(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184077
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20231221BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097998
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】山東 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 教介
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA05
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB07
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA15
(57)【要約】
【課題】処理水の逆洗でも濾過装置を簡便に洗浄することが可能な水処理装置、及び前記水処理装置を用いた水処理方法を提供すること。
【解決手段】放射線照射装置と、水源と前記放射線照射装置の上流側とを連結する第1配管と、前記放射線照射装置の下流側と接続され、前記水源から前記放射線照射装置に向かう順方向に通水される水を系外に排出する第2配管と、前記第1配管から分岐し、前記第1配管及び前記第2配管を前記順方向とは反対の逆方向に通水される水を系外に排出する第3配管と、を備える水処理装置において、前記第1配管に前記第1配管内の通水量を制御可能な第1開閉弁を設け、前記第3配管を前記第1配管の前記第1開閉弁と前記放射線照射装置の間から分岐させ、前記第3配管に前記第3配管から排出される排水量を制御可能な第3開閉弁を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射装置と、
水源と前記放射線照射装置の上流側とを連結する第1配管と、
前記放射線照射装置の下流側と接続され、前記水源から前記放射線照射装置に向かう順方向に通水される水を系外に排出する第2配管と、
前記第1配管及び前記第2配管を前記順方向とは反対の逆方向に通水される水を系外に排出する第3配管と、を備え、
前記第1配管に前記第1配管内の通水量を制御可能な第1開閉弁が設けられ、
前記第3配管が前記第1配管の前記第1開閉弁と前記放射線照射装置の間から分岐しており、
前記第3配管に前記第3配管から排出される排水量を制御可能な第3開閉弁が設けられている、水処理装置。
【請求項2】
前記放射線照射装置が紫外線照射装置である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第1開閉弁及び前記第3開閉弁の少なくとも一方が電気信号で制御される電磁弁である、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記第2配管に前記第2配管から排出される排水量を制御可能な第2開閉弁が設けられ、前記第2配管の前記放射線照射装置と前記第2開閉弁との間に蓄圧機が設けられている、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記蓄圧機が、蓄圧機能を有する貯留槽である、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記第2開閉弁が電気信号で制御される電磁弁である、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記第1配管における前記第3配管との分岐点と前記放射線照射装置との間に濾過装置が設けられている、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記第1開閉弁と前記放射線照射装置との間に濾過装置が設けられ、前記第3配管は、前記濾過装置から分岐し、前記第1配管及び前記第2配管を前記順方向とは反対の逆方向に通水される水を系外に排出する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記第1配管に水を順方向に圧送するポンプが設けられている、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の水処理装置を用いた水処理方法であって、
前記第1開閉弁を閉め、前記第3開閉弁を開けた状態で、前記放射線照射装置によって放射線照射した水を前記第1配管に逆方向に通水し、前記第3配管から排出することを含む、水処理方法。
【請求項11】
前記第1開閉弁及び前記第3開閉弁の少なくとも一方が電気信号で制御される電磁弁である、請求項10に記載の水処理方法。
【請求項12】
前記第2配管に前記第2配管から排出される排水量を制御可能な第2開閉弁が設けられ、前記第2配管の前記放射線照射装置と前記第2開閉弁との間に蓄圧機が設けられており、
前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉め、前記第3開閉弁を開けた状態で、前記放射線照射装置によって放射線照射した水を前記第1配管に逆方向に通水し、前記第3配管から排出することを含む、請求項10に記載の水処理方法。
【請求項13】
前記第2開閉弁を閉めること、前記第1開閉弁を閉めること、及び前記第3開閉弁を開けることをこの順序で行う、請求項12に記載の水処理方法。
【請求項14】
前記蓄圧機が、蓄圧機能を有する貯留槽である、請求項12又は13に記載の水処理方法。
【請求項15】
前記第2開閉弁が電気信号で制御される電磁弁である、請求項12又は13に記載の水処理方法。
【請求項16】
前記第1配管における前記第3配管との分岐点と前記放射線照射装置との間に濾過装置が設けられている、請求項10に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水や表流水等の原水を飲料水等に利用する際の水処理方法としては、例えば原水に次亜塩素酸塩を添加して金属イオンを酸化物又は水酸化物として析出させ、砂濾過、膜濾過等の濾過処理を行う方法がある。
原水を一定以上の期間処理すると、濾材や配管が微生物によって汚染され、濾材や配管の閉塞や処理水の汚染が起きる問題がある。そこで、濾材や配管を洗浄する方法として、処理水に薬剤を添加して洗浄を行う方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、処理水に薬剤を添加して濾材や配管を洗浄する方法は、複雑な工程や制御が必要となる。また、処理水に薬剤を添加せずに、当該処理水で砂濾過や膜濾過を行う濾過装置の逆洗を行うと、濾過装置の2次側が汚染され、洗浄後の運転で得られる処理水が汚染されるリスクが高まる。
【0005】
本発明は、処理水の逆洗でも濾過装置を簡便に洗浄することが可能な水処理装置、及び前記水処理装置を用いた水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[16]の態様を含む。
[1]放射線照射装置と、
水源と前記放射線照射装置の上流側とを連結する第1配管と、
前記放射線照射装置の下流側と接続され、前記水源から前記放射線照射装置に向かう順方向に通水される水を系外に排出する第2配管と、
前記第1配管及び前記第2配管を前記順方向とは反対の逆方向に通水される水を系外に排出する第3配管と、を備え、
前記第1配管に前記第1配管内の通水量を制御可能な第1開閉弁が設けられ、
前記第3配管が前記第1配管の前記第1開閉弁と前記放射線照射装置との間から分岐しており、
前記第3配管に前記第3配管から排出される排水量を制御可能な第3開閉弁が設けられている、水処理装置。
[2]前記放射線照射装置が紫外線照射装置である、[1]に記載の水処理装置。
[3]前記第1開閉弁及び前記第3開閉弁の少なくとも一方が電気信号で制御される電磁弁である、[1]又は[2]に記載の水処理装置。
[4]前記第2配管に前記第2配管から排出される排水量を制御可能な第2開閉弁が設けられ、前記第2配管の前記放射線照射装置と前記第2開閉弁との間に蓄圧機が設けられている、[1]~[3]のいずれかに記載の水処理装置。
[5]前記蓄圧機が、蓄圧機能を有する貯留槽である、[4]に記載の水処理装置。
[6]前記第2開閉弁が電気信号で制御される電磁弁である、[4]又は[5]に記載の水処理装置。
[7]前記第1配管における前記第3配管との分岐点と前記放射線照射装置との間に濾過装置が設けられている、[1]~[6]のいずれかに記載の水処理装置。
[8]前記第1開閉弁と前記放射線照射装置との間に濾過装置が設けられ、前記第3配管は、前記濾過装置から分岐し、前記第1配管及び前記第2配管を前記順方向とは反対の逆方向に通水される水を系外に排出する、[1]~[6]のいずれかに記載の水処理装置。
[9]前記第1配管に水を順方向に圧送するポンプが設けられている、[1]~[8]のいずれかに記載の水処理装置。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の水処理装置を用いた水処理方法であって、
前記第1開閉弁を閉め、前記第3開閉弁を開けた状態で、前記放射線照射装置によって放射線照射した水を前記第1配管に逆方向に通水し、前記第3配管から排出することを含む、水処理方法。
[11]前記第1開閉弁及び前記第3開閉弁の少なくとも一方が電気信号で制御される電磁弁である、[10]に記載の水処理方法。
[12]前記第2配管に前記第2配管から排出される排水量を制御可能な第2開閉弁が設けられ、前記第2配管の前記放射線照射装置と前記第2開閉弁との間に蓄圧機が設けられており、
前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉め、前記第3開閉弁を開けた状態で、前記放射線照射装置によって放射線照射した水を前記第1配管に逆方向に通水し、前記第3配管から排出することを含む、[10]又は[11]に記載の水処理方法。
[13]前記第2開閉弁を閉めること、前記第1開閉弁を閉めること、及び前記第3開閉弁を開けることをこの順序で行う、[12]に記載の水処理方法。
[14]前記蓄圧機が、蓄圧機能を有する貯留槽である、[12]又は[13]に記載の水処理方法。
[15]前記第2開閉弁が電気信号で制御される電磁弁である、[12]~[14]のいずれかに記載の水処理方法。
[16]前記第1配管における前記第3配管との分岐点と前記放射線照射装置との間に濾過装置が設けられている、[10]~[15]のいずれかに記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、処理水の逆洗でも濾過装置を簡便に洗浄することが可能な水処理装置、及び前記水処理装置を用いた水処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の一例の水処理装置を示した模式図である。
【
図2】
図1の水処理装置における洗浄時の様子を示した模式図である。
【
図3】実施形態の他の一例の水処理装置を示した模式図である。
【
図4】実施形態の他の一例の水処理装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態例について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0010】
[水処理装置]
図1は、本発明の水処理方法に好適に用い得る水処理装置の一例である水処理装置1を示した図である。
図1に示す例の水処理装置1は、放射線照射装置10と、ポンプ12と、濾過装置14と、蓄圧機16と、第1配管22と、第2配管24と、第3配管26と、を備えている。
【0011】
第1配管22は、水源100と放射線照射装置10とを連結している配管である。第2配管24は、放射線照射装置10の下流側に接続された、順方向に通水される水を系外に排出する配管である。第3配管26は、第1配管22から分岐した、第1配管22及び第2配管24を逆方向に通水される水を系外に排出する配管である。
本発明では、第1配管及び第2配管における通水方向のうち、水源から放射線照射装置に向かう方向を「順方向」、順方向とは反対の方向を「逆方向」とする。
【0012】
放射線照射装置10は、紫外線照射装置、可視光照射装置、赤外線照射装置、マイクロ波照射装置等が例示される。安全面と殺菌効果の観点から、紫外線照射装置が好ましい。本発明における紫外線とは、波長10~380nmの電磁波である。照射効率や殺菌効率の観点から、照射される波長は150~350nmが好ましい。複数の波長を発する光源を組み合わせてもよい。
【0013】
第2配管24の放射線照射装置10とは反対側の接続形態は特に限定されず、適宜他の装置等に接続することができる。第3配管26の第1配管22と接続されている側と反対側の接続形態は特に限定されず、例えば排水処理装置等に接続されていてもよく、河川等に通じていてもよい。
第1配管22、第2配管24及び第3配管26としては、特に限定されず、水処理に用いられる公知の配管を用いることができる。
【0014】
水源100は、処理対象となる原水の供給源であり、特に限定されない。水源100の具体例としては、例えば井戸、河川、貯水池、雨水を例示できる。井戸から汲み上げた地下水、河川水や浄水等を貯留する貯留槽にある貯留水を水源100として用いてもよい。
【0015】
第1配管22には、第1配管22内の通水量を制御可能な第1開閉弁32が設けられている。また、第1配管22における第1開閉弁32よりも水源100側(上流側)には、順方向に水を圧送するポンプ12が設けられている。第1開閉弁32を開けた状態でポンプ12を稼働させることにより、第1配管22を通じて水源100から放射線照射装置10に向かって原水W1が送られる。
なお、順方向に水を圧送できれば、ポンプ12の位置は第1開閉弁32よりも放射線照射装置10側(下流側)であってもよい。
【0016】
第1開閉弁32としては、弁の開閉によって第1配管22内の通水量を制御できるものであれば、公知の開閉弁を用いることができ、通水量の制御が容易なことから、電気信号で制御される電磁弁が好ましい。第1開閉弁32は、開状態と閉状態の2状態の切り替えが可能な弁であってもよく、開閉状態を多段階に調節可能な弁であってもよい。
【0017】
水処理装置1では、第1配管22における第3配管26との分岐点23と放射線照射装置10との間に濾過装置14が設けられている。水源100から順方向に送られる原水W1は濾過装置14によって濾過処理される。濾過装置14と放射線照射装置10との距離は、近いほど後述の洗浄時に濾過装置14の洗浄効果が高くなる傾向がある。
【0018】
濾過装置14としては、特に限定されず、水処理に通常用いられる公知の濾過装置を制限なく用いることができる。濾過装置14の具体例としては、例えば砂濾過装置、活性炭処理装置、膜濾過装置、イオン交換処理装置を例示できる。膜濾過装置に用いる膜としては、例えば精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜、ナノ濾過(NF)膜、逆浸透(RO)膜を例示できる。
濾過装置14としては、1つを単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
濾過装置14として上下方向に通水する場合、水処理運転時の順方向の通水が濾過装置において上向流となるように配置することが好ましい。これにより、後述の洗浄時に逆方向に通水する際、濾過装置における通水が下向流となって汚れが装置から排出されやすくなり、洗浄効果が高まる傾向がある。
【0020】
第2配管24には、第2配管24から排出される排水量を制御可能な第2開閉弁34が設けられている。水処理運転時には第2開閉弁34が開けられた状態であり、濾過装置14で処理され、放射線照射装置10を通過した処理水W2が第2配管24を通じて系外へと排出される。
【0021】
第2開閉弁34としては、弁の開閉によって第2配管24からの処理水W2の排水量を制御できるものであれば、公知の開閉弁を用いることができ、排水量の制御が容易なことから、電気信号で制御される電磁弁が好ましい。第2開閉弁34は、開状態と閉状態の2状態の切り替えが可能な弁であってもよく、開閉状態を多段階に調節可能な弁であってもよい。
【0022】
第3配管26には、第3配管26から排出される排水量を制御可能な第3開閉弁36が設けられている。第3開閉弁36を開けることにより、第1配管22内の水が第3配管26を通じて系外に排出される。また、第1開閉弁32と第3開閉弁36は、一つの3方弁として設置してもよい。
【0023】
第3開閉弁36としては、弁の開閉によって第3配管26からの排水量を制御できるものであれば、公知の開閉弁を用いることができ、排水量の制御が容易なことから、電気信号で制御される電磁弁が好ましい。第3開閉弁36は、開状態と閉状態の2状態の切り替えが可能な弁であってもよく、開閉状態を多段階に調節可能な弁であってもよい。
【0024】
第2配管24の放射線照射装置10と第2開閉弁34との間には蓄圧機16が設けられている。蓄圧機16は、第1開閉弁32を開け、第2開閉弁34及び第3開閉弁36を閉めた状態で順方向に圧送される処理水W2を利用して、逆方向に圧送可能なエネルギーを蓄える機能を有する。
蓄圧機16としては、例えば、ポンプ12によって順方向に圧送されてくる処理水W2を高圧状態で蓄えることが可能な公知のアキュムレータや、蓄圧機能を有する貯留槽を用いることができる。
【0025】
蓄圧機能を有する貯留槽としては、例えば、第1配管22の第3配管26との分岐点23、及び放射線照射装置10よりも高い位置に配置された貯留槽を例示できる。第1開閉弁32を開け、第2開閉弁34及び第3開閉弁36を閉めた状態で順方向に圧送されてくる処理水W2がこのような貯留槽に蓄えられると、第1開閉弁32及び第2開閉弁34を閉め、第3開閉弁36を開けた状態とした際に、当該貯留槽に蓄えられた処理水W2が重力によって逆方向へと圧送される。
【0026】
放射線照射装置10は、放射線照射装置10に供給される水に対して紫外線を照射する装置である。放射線照射装置10の態様は、処理対象の水に放射線を照射できるものであれば特に限定されず、例えば照射槽と、前記照射槽内の水に紫外線を照射する放射線照射手段とを備える態様を例示できる。なお、放射線照射装置10は、照射槽を備えないものであってもよい。
放射線は紫外線とした場合、紫外線照射手段としては、特に限定されず、水銀ランプ、LED、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプを例示できる。
【0027】
図2に示すように、洗浄時の水処理装置1においては、蓄圧機16から逆方向に処理水W2を通水し、放射線照射装置として紫外線照射装置を用いた場合、紫外線照射装置10によって紫外線を照射することによって紫外線処理水W3とし、紫外線処理水W3で濾過装置14及び第1配管22を洗浄する。紫外線処理水W3においては十分な紫外線照射によってヒドロキシラジカル等の活性種が発生しており、紫外線照射を停止したとしても、活性種が残存するため、この活性種の作用で微生物による配管や濾材の汚れが除去される。
処理水W2は濾過装置で処理した処理水であり、活性種が発生しやすいことから、処理水W2には有機物、塩類(硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩)、重金属イオン(Cu、Al、Fe、Mn、Zn、As、Co等)、アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン、有機酸、無機酸、ハロゲン化物、酸素、遊離炭酸、アンモニアからなる群から選ばれる1種以上の成分が含まれてもよく、飲料水基準を満たした水でもよい。
また、
図2には図示していないが、薬品を注入せずに活性種を効率的に発生させることができる活性種発生促進装置を備えてもよい。活性種発生促進装置の具体例として、電気分解装置、加熱装置、放射線照射装置(例えば、太陽光、可視光線、紫外線、赤外線、マイクロ波)などが挙げられる。活性種発生促進装置が、紫外線照射装置10内、または紫外線照射装置10と蓄圧機16との間に設置されてもよい。
【0028】
水処理装置1では、第1開閉弁32、第2開閉弁34及び第3開閉弁36をすべて電磁弁とし、それら電磁弁の開閉を制御部40によって制御して水処理運転と洗浄の切り替えを行う態様が好ましい。このような態様であれば、水処理運転と洗浄の切り替えが容易である。
【0029】
[水処理方法]
以下、本発明の水処理方法の一例として、前記した水処理装置1を用いた水処理方法について説明する。
水処理装置1を用いた水処理方法は、例えば以下の(i)及び(ii)の工程を含む。
(i)水処理(通常運転)工程:第1開閉弁32及び第2開閉弁34を開け、第3開閉弁36を閉めた状態で順方向に通水して水処理を行う。
(ii)逆洗工程:第1開閉弁32及び第2開閉弁34を閉め、第3開閉弁36を開けた状態で逆方向に通水して洗浄を行う。
【0030】
工程(i)では、第1開閉弁32及び第2開閉弁34を開け、第3開閉弁36を閉めた状態でポンプ12を稼働させる。これにより、
図1に示すように、水源100から第1配管22を通じて原水W1が順方向に通水され、濾過装置14で濾過処理される。濾過装置14で処理され、放射線照射装置10を通過した処理水W2は第2配管24を通じて系外に排出される。このときには、放射線照射装置10によって放射線を照射しなくてもよい。
【0031】
工程(ii)では、第1開閉弁32及び第2開閉弁34を閉め、第3開閉弁36を開けた状態で処理水W2を逆方向に通水する。そして、紫外線照射装置10によって紫外線を照射して紫外線処理水W3とし、第1配管22に逆方向に通水して第3配管26から排出させる。このように、紫外線処理水W3によって第1配管22及び濾過装置14を逆洗する。
【0032】
水処理装置1を用いる水処理方法では、工程(ii)において、以下の(1)~(3)の順序で開閉弁を操作することが好ましい。
(1)第2開閉弁34を閉める。
(2)第1開閉弁32を閉める。
(3)第3開閉弁36を開ける。
【0033】
まず、工程(i)における第1開閉弁32及び第2開閉弁34が開けられ、第3開閉弁36が閉められた状態から、第2開閉弁34を閉める。これにより、第1開閉弁32が開けられ、第2開閉弁34及び第3開閉弁36が閉められた状態となる。この状態では、ポンプ12の可動によって原水W1が第1配管22内を順方向に通水され、処理水W2が第2配管24内を蓄圧機16まで順方向に通水される。これにより、蓄圧機16には、処理水W2を逆方向に圧送するためのエネルギーが蓄積される。例えば、蓄圧機16として、第1配管22の第3配管26との分岐点23、及び紫外線照射装置10よりも高い位置に貯留槽を配置した場合、当該貯留槽に処理水W2が蓄えられて水位が上がり、処理水W2を逆方向に圧送するためのエネルギーが蓄積される。
【0034】
次に第1開閉弁32を閉める。これにより順方向への通水が停止される。第3開閉弁36を開けるまでに、紫外線照射装置10内に溜まっている処理水W2に対し、積極的に活性種を発生させるよう、紫外線照射量を調整することは可能である。
次に第3開閉弁36を開ける。これにより、第1開閉弁32及び第2開閉弁34が閉められ、第3開閉弁36が開かれた状態となる。この状態になると、蓄圧機16に蓄えられたエネルギーが解放され、蓄圧機16から処理水W2が逆方向に通水される。そして、紫外線照射装置10によって紫外線照射された紫外線処理水W3が濾過装置14及び第1配管22を通り、第3配管26から排出される。活性種を含有する紫外線処理水W3を用いて、紫外線照射装置10と第1開閉弁との間の配管と装置、および第3配管26を殺菌できる。
なお、第1開閉弁32を閉める操作と第3開閉弁36を開ける操作は同時であってもよい。
【0035】
紫外線処理水W3による濾過装置14及び第1配管22の洗浄効果は、紫外線処理水W3中のヒドロキシラジカル等の活性種の量に依存する。具体的に、有機物、金属イオンが少なすぎるとヒドロキシラジカル等の活性種の生成量が減少するが、多すぎると紫外線透過率が減少するため、微生物不活化効率が落ちる。紫外線処理水W3中のヒドロキシラジカル等の活性種の量は、処理水W2の成分や、紫外線照射量、放射線の波長を調節することによって調節できる。例えば、電流値で照射強度を調整することで照射量を調整してもよく、滞留時間を変えることで照射量を調整してもよい。
原水W1としては、活性種が発生しやすいことから、有機物、塩類(硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩)、重金属イオン(Cu、Al、Fe、Mn、Zn、As、Co等)アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオン、有機酸、無機酸、ハロゲン化物、酸素、遊離炭酸、アンモニアからなる群から選ばれる1種以上の成分が含まれてもよく、飲料水基準を満たした水でもよい。
【0036】
充分な量のヒドロキシラジカル等の活性種が生じやすいことから、紫外線照射装置10による逆洗時に必要な紫外線の照射量は0.1mJ/cm2以上が好ましく、10mJ/cm2以上がより好ましく、100mJ/cm2以上がさらに好ましい。また、エネルギー消費の観点から、紫外線照射装置10による紫外線の照射量は、10000mJ/cm2以下が好ましい。紫外線の照射量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。紫外線強度もしくは照射槽の滞留時間で放射線量は制御できる。
【0037】
以上説明したように、水処理装置1では、紫外線照射装置10による紫外線照射後の紫外線処理水W3によって第1配管22及び濾過装置14を逆洗することにより、薬剤を添加する方法に比べて簡便に洗浄を行うことができる。また、逆洗に紫外線処理水W3を利用するため、薬剤を添加せず、紫外線を照射しない場合に比べて、洗浄時に濾過装置14の下流側が汚染されにくく、洗浄後の再運転時に清澄な処理水が得られる。
【0038】
なお、本発明の水処理装置及び水処理方法は、前記したものには限定されない。
例えば、洗浄時に処理水を逆方向に通水する方法は、蓄圧機を用いる方法には限定されず、ポンプを用いてもよい。この場合、第2配管には第2開閉弁を設けなくてもよい。
【0039】
具体的には、例えば
図3に例示した水処理装置2であってもよい。
水処理装置2は、第2配管24に蓄圧機16及び第2開閉弁34が設けられておらず、第2配管24に逆方向に水を圧送するポンプ18が設けられている以外は、水処理装置1と同様の構成である。
【0040】
水処理装置2を用いた水処理方法では、第1開閉弁32を開け、第3開閉弁36を閉め、ポンプ18を停止した状態で、ポンプ12を稼働させ、順方向に通水して水処理を行う。一方、洗浄時には、第1開閉弁32を閉め、第3開閉弁36を開けた状態でポンプ18を稼働させ、処理水W2を逆方向に通水し、紫外線照射後の紫外線処理水W3を利用して逆洗を行う。
【0041】
また、
図4に例示した水処理装置3であってもよい。
水処理装置3は、第3配管26が、第1配管22の第1開閉弁32と放射線照射装置10との間に設けられた濾過装置14から分岐している以外は、水処理装置1と同様の構成である。水処理装置3では、逆洗時に第1配管22及び第2配管24を逆方向に通水される水が、濾過装置14から第3配管26を通じて系外に排出される。
【0042】
また、本発明の水処理装置は、濾過装置を備えていなくてもよい。この態様においても、紫外線処理水を利用した逆洗によって第1配管を簡便に洗浄することができる。
また、本発明の水処理方法は、工程(i)及び工程(ii)に加えて、処理水を順方向に通水しつつ紫外線処理装置によって紫外線を照射し、紫外線処理水によって第2配管を洗浄する工程(iii)を含んでもよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。本発明の水処理装置から得た処理水は、飲用水や生活用水として利用しても良い。
【実施例0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0045】
<水質>
原水W1水質は以下である。
【0046】
【0047】
[評価方法]
洗浄効果は、25℃における濾過装置14の濾材におけるATP値(Relative Light Unit;RLU)をLumitester PD-20(キッコーマン社製)を用いて測定した。
【0048】
[実施例1]
図1に例示した水処理装置1を用いて水処理(通常運転)と逆洗を行った。濾過装置14としては、順方向の通水時に上向流となり、逆方向の通水時に下向流となる砂濾過装置(濾材としてアンスラサイト(粒径0.7mm)を内径25mmのアクリルカラムに100cc充填した)を用いた。蓄圧機16として、第1配管22の第3配管26との分岐点23、及び紫外線照射装置10(日機装社製、Pearl-aqua 9D)よりも高い位置に貯留槽を配置した。
<水処理(通常運転)工程>
第1開閉弁32及び第2開閉弁34が開けられ、第3開閉弁36が閉められ、ポンプ12の可動によって順方向に通水している状態から、第2開閉弁34を閉め、40分経過後に第1開閉弁32を閉めた。
<逆洗工程>
さらに第3開閉弁36を開け、逆方向に通水される処理水W2に対して紫外線照射装置10によって紫外線を照射し、紫外線処理水W3によって第1配管22及び濾過装置14を逆洗した。紫外線装置を15分間点灯した。逆方向の通水時の紫外線処理水W3の流速は150m/dであった。
<ATP値測定>
水処理(通常運転)工程と逆洗工程とが、繰り返し運転を10日間実施した後、濾材100ccに対して純水100mLを添加してよく振り交ぜた後、得られた検体水のATP値をATP計によって測定した。
【0049】
[比較例1]
逆洗する時に処理水に紫外線を照射しない以外は、実施例1と同様にして逆洗を行った。
【0050】
各例の評価結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
実施例1の濾材のATP値(475RLU)は、比較例1のATP値(1395RLU)より明らかに低下した。紫外線を照射した処理水(照射量300mJ/cm2)の逆洗により紫外線処理水W3中のヒドロキシラジカル等の活性種が生成することにより、アンスラサイトに付着した微生物の繁殖を抑えられたと考えられる。
1,2…水処理装置、10…放射線照射装置(紫外線照射装置)、12…ポンプ、14…濾過装置、16…蓄圧機、18…ポンプ、22…第1配管、23…分岐点、24…第2配管、26…第3配管、32…第1開閉弁、34…第2開閉弁、36…第3開閉弁、40…制御部。