタ14の下方には窓15が備えられ、窓15の下方にはスプリングバンパー16が備えられている。スプリングバンパー16は、ドア板11の正面側および背面側の両方に備えられている。窓15は、例えば、ドア板11に形成された開口に対して透光性を有するアクリル板を組み込むことによって構成される。スプリングバンパー16は、例えば、硬質性樹脂材の平板を真空成形工法などにより金型に押し付けて形成され、戸先側に偏った部分に彎曲部または屈曲部を持つように成形されている。
【0015】
図2および
図3は、ドア板11に対する表示モニタ14の組み込みに関する構成例を示す図である。
図2はスイングドア1を背面側斜め方向から見た分解斜視図であり、
図3は収容空間21に表示モニタ14を収納した状態の一部拡大図である。
【0016】
図2に示すように、表示モニタ14は、所定の厚さを有する平面型モニタである。本実施形態において用いる表示モニタ14は、電子回路モジュールが筐体内に収容されておらず、電子回路モジュールが外観できるものである。そのため、正面側の表示面はフラットに形成される一方、背面側はフラットに形成されていない。本実施形態において平面型モニタとは、背面側がフラットではないものの全体としては概ね平面型に形成されていることを意味し、平面型モニタが有する所定の厚さとは、表示面から裏面の最も突出した部位までの厚さをいう。なお、電子回路モジュールが矩形の筐体内に収容された平面型モニタを用いてもよい。
【0017】
図2に示すように、ドア板11は、表示モニタ14の平面サイズより若干大きい所定サイズの収容空間21を有している。収容空間21は、ドア板11に形成された所定サイズの開口の正面側端面に透光性を有するアクリル板22を備えることによって構成される。これにより、ドア板11の厚さと同程度の深さを持った収容空間21が形成される。収容空間21の深さは、表示モニタ14の厚さと同程度であるが、完全に一致していることを必須とするものではない。
【0018】
例えば、収容空間21の深さは表示モニタ14の厚さより大きな値でもよい。あるいは、収容空間21の深さと表示モニタ14の厚さと差が裏カバー17の厚さ以内の値であれば、表示モニタ14の厚さは収容空間21の深さより大きな値でもよい。裏カバー17は高さの低い有底の角皿形状をしており、収容空間21よりも外側に突出した表示モニタ14の一部を収容可能に構成されている。
【0019】
本実施形態のスイングドア1は、収容空間21に収容された表示モニタ14の表示面とは反対側の裏面の一部を押さえた状態でドア板11に固定される押さえ固定具23を備えている。
図3の一部拡大図に示すように、押さえ固定具23は、金属板を屈曲加工して形成されたものであり、ドア板11に当接してドア板11に固定される部位である固定部23aと、表示モニタ14の裏面に当接または近接して表示モニタ14を押さえる部位である押さえ部23bと、収容空間21の側面に当接して位置決めをする部位である支持部23cとを備える。
【0020】
固定部23aは、収容空間21の長辺と略同じ長さを有する金属片であり、複数箇所に分散してビス孔24aが設けられている。ドア板11にも、固定部23aのビス孔24aと対向する位置にビス孔24bが設けられている。これにより、固定部23aがドア板11に当接した状態で、押さえ固定具23がビス25によってドア板11に固定される。
【0021】
押さえ部23bは、固定部23aから屈曲するようにして形成された鈎状の金属片であり、表示モニタ14の裏面の凹状になっている部位に当接または近接する。
図3の例では、大きさの異なる3つの押さえ部23bが設けられている。これらの押さえ部23bは、表示モニタ14の裏面の凹状になっている部位の位置および大きさに合わせて形成される。なお、押さえ部23bが設けられる位置は、押さえ固定具23の端部に近い位置とするのが好ましい。
【0022】
支持部23cは、固定部23aから屈曲するようにして形成された平板状の金属片であり、収容空間21の側面に当接することにより、押さえ固定具23をドア板11に固定するときの位置決めを行いやすくする役割を有している。なお、押さえ部23bによっても位置決めが可能であるため、支持部23cを設けることを必須とするものではない。
【0023】
図2に示すように、収容空間21に収容された表示モニタ14の側面と収容空間21の側面との隙間に緩衝材26が配置される。本実施形態では、収容空間21が有する上下左右の4方向の側面のうち上方の側面を除く3方向の側面と、収容空間21に収容された表示モニタ14の3方向の側面との隙間に緩衝材26を配置するようにしている。4方向の側面のうち下方の側面に緩衝材26を配置するのは、表示モニタ14に重力が働くことを考慮したものである。左右の側面に緩衝材26を配置するのは、スイングドア1が回動する際に遠心力が働くことを考慮したものである。
【0024】
上述したように、本実施形態のスイングドア1は、ドア板11が傾斜軸TAxの周りに回動するように構成されているため、回動時にドア板11に捻れが生じる。表示モニタ14はそのような性質を有するドア板11に組み込まれる。本実施形態では、ドア板11の捻れが表示モニタ14に与える物理的負荷を軽減するために、表示モニタ14の平面サイズより若干大きい所定サイズに収容空間21を形成し、そこに収容される表示モニタ14と収容空間21との隙間に緩衝材26を配置する。また、表示モニタ14をビス等によって収容空間21に完全に固定せず、押さえ固定具23によって押さえるだけの構成としている。このように構成することにより、スイングドア1の回動時にドア板11に捻れが生じても、表示モニタ14がドア板11から受ける歪力を最小限に抑えることができる。
【0025】
次に、表示モニタ14への配線に関する構成について説明する。
図4は、ドア板11における配線通路の構成例を示す図である。
図4(a)はドア板11を背面側斜め方向から見た分解斜視図であり、
図4(b)は芯材11bを背面方向から見た一部拡大図である。
【0026】
図4(a)に示すように、本実施形態のドア板11は、3つの面材11a~11cを対向配置して結合させた層構造から成る。3つの面材11a~11cの平面形状は同じであるが、厚さが異なっている。例えば、表面材11aおよび裏面材11cは同じ厚さであるのに対し、中央に入る芯材11bは表裏面材11a,11cよりも厚く構成されている。例えば、表裏面材11a,11cの厚さが9mm、芯材11bの厚さが18mmである。
【0027】
3つの面材11a~11cは、平面形状が同じ開口21a~21cをそれぞれ有しており、これら開口21a~21cの層構造により収容空間21が形成される。また、3つの面材11a~11cは、開口21a~21cの下方に、平面形状が同じ開口15a~15cをそれぞれ有しており、これら開口15a~15cの層構造により窓15が形成される。
【0028】
なお、3つの面材11a~11cの材質は任意であり、その結合方法も任意である。例えば、面材11a~11cを何れも木製板とし、これらを接着剤で貼り合わるようにしてもよい。接着剤に代えてまたは加えて、ビスを用いて固定するようにしてもよい。また、芯材11bを樹脂やペーパコア、または発砲ウレタン等により構成するようにしてもよい。表裏面材11a,11cについては、木製板に代えて鋼製板を用いてもよい。
【0029】
3つの面材11a~11cのうち中央に配置される芯材11bは、側面の一部から収容空間21まで(具体的には開口21bまで)、配線を通すためのスリット41を備えている。スリット41は、芯材11bの表面から裏面まで貫通する貫通溝である。一方、表裏面材11a,11cには、芯材11bのスリット41に対向する位置にスリットは形成されていない。これにより、3つの面材11a~11cを貼り合わせると、スリット41によって芯材11bと同じ厚さを有する配線通路が形成されることとなる。
【0030】
上述したように、スリット41の一端は開口21bであり、もう一端は芯材11bの側面の一部である。本実施形態において、側面の一部とは、下方の側面の戸尻側に形成されている切り欠き部42である。この切り欠き部42は、下部ヒンジ13が取り付けられる部位である。すなわち、スリット41は、下部ヒンジ13が配置される部位の端部から収容空間21まで形成されている。本実施形態ではさらに、下部ヒンジ13にも配線通路が形成されるようにしている。これにより、下部ヒンジ13および芯材11bのスリット41により配線通路が構成される。
【0031】
図5は、下部ヒンジ13の構成例を示す図である。
図5(a)は、下部ヒンジ13を構成する2つの部材の分解図を示し、
図5(b)は、下部ヒンジ13に配線を通した状態を示している。
図5に示すように、下部ヒンジ13は、図示しないドア枠に取り付けられるドア枠側ヒンジ部材13aと、ドア板11に取り付けられるドア板側ヒンジ部材13bとを備える。下部ヒンジ13は、ドア枠側ヒンジ部材13aに被せるヒンジカバー13c(
図2参照)を更に備えるが、
図5ではこれを図示していない。
【0032】
ドア枠側ヒンジ部材13aは、ドア枠に固定される基底面51と、当該基底面51から上方に離間した位置に設けられた摺動面52とを有し、摺動面52には貫通穴53が設けられている。基底面51と摺動面52と間は、基底面51から鉛直方向に立設した連結部54により連結されており、この連結部54もドア枠に固定される。連結部54は、表示モニタ14が組み込まれたドア板11を安定的に支えるのに十分な強度を出すために、断面コの字状に構成されている。
【0033】
ドア板側ヒンジ部材13bは、ドア板11に取り付けられる断面コの字状の取付部55と、当該取付部55の基端面56から下方に突出した円筒状の回転軸57とを有している。回転軸57は、ドア枠側ヒンジ部材13aの貫通穴53に挿通される。これにより、ドア板側ヒンジ部材13bは、基端面56をドア枠側ヒンジ部材13aの摺動面52に摺動させながら、ドア枠側ヒンジ部材13aに対して
図5(b)の矢印Y1で示す方向に回動するように構成されている。
【0034】
回転軸57は中空となっており、当該回転軸57の基端面56側の端部がドア板11(芯材11b)のスリット41の端部の近傍に位置するように構成されている。これにより、
図5(b)に示すように、ドア枠側ヒンジ部材13aから回転軸57の中空部を介してスリット41に配線コード100を通し、さらにスリット41を介して収容空間21に収容された表示モニタ14まで配線コード100を導出することが可能となっている。
【0035】
このように、本実施形態では、ドア板11の戸尻側の端部付近に設けた内部空間から成る配線通路を介して表示モニタ14に対する配線を行っている。このため、ドア板11の回動による影響を受けて配線が外れたり損傷したりすることのない態様で、外部からの電源供給や通信などに必要な配線を収容空間21の表示モニタ14まで引き込むことが可能となる。
【0036】
図6は、上部ヒンジ12の構成例を示す図である。本実施形態の上部ヒンジ12は、ドア板11の戸尻側の上隅部をドア枠に対して回動可能に吊るとともに、ドア板11を開位置から閉位置にオートリターンさせる機能を有するヒンジである。
図6は、このオートリターン機能に関する構成を抜粋して概略的に示したものである。
図6(a1)および(a2)はドア板11が閉位置にあるときの状態を示しており、(a1)は正面図、(a2)は上面図である。
図6(b1)および(b2)はドア板11が開位置にあるときの状態を示しており、(b1)は正面図、(b2)は上面図である。
図6(a2)および(b2)は、固定部材61を除いた構成を示している。
【0037】
図6に示すように、上部ヒンジ12は、略L字型に形成された板金からなる固定部材61を備えている。固定部材61は、上下方向に延び、図示しないドア枠の内側面にビス止めされる垂直部61aと、左右方向に延び、ドア枠の天井面にビス止めされる水平部61bとを有している。水平部61bの下面には、丸棒からなる縦軸62が下向きに設けられている。
【0038】
縦軸62の下端部付近には、横軸63が前後方向に通されており、横軸63の両端には一対のローラ64a,64bが回動可能に支持されている。縦軸62にはまた、カム板65が回動可能に通されている。カム板65は、一対のローラ64a,64bの上に載せられた部材であり、
図6(a1)に示すように、上方に向かって凹んだV溝65aと、その左右両側で横方向に延びるフラット部65bとを有している。カム板65は、図示しない連結部材を介してドア板11に固定されている。これにより、ドア板11とカム板65とは一体的に回動することとなる。
【0039】
ドア板11が閉位置にあるとき、
図6(a1)および(a2)に示すように、一対のローラ64a,64bがV溝65aに嵌り込んでいる。この際、一対のローラ64a,64bには、ドア板11の自重(正確には、連結部材やカム板65等の自重も含む)に対応する力が下向きに作用している。
【0040】
一方、ドア板11を手で押して前後方向に開く場合、カム板65は、V溝65aの傾斜に従ってローラ64a,64bに乗り上がりながら回動する。そして、
図6(b1)および(b2)に示すように、一対のローラ64a,64bがV溝65aから完全に脱出した状態になると、カム板65の下面のフラット部65bがローラ64a,64bの上面に押し当る。
【0041】
上述したように、ドア板11は、傾斜軸TAxの周りに、重心を徐々に高くしながら回動していく。つまり、
図6(a1)および(a2)に示す状態から
図6(b1)および(b2)に示す状態へと徐々に近づいていく。その後、ドア板11を任意の位置まで開いたところで、ドア板11から手を離すと、ドア板11は自重により自動的に閉位置に戻る。つまり、
図6(a1)および(a2)に示す状態へ徐々に戻っていく。このように、本実施形態では、上部ヒンジ12をオートリターン機能付きの構成としている。このため、
図5(b)に示すように、ドア板11の回動時にドア板側ヒンジ部材13bは矢印Y2の方向に上下動する。
【0042】
これに対し、ドア枠側ヒンジ部材13aの基底面51と摺動面52との間に形成される空間内に配線コード100を弛ませた状態に保持しておくことで、ドア板11の回動時におけるドア板側ヒンジ部材13bの上下動による配線コード100への影響を回避することが可能である。
【0043】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、前後方向に回動可能なドア板11に収容空間21を設け、収容空間21に表示モニタ14を組み込んでスイングドア1を構成するようにしている。
【0044】
このように構成した本実施形態によれば、ドア板11に表示モニタ4が組み込まれたスイングドア1をデジタルサイネージとして活用することができる。本実施形態のスイングドア1が設置される場所は、通行人の流れに対峙する場所、比較的多くの人が利用する場所や、通行人が無意識に眺める可能性の高い場所と言えるが、これまでデジタルサイネージの設置場所としては活用されてこなかった。本実施形態によれば、スイングドア1という新たな有効な設置場所でデジタルサイネージを活用することが可能となる。
【0045】
特に、本実施形態では、前後方向にスイングするドア板11に表示モニタ14を組み込むために、表示モニタ14をビス等によって収容空間21に完全に固定せず、押さえ固定具23によって押さえるだけの構成とするとともに、表示モニタ14と収容空間21との隙間に緩衝材26を配置している。このように構成することにより、ドア板11の回動時に表示モニタ14がドア板11から受ける物理的負荷を最小限に抑えることができる。
【0046】
また、本実施形態では、ドア板11を構成している3層の面材11a~11cのうち中央の芯材11bに対してスリット41を設けるとともに、下部ヒンジ13にも特有の構成を採用することにより、ドア板11の戸尻側の端部付近に配線通路を形成している。これにより、ドア板11の回動による影響を受けて配線が外れたり損傷したりすることのない態様で、外部からの電源供給や通信などに必要な配線を収容空間21の表示モニタ14まで引き込むことが可能となる。
【0047】
以上のように構成した本実施形態のスイングドア1は、
図7(a)に示すように、ドア枠71に対して1つ取り付けた状態とするようにしてもよいし、
図7(b)に示すように、ドア枠71に対して2つ取り付けた状態とするようにしてもよい。また、
図7(c)に示すように、本実施形態のスイングドア1と、表示モニタのない通常のスイングドア72とをドア枠71に取り付けた構成としてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態では、ドア板11が表示モニタ14の他に窓15およびスプリングバンパー16を備える構成について説明したが、窓15およびスプリングバンパー16を備えることは必須ではない。例えば、窓15またはスプリングバンパー16の何れか一方を備えるようにしてもよいし、窓15およびスプリングバンパー16の両方とも備えないようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、上部ヒンジ12および下部ヒンジ13を鉛直軸上からずれた位置に設置することによってドア板11が傾斜軸TAxの周りに回動するように構成するとともに、オートリターン機能を有するヒンジにより上部ヒンジ12を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上下ヒンジを鉛直軸上の揃えた位置に設置し、オートリターン機能を有しない通常のヒンジにより上部ヒンジを構成したスイングドアに対して表示モニタ14を組み込むようにしてもよい。この場合、上部ヒンジまたは下部ヒンジの何れかを
図5のように構成することにより、上部ヒンジまたは下部ヒンジの何れかが配置される部位の端部から収容空間21まで芯材11bにスリット41を形成するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ドア板11に表示モニタ14を組み込む例について説明したが、これに加えてスピーカを組み込むようにしてもよい。
【0051】
また、本発明は以下の付記に示す実施形態も含む。
【0052】
〔付記1〕
〔付記1〕
上隅部が上部ヒンジによって回動可能に軸支されるとともに、下隅部が下部ヒンジによって回動可能に軸支されることにより、ドア枠に対して前後方向に回動可能に取り付けけられるドア板であって、
側面より内側に離間した位置に平面型モニタを収容するための収容空間と、
上記側面の一部から上記収容空間まで配線を通すため配線通路とを備えた
ことを特徴とするスイングドア用のドア板。
【0053】
〔付記2〕
上記ドア板は3つの面材を対向配置させた層構造から成り、上記3つの面材のうち中央に配置される芯材が、上記側面の一部から上記収容空間まで上記配線を通すためのスリットを備え、当該スリットにより上記配線通路が構成されている
ことを特徴とする付記1に記載のスイングドア用のドア板。
【0054】
〔付記3〕
上記スリットは、上記上部ヒンジまたは上記下部ヒンジが配置される部位の端部から上記収容空間まで形成されていることを特徴とする付記2に記載のスイングドア用のドア板。
【0055】
〔付記4〕
上記上部ヒンジは、上記ドア板の上記上隅部を上記ドア枠に対して回動可能に吊るとともに、上記ドア板を開位置から閉位置にオートリターンさせる機能を有するヒンジであり、
上記スリットは、上記下部ヒンジが配置される部位の端部から上記収容空間まで形成されている
ことを特徴とする付記2に記載のスイングドア用のドア板。
【0056】
〔付記5〕
ドア板がドア枠に対して前後方向に回動可能となるように、上記ドア板の下隅部を回動可能に支持するドア下部ヒンジであって、
上記ドア枠に固定される基底面、および、上記基底面から上方に離間した位置に設けられた摺動面を有し、上記摺動面に貫通穴を有して成るドア枠側ヒンジ部材と、
上記ドア板に取り付けられる取付部、および、上記取付部の基端面から下方に突出した中空の回転軸を有し、上記回転軸が上記貫通穴に挿通され、上記基端面を上記摺動面に摺動させながら上記枠側ヒンジ部材に対して回動するドア板側ヒンジ部材とを備えた
ことを特徴とするドア下部ヒンジ。
【0057】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 スイングドア
11 ドア板
12 上部ヒンジ
13 下部ヒンジ
13a ドア枠側ヒンジ部材
13b ドア板側ヒンジ部材
14 表示モニタ
21 収容空間
23 押さえ固定具
26 緩衝材
41 スリット
51 基底面
52 摺動面
53 貫通穴
55 取付部
56 基端面
57 回転軸