(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184012
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電磁操作式開閉装置
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20231221BHJP
H01F 7/122 20060101ALI20231221BHJP
H01F 7/11 20060101ALI20231221BHJP
H01H 33/38 20060101ALI20231221BHJP
H01H 51/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01F7/16 D
H01F7/122 C
H01F7/16 E
H01F7/11
H01H33/38 A
H01H51/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097894
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】富安 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】菅井 大介
【テーマコード(参考)】
5E048
5G028
【Fターム(参考)】
5E048AB04
5E048AC05
5E048AD02
5G028AA08
5G028DB06
5G028DB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鉄心の機械的強度の低下を抑制でき、鉄心の大形化を抑制できる電磁操作式開閉装置を提供する。
【解決手段】コイル4と固定鉄心1を固定する固定平板5~7と、コイルを貫通するプランジャ2と、プランジャと接続し、プランジャと共に軸方向に移動する駆動ロッド11と、コイルの上部に配置された永久磁石3と、を備え、コイルを励磁してプランジャを吸引し、プランジャと固定鉄心との対向面に永久磁石が発生する磁束を流してプランジャの吸引状態を保持すると共に、プランジャの吸引時と逆方向の電流をコイルに流してプランジャの吸引状態を釈放する電磁操作式開閉装置であって、周方向に所定間隔を持ち、かつ、相対向して配置されているプランジャと固定鉄心の少なくとも一方の接触部側に、外周側から駆動ロッド側に渡ってスリット1a、2aが設けられる。スリットは、駆動ロッド側が浅く、外周側が深く形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと固定鉄心が固定されている固定平板と、前記コイルを貫通するプランジャと、該プランジャが接続され、該プランジャと共に軸方向に移動する駆動ロッドと、前記コイルの上部に配置された永久磁石と、を備え、
前記コイルを励磁して前記プランジャを吸引し、前記プランジャと前記固定鉄心との対向面に前記永久磁石が発生する磁束を流して前記プランジャの吸引状態を保持すると共に、前記プランジャの吸引時と逆方向の電流を前記コイルに流して前記プランジャの吸引状態を釈放する電磁操作式開閉装置であって、
周方向に所定間隔を持ち、かつ、相対向して配置されている前記プランジャと前記固定鉄心との少なくとも一方の接触部側に、外周側から前記駆動ロッド側に渡ってスリットが設けられ、かつ、前記スリットは、前記駆動ロッド側が浅く、外周側が深く形成されていることを特徴とする電磁操作式開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁操作式開閉装置であって、
前記スリットは、前記プランジャと前記固定鉄心の両方の接触部側に設けられていることを特徴とする電磁操作式開閉装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁操作式開閉装置であって、
前記スリットは、前記プランジャの接触部側にのみ設けられていることを特徴とする電磁操作式開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁操作式開閉装置であって、
前記スリットは、前記固定鉄心の接触部側のみに設けられていることを特徴とする電磁操作式開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁操作式開閉装置に係り、特に、電磁操作装置の電磁力を利用して開閉器の接点を入り切りするものに好適な電磁操作式開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術分野における先行技術文献としては、特許文献1に記載された開閉装置を挙げることができる。
【0003】
この特許文献1には、2つのコイルにパルス電流を供給し、電磁駆動による開閉動作を行う開閉装置において、電磁駆動を高効率、高速に行うと共に、開閉極用の電源の小容量化を実現する開閉装置を提供するために、接離自在な固定電極と可動電極から構成されるスイッチ部と、可動電極に連なる可動軸と可動コイルの間に磁性体を介して固定される可動部と、この可動部に対向して配置された固定コイルの内径側に磁性体を配置した固定部とを備えることにより、各コイル間の発生磁界の増大及び高速な立ち上がりを可能にした開閉装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されている電磁駆動装置においては、コイルに通電した時に鉄心内部に発生する渦電流を抑制するために設けた複数のスリットは、可動鉄心と固定鉄心の接触部から各々の鉄心の接触部とは反対側まで軸方向に貫通した構成、又は内径側からのスリットと外径側のスリットが繋がっている構成になっている。
【0006】
この電磁駆動装置は、コイル通電により可動鉄心が高速動作して固定鉄心に衝突するが、スリットは複数設けているため、鉄心の機械的強度が低下してしまい、衝突による衝撃力で各々の鉄心に設けたスリットが変形し、最終的にスリットが潰れてしまう可能性がある。スリットが潰れてスリット溝がなくなると鉄心内部の渦電流を抑制できず、動作速度が低下する。
【0007】
この対策としては、スリット数を減らして鉄心の機械的強度を確保するか、又はスリットが潰れても溝が接触しないように溝幅を大きくするか、或いは鉄心のサイズを大きくして機械的強度を確保することが考えられるが、いずれの場合も、装置の大形化や動作速度低下となるため、一得一失の関係となる。
【0008】
本発明上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、鉄心の機械的強度の低下を抑制できると共に、鉄心の大形化を抑制できる電磁操作式開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電磁操作式開閉装置は、上記目的を達成するために、コイルと固定鉄心が固定されている固定平板と、前記コイルを貫通するプランジャと、該プランジャが接続され、該プランジャと共に軸方向に移動する駆動ロッドと、前記コイルの上部に配置された永久磁石と、を備え、前記コイルを励磁して前記プランジャを吸引し、前記プランジャと前記固定鉄心との対向面に前記永久磁石が発生する磁束を流して前記プランジャの吸引状態を保持すると共に、前記プランジャの吸引時と逆方向の電流を前記コイルに流して前記プランジャの吸引状態を釈放する電磁操作式開閉装置であって、周方向に所定間隔を持ち、かつ、相対向して配置されている前記プランジャと前記固定鉄心との少なくとも一方の接触部側に、外周側から前記駆動ロッド側に渡ってスリットが設けられ、かつ、前記スリットは、前記駆動ロッド側が浅く、外周側が深く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄心の機械的強度の低下を抑制でき、鉄心の大形化を抑制できる電磁操作式開閉装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の電磁操作式開閉装置の実施例1における操作機構部を側面から見た断面図であり、固定鉄心とプランジャが接触していない状態を示す図である。
【
図2】本発明の電磁操作式開閉装置の実施例1における操作機構部を側面から見た断面図であり、固定鉄心とプランジャが接触している状態を示す図である。
【
図3】本発明の電磁操作式開閉装置の実施例1における操作機構部のプランジャの側面図である。
【
図5】本発明の電磁操作式開閉装置の実施例2における操作機構部を側面から見た断面図であり、固定鉄心とプランジャが接触していない状態を示す図である。
【
図6】本発明の電磁操作式開閉装置の実施例3における操作機構部を側面から見た断面図であり、固定鉄心とプランジャが接触していない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の電磁操作式開閉装置を説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例0013】
【0014】
図1は、実施例1の電磁操作式開閉装置における操作機構部を側面から見た断面図であり、固定鉄心1とプランジャ2が接触していない状態を示し、
図2は、同じく実施例1の電磁操作式開閉装置における操作機構部を側面から見た断面図であり、固定鉄心1とプランジャ2が接触している状態を示し、
図3は、プランジャ2の側面図を、
図4は、プランジャ2の下面図を示している。
【0015】
図1及び
図2に示すように、本実施例の電磁操作式開閉装置における操作機構部は、固定鉄心1と、プランジャ2と、永久磁石3と、コイル4と、第1の固定平板5と、第2の固定平板6と、第3の固定平板7と、可動平板8と、第1の円筒鉄心9と、第2の円筒鉄心10と、これらの軸上に配置される駆動ロッド11とから概略構成されている。
【0016】
第1の円筒鉄心9は第1の固定平板5と第2の固定平板6に挟持され、第2の円筒鉄心10は第2の固定平板6と第3の固定平板7に挟持され、駆動ロッド11にはプランジャ2と可動平板8が接続されている。
【0017】
なお、駆動ロッド11の材質はステンレスなどの非磁性体、永久磁石3はネオジム系磁石など非常に高い磁力を持つ磁石、その他は鉄鋼材などの磁性体で概略構成される。
【0018】
そして、図示しない操作機構部外部の制御基板などから投入指令が入力されると、電磁石のコイル4が通電され、コイル4の周囲には、プランジャ2→固定鉄心1→第3の固定平板7→第2の円筒鉄心10→第2の固定平板6→プランジャ2の経路で磁界が形成され、その磁界により、プランジャ2には下向きの吸引力が働き、プランジャ2が駆動ロッド11と共に固定鉄心1側に移動し、プランジャ2が固定鉄心1に吸着される。
【0019】
このとき、永久磁石3によって形成される磁界の向きもコイル4の励磁に伴って発生する磁界の向きと同じになるため、吸引力が高められた状態でプランジャ2が固定鉄心1側に移動する。プランジャ2と固定鉄心1が接触した状態(
図2の状態)が、開閉器の投入状態となる。
【0020】
次に、図示しない外部の制御基板から開極指令が入力され、制御基板からコイル4に開極指令に伴う信号が入力されると、コイル4には投入時とは逆方向の電流が流れ、コイル4の周囲には投入動作時とは逆方向の磁界が形成される。
【0021】
この場合、コイル4から発生する磁束と永久磁石3から発生する磁束とが互いに打ち消し合い、プランジャ2の軸方向における吸引力は上向きとなり、プランジャ2が固定鉄心1から離間して駆動ロッド11と共に上方向に移動する。このプランジャ2の移動に伴って駆動ロッド11が上方に移動すると、これに連動して開閉器の開極動作が行われ、所定の位置で停止して開極状態となる。
【0022】
ここで、制御基板からの投入指令や開極指令によりコイル4に通電する電流は、時間と共に大きさが変化する過渡電流であり、プランジャ2や固定鉄心1などの磁路が形成される磁性体の部品内部の磁束も時間と共に変化する。
【0023】
この時間と共に変化する磁束により、磁性体内部に渦電流が発生し、渦電流による磁束磁界は磁路を妨げる方向に発生する。渦電流で発生した磁界は、コイル通電による磁界を妨げ、動作を遅くする要因になる。
【0024】
そこで、実施例1では、周方向に所定間隔を持ち、かつ、相対向して配置されているプランジャ2と固定鉄心1との夫々の接触部側に、外周側から駆動ロッド11側に渡ってプランジャ2側のスリット2aと固定鉄心1側のスリット1aが設けられ(
図1及び
図2に示した斜線部がスリット2a及び1aになる)、しかも、このプランジャ2側のスリット2aと固定鉄心1側のスリット1aは、駆動ロッド11側が浅く(斜線部が軸方向に短く)、外周側が深く(斜線部が軸方向に長く)形成されている。
【0025】
このようなスリット1a及び2aを設けた固定鉄心1及びプランジャ2は、開閉器の投入動作で固定鉄心1とプランジャ2に衝突しても、スリット1a及び2aは、駆動ロッド11側が浅く形成されているため、駆動ロッド11側の機械的強度の低下が外周側に比べて抑制できるため、スリット1a及び2aの変形量を抑制することができ、鉄心の大形化を抑制できる。
このようなスリット2aを設けたプランジャ2は、開閉器の投入動作で固定鉄心1に衝突しても、スリット2aは、駆動ロッド11側が浅く形成されているため、駆動ロッド11側の機械的強度の低下が外周側に比べて抑制できるため、スリット2aの変形量を抑制することができ、鉄心の大形化を抑制できる。