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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184052
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】弾性波フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20231221BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097955
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】中畑 良介
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA01
5J097AA14
5J097AA15
5J097AA21
5J097AA25
5J097BB02
5J097BB03
5J097BB11
5J097BB14
5J097DD07
5J097DD13
5J097DD17
5J097DD29
5J097FF05
5J097GG04
5J097GG07
5J097HA02
5J097KK01
5J097KK03
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制する。
【解決手段】弾性波フィルタ1は、縦結合共振器11および縦結合共振器12を備える。縦結合共振器11は、IDT電極31およびIDT電極32Aを有する。縦結合共振器12は、IDT電極33およびIDT電極34Aを有する。各IDT電極は、広ピッチ電極指群と、狭ピッチ電極指群と、を含む。IDT電極31の広ピッチ電極指群31wに含まれる電極指は、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wに含まれる電極指の本数を基準として、4.2%以上23.5%以下の範囲に該当する本数が少ない。IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数が少ない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦結合共振器を備える弾性波フィルタであって、
前記複数の縦結合共振器は、互いに接続された第1の縦結合共振器および第2の縦結合共振器を有し、
前記第1の縦結合共振器および前記第2の縦結合共振器のそれぞれは、基板の主面に沿う第1方向に延び、前記第1方向に交差する第2方向に沿って配列された複数の電極指を含む3つのIDT電極を有し、
前記第1の縦結合共振器は、前記第2方向に沿って配置された前記3つのIDT電極を有し、当該3つのIDT電極のうち、第1のIDT電極は、前記第2方向における中央に配置され、第2のIDT電極は、前記第1のIDT電極の隣に配置され、
前記第2の縦結合共振器は、前記第2方向に沿って配置された前記3つのIDT電極を有し、当該3つのIDT電極のうち、第3のIDT電極は、前記第2方向における中央に配置され、第4のIDT電極は、前記第3のIDT電極の隣に配置され、
前記IDT電極のそれぞれは、前記複数の電極指のピッチの平均値以上の前記ピッチを有する広ピッチ電極指群と、前記平均値未満のピッチを有する狭ピッチ電極指群と、を含み、
前記第1のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指は、前記第3のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指の本数を基準として、4.2%以上23.5%以下の範囲に該当する本数が少ない、
および/または、
前記第2のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指は、前記第4のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数が少ない
弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記第1のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指は、前記第3のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指の本数を基準として、4.2%以上12.8%以下の範囲に該当する本数が少ない、
および/または、
前記第2のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指は、前記第4のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指の本数を基準として、9.5%以上28.6%以下の範囲に該当する本数が少ない
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記第1のIDT電極の前記電極指の本数は、前記第2のIDT電極の前記電極指の本数よりも多く、
前記第3のIDT電極の前記電極指の本数は、前記第4のIDT電極の前記電極指の本数よりも多い
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記第1の縦結合共振器は、1つの前記第1のIDT電極および2つの前記第2のIDT電極を有し、
前記第1のIDT電極は、2つの前記第2のIDT電極の間に配置され、
前記第2の縦結合共振器は、1つの前記第3のIDT電極および2つの前記第4のIDT電極を有し、
前記第3のIDT電極は、2つの前記第4のIDT電極の間に配置されている
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記第1の縦結合共振器および前記第2の縦結合共振器は、並列接続されている
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
前記第1の縦結合共振器および前記第2の縦結合共振器は、直列接続されている
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
前記第1の縦結合共振器および前記第2の縦結合共振器は、SVモードによって励振する
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項8】
前記第1の縦結合共振器および前記第2の縦結合共振器は、SHモードによって励振する
請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の縦結合共振器を備える弾性波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の縦結合共振器を備える弾性波フィルタが知られている。この種の弾性波フィルタの一例として、特許文献1には、並列接続された2つの縦結合共振器を備える弾性波フィルタが開示されている。この弾性波フィルタでは、縦結合共振器に含まれるIDT電極の電極指の本数が、一方の縦結合共振器と他方の縦結合共振器とで異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-35007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一方の縦結合共振器と他方の縦結合共振器とで、電極指の本数の異なる数が多すぎると、弾性波フィルタの通過帯域において不要波であるリップルが発生することがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、通過帯域にリップルが発生することを抑制できる弾性波フィルタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る弾性波フィルタは、複数の縦結合共振器を備える弾性波フィルタであって、前記複数の縦結合共振器は、互いに接続された第1の縦結合共振器および第2の縦結合共振器を有し、前記第1の縦結合共振器および前記第2の縦結合共振器のそれぞれは、基板の主面に沿う第1方向に延び、前記第1方向に交差する第2方向に沿って配列された複数の電極指を含む3つのIDT電極を有し、前記第1の縦結合共振器は、前記第2方向に沿って配置された前記3つのIDT電極を有し、当該3つのIDT電極のうち、第1のIDT電極は、前記第2方向における中央に配置され、第2のIDT電極は、前記第1のIDT電極の隣に配置され、前記第2の縦結合共振器は、前記第2方向に沿って配置された前記3つのIDT電極を有し、当該3つのIDT電極のうち、第3のIDT電極は、前記第2方向における中央に配置され、第4のIDT電極は、前記第3のIDT電極の隣に配置され、前記IDT電極のそれぞれは、前記複数の電極指のピッチの平均値以上の前記ピッチを有する広ピッチ電極指群と、前記平均値未満のピッチを有する狭ピッチ電極指群と、を含み、前記第1のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指は、前記第3のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指の本数を基準として、4.2%以上23.5%以下の範囲に該当する本数が少ない、および/または、前記第2のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指は、前記第4のIDT電極の前記広ピッチ電極指群に含まれる前記電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数が少ない。
【発明の効果】
【0007】
本発明の弾性波フィルタによれば、通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る弾性波フィルタの回路構成図である。
図2】実施の形態に係る弾性波フィルタが備える複数の縦結合共振器を示す模式図である。
図3】複数の縦結合共振器に含まれるIDT電極の構造を模式的に示す平面図および断面図である。
図4】複数の縦結合共振器に含まれるIDT電極の電極指の本数を示す模式図である。
図5】IDT電極に含まれる広ピッチ電極指群および狭ピッチ電極指群の一例を示す図である。
図6】縦結合共振器に含まれるIDT電極の電極パラメータを示す図である。
図7】縦結合共振器群の伝送特性を示す図である。
図8】複数の広ピッチ電極指群の電極指の本数の差と、第1のリップルおよび第2のリップルの大きさとの関係を示す図である。
図9】複数の広ピッチ電極指群の電極指の本数の差と、第3のリップルおよび第4のリップルの大きさとの関係を示す図である。
図10】実施の形態の変形例に係る弾性波フィルタの回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態および図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ、または大きさの比は、必ずしも厳密ではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する場合がある。また、以下の実施の形態において、「接続される」とは、直接接続される場合だけでなく、他の素子等を介して電気的に接続される場合も含まれる。
【0010】
(実施の形態)
[弾性波フィルタの構成]
実施の形態に係る弾性波フィルタの構成について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る弾性波フィルタ1の回路構成図である。
【0012】
弾性波フィルタ1は、第1の周波数帯域を通過帯域とするフィルタである。弾性波フィルタ1は、入出力端子T1およびT2を結ぶ経路r1上に設けられている。
【0013】
入出力端子T1は、弾性波フィルタ1の一方端に接続されている。例えば入出力端子T1は、弾性波フィルタ1の外部でアンテナ素子に接続される。入出力端子T1は、弾性波フィルタ1のアンテナ端子でもある。
【0014】
入出力端子T2は、弾性波フィルタ1の他方端に接続されている。例えば入出力端子T2は、弾性波フィルタ1の外部において、増幅回路等(図示せず)を介してRF信号処理回路(図示せず)に接続される。
【0015】
弾性波フィルタ1は、例えば、下り周波数帯(受信帯域)を通過帯域とする受信フィルタである。本実施の形態の弾性波フィルタ1は、1427MHz以上1517MHz以下を通過帯域とする。
【0016】
弾性波フィルタ1は、複数の直列腕共振子S1、S2、S3およびS4と、複数の縦結合共振器11および12を有する縦結合共振器群10と、複数の並列腕共振子P1およびP2と、を備えている。直列腕共振子S1、縦結合共振器群10、直列腕共振子S2、S3、S4は、入出力端子T1から入出力端子T2に向かってこの順で直列接続されている。
【0017】
直列腕共振子S1は、入出力端子T1と縦結合共振器群10との間の経路r1上に配置され、縦結合共振器群10の一端に接続されている。直列腕共振子S2は、縦結合共振器群10と入出力端子T2との間の経路r1に配置され、縦結合共振器群10の他端に接続されている。
【0018】
並列腕共振子P1は、経路r1における直列腕共振子S2とS3との間のノードn1と基準端子(グランド)とを結ぶ経路上に配置されている。具体的には、並列腕共振子P1は、一端がノードn1に接続され、他端がインダクタL1およびL3を介して基準端子に接続されている。並列腕共振子P2は、経路r1における直列腕共振子S3とS4との間のノードn2と基準端子とを結ぶ経路上に配置されている。具体的には、並列腕共振子P2は、一端がノードn2に接続され、他端がインダクタL2およびL3を介して基準端子に接続されている。インダクタL1およびL2は、共通接続されてインダクタL3に接続されている。
【0019】
なお、弾性波フィルタ1の直列腕共振子および並列腕共振子のそれぞれは、4つの直列腕共振子および2つの並列腕共振子に限られず、1つ以上の直列腕共振子および1つ以上の並列腕共振子で構成されていてもよい。また、並列腕共振子と基準端子との間には、インダクタが設けられていなくてもよい。
【0020】
縦結合共振器群10は、直列腕共振子S1とS2との間の経路r1上に配置されている。縦結合共振器群10は、互いに接続された第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12を有している。本実施の形態の第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12は、並列接続されている。
【0021】
図2は、弾性波フィルタ1が備える複数の縦結合共振器11、12を示す模式図である。なお、図2では、電極および配線が実線で示されている。
【0022】
各縦結合共振器11、12は、複数の弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子を有している。弾性表面波共振子は、後述する基板320と、基板320上に設けられたIDT(InterDigital Transducer)電極とによって構成される。
【0023】
図2に示すように、縦結合共振器11は、第1のIDT電極31、ならびに、第2のIDT電極32Aおよび32Bを有している。縦結合共振器12は、第3のIDT電極33、ならびに、第4のIDT電極34Aおよび34Bを有している。第3のIDT電極33は第1のIDT電極31に対応し、第4のIDT電極34Aは第2のIDT電極32Aに対応し、第4のIDT電極34Bは第2のIDT電極32Bに対応している。以下において、IDT電極31、32A、32B、33、34Aおよび34Bの一部および全部を指して、IDT電極30と呼ぶ場合がある。
【0024】
IDT電極30は、複数の電極指faおよびfbを有している。各電極指fa、fbは、基板320の主面に沿う第1方向d1に延び、第1方向d1に交差する第2方向d2に沿って配列されている。本実施の形態の第2方向d2は、各縦結合共振器11、12の弾性波伝搬方向と同じ方向であり、第1方向d1に直交している。
【0025】
IDT電極30は、互いに対向する一対の櫛歯状電極caおよびcbによって構成されている。櫛歯状電極caは、櫛歯状の形状を有し、互いに平行な複数の電極指faと、複数の電極指faのそれぞれの一端同士を接続するバスバー電極とで構成されている。櫛歯状電極cbは、櫛歯の形状を有し、互いに平行な複数の電極指fbと、複数の電極指fbのそれぞれの一端同士を接続するバスバー電極とで構成されている。バスバー電極のそれぞれは、第2方向d2に沿って延びるように形成されている。電極指faおよび電極指fbは、第1方向d1に互いに間挿し合い、第2方向d2に対向している。
【0026】
縦結合共振器11は、第2方向d2に沿って配置された3つのIDT電極30を有している。縦結合共振器11の3つのIDT電極30のうち、第1のIDT電極31は、第2方向d2における中央に配置され、第2のIDT電極32Aおよび32Bは、第1のIDT電極31の隣に配置されている。IDT電極32A、IDT電極31およびIDT電極32Bは、第2方向d2に沿ってこの順で配置されている。つまり、第2方向d2において、IDT電極31は、2つのIDT電極32A、32Bの間に配置され、2つのIDT電極32A、32Bは、IDT電極31の両外側に配置されている。また、縦結合共振器11は、複数の反射器41、42を有している。複数の反射器41、42は、第2方向d2において、IDT電極32A、31、32Bを挟み込むように、IDT電極32A、31、32Bの両外側に配置されている。
【0027】
縦結合共振器12は、第2方向d2に沿って配置された3つのIDT電極30を有している。縦結合共振器12の3つのIDT電極30のうち、第3のIDT電極33は、第2方向d2における中央に配置され、第4のIDT電極34Aおよび34Bは、第3のIDT電極33の隣に配置されている。IDT電極34A、IDT電極33およびIDT電極34Bは、第2方向d2に沿ってこの順で配置されている。つまり、第2方向d2において、IDT電極33は、2つのIDT電極34A、34Bの間に配置され、2つのIDT電極34A、34Bは、IDT電極33の両外側に配置されている。また、縦結合共振器12は、複数の反射器43、44を有している。複数の反射器43、44は、第2方向d2において、IDT電極34A、33、34Bを挟み込むように、IDT電極34A、33、34Bの両外側に配置されている。反射器42および43は、第2方向d2において、互いに隣り合って配置されている。
【0028】
IDT電極32A、32B、34A、34Bは、縦結合共振器群10から見て入出力端子T1側の経路r1に接続されている。具体的には、各IDT電極32A、32B、34A、34Bの櫛歯状電極caは、引き出し配線により引き出され結線された後、経路r1上の直列腕共振子S1に接続されている。各IDT電極32A、32B、34A、34Bの櫛歯状電極cbは、引き出し配線により引き出され、グランドに接続されている。
【0029】
IDT電極31、33は、縦結合共振器群10から見て入出力端子T2側の経路r1に接続されている。具体的には、各IDT電極31、33の櫛歯状電極caは、引き出し配線により引き出され結線された後、経路r1上の直列腕共振子S2に接続されている。各IDT電極31、33の櫛歯状電極cbは、引き出し配線により引き出され、グランドに接続されている。
【0030】
[縦結合共振器のIDT電極の構造]
縦結合共振器11、12のIDT電極30の構造について、図3図5を参照しながら説明する。
【0031】
図3は、複数の縦結合共振器11、12に含まれるIDT電極30の構造を模式的に示す平面図および断面図である。この図は、IDT電極の構造を簡略化して説明するものであって、IDT電極に含まれる電極指の本数や長さなどは、図3とは異なる。
【0032】
各縦結合共振器11、12は、圧電性を有する基板320と、基板320上に設けられたIDT電極30を構成する電極層325と、IDT電極30を覆うように基板上に設けられた誘電体層326とによって形成される。
【0033】
基板320は、例えば、カット角127.5°のLiNbO基板(ニオブ酸リチウム基板)である。基板320内を伝搬する弾性波としてレイリー波が使用される場合、基板320のカット角は、120°±20°、または、300°±20°であることが望ましい。
【0034】
電極層325は、複数の金属層が積層された構造を有している。電極層325は、例えば、下から順にNiCr層、Pt層、Ti層、Al層、Ti層が積層されることで形成されている。
【0035】
誘電体層326は、例えば、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とする膜である。誘電体層326は、IDT電極30の周波数温度特性を調整すること、電極層325を外部環境から保護すること、または、耐湿性を高めることなどを目的として設けられている。
【0036】
図4は、複数の縦結合共振器11、12に含まれるIDT電極30の電極指fa、fbの本数を示す模式図である。以下において、電極指fa、fbの符号を省略して単に「電極指」と記載することがある。
【0037】
図4に示すように、縦結合共振器11のIDT電極31は61(=8+45+8)本の電極指を有し、IDT電極32Aは25(=19+6)本の電極指を有し、IDT電極32Bは25(=6+19)本の電極指を有している。縦結合共振器12のIDT電極33は63(=8+47+8)本の電極指を有し、IDT電極34Aは27(=21+6)本の電極指を有し、IDT電極34Bは27(=6+21)本の電極指を有している。なお、IDT電極32AおよびIDT電極32Bの電極指は、同じ本数に限られず、異なる本数であってもよい。また、IDT電極34AおよびIDT電極34Bの電極指は、同じ本数に限られず、異なる本数であってもよい。
【0038】
各IDT電極30は、広ピッチ電極指群と狭ピッチ電極指群とを含んでいる。具体的には、IDT電極31は、広ピッチ電極指群31wと狭ピッチ電極指群31nとを有している。IDT電極32Aおよび32Bのそれぞれは、広ピッチ電極指群32wと狭ピッチ電極指群32nとを有している。IDT電極33は、広ピッチ電極指群33wと狭ピッチ電極指群33nとを有している。IDT電極34Aおよび34Bのそれぞれは、広ピッチ電極指群34wと狭ピッチ電極指群34nとを有している。
【0039】
広ピッチ電極指群とは、複数の電極指のピッチの平均値以上のピッチを有する電極指群である。狭ピッチ電極指群とは、複数の電極指のピッチの平均値未満のピッチを有する電極指群である。
【0040】
ここで、広ピッチ電極指群、狭ピッチ電極指群、電極指のピッチ、および、電極指のピッチの平均値について説明する。
【0041】
図5は、IDT電極33に含まれる広ピッチ電極指群33wおよび狭ピッチ電極指群33nの一例を示す図である。同図の横軸には、第2方向d2に沿った各電極指の位置が示され、縦軸には各電極指のピッチ、および、電極指のピッチの平均値Piが示されている。
【0042】
電極指のピッチとは、電極指fa(またはfb)の第2方向における中心から、第2方向d2のプラス側の隣に位置する他の電極指の第2方向における中心までの距離である(以下、2つの電極指間の第2方向d2における中心同士の距離を、単に「中心間距離」と称することがある)。なお、第2方向d2において最もプラス側に位置する電極指の場合は、電極指の中心から第2方向d2のプラス側に位置する反射器の電極指の中心までの距離である。
【0043】
電極指のピッチの平均値Piとは、第2方向d2に沿って配列された電極指のピッチの平均値である。例えばIDT電極33の電極指のピッチの平均値Piは、IDT電極33に含まれる複数の電極指において、第2方向d2に隣り合う電極指の各中心間距離の平均値である。IDT電極33内における複数の電極指の全てのピッチは同じであってもよく、一部もしくは全てのピッチが異なっていてもよい。電極指のピッチは、第2方向d2において隣り合うピッチが不規則に増減するように、不連続に変化していてもよい。
【0044】
電極指のピッチの平均値Piは、次のように導出できる。例えば、IDT電極33に含まれる電極指の総本数をNi本とする。そして、IDT電極33の第2方向d2における一方端に位置する電極指と、他方端に位置する電極指との中心間距離をDiとする。すると、ピッチの平均値Piは、Pi=Di/(Ni-1)という式で表せる。なお、(Ni-1)は、IDT電極33における、隣接する電極指が作るギャップの総個数ともいえる。電極指のピッチの測定箇所は、所定の隣り合う電極指の交差幅の、第1の方向d1における略中間点における、当該距離で求められる。または、1つの電極指あたり、交差幅を第1方向に略2等分する2点、または、略3等分する3点における当該距離の平均値、で求めてもよい。電極指のピッチの測定方法は、上面(第1の方向d1および第2の方向d2の両方に垂直な方向)からの光学顕微鏡またはSEM観察、もしくは、研磨等により上記仮想線を通る断面を出し、光学顕微鏡またはSEM観察、による測長で測定できる。上記の電極指のピッチ、および、電極指のピッチの平均値Piに関しては、IDT電極31、32A、32B、34A、34Bについても同様である。
【0045】
次に、図5に示された広ピッチ電極指群33wおよび狭ピッチ電極指群33nについて説明する。なお、図5では、理解を容易にするために電極指のピッチが模式的に示されている。
【0046】
図5の(a)示すIDT電極33は、第2方向d2に隣り合う広ピッチ電極指群33wおよび狭ピッチ電極指群33nを有している。この例では、広ピッチ電極指群33wの両外側に狭ピッチ電極指群33nが配置されている。広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチは、一定ピッチであり、第2方向d2に沿って同じピッチが連続した状態で続いている。狭ピッチ電極指群33nの電極指のピッチは、広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチよりも小さい一定ピッチであり、第2方向d2に沿って同じピッチが連続した状態で続いている。
【0047】
図5の(b)に示すIDT電極33は、第2方向d2に隣り合う広ピッチ電極指群33wおよび狭ピッチ電極指群33nを有している。この例でも、広ピッチ電極指群33wの両外側に狭ピッチ電極指群33nが配置されている。広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチは、ランダムピッチであり、第2方向d2に沿って異なるピッチが不連続な状態で続いている。狭ピッチ電極指群33nの電極指のピッチは、広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチよりも小さいランダムピッチであり、第2方向d2に沿って異なるピッチが不連続な状態で続いている。
【0048】
図5の(c)に示すIDT電極33は、第2方向d2の全体にわたって設けられた広ピッチ電極指群33wおよび狭ピッチ電極指群33nを有している。広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチは、ランダムピッチであり、第2方向d2の全体に沿って異なるピッチが不連続な状態で続いている。狭ピッチ電極指群33nの電極指のピッチは、広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチよりも小さいランダムピッチであり、第2方向d2の全体に沿って異なるピッチが不連続な状態で続いている。
【0049】
このようにIDT電極に含まれる広ピッチ電極指群および狭ピッチ電極指群は、図5の(a)~(c)に示す形態をとり得る。上記では、IDT電極33を例に挙げて説明したが、他のIDT電極31、32A、32B、34A、34Bについても同様である。
【0050】
次に図4に戻って、各IDT電極30の広ピッチ電極指群の本数について説明する。広ピッチ電極指群は、狭ピッチ電極指群よりも電極指の本数が多く(例えば2倍以上)、IDT電極30の波長を形成する際に支配的となる部分である。したがって以下では、広ピッチ電極指群の本数に着目して説明する。この例では、それぞれが対応関係にあるIDT電極31とIDT電極33とを対比し、IDT電極32AとIDT電極34Aとを対比し、IDT電極32BとIDT電極34Bとを対比しながら説明する。
【0051】
図4に示すように、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wの電極指の本数は47本であり、IDT電極31の広ピッチ電極指群31wの電極指の本数は45本である。つまり、IDT電極31の広ピッチ電極指群31wの電極指の本数が、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも2本少なくなっている。また、各IDT電極34A、34Bの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数は21本であり、各IDT電極32A、32Bの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数は19本である。つまり、各IDT電極32A、32Bの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、各IDT電極34A、34Bの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本少なくなっている。
【0052】
なお、図4では、IDT電極31の広ピッチ電極指群31wの電極指の本数が、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも2本少ない例を示したが、電極指の本数を少なくする数は2本に限られず、2本以上11本以下であってもよい(後に示す図8参照)。また、各IDT電極32A、32Bの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、各IDT電極34A、34Bの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本少ない例を示したが、電極指の本数を少なくする数は2本に限られず、2本以上11本以下であってもよい(図8参照)。
【0053】
また上記では、広ピッチ電極指群33w、34wの電極指の本数が、それぞれ47本、21本である例を示したが、それに限られない。例えば、広ピッチ電極指群33w、34wの電極指の本数は、それぞれ94本、42本であってもよい。この例は、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数を基準として広ピッチ電極指群31wの電極指の本数を減らし、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数を基準として広ピッチ電極指群32wの電極指の本数を減らす例であるが、基準よりも減らす電極指の本数を、基準となる広ピッチ電極指群の電極指の本数に対する比で示すと、以下の式で表される。
【0054】
基準よりも減らす電極指の本数の比=(基準よりも減らす電極指の本数)/(基準となる広ピッチ電極指群の電極指の本数)・・・(式1)
【0055】
(式1)に基づき、IDT電極31および33の関係において、基準よりも減らす電極指の本数の比を示すと、0.042以上0.235以下(=2/47以上11/47以下。ただし、小数点第四位は下限にて切り捨て上限にて切り上げ)となる。すなわち、IDT電極31の広ピッチ電極指群31wに含まれる電極指は、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wに含まれる電極指の本数を基準として、4.2%以上23.5%以下の範囲に該当する本数少なくてもよい。この構成によれば、IDT電極31とIDT電極33とが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタ1の通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタ1の通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0056】
また、(式1)に基づき、IDT電極32Aおよび34Aの関係において、基準よりも減らす電極指の本数の比を示すと、0.095以上0.524以下(=2/21以上11/21以下。ただし、小数点第四位は下限にて切り捨て上限にて切り上げ)となる。すなわち、IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数少なくてもよい。この構成によれば、IDT電極32AとIDT電極34Aとが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタ1の通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタ1の通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0057】
また、(式1)に基づき、IDT電極32Bおよび34Bの関係において、基準よりも減らす電極指の本数の比を示すと、0.095以上0.524以下(=2/21以上11/21以下。ただし、小数点第四位は下限にて切り捨て上限にて切り上げ)となる。すなわち、IDT電極32Bの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Bの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数少なくてもよい。この構成によれば、IDT電極32BとIDT電極34Bとが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタ1の通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタ1の通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0058】
上記では、全ての広ピッチ電極指群31wの電極指の本数が広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少なく、全ての広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少ない例を示したが、それに限られない。電極指の本数を少なくする広ピッチ電極指群は、全てに限られず一部であってもよい。例えば、全ての広ピッチ電極指群のうち、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数のみが、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少なくてもよい。IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数のみが、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少なくてもよい。IDT電極32Bの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数のみが、IDT電極34Bの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少なくてもよい。
【0059】
上記では、IDT電極32Aと34Aとが対応し、IDT電極32Bと34Bとが対応する例を示したが、対応関係は逆であってもよい。例えば、IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、IDT電極34Bの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少なくてもよい。IDT電極32Bの広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本以上11本以下少なくてもよい。
【0060】
[縦結合共振器群の伝送特性等]
縦結合共振器群10の伝送特性等について、図6図9を参照しながら説明する。まず、縦結合共振器に含まれるIDT電極の電極パラメータについて説明する。
【0061】
図6は、縦結合共振器12のIDT電極30の電極パラメータを示す図である。同図には、反射器43、44の電極パラメータも示されている。
【0062】
この例では、反射器43、44の電極指のピッチが、IDT電極33、34A、34Bの電極指のピッチよりも大きい。IDT電極33とIDT電極34A、34Bとでは、電極指のピッチが異なる。具体的には、広ピッチ電極指群33wの電極指のピッチが、広ピッチ電極指群34wの電極指のピッチよりも大きく、狭ピッチ電極指群33nの電極指のピッチが、狭ピッチ電極指群34nの電極指のピッチよりも大きい。IDT電極33、34A、34Bの各交差幅は同じであり、各デューティも同じである。第2方向d2に隣り合う反射器とIDTとのギャップ比は、反射器とIDTとのギャップ寸法を反射器の波長(電極指のピッチの2倍)で除算した値である。ここでいうギャップ寸法は、反射器とIDTとの境界領域において、互いに隣り合う2つの電極指の中心間距離であり、反射器の波長とIDTの波長との平均値から決定される。第2方向d2に隣り合う2つのIDTのギャップ比は、2つのIDT同士のギャップ寸法を反射器の波長で除算した値である。ここでいうギャップ寸法は、2つのIDTの境界領域において、互いに隣り合う2つの電極指の中心間距離であり、2つのIDTの波長の平均値から決定される。
【0063】
上記では、縦結合共振器12を例に挙げて説明したが、縦結合共振器11のIDT電極も上記と同様の電極パラメータを有している。すなわち反射器41、42の電極指のピッチは、IDT電極31、32A、32Bの電極指のピッチよりも大きい。IDT電極31とIDT電極32A、32Bとでは、電極指のピッチが異なる。具体的には、広ピッチ電極指群31wの電極指のピッチが、広ピッチ電極指群32wの電極指のピッチよりも大きく、狭ピッチ電極指群31nの電極指のピッチが、狭ピッチ電極指群32nの電極指のピッチよりも大きい。IDT電極31、32A、32Bの各交差幅は同じであり、各デューティも同じである。縦結合共振器11における各ギャップ比は、縦結合共振器12と同じである。
【0064】
縦結合共振器11と縦結合共振器12とで異なるのは、前述したように、広ピッチ電極指群に含まれる電極指の本数である。以下では、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数に対し、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数を変え、かつ、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数に対し、広ピッチ電極指群32wの電極指の本数を変えた例について説明する。
【0065】
図7は、縦結合共振器群10の伝送特性を示す図である。
【0066】
同図には、入出力端子T1側からみた縦結合共振器群10の挿入損失が示されている。また、同図には、縦結合共振器群10の通過帯域に表れる第1のリップルRp1、第2のリップルRp2、第3のリップルRp3および第4のリップルRp4が示されている。
【0067】
第1のリップルRp1および第2のリップルRp2は、縦結合共振器群10をSVモードで励振したときに表れる不要波(SHリップル)である。このリップルが複数表れるのは、各IDT電極の波長が異なるからである。この例では、リップルRp1およびRp2が、リップルRp3とリップルRp4との間の帯域であって、リップルRp3、Rp4よりも中心周波数寄りに表れている。リップルRp1は、リップルRp2よりも低い周波数帯に表れている。
【0068】
第3のリップルRp3および第4のリップルRp4は、縦結合共振器11および12の位相の違いによって表れる不要波(位相差要因リップル)である。このリップルが複数表れるのは、各IDT電極の波長が異なるからである。この例では、リップルRp3が、リップルRp4、Rp2およびRp1よりも低い周波数帯に表れている。リップルRp4は、リップルRp3、Rp1およびRp2よりも高い周波数帯に表れている。
【0069】
図7の(a)には、広ピッチ電極指群31wおよび広ピッチ電極指群33wの電極指の本数の差が0本である場合、かつ、広ピッチ電極指群32wおよび広ピッチ電極指群34wの電極指の本数の差が0本である場合の挿入損失が示されている。この例では、縦結合共振器群10の通過帯域にリップルRp1、Rp2が発生している。
【0070】
図7の(b)には、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数が、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも2本少ない場合、かつ、広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも2本少ない場合の挿入損失が示されている。この例では、電極指の本数の差が0本である場合に比べて、リップルRp1、Rp2の発生が抑制されている。
【0071】
図7の(c)には、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数が、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも10本少ない場合、かつ、広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも10本少ない場合の挿入損失が示されている。この例では、リップルRp1、Rp2の発生は抑制されているが、リップルRp3、Rp4が発生している。
【0072】
図7の(d)には、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数が、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数よりも14本少ない場合、かつ、広ピッチ電極指群32wの電極指の本数が、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数よりも14本少ない場合の挿入損失が示されている。この例では、電極指の本数の違いが10本である場合に比べて、リップルRp1、Rp2が大きくなり、また、リップルRp3、Rp4はさらに大きくなっている。
【0073】
このようにリップルRp1、Rp2は、広ピッチ電極指群31w、32w、33wおよび34wの各電極指の本数を調整することで、リップルの大きさを変えることが可能である。例えば、リップルRp1については、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数を固定し、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数を変えることでリップルの大きさを変えることができる。リップルRp2については、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数を固定し、広ピッチ電極指群32wの電極指の本数を変えることでリップルの大きさを変えることができる。
【0074】
リップルRp3、Rp4についても、広ピッチ電極指群31w、32w、33wおよび34wの電極指の本数を調整することで、リップルの大きさを変えることが可能である。例えば、リップルRp3については、広ピッチ電極指群33wの電極指の本数を固定し、広ピッチ電極指群31wの電極指の本数を変えることでリップルの大きさを変えることができる。リップルRp4については、広ピッチ電極指群34wの電極指の本数を固定し、広ピッチ電極指群32wの電極指の本数を変えることでリップルの大きさを変えることができる。
【0075】
上記では、縦結合共振器群10をSVモードで励振したときに表れるリップルRp1、Rp2の大きさを変える例について説明したが、それに限られない。例えば、縦結合共振器群10をSHモードで励振したときに表れる不要波(SVリップル)についても、広ピッチ電極指群の電極指の本数を調整することで、同様にリップルの大きさを変えることができる。
【0076】
図8は、複数の広ピッチ電極指群の電極指の本数の差と、第1のリップルRp1および第2のリップルRp2の大きさとの関係を示す図である。同図には、電極指の本数の差を変えたときの各リップルRp1、Rp2の挿入損失のワースト値が示されている。
【0077】
同図に示すように、広ピッチ電極指群31w、33wの電極指の本数の差が2本のとき、および、広ピッチ電極指群32w、34wの電極指の本数の差が2本のときに、グラフの曲率の変化度合いが大きくなっている。具体的には、電極指の本数の差が1本から2本に変わるときに、曲線に対する接線の傾きが小さくなるように変化している。また、広ピッチ電極指群31w、33wの電極指の本数の差が11本のとき、および、広ピッチ電極指群32w、34wの電極指の本数の差が11本のときに、グラフの曲率の変化度合いが大きくなっている。具体的には、電極指の本数の差が11本から12本に変わるときに、曲線に対する接線の傾きがマイナス方向に大きくなるように変化している。
【0078】
図8より、各リップルRp1、Rp2の挿入損失を小さくするには、広ピッチ電極指群31w、33wの電極指の本数の差を2本以上11本以下とし、また、広ピッチ電極指群32w、34wの電極指の本数の差を2本以上11本以下とすることが望ましいといえる。
【0079】
なお、曲率の変化度合いが大きいか否か(曲線に対する接線の傾きの変化度合いが大きいか否か)は、例えば、電極指の本数を1本変えた場合に、挿入損失の変化が所定値以下であるか否かで判断される。この例では、挿入損失の変化が0.5dB以下であるときに曲率の変化度合いが小さいとし、0.5dBよりも大きいときに曲率の変化度合いが大きいと判断している。
【0080】
図9は、複数の広ピッチ電極指群の電極指の本数の差と、第3のリップルRp3および第4のリップルRp4の大きさとの関係を示す図である。同図には、電極指の本数の差を変えたときの各リップルRp3、Rp4の挿入損失のワースト値が示されている。
【0081】
同図に示すように、広ピッチ電極指群31w、33wの電極指の本数の差が6本のとき、および、広ピッチ電極指群32w、34wの電極指の本数の差が6本のときに、グラフの曲率の変化度合いが大きくなっている。具体的には、電極指の本数の差が6本から7本に変わるときに、曲線に対する接線の傾きがマイナス方向に大きくなるように変化している。
【0082】
図9より、各リップルRp3、Rp4の挿入損失を小さくするには、広ピッチ電極指群31w、33wの電極指の本数の差を6本以下とし、また、広ピッチ電極指群32w、34wの電極指の本数の差を6本以下とすることが望ましいといえる。
【0083】
したがって、全てのリップルRp1、Rp2、Rp3およびRp4の挿入損失を最も小さくするには、広ピッチ電極指群31w、33wの電極指の本数の差を2本以上6本以下とし、かつ、広ピッチ電極指群32w、34wの電極指の本数の差を2本以上6本以下とすることが望ましいといえる。
【0084】
電極指の本数の差を2本以上6本以下とする場合を、前述した(式1)に当てはめると、IDT電極31および33の関係において、基準よりも減らす電極指の本数の比は、0.042以上0.128以下(=2/47以上6/47以下。ただし、小数点第四位は下限にて切り捨て上限にて切り上げ)となる。したがって、IDT電極31の広ピッチ電極指群31wに含まれる電極指は、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wに含まれる電極指の本数を基準として、4.2%以上12.8%以下の範囲に該当する本数少なくすることが望ましい。これにより、リップルRp1、Rp3の発生を抑制することができる。
【0085】
同様に、(式1)に当てはめると、IDT電極32Aおよび34Bの関係において、基準よりも減らす電極指の本数の比は、0.095以上0.286以下(=2/21以上6/21以下。ただし、小数点第四位は下限にて切り捨て上限にて切り上げ)となる。したがって、IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上28.6%以下の範囲に該当する本数少なくすることが望ましい。これにより、リップルRp2、Rp4の発生を抑制することができる。
【0086】
同様に(式1)に当てはめると、IDT電極32Aおよび34Bの関係において、基準よりも減らす電極指の本数の比は、0.095以上0.286以下(=2/21以上6/21以下。ただし、小数点第四位は下限にて切り捨て上限にて切り上げ)となる。したがって、IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上28.6%以下の範囲に該当する本数少なくすることが望ましい。これにより、リップルRp2、Rp4の発生を抑制することができる。
【0087】
[実施の形態の変形例]
実施の形態の変形例に係る弾性波フィルタ1Aの構成について、図10を参照しながら説明する。
【0088】
図10は、実施の形態の変形例に係る弾性波フィルタ1Aの回路構成図である。
【0089】
変形例の弾性波フィルタ1Aは、第1の周波数帯域を通過帯域とするフィルタである。弾性波フィルタ1Aは、入出力端子T1およびT2を結ぶ経路r1上に設けられている。
【0090】
弾性波フィルタ1Aは、複数の直列腕共振子S1、S2、S3およびS4と、複数の縦結合共振器11および12を有する縦結合共振器群10Aと、複数の並列腕共振子P1およびP2と、を備えている。
【0091】
縦結合共振器群10Aは、互いに接続された第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12を有している。変形例の第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12は、直列接続されている。
【0092】
縦結合共振器11は、第1のIDT電極31、ならびに、第2のIDT電極32Aおよび32Bを有している。縦結合共振器12は、第3のIDT電極33、ならびに、第4のIDT電極34Aおよび34Bを有している。
【0093】
変形例の弾性波フィルタ1Aでは、実施の形態と同様に、IDT電極31の広ピッチ電極指群31wに含まれる電極指が、IDT電極33の広ピッチ電極指群33wに含まれる電極指の本数を基準として、4.2%以上23.5%以下の範囲に該当する本数少ない。また、IDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数少ない。また、IDT電極32Bの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、IDT電極34Bの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数少ない。
【0094】
これらの各構成によれば、縦結合共振器11のIDT電極と縦結合共振器12のIDT電極とが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタ1Aの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタ1Aの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0095】
(まとめ)
以上説明したように、本実施の形態に係る弾性波フィルタ1、1Aは、以下に示す態様を取り得る。
【0096】
[態様1]
弾性波フィルタは、複数の縦結合共振器を備える。複数の縦結合共振器は、互いに接続された第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12を有する。第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12のそれぞれは、基板320の主面に沿う第1方向d1に延び、第1方向d1に交差する第2方向d2に沿って配列された複数の電極指を含む3つのIDT電極30を有する。第1の縦結合共振器11は、第2方向d2に沿って配置された3つのIDT電極30を有し、当該3つのIDT電極30のうち、第1のIDT電極31は、第2方向d2における中央に配置され、第2のIDT電極32Aは、第1のIDT電極31の隣に配置されている。第2の縦結合共振器12は、第2方向d2に沿って配置された3つのIDT電極30を有し、当該3つのIDT電極30のうち、第3のIDT電極33は、第2方向d2における中央に配置され、第4のIDT電極34Aは、第3のIDT電極33の隣に配置されている。IDT電極30のそれぞれは、複数の電極指のピッチの平均値Pi以上のピッチを有する広ピッチ電極指群と、平均値Pi未満のピッチを有する狭ピッチ電極指群と、を含む。
【0097】
弾性波フィルタは、以下に示す(1)および(2)の少なくとも一方の構成を有する。
【0098】
(1)第1のIDT電極31の広ピッチ電極指群31wに含まれる電極指は、第3のIDT電極33の広ピッチ電極指群33wに含まれる電極指の本数を基準として、4.2%以上23.5%以下の範囲に該当する本数が少ない。
【0099】
(2)第2のIDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、第4のIDT電極34Aの広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上52.4%以下の範囲に該当する本数が少ない。
【0100】
(1)に示す構成によれば、IDT電極31とIDT電極33とが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0101】
(2)に示す構成によれば、IDT電極32AとIDT電極34Aとが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0102】
なお、弾性波フィルタが、IDT電極32Aの代わりにIDT電極32Bを備える場合は、上記に示すIDT電極32Aを32Bに置き換えても上記と同様のことが言える。弾性波フィルタが、IDT電極34Aの代わりにIDT電極34Bを備える場合は、上記に示すIDT電極34Aを34Bに置き換えても上記と同様のことが言える。
【0103】
[態様2]
態様1に記載の弾性波フィルタは、以下に示す(3)および(4)の少なくとも一方の構成を有する。
【0104】
(3)第1のIDT電極31の広ピッチ電極指群31wに含まれる電極指は、第3のIDT電極33の広ピッチ電極指群33wに含まれる電極指の本数を基準として、4.2%以上12.8%以下の範囲に該当する本数が少ない。
【0105】
(4)第2のIDT電極32Aの広ピッチ電極指群32wに含まれる電極指は、第4のIDT電極34の広ピッチ電極指群34wに含まれる電極指の本数を基準として、9.5%以上28.6%以下の範囲に該当する本数が少ない。
【0106】
(3)に示す構成によれば、IDT電極31とIDT電極33とが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域においてさらに分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0107】
(4)に示す構成によれば、IDT電極32AとIDT電極34Aとが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域においてさらに分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0108】
なお、弾性波フィルタが、IDT電極32Aの代わりにIDT電極32Bを備える場合は、上記のIDT電極32Aを32Bに置き換えても上記と同様のことが言える。弾性波フィルタが、IDT電極34Aの代わりにIDT電極34Bを備える場合は、上記のIDT電極34Aを34Bに置き換えても上記と同様のことが言える。
【0109】
[態様3]
態様1または2に記載の弾性波フィルタにおいて、第1のIDT電極31の電極指の本数は、第2のIDT電極32の電極指の本数よりも多い。第3のIDT電極33の電極指の本数は、第4のIDT電極34の電極指の本数よりも多い。
【0110】
この構成によれば、通過帯域に発生する複数のリップルのうち、第1のIDT電極31および第3のIDT電極33に起因して発生するリップルを効果的に抑制することが可能となる。
【0111】
[態様4]
態様1~3のいずれか1つに記載の弾性波フィルタにおいて、第1の縦結合共振器11は、1つの第1のIDT電極31および2つの第2のIDT電極32A、32Bを有し、第1のIDT電極31は、2つの第2のIDT電極32A、32Bの間に配置されている。第2の縦結合共振器12は、1つの第3のIDT電極33および2つの第4のIDT電極34A、34Bを有し、第3のIDT電極33は、2つの第4のIDT電極34A、34Bの間に配置されている。
【0112】
この構成によれば、IDT電極32AとIDT電極34Aとが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができ、また、IDT電極32BとIDT電極34Bとが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0113】
[態様5]
態様1~4のいずれか1つに記載の弾性波フィルタにおいて、第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12は、並列接続されている。
【0114】
この構成によれば、並列接続された第1の縦結合共振器11と第2の縦結合共振器12とが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0115】
[態様6]
態様1~4のいずれか1つに記載の弾性波フィルタにおいて、第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12は、直列接続されている。
【0116】
この構成によれば、直列接続された第1の縦結合共振器11と第2の縦結合共振器12とが必要以上に励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0117】
[態様7]
態様1~6のいずれか1つに記載の弾性波フィルタにおいて、第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12は、SVモードによって励振する。
【0118】
この構成によれば、第1の縦結合共振器11と第2の縦結合共振器12とがSVモードによって励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0119】
[態様8]
態様1~6のいずれか1つに記載の弾性波フィルタにおいて、第1の縦結合共振器11および第2の縦結合共振器12は、SHモードによって励振する。
【0120】
この構成によれば、第1の縦結合共振器11と第2の縦結合共振器12とがSHモードによって励振して発生する不要波を、弾性波フィルタの通過帯域において適度に分散させることができる。これにより、弾性波フィルタの通過帯域にリップルが発生することを抑制できる。
【0121】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタについて説明したが、本発明は、上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る弾性波フィルタを含む高周波フロントエンド回路および通信装置も本発明に含まれる。
【0122】
上記では、各IDT電極32A、32BよりもIDT電極31のほうが、電極指の本数が多い例を示したが、それに限られない。各IDT電極32A、32BよりもIDT電極31のほうが、電極指の本数が少なくてもよい。各IDT電極32A、32BとIDT電極31とは、電極指の本数が同じでもよい。上記では、各IDT電極34A、34BよりもIDT電極33のほうが、電極指の本数が多い例を示したが、それに限られない。各IDT電極34A、34BよりもIDT電極33のほうが、電極指の本数が少なくてもよい。各IDT電極34A、34BとIDT電極33とは、電極指の本数が同じでもよい。
【0123】
上記では、IDT電極32Aと32Bとで、電極指の本数が同じになっている例を示したが、異なっていてもよい。IDT電極34Aと34Bとで、電極指の本数が同じになっている例を示したが、異なっていてもよい。
【0124】
上記では、弾性波フィルタが受信フィルタである例を示したが、それに限られず、弾性波フィルタは送信フィルタであってもよい。
【0125】
また、IDT電極および反射器の電極層325および誘電体層326を構成する材料は、前述した材料に限定されない。IDTに含まれるIDT電極は、積層構造でなくてもよい。IDT電極は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。
【0126】
また、実施の形態では、基板として圧電性を有する基板を示したが、当該基板は、圧電体層の単層からなる圧電基板であってもよい。この場合の圧電基板は、例えば、LiTaOの圧電単結晶、または、LiNbOなどの他の圧電単結晶で構成される。また、IDT電極が形成される基板は、圧電性を有する限り、全体が圧電体層からなるものの他、支持基板上に圧電体層が積層されている構造を用いてもよい。また、上記実施の形態に係る基板のカット角は限定されない。つまり、弾性波フィルタの要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、および厚みを変更してもよく、上記実施の形態に示すカット角以外のカット角を有するLiTaO圧電基板またはLiNbO圧電基板などを用いた弾性表面波フィルタであっても、同様の効果を奏することが可能となる。
【0127】
圧電性基板100は、支持基板、高音速膜、低音速膜および圧電体層がこの順で積層された構造であってもよい。
【0128】
低音速膜の材料は上記に限定されず、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることもできる。
【0129】
高音速膜の材料は上記に限定されず、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることもできる。
【0130】
なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl、FeAl、ZnAl、MnAlを挙げることができる。
【0131】
支持基板の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどのセラミック、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウムなどの半導体、もしくは樹脂、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0132】
本明細書において主成分とは、占める割合が50重量%を超える成分をいう。
【0133】
伝搬する弾性表面波に大きな影響が無い範囲内において、各層の間に任意の材料の膜が存在してもよい。例えば、圧電膜と低音速膜の間に表面波の波長に比べて十分薄い新たな高音速膜を形成してもよい。この新たな高音速膜も、前述の高音速膜と同じ材料を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、縦結合共振器を有するフィルタを備えた弾性波フィルタ、フロントエンド回路および通信装置として、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0135】
1、1A 弾性波フィルタ
10、10A 縦結合共振器群
11 第1の縦結合共振器
12 第2の縦結合共振器
30、31、32A、32B、33、34A、34B IDT電極
31n、32n、33n、34n 狭ピッチ電極指群
31w、32w、33w、34w 広ピッチ電極指群
41、42、43、44 反射器
320 基板
325 電極層
326 誘電体層
ca、cb 櫛歯状電極
d1 第1方向
d2 第2方向
fa、fb 電極指
L1、L2、L3 インダクタ
n1、n2 ノード
Pi 電極指のピッチの平均値
P1、P2 並列腕共振子
Rp1、Rp2、Rp3、Rp4 リップル
S1、S2、S3、S4 直列腕共振子
T1、T2 入出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10