IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 日立パワーデバイスの特許一覧

特開2023-184011半導体装置の製造方法および半導体装置
<>
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図2
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図3
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図4
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図5
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図6
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図7
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図8
  • 特開-半導体装置の製造方法および半導体装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184011
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20231221BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L29/06 301G
H01L29/91 D
H01L29/91 F
H01L29/78 652P
H01L29/78 655F
H01L29/78 652T
H01L29/06 301V
H01L29/91 B
H01L29/78 658A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097892
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 秀勝
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(57)【要約】
【課題】
ターミネーション領域の幅の縮小と、ターミネーション領域における電界集中の抑制を実現することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
アクティブ領域の周辺において、第1導電型を有する第1半導体領域の表面に、第2導電型を有する複数のウェル領域である第2半導体領域が形成されたターミネーション領域を有する半導体装置の製造方法において、
第2半導体領域を形成するためのマスクとして、最外周の基準窓からの距離をxとしたときに、距離xの位置における注入窓とその一つアクティブ領域側の注入窓との間隔S(x)が、
S(x)=Smax-(Smax-Smin)・(x/XN)1/2
で規定される値に略等しいマスクを用いて、第2導電型の不純物を注入して第2半導体領域を形成することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ領域の周辺において、第1導電型を有する第1半導体領域の表面に、第2導電型を有する複数のウェル領域である第2半導体領域が形成されたターミネーション領域を有する半導体装置の製造方法において、
前記第2半導体領域を形成するためのマスクであって、熱平衡状態において前記第1半導体領域に拡がる空乏層が前記アクティブ領域と連続する前記第2半導体領域のうち前記アクティブ領域から最も離れた位置に形成された第2半導体領域に対応する注入窓を基準窓とし、前記基準窓のアクティブ領域側の位置をX0とし、前記アクティブ領域に隣接する注入窓のアクティブ領域側の位置と前記X0との間の距離をXNとし、前記基準窓とその一つアクティブ領域側の注入窓との間隔をSmaxとし、前記アクティブ領域の端部と前記アクティブ領域に隣接する注入窓との間隔をSminとし、前記X0からの距離をxとしたときに、距離xの位置における注入窓とその一つアクティブ領域側の注入窓との間隔S(x)が、
S(x)=Smax-(Smax-Smin)・(x/XN)1/2
で規定される値に略等しいマスクを用いて、前記第2導電型の不純物を注入して前記第2半導体領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記マスクは、前記距離xの位置における注入窓の幅W(x)が、前記アクティブ領域から離れるに従って減少していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記マスクは、前記距離xの位置における注入窓の幅W(x)が、前記アクティブ領域から離れるに従って線形に減少していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記マスクは、前記距離xの位置における注入窓の幅W(x)が、前記アクティブ領域から離れるに従って線形に減少するとともに、前記アクティブ領域に近い側における減少の傾きが前記アクティブ領域から遠い側における減少の傾きよりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記マスクは、前記距離XNの位置における注入窓の幅をWmaxとし、前記基準窓の注入窓の幅をWminとしたときに、前記距離xの位置における注入窓の幅をW(x)が、
W(x)=Wmax-(Wmax-Wmin)・(1-x/XN)1/2
で規定される値に略等しいマスクであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記マスクを用いて前記第2導電型の不純物を注入する際に、前記アクティブ領域の前記第2半導体領域におけるドーズ量と、前記ターミネーション領域の前記第2半導体領域におけるドーズ量とが略等しいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記マスクを用いて前記第2導電型の不純物を注入する際に、前記ターミネーション領域において、前記アクティブ領域に近い側における前記第2半導体領域のドーズ量が、前記アクティブ領域から遠い側における前記第2半導体領域のドーズ量よりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
アクティブ領域と、前記アクティブ領域の周辺に形成されたターミネーション領域とを有する半導体装置において、
請求項1から7の何れかに記載の半導体装置の製造方法を用いて形成された前記第2半導体領域を前記ターミネーション領域に有することを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第2半導体領域のうち、前記アクティブ領域に隣接する注入窓によって形成された第2半導体領域から前記基準窓によって形成された第2半導体領域までの領域は、熱平衡状態において、前記第1半導体領域に拡がる前記空乏層が前記アクティブ領域から連続するとともに、各第2半導体領域はほぼ真性領域となっており、電圧が印可されたことによるそれぞれの前記第2半導体領域の空乏化が、前記基準窓によって形成された前記第2半導体領域から始まることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記第2半導体領域のうち、前記アクティブ領域に隣接する注入窓によって形成された第2半導体領域から前記基準窓によって形成された第2半導体領域までの領域は、前記アクティブ領域に近い側では複数の前記第2半導体領域が重なって一つの前記ウェル領域となっており、前記アクティブ領域から遠い側では、前記第2半導体領域が互いに分離した前記ウェル領域となっていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワー半導体デバイス分野では価格競争が激化しており、コスト低減が求められている。コスト低減のためには、ウエハの大口径化と、プロセス温度の低温化と、チップの小型化が必要であり、そのためには、ターミネーション領域の浅接合化と、ターミネーション領域の幅の縮小と、ターミネーション領域における電界集中の抑制の実現が必要となる。
【0003】
ターミネーション領域の構造としては、例えば、特許文献1には、半導体素子の外周部に設けられた終端構造(32)が、半導体基板(30)内に形成されたN型ドリフト領域
(1)と、N型ドリフト領域(1)内の上面部に形成されたP型不純物領域(2)を備え、P型不純物領域(2)は、巨視的に見ると、P型の不純物濃度が終端構造(32)の内周部から外周部へ向けて減少し、P型不純物領域(2)は、微視的に見ると、P型の複数の高濃度領域(2b)およびそれを囲む低濃度領域(2a)から構成されており、低濃度領域(2a)間が離間した部分を有しているものが記載されている(要約、図2)。
【0004】
また、特許文献1には、このようなP型不純物領域(2)を形成するイオン注入で用いる注入マスク(20)の開口率を、終端構造(32)の外側へ向けて減少させることが記載されており(段落0042)、開口率を減少させる関数は、線形関数などが挙げられるが、指数関数など減少率が高いものが望ましく、例えば、巨視的に見て、下に凸となる指数関数や多項式に従って減少する関数を用いると、電界の局所的な集中を緩和することができることが記載されている(段落0043)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/054319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、注入マスク(20)の開口率を減少させる関数として、線形関数、下に凸となる指数関数(a)、多項式に従って減少する関数が記載されているが、本願の発明者によるシミュレーションの結果、ターミネーション領域の幅の縮小と、ターミネーション領域における電界集中の抑制を実現するためのマスクの形状は、特許文献1に記載された関数によって規定された形状ではなく、別の形状が望ましいことを見出した。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ターミネーション領域の幅の縮小と、ターミネーション領域における電界集中の抑制を実現することが可能な半導体装置の製造方法および半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の製造方法は、例えば、アクティブ領域の周辺において、第1導電型を有する第1半導体領域の表面に、第2導電型を有する複数のウェル領域である第2半導体領域が形成されたターミネーション領域を有する半導体装置の製造方法において、前記第2半導体領域を形成するためのマスクであって、熱平衡状態において前記第1半導体領域に拡がる空乏層が前記アクティブ領域と連続する前記第2半導体領域のうち前記アクティブ領域から最も離れた位置に形成された第2半導体領域に対応する注入窓を基準窓とし、前記基準窓のアクティブ領域側の位置をX0とし、前記アクティブ領域に隣接する注入窓のアクティブ領域側の位置と前記X0との間の距離をXNとし、前記基準窓とその一つアクティブ領域側の注入窓との間隔をSmaxとし、前記アクティブ領域の端部と前記アクティブ領域に隣接する注入窓との間隔をSminとし、前記X0からの距離をxとしたときに、距離xの位置における注入窓とその一つアクティブ領域側の注入窓との間隔S(x)が、
S(x)=Smax-(Smax-Smin)・(x/XN)1/2
で規定される値に略等しいマスクを用いて、前記第2導電型の不純物を注入して前記第2半導体領域を形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の半導体装置は、例えば、アクティブ領域と、前記アクティブ領域の周辺に形成されたターミネーション領域とを有する半導体装置において、前記した半導体装置の製造方法を用いて形成された前記第2半導体領域を前記ターミネーション領域に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ターミネーション領域の幅の縮小と、ターミネーション領域における電界集中の抑制を実現することが可能な半導体装置の製造方法および半導体装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の半導体装置の断面図。
図2】実施例1のマスクの形状を説明する平面図。
図3】実施例1のマスクの注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔と注入窓の幅とを説明する図。
図4】実施例1のドーズプロファイルを説明する図。
図5】実施例2のドーズプロファイルを説明する図。
図6】実施例3のマスクの注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔と注入窓の幅とを説明する図。
図7】実施例4のマスクの注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔と注入窓の幅とを説明する図。
図8】本発明の効果を説明する図。
図9】本発明の効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0013】
図1は、実施例1の半導体装置の断面図である。
【0014】
実施例1の半導体装置10は、アクティブ領域11の周辺において、第1導電型(例えばn型)を有する第1半導体領域1の表面に、第2導電型(例えばp型)を有する複数のウェル領域である第2半導体領域2が形成されたターミネーション領域12を有する。ここでは第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明しているが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0015】
アクティブ領域11には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や、ダイオードなどの半導体素子が形成されているが、図示は省略している。半導体装置10が形成される半導体基板としては、SiやSiCなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
アクティブ領域11にも、第1半導体領域1および第2半導体領域2が形成されており、ここではアクティブ領域11の第2半導体領域2を第2半導体領域2aと呼ぶこととする。
【0017】
また、半導体装置10は、第1半導体領域1または第2半導体領域2を覆って形成された酸化膜4と、アクティブ領域11に形成された電極5と、ターミネーション領域に形成され高濃度の第1導電型を有するチャネルストッパ6とを有している。電極5は、例えばIGBTの場合はゲート電極またはエミッタ電極であり、MOSFETの場合はゲート電極またはソース電極であり、ダイオードの場合はアノード電極である。なお、図1では半導体装置10の表面側のみを図示しており、裏面側については図示を省略している。半導体装置10の裏面側には、図示しない電極、例えばIGBTの場合はコレクタ電極、MOSFETの場合はドレイン電極、ダイオードの場合はカソード電極が設けられている。
【0018】
実施例1の半導体装置10は、熱平衡状態において、第1半導体領域1に拡がる空乏層3が前記アクティブ領域11から各第2半導体領域2まで連続するとともに、各第2半導体領域2はほぼ真性領域となっている。そして、電圧が印可されたことによるそれぞれの第2半導体領域2の空乏化(真性領域の縮小)が、外周側(アクティブ領域11から遠い側)の第2半導体領域2から始まることが特徴の1つである。
【0019】
ターミネーション領域12の第2半導体領域2のうち、アクティブ領域11にアクティブ領域11に近い側では複数の第2半導体領域2が重なって一つのウェル領域となっており、アクティブ領域11の第2半導体領域2aとも連続している。ターミネーション領域12の第2半導体領域2のうち、アクティブ領域11から遠い側では、第2半導体領域2が互いに分離したウェル領域となっている。
【0020】
ここで、熱平衡状態において第1半導体領域1に拡がる空乏層3がアクティブ領域11と連続する第2半導体領域2のうちアクティブ領域11から最も離れた位置に形成された第2半導体領域2を、空乏層3が連続する最外周の第2半導体領域2bと呼ぶこととする。
【0021】
図2は、実施例1のマスクの形状を説明する平面図である。図3は、実施例1のマスクの注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔と注入窓の幅とを説明する図である。図3の横軸は位置POSを示し、左側の縦軸はマスク20の注入窓22と一つアクティブ領域11側の注入窓22との間隔S(遮蔽部21の幅に相当)を示し、右側の縦軸は注入窓22の幅Wを示している。
【0022】
図2に示したマスク20を用いて第2導電型の不純物を注入し、第2半導体領域2を形成する。マスク20は、不純物を遮蔽する遮蔽部21と、不純物を通過させる開口部である注入窓22とを有する。なお、注入した不純物の拡散により、第2半導体領域2の大きさは、注入窓22の大きさよりも大きくなっている。
【0023】
ここで、注入窓22のうち、アクティブ領域11の第2半導体領域2aに対応する注入窓22をアクティブ領域注入窓22aと呼ぶこととし、空乏層3が連続する最外周の第2半導体領域2bに対応する注入窓22を基準窓22bと呼ぶこととする。
【0024】
実施例1のマスク20の形状は、基準窓22bのアクティブ領域11側の位置をX0とし、アクティブ領域11に隣接する注入窓22のアクティブ領域11側の位置とX0との間の距離をXNとし、基準窓22bとその一つアクティブ領域11側の注入窓22との間隔をSmaxとし、アクティブ領域11の端部とアクティブ領域11に隣接する注入窓22との間隔をSminとし、X0からの距離をxとしたときに、距離xの位置における注入窓22とその一つアクティブ領域11側の注入窓22との間隔S(x)が、次の式(1)で規定される値に略等しい形状とした。
【0025】
S(x)=Smax-(Smax-Smin)・(x/XN)1/2 ・・・(1)
これによって、ターミネーション領域12におけるターミネーション領域の幅の縮小と、ターミネーション領域における電界集中の抑制を実現することができる。その効果の詳細については後述する。
【0026】
また、実施例1のマスク20の形状は、距離xの位置における注入窓22の幅W(x)が、アクティブ領域11から離れるに従って減少している形状とした。
【0027】
これによって、注入窓22の幅W(x)が距離xの位置によらず一定の場合に比べて第2半導体領域2の幅を小さくできるので、ターミネーション領域12の幅を縮小することができる。
【0028】
実施例1では、図3に示すように、距離xの位置における注入窓の幅W(x)が、アクティブ領域11から離れるに従って線形に減少するようにした。
【0029】
図4は、実施例1のドーズプロファイルを説明する図である。図4の横軸は位置POSを示し、縦軸はドーズ量DOを示している。
【0030】
実施例1では、マスク20を用いて第2導電型の不純物を注入する際に、アクティブ領域11の第2半導体領域2aにおけるドーズ量と、ターミネーション領域12の第2半導体領域2におけるドーズ量とが略等しいドーズプロファイルとした。
【0031】
これによって、1枚のマスク20で第2導電型の不純物を注入して第2半導体領域2を形成することができる。
【0032】
次に、実施例1のマスク20の形状によって、ターミネーション領域12の幅の縮小と、ターミネーション領域12における電界集中の抑制を実現できるという効果について、詳細に説明する。
【0033】
図8は、本発明の効果を説明する図である。図8の横軸は位置POSを示し、縦軸はマスク20の注入窓22と一つアクティブ領域11側の注入窓22との間隔S(遮蔽部21の幅に相当)を示している。
【0034】
X0からの距離xの位置における注入窓22とその一つアクティブ領域11側の注入窓22との間隔S(x)が、次の式(2)で記載できると仮定する。
【0035】
S(x)=Smax-(Smax-Smin)・(x/Lx)α ・・・(2)
α=1/2の場合、式(1)と同じになる。ここで、注入窓22の数を15とし、アクティブ領域11に隣接する注入窓22のアクティブ領域11側の位置とX0との間の距離をLx(α)としたとき、α=1/4、1/2、1.0、2.0のそれぞれについて間隔S(x)とLx(1/4)、Lx(1/2)、Lx(1.0)、Lx(2.0)を計算して図8に示した。
【0036】
その結果、αが小さいほどLx(α)が小さい、すなわち、ターミネーション領域12の幅を小さくできることがわかる。
【0037】
ここで、α=1.0は、間隔S(x)がターミネーション領域12の外周に向かう(xが0に近づく)にしたがって線形で増加するものに相当し、厳密には同じではないが、特許文献1において、注入マスク(20)の開口率が終端構造(32)の外側へ向けて線形関数に従って減少する場合におおむね相当する。また、α=2.0は、特許文献1において、注入マスク(20)の開口率が終端構造(32)の外側へ向けて多項式に従って減少する場合におおむね相当する。しかしながら、α=1.0やα=2.0の場合は、Lx(1.0)やLx(2.0)はLx(1/2)に比べて大きくなってしまい、ターミネーション領域12の幅を小さくするのに適していないことが分かった。
【0038】
また、図8では図示しないが、指数関数の一例として間隔S(x)がeに依存して変化する場合(特許文献1において、注入マスク(20)の開口率が終端構造(32)の外側へ向けて指数関数に従って減少する場合におおむね相当)についても計算してみたが、おおむねα=2.0の場合に近いものであった。したがって、この場合もターミネーション領域12の幅を小さくするのに適していないことが分かった。
【0039】
なお、耐圧について調べてみたところ、α=1/4、1/2、1.0、2.0ではすべて900V程度であり、耐圧750Vのデバイスとして用いるには十分な耐圧であった。
【0040】
図9は、本発明の効果を説明する図である。図9の横軸はαを示し、縦軸は750Vが印加された時のターミネーション領域12における最大電界強度Emax(kV/cm)を示している。
【0041】
図9に示すように、α=1/2の場合、最大電界強度Emaxが最も小さくなることが分かった。最大電界強度Emaxが小さいということは、ターミネーション領域12における電界集中を抑制できるこということである。
【0042】
アバランシェ降伏は、電界によって加速された電子が原子に衝突し、原子から電子を引きはがす現象が雪崩を起こしたように発生する現象である。降伏を生じる電界強度をEc、電界強度をEとしたとき、電流Iは次の式(3)の形で急激に増大する。
【0043】
I=I/[1-(E/Ec)] ・・・(3)
ここで、Iとkは定数である。また、電界強度Eが降伏を生じる電界強度Ecになったときにアバランシェ降伏が生じるため、E<Ecである。
【0044】
式(3)から、電界強度Eが小さいほど式(3)の分母は大きくなり、電流Iが小さくなるため、アバランシェ降伏を生じにくく、電流が小さくなるため、電圧が長時間印加される長期信頼性確保に有利である。そして、図9に示すように、α=1/2の場合、最大電界強度Emaxが最も小さくなるので、電界強度E、電流Iも小さくなり、最も適していることが分かった。
【0045】
図8および図9から、式(2)においてα=1/2の場合、すなわち、式(1)が最も適していることが分かった。
【0046】
以上説明した通り、実施例1によれば、距離xの位置における注入窓22とその一つアクティブ領域11側の注入窓22との間隔S(x)を、式(1)で規定される値に略等しい形状としたマスク20とすることで、ターミネーション領域12の幅の縮小と、ターミネーション領域12における電界集中の抑制を実現することができる。
【実施例0047】
図5は、実施例2のドーズプロファイルを説明する図である。図5は、実施例1の図4に対応する図である。
【0048】
実施例2は、ドーズプロファイルが実施例1とは異なっている。
【0049】
実施例2のドーズプロファイルは、図5に示すように、ターミネーション領域12において、アクティブ領域11に近い側のターミネーション領域12aにおける第2半導体領域2のドーズ量が、アクティブ領域11から遠い側のターミネーション領域12bにおける第2半導体領域2のドーズ量よりも大きいドーズプロファイルとした。
【0050】
これによって、正の界面電荷による耐圧低下を抑制できるという効果がある。
【0051】
ただし、実施例2では、領域によってドーズ量を変化させるために、2枚のマスク20を用いて第2導電型の不純物を注入する必要があり、その点でも実施例1とは異なっている。
【0052】
上記した以外は実施例1と同じであるため、重複する説明は省略する。
【実施例0053】
図6は、実施例3のマスクの注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔と注入窓の幅とを説明する図である。図6は、実施例1の図3に対応する図である。
【0054】
実施例3は、距離xの位置における注入窓22の幅W(x)が、実施例1とは異なっている。
【0055】
実施例3におけるマスク20の形状は、距離xの位置における注入窓22の幅W(x)が、アクティブ領域11から離れるに従って線形に減少するとともに、アクティブ領域11に近い側(x>XN’)における減少の傾きが、アクティブ領域11から遠い側(x≦XN’)における減少の傾きよりも大きい形状とした。なお、図6において、Wmax’は、距離xがXN’の位置における注入窓22の幅W(x)の値である。
【0056】
次に、注入窓22の幅W(x)の減少の傾きを変えた理由について説明する。第2導電型の不純物を注入後の熱処理により、第2半導体領域2の幅が拡大するとともに、ピーク濃度も減少する。このピーク濃度の減少量は、注入窓22の幅W(x)が狭いほど多く、広ければ少ない。これに対し、アクティブ領域11の第2半導体領域2aの注入窓22の幅は、ターミネーション領域12の注入窓の幅W(x)に比べると桁違いに広いので、アクティブ領域11の第2半導体領域2aのピーク濃度の減少はターミネーション12における第2半導体領域2の場合と比べ少なくなる。したがって、アクティブ領域11と、それに隣接した第2半導体領域2とで、ピーク濃度に違いが生じることになる。ここで、大きな濃度差が存在した場合、アクティブ領域11の端に電界集中が発生し、耐圧低下を招く懸念がある。そのため、アクティブ領域11の近傍では、注入窓22の幅W(x)は広い方が好ましい。一方、注入窓22の幅W(x)が広いと、ターミネーション領域12の全体の幅が大きくなってしまうので、可能な限り狭い方がよい。アクティブ領域11の端の電界集中に対する対策としては、アクティブ領域11の近傍だけで充分であるため、図6に示したように、アクティブ領域11に近い側(x>XN’)における減少の傾きを、アクティブ領域11から遠い側(x≦XN’)における減少の傾きよりも大きい形状とすることで、アクティブ領域11の端の電界集中に対する対策をしつつ、図3の場合に比べてターミネーション領域12の全体の幅を狭くできる。これが、注入窓22の幅W(x)の減少の傾きを変えた理由である。
【0057】
また、これによって、1枚のマスク20を用いて実施例1の図4と同じドーズプロファイルで第2導電型の不純物を注入して第2半導体領域2を形成する場合でも、実施例2と同様に正の界面電荷による耐圧低下を抑制できるという効果もある。
【0058】
上記した以外は実施例1と同じであるため、重複する説明は省略する。
【実施例0059】
図7は、実施例4のマスクの注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔と注入窓の幅とを説明する図である。図7は、実施例1の図3に対応する図である。
【0060】
実施例4は、距離xの位置における注入窓22の幅W(x)が、実施例1および実施例3とは異なっている。
【0061】
実施例4におけるマスク20の形状は、距離XNの位置における注入窓22の幅をWmaxとし、基準窓22bの注入窓22の幅をWminとしたときに、距離xの位置における注入窓22の幅をW(x)が、次の式(4)で規定される値に略等しい形状とした。
【0062】
W(x)=Wmax-(Wmax-Wmin)・(1-x/XN)1/2 ・・・(4)
実施例4では、注入窓22の幅W(x)の変化を直線ではなく滑らかにできるとともに、正の界面電荷による耐圧低下を抑制できる。
【0063】
上記した以外は実施例1および実施例3と同じであるため、重複する説明は省略する。
【0064】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 第1半導体領域
2 第2半導体領域
3 空乏層
4 酸化膜
5 電極
6 チャネルストッパ
10 半導体装置
11 アクティブ領域
12、12a、12b ターミネーション領域
20 マスク
21 遮蔽部
22 注入窓
22a アクティブ領域注入窓
22b 基準窓
S 注入窓と一つアクティブ領域側の注入窓との間隔
W 注入窓の幅
x 距離
DO ドーズ量
POS 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9