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特開2023-184048ドローン用駆動ユニットおよびドローン
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  • 特開-ドローン用駆動ユニットおよびドローン 図1
  • 特開-ドローン用駆動ユニットおよびドローン 図2
  • 特開-ドローン用駆動ユニットおよびドローン 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184048
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ドローン用駆動ユニットおよびドローン
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20231221BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20231221BHJP
   B64D 33/08 20060101ALI20231221BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H02K9/19 A
B64C27/08
B64D33/08
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097947
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB12
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ09
5H609RR12
5H609RR26
5H609RR37
5H609RR43
5H609RR46
5H609RR52
(57)【要約】
【課題】回転翼を回転させるモータを比較的に軽量な構成で冷却できるドローン用駆動ユニットを提供する。
【解決手段】ドローン用駆動ユニットは、シャフトに固定された回転翼と、シャフトを回転させるモータと、冷媒の循環によってモータの発熱をモータの外側で放熱する冷却機構と、を備える。冷却機構は、シャフトに従動して回転し、冷媒を循環させる軸流ファンを有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに固定された回転翼と、
前記シャフトを回転させるモータと、
冷媒の循環によって前記モータの発熱を前記モータの外側で放熱する冷却機構と、を備え、
前記冷却機構は、前記シャフトに従動して回転し、前記冷媒を循環させる軸流ファンを有する
ドローン用駆動ユニット。
【請求項2】
前記冷却機構は、
前記モータの流出口から排出された前記冷媒が流れる第1流路と、
前記第1流路を通過した前記冷媒を前記軸流ファンで前記モータの流入口に流す第2流路と、を有する
請求項1に記載のドローン用駆動ユニット。
【請求項3】
前記第1流路の流路断面積は、前記第2流路の流路断面積よりも小さい
請求項2に記載のドローン用駆動ユニット。
【請求項4】
前記モータとドローンの本体部をつなぐアーム部をさらに備え、
前記第2流路の少なくとも一部は、前記アーム部に形成される
請求項3に記載のドローン用駆動ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のドローン用駆動ユニットを備えるドローン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン用駆動ユニットおよびドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プロペラを複数備え、機体を傾けることで移動を行うマルチコプター型のドローン(Drone)などの無人航空機が近年急速に普及しつつある。また、この種のドローンを用いた各種サービスについて、実用化に向けた研究および実証実験も進められている。
【0003】
ドローンのプロペラを回転させるモータは、高出力化への対応やモータの長寿命化のために動作中は冷媒で冷却されることが好ましい。例えば、アキシャルギャップ型の回転電機の冷却構造として、一対のロータ本体の間に配置されるステータ本体を密閉構造とし、ステータ本体のコイルを冷却液で直接冷却する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-099181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の冷却構造の場合、冷却液を循環させるポンプや冷却液のクーラーが必要となるためシステムが大型化してしまう。ドローンに実装されるモータの冷却機構は、ドローンの軽量化の観点から軽量な構成であることが好ましい。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、回転翼を回転させるモータを比較的に軽量な構成で冷却できるドローン用駆動ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のドローン用駆動ユニットは、シャフトに固定された回転翼と、シャフトを回転させるモータと、冷媒の循環によってモータの発熱をモータの外側で放熱する冷却機構と、を備える。冷却機構は、シャフトに従動して回転し、冷媒を循環させる軸流ファンを有する。
【0008】
上記の冷却機構は、モータの流出口から排出された冷媒が流れる第1流路と、第1流路を通過した冷媒を軸流ファンでモータの流入口に流す第2流路と、を有していてもよい。
上記の第1流路の流路断面積は、第2流路の流路断面積よりも小さくてもよい。
【0009】
上記のドローン用駆動ユニットは、モータとドローンの本体部をつなぐアーム部をさらに備えていてもよい。また、上記の第2流路の少なくとも一部は、アーム部に形成されていてもよい。
本発明の他の態様のドローンは、上記のドローン用駆動ユニットを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、回転翼を回転させるモータを比較的に軽量な構成で冷却できるドローン用駆動ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のドローンの構成例を示す図である。
図2】駆動ユニットの構成例を示す概要図である。
図3】駆動ユニットのモータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0013】
図1は、本実施形態のドローンの構成例を示す図である。図1に示すドローン100は、一般的にマルチコプターと称される無人航空機であって、遠隔操作または自動操縦により飛行可能である。
【0014】
ドローン100は、制御部やバッテリー等を内蔵した本体部10と、それぞれ本体部10に取り付けられた4組の駆動ユニット20とを有する。本体部10は、例えばカメラ11を内蔵していてもよい。駆動ユニット20は、例えば、平面視において90°ずつ間隔をあけて本体部10の四方に配置される。駆動ユニット20の構成はいずれも共通であるので、以下の説明では代表して1つの駆動ユニット20の構成を説明し、他の駆動ユニットの重複説明はいずれも省略する。
【0015】
図2は、駆動ユニット20の構成例を示す概要図である。駆動ユニット20は、回転翼21と、回転翼支持体22と、モータ23と、冷却機構24とを備えている。回転翼21は、固定ピッチのプロペラであり、モータ23の駆動により回転して揚力(鉛直方向上向きの推力)を生じさせる。また、回転翼21は、モータ23の回転速度の制御で揚力を調整することができる。
【0016】
回転翼支持体22は、本体部10から水平方向に延びるアーム部31と、シャフト収容部32と、リブ部33とを有する。回転翼支持体22においてアーム部31の一端は本体部10に接続され、アーム部31の他端側にはモータ23が取り付けられている。また、アーム部31は、後述する第2流路52の第2区間52bに対応する配管を内部に有している。
【0017】
シャフト収容部32は、アーム部31の一端側から垂直方向下側に延在しており、ドローン100が接地しているときには地面と接触してドローン100を支持する脚部として機能する。モータ23の下面に臨むシャフト収容部32の上側は筒状に形成され、モータ23のシャフト41を受ける。
【0018】
リブ部33は、水平方向に延びるアーム部31と垂直方向に延びるシャフト収容部32に対して斜めに延在している。リブ部33は、一端がアーム部から分岐し、他端がシャフト収容部32と接続されている。また、リブ部33は、後述する第2流路52の第1区間52aを含むとともに、シャフト収容部32と連通する配管を内部に有している。
【0019】
図3は、駆動ユニット20のモータ23の構成例を示す図である。モータ23は、いわゆるアキシャルギャップモータであり、シャフト41と、ロータ42と、ステータ43と、モータ23の要素を収容するケーシング44と、を有する。図2に示すようにシャフト41は、ケーシング44を貫通して図2の上下方向に延在して配置されている。シャフト41の一方側(図2の上側)には回転翼21が固定されている。また、シャフト41の他方側(図2の下側)は、シャフト収容部32に収容されている。
【0020】
また、シャフト41は、ケーシング44の軸受(不図示)やシャフト収容部32に配置された軸受32aにより回転可能に軸支されている。また、シャフト収容部32に挿入されているシャフト41の他方側の端部には傘歯車41aが固定されている。
【0021】
ロータ42は、所定間隔を隔てて対向配置された一対の円盤で構成され、ロータ42の中心にはシャフト41が挿通されて固定されている。これにより、ロータ42はシャフト41とともに回転する。また、各々のロータ42においてステータ43と対向する面には、ロータ42の周方向に沿って磁石42aが固定されている。
【0022】
ステータ43は、シャフト41の外周側に同心状に配置され、シャフト41の軸方向において一対のロータ42の間に位置する筒状体である。ステータ43は、シャフト41およびロータ42と僅かなギャップを隔てて配置されている。
【0023】
ステータ43は、シャフト41を中心に環状に配置された複数のコイルユニット45と、各々のコイルユニット45を収容する円筒状のステータケース46とを有する。各々のコイルユニット45は、台形状のステータコア45aの外周にコイル45bを巻回して構成される。
【0024】
ステータコア45aは、例えば複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成され、径方向内側より径方向外側が幅広となるようにステータ43に配置される。また、コイル45bの巻回方向は、軸方向と交差する方向(水平方向)である。上記のコイル45bの電流制御によりステータ43の磁界を順番に切り替えることで、ロータ42の磁界に対する吸引力または反発力がステータ43に発生する。これにより、シャフト41およびロータ42が回転駆動する。
【0025】
ステータケース46は中空であり、ステータケース46の内側にはコイルユニット45の周囲に冷却用のオイル(冷媒)の流路が形成される。また、ステータケース46の側面には、オイルの流入口47と流出口48がそれぞれ形成されている。なお、流入口47と流出口48の位置は、互いに対向する位置(軸中心に対して180°の位置)に形成されているが、これに限られることはない。
【0026】
モータ23のステータ43には、流入口47からオイルが導入される。オイルはステータケース46内を流れてコイルユニット45から熱を奪い、流出口48からモータ23の外側に排出される。これにより、オイルの流れによってステータ43のコイルユニット45を冷却することができる。
【0027】
冷却機構24は、駆動ユニット20内でオイルを循環させて、流出口48から排出されたオイルをモータ23の外側で冷却するとともに、冷却されたオイルを流入口47に供給する機能を担う。冷却機構24は、第1流路51と、第2流路52と、軸流ファン53とを有している。
【0028】
第1流路51は、上流側がモータ23の流出口48に接続され、モータ23の下側を通ってリブ部33に接続されている。第1流路51の下流側は、第2流路52の上流側と接続されている。第1流路51の配管は、外気とオイルの熱交換を促進するために、熱伝導率が高い材料で形成されることが好ましい。
【0029】
第2流路52は、リブ部33およびアーム部31の内部に形成され、第1流路51から流入するオイルを冷却しつつモータ23の流入口まで導く。第2流路52は、リブ部33に沿って斜め方向に延在する第1区間52aと、第1区間52aから折り返されてアーム部31内を水平方向に延在する第2区間52bとを有する。第2流路52の配管は、リブ部33およびアーム部31の外表面と熱的に接続されている。これにより、第2流路52では外気とオイルの熱交換が行われ、オイルがモータ23の外部で冷却される。なお、ドローン100の飛行時において、アーム部31およびリブ部33の周囲には回転翼21の回転によって強い気流が生じるため、オイルは第2流路52で効率よく冷却される。
【0030】
軸流ファン53は、リブ部33に設けられた配管内に配置されている。軸流ファン53は、リブ部33に沿って延在する駆動軸53aの一方側の端部に設けられる。また、駆動軸53aの他方側の端部には、傘歯車53cが設けられている。軸流ファン53の駆動軸53aは、リブ部33内に配置された軸受33aにより軸支されている。
【0031】
軸流ファン53は、リブ部33内で第1流路51との合流位置よりもわずかに上流側(図中下側)に配置される。駆動軸53aの傘歯車53cは、シャフト41の傘歯車41aと噛合してシャフト41の回転を軸流ファン53に伝達する。これにより、モータ23のシャフト41が回転すると軸流ファン53も従動して回転し、第1流路51からのオイルをアーム部31の第2区間52bへ導く流れを軸流ファン53が生じさせる。
【0032】
ここで、第1流路51の流路断面積(内径φ1)は、第2流路52の流路断面積(内径φ2)よりも小さく形成されている(φ1<φ2)。そのため、第1流路51でのオイルの流速は第2流路52でのオイルの流速よりも速くなり、第1流路51から第2流路52に向かうオイルの流れには位置エネルギーも加わるので、冷却機構24のオイルは第1流路51から第2流路52に向かいやすく、その逆方向には流れにくくなる。また、第2流路52の流速が低くなると、第2流路52で外気とオイルの熱交換を行う時間が長くなる。これにより、循環するオイルの温度上昇が抑制される。
【0033】
また、図2に示すように、第1流路51は軸流ファン53の流れ方向に対して鈍角をなすように傾いて接続されている。この構成によっても、軸流ファン53からの流れは構造上第1流路51に直接流入しにくくなるので、第2流路52から第1流路51への逆流が抑制され、冷却機構24の動作を安定させることができる。
【0034】
また、駆動ユニット20の第2流路52はアーム部31およびリブ部33に内蔵されているため、第2流路52の有無によって平面視で駆動ユニット20の投影面積は変化しない。また、駆動ユニット20の第1流路51の流路断面積は第2流路52の流路断面積と比べて小さく、平面視で第1流路51が外側に張り出している領域は少ない。つまり、第1流路51を設けたことによる平面視での駆動ユニット20の投影面積の増加は小さなものに留まる。このように、本実施形態の駆動ユニット20は、回転翼21の空力抵抗の増加につながる投影面積の増加を抑制しつつ、冷却機構24でのモータの冷却を可能とする。
【0035】
以上のように、本実施形態の駆動ユニット20は、シャフト41に固定された回転翼21と、シャフト41を回転させるモータ23と、オイルの循環によってモータ23の発熱をモータ23の外側で放熱する冷却機構24と、を備える。また、冷却機構24は、シャフト41に従動して回転し、オイルを循環させる軸流ファン53を有する。これにより、回転翼21を回転させるモータ23の動力を利用してモータ23を冷却するためのオイルを循環でき、かつモータ23の外部で外気との熱交換でオイルの放熱ができる。そのため、本実施形態の駆動ユニット20によれば、オイルポンプやオイルクーラーを別途設けずに比較的に軽量な構成でドローン100のモータ23の冷却を行うことが可能となる。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0037】
例えば、上記実施形態では、4組の駆動ユニット20を備えるドローン100を例示して説明したが、ドローン100が備える駆動ユニット20の数は4以外であってもよい。
【0038】
例えば、上記実施形態では、駆動ユニット20にアキシャルギャップモータを適用する例を説明したが、駆動ユニット20に適用されるモータ23は、例えばインナーロータ型などの他のモータであってもよい。
【0039】
例えば、上記実施形態では、駆動ユニット20の冷媒としてオイルを適用する例を説明したが、駆動ユニット20の冷媒は絶縁性を有するものであればオイルに限定されない。
【0040】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
10…本体部、20…駆動ユニット20、21…回転翼、22…回転翼支持体、23…モータ、24…冷却機構、31…アーム部、33…リブ部、41…シャフト、51…第1流路、52…第2流路、53…軸流ファン、100…ドローン

図1
図2
図3