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特開2023-184031擁壁ブロック用連結部材及びパネル保持装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184031
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】擁壁ブロック用連結部材及びパネル保持装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
E02D29/02 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097922
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】392035499
【氏名又は名称】石田鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392035204
【氏名又は名称】株式会社高見澤
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】石田 昭三
(72)【発明者】
【氏名】北澤 洋一
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA13
(57)【要約】
【課題】組立式の擁壁ブロックを効率的かつ精度良く組み立てることができる擁壁ブロック用連結部材及びパネル保持装置を提供する。
【解決手段】前面パネルP10と背面パネルP20とを所定間隔S1,S2で連結固定して擁壁ブロックBを形成するための一対の連結部材1,1であって、各パネルP10,P20間において、上部に架設される第1架設本体部11の両端側に上部連結部P16,P26に取り付けられる上部取付部12,22が上側架設距離分の間隔S10で設けられた第1架設部10と、下部に架設される第2架設本体部21の両端側に下部連結部P17,P27に取り付けられる下部取付部13,23が下側架設距離分の間隔S20で設けられた第2架設部20とを有し、第1架設部10と第2架設部20とが架設部固定部材30により一体に固定されて上部取付部12,22及び下部取付部13,23の相対位置が規定されてなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外向きに対向配置された前面パネルと背面パネルとを所定間隔(S1,S2)で連結固定して擁壁ブロックを形成するための一対の連結部材であって、
前記前面パネル及び前記背面パネルは、パネル本体とその内側に突状に設けられた梁部がそれぞれ形成されるとともに、前記梁部には所定位置に上部連結部(P16,P26)と下部連結部(P17,P27)がそれぞれ形成されていて、
前記連結部材は、
前記前面パネルと前記背面パネルとの間において、上部に架設される第1架設本体部(11)の両端側に前記上部連結部に取り付けられる上部取付部(12,13)が前記所定間隔(S1)を規定する上側架設距離分の間隔(S10)で設けられた第1架設部(10)と、下部に架設される第2架設本体部(21)の両端側に前記下部連結部に取り付けられる下部取付部(22,23)が前記所定間隔(S2)を規定する下側架設距離分の間隔(S20)で設けられた第2架設部(20)とを有し、
前記第1架設部と前記第2架設部とが架設部固定部材(30)により一体に固定されて前記上部取付部及び前記下部取付部の相対位置が規定されてなる
ことを特徴とする擁壁ブロック用連結部材。
【請求項2】
前記前面パネル及び前記背面パネルの各連結部がボルト部材用の受穴部からなり、前記第1架設部及び前記第2架設部の各取付部が前記前面パネル及び前記背面パネルの各受穴部とともに前記ボルト部材により固定される取付穴部からなる請求項1に記載の擁壁ブロック用連結部材。
【請求項3】
前記取付穴部の直径が前記受穴部の直径より0.5~5mm大きく形成されている請求項2に記載の擁壁ブロック用連結部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の擁壁ブロック用連結部材を用いて前記擁壁ブロックを形成するためのパネル保持装置であって、
前記パネル保持装置は、
前記前面パネル及び前記背面パネルが載置される基台部と、
前記前面パネルの位置を規定する前面パネル規制部と前記前面パネルを内側への傾斜状態で支持する前側傾斜支持部とを有する前面パネル保持部と、
前記前面パネル規制部から前記所定間隔(S2)に対応する距離で離間した位置に前記背面パネルの位置を規定する背面パネル規制部を有する背面パネル保持部とを備える
ことを特徴とするパネル保持装置。
【請求項5】
前記基台部に、前記前面パネルの梁部である前梁部が載置される前梁部載置部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項6】
前記基台部に、前記背面パネルの梁部である背梁部が載置される背梁部載置部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項7】
前記基台部に、前記前面パネル及び前記背面パネルの一方向側の側部位置を規制するパネル側部規制部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項8】
前記基台部に、前記背面パネルの上下位置を微調整可能なパネル高さ調整部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項9】
前記前面パネル保持部の前記前側傾斜支持部が、前記前面パネルの前記梁部を支持する請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項10】
前記前面パネル保持部の前記前側傾斜支持部が、前記前面パネルの傾斜角度を微調整する前側傾斜調整部を有する請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項11】
前記背面パネル保持部が、前記背面パネルを外側への傾斜状態又は内側への傾斜状態で支持する背側傾斜支持部を有する請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項12】
前記背面パネル保持部の前記背側傾斜支持部が、前記背面パネルの傾斜角度を微調整する背側傾斜調整部を有する請求項11に記載のパネル保持装置。
【請求項13】
前記パネル保持装置の前記基台部上に前記擁壁ブロック用連結部材を載置するための連結部材載置部が設けられる請求項4に記載のパネル保持装置。
【請求項14】
前記連結部材載置部に、前記擁壁ブロック用連結部材の上下位置を微調整する連結部材調整部が設けられる請求項13に記載のパネル保持装置。
【請求項15】
前記パネル保持装置が、前記前面パネルと前記背面パネルの上側の間隔を微調整するパネル上部調整部材を有する請求項4に記載のパネル保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外向きに対向配置された前面パネルと背面パネルとを所定間隔で連結固定して擁壁ブロックを形成するための擁壁ブロック用連結部材及び該連結部材を用いた擁壁ブロックを形成するためのパネル保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
崖や河川の堤防等の斜面には、土砂崩れ等を防止するために擁壁が設置される。この種の擁壁では、例えば、コンクリート等で形成された複数のブロック体を積み上げて構築する手法が知られている。擁壁に使用されるブロックは、積み上げる位置が低いブロックほど大きく、高いブロックほど小さく形成される等、種々の大きさのブロックが製造され、適宜施工現場に運搬されて施工される。
【0003】
擁壁ブロックは、各大きさごとに個別に製造され、特に大型のブロックは重量が極端に大きくなって、運搬や施工の妨げとなることがある。そこで、前面側の壁面を構成する前面パネルと背面側の壁面を構成する背面パネルとを連結部材によって連結して形成した擁壁ブロックが提案されている(特許文献1参照)。この擁壁ブロックは、連結部材が、前面パネルと背面パネルとの間に架設される上弦材及び下弦材と、上弦材の一端と下弦材の他端とを結合する斜材とからなる骨組み平面を形成するように構成される。そして、上記組立式の擁壁ブロックでは、使用する連結部材の上弦材、下弦材、斜材の長さに応じて両パネル間の幅や角度を調整することが可能であるため、様々な大きさの擁壁ブロックを形成でき、軽量化を図ることができる。
【0004】
ところで、この組立式の擁壁ブロックでは、組み立てに際して連結部材を構成する上弦材、下弦材、斜材が両パネルに対して順次連結される。しかしながら、別体である前面パネルと背面パネルに対して上弦材、下弦材、斜材を単に連結させるだけでは、両パネル間の幅や角度を精度よく調整することが困難であり、同一規格で組み立てた擁壁ブロックに施工誤差が生じやすくなる。そして、施工誤差が生じないように組み立てるには、より精密な作業を行う必要があるため、作業効率が大幅に低下する。そのため、施工現場で擁壁ブロックを組み立てるのは非効率的で実施困難であり、工場等で組み立ててから改めて施工現場へ運搬しなければならない。
【0005】
このように工場等で組み立てると、コンクリートで構成された擁壁ブロックと同様にかさばるため、広大な保管場所が必要であるとともに、これらの擁壁ブロックを順次設置場所へ運搬する必要があり、運搬作業を軽減することが困難であった。そこで発明者らは、施工現場においても効率的に高い施工精度で擁壁ブロックを組み立てることが可能な擁壁ブロック用連結部材と、該擁壁ブロック用連結部材を用いて擁壁ブロックを形成するためのパネル保持装置を発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6359733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、組立式の擁壁ブロックを施工現場においても効率的かつ精度良く組み立てることができる擁壁ブロック用連結部材及びパネル保持装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、外向きに対向配置された前面パネルと背面パネルとを所定間隔(S1,S2)で連結固定して擁壁ブロックを形成するための一対の連結部材であって、前記前面パネル及び前記背面パネルは、パネル本体とその内側に突状に設けられた梁部がそれぞれ形成されるとともに、前記梁部には所定位置に上部連結部(P16,P26)と下部連結部(P17,P27)がそれぞれ形成されていて、前記連結部材は、前記前面パネルと前記背面パネルとの間において、上部に架設される第1架設本体部(11)の両端側に前記上部連結部に取り付けられる上部取付部(12,13)が前記所定間隔(S1)を規定する上側架設距離分の間隔(S10)で設けられた第1架設部(10)と、下部に架設される第2架設本体部(21)の両端側に前記下部連結部に取り付けられる下部取付部(22,23)が前記所定間隔(S2)を規定する下側架設距離分の間隔(S20)で設けられた第2架設部(20)とを有し、前記第1架設部と前記第2架設部とが架設部固定部材(30)により一体に固定されて前記上部取付部及び前記下部取付部の相対位置が規定されてなることを特徴とする擁壁ブロック用連結部材に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記前面パネル及び前記背面パネルの各連結部がボルト部材用の受穴部からなり、前記第1架設部及び前記第2架設部の各取付部が前記前面パネル及び前記背面パネルの各受穴部とともに前記ボルト部材により固定される取付穴部からなる請求項1に記載の擁壁ブロック用連結部材に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記取付穴部の直径が前記受穴部の直径より0.5~5mm大きく形成されている請求項2に記載の擁壁ブロック用連結部材に係る。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の擁壁ブロック用連結部材を用いて前記擁壁ブロックを形成するためのパネル保持装置であって、前記パネル保持装置は、前記前面パネル及び前記背面パネルが載置される基台部と、前記前面パネルの位置を規定する前面パネル規制部と前記前面パネルを内側への傾斜状態で支持する前側傾斜支持部とを有する前面パネル保持部と、前記前面パネル規制部から前記所定間隔(S2)に対応する距離で離間した位置に前記背面パネルの位置を規定する背面パネル規制部を有する背面パネル保持部とを備えることを特徴とするパネル保持装置に係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記基台部に、前記前面パネルの梁部である前梁部が載置される前梁部載置部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記基台部に、前記背面パネルの梁部である背梁部が載置される背梁部載置部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0014】
請求項7の発明は、前記基台部に、前記前面パネル及び前記背面パネルの一方向側の側部位置を規制するパネル側部規制部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0015】
請求項8の発明は、前記基台部に、前記背面パネルの上下位置を微調整可能なパネル高さ調整部が設けられている請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0016】
請求項9の発明は、前記前面パネル保持部の前記前側傾斜支持部が、前記前面パネルの前記梁部を支持する請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0017】
請求項10の発明は、前記前面パネル保持部の前記前側傾斜支持部が、前記前面パネルの傾斜角度を微調整する前側傾斜調整部を有する請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0018】
請求項11の発明は、前記背面パネル保持部が、前記背面パネルを外側への傾斜状態又は内側への傾斜状態で支持する背側傾斜支持部を有する請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0019】
請求項12の発明は、前記背面パネル保持部の前記背側傾斜支持部が、前記背面パネルの傾斜角度を微調整する背側傾斜調整部を有する請求項11に記載のパネル保持装置に係る。
【0020】
請求項13の発明は、前記パネル保持装置の前記基台部上に前記擁壁ブロック用連結部材を載置するための連結部材載置部が設けられる請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【0021】
請求項14の発明は、前記連結部材載置部に、前記擁壁ブロック用連結部材の上下位置を微調整する連結部材調整部が設けられる請求項13に記載のパネル保持装置に係る。
【0022】
請求項15の発明は、前記パネル保持装置が、前記前面パネルと前記背面パネルの上側の間隔を微調整するパネル上部調整部材を有する請求項4に記載のパネル保持装置に係る。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明に係る擁壁ブロック用連結部材によると、外向きに対向配置された前面パネルと背面パネルとを所定間隔で連結固定して擁壁ブロックを形成するための一対の連結部材であって、前記前面パネル及び前記背面パネルは、パネル本体とその内側に突状に設けられた梁部がそれぞれ形成されるとともに、前記梁部には所定位置に上部連結部と下部連結部がそれぞれ形成されていて、前記連結部材は、前記前面パネルと前記背面パネルとの間において、上部に架設される第1架設本体部の両端側に前記上部連結部に取り付けられる上部取付部が前記所定間隔を規定する上側架設距離分の間隔で設けられた第1架設部と、下部に架設される第2架設本体部の両端側に前記下部連結部に取り付けられる下部取付部が前記所定間隔を規定する下側架設距離分の間隔で設けられた第2架設部とを有し、前記第1架設部と前記第2架設部とが架設部固定部材により一体に固定されて前記上部取付部及び前記下部取付部の相対位置が規定されてなるため、手軽に各パネルの間隔の施工誤差が少ない擁壁ブロックを得ることができ、施工現場においても効率的かつ精度良く擁壁ブロックを組み立てることができる。
【0024】
請求項2の発明に係る擁壁ブロック用連結部材によると、請求項1の発明において、前記前面パネル及び前記背面パネルの各連結部がボルト部材用の受穴部からなり、前記第1架設部及び前記第2架設部の各取付部が前記前面パネル及び前記背面パネルの各受穴部とともに前記ボルト部材により固定される取付穴部からなるため、簡素な構造で連結作業を簡便に行うことができて、作業効率に優れる。
【0025】
請求項3の発明に係る擁壁ブロック用連結部材によると、請求項2の発明において、前記取付穴部の直径が前記受穴部の直径より0.5~5mm大きく形成されているため、効率的かつ高精度で施工することができる。
【0026】
請求項4の発明に係るパネル保持装置によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の擁壁ブロック用連結部材を用いて前記擁壁ブロックを形成するためのパネル保持装置であって、前記パネル保持装置は、前記前面パネル及び前記背面パネルが載置される基台部と、前記前面パネルの位置を規定する前面パネル規制部と前記前面パネルを内側への傾斜状態で支持する前側傾斜支持部とを有する前面パネル保持部と、前記前面パネル規制部から前記所定間隔に対応する距離で離間した位置に前記背面パネルの位置を規定する背面パネル規制部を有する背面パネル保持部とを備えるため、手軽に各パネルの間隔の施工誤差が少ない擁壁ブロックを得ることができ、施工現場においても効率的かつ精度良く擁壁ブロックを組み立てることができる。
【0027】
請求項5の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記基台部に、前記前面パネルの梁部である前梁部が載置される前梁部載置部が設けられているため、前面パネルの安定性が向上する。
【0028】
請求項6の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記基台部に、前記背面パネルの梁部である背梁部が載置される背梁部載置部が設けられているため、背面パネルの安定性が向上する。
【0029】
請求項7の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記基台部に、前記前面パネル及び前記背面パネルの一方向側の側部位置を規制するパネル側部規制部が設けられているため、前面パネルと背面パネルの横ずれを抑制することができる。
【0030】
請求項8の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記基台部に、前記背面パネルの上下位置を微調整可能なパネル高さ調整部が設けられているため、背面パネルの高さの配置の誤差を低減させることができて、作業精度の向上を図ることができる。
【0031】
請求項9の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記前面パネル保持部の前記前側傾斜支持部が、前記前面パネルの前記梁部を支持するため、傾斜角度の誤差を低減して施工精度の向上を図ることができる。
【0032】
請求項10の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記前面パネル保持部の前記前側傾斜支持部が、前記前面パネルの傾斜角度を微調整する前側傾斜調整部を有するため、前面パネルの傾斜角度の配置の誤差を低減させることができて、作業精度の向上を図ることができる。
【0033】
請求項11の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記背面パネル保持部が、前記背面パネルを外側への傾斜状態又は内側への傾斜状態で支持する背側傾斜支持部を有するため、自立困難な傾斜状の背面パネルの傾斜状態を適切に保持することができる。
【0034】
請求項12の発明に係るパネル保持装置によると、請求項11の発明において、前記背面パネル保持部の前記背側傾斜支持部が、前記背面パネルの傾斜角度を微調整する背側傾斜調整部を有するため、背面パネルの傾斜角度の配置の誤差を低減させることができて、作業精度の向上を図ることができる。
【0035】
請求項13の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記パネル保持装置の前記基台部上に前記擁壁ブロック用連結部材を載置するための連結部材載置部が設けられるため、特段の補助作業を必要とせず、簡便に取り付けることが可能となって作業効率が向上する。
【0036】
請求項14の発明に係るパネル保持装置によると、請求項13の発明において、前記連結部材載置部に、前記擁壁ブロック用連結部材の上下位置を微調整する連結部材調整部が設けられるため、擁壁ブロック用連結部材の高さ位置の配置の誤差を低減させることができて、作業精度の向上を図ることができる。
【0037】
請求項15の発明に係るパネル保持装置によると、請求項4の発明において、前記パネル保持装置が、前記前面パネルと前記背面パネルの上側の間隔を微調整するパネル上部調整部材を有するため、前面パネルと背面パネルの間隔の配置の誤差を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係る擁壁ブロック用連結部材を用いた擁壁ブロックの斜視図である。
図2】擁壁ブロックの側面図である。
図3】擁壁ブロックの平面図である。
図4】梁部のバリエーションを表す前面パネルの斜視図である。
図5】擁壁ブロック用連結部材の斜視図である。
図6】他の形態の擁壁ブロックの斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るパネル保持装置の使用状態を表す側面図である。
図8図7のパネル保持装置の使用状態を表す平面図である。
図9】パネル保持装置の平面図である。
図10】パネル保持装置の前面ブロック保持部側の斜視図である。
図11】パネル保持装置の背面ブロック保持部側の斜視図である。
図12】パネル保持装置の使用状態を表す背面図である。
図13】他の形態のパネル保持装置の使用状態を表す側面図である。
図14】基台部、傾斜支持部、連結部材載置部の各調整部の概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1~3は、本発明の一実施形態に係る擁壁ブロック用連結部材1を用いて形成された擁壁ブロックBである。擁壁ブロックBは、崖や河川の堤防等の高低差がある地形の斜面等に設置される構造物であって、外向きに対向配置された前面パネルP10と背面パネルP20とが所定間隔で連結固定されてなる組立式の擁壁である。この擁壁ブロックBは、施工現場において、適宜積み上げられて設置される。
【0040】
前面パネルP10及び背面パネルP20は、パネル本体(P11,P21)と、梁部(P15,P25)とを有する。前面パネルP10のパネル本体P11は、擁壁ブロックBの前面側を構成するブロック体であって、図2に示すように、内側方向への所定の傾斜状に形成される。背面パネルP20のパネル本体P21は、擁壁ブロックBの背面側を構成するブロック体であり、設置場所の地形等に応じて、垂直状、内側方向への所定の傾斜状、外側方向への所定の傾斜状等、種々の形状に形成される。図1~3に示す実施形態の背面パネルP20では、パネル本体P21は垂直状である。なお、擁壁ブロックBにおいては、通常、前面パネルP10を表面側として斜面を構成するように設置されるが、設置場所の地形等により背面パネルP20を表面側として設置する等、適宜に設置することができる。
【0041】
梁部P15(P25)は、図2,3に示すように、パネル本体P11(P21)の内側に突状に設けられた部位であり、前面パネルP10の梁部(前梁部)P15と背面パネルP20の梁部(背梁部)P25とが、対向配置された際に相対する位置関係となるように構成される。この梁部P15(P25)には、所定位置に上部連結部P16(P26)と下部連結部P17(P27)がそれぞれ形成される。
【0042】
梁部P15(P25)は、パネル本体P11(P21)の幅等のサイズに応じて、一又は複数箇所に設けられる。例えば、図4(a)に示す比較的幅が狭い前面パネルP10aでは、一の梁部P15が設けられている。一方、図4(b)に示す比較的幅が広い前面パネルP10bでは、複数(図示の例では2つ)の梁部P15,P15が設けられている。また、梁部P15の形状は、少なくとも後述の上部連結部P16(P26)及び下部連結部P17(P27)が形成可能であれば特に限定されない。例えば、図4(a)(b)に示す梁部P15は、パネル本体P11の内側の上部から下部にかけて突条に形成されている。一方、図4(c)に示す前面パネルP10cの梁部P15は、パネル本体P11の内側の一部(上部側と下部側)に突設されている。梁部の形状は上記の各形態に限らず、適宜の形状とすることができる。なお図示しないが、背面パネルの梁部も同様に構成することができる。
【0043】
前面パネルP10の上部連結部P16及び下部連結部P17、背面パネルP20の上部連結部P26及び下部連結部P27は、前面パネルP10及び背面パネルP20の製品規格等に応じてそれぞれ一定の位置に形成される。その際、前面パネルP10と背面パネルP20を対向配置した際に、前面パネルP10の上部連結部P16と背面パネルP20の上部連結部P26、前面パネルP10の下部連結部P17と背面パネルP20の下部連結部P27が、それぞれ同一高さとなる位置に設けられる。実施形態の各連結部P16,P17,P26,P27はボルト部材用の受穴部からなり、それぞれ梁部P15,P25の外側面に形成される。また、前面パネルP10の上部連結部P16と下部連結部P17は、前面パネルP10の傾斜と同一の傾斜となるように上部連結部P16の斜め下方向に下部連結部P17が配置される。一方、背面パネルP20の上部連結部P26と下部連結部P27は、垂直状の背面パネルP20に対応して上部連結部P26の真下に下部連結部P27が配置される。
【0044】
上記前面パネルP10と背面パネルP20は、図2,3に示すように、一対の擁壁ブロック用連結部材1,1を介して所定間隔S1,S2で連結固定されて擁壁ブロックBとして形成される。
【0045】
前面パネルP10と背面パネルP20との所定間隔S1は対向配置された前面パネルP10と背面パネルP20との上部側における間隔(距離)であり、前面パネルP10と背面パネルP20との所定間隔S2は対向配置された前面パネルP10と背面パネルP20との下部側における間隔(距離)である。各パネルP10,P20同士の所定間隔S1,S2は、同一規格の擁壁ブロックにおいて一定であれば、どのような部分を基準として設定しても構わない。実施形態では、前面パネルP10の外面側上端部P12と背面パネルP20の外面側上端部P22との距離(間隔)を上側の所定間隔S1とし、前面パネルP10の外面側下端部P13と背面パネルP20の外面側下端部P23との距離(間隔)を下側の所定間隔S2としている。
【0046】
擁壁ブロック用連結部材1は、図1~3,5に示すように、第1架設部10と、第2架設部20と、架設部固定部材30とを有する。第1架設部10は、前面パネルP10と背面パネルP20との間において、上部に架設される第1架設本体部11と、第1架設本体部11の両端側に設けられる上部取付部12,13とを有する。第1架設本体部11は、各パネルP10,P20間の上部側で架設可能な適宜の棒状部材からなる。実施形態の第1架設本体部11は、強度等の観点から図示のように側面視L字状の棒状部材で構成される。
【0047】
上部取付部12,13は、各パネルP10、P20の各上部連結部P16,P26に取り付けられる部位である。前面側の上部取付部12と背面側の上部取付部13は、第1架設本体部11に、前面パネルP10と背面パネルP20との上側の所定間隔S1を規定する上側架設距離分の間隔S10(後述)で設けられる。
【0048】
第2架設部20は、前面パネルP10と背面パネルP20との間において、下部に架設される第2架設本体部21と、第2架設本体部21の両端側に設けられる下部取付部22,23とを有する。第2架設本体部21は、各パネルP10,P20間の下部側で架設可能な適宜の棒状部材からなる。実施形態の第2架設本体部21は、強度等の観点から図示のように側面視L字状の棒状部材で構成される。
【0049】
下部取付部22,23は、各パネルP10、P20の各下部連結部P17,P27に取り付けられる部位である。前面側の下部取付部22と背面側の下部取付部23は、第2架設本体部21に、前面パネルP10と背面パネルP20との下側の所定間隔S2を規定する上側架設距離分の間隔S20(後述)で設けられる。
【0050】
実施形態の各取付部12,22,13,23は、前面パネルP10及び背面パネルP20の各受穴部(各連結部)P16,P17,P26,P27とともにボルト部材により固定される取付穴部からなる。すなわち、ボルト部材が各取付穴(各取付部)12,22,13,23を貫通して各受穴部P16,P17,P26,P27に螺着されることによって、各取付穴12,22,13,23を有する擁壁ブロック用連結部材1が各受穴部P16,P17,P26,P27を有する各梁部15,25に固定される。各取付穴(各取付部)12,22,13,23は、適宜の手法により各架設本体部11,21に設けることが可能であるが、例えば公知のレーザー加工方法を用いれば、より正確な位置に設けることが可能となる。
【0051】
架設部固定部材30は、第1架設部10と第2架設部20とを一体に固定して上部取付部12,13及び下部取付部22,23の相対位置を規定する部材である。架設部固定部材30は、第1架設部10と第2架設部20とを一体固定可能な適宜の部材からなる。実施形態の架設部固定部材30は、軽量化等の観点から第1架設部10と第2架設部20との間に架設される棒状部材で構成される。また、棒状の架設部固定部材30は、第1架設部10や第2架設部20の長さ(架設距離)等に応じて、1又は複数本設けられる。
【0052】
ここで、上部取付部12,13及び下部取付部22,23の位置関係について説明する。上側架設距離分の間隔S10は、組立完了状態の擁壁ブロックBにおける前面パネルP10の上部連結部P16と背面パネルP20の上部連結部P26との距離(間隔)に相当する。また、下側架設距離分の間隔S20は、組立完了状態の擁壁ブロックBにおける前面パネルP10の下部連結部P17と背面パネルP20の下部連結部P27との距離(間隔)に相当する。
【0053】
一方、各パネルP10,P20において、各上部連結部P16,P26及び各下部連結部P17,P27は、各パネルP10,P20の製品規格に応じて一定位置に形成される。そうすると、同一規格の擁壁ブロックでは、各パネルP10,P20の各梁部P15,P25の一定位置に各上部連結部P16,P26及び各下部連結部P17,P27が形成される。各パネルP10,P20が所定間隔(S1,S2)で配置される擁壁ブロックBにおいては、各上部連結部P16,P26間の距離及び各下部連結部P17,P27間の距離とともに、各連結部P16,P17,P26,P27の相対位置が、製品規格に応じて一定となる。
【0054】
そこで、擁壁ブロック用連結部材1では、各取付部12,22,13,23の位置関係が、組立て後の擁壁ブロックBの各連結部P16,P17,P26,P27の位置関係にそれぞれ合致するように設定される。すなわち、製品規格に応じた各上部連結部P16,P26間の距離に相当する上側架設距離分の間隔S10を設定して第1架設本体部11の両端側に各上部取付部12,13が形成され、同様に製品規格に応じた各下部連結部P17,P27間の距離に相当する下側架設距離分の間隔S20を設定して第2架設本体部21の両端側に各下部取付部22,23が形成される。また、製品規格に応じた各連結部P16,P17,P26,P27の相対位置に各取付部12,22,13,23が対応するように第1架設部10と第2架設部20とを配置し、架設部固定部材30によって両者を一体固定させることにより、擁壁ブロック用連結部材1の各取付部12,22,13,23の相対位置が定められる。
【0055】
擁壁ブロックBの組立てに際しては、上記のように構成された擁壁ブロック用連結部材1を介して前面パネルP10と背面パネルP20とを連結させるだけで、手軽に各パネルP10,P20の間隔(S1,S2)の施工誤差が少ない擁壁ブロックBを得ることができる。
【0056】
また、各パネルP10,P20の各連結部P16,P17,P26,P27をボルト部材用の受穴部、連結部材1の各取付部12,22,13,23をそれに対応した取付穴部とすれば、簡素な構造で連結作業を簡便に行うことができて、作業効率に優れる。受穴部(連結部P16,P17,P26,P27)と取付穴部(取付部12,22,13,23)との関係においては、ボルト部材での固定を可能とするために、取付穴部(取付部12,22,13,23)の直径が受穴部(連結部P16,P17,P26,P27)の直径以上とされる。特に、作業効率と施工精度の両立を図る観点から、取付穴部(取付部12,22,13,23)の直径が、受穴部(連結部P16,P17,P26,P27)の直径より0.5~5mm大きく形成されていることが好ましく、1~3mm大きく形成されていることがより好ましい。取付穴部(取付部12,22,13,23)の直径が小さすぎると受穴部(連結部P16,P17,P26,P27)と合致させにくくなって作業効率が低下するおそれがあり、取付穴部(取付部12,22,13,23)の直径が大きすぎると施工誤差が大きくなるおそれがある。実施形態では、受穴部(連結部P16,P17,P26,P27)の直径が16mmに対し、取付穴部(取付部12,22,13,23)の直径が18mmである。
【0057】
次に、擁壁ブロックのバリエーションについて説明する。図2に示す擁壁ブロックB1は、内側へ傾斜状の前面パネルP10と、垂直状の背面パネルP20aとを有する例である。擁壁ブロックB1に使用される擁壁ブロック用連結部材1Aは、上側架設距離分の間隔S10より下側架設距離分の間隔S20が長く、前面側の上部取付部12の外側斜め下方向に前面側の下部取付部22が配置されるとともに、背面側の上部取付部13の真下に背面側の下部取付部23が配置される。
【0058】
図6(a)に示す擁壁ブロックB2は、背面パネルP20bが外側方向への所定の傾斜状に形成された例である。特に、前面パネルP10と背面パネルP20bは略平行に対向配置されている。擁壁ブロックB2に使用される擁壁ブロック用連結部材1Bは、上側架設距離分の間隔S10と下側架設距離分の間隔S20が等しく、前面側の上部取付部12の外側斜め下方向に前面側の下部取付部22、背面側の上部取付部13の内側斜め下方向に背面側の下部取付部23がそれぞれ配置される。特に、前面パネルP10と背面パネルP20bとが略平行に配置されているため、前面側の上部取付部12と下部取付部22を結ぶ線と、背面側の上部取付部13と下部取付部23を結ぶ線とが略平行となるように構成される。
【0059】
図6(b)に示す擁壁ブロックB3は、背面パネルP20cが内側方向への所定の傾斜状に形成された例である。擁壁ブロックB3に使用される擁壁ブロック用連結部材1Cは、上側架設距離分の間隔S10より下側架設距離分の間隔S20が長く、前面側の上部取付部12の外側斜め下方向に前面側の下部取付部22、背面側の上部取付部13の外側斜め下方向に背面側の下部取付部23がそれぞれ配置される。
【0060】
図2図6(a)、図6(b)に示す擁壁ブロックB1,B2,B3は、設置場所の地形等に応じて適宜選択されて使用される。また、擁壁ブロックの形状等はこれらの形態のみに限定されるものではなく、各擁壁ブロックB1,B2,B3から理解されるように、上側架設距離分の間隔S10、下側架設距離分の間隔S20、各取付部12,22,13,23の相対位置が適宜対応して設定された擁壁ブロック用連結部材1を使用することにより、種々の形状、大きさ等の擁壁ブロックを形成することができる。そのため、積み上げ用として前面パネルと背面パネルの間隔を狭くした擁壁ブロックも簡易に形成することができる。
【0061】
本発明の擁壁ブロック用連結部材1を用いて前面パネルP10と背面パネルP20とを連結して擁壁ブロックBを形成する場合、図7,8に示すパネル保持装置100を使用することが好ましい。このパネル保持装置100は、基台部110と、前面パネル保持部120と、背面パネル保持部130とを備える。
【0062】
基台部110は、前面パネルP10及び背面パネルP20が載置される台状の部材である。この基台部110は、各パネルP10,P20を載置した際にその重量に耐え得る強度を有していれば、形状等は特に限定されない。実施形態の基台部110は、軽量化等の観点から、図9に示すように、格子状に形成される。
【0063】
基台部110には、図9,10に示すように、前面パネルP10の前梁部P15が載置される前梁部載置部111を設けることが好ましい。また、図9,11に示すように、背面パネルP20の背梁部P25が載置される背梁部載置部112を設けることが好ましい。前梁部載置部111や背梁部載置部112により、前面パネルP10や背面パネルP20の内側方向の接地部分が広くなって、各パネルP10,P20の安定性が向上する。
【0064】
また、基台部110には、図8,9,12に示すように、前面パネルP10及び背面パネルP20の一方向側の側部(P14,P24)位置を規制するパネル側部規制部115を設けることが好ましい。パネル側部規制部115では、前面パネルP10と背面パネルP20の一方向側の側部P14,P24が揃えられて、両者の横ずれを抑制することができる。パネル側部規制部115の形状等は、前面パネルP10と背面パネルP20の一方向側の側部P14,P24を揃えることが可能であれば特に限定されない。実施形態のパネル側部規制部115は、基台部110の一側辺のほぼ全長にわたって設けられ、各パネルP10,P20の一方向側の側部P14,P24の双方が当接可能な側部当接面116を有する側面視略L字状の棒部材からなる。
【0065】
前面パネル保持部120は、図7,9,10に示すように、前面パネルP10を所定の傾斜状態のまま保持する部位であって、前面パネル規制部121と、前側傾斜支持部125とを有する。前面パネル規制部121は、前面パネルP10の外面側下端部P13の位置を規制して前面パネルP10の位置を規定する部材である。前面パネル規制部121の形状等は、前面パネルP10の形状等は、外面側下端部P13の位置を規制することが可能であれば特に限定されない。実施形態の前面パネル規制部121は、基台部110の前側の辺部に、前面パネルP10の横幅に相当する長さにわたって設けられ、前面パネルP10の外面側下端部P13が当接可能な前部当接面122を有する側面視略L字状の棒部材からなる。
【0066】
前側傾斜支持部125は、前面パネルP10を内側への傾斜状態で支持する部材である。この前側傾斜支持部125は、所定の傾斜角度で構成された傾斜支持本体126を有し、傾斜支持本体126に前面パネルP10の内側部分が当接されて、前面パネルP10の傾斜状態が保持される。また、前側傾斜支持部125は、前面パネルP10の内側部分であればパネル本体P11や前梁部P15のいずれを支持しても構わないが、傾斜角度の誤差を低減して施工精度の向上を図る観点から、当接部分の凹凸が少ない部分を支持することが好ましい。例えば、前面パネルP10では、パネル本体P11の内側面と比較して、前梁部P15の内側面の方が凹凸が少なくなる傾向があることから、前側傾斜支持部125は前梁部P15を支持するように構成される。実施形態の前側傾斜支持部125は、軽量化等の観点から、図示のように傾斜支持本体126が柵状に形成される。
【0067】
背面パネル保持部130は、図7,9に示すように、背面パネルP20の位置を規定する部位であって、背面パネル規制部131を有する。背面パネル規制部131は、前面パネル規制部121から下側の所定間隔S2に対応する距離で離間した位置に背面パネルP20の位置を規定する部材である。実施形態の背面パネル規制部131は、背面パネルP20の横幅に相当する長さにわたって設けられ、背面パネルP20が当接可能な背部当接面132を有する側面視略L字状の棒部材からなる。また、背面パネル保持部130は、背面パネルP20の形状に応じて、図13に示すように、背側傾斜支持部(135a,135b)をさらに有する。
【0068】
図7に示す背面パネル保持部130aは、垂直状の背面パネルP20aを保持するものであって、背面パネル規制部131aが前面パネル規制部121から所定間隔S2離間して配置され、背面パネルP20aの外面(外面側下端部P23)の位置を規制して背面パネルP20の位置を規定する。垂直状の背面パネルP20aは自立可能であることから、背面パネル規制部131aにより背面パネルP20aの外面側下端部P23の位置を前面パネル規制部121から所定間隔S2離間した位置に規制すれば、背面パネルP20aを適切な位置に配置することができる。
【0069】
背面パネルP20では、背梁部P25が背梁部載置部112上に載置されることにより安定性が向上することから、垂直状の背面パネルP20aはより安定して自立される。また、例えば図6(b)に示す背面パネルP20cのように、傾きが小さい場合でも安定して自立させることができる。このように背面パネルが自立可能であれば、背面パネル保持部は背面パネルの外面側下端部(P23)を規制する背面パネル規制部131aで構成される。
【0070】
図13(a)に示す背面パネル保持部130bは、外側への傾斜状の背面パネルP20bを保持するものであって、背面パネル規制部131bと、背側傾斜支持部135aとを有する。背面パネル規制部131bは、背面パネルP20bの外面側下端部P23が前面パネル規制部121から所定間隔S2離間されるように内面側下端部P23aの位置を規制する。
【0071】
背側傾斜支持部135aは、背面パネルP20bを外側への傾斜状態で支持する部材である。この背側傾斜支持部135aは、所定の傾斜角度で構成されて背面パネルP20bの外側部分を支持する傾斜支持本体(外側傾斜支持本体)136aを有する。実施形態の背側傾斜支持部135aは、軽量化等の観点から、前側傾斜支持部125と同様に傾斜支持本体136aが柵状に形成される。
【0072】
図13(b)に示す背面パネル保持部130cは、内側への傾斜状の背面パネルP20dを保持するものであって、背面パネル規制部131bと、背側傾斜支持部135bとを有する。背側傾斜支持部135bは、背面パネルP20dを内側への傾斜状態で支持する部材である。この背側傾斜支持部135bは、所定の傾斜角度で構成されて背面パネルP20dの内側部分を支持する傾斜支持本体(内側傾斜支持本体)136bを有する。この背側傾斜支持部135bは、前側傾斜支持部125と同様に、当接部分の凹凸が少ない部分を支持することが好ましく、背面パネルP20dの背梁部P25を支持するように構成される。また、実施形態の背側傾斜支持部135bは、背側傾斜支持部135aと同様に傾斜支持本体136bが柵状に形成される。
【0073】
このように、自立困難な傾斜状の背面パネル(P20b,P20d)の施工に際しては、背側傾斜支持部135a,135bにより、背面パネルの傾斜状態を適切に保持することができる。
【0074】
また、擁壁ブロックとしては、積み上げ用として形成する場合、積み上げる位置が上段となる擁壁ブロックほど、前面パネルと背面パネルとの間隔を狭くする必要がある。そこで、当該パネル保持装置100では、前面パネル保持部120と背面パネル保持部130の少なくとも一方が移動可能に構成される。例えば、移動可能な前面パネル保持部120では前面パネル規制部121や前側傾斜支持部125、移動可能な背面パネル保持部130では背面パネル規制部131a,131bや背側傾斜支持部135a,135bが、それぞれ着脱可能とされる。そして、積み上げ位置に応じた間隔となる位置に前面パネル保持部120や背面パネル保持部130を適宜設置することで、積み上げ用の擁壁ブロックの形成にも容易に対応することができる。前面パネル保持部120や背面パネル保持部130の着脱構造としては、構造の簡素化及び簡便な作業性等の観点から、基台部110の適宜の位置にボルト固定用の受け穴部設けて、ボルト部材等によって着脱可能とする構造が好ましい。
【0075】
当該パネル保持装置100では、必要に応じて、図7に示すように、基台部110上に擁壁ブロック用連結部材1を載置するための連結部材載置部140が設けられる。連結部材載置部140は、連結部材1の各下部取付部22,23が各パネルP10,P20の各下部連結部P17,P27の高さ位置と略同一位置となるように連結部材1を配置させるものであって、連結部材1が載置される載置本体部141と、載置本体部141を各パネルP10,P20の各下部連結部P17,P27の高さ位置に対応して嵩上げする嵩上部142とを有する。この連結部材載置部140では、載置本体部141に載置された連結部材1の各下部取付部22,23が各パネルP10,P20の各下部連結部P17,P27の高さ位置と略同一位置となるため、各パネルP10、P20と擁壁ブロック用連結部材1との連結作業時に、擁壁ブロック用連結部材1を取り付け高さ位置で支える等の特段の補助作業を必要とせず、簡便に取り付けることが可能となって作業効率が向上する。
【0076】
また、パネル保持装置100では、必要に応じて、図14に示すように、基台部110、前側傾斜支持部125、背側傾斜支持部135、連結部材載置部140に、各パネルP10,P20の位置を微調整する調整部(パネル高さ調整部117,前側傾斜調整部127,背側傾斜調整部,連結部材調整部147)を適宜設けてもよい。各調整部117,127,137,147としては、公知のアジャスタ部材が好適に使用される。
【0077】
図14(a)に示すパネル高さ調整部117は、背面パネルP20の上下位置を微調整する部材であって、基台部110の背面パネルP20が載置可能な適宜の部位に設けられて、背面パネルP20をパネル本体P21の底面から押し上げて上下位置を微調整可能に構成される。
【0078】
図14(b)に示す前側傾斜調整部127(背側傾斜調整部137)は、前面パネルP10(背面パネルP20)の傾斜角度を微調整する部材であって、前面パネル保持部120(背面パネル保持部130)の前側傾斜支持部125(背側傾斜支持部135)に設けられる。前側傾斜調整部127及び背側傾斜調整部137は、それぞれ各パネルP10,P20を傾斜方向の下側から押し上げて傾斜角度を微調整可能に構成される。例えば、前側傾斜調整部127は、内側に傾斜する前面パネルP10を内側から押し上げて傾斜角度の微調整を行う。一方、背側傾斜調整部137は、図示のように前側傾斜調整部127と同様の構造からなり、外側に傾斜する背面パネルP20であれば外側から背面パネルP20を押し上げて傾斜角度の微調整を行う。なお図示しないが、内側に傾斜する背面パネルであれば、背側傾斜調整部は背面パネルを内側から押し上げて傾斜角度の微調整を行う。
【0079】
図14(c)に示す連結部材調整部147は、連結部材載置部140に載置された擁壁ブロック用連結部材1の上下位置を微調整する部材であって、連結部材載置部140の載置本体部141に設けられ、擁壁ブロック用連結部材1を下側から押し上げて上下位置を調整可能に構成される。
【0080】
このように、基台部110、前側傾斜支持部125、背側傾斜支持部135、連結部材載置部140の各部に調整部117,127,137,147を設けることにより、背面パネルP20の高さ位置、前面パネルP10や背面パネルP20の傾斜角度、擁壁ブロック用連結部材1の高さ位置等、各パネルP10、P20や擁壁ブロック用連結部材1の配置の誤差を低減させることができて、作業精度の向上を図ることができる。
【0081】
パネル保持装置100では、必要に応じて、図7,8に示すように、前面パネルP10と背面パネルP20の上部側の間隔S1を微調整するパネル上部調整部材150を設けてもよい。パネル上部調整部材150は、前面パネルP10の上部を把持する前側把持部材151と、背面パネルP20の上部を把持する背側把持部材152と、前側把持部材151と背側把持部材152とを接続するとともに両者の間隔を広狭させる間隔調整部材155とを有する。間隔調整部材155としては、公知のターンバックル部材等が好適に使用される。このパネル上部調整部材150では、間隔調整部材155の操作により、前側把持部材151と背側把持部材152との間隔を広げたり狭めたりすることができる。そのため、各把持部材151,152に把持された各パネルP10,P20の上側の間隔Sを微調整して、各パネルP10、P20の間隔の配置の誤差を低減させることができる。
【0082】
次に、パネル保持装置100を用いた擁壁ブロックの組立て方法を説明する。なお、以下の例では、背面パネルP20は自立可能な垂直状のパネルとした。
【0083】
まず、前面パネルP10及び背面パネルP20が、クレーン等の搬送装置により基台部110上へ搬送されて、前面パネルP10が前面パネル保持部120、背面パネルP20が背面パネル保持部130にそれぞれ配置される。前面パネルP10は、内側部分(前梁部15)が前側傾斜支持部125に支持されるとともに、外面側下端部P13が前面パネル規制部121に当接されて、内側の傾斜状態で保持される。また、背面パネルP20は、背面パネル規制部131に外面側下端部P23が当接されて自立される。この時、前面パネルP10と背面パネルP20は、一方向側の側部P14,P24がそれぞれパネル側部規制部115に当接される。したがって、前面パネルP10と背面パネルP20は、基台部110上において、横ずれが抑制されかつ所定間隔S1,S2で対向配置される。
【0084】
続いて、擁壁ブロック用連結部材1が各パネルP10,P20の各梁部P15,P25の外側面に配置される。この時、擁壁ブロック用連結部材1は、連結部材載置部140に載置されることにより、作業者が持ち上げて支える等の補助作業を行うことなく、各下部取付部22,23が各パネルP10,P20の各下部連結部P17,P27の高さ位置と略同一位置に配置される。そのため、例えば、一の連結部材1に対しては、1人の作業者であっても、擁壁ブロック用連結部材1の各取付部12,22,13,23を各パネルP10,P20の各連結部P16,P17,P26,P27に対応する適正な連結位置に配置させることができる。なお、前面パネルP10、背面パネルP20、擁壁ブロック用連結部材1がそれぞれ配置される際に、各調整部(117,127,147)によって、各配置を微調整してもよい。
【0085】
上記配置の完了後、ボルト部材を用いて各取付部12,22,13,23と各連結部P16,P17,P26,P27との連結が行われる。連結手順としては、例えば、前面側の上部取付部12と前面パネルP10の上部連結部P16、前面側の下部取付部22と前面パネルP10の下部連結部P17、背面側の下部取付部23と背面パネルP20の下部連結部P27、背面側の上部取付部13と背面パネルP20の上部連結部P26の順に仮締めを行い、それぞれ適正に仮締めが完了した後、同様の順番で本締めを行う。なお、連結手順はこれに限らず、歪み等が生じにくい適宜の手順で行うことができる。
【0086】
また、一対の擁壁ブロック用連結部材1,1の連結作業に際しては、同一箇所を順次連結すれば、歪み等の発生をより効果的に抑制することができる。例えば、1人の作業者が作業を行う場合には、各取付部12,22,13,23と各連結部P16,P17,P26,P27とを交互に連結する手順で行えばよい。より効率的かつ高精度に連結を行う場合には、各連結部材1,1に対して1ずつの作業者(合計2人)によって同時進行で連結することが好ましい。このように、一対の擁壁ブロック用連結部材1,1が前面パネルP10と背面パネルP20との間に連結されることにより、擁壁ブロックBが得られる。
【0087】
以上の通り、本発明の擁壁ブロック用連結部材1を用いることにより、前面パネルP10と背面パネルP20とを手軽に施工誤差を少なく高精度に連結させることができる。特に、パネル保持装置100によって前面パネルP10と背面パネルP20とを保持すれば、一対の擁壁ブロック用連結部材1,1を各パネルP10,P20間に配置して連結させるだけで、簡便に擁壁ブロックBを得ることができる。したがって、施工現場においても、効率的かつ精度良く擁壁ブロックBを組み立てることができる。
【0088】
なお、本発明の擁壁ブロック用連結部材及びパネル保持装置は、前述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の擁壁ブロック用連結部材と、この連結部材を用いたパネル保持装置では、施工誤差が少ない組立式の擁壁ブロックを手軽に得ることができる。特に、施工現場においても簡便に擁壁ブロックを組み立てることが可能となる。そのため、組立式の擁壁ブロックにおいて、従来の連結部材の代替として有望である。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,1B,1C 擁壁ブロック用連結部材
10 第1架設部
11 第1架設本体部
12 前面側の上部取付部
13 背面側の上部取付部
20 第2架設部
21 第2架設本体部
22 前面側の下部取付部
23 背面側の下部取付部
30 架設部固定部材
100 パネル保持装置
110 基台部
111 前梁部載置部
112 背梁部載置部
115 パネル側部規制部
116 側部当接面
117 パネル高さ調整部
120 前面パネル保持部
121 前面パネル規制部
122 前部当接面
125 前側傾斜支持部
126 傾斜支持本体
127 前側傾斜調整部
130,130a,130b,130c 背面パネル保持部
131,131a,131b 背面パネル規制部
132 背部当接面
135a,135b 背側傾斜支持部
136a,136b 傾斜支持本体
137 背側傾斜調整部
140 連結部材載置部
141 載置本体部
142 嵩上部
147 連結部材調整部
150 パネル上部調整部材
151 前側把持部材
152 背側把持部材
155 間隔調整部
B,B1,B2,B3 擁壁ブロック
P10 前面パネル
P11 前面パネルのパネル本体
P12 前面パネルの外面側上端部
P13 前面パネルの外面側下端部
P14 前面パネルの一方向側の側部
P15 前梁部
P16 前面パネルの上部連結部
P17 前面パネルの下部連結部
P20,P20a,P20b,P20c 背面パネル
P21 背面パネルのパネル本体
P22 背面パネルの外面側上端部
P23 背面パネルの外面側下端部
P23a 背面パネルの内面側下端部
P24 背面パネルの一方向側の側部
P25 背梁部
P26 背面パネルの上部連結部
P27 背面パネルの下部連結部
S1 前面パネルと背面パネルとの上側の所定間隔
S2 前面パネルと背面パネルとの下側の所定間隔
S10 上側架設距離分の間隔
S20 下側架設距離分の間隔
図1
図2
図3
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