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特開2023-1840選択的脳冷却制御支援機能付き美容用運動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001840
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】選択的脳冷却制御支援機能付き美容用運動装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 22/02 20060101AFI20221226BHJP
   A63B 22/06 20060101ALI20221226BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
A63B22/02
A63B22/06 J
A63B23/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021124825
(22)【出願日】2021-06-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000194413
【氏名又は名称】菅野 康幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、選択的脳冷却を抑制して顔面での発汗を促進する機能と選択的脳冷却を促進して運動による身体的負担を軽減する機能を併せ持つことによって、顔面の発汗が生じ易く運動を継続し易い美容用運動装置の開発を課題とするものである。
【解決手段】本発明は、運動強度調節機能を有したトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターであって運動者の頭部を冷却するための送風装置が設置されている脚部運動装置に、運動者の顔面を加温するためのヒーターを設置して、送風による頭部の冷却と熱線放射による顔面の加温の、運動者による任意の制御調節を可能とすることによって、脚部運動装置に選択的脳冷却の制御を任意に支援する機能を備えることを手段とするものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動強度調節機能を有しテーブル(1)の有るハンドル部(2)を備えたトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターで成る脚部運動装置と、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)と電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したフアン用モーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)で成る頭部冷却用送風装置を主要構成要素として、
送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る送風機を、脚部運動装置の前方にて、送風機の送風方向を脚部運動装置の後方に向けて、脚部運動装置に設置し、頭部冷却用送風装置のフアン用モーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)をハンドル部のテーブル(1)に設置したことを特徴とする美容用運動装置。
【請求項2】
ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(10)あるいは(30)で成る顔面加温用ヒーターを脚部運動装置に設置し、ヒーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(10)あるいは(30)をハンドル部のテーブル(1)に設置したことを特徴とする請求項1の美容用運動装置。
【請求項3】
一対の電極(11)、(12)で成る皮膚の電気抵抗センサーと電気抵抗測定回路で皮膚電気抵抗測定装置と成し、表面温度センサー(17)と温度測定回路で皮膚表面温度測定装置と成して、皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置とCPUと2基のA/Dコンバーターとデ゛イスプレイを構成要素とし、
電気抵抗測定回路と温度測定回路とCPUと2基のA/Dコンバーターとデ゛イスプレイを脚部運動装置のハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、電気抵抗測定回路と温度測定回路のそれぞれの端末線を束ねて一本のケーブル(13)と成し、その先端に設置したセンサー接続用のソケット(15)と、電気抵抗センサーと表面温度センサーのそれぞれの端末線を束ねて一本としたケーブル(14)の先端に設置したセンサー接続用のソケット(16)とを接続して、出力された皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置のアナログ信号を、それぞれと接続したA/Dコンバーターによってデジタル信号に変換してCPUに送信し、CPUで処理したリアルタイムな皮膚の電気抵抗と皮膚の表面温度データを、時間軸を同じくした一つのグラフ上で連続的にデイスプレイ上に表示することを特徴とする請求項1の美容用運動装置。
【請求項4】
一対の電極(11)、(12)で成る皮膚の電気抵抗センサーと電気抵抗測定回路で皮膚電気抵抗測定装置と成し、表面温度センサー(17)と温度測定回路で皮膚表面温度測定装置と成して、皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置とCPUと2基のA/Dコンバーターとデ゛イスプレイを構成要素とし、
電気抵抗測定回路と温度測定回路とCPUと2基のA/Dコンバーターとデ゛イスプレイを脚部運動装置のハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、電気抵抗測定回路と温度測定回路のそれぞれの端末線を束ねて一本のケーブル(13)と成し、その先端に設置したセンサー接続用のソケット(15)と、電気抵抗センサーと表面温度センサーのそれぞれの端末線を束ねて一本としたケーブル(14)の先端に設置したセンサー接続用のソケット(16)とを接続して、出力された皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置のアナログ信号を、それぞれと接続したA/Dコンバーターによってデジタル信号に変換してCPUに送信し、CPUで処理したリアルタイムな皮膚の電気抵抗と皮膚の表面温度データを、時間軸を同じくした一つのグラフ上で連続的にデイスプレイ上に表示することを特徴とする請求項2の美容用運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容のための快適な運動を提供する美容用運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化による生理的機能の低下と容貌の衰えは誰も避けがたいものであるが、それ故に何時までも美しく健康でいたいという願望は普遍的なものであった。その様な中、生理的機能と美容との関連性が見出され、生理的機能の賦活によって美容効果を求めようとする装置が提案されていた。
例えば、汗と美肌との関連を示唆する生理学的知見や細菌学的知見(非特許文献1、2参照)から、発汗機能を賦活して汗を顎顔面の美容に利用する装置(特許文献1参照)や、腸リンパ流と腹部肥大との関連を示唆する生理学的知見(非特許文献3参照)から、腹式呼吸を利用してリンパ輸送を賦活し、腹部や臀部の肥大化を予防する装置(特許文献2参照)等が提案されていた。
【0003】
健康を目指す生理的機能の賦活は一般的には運動を通じて行われるものが多く、美容においては、体形の改善や基礎代謝量の維持と増大等を目指す手段として運動が用いられてきた。しかし、近年では、美容に関する多くの知見が存在する中で、汗腺細胞の萎縮と皮膚の小皺の存在とが相関を有していることや、汗が美肌菌と称される菌のエサと成る事なども一般に周知されてきたが、汗を伴う運動を美容の手段とする、美容を目的とした運動装置は提供されていなかった。
【0004】
本発明は、運動によって汗を出させ、出る汗を顔面と全身の美容に利用するものであるが、そのためには発汗を伴う強度の運動を継続する必要があり、いくらかの苦しさが伴って快適ではない欠点があった。このため、美容のために運動を行おうとするモチベーションは高くなく、それを維持することも容易ではなかったため、美容のために発汗を伴う運動を実践することは困難であった。
従来では、日常的な運動の目的はもっぱら健康のためとされ、一般的には運動負荷が大きいほどトレーニング効果も大きくなり、苦しさを克服することがトレーニングであるとも考えられていたため、運動効率を向上させる方法以外の方法で、同じ運動負荷ならば身体的負担が楽に感じられることを可能とする運動装置は提供されていなかった。
【0005】
一方、温熱生理学の分野では、高体温時に他の部位とは独立して脳を冷却して、脳温を低く保つ機序である選択的脳冷却(SBC)が、他の動物と同様にヒトでも存在することが確かめられ、その応用が、高温環境下での作業やスポーツ、あるいは医療分野で行われているばかりでなく、暑熱環境下での健康と快適性、あるいはパフオーマンスの向上等においても、応用できることが示されていた。(非特許文献4,5,6参照)
【0006】
本発明は運動の遂行において、ヒトのもつ選択的脳冷却機能の作動環境を人為的に変えることによって、選択的脳冷却の作動を支援して、運動中の快適性とパフオーマンスの向上を図り、美容を目的とする運動を続け易くするものであるが、根拠とする生理学的知見の一部を先に記した参考文献より抜粋(一部改変)して下記に示す。
1.顔面や鼻粘膜から来る静脈血は眼角静脈と眼静脈を経て頭蓋内に送られる。
また、頭皮には導出静脈があり、頭皮側と頭蓋内側を交通している。
2.頭部の皮膚にある汗腺の単位面積あたりの数は他の体部の皮膚より2倍ほど多く、汗に基づく水分蒸発量も頭部で多い。選択的脳冷却機構が有効に作動するためには、導出静脈や眼角静脈を経て頭蓋内に還流する静脈血が、頭部の汗の蒸発と上気道粘膜での水の蒸発により十分冷却される必要がある。
3.高体温時には、それら静脈を経由し頭蓋内に流入する血流量が増加し、それに応じて鼓膜温が食道温よりも低い関係が増強する。
4.自転車漕ぎ運動をしている被験者の顔に送風し続けると、運動による食道温の上昇が大きくても、鼓膜温(脳温)の上昇は軽微で、より強い運動を継続することができる。
5.高体温時に送風その他の方法で頭部を冷やすと、体の他の部の温度が同じ温度であっても「温熱的な心地好さ」が増し、最大仕事量が増え、仕事にともない生じる種々のストレスの兆候が減る。
6.頭部の表面積は全体表面積の8%程度だが、そこに送風した場合の方が、同じ量の風を体表面積の60%に送風した時より温熱ストレスが小さい。
7.頭を冷やす目的のヘルメットを装着した被験者では、運動時の心拍数の上昇が対照の半分であったという報告がある。
8.温暖馴化は、人をくり返し温かい環境に暴露するか、皮膚温あるいは核心部温を上げるかしてえられる。しかし、被験者の顔面に送風し鼓膜温の上昇を抑えておくと、食道温が送風のないときと同じであっても暑熱馴化が起きない。
9.皮膚温はその部位の発汗量に影響する。皮膚の一部だけ温めてやると、その部からは汗が早く出始めるし、また汗の量も多い。
皮膚の一部を温めて約5℃程度上げることで、同部の汗の量が倍増することが報告されていて、皮膚組織の温度が上がることで、Q10効果による化学反応速度の亢進と、発汗神経の興奮による伝達物質の放出量の増大と、それに対する汗分泌細胞の反応が大きくなる相乗的な効果によるものと考えられる。
10.全身の温熱順化をせず、毎日一定な局所に温熱負荷を加えると、一定な局所の汗腺だけが訓練され、他の部位より汗の量が増え、局所的な暑熱順化が可能である。
さらに、暑熱順化は運動による中枢性、末梢性の作用により、早く強く起こすことができる。
11.発汗量の部位差は汗腺の密度とは比例しない。これは個々の汗腺の大きさ、即ち汗の分泌能力による違いである。温熱順化による局所における発汗量の増加は、汗腺の数の増加ではなく、汗腺の能力の増大であり、汗腺のサイズの増大である。
12.頭部での温熱性発汗ではひたいや頸で多く、それ以外の顔面はかなり暑くなってから汗が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2020-186844
【特許文献2】特願2020-107331
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NHK BSプレミアム 2019:美と若さの新常識「汗の老化が美をむしばむ!」5月14日 放送
【非特許文献2】NHK BSプレミアム 2017:美と若さの新常識「発見!美肌菌“自分力”を活かす最新お肌術!」4月13日 放送
【非特許文献3】NHK BSプレミアム 2020:美と若さの新常識「肥満むくみに!新リンパの極意」1月21日 放送
【非特許文献4】永坂鉄夫(2000):ヒトの選択的脳冷却機構とその医学・スポーツ領域への応用 日生気誌,37(1):3-13.
【非特許文献5】永坂鉄夫 小川徳雄 (2006):熱から脳を守るしくみ「マーラー的脳冷却学」 能登印刷出版部
【非特許文献6】Michel Cabanac 著 永坂鉄夫 訳 (1997):Human Selective Brain Cooling 頭を冷やすヒトの知恵 金沢熱中症研究会
【非特許文献7】小川徳雄(1994):新 汗のはなし「汗と暑さの生理学」 アドア出版
【非特許文献8】小川徳雄(1998):汗の常識・非常識 汗をかいても痩せられない! ブルーバックス 講談社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、発汗を伴う強度の運動を継続する際に、運動者の温熱感覚に基づいて運動者自らが頭部への冷却用送風装置を制御調節して、ヒトの持つ選択的脳冷却機能の作動環境を変えることにより、選択的脳冷却の作動を支援し、運動による身体的負担と不快感を軽減することによって、発汗を伴う強度の運動を続け易くして、運動によって生じる発汗作用と汗を、美容に利用することの容易な、美容用運動装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を達成するため、運動強度調節機能を有してテーブル(1)の有るハンドル部(2)を備えたトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターで成る脚部運動装置と、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)と電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したフアン用モーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)で成る頭部冷却用送風装置とを主要構成要素として、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る送風機を脚部運動装置正中前方にて、送風機の送風方向を脚部運動装置の正中後方に向けて脚部運動装置に設置し、頭部冷却用送風装置のフアン用モーター制御回路とその可変抵抗器操作ダイヤル(5)を脚部運動装置のハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、運動者の頭部に向けた送風機の制御調節を、電源スイッチと連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)を操作することにより、運動中の運動者が頭部冷却用送風装置の稼動と停止、出力の調節を任意に行えるようにして、選択的脳冷却機能の作動を人為的に支援し、運動によって生じる高体温時における身体的負担と不快感を減少させる手段とするものである。
【0011】
また、上記装置に、ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路とその可変抵抗器操作ダイヤル(10)で成る顔面加温用装置を脚部運動装置に設置して、運動者の顔面への加温を可能とし、選択的脳冷却機能の作動を人為的に抑制することによって、運動開始から発汗に至るまでの時間を短縮する他、顔面の汗腺トレーニングを、身体的負担を小さくして効率的に行うことを可能とする手段とするものである。
【0012】
さらに、前記装置、あるいは上記装置に、センサー部を除く皮膚の電気抵抗測定装置と、センサー部を除く皮膚の表面温度測定装置と、CPUと2基のA/Dコンバーターとデイスプレイを、脚部運動装置のハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、それぞれのセンサーとコネクターを用いて接続したそれぞれの測定装置で得られた皮膚の電気抵抗と皮膚温の測定データを、リアルタイムにデイスプレイ上にグラフ表示することを、運動強度の調節や選択的脳冷却機能の作動環境を人為的に変える際に参考とすることができるデータを得る手段とするものである。
【発明の効果】
本発明の効果を以下に記す。
【0013】
選択的脳冷却の実験では、実験者と被験者とが明確に区別されていることから、被験者が自らの頭部の冷却を目的とした風の風速を、被験者の温熱感覚に基づいて被験者自らが制御調節できる実験方法ではなかった。また、運動速度に応じた風速で送風する実験方法があったが、送風速度の制御調節は被験者の温熱感覚に基づくものではなかった。
しかし、一般的には、運動者自身の運動中における温熱感覚は主として脳温を反映していると考えられるので、運動者自身の温熱感覚に基づいて運動者自身が任意に頭部冷却用送風装置の稼動を制御し風速の調節を行うことができる本発明の機能は、頭部への送風によって、頭部、特に顔面の静脈血を冷却し、ヒトの持つ選択的脳冷却機能の作動を人的に支援することを可能とするものであり、運動中の脳を熱から守り、運動中の身体的負担を軽減して運動の心地好い時間を長くすることができる効果がある。
【0014】
頭部への送風を行いながらの運動において、運動停止と同時に頭部への送風を停止することにより、脳温(鼓膜温)が上がることが報告されていて、熱中症の予防には運動後も温熱的に心地好くなるまで送風を続けることが有効であるとされている。従って、頭部冷却用送風装置の制御調節が予め定められたプログラムによる自動的、あるいは他動的ではなく、運動者自身の温熱感覚で運動者自身が頭部冷却用送風装置の稼動と停止を含む風速の制御調節が可能であることは、運動後も温熱的に心地好くなるまで送風機による頭部の冷却を続けることが可能なことから、熱中症を予防し、運動後の安全性と心地好さを高め、疲労の回復を早める効果がある。
【0015】
速度調節の可能な自転車エルゴメーターあるいはトレッドミル等の脚部運動装置を用いて、運動者が任意に運動強度を調整しながら行える足の運動では、脚部の筋肉量が多く筋活動による代謝量が大きいことから、任意に運動負荷を大きくして、無酸素運動による熱産生量を一気に上げて、発汗に必要な皮膚温の上昇と脳温や直腸温等の深部体温の上昇を短時間に生じさせ、その後、運動負荷を小さくして有酸素運動に切り替える運動方法の採用が容易である。このため、室内を加温するための設備の必要性や規模を減らすことができる他、何時でも何処でも美容を目的とした発汗を伴う運動が可能であり、運動を開始してから発汗するまでの時間を短くすることが可能である。
【0016】
運動によって脳温が高くなり温熱的な不快感や苦しさを生じた場合には、運動者自身の判断で任意に頭部冷却用送風装置を制御調節し、頭部への送風速度を大きくすることができる。これによって、頭部からの強制対流による熱放散と、水の蒸発による熱放散が促進され、頭部の静脈血が冷却されることにより、ヒトの持つ選択的脳冷却機能の作動を支援して、脳温を低めることが可能である。これによって、運動による心臓の負担が減少して、運動の苦しさや不快感が減少することから、この様な調節を任意に行うことによって、発汗を伴う有酸素運動の継続時間を延長し、汗の皮膚に及ぼす作用時間を長くすることができる。
【0017】
健康なヒトの「楽である~ややきつい」と自覚される運動強度は、最大酸素摂取量の55%以下であり、心血管系に及ぼす危険性が少なく、送風による頭部の冷却によって身体的負担を減じながら有酸素運動を続けることは安全であり、運動に親しんでこなかった人々が運動を始める場合でも、快適で安全に運動することが可能である。また、全く美容を目的としない人々にも、快適な運動を提供することができる効果がある。
【0018】
発汗を伴う運動を繰り返すことによって全身の皮膚の汗腺をトレーニングすることが可能であり、汗腺細胞のサイズを大きくして、全身の皮膚で小皺の発症を抑制する美容上の効果を期待することができる。
【0019】
運動により全身の末梢循環が促進されて皮膚血流量が上がり、皮膚温を上昇させ代謝量の増大と発汗を生じさせることができる。このため、発汗運動の後は、30分~1時間の十分な時間をおいて温めの安全な入浴を行うことにより、健全な皮膚常在菌叢を維持しながら清潔を保つことが可能である。
皮膚常在菌叢には表皮ブドウ球菌が含まれていて、皮膚の単位面積当たりの表皮ブドウ球菌の数の大きさと瑞々しい肌とは相関を有していることが知られている。
一方、全身における発汗は、汗や皮脂がエサとなる表皮ブドウ球菌への給餌となり、全身の皮膚に生息する表皮ブドウ球菌の数を増やすことができる。
表皮ブドウ球菌は角質層表面と角質層の内部にも生息していることが報告されていて、表皮ブドウ球菌が保湿作用のあるグリセリンを分泌することから、皮膚の表面と内部からも皮膚の保水力を高める生物学的効果を期待することができる。
また、汗には天然保湿因子である乳酸ナトリウムや尿素が含まれていて、皮膚上に留まることにより角質層に浸透して肌の湿度を保つ作用効果がある。
これにより、発汗運動によって、全身の美容マッサージと同様、全身の皮膚における美容上の生理的、生物学的効果を期待することができる。
一方で、発汗を温浴で行わせることが可能であるが、汗の成分を直接的に皮膚に作用させることができない欠点がある他、サウナでは、筋力の維持増強や筋肉の代謝量増大等の、運動によって生じる生理的機能の向上が期待できない欠点がある。
【0020】
顔面加温用装置を美容用運動装置に設置する効果を下記に示す。
【0021】
脚部運動装置に出力の制御調節が可能なヒーターを顔面に向けて設置することにより、顔面を加温して体温調節中枢への末梢の温熱情報の伝達を増大させると共に、選択的脳冷却機能を人為的に抑制して脳温を高めることができる他、皮膚組織局所における直接的な温熱作用により、局所の皮膚血管の拡張と組織の代謝の亢進を生じさせることができる。
運動の開始当初から、ヒーターを用いて顔面を加温することにより、顔面の皮膚温を身体の他の部位よりも高くすることができる。皮膚温が高い部位では低い部位よりも汗が早く出始め、たくさん出ることから、これを繰り返すことによって効率的で効果的な顔面の汗腺トレーニングが可能である。また、発汗させるために運動を手段として用いることから、暑熱順化を早く強く起こすことができる効果がある。さらに、顔面の加温で選択的脳冷却機能の作動が抑制されることから、運動開始後比較的短時間で、あるいは比較的軽い運動負荷で発汗を生じさせることが可能である。
運動と加温によって体が温まり発汗が認められれば、ヒーターによる顔面の加温を停止すると共に、目的が美容であることから、発汗が続く程度に運動強度を任意に小さくすることが可能である他、送風機による頭部への送風を任意に開始して、身体的負担が少なく快適な運動となるよう風速を調節しながら運動を継続することができる。
その後、温熱的な不快感が増大してきた場合には、頭部冷却用送風装置を用いてさらに強力に頭部を冷却することで、選択的脳冷却機能の作動を強く支援し、温熱的不快感と身体的負担を減少させることが可能である。しかし、その効果が生じない場合、あるいは消失する場合には、運動を終了することが適当である。
運動を利用した汗腺トレーニングによって顔面の汗腺の暑熱順化がなされると、顔面での汗の分泌量が増え、汗腺細胞のサイズが増大する。汗腺のサイズの縮小と皮膚の小皺の存在とが相関を有していることから、汗腺細胞のサイズの増大によって顔面の肌に小皺が生じることを抑制する効果を期待することができる。
【0022】
頭部冷却用送風装置はヒトのもつ選択的脳冷却機能の作動環境を人為的に変えることによって選択的脳冷却を促進し、顔面加温用装置はヒトのもつ選択的脳冷却機能の作動環境を人為的に変えることによって選択的脳冷却を抑制する機能を有している。これによって本発明では、ヒトのもつ選択的脳冷却機能を、随意にアクセルあるいはブレーキすることが可能であり、それぞれの装置の制御調節は、運動者の温熱的感覚に基づいて運動者自らが任意に行うことができるため、美容を目的とした発汗を伴う運動を、不快感が少なく身体的負担を減じて安全に効率的に行うことを可能とする効果がある。
【0023】
顔面の加温用ヒーターには、赤外線ランプやブラックランプ等のランプヒーターや、セラミックヒーター等の、熱線放射型ヒーターと、温風ドライヤーのように送風装置に線状発熱体等を設置して加温した空気を送風する強制対流型ヒーターの使用が可能である。
しかしながら装置の調節の目的は、運動者の温熱感覚に基づいて運動者自身が発汗させながら脳温を下げる(不快感を軽減する)ことであり、脳温を下げながら(快適な感覚を維持しながら)発汗させることであるので、顔面の局所的な加温と頭部全体の冷却を同時に行うことができない強制対流型ヒーターを備えた美容用運動装置よりも、セラミックヒーターやランプヒーターの様な熱線放射型ヒーターを備えた美容用運動装置の方が、加温と冷却を同時に適用して別々に制御調節が可能なことから、選択的脳冷却機能の人為的な促進と抑制をより微妙に調節することを可能とする利点がある。
【0024】
美容を目的とする理想的な運動様式の一つは、顔面の発汗量と顔面からの汗の蒸発量がほぼ等しく、発汗しながらも顔面の肌が汗でずぶ濡れにならない状態を保って運動を続けることである。
同様に、温熱的不快感を避けて発汗運動を続けるには、運動者自身の温熱感覚に基づいて選択的脳冷却の人為的調節を行いながら、発汗が生じる脳温の低い温度領域内に脳温を保って、発汗と運動を続けるように調節することである。
また、汗はもともとひたいで多く、頬部はひたいよりも汗が少ないことから、頬部を局所的に加温して同部の汗腺を特に強くトレーニングすることや、口角部やひたい等の個々に皺が多い部位に任意にフオ―カスして、同部の汗腺を局所トレーニングするには、フレキシブルアームに設置した熱線放射型ヒーターの方が適している。
【0025】
前記の通り、顔面における発汗は顔面の皮膚の常在菌で汗や皮脂がエサとなる表皮ブドウ球菌への給餌となり、表皮ブドウ球菌の数を増やすことができる他、表皮ブドウ球菌が角質層表面と角質層の内部にも生息していて、保湿作用のあるグリセリンを分泌することから、顔面の肌の表面と内部からも肌の保水力を高める生物学的効果を期待することができる。
また、汗には天然保湿因子である乳酸ナトリウムや尿素が含まれ、角質層に浸透して顔面の肌の湿度を保つ作用効果がある。
上記の様に顔面の肌の角質層の保湿を生理的、生物学的に行うことができることから、保湿を目的とした化粧品に対するアレルギーを持っていても、美容を目的とした発汗を伴う運動によって安全に美肌を得る作用効果を期待することができる。
【0026】
皮膚の表面の組織である表皮には血管がなく、血液による水や物質の輸送が行われないことから表皮の代謝は極めて低く、皮膚面から失われる水分も表皮の下の真皮層から表皮へしみ出してきたものである。
表皮のもっとも外側は角質層で、水を含まず、表皮の深層の細胞間の隙間に満たされた水分が角質層を通して蒸発する。これが不感蒸散であり、体の部位別では顔や頸が最も多い。角質層への生理的な水の供給は発汗と不感蒸散によるものであり、これらの減少は角質層の乾燥につながり肌荒れの大きな原因の一つであると考えられる。
運動によって生じる熱を放散するために、熱から脳を保護するために、頭部の皮膚血流量が増大して皮膚温が上昇すると共に汗腺への血流量も増大する。それによって真皮層の組織液が血流量の増大に伴って受動的にほぼ一定な量まで増大する。増大した組織液は表皮を通過する水の源となり、不感蒸散する水の源になる。その様な水は運動を止め発汗が停止した後で、表皮の各層を通り角質層表面から蒸発することで、水と組織液成分の表皮内での物質輸送が行われ、表皮のターノバーレイトを向上させる効果を期待することができる。これによって、古い角質層が脱落し新鮮な角質層が出現するサイクルを早める効果を期待することができる。
そして、これを繰り返すことによって、顔面の皮膚の新鮮な角質層による保湿された肌を期待することができる。
【0027】
上記の通り、運動によって角質層への水の供給が汗と不感蒸散によって生理的に促進され、生物学的な保湿も図られることから、肌荒れを予防する効果を期待することができる。しかも、それらの水は生体内に存在している生体内物質であり、本発明を用いた運動によってもたらされる肌の美しさは、生理的、生物学的になされるものであることから、いわゆるスッピン、本物の美しさと健康美を醸し出す効果があると考えることができる。
【0028】
皮膚表面抵抗測定装置を美容用運動装置に備える効果を下記に示す。
【0029】
運動者の脳温に基づく温熱感覚は生体防御システムの警報でもあり得る重要な感覚であるが、運動の長時間の継続によって生じる感覚は、必ずしも温熱感覚だけではなく、肉体的疲労感や精神的な疲労感等を含んだ複合的なものである。そこで、隠された温熱感覚を推察するために温熱感覚の根源である脳温の状況を、それによる発汗機能の発動状態から捉えようとするものであり、発汗によって変化する皮膚表面の電気抵抗を、一対の設置間隔を一定にした皮膚電極を用いる電気抵抗センサーと電気抵抗測定回路で測定することにより、運動中の顔面皮膚の湿り気具合を客観的に、主観よりも早く知ることができ、これを皮膚温と合わせて観察することによって、脳温の定性的な状況をおおよそ推察することが可能である。
皮膚の湿り気具合は、汗が滴り落ちるような無効発汗が生じていない場合において、ほぼ、皮膚表面に発汗された汗の量と皮膚表面から蒸発した汗の量との差し引き結果のリアルタイムな状況を示しているものであるが、発汗が生じていることは脳温が高く、脳の温度を下げようとしている状況であると推察することができる。
皮膚の電気抵抗が大きい場合には結果的に皮膚表面に残る汗の量が少なく、小さい場合にはその逆であるので、皮膚電気抵抗の定量的な観察や変化の方向を知ることは脳温の状況を推察して、運動強度や送風速度等を制御調節する上で参考とすることができる。
【0030】
皮膚表面温度測定装置を美容用運動装置備える効果を下記に示す。
【0031】
皮膚は組織の代謝量が少なく皮膚で産生される熱量が少ないことから、皮膚の表面温度は血液によって皮膚表面に運ばれる熱量と、皮膚表面から、伝導、対流、放射、水の蒸発によって放散される熱量の、差し引き結果で決まり、皮膚真皮層以下の血流状態と皮膚表面での熱の放散状態の複合的な結果を示すものである。そして、発汗が生じていない場合には、皮膚温は皮膚血流量を反映していると考えることができるが、発汗が生じている場合には皮膚血流量が多くても水の蒸発によって皮膚温が下がるので、必ずしも皮膚温と血流量の動態が一致しているものではない。
そこで、皮膚温の変化の要因を理解するには、皮膚の電気抵抗から発汗による皮膚の湿り具合を推察して、皮膚温との相互関係を考察する必要があり、選択的脳冷却機能の作動を支援して、快適で安全に発汗を伴う運動を行うためには、皮膚表面の温度と電気抵抗はそれぞれの装置を調節する上で参考とすることができる生体情報である。
【0032】
CPUとデイスプレイを用いて、皮膚表面の電気抵抗と皮膚温を色別に時間軸を同じくして同一グラフ上でリアルタイム表示する効果を下記に示す。
【0033】
皮膚の電気抵抗や皮膚温のリアルタイムな数字の表示では、経時的な変化を捉えにくいが、グラフ表示では二つのデータの相互関係を見ながら、これまでの経過を含めて瞬時に視認することが容易である。これによって、現状を認識して変化の方向の予測がつき易く、それぞれの装置の制御調節が必要な場合の対応を早く考えることが可能になる。
皮膚の電気抵抗と皮膚温の相互関係が理解し易くなり、選択的脳冷却機能の作動状況を推察することが容易になる。
【0034】
本発明によるその他の効果
【0035】
本発明を用いた運動で暑熱耐性を向上することができることから、夏に向かって早く利用を開始して暑熱耐性を得ることで、熱中症を予防することができる。
【0036】
本発明を用いた運動では美容とダイエットを同時に、紫外線の当たらない室内で、身体的負担を少なくして、マイペースな運動で快適に目指すことができる。
【0037】
本発明による運動では、運動開始当初の脳温が高くない状態から送風機を稼動させる必要がない一方で、運動開始当初に顔面加温用ヒーターを用いることで、身体的負担が少ない状態で早く顔面から発汗させることが可能である。そして、温熱感を有して汗が滲んだ状態でヒーターによる加温を止め、初めて頭部に向けた送風機を稼動させることにより、頭部の水の蒸発が一気に大きくなって頭部の皮膚温が急激に下がり、皮膚の温度受容器が一過性に大きく興奮して中枢に作用することによって、一時的に大きな快感、涼しさを体感することが可能である。また、高体温時の頭部への送風によって運動自体を楽に快適にすることができる効果がある。
【0038】
本発明では運動による循環器系の負担が軽減されて快適性を増すことから、運動を行ってこなかった美容を目的とする人々や、美容を目的とせず健康を目的とする人々にも、有酸素運動を継続することが容易なことから、健康寿命と美肌寿命が延長され、長寿社会に貢献できることを期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】トレッドミルを用いた本発明の請求項1による実施例の形態を示す模式図
図2】トレッドミルと強制対流型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施例の、頭部冷却用送風装置ハウジング内の透視的模式図
図3】トレッドミルと強制対流型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施例の形態を示す模式図
図4】トレッドミルと熱線放射型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施例の形態を示す模式図
図5】トレッドミルのテーブルに皮膚電気抵抗測定回路と皮膚表面温度測定回路と2基のA/DコンバーターとCPUとデ゛イスプレイを備えた本発明の請求項3による実施例の形態を示す模式図
図6】強制対流型ヒーターを設置したトレッドミルのテーブルに皮膚電気抵抗測定回路と皮膚表面温度測定回路と2基のA/DコンバーターとCPUとデ゛イスプレイを備えた本発明の請求項4による実施例の形態を示す模式図
図7】熱線放射型ヒーターを設置したトレッドミルのテーブルに皮膚電気抵抗測定回路と皮膚表面温度測定回路と2基のA/DコンバーターとCPUとデ゛イスプレイを備えた本発明の請求項4による実施例の形態を示す模式図
図8】本発明の請求項3あるいは請求項4による、CPUを用いて皮膚表面温度と皮膚電気抵抗値をデイスプレイ上で表示するシステムの構成要素を示すブロック図
図9】皮膚抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置のそれぞれのセンサーをセンサー装着具によって頭部に装着した状態を示す模式図
図10】デ゛イスプレイ上でのグラフ表示例の模式図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図1図9に基づいて説明する。
【0041】
図1図3図4図5図6図7においては、トレッドミル本体に送風用フアン(3)または(19)と、フアン用モーター(4)または(20)で成る頭部冷却用送風装置の送風機をトレッドミル本体の正中前方にて、送風方向を正中後方に向けて、支柱(8)あるいはフレキシブルアーム(25)を用いて設置したもので、歩行ベルト(7)上で運動する運動者の頭部に向けて送風することができる。
ハンドル部(2)の把握部内側には、トレッドミル本体の電源スイッチ(6)が設置され、ハンドル部(2)のテーブル(1)内にはトレッドミルの制御用電気回路と、頭部冷却用送風装置の電源スイッチと可変抵抗器を搭載した送風機制御回路が収容され、テーブル(1)の表面にはトレッドミルの歩行速度調節ダイヤル(18)と送風機の可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されている。
【0042】
図1においては、請求項1による実施の形態を示すもので、テーブル(1)を有したハンドル部(2)の把握部内側表面にトレッドミル本体の電源スイッチ(6)が、テーブル(1)表面の一端にはトレッドミルモーター制御回路に組み込まれた可変抵抗器の操作ダイヤルが歩行速度調節ダイヤル(18)として設置され、他端には送風機制御回路に搭載された電源スイッチと連なった可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されていて、それぞれのダイヤル操作によって、運動強度(歩行速度)の調節と、送風機のON,OFFと、送風速度を調節することが可能である。
これによって、体温が高くなった時には頭部に送風してヒトの選択的脳冷却機能の作動環境を変え、ヒトの持つ選択的脳冷却を促進的に支援することができる。
【0043】
図2においては、トレッドミルと強制対流型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施の形態の一部を示すもので、ハウジング(24)を有する頭部冷却用送風装置に線状発熱体であるニクロム線ヒーターを頭部の加温用ヒーターとして備えたもので、前方スリットカバー(22)と後方スリットカバー(23)の有るハウジング(24)内での、送風用フアン(19)とフアン用モーター(20)とニクロム線ヒータ(21)で成る主要構成要素とその配置を示す模式図である。
【0044】
図3においては、トレッドミルと強制対流型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施の形態を示す模式図で、頭部冷却用送風装置に空気の加熱用ニクロム線ヒーター(21)を備えることで、強制対流による頭部の加温を可能としたもので、頭部冷却用送風装置と共にトレッドミル本体にフレキシブルアーム(25)を用いて設置され、ニクロム線ヒーター制御回路に搭載された電源スイッチと連なった可変抵抗器操作ダイヤル(10)がニクロム線ヒーター(21)の制御ダイヤルとしてテーブル(1)の表面に設置されている。これにより、ニクロム線ヒーターのON,OFFと加熱強度を調節することができる他、テーブル(1)の表面には送風機制御回路に搭載された電源スイッチと連なった可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されていて、送風機のON、OFFと送風速度の調節が行われる。これによって、風速を調整することの可能な、冷風と温度調節の可能な温風のいずれかを、任意に頭部に送風することができ、運動者における選択的脳冷却の作動環境を人為的に変え、ヒトの持つ選択的脳冷却を促進、あるいは抑制することが可能である。
【0045】
図4においては、トレッドミルと顔面加温用の熱線放射型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施の形態を示すもので、トレッドミル本体のハンドル部(2)のテーブル(1)にフレキシブルアーム(26),(27)を用いて、可視光線を発しないランプヒーターであるブラックランプ(28),(29)が顔面の加温用ヒーターとして左右側に設置され、ランプヒーター制御回路に搭載された電源スイッチと連なっている可変抵抗器操作ダイヤル(30)がランプヒーター制御ダイヤルとして設置されている。これにより、ランプヒーターのON,OFFと放射熱の強度を調節することが可能である。これによって、頭部冷却用送風装置と共に適用し、運動者の選択的脳冷却作動環境を人為的に変え、ヒトの持つ選択的脳冷却を促進、あるいは抑制することが可能である。
【0046】
図5においては、請求項3による実施の形態を示すもので、請求項1による美容用運動装置に、皮膚表面の電気抵抗測定回路と皮膚表面の温度測定回路とCPUと2基のA/Dコンバーターとデイスプレイ(32)をハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、電気抵抗測定回路と温度測定回路のそれぞれのセンサー部への端末線を束ねて、1本のケーブル(13)としてテーブル(1)に設置したパイプ(31)の中を通してパイプの末端から露出させ、露出したケーブルの先端にセンサー接続用のコネクター(15)を付けたもので、それぞれの測定回路はそれぞれのセンサーと、ケーブル(13)、(14)内のそれぞれの端末線とコネクター(15)、(16)によって接続されるものであり、それぞれのセンサー部を除いた模式図である。
コネクター(15)、(16)によって各センサーと接続されたそれぞれの測定回路は、測定されたデータをそれぞれのA/DコンバーターによってCPUに送信し、CPUによる処理を行って皮膚の電気抵抗と皮膚温をグラフとしてデ゛イスプレイ上に表示することが可能となる。
【0047】
図6においては、請求項4による実施の形態を示すもので、請求項2による強制対流型ヒーターを用いた美容用運動装置に、皮膚表面の電気抵抗測定回路と皮膚表面の温度測定回路とCPUと2基のA/Dコンバーターとデイスプレイ(32)をハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、電気抵抗測定回路と温度測定回路のそれぞれのセンサー部への端末線を束ねて、1本のケーブル(13)としてテーブル(1)に設置したパイプ(31)の中を通してパイプの末端から露出させ、露出したケーブルの先端にセンサー接続用のコネクター(15)を付けたもので、それぞれの測定回路はそれぞれのセンサーと、ケーブル(13)、(14)内のそれぞれの端末線とコネクター(15)、(16)によって接続されるものであり、それぞれのセンサー部を除いた模式図である。
コネクター(15)、(16)によって各センサーと接続されたそれぞれの測定回路は、測定されたデータをそれぞれのA/DコンバーターによってCPUに送信し、CPUによる処理を行って皮膚の電気抵抗と皮膚温をグラフとしてデ゛イスプレイ上に表示することが可能となる。
【0048】
図7においては、請求項4による実施の形態を示すもので、請求項2による熱線放射型ヒーターを用いた美容用運動装置に、皮膚表面の電気抵抗測定回路と皮膚表面の温度測定回路とCPUと2基のA/Dコンバーターとデイスプレイ(32)をハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、電気抵抗測定回路と温度測定回路のそれぞれのセンサー部への端末線を束ねて、1本のケーブル(13)としてテーブル(1)に設置したパイプ(31)の中を通してパイプの末端から露出させ、露出したケーブルの先端にセンサー接続用のコネクター(15)を付けたもので、それぞれの測定回路はそれぞれのセンサーと、ケーブル(13)、(14)内のそれぞれの端末線とコネクター(15)、(16)によって接続されるものであり、それぞれのセンサー部を除いた模式図である。
コネクター(15)、(16)によって各センサーと接続されたそれぞれの測定回路は、測定されたデータをそれぞれのA/DコンバーターによってCPUに送信し、CPUによる処理を行って皮膚の電気抵抗と皮膚温をグラフとしてデ゛イスプレイ上に表示することが可能となる。
【0049】
図8においては本発明の請求項3あるいは請求項4による、CPUを用いて皮膚表面温度と皮膚電気抵抗値を時間軸を同じくしたグラフ上でデイスプレイを用いて共に表示するシステムの、構成要素と処理の流れを示すブロック図であり、それぞれのセンサーとそれぞれの測定回路で測定されたデータを、それぞれのA/DコンバーターによってCPUに送信し、CPUによる演算を行ってリアルタイムにデ゛イスプレイ上でグラフ表示するものである。
【0050】
図9においては、各センサーを額の上で板バネ(38)、(39)、(40)を用いて軽く押圧して固定するために装着具(33)を用いている状態を示す模式図で、極薄モールド表面温度センサー(17)の端末線を芯線の太い物に換えた後、各センサーの端末線を束ねて一本のケーブル(14)として装着具の後方から導出し、導出したケーブル(14)の先端に各測定装置と接続するためのコネクター(16)を取り付けたことを示すものである。
これによって、トレッドミル側のケーブル(13)に付いているコネクター(15)とセンサー側のコネクター(16)を接続することにより、皮膚表面温度測定回路と皮膚表面抵抗測定回路の電気回路を成立させ、運動中の測定データをCPUに送ることができる。
【0051】
図10においては、数値や時間的経過等、実際の記録に基づいたものではなく、デ゛イスプレイ上で表示されるデータの定性的な観かたを示すために模式的なグラフを示したものである。図を基にデータの観かたの例を下記に示す。
下線は時間軸であり、縦軸は温度(℃)と逆さ軸の電気抵抗値(Ω)である。
時間軸の下の矢印数字(1)は運動を開始した時点を示し、矢印数字(2)は送風を開始した時点、矢印数字(3)は運動を停止した時点を示す。
運動開始と同時にやや下った皮膚温が上昇を始めるが、皮膚の電気抵抗には変化が認められないことから、皮膚血流量の増大だけが生じていると考えることができる。
その後、皮膚の電気抵抗が下降(逆さ軸のため電気抵抗のグラフ上のラインは上昇する)を始めるが、皮膚温が下降を示していることから、発汗により皮膚表面から水が蒸発して気化熱が奪われ、皮膚の表面温度が低下していると考えることができる。
プラトーの後、さらに皮膚の電気抵抗が下がるが、皮膚温は下がらないことから、顔面が汗で濡れて汗が滴り落ち、無効発汗が生じていると考えられる。
この時点(2)で頭部に送風を始めると、皮膚の電気抵抗が大きくなり、皮膚温が低下することから、汗の蒸発が進みつつ皮膚の温度が低下している状態と考えることができる。
その後、プラトーを経て、さらに皮膚の電気抵抗が大きくなるが、皮膚温は上昇を示していることから、発汗が減少して水の蒸発がなくなってきたと考えることができ、脱水を考える必要がある。
(3)の時点で運動を停止すると、皮膚の電気抵抗は増大を続け、皮膚はさらに乾燥傾向に向かっているが、皮膚温は下降しているので、運動による熱産生が終了して強制対流による冷却効果が続いて、皮膚温が下降していると考えることができる。
グラフ表示によって上記の様な推察が可能となり、運動者の温熱的状況を推察することも可能となることから、温熱感覚が衰え発汗量も減少している高齢者では、安全を守るための有益な情報の表示方法であると考えられる他、CPUを用いていることから、音声による機器の制御調節や、データの解釈と機器の操作の自動化、あるいは運動停止に関する判断の示唆を、AIで行わせる等の発展型の開発も可能である。
【0052】
図1図3図4図5図6図7の装置では、トレッドミル本体の電源スイッチ(6)は、交流電源の通電をON,OFFし、トレッドミルモーターとその制御回路、頭部冷却用送風装置、顔面加温用装置の通電を制御するものであるが、同時に、図5図6図7の装置では、皮膚電気抵抗測定回路と皮膚表面温度測定回路の他、2基のA/Dコンバーター、CPU,デイスプレイへの、ACアダプターを介した直流電源をON,OFF制御するものである。
【0053】
トレッドミルモーター本体とフアン用モーター本体と顔面加温用ヒーター本体を除く他の各電気回路は、トレッドミルのテーブル(1)内に収容され、各端末線は各支柱(8)、(9)あるいは各フレキシブルアーム(25)、(26)、(27)の中を通ってそれぞれの電気回路に接続されている。
【0054】
センサーの装着具(33)は、リング状のエラステックバンド(34)を顎にかけることにより頭部に固定される。(35)は装着具橋体部、(36)は装着具橋脚部、(37)は装着具橋底部、(38)、(39)、(40)は板バネである。
選択的脳冷却を阻害しないためにはヘッドギアータイプの装着具より優れ、頭部の冷却を阻害する恐れが少ない特徴がある。
【符号の説明】
【0055】
1.テーブル
2.ハンドル部
3.送風用フアン
4.フアン用モーター
5.(送風機)可変抵抗器操作ダイヤル
6.トレッドミル本体電源スイッチ
7.歩行ベルト
8.送風機用支柱
9.トレッツドミル本体支柱
10.(ニクロム線ヒーター)可変抵抗器操作ダイヤル
11.皮膚電気抵抗センサー電極
12.皮膚電気抵抗センサー電極
13.ケーブル
14.ケーブル
15.コネクター
16.コネクター
17.表面温度センサー
18.歩行速度調節ダイヤル
19.送風用フアン
20.フアン用モーター
21.ニクロム線ヒーター
22.前方スリットカバー
23.後方スリットカバー
24.(頭部冷却用送風装置本体)ハウジング
25.フレキシブルアーム
26.フレキシブルアーム
27.フレキシブルアーム
28.ランプヒーター(ブラックランプ)
29.ランプヒーター(ブラックランプ)
30.(ランプヒーター)可変抵抗器操作ダイヤル
31.パイプ
32.デイスプレイ
33.センサー装着具
34.エラステイツクバンド
35.装着具橋体部
36.装着具橋脚部
37.装着具橋脚基底部
38.板バネ
39.板バネ
40.板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動強度調節機能を備えテーブル(1)の有るハンドル部(2)を備えたトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターで成る脚部運動装置と、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)と電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載した送風機制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)で成る頭部冷却用送風装置を主要構成要素として、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る送風機を脚部運動装置の前方にて、送風機の送風方向を脚部運動装置の後方に向けて、脚部運動装置に設置し、頭部冷却用送風装置の送風機制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)をハンドル部のテーブル(1)に設置したことを特徴とする美容用運動装置。
【請求項2】
ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(10)あるいは(30)で成る顔面加温用ヒーターを脚部運動装置に設置したことを特徴とする請求項1の美容用運動装置。
【請求項3】
一対の電極(11)、(12)で成る皮膚の電気抵抗センサーと電気抵抗測定回路で皮膚電気抵抗測定装置と成し、表面温度センサー(17)と温度測定回路で皮膚表面温度測定装置と成して、皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置とCPUと2基のA/Dコンバーターとデイスプレイを構成要素とする2種類の測定システムを脚部運動装置に設置して、皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置から出力されたそれぞれのアナログ信号を、それぞれの測定装置と接続したA/Dコンバーターによってデジタル信号に変換してCPUに送信し、CPUで処理したリアルタイムな皮膚の電気抵抗と皮膚の表面温度データを、時間軸を同じくした一つのグラフ上で連続的にデイスプレイ上に表示することを特徴とする請求項1の美容用運動装置。
【請求項4】
一対の電極(11)、(12)で成る皮膚の電気抵抗センサーと電気抵抗測定回路で皮膚電気抵抗測定装置と成し、表面温度センサー(17)と温度測定回路で皮膚表面温度測定装置と成して、皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置とCPUと2基のA/Dコンバーターとデイスプレイを構成要素とする2種類の測定システムを脚部運動装置に設置して、皮膚電気抵抗測定装置と皮膚表面温度測定装置から出力されたそれぞれのアナログ信号を、それぞれの測定装置と接続したA/Dコンバーターによってデジタル信号に変換してCPUに送信し、CPUで処理したリアルタイムな皮膚の電気抵抗と皮膚の表面温度データを、時間軸を同じくした一つのグラフ上で連続的にデイスプレイ上に表示することを特徴とする請求項2の美容用運動装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
健康を目指す生理的機能の賦活は一般的には運動を通じて行われるものが多く、美容においては、体形の改善や基礎代謝量の維持と増大等を目指す手段として運動が用いられてきた。しかし、近年では、美容に関する多くの知見が存在する中で、汗腺細胞の萎縮と皮膚の小皺の存在とが相関を有していることや、汗が美肌菌と称される菌のエサと成る事なども一般に周知されてきたが、汗を伴う運動を美容の手段とする、肌の美容を主目的とした運動装置は提供されていなかった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
本発明は、運動によって汗を出させ、出る汗を顔面と全身の美容に利用するものであるが、そのためには発汗を伴う強度の運動を継続する必要があり、いくらかの苦しさが伴って快適ではない欠点があった。このため、美容のために運動を行おうとするモチベーションは高くなく、それを維持することも容易ではなかったため、美容のために発汗を伴う運動を実践することは困難であった。
従来では、日常的な運動の目的はもっぱら健康のためとされ、一般的には運動負荷が大きいほどトレーニング効果も大きくなり、苦しさを克服することがトレーニングであるとも考えられていたため、運動効率の向上以外の方法で、負荷が等しい運動を楽に感じさせることの可能な運動装置は提供されていなかった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
皮膚は組織の代謝量が少なく皮膚で産生される熱量が少ないことから、皮膚の表面温度は血液によって皮膚表面に運ばれる熱量と、皮膚表面から、伝道、対流、放射、水の蒸発によって放散される熱量の、差し引き結果で決まり、皮膚真皮層以下の血流状態と皮膚表面での熱の放散状態の複合的な結果を示すものである。そして、発汗が生じていない場合には、皮膚温は皮膚血流量を反映していると考えることができるが、発汗が生じている場合には皮膚血流量が多くても水の蒸発によって皮膚温が下がるので、必ずしも皮膚温と皮膚血流量の動態が一致しているものではない。
そこで、皮膚温の変化の要因を理解するには、皮膚の電気抵抗から発汗による皮膚の湿り具合を推察して、皮膚温との相互関係を考察する必要があり、選択的脳冷却機能の作動を支援して、快適で安全に発汗を伴う運動を行うためには、皮膚表面の温度と電気抵抗値は、運動強度や送風速度を調節する上で参考とすることができる生体情報である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
図3においては、トレッドミルと強制対流型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施の形態を示す模式図で、頭部冷却用送風装置に空気の加熱用ニクロム線ヒーター(21)を備えることで、強制対流による頭部の加温を可能としたもので、頭部冷却用送風装置と共にトレッドミル本体にフレキシブルアーム(25)を用いて設置され、電源スイッチと可変抵抗器を搭載したニクロム線ヒーター制御回路の電源スイッチと連なった可変抵抗器操作ダイヤル(10)がテーブル(1)の表面に設置されている。これにより、ニクロム線ヒーターのON,OFFと加熱強度を調節することができる他、テーブル(1)の表面には送風機制御回路に搭載された電源スイッチと連なった可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されていて、送風機のON,OFFと送風速度の調節が行われる。これによって、風速を調節することの可能な、冷風と温度調節の可能な温風のいずれかを、任意に頭部に送風することができ、運動者における選択的脳冷却の作動環境を人為的に変え、ヒトの持つ選択的脳冷却を促進、あるいは抑制することが可能である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
図4においては、トレッドミルと顔面加温用の熱線放射型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施の形態を示すもので、トレッドミル本体のハンドル部(2)のテーブル(1)にフレキシブルアーム(26)、(27)を用いて、可視光線を発しないランプヒーターであるブラックランプ(28)、(29)が顔面の加温用ヒーターとして左右側に設置され、電源スイッチと可変抵抗器を搭載したランプヒーター制御回路の電源スイッチと連なっている可変抵抗器操作ダイヤル(30)がランプヒーター制御ダイヤルとして設置されている。これにより、ランプヒーターのON,OFFと放射熱の強度を調節することが可能である。これによって、頭部冷却用送風装置と共に適用し、運動者の選択的脳冷却作動環境を人為的に変え、ヒトの持つ選択的脳冷却を促進、あるいは抑制することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容のための快適な運動を提供する美容用運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化による生理的機能の低下と容貌の衰えは誰にも避けがたく、ずっと美しく健康でいたいという願望は誰もが抱いていた。その様な中、生理的機能と美容との関連性が見出され、生理的機能の賦活によって美容効果を求めようとする装置が提案されていた。
例えば、汗と美肌との関連を示唆する生理学的知見や細菌学的知見(非特許文献1、2参照)から、発汗機能を賦活して汗を顎顔面の美容に利用する装置(特許文献1参照)や、腸リンパ流と腹部肥大との関連を示唆する生理学的知見(非特許文献3参照)から、腹式呼吸を利用してリンパ輸送を賦活し、腹部や臀部の肥大化を予防する装置(特許文献2参照)等が提案されていた。
【0003】
健康を目指す生理的機能の賦活は一般的には運動を通じて行われるものが多く、美容においても、体形の改善や基礎代謝量の維持と増大等を目指す手段として運動が用いられてきた。一方、近、美容に関する多くの知見が存在する中で、汗腺細胞の萎縮と皮膚の小皺の存在とが相関を有していることや、汗が美肌菌と称される菌(表皮ブドウ球菌)の栄養素と成る事なども一般的に知られるようになったが、汗を伴う運動を美容の手段として活用するために、身体的負担を軽くして運動を楽に感じさせる美容用の運動装置は提供されていなかった。
【0004】
本発明は、運動によって汗を出させ、出る汗を顔面と全身の美容に利用するものであるが、そのためには発汗を伴う強度の運動を継続する必要があり、いくらかの苦しさが伴って快適ではない欠点があった。このため、美容のために運動を行おうとするモチベーションは高くなく、モチベーションを維持することも容易ではなかったため、美容のために発汗を伴う運動を実践することは困難であった。
従来では、日常的な運動の目的はもっぱら健康のためとされ、一般的には運動負荷が大きいほどトレーニング効果も大きくなり、苦しさを克服することがトレーニングであるとも考えられていたため、運動効率を向上させる以外の方法で、同じ物理的運動強度の運動負荷ならば、身体的負担を軽くして運動が楽に感じられることを可能とする運動装置は必要とされていなかった。
【0005】
一方、温熱生理学の分野では、高体温時に他の部位とは独立して脳を冷却して、脳温を低く保つ機能である選択的脳冷却(SBC)が他の動物と同様にヒトでも存在することが確かめられ、その応用が高温環境下での作業やスポーツ、あるいは医療分野で行われているばかりでなく、暑熱環境下での健康と快適性、あるいはパフオーマンスの向上等においても、応用できることが示されていた。(非特許文献4,5,6参照)
【0006】
本発明は発汗を伴う運動の遂行において、頭部への送風によって選択的脳冷却が機能するための作動環境を任意に変え、選択的脳冷却に於ける冷却能力の向上を支援脳温の上昇を抑制して、運動中の身体的負担を軽減し、運動の快適性とパフオーマンスの向上を図って美容を目的とする運動を続け易くする手段を有するものであるが、同時に、顔面の加温によって選択的脳冷却が機能するための作動環境を任意に変え、選択的脳冷却の冷却能力を抑制し、脳温の上昇と顔面皮膚温の上昇によって顔面での発汗を促進する手段を併せて有するものである。その根拠とる生理学的知見の一部を後に示す参考文献より抜粋して下に記す。(一部改変)
1.顔面や鼻粘膜から来る静脈血は眼角静脈と眼静脈を経て頭蓋内に送られる。また、頭皮には導出静脈があり、頭皮側と頭蓋内側を交通している。
2.頭部の皮膚にある汗腺の単位面積あたりの数は他の体部の皮膚より2倍ほど多く、汗に基づく水分蒸発量も頭部で多い。選択的脳冷却機構が有効に作動するためには、導出静脈や眼角静脈を経て頭蓋内に還流する静脈血が、頭部の汗の蒸発と上気道粘膜での水の蒸発により十分冷却される必要がある。
3.高体温時には、それら静脈を経由し頭蓋内に流入する血流量が増加し、それに応じて鼓膜温が食道温よりも低い関係が増強する。
4.自転車漕ぎ運動をしている被験者の顔に送風し続けると、運動による食道温の上昇が大きくても、鼓膜温(脳温)の上昇は軽微で、より強い運動を継続することができる。
5.高体温時に送風その他の方法で頭部を冷やすと、体の他の部の温度が同じ温度であっても「温熱的な心地好さ」が増し、最大仕事量が増え、仕事にともない生じる種々のストレスの兆候が減る。
6.頭部の表面積は全体表面積の8%程度だが、そこに送風した場合の方が、同じ量の風を体表面積の60%に送風した時より温熱ストレスが小さい。
7.頭を冷やす目的のヘルメットを装着した被験者では、運動時の心拍数の上昇が対照の半分であったという報告がある。
8.温暖馴化は、人をくり返し温かい環境に暴露するか、皮膚温あるいは核心部温を上げるかしてえられる。しかし、被験者の顔面に送風し鼓膜温の上昇を抑えておくと、食道温が送風のないときと同じであっても暑熱馴化が起きない。
9.皮膚温はその部位の発汗量に影響する。皮膚の一部だけ温めてやると、その部からは汗が早く出始めるし、また汗の量も多い。
皮膚の一部を温めて約5℃程度上げることで、同部の汗の量が倍増することが報告されていて、皮膚組織の温度が上がることで、Q10効果による化学反応速度の亢進と、発汗神経の興奮による伝達物質の放出量の増大と、それに対する汗分泌細胞の反応が大きくなる相乗的な効果によるものと考えられる。
10.全身の温熱順化をせず、毎日一定な局所に温熱負荷を加えると、一定な局所の汗腺だけが訓練され、他の部位より汗の量が増え、局所的な暑熱順化が可能である。
さらに、暑熱順化は運動による中枢性、末梢性の作用により、早く強く起こすことができる。
11.発汗量の部位差は汗腺の密度とは比例しない。これは個々の汗腺の大きさ、即ち汗の分泌能力による違いである。温熱順化による局所における発汗量の増加は、汗腺の数の増加ではなく、汗腺の能力の増大であり、汗腺のサイズの増大である。
12.頭部での温熱性発汗ではひたいや頸で多く、それ以外の顔面はかなり暑くなってから汗が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2020-186844
【特許文献2】特願2020-107331
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NHK BSプレミアム 2019:美と若さの新常識「汗の老化が美をむしばむ!」5月14日 放送
【非特許文献2】NHK BSプレミアム 2017:美と若さの新常識「発見!美肌菌“自分力”を活かす最新お肌術!」4月13日 放送
【非特許文献3】NHK BSプレミアム 2020:美と若さの新常識「肥満むくみに!新リンパの極意」1月21日 放送
【非特許文献4】永坂鉄夫(2000):ヒトの選択的脳冷却機構とその医学・スポーツ領域への応用 日生気誌,37(1):3-13.
【非特許文献5】永坂鉄夫 小川徳雄 (2006):熱から脳を守るしくみ「マーラー的脳冷却学」 能登印刷出版部
【非特許文献6】Michel Cabanac 著 永坂鉄夫 訳 (1997):Human Selective Brain Cooling 頭を冷やすヒトの知恵 金沢熱中症研究会
【非特許文献7】小川徳雄(1994):新 汗のはなし「汗と暑さの生理学」 アドア出版:76、200-205
【非特許文献8】小川徳雄(1998):汗の常識・非常識 汗をかいても痩せられない! ブルーバックス 講談社:93-94、106-109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、発汗を伴う強度の運動を継続する際に、運動者の温熱感覚に基づいて運動者自らが頭部への冷却用送風装置を任意に制御調節して、選択的脳冷却機能するための作動環境を変えることによって頭部での熱放散を促進し、選択的脳冷却を支援し運動による身体的負担を軽減し不快感を軽減することによって、発汗を伴う強度の運動を続け易くして、汗を美容に利用することの容易な美容用運動装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を達成するため、運動強度調節機能を有してテーブル(1)の有るハンドル部(2)を備えたトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターで成る脚部運動装置と、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)と電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したフアン用モーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)で成る頭部冷却用送風装置とを主要構成要素として、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る送風機を脚部運動装置正中前方にて、送風機の送風方向を脚部運動装置の正中後方に向けて脚部運動装置に設置し、頭部冷却用送風装置のフアン用モーター制御回路とその可変抵抗器操作ダイヤル(5)を脚部運動装置のハンドル部(2)のテーブル(1)に設置して、運動者の頭部に向けた送風機の制御調節を、電源スイッチと連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)を操作することにより、運動中の運動者が頭部冷却用送風装置の稼動と停止、出力の調節を任意に行えるようにして、選択的脳冷却機能するために重要な頭部の放熱環境を変え、脳の冷却能力が大きくなるように支援して、運動によって生じる高体温時における身体的負担と不快感を減少させる手段とするものである。
【0011】
また、上記装置に、ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(10)で成る顔面加温用装置を脚部運動装置に設置して、運動者の顔面への加温を可能とし、それによって顔面の皮膚温を高め選択的脳冷却の能力を人為的に抑制することによって、運動開始から発汗に至るまでの時間を短縮すると共に顔面の汗腺トレーニングを効率的に行う手段とするものである。
【発明の効果】
本発明の効果を以下に記す。
【0012】
選択的脳冷却の実験では、実験者と被験者とが明確に区別されていることから、被験者が自らの頭部の冷却を目的とした風の風速を、被験者の温熱感覚に基づいて被験者自らが任意に制御調節できる実験方法ではなかった。また、運動速度に応じた風速で送風する実験方法でも、送風速度の制御調節は被験者の温熱感覚に基づくものではなかった。
しかし、一般的には、運動者自身の運動中における温熱感覚は主として脳温を反映していると考えら動者自身の温熱感覚に基づいて運動者自身が任意に頭部冷却用送風装置の稼動を制御し風速の調節を行うことができる本発明の機能は、頭部への送風によって頭部の静脈血を冷却し、選択的脳冷却の能力を高めるよう的に支援することを可能とするものであり、運動中の脳を熱から守り、運動中の身体的負担を軽減して運動の心地好い時間を長くすることができる効果がある。
【0013】
実験では、頭部への送風を行いながらの運動において、運動停止と同時に頭部への送風を停止することにより脳温(鼓膜温)が上がることが報告されていて、熱中症の予防には運動後も温熱的に心地好くなるまで送風を続けることが有効であるとされている。従って、頭部冷却用送風装置の制御調節が予め定められたプログラムによる自動的、あるいは他動的ではなく、運動者自身の温熱感覚で運動者自身が頭部冷却用送風装置の稼動と停止を含む風速の制御調節が可能であることは、運動後も温熱的に心地好くなるまで送風機による頭部の冷却を続けることが可能なことから、熱中症を予防し、運動後の安全性と心地好さを高め、疲労の回復を早める効果がある。
【0014】
運動によって脳温が高くなり温熱的な不快感や苦しさを生じた場合には、運動者自身の判断で任意に頭部冷却用送風装置を制御調節し、頭部への送風速度を大きくすることができる。これによって、強制対流による(汗)の蒸発を伴った頭部での熱放散が促進され、頭部の静脈血が効果的に冷却されることから択的脳冷却の能力アップを支援して脳の上昇を抑制あるいは脳温を下げることが可能である。これによって、運動による心臓の負担が減少して、運動の苦しさや不快感が減少することから、この様な調節を任意に行うことによって発汗を伴う有酸素運動の継続時間を延長し、汗の皮膚に及ぼす作用時間を長くすることができる。
【0015】
健康なヒトの「ややきつい」と自覚される運動強度は、最大酸素摂取量の55%付近であり、送風による頭部の冷却によって身体的負担を減らし、楽に有酸素運動を続けさせることが可能である。これによって、運動に親しんでこなかった人々でも、快適で楽に運動を始めることができる効果がある。
【0016】
発汗を伴う運動を繰り返すことによって全身の皮膚の汗腺をトレーニングすることが可能であり、汗腺細胞のサイズを大きくして、全身の皮膚で小皺の発症を抑制する美容上の効果を期待することができる。
【0017】
運動により全身の末梢循環が促進されて皮膚血流量が上がり、皮膚温を上昇させ代謝量の増大と発汗を生じさせることができる。このため、発汗運動の後は、十分な休憩時間をおいて温めの安全な入浴を行うことにより、健全な皮膚常在菌叢を維持しながら清潔を保つことができる。
健全な皮膚常在菌叢には表皮ブドウ球菌が含まれていて、皮膚の単位面積当たりの表皮ブドウ球菌の数の大きさと瑞々しい肌とは相関を有していることが知られている。
一方、全身における発汗は、汗や皮脂が表皮ブドウ球菌が増殖するための栄養素となるので、全身の皮膚に生息する表皮ブドウ球菌の数を増やすことができる。
表皮ブドウ球菌は角質層表面と角質層の内部にも生息していることが報告されていて、表皮ブドウ球菌が保湿作用のあるグリセリンを分泌することから、皮膚の表面と内部からも皮膚の保水力を高める生物学的効果を期待することができる。
また、汗には天然保湿因子である乳酸ナトリウムや尿素が含まれていて、皮膚上に留ま角質層に浸透することによって肌の湿度を保つ作用効果が生じる。
これにより、発汗運動によって全身の皮膚における美容上の生理的、生物学的効果を期待することができる。
一方で、発汗を温浴で行わせることが可能であるが、汗の成分を皮膚上に留めて直接的に作用させることができない欠点がある。
【0018】
顔面加温用装置を美容用運動装置に設置する効果を下記に示す。
【0019】
脚部運動装置に出力の制御調節が可能なヒーターを顔面に向けて設置することにより、顔面を加温して体温調節中枢への末梢の温熱情報の伝達を増大させると共に、選択的脳冷却機能を人為的に阻害して脳温を高めることができることから、発汗を促進する他、皮膚組織局所における直接的な温熱作用によって局所の皮膚血管の拡張と組織の代謝の亢進を生じさせることができる。
運動の開始当初から、ヒーターを用いて顔面を加温することにより、顔面の皮膚温を身体の他の部位よりも高くすることができる。皮膚温が高い部位では低い部位よりも汗が早く出始め、たくさん出ることから、これを繰り返すことによって効率的で効果的な顔面の汗腺トレーニングが可能である。また、発汗させるために運動を用いることから、運動の作用によって暑熱順化を早く強く起こすことができる効果がある。さらに、顔面の加温で顔面皮膚温が上昇し選択的脳冷却抑制されることから、運動開始後比較的短時間で、あるいは比較的軽い運動負荷で発汗を生じさせることが可能である。
運動と顔面の加温によって体が温まり十分な発汗が認められれば、ヒーターによる顔面の加温を停止し、その後に不快感が生ずれば頭部冷却用送風装置による頭部への送風を任意に開始して、身体的負担が少なく快適な運動となるよう風速を調節しながら、発 汗を伴う運動を継続することが容易である。
その後、さらに温熱的な不快感が増大してきた場合には、頭部冷却用送風装置を用いてさらに強力に頭部を冷却することで、選択的脳冷却の能力アップを強く支援し、身体的負担と温熱的不快感を減少させることが可能である。しかし、その効果が生じない場合、あるいは消失する場合には、運動を終了することが適当である。
運動を利用した汗腺トレーニングによって顔面の汗腺の暑熱順化がなされると、顔面での汗の分泌量が増え、汗腺細胞のサイズが増大する。汗腺のサイズの縮小と皮膚の小皺の存在とが相関を有していることから、汗腺細胞のサイズの増大によって顔面の肌に小皺が生じることを抑制する効果を期待することができる。
【0020】
頭部冷却用送風装置は選択的脳冷却機能するための作動環境を、頭部からの熱放散が大きくなるように変え選択的脳冷却を促進する機能を有している。
一方、顔面加温用装置は顔面の加温によって顔面に於ける静脈血の冷却を阻害して、選択的脳冷却を抑制する機能を有している。これによって本発明では、ヒトのもつ選択的脳冷却機能を随意に、促進あるいは抑制することが可能であり、それぞれの装置の制御調節は、運動者の温熱的感覚に基づいて運動者自らが任意に行うことができるため、美容を目的とした発汗を伴う運動を、身体的負担を軽くして不快感を小さくし安全に行うことを可能とする効果がある。
【0021】
発汗を伴う運動を楽に続けるには、運動者の温熱感覚に基づいて運動者自身が発汗させながら脳温を下げる(不快感を軽減する)ことであり、快適な感覚を維持しながら発汗させる(脳温を上げる)ことであるため、顔面の加温用ヒーターには、赤外線ランプやブラックランプ等のランプヒーターや、セラミックヒーター等の、熱線放射型ヒーターの使用が適当である。
これにより、放射熱による加温と送風による冷却を同時に適用してそれぞれ別々に制御調節することも可能なことから、選択的脳冷却促進的あるいは抑制的に微妙に調節すること可能とる利点がある。
【0022】
美容を目的とする運動の運動中の肌感覚に於いて、理想的な運動の行い方の一つは、顔面の発汗量と顔面からの汗の蒸発量がほぼ等しく、発汗しながらも顔面の肌が汗でずぶ濡れにならず、濡れすぎない状態を保って運動続けられることである。
同様に、温熱的不快感を避けて発汗運動を続けるには、運動者自身の温熱感覚に基づいて選択的脳冷却機能の作動環境を人為的調節ながら、発汗が生じる脳温の低い温度領域内に脳温を保って、発汗と運動を続けるように送風速度を調節することである。
また、汗はもともと額で多く、頬部は額よりも汗が少ないことから、頬部を局所的に加温して同部の汗腺を特に強くトレーニングすることや、口角部や額等の個々に皺が多い部位に任意にフオ―カスして、同部の汗腺を局所トレーニングするには、フレキシブルアームに設置した出力調節の可能な熱線放射型ヒーターが便利である。
【0023】
前述の通り、顔面における発汗は顔面の皮膚の常在菌で汗や皮脂を栄養素とする表皮ブドウ球菌への栄養補給となり、表皮ブドウ球菌の数を増やすことができる他、表皮ブドウ球菌が角質層表面と角質層の内部にも生息し、保湿作用のあるグリセリンを分泌することから、顔面の肌の表面と内部から肌の保水力を高める生物学的効果を期待することができる。
また、汗には天然保湿因子である乳酸ナトリウムや尿素が含まれ、角質層に浸透して顔面の肌の湿度を保つ作用効果がある。
上記の様に顔面の肌の角質層の保湿を生理的、生物学的に行うことができることから、保湿を目的とした化粧品に対するアレルギーを持っていても汗に対するアレルギーが無ければ、美容を目的とした発汗を伴う運動によって安全に美肌を得る作用効果を期待することができる。
【0024】
皮膚組織の最表面である表皮には血管がなく、血液による水や物質の輸送が行われないことから表皮の代謝は極めて低く、汗以外に皮膚表面から失われる体の水分、表皮の下に在る真皮層から表皮を通って皮膚表面へしみ出してきたものである。
表皮のもっとも外側は角質層で水を含まず、表皮の深層の細胞間の隙間に満たされた水分が角質層を通して蒸発する。これが不感蒸散であり、体の部位別では顔や頸が最も多い。角質層への生理的な水の供給は角質上部からの汗と角質層下部からの不感蒸散によるものであり、これらの減少は角質層の乾燥につながり肌荒れの大きな要因である。
運動によって生じる熱を放散するために、皮膚血流量が増大して皮膚温が上昇すると共に汗腺への血流量も増大し、真皮層の組織液血流量の増大に伴って受動的にほぼ一定な量まで増大する。増大した組織液は表皮を通過する水の源となり、不感蒸散する水の源になる。その様な水は運動を止め発汗が停止した後で、表皮の各層を通り角質層表面から蒸発することで、水と組織液成分の表皮内での移動が生じ、表皮のターノバーレイトを向上させる効果を期待することができる。これによって、古い角質層が脱落し新鮮な角質層が出現するサイクルを早める効果を期待することができる。
そして、これを繰り返すことによって、顔面の皮膚の新鮮な角質層による保湿された肌を期待することができる。
【0025】
上記の通り、運動によって角質層の上下から汗と不感蒸散によって水が生理的に角質層に供給され、生物学的な保湿も図られることから、肌荒れを予防する効果を期待することができる。しかも、それらの水は生体内に存在している生体内物質であり、本発明を用いる運動によってもたらされる肌の美しさは、生理的、生物学的になされるものであり、自然な美しさと健康美を醸し出す効果を期待することができる。
【0026】
本発明によるその他の効果
【0027】
本発明を用いた運動で汗腺のトレーニングができることから、夏に向かって早く利用を開始して汗腺をトレーニングすることで、暑熱耐性を向上させることができる。
【0028】
本発明を用いた運動では美容とダイエットを同時に、紫外線の当たらない室内で、身体的負担を少なくして、マイペースな運動で快適に目指すことができる。
【0029】
本発明による運動では、運動開始当初の脳温が高くない状態から送風機を稼動させる必要がない一方で、運動開始当初に顔面加温用ヒーターを用いることで、顔面から発汗を早くすることが可能である。そして、温熱感を有して汗が十分に滲んだ状態でヒーターによる加温を止め、頭部に向けた送風を始めることにより、頭部の水の蒸発が一気に大きくなって頭部の皮膚温が急激に下がり、皮膚の温度受容器が一過性に大きく興奮して中枢に作用することによって、一時的に大きな快感、涼しさを体感することが可能である。また、高体温時の頭部への送風によって運動自体を楽に快適にすることができる効果がある。
【0030】
本発明では運動による循環器系の負担が軽減されて快適性を増すことから、運動を行ってこなかった美容を目的とする人々や、美容を目的とせず健康を目的とする一般の人々も、有酸素運動の継続が容易となり、運動を習慣化して健康寿命と美肌寿命延長する効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】トレッドミルを用いた本発明の請求項1による実施例の形態を示す模式図
図2】トレッドミルとランプヒーターを用いた本発明の請求項2による実施例の形態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図1図2に基づいて説明する。
【0033】
図1図2においては、トレッドミル本体に送風用フアン(3)と、フアン用モーター(4)で成る頭部冷却用送風装置の送風機をトレッドミル本体の正中前方にて、送風方向を正中後方に向けて、支柱(8)を用いて設置したもので、歩行ベルト(7)上で運動する運動者の頭部に向けて送風することができる。
ハンドル部(2)の把握部内側には、トレッドミル本体の電源スイッチ(6)が設置され、ハンドル部(2)のテーブル(1)内にはトレッドミルの制御用電気回路と、頭部冷却用送風装置の電源スイッチと可変抵抗器を搭載した送風機制御回路が収容され、テーブル(1)の表面にはトレッドミルの歩行速度調節ダイヤル(11)と、頭部冷却用送風装置の電源スイッチと連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されている。
【0034】
図1においては、請求項1による実施の形態を示すもので、テーブル(1)を有したハンドル部(2)の把握部内側表面にトレッドミル本体の電源スイッチ(6)が、テーブル(1)表面の一端にはトレッドミルモーター制御回路に組み込まれた可変抵抗器の操作ダイヤルが歩行速度調節ダイヤル(11)として設置され、他端には送風機制御回路に搭載された電源スイッチと連なった可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されていて、それぞれのダイヤル操作によって、運動強度(歩行速度)の調節と、送風機のON,OFFと送風速度を調節することが可能である。
これによって、体温が高くなった時には頭部に送風して選択的脳冷却機能の作動環境を熱放散に効果的となるように変え、選択的脳冷却を促進的に支援することができる。
【0035】
においては、トレッドミルと顔面加温用の熱線放射型ヒーターを用いた本発明の請求項2による実施の形態を示すもので、トレッドミル本体のハンドル部(2)のテーブル(1)にフレキシブルアーム(19),(20)を用いて、可視光線を発しないランプヒーターであるブラックランプ(21),(22)が顔面の加温用ヒーターとして左右側に設置され、ランプヒーター制御回路に搭載された電源スイッチと連なっている可変抵抗器操作ダイヤル(23)がランプヒーター制御ダイヤルとして設置されている。これによ、ランプヒーターのON,OFFと放射熱の強度を調節することが可能である。これにより、顔面加温用装置と頭部冷却用送風装置を共に運用し、選択的脳冷却作動環境を任意に変えて、選択的脳冷却を促進あるいは抑制することが可能である。
【0036】
図1、図の装置では、トレッドミル本体の電源スイッチ(6)は、交流電源の通電をON,OFFし、トレッドミルモーターとその制御回路、頭部冷却用送風装置、顔面加温用装置への通電を制御するものである。
【0037】
トレッドミルモーター本体とフアン用モーター本体と顔面加温用ヒーター本体を除く他の各電気回路は、トレッドミルのテーブル(1)内に収容され、各端末線は各支柱(8)、(9)あるいは各フレキシブルアーム(11)、(12)の中を通ってそれぞれの電気回路に接続されている。
【符号の説明】
【0038】
1.テーブル
2.ハンドル部
3.送風用フアン
4.フアン用モーター
5.(送風機)可変抵抗器操作ダイヤル
6.トレッドミル本体電源スイッチ
7.歩行ベルト
8.送風機用支柱
9.トレッツドミル本体支柱
10.歩行速度調節ダイヤル
11.フレキシブルアーム
12.フレキシブルアーム
13.ランプヒーター(ブラックランプ)
14.ランプヒーター(ブラックランプ)
15.(ランプヒーター)可変抵抗器操作ダイヤル
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動強度調節機能を有しテーブル(1)の有るハンドル部(2)を備えたトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターで成る脚部運動装置と、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)と電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したフアン用モーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)で成る頭部冷却用送風装置を主要構成要素とし
送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る頭部冷却用送風装置の送風機を送風方向を運動者の頭部の方向に向けて脚部運動装置に設置し、頭部冷却用送風装置のフアン用モーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)をハンドル部のテーブル(1)に設置した運動装置に於いて、
頭部冷却用送風装置による頭部に向けた送風速度を任意に調節して、頭部に於ける放熱環境を人為的に変え、選択的脳冷却を促進することを特徴とする美容用運動装置。
【請求項2】
熱線放射型ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(15)で成る顔面加温用装置の、熱線放射型ヒーターをフレキシブルアームを用いて脚部運動装置に設置し、ヒーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(15)をハンドル部のテーブル(1)に設置した美容用運動装置に於いて、
顔面加温用装置による顔面に向けた熱線放射強度を任意に調節して、顔面に於ける放熱環境を人為的に変え、選択的脳冷却を抑制することを特徴とする請求項1の美容用運動装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動強度調節機能を有しテーブル(1)の有るハンドル部(2)を備えたトレッドミルあるいは自転車エルゴメーターである脚部運動装置と、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)と電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したフアン用モーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)で成る頭部冷却用送風装置を主要構成要素とし、送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る頭部冷却用送風装置の送風機を、送風方向を運動者の頭部の方向に向けて脚部運動装置に設置し、頭部冷却用送風装置のフアン用モーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(5)をハンドル部のテーブル(1)に設置した脚部運動装置に於いて、熱線放射型ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(15)で成る顔面加温用装置の熱線放射型ヒーターをフレキシブルアームを用いて脚部運動装置に設置し、ヒーター制御回路と可変抵抗器操作ダイヤル(15)をハンドル部のテーブル(1)に設置して、選択的脳冷却を任意に促進的に制御するための支援機能と選択的脳冷却を任意に抑制的に制御するための支援機能を共に有して成る選択的脳冷却制御支援機能を備えたことを特徴とする美容用運動装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、上記装置に、ヒーターと電源スイッチ並びに可変抵抗器を搭載したヒーター制御回路と電源スイッチに連動する可変抵抗器操作ダイヤル(1)で成る顔面加温用装置を脚部運動装置に設置して、運動者の顔面への加温を可能とし、それによって顔面の皮膚温を高め選択的脳冷却の能力を人為的に制御することによって、運動開始から発汗に至るまでの時間を短縮すると共に顔面の汗腺トレーニングを効率的に行う手段とするものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
図1】トレッドミルに送風機とランプヒーターを設置した本発明の実施例の形態を示す模式図
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図1本発明の実施例で、トレッドミル本体に送風用フアン(3)とフアン用モーター(4)で成る頭部冷却用送風装置の送風機をトレッドミル本体の正中前方にて、送風方向を正中後方に向けて、支柱(8)を用いて設置したもので、歩行ベルト(7)上で運動する運動者の頭部に向けて送風することができる。
ハンドル部(2)の把握部内側には、トレッドミル本体の電源スイッチ(6)が設置され、ハンドル部(2)のテーブル(1)内にはトレッドミルの制御用電気回路と、頭部冷却用送風装置の電源スイッチと可変抵抗器を搭載した送風機制御回路が収容され、テーブル(1)の表面にはトレッドミルの歩行速度調節ダイアル(1)と、頭部冷却用送風装置の電源スイッチと連動する可変抵抗器操作ダイヤル(5)が設置されている。
これにより、それぞれのダイヤル操作によって、運動強度(歩行速度)の調節と、送風機のON,OFFと送風速度の調節が可能である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
従って、体温が高くなった時には頭部に送風して、選択的脳冷却機能の作動環境を頭部からの熱放散に効果的となるように変え、選択的脳冷却を促進的に支援することができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
又、本実施例では、トレッドミル本体のハンドル部(2)のテーブル(1)にフレキシブルアーム(1)、(12)を用いて、可視光線を発しないランプヒーターであるブラックランプ(13)、(14)が顔面の加温用ヒーターとして左右側に設置され、ランプヒーター制御回路に搭載された電源スイッチと連なっている可変抵抗器操作ダイヤル(15)がランプヒーター制御ダイヤルとして設置されている。これにより、ランプヒーターのON,OFFと放射熱の強度を調節することが可能である。これによって、顔面加温用装置と頭部冷却用送風装置を共に運用し、選択的脳冷却の作動環境を任意に変えて、選択的脳冷却を促進あるいは抑制することが可能である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
1の装置では、トレッドミル本体の電源スイッチ(6)は、交流電源の通電をON,OFFし、トレッドミルモーターとその制御回路、頭部冷却用送風装置、顔面加温用装置への通電を制御するものである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1