(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184053
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】廃炉計画作成方法及び廃炉計画作成装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231221BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20231221BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G06Q50/06
G21F9/30 535F
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097958
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇気
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 和敬
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】廃炉の解体計画の作成にかかる処理作業の時間と労力とを格段に低減することができる廃炉計画作成方法及び廃炉計画作成装置を提供すること。
【解決手段】廃炉の解体計画の作成を行う廃炉計画作成方法であって、廃炉の躯体構造を示す基本3次元モデルに廃炉の3次元放射能分布情報を付加した廃炉用3次元モデルを生成し、該生成した廃炉用3次元モデルを用いて前記廃炉の解体計画の作成を行う。なお、基本3次元モデルは、BIMモデルである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃炉の解体計画の作成を行う廃炉計画作成方法であって、
前記廃炉の躯体構造を示す基本3次元モデルに前記廃炉の3次元放射能分布情報を付加した廃炉用3次元モデルを生成し、該生成した廃炉用3次元モデルを用いて前記廃炉の解体計画の作成を行うことを特徴とする廃炉計画作成方法。
【請求項2】
前記基本3次元モデルは、BIMモデルであることを特徴とする請求項1に記載の廃炉計画作成方法。
【請求項3】
廃炉の解体計画の作成を行う廃炉計画作成装置であって、
前記廃炉の躯体構造を示す基本3次元モデルに前記廃炉の3次元放射能分布情報を付加した廃炉用3次元モデルを生成する廃炉用3次元モデル生成部と、
前記廃炉用3次元モデルを用いて前記廃炉の解体計画の作成を行う解体計画生成部と、
を備えることを特徴とする廃炉計画作成装置。
【請求項4】
前記基本3次元モデルは、BIMモデルであることを特徴とする請求項3に記載の廃炉計画作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃炉の解体計画の作成にかかる処理作業の時間と労力とを格段に低減することができる廃炉計画作成方法及び廃炉計画作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃炉に伴う放射性廃棄物の物量算定、解体工事数量、解体で生じる廃棄物量の積算、解体費用や工数の見積り、工期算定といった工事計画の検討は、2次元の図面や資料を用いて行っていた。
【0003】
なお、特許文献1には、コンクリート中に含まれる微量元素を分析するコンクリート中の微量元素の分析方法および分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、廃炉工事は、放射化汚染した躯体や機器設備を管理区域内で解体するため、一般建築の解体と異なり手順が複雑である。さらに、放射性廃棄物の処分費用低減、作業員の被ばく低減にも配慮して綿密に解体計画を作成する必要がある。そして、作成した解体計画の評価のためには、工事にかかる工数・資材量・コスト、廃棄物の量・処分コスト、作業員の計画線量(被ばく管理のための目安となる線量)などを具体的に算出する必要がある。このため、2次元の図面や資料を用いた従来の処理作業では、解体計画の作成が完了するまでに膨大な時間と労力とがかかることになる。
【0006】
さらに、国の政策、廃炉戦略の変更、工事の遅延等による廃炉の計画変更があった場合にも同様に、膨大な時間と労力とを必要とする。また、解体工事で出た放射性廃棄物は、発生場所、材質や放射化汚染レベル等を特定し、処分するまでのトレーサビリティが求められており、この管理処理にも膨大な時間と労力がかかる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、廃炉の解体計画の作成にかかる処理作業の時間と労力を格段に低減することができる廃炉計画作成方法及び廃炉計画作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、廃炉の解体計画の作成を行う廃炉計画作成方法であって、前記廃炉の躯体構造を示す基本3次元モデルに前記廃炉の3次元放射能分布情報を付加した廃炉用3次元モデルを生成し、該生成した廃炉用3次元モデルを用いて前記廃炉の解体計画の作成を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記基本3次元モデルは、BIMモデルであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、廃炉の解体計画の作成を行う廃炉計画作成装置であって、前記廃炉の躯体構造を示す基本3次元モデルに前記廃炉の3次元放射能分布情報を付加した廃炉用3次元モデルを生成する廃炉用3次元モデル生成部と、前記廃炉用3次元モデルを用いて前記廃炉の解体計画の作成を行う解体計画生成部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記基本3次元モデルは、BIMモデルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃炉の解体計画の作成にかかる処理作業の時間と労力とを格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施の形態である廃炉計画作成方法のフローを示す図である。
【
図2】
図2は、放射性廃棄物量の集計結果の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、解体物理量の集計結果の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、生成した解体計画の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、生成した解体計画の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態である廃炉計画作成装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本実施の形態である廃炉計画作成方法のフローを示す図である。
図1に示すように、本実施の形態では、まず、基本3次元モデルである基本BIMモデルD1を取得する(ステップS1)。基本BIMモデルは、廃炉の躯体構造を示すBIM(Building Information Modeling)モデルである。BIMモデルは、建材パーツや設備といったオブジェクトの集合体として構築され、一部が修正された場合、関連する全てのデータが連動して自動修正される。
【0015】
その後、廃炉の3次元放射能分布情報D2を取得し、この3次元放射能分布情報D2を基本BIMモデルD1に付加した廃炉用3次元モデルである廃炉用BIMモデルD3を生成する(ステップS2)。
【0016】
その後、廃炉用BIMモデルD3の放射性分布を用いて、解体計画のベースとなる放射性廃棄物量の集計を行う(ステップS3)。放射性廃棄物は、放射性レベルの大きさに応じてL1,L2,L3に分類され、放射性物質として扱う必要のないものはクリアランス(CL)として分類される。この放射性廃棄物量は、解体計画に先立って国に提出する資料である(
図2参照)。
【0017】
その後、廃炉用BIMモデルD3を用いて解体計画を設定する(ステップS4)。そして、解体計画の設定に伴う解体物理量の集計を行う(ステップS5)。解体物理量の集計では、例えば、放射能汚染のある部位では正確に汚染を分離できるワイヤーソー解体として設定され、切断面積、ブロック個数等の解体数量や、粉じん、スラッジ等の二次廃棄物量が自動で計算される(
図3参照)。
【0018】
その後、解体物理量をもとに、解体計画を生成する(ステップS6)。具体的には、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)による工数、工期、被ばく量の算定を行う(
図4,
図5参照)。具体的には、作業工数及び作業時間は、解体物理量(解体工事数量)と歩掛とから算出される。被ばく量は、作業時間に空間線量率を乗算した値から算出される。処分コストは、廃棄物量をもとに、所定の計算式で評価される。なお、解体で生じた放射性廃棄物にIDを付与し、トレーサビリティ確保に活用する。IDには廃棄物の発生場所、材質、放射能レベル等の情報を持たせ、一元管理できるようにする。
【0019】
<廃炉計画作成装置>
図6は、本実施の形態である廃炉計画作成装置1の構成を示すブロック図である。廃炉計画作成装置1は、上記の廃炉計画作成方法を実行する装置である。
図6に示すように、廃炉計画作成装置1は、入力部2、表示部3、記憶部4及び制御部5を有する。
【0020】
入力部2は、各種操作入力を行う入力デバイスである。表示部3は、各種情報を表示出力する表示デバイスである。記憶部4は、基本BIMモデルD1、3次元放射能分布情報D2、及び、生成された廃炉用BIMモデルD3を少なくとも記憶する記憶デバイスである。
【0021】
制御部5は、廃炉計画作成装置1全体を制御する制御部であり、廃炉用BIMモデル生成部6、集計処理部7及び解体計画生成部8を有する。実際には、制御部5が、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリ等などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0022】
廃炉用BIMモデル生成部6は、ステップS2に対応した処理を行い、廃炉の3次元放射能分布情報D2を取得し、この3次元放射能分布情報D2を基本BIMモデルD1に付加した廃炉用3次元モデルである廃炉用BIMモデルD3を生成する。
【0023】
集計処理部7は、ステップS3,S5に対応した処理を行い、解体計画のベースとなる放射性廃棄物量の集計及び解体物理量の集計を行う。
【0024】
解体計画生成部8は、ステップS4,S6に対応した処理を行い、解体計画の設定処理と、解体物理量をもとにした解体計画を生成する。
【0025】
本実施の形態では、3次元放射能分布情報D2が付加された廃炉用BIMモデルD3を用いて廃炉の解体計画の作成を行っているので、従来の2次元の図面や資料を用いて行っていた膨大な解体計画の作成処理に比べて、処理作業を削減することができる。
【0026】
なお、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 廃炉計画作成装置
2 入力部
3 表示部
4 記憶部
5 制御部
6 廃炉用BIMモデル生成部
7 集計処理部
8 解体計画生成部
D1 基本BIMモデル
D2 3次元放射能分布情報
D3 廃炉用BIMモデル