(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184081
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F02B 39/16 20060101AFI20231221BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20231221BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F02B39/16 F
F02B37/18 E
F02D45/00 345
F02D45/00 364E
F02D45/00 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098003
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】東條 勇
【テーマコード(参考)】
3G005
3G384
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA21
3G005GA02
3G005GB27
3G005GD12
3G005GD14
3G005JA24
3G005JA45
3G384BA08
3G384DA42
3G384FA01Z
3G384FA06Z
3G384FA11Z
3G384FA37Z
3G384FA40Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】ウェストゲート弁の異常判定の頻度を確保した車両を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジンと、前記エンジンへの吸気を過給する過給機と、前記エンジンに接続され、前記過給機のタービンが配置された排気通路と、前記タービンをバイパスして前記排気通路に接続されたバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉するウェストゲート弁と、前記エンジンの運転状態が過給状態の場合に前記ウェストゲート弁の異常を判定する判定部を含む異常判定装置と、を備えた車両。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンへの吸気を過給する過給機と、
前記エンジンに接続され、前記過給機のタービンが配置された排気通路と、
前記タービンをバイパスして前記排気通路に接続されたバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するウェストゲート弁と、
前記エンジンの運転状態が過給状態の場合に前記ウェストゲート弁の異常を判定する判定部を含む異常判定装置と、を備えた車両。
【請求項2】
前記異常判定装置は、前記エンジンの過給圧及び吸入空気量を取得する取得部を含み、
前記判定部は、前記過給状態での前記過給圧及び吸入空気量に基づいて、前記ウェストゲート弁の異常を判定する、請求項1の車両。
【請求項3】
前記判定部は、前記過給状態での前記過給圧及び吸入空気量と、前記運転状態がアイドル状態での前記過給圧及び吸入空気量とに基づいて、前記ウェストゲート弁の異常を判定する、請求項2の車両。
【請求項4】
前記判定部は、前記アイドル状態と前記過給状態とでの前記過給圧の差分を前記アイドル状態と前記過給状態とでの前記吸入空気量の差分で除算した値である判定値が閾値未満の場合には前記ウェストゲート弁は正常であると判定し、前記判定値が前記閾値以上の場合には前記ウェストゲート弁は異常であると判定する、請求項3の車両。
【請求項5】
前記判定部は、前記アイドル状態での前記過給圧及び吸入空気量と、前記運転状態が前記アイドル状態以外の自然吸気状態での前記過給圧及び吸入空気量と、に基づいて前記ウェストゲート弁の異常を判定する、請求項3又は4の車両。
【請求項6】
前記過給状態は、アクセル開度が全開である全負荷状態である、請求項1乃至4の何れかの車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの運転状態が低回転低負荷状態の場合にウェストゲート弁の異常判定を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバの運転特性や車種によっては、エンジンの運転状態が低回転低負荷状態に維持される期間が短く、又はその頻度が低下し、これによりウェストゲート弁の異常判定の頻度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、ウェストゲート弁の異常判定の頻度を確保した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、エンジンと、前記エンジンへの吸気を過給する過給機と、前記エンジンに接続され、前記過給機のタービンが配置された排気通路と、前記タービンをバイパスして前記排気通路に接続されたバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉するウェストゲート弁と、前記エンジンの運転状態が過給状態の場合に前記ウェストゲート弁の異常を判定する判定部を含む異常判定装置と、を備えた車両によって達成できる。
【0007】
前記異常判定装置は、前記エンジンの過給圧及び吸入空気量を取得する取得部を含み、前記判定部は、前記過給状態での前記過給圧及び吸入空気量に基づいて、前記ウェストゲート弁の異常を判定してもよい。
【0008】
前記判定部は、前記過給状態での前記過給圧及び吸入空気量と、前記運転状態がアイドル状態での前記過給圧及び吸入空気量とに基づいて、前記ウェストゲート弁の異常を判定してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記アイドル状態と前記過給状態とでの前記過給圧の差分を前記アイドル状態と前記過給状態とでの前記吸入空気量の差分で除算した値である判定値が閾値未満の場合には前記ウェストゲート弁は正常であると判定し、前記判定値が前記閾値以上の場合には前記ウェストゲート弁は異常であると判定してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記アイドル状態での前記過給圧及び吸入空気量と、前記運転状態が前記アイドル状態以外の自然吸気状態での前記過給圧及び吸入空気量と、に基づいて前記ウェストゲート弁の異常を判定してもよい。
【0011】
前記過給状態は、アクセル開度が全開である全負荷状態であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウェストゲート弁の異常判定の頻度を確保した車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、車両が一時停止から低速走行を開始した場合での異常判定制御の一例を示したタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、過給圧と吸入空気量との関係を示したグラフである。
【
図4】
図4は、車両が一時停止から高速走行を開始した場合での異常判定制御の一例を示したタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、過給圧と吸入空気量との関係を示したグラフである。
【
図6】
図6は、ECUが実行する異常判定制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[車両の概略構成]
図1は、車両100の概略構成図である。車両100には、エンジン1、吸気通路3、排気通路4、過給機5、インタークーラ6、触媒7、バイパス通路8、ウェストゲート弁9、変速機21、ディファレンシャル23、車輪25、及びECU(Electronic Control Unit)30等が搭載されている。エンジン1は、直列に配列された4つの気筒2を有した多気筒エンジンであり、ガソリンエンジンであるが、気筒数はこれに限定されず、ディーゼルエンジンであってもよい。エンジン1の駆動力は、変速機21、及びディファレンシャル23を介して車輪25に伝達される。
【0015】
エンジン1には、吸気通路3と排気通路4とが接続されている。吸気通路3の途中には、過給機5のコンプレッサ5bが配置されている。排気通路4の途中には、過給機5のタービン5aが配置されている。タービン5a及びコンプレッサ5bはシャフトにより同軸に連結されている。過給機5は、エンジン1への吸気を過給する。
【0016】
排気通路4の途中にはタービン5aをバイパスしたバイパス通路8と、バイパス通路8を開閉するウェストゲート弁9とが設けられている。ウェストゲート弁9は、ダイヤフラム式の負圧アクチュエータ9aに接続され、ECU30は負圧アクチュエータ9aを制御することによりウェストゲート弁9の開度を制御する。ウェストゲート弁9の開度の調節により、バイパス通路8を流通する排気の流量とタービン5aを流通する排気の流量との分配比が調節される。これにより、タービン5aの回転駆動力が調節され、コンプレッサ5bによる圧縮空気量が調節され、エンジン1の過給圧が調節される。ここで、分配比は、詳細には、ウェストゲート弁9の開度が小さいほど、バイパス通路8を流通する排気の流量が少なくなると共にタービン5aを流通する排気の流量が多くなる。尚、エンジン1は、ウェストゲート弁9が全開のときには、過給機5を備えない自然吸気タイプのエンジンと同様に動作可能になっている。また、負圧アクチュエータ9aの代わりに、ウェストゲート弁9を電気的に駆動する電動式アクチュエータを用いてもよい。
【0017】
吸気通路3においてコンプレッサ5bの下流には、インタークーラ6が配置されている。インタークーラ6は、エンジン1に供給される冷媒が内部を流通する。これにより、インタークーラ6内を流通する冷媒とインタークーラ6を通過する空気との間で熱交換が行われて、吸気が冷却される。吸気通路3においてインタークーラ6の下流には、スロットル弁3aが配置されている。スロットル弁3aの開度が調整されることにより、エンジン1の吸入空気量が調整される。スロットル弁3aの開度は、ECU30によりアクセル開度に基づいて制御される。
【0018】
排気通路4においてタービン5aよりも下流側には、排気を浄化する触媒7が設けられている。排気通路4の触媒7よりも上流側には、空燃比センサ14が設けられている。排気通路4の触媒7の下流側には、排気の酸素濃度を検出する酸素センサ15が設けられている。
【0019】
ECU30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む。ECU30は、ROM内に予め格納された制御プログラムに従って、センサからの情報や予めROMに格納されている情報等に基づいて、後述する異常判定制御を実行する。ECU30は、異常判定装置の一例である。異常判定制御は、CPU、ROM、及びRAMにより機能的に実現される判定部及び取得部により実行される。詳しくは後述する。
【0020】
ECU30は、クランク角センサ11、エアフローメータ12、過給圧センサ13、空燃比センサ14、酸素センサ15、及びアクセル開度センサ16等の各種センサの検出信号に基づいて、エンジン1の運転状態を制御する。クランク角センサ11は、エンジン1のクランク軸の回転角度を検出する。エアフローメータ12は、吸気通路3内に吸入された吸入空気量を検出する。過給圧センサ13は、コンプレッサ5bよりも下流側であってスロットル弁3aよりも上流側の吸気通路3内の圧力を検出する。空燃比センサ14は、触媒7に流入する排気の空燃比を検出する。酸素センサ15は、触媒7から排出された排気の酸素濃度を検出する。アクセル開度センサ16は、ドライバにより操作されるアクセルペダルの開度を検出する。
【0021】
ECU30は、ウェストゲート弁9がエンジン1の運転状態に応じた開度となるように、負圧アクチュエータ9aに指示負圧値を出力する。指示負圧値は、ダイヤフラム式の負圧アクチュエータ9aの負圧室内の圧力の指示値を示す。本実施例での負圧指示値は、大気圧を基準とした圧力の絶対値であり、正値として示す。ここで、負圧室内の圧力が大気圧から低下するほどウェストゲート弁9の開度は低下し、負圧室内の圧力が大気圧に近づくように増大するほどウェストゲート弁9の開度は増大する。即ち、ウェストゲート弁9への要求開度が大きいほど、指示負圧値は小さい値に調整され、ウェストゲート弁9への要求開度が小さいほど、指示負圧値は大きい値に調整される。例えばウェストゲート弁9への要求開度が全開の場合には、指示負圧値は後述するように圧力値n1未満に制御される。尚、エンジン1の運転状態がアイドル状態や自然吸気状態の場合にはウェストゲート弁9への要求開度は全開であり、エンジン1の運転状態が過給状態の場合にはウェストゲート弁9への要求開度は全開以外である。
【0022】
上述のようにウェストゲート弁9が正常状態ではECU30からの負圧アクチュエータ9aへの指示負圧値に従ってその開度が制御され、これにより過給圧が制御される。しかしながら、ウェストゲート弁9が全閉状態で固着した(以下、全閉固着と称する)異常状態となるおそれがある。この場合、負圧アクチュエータ9aへの指示負圧値によらずにウェストゲート弁9の開度は全閉状態に維持されるため、ドライバビリティに影響を与えるおそれがある。そこでECU30は、このようなウェストゲート弁9の全閉固着を判定するための異常判定制御を実行する。
【0023】
[異常判定制御]
図2は、車両100が一時停止から低速走行を開始した場合での異常判定制御の一例を示したタイミングチャートである。
図2では、吸入空気量、車速、過給圧、及び指示負圧値の推移を示している。車両100が一時停止中に第1モニタ条件が成立すると(時刻t1)、ECU30は吸入空気量I1及び過給圧P1を取得する(時刻t2)。第1モニタ条件とは、吸入空気量及び過給圧が安定しており、吸入空気量<g1であり指示負圧値<n1の場合である。指示負圧値が圧力値n1未満とは、ウェストゲート弁9への要求開度が全開であることを示す。換言すれば第1モニタ条件は、エンジン1への運転状態がアイドル状態であることを示す。
【0024】
次にドライバによりアクセル開度が比較的小さく操作され、一時的に負圧アクチュエータ9aへの指示負圧値が増大してウェストゲート弁9への要求開度が閉じ側となって吸入空気量及び過給圧が増大して車両100が加速する(時刻t3)。その後に指示負圧値が再び圧力値n1未満にまで低下してウェストゲート弁9への要求開度が全開となって、車速が低速に維持され(時刻t4)、吸入空気量及び過給圧が安定する。
【0025】
次に第2モニタ条件が成立すると(時刻t5)、ECU30は吸入空気量I2及び過給圧P2を取得する(時刻t6)。第2モニタ条件とは、吸入空気量及び過給圧が安定しており、吸入空気量>g2、且つ指示負圧値<n1の場合(以下、条件(a)と称する)である。この場合も、指示負圧値が圧力値n1未満とは、ウェストゲート弁9への要求開度が全開であることを示す。換言すれば、条件(a)はエンジン1の運転状態がアイドル状態以外の自然吸気状態であることを示す。
【0026】
ここでウェストゲート弁9が正常の場合には、加速時にウェストゲート弁9への要求開度が一時的に全閉となって車速が一定となった後に再び全開となり、過給圧は低下する。従って、過給圧P2は過給圧P1とほぼ同じである。しかしながらウェストゲート弁9が全閉固着した場合には、エンジン1から排出された排気はバイパス通路8を通過することなくタービン5aを通過し、車速が一定となった後も過給圧は低下せずに高い状態を維持する。従って
図2に示すように、時刻t6での異常状態での過給圧P2xは正常状態での過給圧P2よりも高い値となる。
【0027】
ECU30は、以下のようにして異常判定を行う。第1及び第2モニタ条件成立時に取得した過給圧の差分を、第1及び第2モニタ条件成立時に取得した吸入空気量の差分で除算する。この除算値を判定値と称する。従って、
図2で示したウェストゲート弁9が正常状態では、判定値=(P2-P1)/(I2-I1)である。
図2に示したウェストゲート弁9が異常状態では、判定値=(P2x-P1)/(I2-I1)である。
【0028】
図3は、過給圧と吸入空気量との関係を示したグラフである。縦軸は過給圧を示し、横軸は吸入空気量を示す。判定値は、
図3のグラフにおいては、線分の傾きに相当する。判定値が閾値T1未満の場合には正常と判定され、判定値が閾値T1以上の場合には異常と判定される。
【0029】
このように車両100が一時停止から低速走行を開始した場合に上記のような異常判定制御を実行することができる。しかしながら、例えば車両100がスポーツカーでありドライバがアクセルを大きく踏み込む頻度が多い場合には、上述のような低速走行の頻度が低下して異常判定制御の実行頻度も低下するおそれがある。そこで本実施例でのECU30は、以下に説明するように車両100が一時停止から高速走行を開始した場合にも異常判定制御を実行する。
【0030】
図4は、車両100が一時停止から高速走行を開始した場合での異常判定制御の一例を示したタイミングチャートである。
図4は
図2に対応している。第1モニタ条件が成立して(時刻t1)、ECU30は吸入空気量I1及び過給圧P1を取得する(時刻t2)。次にドライバによりアクセル開度が全開となるように操作され、吸入空気量及び過給圧が増大して車両100が加速する(時刻t3)。その後、車速が高速に維持され(時刻t4)、吸入空気量及び過給圧が安定するように指示負圧値が圧力値n1よりも大きい値に制御される。
【0031】
その後に第2モニタ条件が成立すると(時刻t5)、ECU30は吸入空気量I3及び過給圧P3を取得する(時刻t6)。ここで第2モニタ条件は、吸入空気量及び過給圧が安定しており、g3<吸入空気量<g4であり且つ指示負圧値<n2の場合(以下、条件(b)と称する)である。指示負圧値が圧力値n2未満とは、ウェストゲート弁9への要求開度が全閉以外の場合を示す。換言すれば、条件(b)はエンジン1への運転状態が過給状態であることを示す。条件(b)で要求される過給状態は、アクセル開度が全開であってスロットル弁3aの要求開度が全開となる全負荷状態である。従って、上述した条件(a)及び(b)の何れか一方が成立している場合に、第2モニタ条件が成立したものとみなされる。尚、吸入空気量に関しては、g2<g3<g4の関係が成立する。負圧指示値に関しては、大気圧=0<n1<n2の関係が成立する。
【0032】
ここでウェストゲート弁9が正常の場合には、加速時にウェストゲート弁9への要求開度が半開に維持され、過給圧は増大して所定の値に維持される。しかしながらウェストゲート弁9が全閉固着した場合には、エンジン1からの排気は全てタービン5aを通過し過給圧は過剰に増大する。従って
図4に示すように、時刻t6での異常状態での過給圧P3xは正常状態での過給圧P3よりも高い値となる。従って、
図4で示したウェストゲート弁9が正常状態では、判定値=(P3-P1)/(I3-I1)である。
図4に示したウェストゲート弁9が異常状態では、判定値=(P3x-P1)/(I3-I1)である。
【0033】
図5は、過給圧と吸入空気量との関係を示したグラフである。
図5は
図3に対応している。判定値が閾値T2未満の場合には正常と判定され、判定値が閾値T2以上の場合には異常と判定される。閾値T2は、
図3に示した閾値T1よりも大きい値である。
【0034】
このように第2モニタ条件に条件(b)を含むことにより、低速走行の頻度が少ない場合であっても、異常判定制御の実行頻度を確保することができる。
【0035】
例えば、第2モニタ条件が条件(a)のみであるとすると、安全性を考慮してウェストゲート弁9が正常と判定されるまで過給状態への移行を制限することが考えられる。この場合、第2モニタ条件が成立するまではドライバビリティが低下する。上述したように第2モニタ条件に条件(b)を含むことにより、過給状態でも異常判定を実行することができるため上記のような制限は不要であり、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0036】
また、上述したように条件(b)ではg3<吸入空気量<g4に限定されており、この吸入空気量の範囲は、正常時での過給圧と全閉固着時での過給圧との差が大きい範囲に設定されている。即ち、吸入空気量がこの範囲に属している場合では、正常時での過給圧と全閉固着時での過給圧との差が大きい。このため、異常判定を精度よく行うことができる。
【0037】
図6は、ECU30が実行する異常判定制御の一例を示したフローチャートである。ECU30は第1モニタ条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でNoの場合には本制御を終了する。ステップS1でYesの場合にECU30は、過給圧センサ13及びエアフローメータ12の検出値に基づいて過給圧及び吸入空気量を取得する(ステップS2)。ステップS2は取得部が実行する処理の一例である。
【0038】
次にECU30は第2モニタ条件が成立したか否かを判定する(ステップS3)。第2モニタ条件は、上述したように条件(a)及び(b)の何れか一方を満たしている場合に成立しているものとみなされる。ステップS3でNoの場合には本制御を終了する。ステップS3でYesの場合にECU30は、過給圧及び吸入空気量を取得する(ステップS4)。ステップS4は取得部が実行する処理の一例である。次にECU30は、ステップS2及びS4で取得した過給圧及び吸入空気量に基づいて、上述した方法により判定値を算出する(ステップS5)。
【0039】
次にECU30は判定値が閾値未満であるか否かを判定する(ステップS6)。上述したように第2モニタ条件において条件(a)が成立した場合には閾値T1が用いられ、第2モニタ条件において条件(b)が成立した場合には閾値T2が用いられる。閾値T1は、アイドル状態から自然吸気状態へ移行してウェストゲート弁9が全閉固着した場合での吸入空気量の差分に対する過給圧の差分の下限値である。閾値T2は、アイドル状態から過給状態に移行してウェストゲート弁9が全閉固着した場合での吸入空気量の差分に対する過給圧の差分の下限値である。閾値T2は、固定値に限らず、吸入空気量にしたがって可変設定してもよい。
【0040】
ステップS6でYesの場合にECU30は、ウェストゲート弁9は正常状態であると判定する(ステップS7)。ステップS6でNoの場合にECU30は、ウェストゲート弁9は全閉固着した異常状態であると判定する(ステップS8)。ステップS7及びS8は、判定部が実行する処理の一例である。尚、異常判定がなされた場合は、ECU30は例えばMIL(Malfunction Indicator Light)を点灯させることにより、ウェストゲート弁9に異常が生じた旨をドライバへ報知してもよい。
【0041】
上記実施例では、アイドル状態と過給状態とでのそれぞれの過給圧及び吸入空気量に基づいて異常判定を実行したがこれに限定されない。例えば過給状態において過給圧を吸入空気量で除算した値が所定の閾値未満の場合には、ウェストゲート弁9は正常と判定し、この値が閾値以上の場合にウェストゲート弁9は異常と判定してもよい。
【0042】
上記実施例では、第2モニタ条件の条件(b)が成立する過給状態として、全負荷状態を例に説明したがこれに限定されない。例えば、過給状態としてアクセル開度が所定の開度以上の場合であってもよい。
【0043】
車両100は、駆動源としてエンジン1のみが搭載されるエンジン車両であるが、これに限定されず、駆動源としてエンジンに加えてモータを搭載したハイブリッド車両であってもよい。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン
3 吸気通路
3a スロットル弁
4 排気通路
5 過給機
5a タービン
8 バイパス通路
9 ウェストゲート弁
12 エアフローメータ
13 過給圧センサ
30 ECU(異常判定装置)
100 車両