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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184043
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】水流発電装置及び航走体
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/10 20060101AFI20231221BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
F03B13/10
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097940
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100224546
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 龍
(72)【発明者】
【氏名】石黒 泰大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】百々 泰
(72)【発明者】
【氏名】魚路 知生
【テーマコード(参考)】
3H074
4D061
【Fターム(参考)】
3H074AA08
3H074AA12
3H074BB21
3H074CC16
4D061DA04
4D061DB10
4D061EA02
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB30
(57)【要約】
【課題】長期間にわたってセンサの精度の低下を抑制する。
【解決手段】本開示の一形態に係る発電装置1は、発電機4を搭載する基体2と、発電機4に連結され、海流FWを受けて回転可能なタービン3と、基体2の外部に配置され、基体2の周辺の情報を取得するセンサユニット50と、基体2の内部又は外部に配置される陽極71及び陰極72を有する電極対73と、電極対73と電気的に接続され、電極対73を流れる海水Wを電気分解するための電圧を電極対73に印加する電圧印加部74と、を備え、電極対73は、海水Wの流れ方向を基準とした場合に、基体2の上流側Uからセンサユニット50を通って下流側Dに流れる海水Wの流動経路Rにおいて、センサユニット50よりも上流側Uに配置されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機を搭載する基体と、
前記発電機に連結され、水流を受けて回転可能なタービンと、
前記基体の外部に配置され、前記基体の周辺の情報を取得するセンサユニットと、
前記基体の内部又は外部に配置される第1電極及び第2電極を有する電極対と、
前記電極対と電気的に接続され、前記電極対を流れる液体を電気分解するための電圧を前記電極対に印加する電圧印加部と、
を備え、
前記電極対は、前記液体の流れ方向を基準とした場合に、前記基体の上流側から前記センサユニットを通って下流側に流れる前記液体の流動経路において、前記センサユニットよりも前記上流側に配置されている、水流発電装置。
【請求項2】
前記基体の内部に設けられるバラストタンクと、
前記基体の内部において前記バラストタンクを経由する前記流動経路を構成し、前記バラストタンクに対し注排水を行う配管と、
を更に備え、
前記電極対は、前記配管の内部に配置され、
前記配管は、前記バラストタンクから前記基体の外部へ前記液体を排出する排水口を有し、
前記排水口は、前記センサユニットよりも前記上流側に配置されている、請求項1に記載の水流発電装置。
【請求項3】
前記配管には、前記バラストタンクから前記基体の外部へ前記液体を送出するポンプが設けられ、
前記電極対は、前記配管の内部において前記ポンプよりも前記上流側に配置されている、請求項2に記載の水流発電装置。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極は、前記配管の延在方向に沿って延びており、前記延在方向と交差する方向に離間している、請求項2に記載の水流発電装置。
【請求項5】
前記センサユニットは、第1センサと、前記流れ方向に沿って前記第1センサと並んで配置される第2センサと、を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水流発電装置。
【請求項6】
前記タービンは、前記基体における前記下流側の部分に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の水流発電装置。
【請求項7】
水中又は水面を移動可能な基体と、
前記基体の外部に配置され、前記基体の周辺の情報を取得するセンサユニットと、
前記基体の内部又は外部に配置される第1電極及び第2電極を有する電極対と、
前記電極対と電気的に接続され、前記電極対を流れる液体を電気分解するための電圧を前記電極対に印加する電圧印加部と、
を備え、
前記電極対は、前記液体の流れ方向を基準とした場合に、前記基体の上流側から前記センサユニットを通って下流側に流れる前記液体の流動経路において、前記センサユニットよりも前記上流側に配置されている、航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水流発電装置及び航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
発電装置に関する技術として、例えば、特許文献1~特許文献6に記載された技術が知られている。例えば、特許文献1は、水中を浮遊する浮体の内部に発電機を備える発電装置を開示する。この発電装置では、発電機のロータに接続された回転軸に回転羽根が設けられ、回転羽根が水流を受けて回転することによって発電機が発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-039130号公報
【特許文献2】特開2016-074395号公報
【特許文献3】特開2012-217242号公報
【特許文献4】特開2019-147510号公報
【特許文献5】特開2019-209966号公報
【特許文献6】国際公報第2016/203621号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような発電装置において、水中における浮体の周辺情報を取得するために、例えば流速センサ或いは音響測位センサといったセンサが浮体の外部に設置されることがある。水中に配置される発電装置にはフジツボ等の生物が付着することがあり、このような生物がセンサに付着すると、生物による付着物が妨げとなってセンサの精度が低下し得る。このような付着物は、通常、定期的に行われるメンテナンスによって除去されるが、時間の経過に伴ってセンサ等に再度形成され、再度センサの精度の低下を招き得る。そこで、付着物を除去してセンサの精度を長期的に維持するために、メンテナンスの間隔を短くすることが考えられる。しかしながら、メンテナンスの実施には多くの手間及びコストを要するため、メンテナンスの間隔を短くすることには限界がある。従って、このような手法では、センサの精度を長期的に維持することは難しい。
【0005】
本開示は、長期間にわたってセンサの精度の低下を抑制できる水流発電装置及び航走体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る水流発電装置は、発電機を搭載する基体と、発電機に連結され、水流を受けて回転可能なタービンと、基体の外部に配置され、基体の周辺の情報を取得するセンサユニットと、基体の内部又は外部に配置される第1電極及び第2電極を有する電極対と、電極対と電気的に接続され、電極対を流れる液体を電気分解するための電圧を電極対に印加する電圧印加部と、を備え、電極対は、液体の流れ方向を基準とした場合に、基体の上流側からセンサユニットを通って下流側に流れる液体の流動経路において、センサユニットよりも上流側に配置されている。
【0007】
上記の水流発電装置では、基体の内部又は外部に電極対が設けられており、電極対には、電極対の周囲の液体を電気分解するための電圧が印加される。例えば、海水成分を含む液体が電気分解されると、次亜塩素酸ナトリウムが生成される。次亜塩素酸ナトリウムは、フジツボ等の生物に対する忌諱効果を有する。そこで、上記の水流発電装置では、次亜塩素酸ナトリウムを生成可能な電極対が、基体の上流側からセンサユニットを通って下流側に流れる液体の流動経路において、センサユニットよりも上流側に配置されている。これにより、電極対を流れる液体の流れを利用して、電極対において生成される次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニットへ移動させることができる。次亜塩素酸ナトリウムの忌諱効果によりセンサユニットへの生物の付着を抑制することで、生物の付着に起因するセンサユニットの精度の低下を長期間にわたって抑制することが可能となる。また、水流を利用して液体が流動経路を流れるように構成すれば、電極対からセンサユニットへ次亜塩素酸ナトリウムを移動させるためのポンプを別途用意しなくて済むため、ポンプの駆動のための消費電力を抑えることも可能となる。
【0008】
いくつかの態様において、上記の水流発電装置は、基体の内部に設けられるバラストタンクと、基体の内部においてバラストタンクを経由する流動経路を構成し、バラストタンクに対し注排水を行う配管と、を更に備え、電極対は、配管の内部に配置され、配管は、バラストタンクから基体の外部へ液体を排出する排水口を有し、排水口は、センサユニットよりも上流側に配置されていてもよい。この場合、電極対への電圧の印加によって生成された次亜塩素酸ナトリウムは、配管を通って排水口から基体の外部に排出され、排水口よりも下流側のセンサユニットに流れる。このように次亜塩素酸ナトリウムが配管を経由してセンサユニットに流れるように構成すれば、センサユニットへの生物の付着を抑制する効果と、配管の内面への生物の付着を抑制する効果との両方を得ることができる。これにより、生物の付着に起因するセンサユニットの精度の低下を抑制すると共に、生物の付着に起因する配管の詰まりを抑制することが可能となる。
【0009】
いくつかの態様において、配管には、バラストタンクから基体の外部へ液体を送出するポンプが設けられ、電極対は、配管の内部においてポンプよりも上流側に配置されていてもよい。この場合、基体の外部へ液体を送出するためのポンプを利用して、電極対において生成される次亜塩素酸ナトリウムを配管の内面及びセンサユニットへより確実に行き渡らせることができる。これにより、センサユニットへの生物の付着を抑制する効果と、配管の内面への生物の付着を抑制する効果と、をより確実に得ることができる。
【0010】
いくつかの態様において、第1電極及び第2電極は、配管の延在方向に沿って延びており、延在方向と交差する方向に離間していてもよい。この場合、配管の内部の液体の流れを阻害することなく、次亜塩素酸ナトリウムを配管の内面及びセンサユニットへ行き渡らせることができる。
【0011】
いくつかの態様において、センサユニットは、第1センサと、流れ方向に沿って第1センサと並んで配置される第2センサと、を有していてもよい。この場合、液体の流れを利用して、次亜塩素酸ナトリウムを複数のセンサに容易に行き届かせることができる。
【0012】
いくつかの態様において、タービンは、基体における下流側の部分に設けられていてもよい。この場合、基体において水流の上流側の部分にタービンが設けられる場合と比べて、タービンの回転による流れの乱れが、電極対からセンサユニットへの液体の流れに影響を及ぼす可能性を低減できる。これにより、液体の流れを利用して電極対からセンサユニットへ次亜塩素酸ナトリウムを移動させる構成をより確実に実現できる。
【0013】
本開示の他の形態に係る航走体は、水中又は水面を移動可能な基体と、基体の外部に配置され、基体の周辺の情報を取得するセンサユニットと、基体の内部又は外部に配置される第1電極及び第2電極を有する電極対と、電極対と電気的に接続され、電極対を流れる液体を電気分解するための電圧を電極対に印加する電圧印加部と、を備え、電極対は、液体の流れ方向を基準とした場合に、基体の上流側からセンサユニットを通って下流側に流れる液体の流動経路において、センサユニットよりも上流側に配置されている。
【0014】
上記の航走体では、基体の内部又は外部に電極対が設けられており、電極対には、電極対の周囲の液体を電気分解するための電圧が印加される。例えば、海水成分を含む液体が電気分解されると、次亜塩素酸ナトリウムが生成される。次亜塩素酸ナトリウムは、フジツボ等の生物に対する忌諱効果を有する。そこで、上記の航走体では、次亜塩素酸ナトリウムを生成可能な電極対が、基体の上流側からセンサユニットを通って下流側に流れる液体の流動経路において、センサユニットよりも上流側に配置されている。これにより、基体の移動に伴って流れる液体の流れを利用して、電極対において生成される次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニットへ移動させることができる。その結果、次亜塩素酸ナトリウムの忌諱効果によってセンサユニットへの生物の付着を抑制できるので、生物の付着に起因するセンサユニットの精度の低下を抑制できる。このように次亜塩素酸ナトリウムによってセンサユニットを保護することで、長期間にわたってセンサユニットの精度を維持することが可能となる。また、基体の移動に伴って生じる水流を利用して液体が流動経路を流れるように構成すれば、電極対からセンサユニットへ次亜塩素酸ナトリウムを移動させるためのポンプを別途用意しなくて済むため、ポンプの駆動のための消費電力を抑えることも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、長期間にわたってセンサの精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る水流発電装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、図1の水流発電装置の発電用ポッドの概略構成を示す図である。
図3図3は、図1の水流発電装置の生物付着防止装置の概略構成を示す図である。
図4図4は、変形例に係る水流発電装置の概略構成を示す図である。
図5図5は、第2実施形態に係る航走体の概略構成を示す図である。
図6図6は、図5の航走体の生物付着防止装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0018】
<第1実施形態>
図1を参照し、第1実施形態に係る水流発電装置について説明する。図1に示される水流発電装置1は、水流を利用して発電を行う水中浮遊式の発電装置である。以下、「水流発電装置1」を「発電装置1」と記す。発電装置1は、例えば、海中に設置され、海流FW(水流)によって発電する場合に用いられる。以下の説明において、「上流側U」又は「下流側D」との語は、後述する流動経路Rを流れる海水W(液体)の流れを基準として用いられる。「上流側U」は、流動経路Rにおける海水Wの流れ方向の上流側を意味する。「下流側D」は、流動経路Rにおける海水Wの流れ方向の下流側を意味する。また、「前」との語は上流側Uを意味し、「後」との語は下流側Dを意味する。
【0019】
発電装置1は、基体2と、タービン3,3と、発電機4,4と、を備える。基体2は、一対のポッドとしての発電用ポッド21,21と、ビーム22と、を有する。発電用ポッド21,21は、水中を浮遊可能な浮体である。発電用ポッド21,21の形状は、例えば、円筒形状である。発電用ポッド21,21それぞれの内部には、発電機4が搭載されている。発電用ポッド21,21は、例えば左右に離間して配置されている。発電用ポッド21,21は、例えば互いに同一の構造を有する。発電用ポッド21,21は、ビーム22によって連結されている。ビーム22は、例えば水平に配置された矩形の板状体である。
【0020】
発電用ポッド21,21は、水底に配置されたシンカ5に係留索6を介して接続されている。シンカ5は、例えば摩擦式のシンカでもよく、その他のシンカでもよい。なお、シンカ5に代えて水底に固定されたアンカに係留索6が接続されてもよい。アンカは、パイル式のアンカでもよく、サクション式のアンカでもよく、その他のアンカでもよい。係留索6の下端はシンカ5に接続され、係留索6の上端は発電用ポッド21,21に接続されている。係留索6の上端は、例えば発電用ポッド21,21にそれぞれ接続されている。係留索6の上端は、発電用ポッド21,21に代えて、ビーム22に接続されていてもよい。
【0021】
発電用ポッド21,21には、それぞれケーブル7が接続されている。ケーブル7は、発電機4,4によって生成された電力を伝送するための送電ケーブルと、陸上設備(不図示)と通信するための通信ケーブルと、を含む。ケーブル7は、係留索6に沿って発電機4,4からシンカ5に向けて延びるとともに、水底に沿って係留索6から陸上設備に向けて延びている。
【0022】
タービン3,3は、発電用のタービンである。タービン3,3は、海流FWを受けて回転するように構成されている。タービン3,3は、発電用ポッド21,21にそれぞれ設けられている。タービン3,3は、例えば互いに同一の構造を有する。それぞれのタービン3は、発電用ポッド21の下流側Dの後部に設けられている。本実施形態において、タービン3は、いわゆるダウンウィンド型のタービンである。なお、タービン3は、アップウィンド型のタービンであってもよい。この場合、タービン3は、発電用ポッド21の上流側Uの前部に設けられる。
【0023】
図2は、発電用ポッド21の概略構成を示している。タービン3は、発電機4に連結されている。タービン3は、ハブ31と、複数のブレード32と、を有する。ハブ31は、発電用ポッド21の前後方向に沿う軸線まわりに回転可能に設けられている。具体的には、発電機4の回転軸41にハブ31が取り付けられている。ハブ31は、回転軸41と一体に回転する。ブレード32は、海流FWを受けて回転力を発生させる翼部材である。ブレード32は、ハブ31の外周に径方向へ向けて設けられている。発電機4は、タービン3の回転の運動エネルギを電気エネルギに変換する機器であり、タービン3の回転力を受けて発電する。
【0024】
図2に示されるように、発電装置1は、センサユニット50と、浮力調整機構60と、生物付着防止装置70と、を更に備えている。センサユニット50は、発電用ポッド21の外面21aに配置されている。センサユニット50は、例えば、外面21aのうち下側を向く底部21Pに設置されている。センサユニット50は、外面21aに対して直接固定されてもよいし、外面21aに対して他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。センサユニット50は、例えば、発電用ポッド21,21の両方にそれぞれ設けられていてもよいし、発電用ポッド21,21のうちのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0025】
センサユニット50は、センサ51(第1センサ)と、センサ52(第2センサ)と、を有している。センサ51,52は、外面21aにおいて、海流FWの流れ方向に沿って並んで配置されている。センサ52は、センサ51に対して下流側Dに離間した位置に配置されている。センサ51,52は、基体2の周辺に関する情報を取得する。基体2の周辺に関する情報は、例えば、発電用ポッド21の周辺の海流FWの流速であってもよいし、発電用ポッド21の周辺の物体の位置であってもよい。センサ51,52のそれぞれは、例えば、海流FWの流速を検出する流速センサであってもよいし、音波の送受信によって周辺の物体の位置等を検出する音響測位センサであってもよい。
【0026】
浮力調整機構60は、発電用ポッド21の内部に設けられている。浮力調整機構60は、基体2の周囲の海水Wを注排水することによって基体2に加わる浮力を調整する機構である。浮力調整機構60は、発電用ポッド21,21の両方にそれぞれ設けられている。浮力調整機構60は、例えば、バラストタンク61と、配管62と、ポンプ65と、を有する。バラストタンク61は、内部に海水Wを貯留可能なタンクである。バラストタンク61の内部の水量が変化すると、基体2が受ける浮力も変化する。従って、バラストタンク61の内部の水量の変化に伴って、基体2は浮上又は沈降を行うことができる。
【0027】
配管62は、バラストタンク61に接続され、バラストタンク61に対する注排水を行うために用いられる。配管62は、発電用ポッド21の内部において、バラストタンク61を経由するように設けられている。配管62は、基体2の外部の海水Wをバラストタンク61に注水するための注水口63と、バラストタンク61に注水された海水Wを基体2の外部に排出するための排水口64と、を含む。注水口63は、発電用ポッド21の外面21aのうち上流側Uの前部に形成されている。排水口64は、発電用ポッド21の外面21aにおいて注水口63よりも下流側Dに形成されいる。例えば、排水口64は、発電用ポッド21の外面21aのうち下側の底部21Pに形成されている。排水口64は、センサユニット50よりも上流側Uに位置している。
【0028】
配管62は、注水口63とバラストタンク61の流入口61aとを接続する管体62aと、バラストタンク61の流出口61bと管体62aとを接続する管体62bと、管体62aと排水口64とを接続する管体62cと、を有する。管体62aは、注水口63から後方に直線状に延びてバラストタンク61の流入口61aに接続されている。管体62bは、バラストタンク61の流出口61bから前方に直線状に延びて管体62aの前部に接続されている。管体62cは、管体62aの後部から下方に直線状に延びて排水口64に接続されている。
【0029】
配管62には、バルブ66と、バルブ67と、バルブ68と、バルブ69と、が設けられている。バルブ66は、管体62aにおける注水口63寄りの前部に設けられている。バルブ67は、管体62aにおけるバラストタンク61寄りの後部に設けられている。バルブ68は、管体62bにおけるバラストタンク61寄りの後部に設けられている。バルブ69は、管体62aの後部と排水口64との間の管体62cに設けられている。これらのバルブは、配管62の連通状態と遮断状態を切り替えるバルブである。バルブのそれぞれは、例えば、制御装置による制御に応じて開閉する電磁弁であってよい。
【0030】
ポンプ65は、配管62を通じてバラストタンク61に対する注排水を行うように駆動する。つまり、ポンプ65は、配管62の上流側Uから下流側Dに向かって海水Wを送出するように駆動する。ポンプ65は、例えば、管体62aと管体62bとの接続部P1と、管体62bと管体62cとの接続部P2と、の間の管体62aに設けられている。ポンプ65の作動は、制御装置に制御されている。ポンプ65は、例えば発電機4で発電された電力によって駆動されてもよいし、送電ケーブルを用いて供給された電力によって駆動されてもよい。
【0031】
浮力調整機構60は、ポンプ65の作動及びバルブの開閉を制御することによって、バラストタンク61に対する注排水を行う。バラストタンク61に海水Wが注水される場合、発電用ポッド21の外部の海水Wは、海流FWを受けて注水口63から管体62aに流入し、管体62aを通ってバラストタンク61に至る経路R1を流れる。一方、バラストタンク61の内部の海水Wが排水される場合、バラストタンク61の内部の海水Wは、管体62bを通って接続部P1から管体62aに流入し、接続部P2から管体62cを流れて排水口64から発電用ポッド21の外部に排出される経路R2を流れる。排水口64から排出された海水Wは、発電用ポッド21の外面21aの近傍を流れる海流FWを受けて下流側Dに移動する経路R3を流れる。
【0032】
このように、発電用ポッド21の上流側Uの海水Wは、海流FWを受けて経路R1、経路R2、及び経路R3を含む流動経路Rを通って下流側Dに流れる。海流FWを受けて海水Wが流動経路Rを流れるとは、流動経路Rの少なくとも一部において海水Wの流れが海流FWに起因して生じることを意味する。本実施形態では、経路R1,R3における海水Wの流れが海流FWに起因して生じており、経路R1,R3における海水Wの流れ方向は、海流FWの流れ方向と一致している。センサユニット50は、発電用ポッド21の外面21aにおいて、流動経路Rが通る位置に配置されている。例えば、センサユニット50は、流動経路Rの経路R3において、排水口64よりも下流側Dに配置されている。流動経路Rがセンサユニット50を通るとは、流動経路Rを流れる海水Wの流線の少なくとも一部がセンサユニット50を通過することを意味する。
【0033】
生物付着防止装置70は、基体2への生物の付着を防止するための装置である。「生物」とは、例えば、フジツボなどの海洋生物である。生物付着防止装置70は、配管62を通ってセンサユニット50を流れる海水Wの流動経路Rにおいて、センサユニット50よりも上流側Uに配置されている。生物付着防止装置70は、例えば、発電用ポッド21の内部の配管62に設けられている。具体的には、生物付着防止装置70は、注水口63とバラストタンク61との間の管体62aに設けられている。より具体的には、生物付着防止装置70は、管体62aにおいてポンプ65の上流側Uの部分に設けられている。生物付着防止装置70は、例えば、発電用ポッド21,21の両方にそれぞれ設けられていてもよいし、発電用ポッド21,21のいずれか一方に設けられていてもよい。
【0034】
図3は、生物付着防止装置70の概略構成を示している。図3は、生物付着防止装置70が設けられる管体62aの延在方向D1に沿った断面を示している。生物付着防止装置70は、基体2の内部又は外部を流れる海水Wを電気分解する電解装置として構成される。図3に示されるように、生物付着防止装置70は、電極対73と、電圧印加部74と、を有する。電極対73は、管体62aの内面S62に設置されている。電極対73は、内面S62に対して直接固定されていてもよいし、内面S62に対して他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。
【0035】
電極対73は、陽極71(第1電極)と、陰極72(第2電極)と、を含んで構成される。陽極71及び陰極72の材料は、例えば、白金、金、及びチタンといった導電性材料としてよい。陽極71及び陰極72は、管体62aの内面S62において互いに対向するように配置されている。陽極71及び陰極72は、例えば、管体62aの延在方向D1に沿って延びると共に、管体に交差する方向D2において互いに離間するように並んでいる。延在方向D1は、例えば、海流FWの流れ方向と一致する。方向D2は、例えば、延在方向D1と垂直な方向としてよい。
【0036】
電圧印加部74は、電極対73と電気的に接続された電圧源である。電圧印加部74は、陽極71及び陰極72の間を流れる海水Wを電気分解するための電圧を電極対73に印加する。つまり、電圧印加部74は、海水Wを電気分解するために必要な電位差を、陽極71及び陰極72の間に生じさせる。電極対73に電圧を印加することには、海水Wを電気分解するために必要な電位差が陽極71及び陰極72の間に生じるように、電極対73に電流を供給することが含まれる。海水Wに溶解している塩化ナトリウム(NaCl)は、ナトリウムイオン(Na)と塩素イオン(Cl)とに解離している。従って、海水Wには、ナトリウムイオン及び塩素イオンが含まれている。この海水Wが流れる電極対73に電圧が印加されることで陽極71と陰極72との間に電位差が生じると、陽極71と陰極72との間に形成される電場領域Eにおいて、陽極71における電気化学反応(2Cl→Cl+2e)により塩素(Cl)が生成され、陰極72における電気化学反応(2Na+2HO+2e→2NaOH+H)により水酸化ナトリウム(NaOH)が生成される。そして、電解生成物として生成される塩素及び水酸化ナトリウムが、海水Wにおいて電気化学反応(2NaOH+Cl→NaClO+NaCl+HO)を起こすことにより、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が生成される。
【0037】
従って、海水Wを電気分解するとは、陽極71における電気化学反応(2Cl→Cl+2e)と、陰極72における電気化学反応(2Na+2HO+2e→2NaOH+H)と、を生じさせることを意味する。海水Wを電気分解するための電圧とは、これらの電気化学反応を起こすために必要な最小電圧である分解電圧以上としてよい。これらの電気化学反応に起因して生成される次亜塩素酸ナトリウムは、海水Wと共に流動経路Rの下流側Dに流れる。次亜塩素酸ナトリウムは、フジツボなどの生物に対する忌諱効果を有する。この忌諱効果によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む海水Wが流れる流動経路Rには、生物が近づきにくくなる。生物付着防止装置70は、このように電極対73への電圧の印加によって生成される次亜塩素酸ナトリウムを流動経路Rに流すことで、流動経路Rにおける生物の付着を防止する。
【0038】
本実施形態では、次亜塩素酸ナトリウムを含む海水Wは、配管62の内部を流れてセンサユニット50を通る。従って、次亜塩素酸ナトリウムが通過する配管62の内部及びセンサユニット50は、次亜塩素酸ナトリウムの忌諱効果によって生物の付着が防止される。つまり、本実施形態では、生物付着防止装置70は、センサユニット50への生物の付着を防止する機能と、配管62の内面への生物の付着を防止する機能と、の両方を備える。なお、生物付着防止装置70は、必ずしも配管62に設けられる必要は無く、発電用ポッド21の外面21aのうちセンサユニット50の上流側Uの部分に設けられてもよい。この場合であっても、海水Wの流れを利用して次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニット50に移動させることができるので、センサユニット50への生物の付着を防止する効果が得られる。この場合、生物付着防止装置は、配管62の内面への生物の付着を防止する機能を備えてなくてよい。また、生物付着防止装置70が配管62に設けられる場合、少なくとも電極対73が配管62の内部に設けられていればよく、電圧印加部74が配管62の内部に設けられる必要はない。
【0039】
以上に説明した発電装置1が奏する作用効果について説明する。発電装置1では、次亜塩素酸ナトリウムを生成可能な電極対73が、基体2の上流側Uからセンサユニット50を通って下流側Dに流れる海水Wの流動経路Rにおいて、センサユニット50よりも上流側Uに配置されている。これにより、海流FWを受けて流れる海水Wの流れを利用して、電極対73において生成される次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニット50へ移動させることができる。次亜塩素酸ナトリウムの忌諱効果によりセンサユニット50への生物の付着を抑制することで、生物の付着に起因するセンサユニット50の精度の低下を長期間にわたって抑制することが可能となる。このように次亜塩素酸ナトリウムによってセンサユニット50を保護することで、長期間にわたってセンサユニット50の精度を維持することが可能となる。また、このように海流FWを受けて流れる海水Wの流れを利用して次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニット50に移動させる構成とすれば、電極対73からセンサユニット50へ次亜塩素酸ナトリウムを移動させるためのポンプを別途用意しなくて済むため、ポンプの駆動のための消費電力を抑えることも可能となる。
【0040】
本実施形態のように、電極対73は、配管62の内部に配置され、配管62の排水口64は、センサユニット50よりも上流側Uに配置されていてもよい。この場合、電極対73への電圧の印加によって生成された次亜塩素酸ナトリウムは、配管62を通って排水口64から基体2の外部に排出され、排水口64よりも下流側Dのセンサユニット50に流れる。このように次亜塩素酸ナトリウムが配管62を経由してセンサユニット50に流れるように構成すれば、センサユニット50への生物の付着を抑制する効果と、配管62の内面への生物の付着を抑制する効果との両方を得ることができる。これにより、生物の付着に起因するセンサユニット50の精度の低下を抑制すると共に、生物の付着に起因する配管62の詰まりを抑制することが可能となる。
【0041】
本実施形態のように、配管62には、バラストタンク61から基体2の外部へ海水Wを送出するポンプ65が設けられ、電極対73は、配管62の内部においてポンプ65よりも上流側Uに配置されていてもよい。この場合、基体2の外部へ海水Wを送出するためのポンプ65を利用して、電極対73において生成される次亜塩素酸ナトリウムを配管62の内面及びセンサユニット50へより確実に行き渡らせることができる。これにより、センサユニット50への生物の付着を抑制する効果と、配管62の内面への生物の付着を抑制する効果と、をより確実に得ることができる。
【0042】
本実施形態のように、陽極71及び陰極72は、配管62の延在方向D1に沿って延びており、延在方向D1と交差する方向D2に離間していてもよい。この場合、配管62の内部の海水Wの流れを阻害することなく、次亜塩素酸ナトリウムを配管62の内面及びセンサユニット50へ行き渡らせることができる。
【0043】
本実施形態のように、センサユニット50は、センサ51と、流れ方向に沿ってセンサ51と並んで配置されるセンサ52と、を有していてもよい。この場合、海水Wの流れを利用して、次亜塩素酸ナトリウムを複数のセンサ51,52に容易に行き届かせることができる。
【0044】
本実施形態のように、タービン3は、基体2における下流側Dの後部に設けられていてもよい。この場合、基体2において海流FWの上流側の部分にタービン3が設けられる場合と比べて、タービン3の回転による流れの乱れが、電極対73からセンサユニット50への海水Wの流れに影響を及ぼす可能性を低減できる。これにより、海水Wの流れを利用して電極対73からセンサユニット50へ次亜塩素酸ナトリウムを移動させる構成をより確実に実現できる。
【0045】
本開示の発電装置は、上述した構成に限られない。図4は、変形例に係る発電装置1Aを示している。図4に示される発電装置1Aが備える基体2Aは、2つの発電用ポッド21,21に加えて、2つの発電用ポッド21,21の間に配置される中央のポッド23を有している。ポッド23は、例えば、2つの発電用ポッド21,21を連結するビーム22上に設けられる。この場合、発電装置1Aが備える浮力調整機構60Aのバラストタンク61は、ポッド23の内部に設けられ、浮力調整機構60Aの配管62Aは、バラストタンク61からビーム22を通って、左右の発電用ポッド21,21にそれぞれ接続される。配管62Aは、例えば、バラストタンク61からビーム22に向かって下方に延びる管体62dと、ビーム22において左右に延びて発電用ポッド21,21それぞれの外面に接続される管体62eと、を有する。配管62の排水口64,64は、発電用ポッド21,21それぞれの外面に形成される。
【0046】
生物付着防止装置70は、例えば、管体62dに設けられる。従って、バラストタンク61から送出された海水Wは、生物付着防止装置70において生成される次亜塩素酸ナトリウムと共に、配管62の排水口64,64から排出される。排水口64,64の下流側Dには、センサユニット50,50がそれぞれ配置されている。排水口64,64から排出された次亜塩素酸ナトリウムは、センサユニット50,50を流れる。これにより、センサユニット50,50を次亜塩素酸ナトリウムによって保護できるので、センサユニット50,50への生物の付着を抑制することが可能となる。従って、図4に示される発電装置1Aであっても、図1に示される発電装置1と同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と重複する箇所の説明を適宜省略し、第1実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0048】
図5は、第2実施形態に係る航走体を示している。図5に示される航走体1Bは、海中に配置され、無人で水中を自律航走する水中航走体(Autonomous Underwater Vehicle:AUV)である。航走体1Bは、船舶などの水面を航走する水面航走体であってもよい。航走体1Bは、例えば、無人で水面を自律航走する水面航走体(Autonomous Surface Vehicle:ASV)であってもよい。以下の説明において、「上流」又は「下流」との語は、後述する流動経路RAを流れる海水Wの流れを基準として用いられる。「上流側U」は、流動経路RAにおける海水Wの流れ方向の上流側を意味する。「下流側D」は、流動経路RAにおける海水Wの流れ方向の下流側を意味する。また、「前」との語は上流側Uを意味し、「後」との語は下流側Dを意味する。
【0049】
航走体1Bは、基体2Bと、センサユニット50と、生物付着防止装置70と、を備えている。基体2Bは、水中において移動方向Mに沿って移動する。移動方向Mへ基体2Bが移動すると、基体2の静止状態において実際に海流FWが生じていなくても、基体2側から見たときに、基体2の周囲に海流FWが相対的に流れているように見える。この場合、移動方向Mへの基体2Bの移動に伴って、基体2Bに対して、移動方向Mとは逆向きの海流FWが相対的に生じることとなる。センサユニット50は、基体2Bの外面2aに配置されている。センサユニット50は、例えば、外面2aのうち下側を向く底部2Pに設置されている。センサユニット50は、外面2aに対して直接固定されてもよいし、外面2aに対して他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第1実施形態と同様に、センサユニット50は、海流FWの流れ方向に沿って並ぶセンサ51及びセンサ52を有している。
【0050】
生物付着防止装置70は、基体2Bの外面2aに配置されている。生物付着防止装置70は、センサユニット50と同様、外面2aのうち下側を向く底部2Pに設置されている。生物付着防止装置70は、海流FWを受けて基体2Bの上流側Uからセンサユニット50を通って下流側Dに流れる海水Wの流動経路RAにおいて、センサユニット50の上流側Uに配置されている。そのため、海流FWを受けて生物付着防止装置70を通過した海水Wは、センサユニット50を通るように流れる。
【0051】
図6は、生物付着防止装置70の概略構成を示している。図6は、生物付着防止装置70を上流側Uから見た図を示している。生物付着防止装置70は、第1実施形態と同様に、電極対73と、電圧印加部74と、を有する。本実施形態では、電極対73は、基体2Bの外面2aに設置されている。電極対73は、外面2aに対して直接固定されていてもよいし、外面2aに対して他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。電極対73の陽極71及び陰極72は、外面2aにおいて、海流FWの流れ方向に沿って前後に延びると共に、当該流れ方向に交差する左右方向に互いに離間するように並んでいる。図6に示すように、例えば、海流FWの流れ方向から見て、陽極71及び陰極72は、センサユニット50を挟んで両側に並ぶように配置されている。この場合、海流FWの流れ方向から見て、センサユニット50は、陽極71と陰極72との間に位置している。
【0052】
電圧印加部74によって陽極71及び陰極72に電圧が印加されると、陽極71と陰極72との間の電場領域Eにおいて、海水Wが電気分解されることで次亜塩素酸ナトリウムが生成される。生成された次亜塩素酸ナトリウムを含む海水Wは、流動経路RAの下流側Dのセンサユニット50を流れる。これにより、センサユニット50が次亜塩素酸ナトリウムによって保護され、センサユニット50への生物の付着が抑制される。このように、生物付着防止装置70は、センサユニット50への生物の付着を防止する機能を備える。
【0053】
以上に説明した航走体1Bが奏する作用効果について説明する。航走体1Bでは、次亜塩素酸ナトリウムを生成可能な電極対73が、基体2Bの上流側Uからセンサユニット50を通って下流側Dに流れる海水Wの流動経路RAにおいて、センサユニット50よりも上流側Uに配置されている。これにより、海流FWを受けて流れる海水Wの流れを利用して、電極対73において生成される次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニット50へ移動させることができる。その結果、次亜塩素酸ナトリウムの忌諱効果によってセンサユニット50への生物の付着を抑制できるので、生物の付着に起因するセンサユニット50の精度の低下を抑制できる。このように次亜塩素酸ナトリウムによってセンサユニット50を保護することで、長期間にわたってセンサユニット50の精度を維持することが可能となる。また、このように海流FWを受けて流れる海水Wの流れを利用して次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニット50に移動させる構成とすれば、電極対73からセンサユニット50へ次亜塩素酸ナトリウムを移動させるためのポンプを別途用意しなくて済むため、ポンプの駆動のための消費電力を抑えることも可能となる。
【0054】
このような海水Wの流れは航走体1Bの移動に伴って生じるため、実際には、電極対73において次亜塩素酸ナトリウムが生成された箇所に、航走体1Bの移動に伴ってセンサユニット50が移動することによって、センサユニット50が到達する。一方で、第1実施形態では、発電装置1は移動せずに静止しており、発電装置1の周囲に自然に生じている海流FWの流れによって、次亜塩素酸ナトリウムがセンサユニット50に到達する。従って、自然に発生している海流FWを利用する場合(第1実施形態)であっても、航走体1Bの移動によって相対的に発生する海流FWを利用する場合(第2実施形態)であっても、次亜塩素酸ナトリウムをセンサユニット50に到達させることが可能である。
【0055】
本開示は、上述した各実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。上述した各実施形態では、発電装置1,1A及び航走体1Bが海中に設置される場合を説明した。しかし、発電装置1,1A及び航走体1Bの設置場所は、海に限らず、河川又は湖などの海以外の水域であってもよい。この場合、発電装置1は、海流発電装置に限らず、潮流発電装置といった他の水流を利用した発電装置であってもよい。
【0056】
このように発電装置1,1A及び航走体1Bが海以外に設置された場合であっても、例えば藻等が水中に存在する場合など、塩化ナトリウム等の成分が溶解し得る状況において、水の電気分解によって次亜塩素酸ナトリウムが生成され得るので、上述した作用効果を得ることができる。従って、電気分解の対象となる「液体」は、海水である場合に限らず、他の液体であってもよい。「液体」の他の例としては、例えば、鹹水が挙げられる。また、発電装置1は、水中を浮遊する浮遊式の水流発電装置に限定されず、海底に対して基体の位置が固定された海底固定式の水流発電装置であってもよい。
【0057】
以下、本開示の要旨を示す。
[1] 発電機を搭載する基体と、
前記発電機に連結され、前記水流を受けて回転可能なタービンと、
前記基体の外部に配置され、前記基体の周辺の情報を取得するセンサユニットと、
前記基体の内部又は外部に配置される第1電極及び第2電極を有する電極対と、
前記電極対と電気的に接続され、前記電極対を流れる液体を電気分解するための電圧を前記電極対に印加する電圧印加部と、
を備え、
前記電極対は、前記液体の流れ方向を基準とした場合に、前記基体の上流側から前記センサユニットを通って下流側に流れる前記液体の流動経路において、前記センサユニットよりも前記上流側に配置されている、水流発電装置。
[2] 前記基体の内部に設けられるバラストタンクと、
前記バラストタンクに接続され、前記基体の内部において前記バラストタンクを経由する前記流動経路を構成し、前記バラストタンクに対し注排水を行う配管と、
を更に備え、
前記電極対は、前記配管の内部に配置され、
前記配管は、前記バラストタンクから前記基体の外部へ前記液体を排出する排水口を有し、
前記排水口は、前記センサユニットよりも前記上流側に配置されている、[1]に記載の水流発電装置。
[3] 前記配管には、前記バラストタンクから前記基体の外部へ前記液体を送出するポンプが設けられ、
前記電極対は、前記配管の内部において前記ポンプよりも前記上流側に配置されている、[2]に記載の水流発電装置。
[4] 前記第1電極及び前記第2電極は、前記配管の延在方向に沿って延びており、前記延在方向と交差する方向に離間している、[2]又は[3]に記載の水流発電装置。
[5] 前記センサユニットは、第1センサと、前記流れ方向に沿って前記第1センサと並んで配置される第2センサと、を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の水流発電装置。
[6] 前記タービンは、前記基体において前記水流の下流側の部分に設けられている、[1]~[5]のいずれかに記載の水流発電装置。
[7] 水中又は水面を移動可能な基体と、
前記基体の外部に配置され、前記基体の周辺の情報を取得するセンサユニットと、
前記基体の内部又は外部に配置される第1電極及び第2電極を有する電極対と、
前記電極対と電気的に接続され、前記電極対を流れる液体を電気分解するための電圧を前記電極対に印加する電圧印加部と、
を備え、
前記電極対は、前記液体の流れ方向を基準とした場合に、前記基体の上流側から前記センサユニットを通って下流側に流れる前記液体の流動経路において、前記センサユニットよりも前記上流側に配置されている、航走体。
【符号の説明】
【0058】
1,1A 発電装置(水流発電装置)
1B 航走体
2,2A,2B 基体
3 タービン
4 発電機
50 センサユニット
51 センサ(第1センサ)
52 センサ(第2センサ)
61 バラストタンク
62,62A 配管
64 排水口
65 ポンプ
71 陽極(第1電極)
72 陰極(第2電極)
73 電極対
74 電圧印加部
D 下流側
D1 延在方向
D2 方向
FW 海流(水流)
R,RA 流動経路
U 上流側
W 海水(液体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6