(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184006
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】燃料電池用の冷却液
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04029 20160101AFI20231221BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231221BHJP
H01M 8/04044 20160101ALI20231221BHJP
C09K 5/10 20060101ALI20231221BHJP
C09B 23/06 20060101ALN20231221BHJP
C09B 23/08 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/04 Z
H01M8/04044
C09K5/10 F
C09B23/06
C09B23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097882
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591125289
【氏名又は名称】日本ケミカル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】渡 徹志
(72)【発明者】
【氏名】福市 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡部 雅王
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 涼
(72)【発明者】
【氏名】吉井 揚一郎
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127CC06
(57)【要約】
【課題】冷却液中の染料がイオン交換樹脂に吸着されることで冷却液が脱色するのを抑制することができる燃料電池用の冷却液を提供する。
【解決手段】燃料電池用の冷却液であって、前記冷却液は、基剤と、着色用の染料を含み、前記染料は、シアニン構造を有し、前記シアニン構造は、ベンゼン環とピロリジン環の縮合環を2つ有する閉鎖シアニン構造であり、前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子はポリメチン鎖によって繋がれた構造を有し、前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の直線状の側鎖を含むことを特徴とする冷却液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の冷却液であって、
前記冷却液は、基剤と、着色用の染料を含み、
前記染料は、シアニン構造を有し、
前記シアニン構造は、ベンゼン環とピロリジン環の縮合環を2つ有する閉鎖シアニン構造であり、
前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子はポリメチン鎖によって繋がれた構造を有し、
前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の直線状の側鎖を含むことを特徴とする冷却液。
【請求項2】
前記染料は、前記基剤に溶解し、且つ、イオン交換樹脂を通過する、請求項1に記載の冷却液。
【請求項3】
前記染料は、-40~110℃において前記イオン交換樹脂を通過し、且つ、色相が変化しないか、若しくは、変化し難い、請求項1に記載の冷却液。
【請求項4】
前記染料は、硫黄元素を含まない、請求項1に記載の冷却液。
【請求項5】
前記ポリメチン鎖の炭素数が3以上である、請求項1に記載の冷却液。
【請求項6】
前記ポリメチン鎖の炭素数が3の場合は、前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6以上の直線状の側鎖を含む、請求項5に記載の冷却液。
【請求項7】
前記ポリメチン鎖の炭素数が5の場合は、前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子は、3以上のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを含む側鎖を有する、請求項5に記載の冷却液。
【請求項8】
前記縮合環の3位の炭素原子と結合している2つの水素原子はそれぞれメチル基に置換されている、請求項1に記載の冷却液。
【請求項9】
前記染料の含有割合が0.00001~0.1重量%である、請求項1に記載の冷却液。
【請求項10】
前記基剤が水、グリコール類、アルコール類及びグリコールエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の冷却液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池用の冷却液に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用の冷却液に関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、低導電性に優れるとともに、識別性を有する燃料電池スタック用冷却液組成物、または燃料電池の冷却経路に陽イオンまたは陰イオン交換体が配されている場合でも、低導電性に優れるとともに、識別性を有する燃料電池スタック用冷却液組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池車の冷却液系統には低電気伝導性が求められる。本要求性能を担保するためにイオン交換樹脂を経路内に投入するため、冷却液中の染料がイオン交換樹脂に吸着されることで脱色してしまう恐れがある。染料は冷却液の溶媒であるエチレングリコールや水に溶解しないといけないが、溶解するものは、イオン性を有することが要件になるため、イオン性物質を吸着するイオン交換樹脂に吸着されてしまう恐れがある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、冷却液中の染料がイオン交換樹脂に吸着されることで冷却液が脱色するのを抑制することができる燃料電池用の冷却液を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の冷却液は、燃料電池用の冷却液であって、
前記冷却液は、基剤と、着色用の染料を含み、
前記染料は、シアニン構造を有し、
前記シアニン構造は、ベンゼン環とピロリジン環の縮合環を2つ有する閉鎖シアニン構造であり、
前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子はポリメチン鎖によって繋がれた構造を有し、
前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の直線状の側鎖を含むことを特徴とする。
【0007】
本開示の冷却液においては、前記染料は、前記基剤に溶解し、且つ、イオン交換樹脂を通過してもよい。
【0008】
本開示の冷却液においては、前記染料は、-40~110℃において前記イオン交換樹脂を通過し、且つ、色相が変化しないか、若しくは、変化し難くてもよい。
【0009】
本開示の冷却液においては、前記染料は、硫黄元素を含まなくてもよい。
【0010】
本開示の冷却液においては、前記ポリメチン鎖の炭素数が3以上であってもよい。
【0011】
本開示の冷却液においては、前記ポリメチン鎖の炭素数が3の場合は、前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6以上の直線状の側鎖を含んでいてもよい。
【0012】
本開示の冷却液においては、前記ポリメチン鎖の炭素数が5の場合は、前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子は、3以上のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを含む側鎖を有していてもよい。
【0013】
本開示の冷却液においては、前記縮合環の3位の炭素原子と結合している2つの水素原子はそれぞれメチル基に置換されていてもよい。
【0014】
本開示の冷却液においては、前記染料の含有割合が0.00001~0.1重量%であってもよい。
【0015】
本開示の冷却液においては、前記基剤が水、グリコール類、アルコール類及びグリコールエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、冷却液中の染料がイオン交換樹脂に吸着されることで冷却液が脱色することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない燃料電池用の冷却液等の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、数値範囲における上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0018】
本開示の冷却液は、燃料電池用の冷却液であって、
前記冷却液は、基剤と、着色用の染料を含み、
前記染料は、シアニン構造を有し、
前記シアニン構造は、ベンゼン環とピロリジン環の縮合環を2つ有する閉鎖シアニン構造であり、
前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子はポリメチン鎖によって繋がれた構造を有し、
前記閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の直線状の側鎖を含むことを特徴とする。
【0019】
燃料電池車においては、稼働温度を適正範囲に保つ目的で冷却液が使用されている。この冷却液には、電池短絡防止の観点から冷却液自身の電気伝導性を低く保つことが要求されている(具体的には、25℃において10μS/cm以下)。そこで長期的な低電気伝導性を担保するため冷却液経路内にイオン交換樹脂部品が設けられている。また、冷却液には誤飲・誤廃棄・誤注入などの観点から着色されている必要がある。イオン交換樹脂により従来の冷却液用の染料は吸着されてしまうため、イオン交換樹脂に吸着されない染料が求められている。
本開示においては、冷却液の基剤(溶媒)に溶け、着色でき、更にイオン交換樹脂に吸着されにくい着色染料を提供する。
【0020】
染料は、シアニン構造を有する。
シアニン構造は、ベンゼン環とピロリジン環の縮合環を2つ有する閉鎖シアニン構造である。
閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子はポリメチン鎖によって繋がれた構造を有する。
閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の直線状の側鎖を含む。当該側鎖を有することにより、イオン交換樹脂に吸着されにくくなり、冷却液の脱色を抑制することができる。
【0021】
ベンゼン環とピロリジン環の縮合環の3位の炭素原子と結合している2つの水素原子はそれぞれメチル基に置換されていてもよい。
【0022】
染料は、硫黄元素を含まなくてもよい。
染料は、基剤に溶解できるものであり、且つ、イオン交換樹脂を通過できるものであってもよい。イオン交換樹脂の種類は、例えば陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂等であってもよい。
染料は、-40~110℃においてイオン交換樹脂を通過し、且つ、色相が変化しないか、若しくは、変化し難くいものであってもよい。これにより、燃料電池の使用環境において、安定した着色による識別性が確保できる。
【0023】
染料は、ポリメチン鎖の炭素数が3以上であってもよく、7以下であってもよく、5以下であってもよい。ポリメチン鎖の炭素数は、3の場合、染料の色は赤色であり、ポリメチン鎖の炭素数が3より大きくなると染料の色は青色に近づいていく。
染料は、ポリメチン鎖の炭素数が3の場合は、閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方は、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6以上の直線状の側鎖を含んでいてもよい。
染料は、ポリメチン鎖の炭素数が5の場合は、閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子は、少なくとも2以上のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを含む側鎖を有していてもよく、3以上のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを含む側鎖を有していてもよい。側鎖を構成するポリエチレンオキサイドは、少なくとも2以上のエチレンオキサイドが結合したものであればよく、3以上のエチレンオキサイドが結合したものであってもよく、4以上のエチレンオキサイドが結合したものであってもよく、9以下のエチレンオキサイドが結合したものであってもよく、8以下のエチレンオキサイドが結合したものであってもよく、7以下のエチレンオキサイドが結合したものであってもよい。
染料は、2本の側鎖のポリエチレンオキサイドを構成するエチレンオキサイドの数の差が2以下であり、且つ、片方の側鎖の末端にのみ官能基を有していてもよい。2本の側鎖のポリエチレンオキサイドを構成するエチレンオキサイドの数の差は、1以下であってもよく、0であってもよい。
【0024】
官能基としては、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい複素環基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム、アルケニル基、メチン基、プロパルギル基、並びに、エーテル基等が挙げられる。
窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい複素環基は、5員環であってもよく、ピロリジン環であってもよく、ピロリジン環の2位と5位の炭素原子に結合する2つの水素原子は酸素原子で置換されていてもよく、コハク酸イミド(スクシンイミド)基であってもよく、コハク酸イミドエステル(スクシネートエステル)基であってもよい。
【0025】
染料は、例えば、下記一般式(1)で表される化合物であってもよい。下記一般式(1)で表される化合物は基剤中では、閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の少なくとも一方の窒素原子の1つの電子が抜けたカチオンの状態であってもよい。
【0026】
【0027】
上記一般式(1)においてR1は、水素原子、メチル基、又は、メチン基、プロパルギル基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム、アルケニル基、並びに、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい複素環基からなる群より選ばれる1つの置換基を有していてもよく、且つ、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の炭化水素基であり、
R2は、メチン基、プロパルギル基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム、アルケニル基、並びに、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい複素環基からなる群より選ばれる1つの置換基を有していてもよく、且つ、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数5以上の炭化水素基である。
R3は、炭素数3~7のポリメチン鎖である。
窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい複素環基としては、5員環であってもよく、ピロリジン環であってもよく、ピロリジン環の2位と5位の炭素原子に結合する2つの水素原子は酸素原子で置換されていてもよく、コハク酸イミド(スクシンイミド)基、コハク酸イミドエステル(スクシネートエステル)基等であってもよい。
【0028】
染料は、ポリメチン鎖の炭素数が3であり、閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子の内の一方の窒素原子に、窒素原子及び酸素原子の内の少なくとも一方のヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6以上の直線状の側鎖を有する化合物であってもよく、例えば、下記構造式(A)~(C)で表される化合物等であってもよい。
本開示においては、構造式(A)で表される化合物を「Cy3 amine」と称する。
本開示においては、構造式(B)で表される化合物を「Cy3 carboxylic acid」と称する。
本開示においては、構造式(C)で表される化合物を「Cy3 NHS ester」と称する。NHSは、N-ヒドロキシコハク酸イミド(N-Hydroxysuccinimide)を意味する。
なお、これらの化合物中の陰イオンは、Cl-、BF4
-に限定されず、基剤中で陰イオンと成り得るものであればいずれも採用可能である。したがって、染料は、例えばフッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、及び、ヨウ化物塩などのハロゲン化物塩であってもよい。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
染料は、ポリメチン鎖の炭素数が5であり、閉鎖シアニン構造を構成する2つの窒素原子が少なくとも2以上のエチレンオキサイド、特に3以上のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを含む側鎖を有し、且つ、片方の側鎖の末端にのみ官能基を有する化合物であってもよく、さらに2本の側鎖のポリエチレンオキサイドを構成するエチレンオキサイドの数の差が2以下である化合物であってもよく、例えば、下記構造式(D)~(F)で表される化合物等であってもよい。
本開示においては、構造式(D)で表される化合物を「N-(m-PEG9)-N-(propargyl-PEG9)-Cy5」と称する。PEGは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)を意味する。本開示においては、ポリエチレングリコールとポリエチレンオキサイドは同義である。構造式(D)においては、末端にプロパルギル基を有する側鎖が9個のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを有するが、その他、構造式(D’)として、末端にプロパルギル基を有する側鎖が8個のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを有する化合物「N-(m-PEG9)-N-(propargyl-PEG8)-Cy5」、及び、構造式(D’’)として、末端にプロパルギル基を有する側鎖が7個のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを有する化合物「N-(m-PEG9)-N-(propargyl-PEG7)-Cy5」等が挙げられる。
本開示においては、構造式(E)で表される化合物を「N-(m-PEG4)-N’-(PEG4-acid)-Cy5」と称する。
本開示においては、構造式(F)で表される化合物を「N-(m-PEG4)-N’-(PEG4-NHS ester)-Cy5」と称する。構造式(F)においては、末端にN-ヒドロキシコハク酸イミドのエステルであるスクシネートエステル(NHS ester)を有する側鎖が4個のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを有するが、その他、構造式(F’)として、末端にスクシネートエステル(NHS ester)を有する側鎖が2個のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを有する化合物「N-(m-PEG4)-N’-(PEG2-NHS ester)-Cy5」、及び、構造式(F’’)として、末端にスクシネートエステル(NHS ester)を有する側鎖が3個のエチレンオキサイドが結合した直線状のポリエチレンオキサイドを有する化合物「N-(m-PEG4)-N’-(PEG3-NHS ester)-Cy5」等が挙げられる。
なお、これらの化合物中の陰イオンは、Cl-に限定されず、基剤中で陰イオンと成り得るものであればいずれも採用可能である。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
本開示の冷却液においては、染料の含有割合が0.00001~0.1重量%であってもよい。染料の含有量が0.00001重量%よりも少ない場合、識別し得る程度の発色がなく、0.1重量%よりも多い場合には、0.1重量%を越えた分だけの効果はなく不経済となる。
【0037】
基剤(溶媒)は、水、グリコール類、アルコール類及びグリコールエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0038】
グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコールの中から選ばれる1種若しくは2種以上からなるものを挙げることができる。
【0039】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールの中から選ばれる1種若しくは2種以上からなるものを挙げることができる。
【0040】
グリコールエーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルの中から選ばれる1種若しくは2種以上からなるものを挙げることができる。
【実施例0041】
<着色性評価>
エチレングリコール100gに対し染料として上記構造式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)で表される化合物をそれぞれ実施例1~6として1mg溶解させた。得られた溶液55gと超純水45gを混ぜた(約50vol%溶液)。その後イオン交換樹脂(SMT-1200)を4g投入した。本溶液を密閉した状態で70℃の恒温槽に7日間放置し着色性を評価した。
上記の結果、実施例1~6の染料として用いた上記構造式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)で表される化合物については、着色性が維持され、冷却液の基剤に溶け、着色でき、更にイオン交換樹脂に吸着されないことが実証された。