(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184032
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】骨切りブロック
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20231221BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61B17/15
A61F2/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097925
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和隆
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 隆志
(72)【発明者】
【氏名】竹川 和人
(72)【発明者】
【氏名】平岡 志穂
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA04
4C097BB01
4C097BB04
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL28
(57)【要約】
【課題】内側顆若しくは外側顆において欠損がある状態においても、欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定して、これを基準点とした位置決めが可能な骨切りブロックの提供。
【解決手段】人工膝関節置換術に用いられる骨切りブロック1Lであって、骨切り器具を案内するガイド部を有する本体部1L1と、本体部1L1の大腿骨に対する設置位置を調整するためのスペーサーであって、本体部1L1と大腿骨との間に、本体部1L1に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しないスペーサー12、又は、本体部1L1と大腿骨との間に、本体部1L1に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しないスペーサーの、少なくとも一つと、を備える、骨切りブロック1L。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝関節置換術に用いられる骨切りブロックであって、
骨切り器具を案内するガイド部を有する本体部と、
前記本体部の大腿骨に対する設置位置を調整するためのスペーサーであって、前記本体部と大腿骨との間に、前記本体部に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しないスペーサー、又は、前記本体部と大腿骨との間に、前記本体部に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しないスペーサーの、少なくとも一つと、
を備える、骨切りブロック。
【請求項2】
前記大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しないスペーサーである第1のスペーサーと、前記大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しないスペーサーである第2のスペーサーと、を備える、請求項1に記載の骨切りブロック。
【請求項3】
前記第1のスペーサーと前記第2のスペーサーが、共通の部材によって構成された、請求項2に記載の骨切りブロック。
【請求項4】
前記第1および第2のスペーサーをスライドさせて着脱可能に保持する第1および第2のスロットを備え、前記スライドの方向が、前記本体部の大腿骨と対向する面と略平行である、請求項2に記載の骨切りブロック。
【請求項5】
前記第1および第2のスロットが、前記第1および第2のスペーサーを大腿骨前面側へスライドさせることで前記第1および第2のスペーサーを取り外し可能に構成されている、請求項4に記載の骨切りブロック。
【請求項6】
前記第1または第2のスペーサーが前記本体部に取り付けられた状態において、前記スライドの方向とは異なる方向に前記本体部から突出する第1または第2の突出部を、前記第1または第2のスペーサーが備える、請求項4に記載の骨切りブロック。
【請求項7】
前記第1または第2のスペーサーが前記本体部に取り付けられた状態において、前記第1または第2のスペーサーの前記本体部から突出している部分の少なくとも一部において、凹凸面が形成されている、請求項6に記載の骨切りブロック。
【請求項8】
前記第1または第2のスロットが、前記第1または第2のスペーサーのスライドの方向を規定する第1または第2のガイド部を有する、請求項4に記載の骨切りブロック。
【請求項9】
前記第1または第2のスペーサーが、前記第1または第2のガイド部と係合する第1または第2の係合部を有する、請求項8に記載の骨切りブロック。
【請求項10】
前記本体部の大腿骨と対向する面の大腿骨の内側顆と接触する位置に設けられた第1のスパイクと、大腿骨の外側顆と接触する位置に設けられた第2のスパイクとを備え、
前記第1のスペーサーに、前記第1のスパイクとの干渉を避けるための第1の切欠きが形成され、前記第2のスペーサーに、前記第2のスパイクとの干渉を避けるための第2の切欠きが形成されている、請求項2に記載の骨切りブロック。
【請求項11】
前記第1のスパイクの前記本体部からの突出量が前記第1のスペーサーの厚さより大きい、又は、前記第2のスパイクの前記本体部からの突出量が前記第2のスペーサーの厚さより大きい、請求項10に記載の骨切りブロック。
【請求項12】
異なる厚さを有する複数の交換可能な前記第1のスペーサー又は異なる厚さを有する複数の交換可能な前記第2のスペーサーを備える、請求項2に記載の骨切りブロック。
【請求項13】
前記ガイド部が、
大腿骨前面を切除するための第1のガイド部と、
大腿骨後面を切除するための第2のガイド部と、
大腿骨後面チャンファーを切除するための第3のガイド部と、
大腿骨前面チャンファーを切除するための第4のガイド部と、
大腿骨遠位面を切除するための第5のガイド部と、
を備える、請求項1から12の何れかに記載の骨切りブロック。
【請求項14】
前記本体部の前面側に、インプラントの前面視形状に沿った外形を有するインジケーター部を備える、請求項1から12の何れかに記載の骨切りブロック。
【請求項15】
前記インジケーター部の、前記外形がフレーム状に形成され、内部が空間部である、請求項14に記載の骨切りブロック。
【請求項16】
前記インジケーター部の先端部に、大腿骨前面を切除する際の切除出口の位置を示す、先端インジケーターをさらに備える、請求項14に記載の骨切りブロック。
【請求項17】
前記先端インジケーターが、大腿骨に対する固定部である第1の固定部としての機能を備える、請求項16に記載の骨切りブロック。
【請求項18】
前記インジケーター部が、大腿骨に対する固定部である第2の固定部をさらに備え、前記第2の固定部の位置が、前記第1の固定部の位置よりも大腿骨前面側にオフセットされている、請求項17に記載の骨切りブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節置換術において、膝関節補綴具(大腿骨コンポーネント)を設置するために大腿骨の成形(カッティング)を行う際に使用する骨切りブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節置換術は、傷んだ軟骨、骨を人工膝関節(膝関節補綴具)の形に合わせて切除して、人工膝関節を骨の上に固定する(人工膝関節で置き換える)手術である。大腿骨を、大腿骨コンポーネントを設置するために成形(カッティング)する際、正確な切除面を形成するために、カッティング器具をガイドさせる骨切りブロックが用いられている。
このような骨切りブロックに関する技術が、特許文献1、2によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11-504532号公報
【特許文献2】特開2020-162959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨切りブロックは、通常、大腿骨に対して取り付けられるものであり、大腿骨の内側顆及び外側顆は、骨切りブロックを取り付けるための基準点となる。しかしながら、人工膝関節置換術が必要であるような場合には、内側顆若しくは外側顆において、摩耗等による欠損がある状態であることも多い。このような場合には、欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定してこれを基準点として、骨切りブロックが配置されることが望まれる。従って、このような「内側顆若しくは外側顆において欠損がある状態において、欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定してこれを基準点とすること」を、適切かつ容易に行うことができる骨切りブロックが求められている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、内側顆若しくは外側顆において欠損がある状態においても、欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定して、これを基準点とした位置決めが可能な骨切りブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
人工膝関節置換術に用いられる骨切りブロックであって、骨切り器具を案内するガイド部を有する本体部と、前記本体部の大腿骨に対する設置位置を調整するためのスペーサーであって、前記本体部と大腿骨との間に、前記本体部に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しないスペーサー、又は、前記本体部と大腿骨との間に、前記本体部に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しないスペーサーの、少なくとも一つと、を備える、骨切りブロック。
【0007】
(構成2)
前記大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しないスペーサーである第1のスペーサーと、前記大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しないスペーサーである第2のスペーサーと、を備える、構成1に記載の骨切りブロック。
【0008】
(構成3)
前記第1のスペーサーと前記第2のスペーサーが、共通の部材によって構成された、構成2に記載の骨切りブロック。
【0009】
(構成4)
前記第1および第2のスペーサーをスライドさせて着脱可能に保持する第1および第2のスロットを備え、前記スライドの方向が、前記本体部の大腿骨と対向する面と略平行である、構成2又は3に記載の骨切りブロック。
【0010】
(構成5)
前記第1および第2のスロットが、前記第1および第2のスペーサーを大腿骨前面側へスライドさせることで前記第1および第2のスペーサーを取り外し可能に構成されている、構成4に記載の骨切りブロック。
【0011】
(構成6)
前記第1または第2のスペーサーが前記本体部に取り付けられた状態において、前記スライドの方向とは異なる方向に前記本体部から突出する第1または第2の突出部を、前記第1または第2のスペーサーが備える、構成4又は5に記載の骨切りブロック。
【0012】
(構成7)
前記第1または第2のスペーサーが前記本体部に取り付けられた状態において、前記第1または第2のスペーサーの前記本体部から突出している部分の少なくとも一部において、凹凸面が形成されている、構成6に記載の骨切りブロック。
【0013】
(構成8)
前記第1または第2のスロットが、前記第1または第2のスペーサーのスライドの方向を規定する第1または第2のガイド部を有する、構成4から7の何れかに記載の骨切りブロック。
【0014】
(構成9)
前記第1または第2のスペーサーが、前記第1または第2のガイド部と係合する第1または第2の係合部を有する、構成8に記載の骨切りブロック。
【0015】
(構成10)
前記本体部の大腿骨と対向する面の大腿骨の内側顆と接触する位置に設けられた第1のスパイクと、大腿骨の外側顆と接触する位置に設けられた第2のスパイクとを備え、前記第1のスペーサーに、前記第1のスパイクとの干渉を避けるための第1の切欠きが形成され、前記第2のスペーサーに、前記第2のスパイクとの干渉を避けるための第2の切欠きが形成されている、構成2から9の何れかに記載の骨切りブロック。
【0016】
(構成11)
前記第1のスパイクの前記本体部からの突出量が前記第1のスペーサーの厚さより大きい、又は、前記第2のスパイクの前記本体部からの突出量が前記第2のスペーサーの厚さより大きい、構成10に記載の骨切りブロック。
【0017】
(構成12)
異なる厚さを有する複数の交換可能な前記第1のスペーサー又は異なる厚さを有する複数の交換可能な前記第2のスペーサーを備える、構成2から11の何れかに記載の骨切りブロック。
【0018】
(構成13)
前記ガイド部が、大腿骨前面を切除するための第1のガイド部と、大腿骨後面を切除するための第2のガイド部と、大腿骨後面チャンファーを切除するための第3のガイド部と、大腿骨前面チャンファーを切除するための第4のガイド部と、大腿骨遠位面を切除するための第5のガイド部と、を備える、構成1から12の何れかに記載の骨切りブロック。
【0019】
(構成14)
前記本体部の前面側に、インプラントの前面視形状に沿った外形を有するインジケーター部を備える、構成1から13の何れかに記載の骨切りブロック。
【0020】
(構成15)
前記インジケーター部の、前記外形がフレーム状に形成され、内部が空間部である、構成14に記載の骨切りブロック。
【0021】
(構成16)
前記インジケーター部の先端部に、大腿骨前面を切除する際の切除出口の位置を示す、先端インジケーターをさらに備える、構成14又は15に記載の骨切りブロック。
【0022】
(構成17)
前記先端インジケーターが、大腿骨に対する固定部である第1の固定部としての機能を備える、構成16に記載の骨切りブロック。
【0023】
(構成18)
前記インジケーター部が、大腿骨に対する固定部である第2の固定部をさらに備え、前記第2の固定部の位置が、前記第1の固定部の位置よりも大腿骨前面側にオフセットされている、構成17に記載の骨切りブロック。
【0024】
(構成19)
人工膝関節置換術に用いられ、大腿骨の遠位端を切るために用いられる骨切りブロックであって、骨切り器具を案内するガイド部を有する本体部と、大腿骨の遠位端を切る前に前記本体部に取り付けられ、前記本体部の大腿骨に対する設置位置を調整するための少なくとも1つのスペーサーであって、前記本体部と大腿骨との間に、前記本体部に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しない、又は、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しない、少なくとも1つのスペーサーと、を備える、骨切りブロック。
【0025】
(構成20)
前記少なくとも1つのスペーサーは、大腿骨の内側顆と接すると共に外側顆とは接しないように前記本体部に取り付けられ、及び、大腿骨の外側顆と接すると共に内側顆とは接しないように前記本体部に取り付けられる、構成19に記載の骨切りブロック。
【0026】
(構成21)
前記少なくとも1つのスペーサーは、前記大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しない第1のスペーサーと、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しない第2のスペーサーと、を備える、構成19に記載の骨切りブロック。
【発明の効果】
【0027】
本発明の骨切りブロックによれば、内側顆若しくは外側顆において欠損がある状態においても、欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定して、これを基準点とした位置決めを、適切かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る実施形態の骨切りブロックを示す斜視図
【
図10】骨切りブロックの本体部にスペーサーが取り付けられた状態を左側から見た図
【
図11】骨切りブロックの側部取付部材(右)を示す斜視図
【
図12】骨切りブロックの側部取付部材(右)を示す斜視図
【
図13】骨切りブロックのロッド取付部材の分解斜視図
【
図14】骨切りブロックのロッド取付部材の分解斜視図
【
図17】骨切りブロックがカット可能な切除面を説明する説明図
【
図18】前面視における、骨切りブロックと大腿骨コンポーネントの位置関係の概念図
【
図19】側面視における、骨切りブロックと大腿骨コンポーネントの位置関係の概念図
【
図20】骨切りブロックが大腿骨に配置された状態の模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0030】
図1、2は、本発明に係る実施形態の骨切りブロックをそれぞれ別の角度から見た斜視図である。本実施形態の骨切りブロックは、人工膝関節置換術において、大腿骨コンポーネントを設置するために大腿骨を成形(カッティング)する際に用いられる器具である。
図1、2では、左用及び右用の骨切りブロックを示しており、左用については本体部に各部材が取り付けられた状態、右用については本体部のみを示している。
本実施形態の骨切りブロックは、左用と右用で左右対称の構造であるため、以下では左用の骨切りブロック1Lについて説明し、右用の骨切りブロックの説明を省略する(右用の骨切りブロックも、下記で説明する左用の骨切りブロック1Lと同様の構造(左右対称)を有し、同様の作用機能を奏するものである)。
なお、周知のごとく、人工膝関節置換術における大腿骨のカッティングは屈曲位において行われ、骨切りブロックは大腿骨に取りつけられる。以下の説明では、この大腿骨への取り付け状態に(大腿骨の方向性に)基づき、
図20に示すように、前方、後方、内側、外側、近位、遠位を定める。なお、
図20は左足用を示しており、右足用については、前述のごとく左右対称となる。
【0031】
本実施形態の骨切りブロック1Lは、
骨切り器具を案内するガイド部を有する本体部1L1と、
本体部1L1の大腿骨に対する設置位置を調整するためのスペーサーであって、本体部1L1と大腿骨との間に、本体部1L1に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しないスペーサー(第1のスペーサー)と、
本体部1L1と大腿骨との間に、本体部1L1に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しないスペーサー(第2のスペーサー)と、
本体部1L1の前面側に備えられた、大腿骨コンポーネント(インプラント)の前面視形状に沿った外形を有するインジケーター部17Lと、
大腿骨の骨髄内管に取り付けられるロッド13と、
ロッド13を取り付けるためのロッド取付部材(14、15)と、
本体部1L1の両側面に備えられ、大腿骨へ固定ピンによって骨切りブロック1Lを取り付けるための側部取付部材16R、16Lと、
を備える。
なお、本実施形態では、第1のスペーサーと第2のスペーサーは、相互に利用可能な共通の部材(スペーサー12)であり、
図1、2では、左用の骨切りブロック1Lに第1のスペーサーとしてのスペーサー12が取り付けらえた状態を示している。
【0032】
(本体部)
図3~7は、本体部1L1を示す図であり、それぞれ、
図3:前方側から見た図、
図4:後方側から見た図、
図5:左足外側から見た図、
図6:近位側から見た図、
図7:遠位側から見た図である。
各図に示されるように、本体部1L1は、
第1および第2のスペーサー(スペーサー12)をスライドさせて着脱可能に保持する第1のスロットS1および第2のスロットS2と、
第1のスロットS1において第1のスペーサー(スペーサー12)のスライド方向を規定する第1のスライドガイド部S11、及び、第2のスロットS2において第2のスペーサー(スペーサー12)のスライド方向を規定する第2のスライドガイド部S21と、
本体部の大腿骨と対向する面の大腿骨の内側顆と接触する位置に設けられた第1のスパイクSP1、及び、大腿骨の外側顆と接触する位置に設けられた第2のスパイクSP2と、
骨切り器具を案内するガイド部G1-G5と、
大腿骨コンポーネント(インプラント)の前面視形状に沿った外形を有するインジケーター部17Lと、
インジケーター部17Lの先端部に備えられる、大腿骨前面を切除する際の切除出口の位置を示す先端インジケーター17L1と、
を備える。
また、本体部1L1には、各部材を取り付けるための取付構造や取り付け穴等が形成されている。
【0033】
(第1のスロットおよび第2のスロット)
第1のスロットS1と第2のスロットS2は、本体部1L1の前方側において近位側へと突出(
図5参照、
図5においては本体の上部において右側へ突出)し、インジケーター部17Lとの接続箇所となる部分において形成されている。これにより、本体部1L1の大腿骨と接触する側に、第1および第2のスペーサー(スペーサー12)が配されるように、即ち、スペーサー12が本体部1L1と大腿骨との間に配置されるように構成されている。
加えて、第1のスロットS1と第2のスロットS2は、それぞれ、本体部1L1の中心に対して内側、外側に配され、第1のスロットS1に収められる第1のスペーサーが大腿骨の内側顆、第2のスロットS2に収められる第2のスペーサーが大腿骨の外側顆にそれぞれ接するように形成されている。
また、第1のスロットS1と第2のスロットS2は、大腿骨の前面側及び後面側の方向へスライド可能となるように、第1および第2のスペーサー(スペーサー12)を受け入れるように構成され、大腿骨の前面側から第1および第2のスペーサーを取り外し可能に構成されている。
上記説明及び
図3~7から理解されるように、第1のスロットS1と第2のスロットS2は、第1のスペーサーと第2のスペーサーを、別個独立に着脱可能にさせるものである。
第1のスロットS1内から後方側へ延びるように、第1のスペーサーのスライド方向を規定する第1のスライドガイド部S11(本実施形態では溝部)が形成されており(
図6参照)、同様に、第2のスロットS2内から後方側へ延びるように、第2のスペーサーのスライド方向を規定する第2のスライドガイド部S21(溝部)が形成されている。
【0034】
(第1のスパイクおよび第2のスパイク)
本体部1L1の大腿骨と接する面に設けられた第1のスパイクSP1と第2のスパイクSP2は、それぞれ、大腿骨の内側顆と外側顆に打ち込まれることで、骨切りブロック1Lを大腿骨に設置する際の、骨切りブロック1Lの位置決めなどにおいて、作業性を向上させるものである。スパイクは、骨切りブロックの一時固定を目的として、内側顆、外側顆に軽く打込まれるもの(引っかかるようなイメージのもの)であればよく、例えば1mm程度の突出量を有する。
なお、以下で説明するスペーサーとの関係において、スペーサーが取りつけられた状態においても、スパイクの機能を発揮させるために、スペーサーが取りつけられた状態でスパイクがスペーサーから突出(例えば1mm程度突出)していることが望まれる。即ち、第1のスパイクの本体部からの突出量が第1のスペーサーの厚さより大きく、また、第2のスパイクの本体部からの突出量が第2のスペーサーの厚さより大きいように形成されるとより好ましい。「スペーサーが取りつけられた状態でスパイクがスペーサーから突出している」とは、
図10に示されるように、スペーサーが取り付けられた状態において、スパイクがスペーサーよりも近位側に突出しているものである。「スパイクの本体部からの突出量」は、
図10でT2として示したように、本体部1L1から近位側へ向かう方向におけるスパイクの高さである。即ち、T2が、スペーサーの厚さT1よりも大きくなるように形成されると、より好ましいものである。
例えばスペーサーの厚さT1が1~3mm程度のバリエーションを持って形成される場合、最大厚さの3mmのスペーサーが使用された場合においても1mm程度の突出が得られるように、スパイクの本体部からの突出量T2が4mmとなるように形成されると好ましい。
なお、厚さの異なるスペーサーが複数種類あることに対応するため、高さの異なるスパイクを本体部1L1に対して着脱可能に構成し、スペーサーの厚さに対応する高さのスパイクを取り付けるようにしてもよい。
また、スパイクを、スペーサーに設けるようにしてもよい。この場合、第1のスロットS1と第2のスロットS2を、スパイクを備えたスペーサーを挿通可能な形状とし、また、本体部に対してスペーサーを固定可能とする取り付け構造(例えば、本体部の遠位側からネジを挿通させてスペーサーをネジ止めする等)を設けるとよい。
【0035】
(ガイド部)
本体部1L1には、ボーンソー等の骨切り器具を案内する以下のガイド部が形成されている。
大腿骨前面を切除するための第1のガイド部G1、
大腿骨後面を切除するための第2のガイド部G2、
大腿骨後面チャンファーを切除するための第3のガイド部G3、
大腿骨前面チャンファーを切除するための第4のガイド部G4、
大腿骨遠位面を切除するための第5のガイド部G5。
本実施形態の骨切りブロック1Lは、ガイド部G1-G5を備えることにより、
図17にも示したように、大腿骨前面、大腿骨後面、大腿骨後面チャンファー、大腿骨前面チャンファー、大腿骨遠位面の切除を、1つの骨切りブロックで行えるという優れた作用効果を有する。なお、カッティングの際にスペーサー12が邪魔である場合には、スペーサー12を取り外してカッティングを行う。
スペーサー12、第1のスロットS1と第2のスロットS2、及び、第5のガイド部G5は、
図10、
図17からも理解されるように、スペーサー12を取り付けた状態において、大腿骨遠位面を切除できるように構成されている。即ち、本体部1L1にスペーサー12が取り付けられた状態において、スペーサー12が遠位切除面5(
図17)に干渉しないように、第5のガイド部G5が、本体部1L1に取り付けられたスペーサー12よりも近位側となる位置に形成されている。なお、スペーサー12を取り外して大腿骨遠位面を切除することも勿論可能である。
なお、上記説明の第5のガイド部G5を備えていることからも明らかなように、本実施形態の骨切りブロック1Lは、大腿骨の遠位面を切除するためにも用いられる。大腿骨遠位面の切除に使用するという事は、当然に、本実施形態の骨切りブロック1Lは大腿骨の遠位端を切る前に大腿骨に設置されるものであり、従って、大腿骨に対する骨切りブロック1Lの設置位置を調整するためのスペーサー12は、大腿骨の遠位端を切る前に本体部1L1に取り付けられるものである(なお、前述のごとく、大腿骨遠位面の切除の際にはスペーサーを取り外すこともできる)。
本実施形態では、ガイド部G1、G3-G5はスロットによって形成されており、ガイド部G2は本体部1L1の後面(ガイド面)にて構成されているものを例としているが、ガイド部G2についてもスロットによって形成するものであってもよく、また、ガイド部G1、G3-G5の何れかについて、スロットでは無く単なるガイド面で形成するものであってもよい。
【0036】
(インジケーター部)
インジケーター部17Lは、大腿骨コンポーネントの前面視形状に沿う形状を有し、本体部1L1の前方側に形成され、前方側から見た際に、大腿骨コンポーネント(インプラント)が設置された場合における大腿骨コンポーネントの前面視形状を模すように構成されている。
骨切りブロック1Lは、大腿骨コンポーネントを設置するための切除面を形成するためのものであり、従って、当該切除面に設置される大腿骨コンポーネントと骨切りブロック1Lの位置には相関がある。従って、骨切りブロック1Lに形成されているインジケーター部17Lは、大腿骨に設置される大腿骨コンポーネントの位置をほぼ正確に示し得るものである。この点を説明する説明図として、
図18に、前面視における、骨切りブロック1Lと大腿骨コンポーネントの位置関係の概念図を示した。実際には、骨切りブロック1Lが設置されている状態では大腿骨コンポーネントは存在しないが、骨切りブロック1Lによって切除された大腿骨に大腿骨コンポーネントが取り付けられたと仮定した場合の位置関係を示しているものである。
本実施形態のインジケーター部17Lは、外形がフレーム状に形成され、内部が空間部とされているため、施術中の視界が良好に保たれると共に、大腿骨コンポーネントの設置状態をイメージできるため、非常に有用である。
なお、インジケーター部17L(フレーム)の内部を空間部とすることは必須のものではなく、フレームの内部を透視可能な部材で構成するものであってもよいし、不透明な部材で構成されていてもよい。ただし、本実施形態によれば、空間部であることによるアクセス性や、光透過性であることによる視認性が得られる点で、優れている。
なお、本実施形態では、インジケーター部17Lが本体部1L1と一体的に形成されているものを例としているが、インジケーター部が本体部に対して着脱可能な構成としてもよい。
【0037】
(先端インジケーター)
インジケーター部17Lの先端部(近位側)には、大腿骨前面を切除する際の切除出口の位置を示す先端インジケーター17L1が形成されている。
図19には、側面視における、骨切りブロック1Lと大腿骨コンポーネントの位置関係の概念図(
図18の側面図)を示した。
図17及び
図19からも理解されるように、先端インジケーター17L1は、大腿骨前面を切除する際の切除出口(前面切除面1(
図17)の近位側の端部)の位置に対応するため、大腿骨コンポーネントの設置状態をイメージでき、非常に有用である。
先端インジケーター17L1は、大腿骨に対する固定部である第1の固定部としての機能も有している。即ち、固定ピンを挿通させる挿通穴を有しており、固定ピンによって大腿骨への取り付けを行わせるものである。
また、インジケーター部17Lには、大腿骨に対する固定部である第2の固定部17L2をさらに備えている。第2の固定部17L2は、第1の固定部(先端インジケーター17L1)と同様に、固定ピンを挿通させる挿通穴を有しており、固定ピンによって大腿骨への取り付けを行わせるものである。
図5からも理解されるように、第2の固定部17L2の位置は、第1の固定部(先端インジケーター17L1)の位置よりも前面側にオフセットされている。これにより、大腿骨への取り付けの際に、第1の固定部のみが大腿骨に接し、ロッド13の長手方向を軸として回転させるような角度調整がし易くなるという優れた作用効果が得られる。
また、
図3や
図6等からも理解されるように、本実施形態では、第1の固定部(先端インジケーター17L1)における固定ピンの挿通方向と、第2の固定部17L2の固定ピンの挿通方向が、異なる方向となるように構成されている。これにより、骨切りブロック1Lの大腿骨への取り付けを強固なものにし、またガタツキの防止もできる。
【0038】
(第1のスペーサーおよび第2のスペーサー)
図8及び
図9は、スペーサー12をそれぞれ別の角度から見た斜視図である。
前述のごとく、本体部1L1と大腿骨の内側顆との間に設けられるのが第1のスペーサーで、本体部1L1と大腿骨の外側顆との間に設けられるのが第2のスペーサーであるが、本実施形態においては、スペーサー12が第1のスペーサーおよび第2のスペーサーの両方に共通して使用される。なお、第1のスペーサーと第2のスペーサーが異なるものであっても構わない。
各図では、2mmの厚さのスペーサー12が1つだけ示されているが、本実施形態の骨切りブロック1Lは、異なる厚さを有する複数の交換可能なスペーサーを備えており、第1のスロットS1と第2のスロットS2の何れか一方若しくは両方に、任意の組み合わせのスペーサーを設置することができる。
これにより、内側顆若しくは外側顆において、摩耗等による欠損がある場合において、その欠損の度合いに応じたスペーサーを左右独立に選択することができるため、「内側顆若しくは外側顆において欠損がある状態において、欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定してこれを基準点とすること」を、適切かつ容易に行うことができるという、非常に優れた作用効果を奏する。
なお、上記のごとく、内側顆と外側顆に対応する第1のスペーサーおよび第2のスペーサーの双方を着脱可能に構成することが好ましいが、大腿骨の内側顆と接し外側顆とは接しないスペーサー又は大腿骨の外側顆と接し内側顆とは接しないスペーサーの何れか一方のみ着脱可能にする骨切りブロックであってもよい。即ち、「本体部の大腿骨に対する設置位置を調整するための少なくとも1つのスペーサーであって、前記本体部と大腿骨との間に、前記本体部に対して着脱可能に設けられ、大腿骨の内側顆と接し、外側顆とは接しない、又は、大腿骨の外側顆と接し、内側顆とは接しない、少なくとも1つのスペーサーと、を備える、骨切りブロック」であってもよい。
【0039】
図8に示されるように、スペーサー12は、その遠位側の面に、本体部1L1に形成された第1のスライドガイド部S11(溝部)又は第2のスライドガイド部S21(溝部)と係合する、係合部(第1または第2の係合部、本実施形態ではリブ)123を有している。これにより、スペーサー12の取り付け時に、スペーサー12の位置決めが安定し、本体部1L1と内側顆若しくは外側顆の間に適切に取り付けられるものである。
なお、本実施形態では、本体部1L1側のガイド部が溝状、スペーサー12側の係合部がリブ状に形成されるものを例としたが、これが逆の関係(本体部側がリブ状、スペーサー側が溝状)であっても構わない。また、両者をスライド可能に且つそのスライド方向を規制できる任意の係合機構(例えば、リブの代わりに直線状に配置された複数の突起を設ける等)を用いることができる。
【0040】
スペーサー12の前方側(
図10における上部)には、前方-後方の方向に延びるスペーサー12に対して略直角に屈曲したつまみ部121が備えられる。
図10は、本体部1L1にスペーサー12を取り付けた状態を外側から見た図である。
同図からも理解されるように、スペーサー12が本体部1L1に取り付けられた状態において、つまみ部121は、本体部1L1から突出している(本体部から突出する第1または第2の突出部を構成する)。当該構成により、つまみ部121を持ってスペーサー12を取り外す作業等において、手掛かりが良く、作業性に優れるものである。
また、スペーサー12のつまみ部121(第1または第2の突出部)が形成されている面の反対面には、凹凸面122が形成されている。凹凸面122は主にすべり止めを目的としたものである。施術中においては手術用手袋に血液などが付着した状態であり、滑りやすい状況下となるが、上記のつまみ部121の構成や凹凸面122によって、滑り等が低減され、作業性が向上する。
なお、本実施形態では、つまみ部121が略直角に屈曲したものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、少なくともスペーサーのスライド方向とは異なる方向に本体部から突出して形成されるものであればよい。また、凹凸面は、スペーサーが本体部に取り付けられた状態において、スペーサーが本体部から突出している部分の少なくとも一部において形成されるものであればよい。
【0041】
スペーサー12の後方側(
図8、9における下部)には、切欠き124が形成されており、これにより、スペーサー12の後面側は二股状となっている。
この切欠き124は、
図16(骨切りブロック1Lを近位側から見た斜視図)からも理解されるように、第1のスパイクSP1若しくは第2のスパイクSP2との干渉を避けるための切欠き(第1の切欠き若しくは第2の切欠き)である。
なお、スペーサーとスパイクの位置関係を、相互に干渉しないような配置とすれば、スペーサーに切欠きは不要である。しかしながら、本実施形態のように切欠き(必ずしも二股状であるものに限られない)を設ける構成とすること、即ち、スペーサーが配置される範囲内にスパイクが位置する構成とすることにより、スペーサー及びスパイクの何れについても、内側顆若しくは外側顆に対して、より適切な接触をさせることができるため、好適である。
ただし、前述のように、スパイクを本体部に対して着脱可能とし、且つ、スペーサーにスパイクを設ける場合には、切欠き(第1の切欠き若しくは第2の切欠き)は不要である。
【0042】
(側部取付部材)
図11及び
図12は、側部取付部材16Rをそれぞれ別の角度から見た斜視図である。なお、側部取付部材16Rは、本体部1L1の内側面側に取り付けられるものであり、側部取付部材16Lが外側面側に取り付けられるものであるが、両者は左右対称の構造のものであるため、ここでは側部取付部材16Rについて説明し、側部取付部材16Lの説明は省略する。
側部取付部材16Rは、本体部1L1の内側面側に取り付けられ、固定ピンを挿通させる挿通穴H5、H6を有し、固定ピンによる大腿骨への骨切りブロック1Lの取り付けを行わせるものである。なお、挿通穴H5における固定ピンの挿通方向と、挿通穴H6の固定ピンの挿通方向は、異なる方向となるように構成されている。前述と同様に、取り付け強度の向上やガタツキ防止のためである。
側部取付部材16Rの本体部1L1への取り付けは、挿通ピン161と、取付ネジ162によって行われる。挿通ピン161は、本体部1L1の内側面に形成されている挿通穴H3R(
図5の挿通穴H3L参照。
図5は外側面であるが、内側面の挿通穴H3Rも同様の構成(左右対称))に、摺動可能に挿通される。取付ネジ162は、本体部1L1の内側面に形成されているネジ穴H4R(
図5のネジ穴H4L参照。
図5は外側面であるが、内側面のネジ穴H4Rも同様の構成(左右対称))に対して螺合される。
図12に示されるように、取付ネジ162には、2枚のフランジ1621が形成され、その間に段差凹部が形成されている。側部取付部材16Rは、取付ネジ162を摺動可能に受け入れる長円穴を有するネジ挿通部163を有し、長円穴内には、取付ネジ162の段差凹部と摺動可能に係合するリブ164が形成されている。これらの構成により、取付ネジ162は、側部取付部材16Rに対して、回転可能で、ネジの軸線方向には移動不能、且つ、長円穴内の長径方向に摺動可能に設けられる。
このような構成により、挿通ピン161を本体部1L1の挿通穴H3Rに挿通させ、取付ネジ162を本体部1L1のネジ穴H4Rの螺合させることで、側部取付部材16Rの本体部1L1への取り付けができ、取付ネジ162を回すことにより、側部取付部材16Rと本体部1L1との間の距離の調整が可能となる。
図11、12等からも理解されるように、挿通ピン161と取付ネジ162の長手方向は相互に平行ではないように構成され(当該構成の結果、ネジ挿通部163は長円穴とされている)、これによって、部品間のガタツキの低減が図られる。
【0043】
(ロッド及びロッド取付部材)
図13及び
図14は、ロッドの取り付け構造を説明するための分解斜視図であり、それぞれ別の角度から見た斜視図である。
ロッド13は、ロッド受け部材14とネジ頭部材15からなるロッド取付部材によって、本体部1L1に対して取り付けられる。
本体部1L1には、その後面側の穴H2(
図14参照)から前面側へと向かう円筒状の空洞部が形成されており、
図6、7に示されるように、本体部1L1の遠位側の面及び近位側の面の双方から円筒状の空洞部に連通する穴が形成されることで、ウィンドウ部Wが形成されている。
本体部1L1の前面側からは穴H1(
図3参照)が形成され、円筒状の空洞部と連通している。穴H1は、穴H2(即ち円筒状の空洞部)よりも小さい径で形成される。
ロッド受け部材14は、後方側に円柱部141を有し、前方側にネジ部142を有する。円柱部141はネジ部142よりも大きな径で形成され、円筒状の空洞部に対応した径(円筒状の空洞部に対して大きなガタつきなく且つ摺動可能に収まる径)にて形成される。ネジ部142は、穴H1を挿通可能な径で形成される。
これらの構成により、本体部1L1の後面側の穴H2に対して挿通されるロッド受け部材14は、その円柱部141が円筒状の空洞部内に配され、ネジ部142(の先端部)が穴H1から突出することになる。
ネジ頭部材15は、後面側にロッド受け部材14のネジ部と螺合するネジ穴H8が形成され(
図14参照)、また、後方側にフランジ151が形成されている。また、ネジ頭部材15は、手でつまんで回しやすいような形状を有している。
本体部1L1の前方側には、フランジ151をスライドして受け入れ、遠位-近位方向には移動できないように且つ回転可能にフランジ151を受け入れる、ネジ頭受入部1L11が形成されている。ネジ頭受入部1L11にネジ頭部材15が配された際に、穴H1とネジ穴H8の位置が合う(両者が対向する)ように構成されている。
ロッド受け部材14の円柱部141には、ロッド13を受け入れるロッド穴H7が形成されている。
以上の構成を有するロッド取付部材により、
図13及び
図14からも理解されるように、以下によってロッド13が本体部1L1に取り付けられる。
1.先ず、ネジ頭部材15のフランジ151を本体部1L1のネジ頭受入部1L11に取り付ける。
2.ロッド受け部材14を本体部1L1の後面側の穴H2から挿通させ、ネジ頭部材15を回す等して、ロッド受け部材14とネジ頭部材15を螺合させる。
3.ロッド13を、ロッド穴H7に挿通する。
上記構成により、ネジ頭部材15を回すことで、ロッド13の前方-後方の方向の位置を調整することができる。
図7に示されるように、本体部1L1の遠位側の面のウィンドウ部Wの脇にはスケールSCが設けられており、ロッド13の前方-後方の方向の位置の目安となる。
また、上記構成により、ロッド13に対して本体部1L1は首振り可能である。
【0044】
図15、
図16には、以上で説明してきた骨切りブロック1Lの各部材が組み立てられた状態の、それぞれ異なる方向から見た斜視図を示した。また、
図20には、骨切りブロック1Lが大腿骨に配置された状態の模式図を示した。
ロッド13自体は、大腿骨に予め形成された穴に対して挿入されるものであるため、大腿骨の穴が形成された後は一義的にロッド13の位置が決まるものとなる(ただし、ロッドの軸線周りにおける回転は可能)。このロッド13に対し、本実施形態の骨切りブロック1Lは、上述したように、首振り可能に設けられ、また、前方-後方の方向に移動可能に設けられる。また、両サイドの側部取付部材16L、Rは、本体部1L1に対する出幅の調整が可能である。これらの構成により、多種多様な形状の大腿骨に対して骨切りブロック1Lを適切な位置に調整することを効率的に行うことができる。
さらに、本実施形態では、スペーサー12が左右独立して着脱可能であることにより、大腿骨に対する骨切りブロック1Lの位置決めをより適切且つ容易にすることができる。
例えば、内側顆にすり減りがみられる場合には、第1のスロットS1にすり減りの度合いに応じたスペーサー12を取り付けることで、疑似的に内側顆の欠損が補填された状態にすることができる。これにより、大腿骨に対する骨切りブロック1Lの位置決めにおいて、単に大腿骨に骨切りブロック1Lの近位側の面を接するように設置するだけで(この際にスペーサー12がすり減った内側顆に接し、スペーサー12によってすり減り分がオフセットされる)、「欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定してこれを基準点とすること」が容易にできる。
上記により、大腿骨に対する骨切りブロック1Lの位置決めが適切にされた状態において、各固定ピンによって骨切りブロック1Lを大腿骨に固定することで、適切な位置に骨切りブロック1Lが設置される。この固定においても、上記で説明してきたような各固定ピンを挿通させる構成により、骨切りブロック1Lが大腿骨に適切に固定され、ガタツキの低減等が図られる。
なお、骨切りブロック1Lが大腿骨に固定された後は、スペーサー12は取り外すことができる(例えば、前述したように、カッティングの際にスペーサーが邪魔になる等には取り外すことができる)。
【0045】
以上のごとく、本実施形態の骨切りブロックによれば、異なる厚さを有する複数の交換可能なスペーサーを備えており、内側顆若しくは外側顆において摩耗等による欠損がある場合において、その欠損の度合いに応じたスペーサーを内外独立に選択することができるため、「欠損が無い状態の内側顆若しくは外側顆を想定してこれを基準点とすること」を、適切かつ容易に行うことができるという、非常に優れた作用効果を奏する。
また、本実施形態の骨切りブロックによれば、大腿骨コンポーネントの前面視形状に沿う形状のインジケーター部17Lを備えることにより、大腿骨コンポーネントの設置状態をイメージできるため、非常に有用である。加えて、大腿骨前面を切除する際の切除出口の位置に対応する先端インジケーター17L1を備えるため、これによっても大腿骨コンポーネントの設置状態をイメージでき、非常に有用である。
【0046】
なお、本実施形態では、患者の骨髄内管に設置したロッドを用いる方式の骨切りブロックを例として説明しているが、本発明をこれに限るものでは無い。上記説明した内外独立の着脱可能なスペーサーの概念や、インジケーター(インジケーター部、先端インジケーター)の概念は、ロッドを用いない方式の骨切りブロックに対しても適用することができる。
【0047】
本実施形態では、第1のスロットS1と第2のスロットS2が、大腿骨の前方側及び後方側の方向へスライド可能となるように、第1および第2のスペーサー(スペーサー12)を受け入れるように構成され、大腿骨の前方側から第1および第2のスペーサーを取り外し可能に構成されているものを例としたが、本発明をこれに限るものではない。本実施形態の構成によれば、前方側からスペーサーを取り外し可能であるため、術中のアクセス性に優れており、非常に好適なものであるが、スライドの方向は、本体部の大腿骨と対向する面と略平行である任意の方向とすることができる。このような構成により、骨切りブロックを大腿骨に取り付けた状態においても、スペーサーをスライドさせて取り外すことができるため好適である。
なお、スペーサーをスライド可能に本体部に取り付けるものに本発明を限定するものではなく、第1スペーサーと第2のスペーサーを別個独立に本体部に取り付け可能な任意の構成(例えば、ネジ止めによって取り付けるものや、嵌合によって取り付けるもの、或いは磁石によって取り付けるもの等)を用いるものであってよい。
【0048】
本実施形態では、ガイド部G1-G5を備えることにより、大腿骨前面、大腿骨後面、大腿骨後面チャンファー、大腿骨前面チャンファー、大腿骨遠位面の切除を、1つの骨切りブロックで行える(アタッチメントの脱着なども要しない)ため、非常に好適なものであるが、本発明をこれに限るものではなく、少なくとも一つの面の切除において、骨切り器具を案内することができるものであればよい。
【符号の説明】
【0049】
1L...骨切りブロック
1L1...本体部
12...スペーサー(第1、第2のスペーサー)
121...つまみ部(第1、第2の突出部)
122...凹凸面
123...係合部(第1、第2の係合部)
124...切欠き(第1、第2の切欠き)
13...ロッド
17L...インジケーター部
17L1...先端インジケーター(第1の固定部)
17L2...第2の固定部
G1~G5...第1~第5のガイド部
S1、S2...第1、第2のスロット
S11、S21...第1、第2のガイド部
SP1、SP2...第1、第2のスパイク