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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184055
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】昇降体の脱レール検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B66B5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097964
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100153176
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 重明
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(72)【発明者】
【氏名】小場 由雅
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304EA08
3F304EA10
(57)【要約】
【課題】保守員の作業効率の低下を抑制することができる昇降体の脱レール検出装置を得る。
【解決手段】昇降体の脱レール検出装置は、ワイヤ8、吊下部材9、検出回路14、腕部及び検出部24aを備える。ワイヤ8は、昇降体の昇降方向と平行に配置される。吊下部材9は、ワイヤ8の一端に設けられ、第1の導体部が設けられる。検出回路14は、第1の導体部19に電気的に接続する第2の導体部20a、bを有し、第1の導体部19を介して電流が流れる。腕部は、昇降体に設けられ、昇降方向と平行にワイヤ8を通す中空部を有し、昇降体がガイドレールから外れたとき当該中空部がワイヤ8に接触して吊下部材9を移動させ、第1の導体部19と第2の導体部20a、bとを電気的に非接続にする。検出部24aは、第1の導体部19と第2の導体部20a、bとが電気的に非接続のとき、昇降体がガイドレールから外れたことを検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設けられたガイドレールに沿って昇降する昇降体の昇降方向と平行に配置されるワイヤと、
前記ワイヤの一端に設けられ、第1の導体部が設けられる吊下部材と、
前記第1の導体部に電気的に接続する第2の導体部を有し、前記第1の導体部を介して電流が流れる検出回路と、
前記昇降体に設けられ、前記昇降方向と平行に前記ワイヤを通す中空部を有し、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたとき当該中空部が前記ワイヤに接触して前記吊下部材を移動させ、前記第1の導体部と前記第2の導体部とを電気的に非接続にする腕部と、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続のとき、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたことを検出する検出部と
を備えた昇降体の脱レール検出装置。
【請求項2】
前記第2の導体部が設けられ、前記吊下部材を支持し、前記ワイヤが断線したとき前記吊下部材の重さによって開いて前記第1の導体部と前記第2の導体部とを電気的に非接続にする一対の弁と
をさらに備え、
前記検出部は、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続のとき、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたこと、又は前記ワイヤが断線したことを検出する
請求項1に記載の昇降体の脱レール検出装置。
【請求項3】
前記吊下部材が落下したことを検知するセンサと
をさらに備え、
前記検出部は、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続であって、前記センサが前記吊下部材が落下したことを検知したとき、前記ワイヤが断線したことを検出し、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続であって、前記センサが前記吊下部材が落下したことを検知していないとき、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたことを検出する
請求項2に記載の昇降体の脱レール検出装置。
【請求項4】
前記一対の弁に設けられた前記第2の導体部は、前記吊下部材に設けられた前記第1の導体部に接触することで前記第1の導体部に電気的に接続し、
前記第2の導体部が前記第1の導体部に接触するように前記一対の弁を付勢する弾性部材と
をさらに備えた請求項2又は3に記載の昇降体の脱レール検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降体の脱レール検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の昇降体の脱レール検出装置は、昇降路のほぼ全長に渡って、昇降体の昇降方向に平行に配置された第1及び第2の電線と、昇降体に搭載された第1及び第2の接触子と、昇降体がガイドレールから外れたことを検出部とを備えている。第1の電線はプラス電位にされ、第2の電線はアース電位にされている。昇降体がガイドレールから外れたとき、昇降体に搭載された第1及び第2の接触子が第1及び第2の電線に接触することで、第1の電線が第1及び第2の接触子及び釣合おもりの枠体を介して第2の電線に電気的に接続される。検出部は、第1の電線が第2の電線と同電位になったとき、昇降体がガイドレールから外れたことを検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/010376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の昇降体の脱レール検出装置は、第1及び第2電線が昇降路のほぼ全長に渡って配置されている。このため、保守員が昇降路内で作業をする際、第1及び第2電線に接触しないように注意して作業をする必要があり、保守員の作業効率が低下するという課題があった。
【0005】
本開示は上記の問題点を解決するためになされたものであり、保守員の作業効率の低下を抑制することができる昇降体の脱レール検出装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる昇降体の脱レール検出装置は、昇降路内に設けられたガイドレールに沿って昇降する昇降体の昇降方向と平行に配置されるワイヤと、ワイヤの一端に設けられ、第1の導体部が設けられる吊下部材と、第1の導体部に電気的に接続する第2の導体部を有し、第1の導体部を介して電流が流れる検出回路と、昇降体に設けられ、昇降方向と平行にワイヤを通す中空部を有し、昇降体がガイドレールから外れたとき当該中空部がワイヤに接触して吊下部材を移動させ、第1の導体部と第2の導体部とを電気的に非接続にする腕部と、第1の導体部と第2の導体部とが電気的に非接続のとき、昇降体がガイドレールから外れたことを検出する検出部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる昇降体の脱レール検出装置によれば、保守員の作業効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における昇降体の脱レール検出装置を備えたエレベータ装置の構成図である。
図2】実施の形態1における昇降体の脱レール検出装置の構成図である。
図3】実施の形態1におけるワイヤが断線したときの昇降体の脱レール検出装置の構成図である。
図4】実施の形態1における昇降体の脱レール検出装置の腕部の断面図である。
図5】実施の形態1における昇降体がガイドレールから外れたときの昇降体の脱レール検出装置の構成図である。
図6】実施の形態1における昇降体の脱レール検出装置の制御部の制御を示すフローチャートである。
図7】実施の形態2における昇降体の脱レール検出装置の構成図である。
図8】実施の形態2における昇降体の脱レール検出装置の制御部の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下に実施の形態1にかかる昇降体の脱レール検出装置を備えたエレベータ装置を詳細に説明する。なお、各図面における同一の符号は同一又は相当の構成を表している。
【0010】
図1に示すように、エレベータ装置は、昇降体、ガイドレール、巻上機5、そらせ車6、懸架体7及び昇降体の脱レール検出装置を備える。図1に示すように、昇降路1の上部には、機械室2が設けられる。昇降路1内には、昇降体であるかご3a及び釣合おもり3bが設けられる。以下の説明において、かご3aと釣合おもり3bとを区別して説明しない場合は、昇降体3と称する。また、昇降路1内には、ガイドレールであるかごガイドレール4a及び釣合おもりガイドレール4bが設けられる。以下の説明において、かごガイドレール4aと釣合おもりガイドレール4bとを区別して説明しない場合は、ガイドレール4と称する。かご3aは、かごガイドレール4aに沿って昇降路1内を昇降する。釣合おもり3bは、釣合おもりガイドレール4bに沿って昇降路1内を昇降する。
【0011】
機械室2には、巻上機5及びそらせ車6が設けられる。巻上機5は、駆動シーブ5a及びモータ(図示せず)を有しており、モータが駆動シーブ5aを回転させる。駆動シーブ5a及びそらせ車6には懸架体7が巻き掛けられる。懸架体7の一端にかご3aが接続され、懸架体7の他端に釣合おもり3bが接続される。昇降体3は、駆動シーブ5aが回転することにより、昇降路1内を昇降する。
【0012】
昇降体の脱レール検出装置は、ワイヤ8、吊下部材9、一対の弁10、バネ11、スイッチ12、腕部13、検出回路14及び制御装置15を備える。図1に示すように、ワイヤ8は、昇降路1内に設けられ、鉛直方向である昇降体3の昇降方向と平行に配置される。ワイヤ8の一端には吊下部材9が設けられる。ワイヤ8の他端は、昇降路1の天井に固定される。
【0013】
吊下部材9は、ワイヤ8の一端に設けられる。吊下部材9は、ゴム等の絶縁体によって直方体に形成され、その上面にワイヤ8の一端が取り付けられる。図2に示すように、吊下部材9に、後述する検出回路14の第1の導体部19が設けられる。
【0014】
図2に示すように、一対の弁10は、一方の弁10a及び他方の弁10bから構成され、一方の弁10aと他方の弁10bとが対向するように設置される。一対の弁10は、ゴム等の絶縁体によって板状に形成される。一対の弁10の一端は、柱部16に回動可能に取り付けられる。一対の弁10の他端側は、後述する一対の第2の導体部20がそれぞれ設けられる。一対の弁10は、ワイヤ8が断線していないとき吊下部材9を支持し、ワイヤ8が断線したとき吊下部材9の重さによって回動し、開くよう構成される。このように一対の弁10が開くと、図3に示すように、吊下部材9が一対の弁10から落下する。
【0015】
図2に示すように、弾性部材であるバネ11は、一対の弁10に設けられた後述する一対の第2の導体部20が、吊下部材9に設けられた後述する第1の導体部19に接触するように一対の弁10を付勢する。バネ11の一端は一対の弁10に固定され、バネ11の他端は柱部16に固定される。
【0016】
センサであるスイッチ12は、吊下部材9が落下したことを検知する。図3に示すように、スイッチ12は、ワイヤ8が断線し、吊下部材9が一対の弁10から落下したとき、吊下部材9によって押下されるように昇降路1の床に設けられる。言い換えると、スイッチ12は、吊下部材9の下面と対向するように昇降路1の床に設けられる。スイッチ12は、吊下部材9に押下されたとき、吊下部材9が落下したことを検知する。また、スイッチ12は、吊下部材9に押下されたとき、入出力インタフェース(図示せず)を介して、後述する検出部24aに吊下部材9の落下を検知したことを示す電気信号である落下検知信号を出力する。
【0017】
図4に、腕部13の断面図を示す。図1、4に示すように、腕部13は中空部13aを有する円柱状に形成されており、支持部材17を介して釣合おもり3bに設けられる。このため、腕部13は、釣合おもり3bの昇降に伴って昇降路1内を昇降する。なお、ワイヤ8が腕部13の可動範囲の上端から下端まで連続して延びているため、腕部13の昇降がワイヤ8によって妨げられることはない。
【0018】
図4に示すように、腕部13は、昇降体3の昇降方向と平行にワイヤ8を通す円環状の中空部13aを有する。釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bに沿って昇降しているとき、すなわち、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れていないとき、ワイヤ8と中空部13aとは接触していない。一方、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたとき、中空部13aがワイヤ8に接触し、ワイヤ8を引っ張る。ワイヤ8が引っ張られると、図5に示すように、ワイヤ8の一端に設けられた吊下部材9が上方に移動する。
【0019】
図2に示すように、検出回路14は、第1の電線18、第1の導体部19、一対の第2の導体部20及び第2の電線21を有する。第1の電線18は、後述する電源部23から供給される電流が流れる。第1の電線18は、後述する一方の第2の導体部20aに電気的に接続される。また、第1の電線18は絶縁体からなる被覆により覆われている。
【0020】
第1の導体部19は、吊下部材9に設けられる。第1の導体部19は、銅等の導体によって板状に形成され、吊下部材9の下面に固定される。
【0021】
一対の第2の導体部20は、一方の第2の導体部20a及び他方の第2の導体部20bから構成される。一対の第2の導体部20は、銅等の導体からなり、一対の弁10のうち柱部16に取り付けられていない他端側の表面の一部を覆うように一対の弁10に設けられる。具体的には、一対の第2の導体部20は、一対の弁10の他端側の上面、側面及び下面に沿うようにコの字状に形成され、一対の弁10の他端側に設けられる。一対の第2の導体部20は、吊下部材9の第1の導体部19に接触することで第1の導体部19に電気的に接続する。
【0022】
第2の電線21は、他方の第2の導体部20bに電気的に接続される。第2の電線21は、第1の導体部19及び一対の第2の導体部20を介して第1の電線18に電気的に接続される。このため、第1の電線18に供給された電流は、第1の導体部19及び一対の第2の導体部20を介して第2の電線21に流れる。言い換えると、検出回路14は、第1の導体部19及び一対の第2の導体部20を介して電流が流れる。また、第2の電線21は絶縁体からなる被覆により覆われている。
【0023】
検出回路14には、第2の電線21に流れる電流を計測する電流計22が設けられる。電流計22は、電流値が0アンペアのとき、入出力インタフェース(図示せず)を介して、後述する検出部24aに第2の電線21に流れる電流を検知しないことを示す電気信号である電流不検知信号を出力する。
【0024】
図1に示すように、制御装置15は、機械室2に設けられる。図2に示すように、制御装置15は、電源部23及び制御部24を備える。電源部23は、第1の電線18に電流を供給する電池である。
【0025】
制御部24は、半導体の集積回路を含むプロセッサ、メモリ、及び入出力インタフェースにより構成される制御基板等の装置であり、エレベータ装置全体の制御を行うものである。制御部24は、検出部24a及びかご制御部24bを備える。
【0026】
検出部24aは、電流計22から得られる電流不検知信号及びスイッチ12から得られる落下検知信号に基づいて、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出するソフトウェアモジュールを備えている。また、検出部24aは、当該検出に基づいて、かご制御部24bへ運転休止制御指令を出力するソフトウェアモジュールを備えている。さらに、検出部24aは、当該検出に基づいて、後述する報知器25へ脱レール検出信号又はワイヤ断線検出信号を出力するソフトウェアモジュールを備えている。脱レール検出信号とは、釣合おもり3bの脱レールを検出したことを示す電気信号である。また、ワイヤ断線検出信号とは、ワイヤ8の断線を検出したことを示す電気信号である。
【0027】
かご制御部24bは、巻上機5を制御することで、昇降体3の運転を制御するソフトウェアモジュールを備えている。
【0028】
報知器25は、エレベータ装置の保守員等に報知する装置である。例えば、エレベータ装置を管理する管理会社の情報端末、エレベータ装置保守会社の情報センター、エレベータ装置の保守を実施している保守員が保有する情報携帯端末である。
【0029】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図6は、制御装置15の制御部24における制御を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS1において、検出部24aは、電流計22から得られる電流不検知信号に基づいて釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出する。具体的には、検出部24aは、電流計22から出力される電流不検知信号の受信の有無を判定する。検出部24aが電流不検知信号を受信していないとき、ステップS1を繰り返す。検出部24aが電流不検知信号を受信したとき、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出し、処理をステップS2へ進める。
【0031】
ここで、電流計22が電流不検知信号を出力するのは以下の2つの場合である。1つ目は、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れた場合である。具体的には、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたとき、腕部13の中空部13aがワイヤ8を引っ張るため、図5に示すように、ワイヤ8の一端に設けられた吊下部材9が上方に移動する。吊下部材9が移動すると、検出回路14のうち第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続になり、第2の電線21に電流が流れない。このとき、電流計22で計測される電流値が0アンペアとなり、電流計22が電流不検知信号を出力する。
【0032】
2つ目は、ワイヤ8が断線した場合である。具体的には、ワイヤ8が断線したとき、図3に示すように、吊下部材9が一対の弁10から落下する。吊下部材9が落下すると、検出回路14のうち第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続になり、第2の電線21に電流が流れない。このとき、電流計22で計測される電流値が0アンペアとなり、電流計22が電流不検知信号を出力する。
【0033】
したがって、ステップS1において、検出部24aは、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続のとき、電流計22から電流不検知信号を受信することにより、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れた、又はワイヤ8が断線したことを検出することができる。
【0034】
ステップS2において、検出部24aは、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れた、又はワイヤ8が断線したことを検出したとき、かご制御部24bへ運転休止制御指令を出力する。検出部24aがかご制御部24bへ運転休止制御指令を出力すると、かご制御部24bが昇降体3の運転を休止するように巻上機5を制御する。
【0035】
ステップS3において、検出部24aは、スイッチ12から得られる落下検知信号に基づいて、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出する。具体的には、検出部24aは、スイッチ12から出力される落下検知信号の受信の有無を判定する。スイッチ12が落下検知信号を出力するのは、ワイヤ8が断線した場合である。つまり、スイッチ12は、ワイヤ8が断線し、吊下部材9が一対の弁10から落下したとき、吊下部材9に押下されて落下検知信号を出力する。したがって、検出部24aは、落下検知信号を受信したとき、ワイヤ8が断線したことを検出し、処理をステップS5へ進める。一方で、検出部24aは、落下検知信号を受信していないとき、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたことを検出し、処理をステップS4へ進める。
【0036】
ステップS4において、検出部24aは、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたことを検出したとき、報知器25へ脱レール検出信号を出力する。そして、制御部24は処理を終了する。
【0037】
ステップS5において、検出部24aは、ワイヤ8が断線したことを検出したとき、報知器25へワイヤ断線検出信号を出力する。そして、制御部24は処理を終了する。
【0038】
以上のように、実施の形態1にかかる昇降体の脱レール検出装置にあっては、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたとき、ワイヤ8が腕部13に引っ張られ、吊下部材9が上方に移動することにより、検出回路14のうち第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続になる。検出部24aは、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続のとき、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたことを検出する。このような構成により、昇降体3の昇降方向と平行に配置されるワイヤ8に電流を流す必要がない。このため、保守員が昇降路1内で作業をする際、ワイヤ8に接触しないように注意して作業をする必要がなくなり、保守員の作業効率の低下を抑制することができる。
【0039】
さらに、実施の形態1にかかる昇降体の脱レール検出装置にあっては、ワイヤ8が断線したとき吊下部材9の重さによって開いて第1の導体部19と一対の第2の導体部20とを電気的に非接続にする一対の弁10を備える。検出部24aは、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続のとき、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出する。このため、昇降体の脱レール検出装置の故障であるワイヤ8の断線について検出することができる。
【0040】
さらに、実施の形態1にかかる昇降体の脱レール検出装置にあっては、吊下部材9が落下したことを検知するスイッチ12を備える。検出部24aは、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続であって、スイッチ12が吊下部材9が落下したことを検知したとき、ワイヤ8が断線したことを検出する。また、検出部24aは、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続であって、スイッチ12が吊下部材9が落下したことを検知していないとき、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたことを検出する。このように、検出部24aが釣合おもり3bの脱レール又はワイヤ8の切断を判別して検出するため、保守員が保守作業を行うにあたり異常原因に応じた準備を行うことができる。
【0041】
さらに、実施の形態1にかかる昇降体の脱レール検出装置にあっては、一対の第2の導体部20が第1の導体部19に接触するように一対の弁10を付勢するバネ11を備える。エレベータ装置が設置される建物が振動すること、又は昇降体3が昇降すること等により、ワイヤ8及び吊下部材9が振動する。ワイヤ8及び吊下部材9が振動すると、吊下部材9に設けられた第1の導体部19が一対の弁10に設けられた一対の第2の導体部20と一時的に非接触になり、これらが電気的に非接続になることがある。このように、釣合おもり3bの脱レール又はワイヤ8の断線が生じていないにも関わらず、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続になった場合、検出部24aが釣合おもり3bの脱レール又はワイヤ8の断線を誤って検出してしまう。しかし、バネ11が、一対の第2の導体部20が第1の導体部19に接触するように一対の弁10を付勢することで、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続となることが抑制され、検出部24aが釣合おもり3bの脱レール又はワイヤ8の断線を誤って検出することが抑制される。
【0042】
なお、吊下部材9及び一対の弁10が絶縁体からなる例について説明したが、これらを形成後、絶縁体からなる膜によって覆ってもよい。このように、吊下部材9及び一対の弁10の表面を絶縁体とすることで、保守員が昇降路1内で作業をする際、吊下部材9及び一対の弁10に接触しないように注意して作業をする必要がなくなり、保守員の作業効率の低下を抑制することができる。
【0043】
なお、腕部13を釣合おもり3bに設け、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたことを検出する例について説明したが、腕部13をかご3aに設け、かご3aがかごガイドレール4aから外れたことを検出してもよい。
【0044】
なお、腕部13の中空部13aが円環状である例について説明したが、楕円形の環状又は多角形の環状等であってもよい。
【0045】
なお、センサは、吊下部材9が落下したことを検知することができればスイッチ12でなくてもよく、例えば、吊下部材9の下面と対向するように昇降路1の床に設けられ、吊下部材9までの距離を測定する光電センサ又は超音波センサ等であってもよい。
【0046】
なお、一対の第2の導体部20は、第1の導体部19に電気的に接続することができれば、コの字状に形成されなくてもよく、例えば、板状又はL字状等に形成されてもよい。
【0047】
なお、電源部23は、電池である例について説明したが、外部から充電される方式の蓄電池、又は商用電源(図示せず)から供給された交流電流を直流電流に変換する若しくは電圧を変換する電源回路等であってもよい。
【0048】
実施の形態2.
実施の形態1では、吊下部材9が落下したことを検知するスイッチ12を備える昇降体の脱レール検出装置について説明した。実施の形態2では、スイッチ12を備えない昇降体の脱レール検出装置について説明する。具体的には、検出部24aが釣合おもり3bの脱レール又はワイヤ8の切断を判別して検出しない点で実施の形態1と相違するため、以下に相違点について説明する。
【0049】
図7に示すように、本実施の形態における昇降体の脱レール検出装置は、スイッチ12を備えない。
【0050】
検出部24aは、電流計22から得られる電流不検知信号に基づいて、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出するソフトウェアモジュールを備えている。また、検出部24aは、当該検出に基づいて、かご制御部24bへ運転休止制御指令を出力するソフトウェアモジュールを備えている。さらに、検出部24aは、当該検出に基づいて、報知器25へ異常検出信号を出力するソフトウェアモジュールを備えている。異常検出信号とは、釣合おもり3bの脱レール又はワイヤ8の断線を検出したことを示す電気信号である。
【0051】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図8は、制御装置15の制御部24における制御を示すフローチャートである。ステップS6は、実施の形態1のステップS3からステップS5の代わりに実行される処理であるため、これについて説明する。
【0052】
ステップS6において、検出部24aは、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたこと、又はワイヤ8が断線したことを検出したとき、報知器25へ異常検出信号を出力する。そして、制御部24は処理を終了する。
【0053】
以上のように、実施の形態2にかかる昇降体の脱レール検出装置にあっても、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたとき、ワイヤ8が腕部13に引っ張られ、吊下部材9が上方に移動することにより、検出回路14のうち第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続になる。検出部24aは、第1の導体部19と一対の第2の導体部20とが電気的に非接続のとき、釣合おもり3bが釣合おもりガイドレール4bから外れたことを検出する。このような構成により、昇降体3の昇降方向と平行に配置されるワイヤ8に電流を流す必要がない。このため、保守員が昇降路1内で作業をする際、ワイヤ8に接触しないように注意して作業をする必要がなくなり、保守員の作業効率の低下を抑制することができる。
【0054】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
昇降路内に設けられたガイドレールに沿って昇降する昇降体の昇降方向と平行に配置されるワイヤと、
前記ワイヤの一端に設けられ、第1の導体部が設けられる吊下部材と、
前記第1の導体部に電気的に接続する第2の導体部を有し、前記第1の導体部を介して電流が流れる検出回路と、
前記昇降体に設けられ、前記昇降方向と平行に前記ワイヤを通す中空部を有し、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたとき当該中空部が前記ワイヤに接触して前記吊下部材を移動させ、前記第1の導体部と前記第2の導体部とを電気的に非接続にする腕部と、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続のとき、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたことを検出する検出部と
を備えた昇降体の脱レール検出装置。
(付記2)
前記第2の導体部が設けられ、前記吊下部材を支持し、前記ワイヤが断線したとき前記吊下部材の重さによって開いて前記第1の導体部と前記第2の導体部とを電気的に非接続にする一対の弁と
をさらに備え、
前記検出部は、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続のとき、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたこと、又は前記ワイヤが断線したことを検出する
付記1に記載の昇降体の脱レール検出装置。
(付記3)
前記吊下部材が落下したことを検知するセンサと
をさらに備え、
前記検出部は、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続であって、前記センサが前記吊下部材が落下したことを検知したとき、前記ワイヤが断線したことを検出し、前記第1の導体部と前記第2の導体部とが電気的に非接続であって、前記センサが前記吊下部材が落下したことを検知していないとき、前記昇降体が前記ガイドレールから外れたことを検出する
付記2に記載の昇降体の脱レール検出装置。
(付記4)
前記一対の弁に設けられた前記第2の導体部は、前記吊下部材に設けられた前記第1の導体部に接触することで前記第1の導体部に電気的に接続し、
前記第2の導体部が前記第1の導体部に接触するように前記一対の弁を付勢する弾性部材と
をさらに備えた付記2又は3に記載の昇降体の脱レール検出装置。
【符号の説明】
【0055】
1 昇降路、3a かご、3b 釣合おもり、4a かごガイドレール、4b 釣合おもりガイドレール、8 ワイヤ、9 吊下部材、10a 一方の弁、10b 他方の弁、11 バネ、12 スイッチ、13 腕部、14 検出回路、15 制御装置、18 第1の電線、20a 一方の第2の導体部、20b 他方の第2の導体部、21 第2の電線、22 電流計、24 制御部、24a 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8