(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184088
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電池制御装置、電池制御装置及び電池監視装置を備える電池監視システム、電池監視システムを用いた異常電池の特定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20231221BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231221BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20231221BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231221BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/02 H
H02J7/00 Y
G01R31/396
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098017
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】本多 由宇人
(72)【発明者】
【氏名】松本 翔
(72)【発明者】
【氏名】井上 美光
(72)【発明者】
【氏名】森島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大庭 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】熱田 隆
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 陽一
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BB09
2G216CC04
2G216CC06
5G503BA03
5G503BB01
5G503BB02
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD05
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】各電池監視装置と、各電池監視装置の監視対象となる電池との対応関係を把握できる電池制御装置、電池制御装置及び電池監視装置を備える電池監視システム、並びに電池監視システムを用いた異常電池の特定方法を提供する。
【解決手段】電池監視システムの収容部には、各電池ブロック21、各電池監視装置30及び電池制御装置40が所定の配置状態で配置されている。電池制御装置40は、電池制御MCU41と、親機側記憶部44とを備えている。親機側記憶部44は、上記所定の配置状態で配置されている場合における無線通信の通信品質に関するパラメータであって、各電池監視装置30と紐付けられたパラメータを記憶する。電池制御MCU41は、受信した電池監視装置30からの無線信号と、記憶されたパラメータとに基づいて、受信した無線信号の送信元となる電池監視装置30が監視対象とする電池ブロック21を特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池(21,21A~21D,200)それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置(30,30A~30D)を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに所定の配置状態で配置される電池制御装置(40)において、
前記電池制御装置は、
前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合における前記無線通信の通信品質に関するパラメータであって、前記各電池監視装置と紐付けられたパラメータを記憶する親機側記憶部(44)と、
前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側通信部(42,43)と、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号と、前記記憶部に記憶された前記パラメータとに基づいて、受信した無線信号の送信元となる前記電池監視装置が監視対象とする前記電池を特定する特定処理を行う特定部(41)と、
を有する、電池制御装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合において前記電池監視装置から受信した無線信号の強度である、請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号と前記パラメータとの相関係数を前記各電池監視装置について算出し、
算出した前記各相関係数のうち、最大の相関係数の算出に用いた前記パラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、前記最大の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項4】
前記特定部は、算出した前記相関係数に基づいて、前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置の前記収容部における配置状態が、前記所定の配置状態からずれている異常が発生しているか否かを判定する、請求項3に記載の電池制御装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記特定処理として、前記各電池監視装置から受信した無線信号の特定周波数における強度の大小関係を、前記各電池監視装置と紐付けられた前記パラメータの前記特定周波数における大小関係と比較することにより、前記各電池監視装置の監視対象となる前記電池を特定する処理を行う、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した無線信号と前記パラメータとの特定周波数における差分を前記各電池監視装置について算出し、
算出した前記各差分のうち、最小の差分の算出に用いた前記パラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、前記最小の差分の算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、請求項2に記載の電池制御装置。
【請求項7】
前記パラメータは、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合において前記電池監視装置から受信した無線信号の強度の所定周波数範囲における傾きであり、
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号の前記所定周波数範囲における傾きを算出し、
前記各パラメータのうち、算出した傾きとの差分が最小のパラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、傾きの算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項8】
前記パラメータは、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合において前記電池監視装置から受信した無線信号の強度の所定周波数範囲における平均値であり、
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号の前記所定周波数範囲における強度の平均値を算出し、
前記各パラメータのうち、算出した平均値との差分が最小のパラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、平均値の算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、請求項1に記載の電池制御装置。
【請求項9】
前記特定部は、前記各電池監視装置と、前記各電池監視装置の監視対象となる前記電池との対応関係を前記特定処理により特定し、特定した前記対応関係の情報を前記親機側記憶部に記憶させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電池制御装置と、前記各電池監視装置とを備える前記電池監視システムを用いて、前記収容部に収容された前記各電池のうち異常が発生した電池を特定する異常電池の特定方法において、
前記電池監視装置は、
前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側通信部(32,33)を有し、
自身の監視対象となる前記電池及び自身のうち少なくとも一方である判定対象に異常が発生しているか否かを判定し、
異常が発生していると判定した場合、異常が発生している旨の情報を自身の識別情報とともに前記子機側通信部から前記電池制御装置に送信し、
前記電池制御装置は、
前記異常が発生している旨の情報及び前記識別情報を前記親機側通信部により受信し、
受信した前記異常が発生している旨の情報を前記電池制御装置の前記親機側記憶部に記憶させ、
前記電池制御装置と検査装置とを通信可能に接続する工程と、
前記親機側記憶部から、前記対応関係の情報及び前記異常が発生している旨の情報を前記検査装置により読み取る工程と、
前記検査装置に、前記親機側記憶部から読み取った情報に基づいて、前記収容部に収容された前記各電池のうち異常が発生した電池を特定させる工程と、
を備える異常電池の特定方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電池制御装置と、前記各電池監視装置とを備える前記電池監視システムにおいて、
前記各電池監視装置は、
前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側通信部(32,33)と、
子機側記憶部(34)と、
を有し、
前記特定部は、前記各電池監視装置と、前記各電池監視装置の監視対象となる前記電池との対応関係を前記特定処理により特定し、特定した前記対応関係の情報を、前記親機側通信部から前記各電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、前記子機側通信部により受信した前記対応関係の情報を前記子機側記憶部に記憶させる、電池監視システム。
【請求項12】
前記電池監視システムは、ユーザが搭乗可能な移動体(10)に搭載され、
前記特定部は、ユーザにより前記移動体の始動指示がなされておらず、かつ、前記移動体が停止状態にされていることを条件として前記特定処理を行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池制御装置。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電池制御装置と、前記各電池監視装置とを備える前記電池監視システムにおいて、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側通信部(32,33)を有し、
前記親機側通信部により受信される無線信号の強度の周波数特性が前記各電池監視装置で異なるように、前記各子機側通信部が有するアンテナ部(33A~33D,60)における電波指向性の中心の向きが設定されている、電池監視システム。
【請求項14】
前記各子機側通信部が有する前記アンテナ部(60)は、電波指向性の中心の向きを複数の向きの中から選択して変更可能に構成されており、
前記親機側記憶部は、前記各電池監視装置及び前記各向きと紐付けられた前記パラメータを記憶する、請求項13に記載の電池監視システム。
【請求項15】
前記各電池(21A~21D)、前記各電池監視装置(30A~30D)、前記電池制御装置及び前記収容部(55)の平面視において、前記親機側通信部が有するアンテナ部(43)を通ってかつ水平方向に延びる基準軸線(LP)に対して、前記各電池、前記各電池監視装置、前記電池制御装置及び前記収容部が線対称となる構成になっており、
前記各電池監視装置のうち、前記基準軸線が延びる方向において前記電池制御装置からの距離が同じ位置に配置された電池監視装置が有するアンテナ部(33A~33D)における電波指向性の中心の向きは、前記基準軸線に対して線対称とならない向きにされている、請求項13に記載の電池監視システム。
【請求項16】
前記各電池(21A~21D)及び前記収容部(55)の平面視において、前記親機側通信部が有するアンテナ部(43)を通ってかつ水平方向に延びる基準軸線(LP)に対して、前記各電池、前記電池制御装置及び前記収容部が線対称となる構成になっており、
前記基準軸線に対して一方側及び他方側のそれぞれに前記電池監視装置が配置されており、
前記基準軸線に対して一方側に配置された前記電池監視装置(30A,30C)の配置位置と、前記基準軸線に対して他方側に配置された前記電池監視装置(30B,30D)の配置位置とは、前記基準軸線に対して線対称とならない位置になっている、請求項13に記載の電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御装置、電池制御装置及び電池監視装置を備える電池監視システム、並びに電池監視システムを用いた異常電池の特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとしては、特許文献1に記載されているように、電池モジュールを構成する複数のセルグループの状態を監視するものが知られている。詳しくは、このシステムは、複数のセルグループそれぞれに対応して個別に設けられ、セルグループの状態を監視する電池監視装置と、各電池監視装置との間で無線通信を行うことにより各電池監視装置から監視結果である電池情報を取得する電池制御装置とを備えている。電池制御装置は、取得した電池情報に基づいて各種制御を実行する。
【0003】
電池制御装置と電池監視装置との間で無線通信を行うために、各電池監視装置には固有の識別情報が付与されている。各電池監視装置は、電池情報とともに識別情報を無線送信する。これにより、電池制御装置は、どの電池監視装置から送信された電池情報であるかを判別できる。
【0004】
複数のセルグループは直列接続されているため、高電位側のセルグループになるほど、グランド電位に対する電位が高くなる関係がある。この関係を利用して、特許文献1に記載の電池制御装置は、各電池監視装置と、各電池監視装置の監視対象となるセルグループとの対応関係を把握している。詳しくは、各電池監視装置は、自身の監視対象となるセルグループのグランド電位に対する電位を測定する。各電池監視装置は、測定電位とともに識別情報を電池制御装置に無線送信する。これにより、電池制御装置は上記対応関係を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セルグループ等の電池、各電池を監視対象とする電池監視装置及び電池制御装置は、通常、収容部に収容されている。収容部は、一部が電波を反射するように構成されている。このため、電池監視装置が無線信号を送信すると、送信した無線信号が収容部の壁面において反射する。その結果、マルチパスが発生し、電池監視装置から電池制御装置に正確な測定電位及び識別情報を送信できなくなり得る。この場合、電池制御装置は、各電池監視装置と、各電池監視装置の監視対象となる電池との対応関係を把握できなくなってしまう。
【0007】
本発明は、各電池監視装置と、各電池監視装置の監視対象となる電池との対応関係を把握できる電池制御装置、電池制御装置及び電池監視装置を備える電池監視システム、並びに電池監視システムを用いた異常電池の特定方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の電池それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに所定の配置状態で配置される電池制御装置において、
前記電池制御装置は、
前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合における前記無線通信の通信品質に関するパラメータであって、前記各電池監視装置と紐付けられたパラメータを記憶する親機側記憶部と、
前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側通信部と、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号と、前記記憶部に記憶された前記パラメータとに基づいて、受信した無線信号の送信元となる前記電池監視装置が監視対象とする前記電池を特定する特定処理を行う特定部と、
を有する。
【0009】
上記パラメータは、収容部に各電池、各電池監視装置及び電池制御装置が所定の配置状態で配置されている場合における、電池監視装置と電池制御装置との間の無線通信の通信品質に関する情報であり、各電池監視装置と紐付けられている。このため、上記パラメータは、上記所定の配置状態が実現されている場合において、各電池監視装置の監視対象がどの電池であるかを識別するための情報となる。
【0010】
この点に鑑み、本発明の特定部は、親機側通信部により受信した電池監視装置からの無線信号と、親機側記憶部に記憶された上記パラメータとに基づいて、受信した無線信号の送信元となる電池監視装置が監視対象とする電池を特定する。これにより、マルチパスが発生し得る構成において、各電池監視装置と、各電池監視装置の監視対象となる電池との対応関係を電池制御装置が把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】筐体内における電池ブロック等の配置態様を示す斜視図。
【
図5】電池ブロックを構成する電池セルの配置態様を示す図。
【
図6】電波が反射しない環境下における送受信アンテナを示す図。
【
図7】電波が反射しない環境下において受信された無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図8】電波が反射する環境下における送受信アンテナを示す図。
【
図9】電波が反射する環境下において受信された無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図10】電池パックに測定装置が接続された状態を示す図。
【
図11】各電池監視装置に紐付けられた無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図13】監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図14】異常が発生した電池ブロックの特定方法を示すフローチャート。
【
図15】第1実施形態の変形例に係る筐体内における電池ブロック等の配置態様を示す斜視図。
【
図16】第2実施形態に係る監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図17】電池監視装置における記憶処理の手順を示すフローチャート。
【
図18】第3実施形態に係る監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図19】第4実施形態に係るカバーが取り外された状態の電池パックの平面図。
【
図20】各電池監視装置に紐付けられた無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図21】比較例に係るカバーが取り外された状態の電池パックの平面図。
【
図22】比較例に係る無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図23】第5実施形態に係るカバーが取り外された状態の電池パックの平面図。
【
図24】カバーが取り外された状態の電池パックの平面図。
【
図25】第6実施形態に係るカバーが取り外された状態の電池パックの平面図。
【
図26】指向性の切り替え前における無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図27】指向性の切り替え後における無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図28】指向性を変更可能なアンテナの一例を示す図。
【
図29】指向性を変更可能なアンテナの一例を示す図。
【
図30】第7実施形態に係る電池ブロックの正常時の配置態様を示す斜視図。
【
図31】電池ブロックの配置位置が正常時の位置からずれた状態を示す斜視図。
【
図32】電池ブロックの正常時及び異常時における無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図33】監視対象の特定処理及び異常判定処理の手順を示すフローチャート。
【
図34】第8実施形態に係る無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図35】監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図36】第9実施形態に係る監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図37】第10実施形態に係る監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図38】第11実施形態に係る無線信号強度の周波数特性を示す図。
【
図39】監視対象の特定処理の手順を示すフローチャート。
【
図40】第12実施形態に係る車両のシャーシ内の収容空間における電池パックの配置態様を示す図。
【
図42】第13実施形態に係る電池パックの断面図。
【
図43】第14実施形態に係る電池パックの断面図。
【
図44】第15実施形態に係る車両のシャーシ内の収容空間における電池の配置態様を示す図。
【
図45】その他の実施形態に係る電池を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電池監視システムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。電池監視システムは、回転電機を走行動力源とする電気自動車又はハイブリッド自動車等の車両に搭載される。
【0014】
図1は、車両10の構成を概略的に示した図である。車両10は、電池パック11と、パワーコントロールユニット(以下、「PCU」という)12と、モータ13と、車両ECU14とを備えている。
【0015】
電池パック11は、車両10の駆動電源として車両10に搭載されている。電池パック11は、具体的には例えば、車両10のエンジンルーム、トランクルーム、座席下又は床下等に搭載されている。車両10は、電池パック11に蓄えられた電力を用いて走行する。
【0016】
電池パック11は、
図2に示すように、複数の電池セル22(具体的には二次単電池)の直列接続体を含む組電池20を備えている。組電池20は、モータ13を駆動するための電力を蓄えており、PCU12を通じてモータ13へ電力を供給することができる。また、組電池20は、車両10の制動時等におけるモータ13の回生発電時にPCU12を通じてモータ13の発電電力を受けて充電される。また、組電池20は、
図1に示すように、車両10の外部に設けられた外部充電器CMに接続可能である。外部充電器CMは、例えば定置式の設備である。組電池20は、外部充電器CMから充電される。
【0017】
PCU12は、車両ECU14からの制御信号に基づいて、電池パック11とモータ13との間で双方向の電力変換を実行する。PCU12は、例えば、モータ13を駆動するインバータと、インバータに供給される直流電圧を電池パック11の出力電圧以上に昇圧するコンバータとを含む。
【0018】
モータ13は、交流回転電機であり、例えば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータ13は、PCU12により駆動されて回転駆動力を発生し、モータ13が発生した駆動力は、車両10の駆動輪に伝達される。一方、車両10の制動時には、モータ13は、発電機として動作し、回生発電を行う。モータ13が発電した電力は、PCU12を通じて電池パック11に供給され、電池パック11内の組電池20に蓄えられる。
【0019】
車両ECU14は、CPU、ROM及びRAM、各種信号を入出力するための入出力ポート等を含む。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、車両ECU14の処理が記されている。車両ECU14の主要な処理の一例として、車両ECU14は、電池パック11から組電池20の電圧、電流及びSOC(State Of Charge)等の情報を受け、PCU12を制御することにより、モータ13の駆動及び電池パック11の充放電を制御する。
【0020】
図2は、電池パック11の構成を模式的に示す図である。電池パック11は、組電池20と、複数の電池監視装置30と、電池制御装置40と、それらを収容する筐体50とを備えている。
【0021】
組電池20は、複数の電池ブロック21の直列接続体を備えている。電池ブロック21は、電池スタック又は電池モジュールと称される場合もある。各電池ブロック21は、複数の電池セル22を有する。各電池セル22は、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素二次電池等により構成されている。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池の他、固体の電解質を用いたいわゆる全固体電池も含み得る。なお、組電池20は、複数の電池ブロック21の直列接続体を複数備え、各直列接続体が並列接続されていてもよい。また、組電池20には、スイッチSW(例えばリレー)及び配線16を介してPCU12が接続されている。
【0022】
電池監視装置30は、サテライト・バッテリ・モジュール(SBM:Satellite Battery Module)とも呼ばれ、電池ブロック21毎に設けられている。
図2に示すように、各電池監視装置30は、監視部としての監視IC31と、無線制御部である子機側無線IC32と、無線アンテナである子機側アンテナ33とを備えている。子機側無線IC32及び子機側アンテナ33が電池監視装置30の「子機側通信部」に相当する。監視IC31は、セル監視回路(CSC:Cell Supervising Circuit)とも呼ばれ、電池ブロック21を構成する各電池セル22又は図示しないセンサから、電池情報を取得する。電池情報は、例えば、各電池セル22の電圧情報、温度情報及び電流情報を含む。また、監視IC31は、自己診断し、自己診断情報を生成する。自己診断情報とは、例えば、電池監視装置30の動作確認に関する情報、つまり、電池監視装置30の異常や故障に関する情報などである。具体的には、電池監視装置30を構成する監視IC31や子機側無線IC32等の動作確認に関する情報である。
【0023】
子機側無線IC32は、監視IC31と有線で接続されており、無線MCU(Micro Control Unit)とRFデバイス(高周波デバイス・モジュール)とを有している。子機側無線IC32は、監視IC31から受け取ったデータを、子機側アンテナ33を介して無線にて送信する。また、子機側無線IC32は、子機側アンテナ33を介して受信したデータを監視IC31に送る。
【0024】
監視IC31は、子機側記憶部34を備えている。子機側記憶部34は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
【0025】
電池制御装置40は、電池ECU又はBMU(Battery Management Unit)とも呼ばれる。電池制御装置40は、各電池監視装置30と無線通信可能に構成されている。詳しくは、電池制御装置40は、電池制御部としての電池制御MCU41と、無線制御部である親機側無線IC42と、無線アンテナである親機側アンテナ43とを備えている。親機側無線IC42及び親機側アンテナ43が電池制御装置40の「親機側通信部」に相当する。電池制御MCU41は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイコンにより構成されている。電池制御MCU41のCPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、電池制御に関する処理が記されている。
【0026】
主要な処理の一例として、電池制御MCU41は、電池監視装置30に対して電池情報の取得及び送信を指示する。また、電池制御MCU41は、電池監視装置30から受け取った電池情報に基づいて、組電池20、電池ブロック21及び電池セル22の監視を行う。また、電池制御MCU41は、監視結果などに基づいて、組電池20とPCU12やモータ13との通電及び通電遮断状態を切り替えるスイッチSWを制御する。また、電池制御MCU41は、各電池セル22の電圧を均等化させる均等化信号を送信する場合もある。
【0027】
親機側無線IC42は、電池制御MCU41と有線で接続されており、子機側無線IC32と同様に、無線MCUとRFデバイスとを有している。親機側無線IC42は、電池制御MCU41から受け取ったデータを、親機側アンテナ43を介して無線にて送信する。また、親機側無線IC42は、親機側アンテナ43を介して受信したデータを電池制御MCU41に送る。なお、親機側アンテナ43及び子機側アンテナ33としては、例えば、ダイポールアンテナ、八木アンテナ、スロットアンテナ、逆Fアンテナ、逆Lアンテナ、チップアンテナ又は0次アンテナ(例えば0次共振アンテナ)を用いることができる。
【0028】
電池制御MCU41は、親機側記憶部44を備えている。親機側記憶部44は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
【0029】
組電池20、電池監視装置30、電池制御装置40、及びこれらを収容する筐体50を構成部品とする電池監視システムが構成されている。
【0030】
続いて、
図3及び
図4を用いて、筐体50及び筐体50内における電池ブロック21等の配置状態について説明する。
図4は、
図3の4-4線断面図である。
図4に示す一部の構成については、便宜上、断面を示すハッチングの図示が省略されている。
【0031】
筐体50は、底板部51と、底板部51の周縁部に沿って形成された壁部とを備えている。底板部51は、矩形形状をなしており、具体的には長方形状をなしている。壁部は、底板部51の短手方向に延びる一対の第1壁部52と、底板部51の長手方向に延びる一対の第2壁部53とを備えている。
【0032】
筐体50は、カバー54を備えている。カバー54は、第1壁部52及び第2壁部53を上方から覆っている。カバー54は、底板部51及び壁部からなるベース部に対して取り外し可能になっている。底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54それぞれの内面により収容部55が構成されている。収容部55は、電池ブロック21、電池監視装置30及び電池制御装置40を所定の配置状態で収容する一続きの空間を有している。
【0033】
本実施形態において、底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54は、電波を遮断又は吸収する電磁シールド効果を有する構成になっている。例えば、金属材料(例えばアルミニウム)で構成されることにより、電磁シールド効果を有する構成になる。
【0034】
本実施形態では、直方体形状をなす筐体50の長手方向が車両10の車長方向となるように、筐体50が車両10に搭載されている。
図3及び
図4等には、筐体50の長手方向(車両10の車長方向)をX方向とし、筐体50の短手方向(車両10の車幅方向)をY方向とし、筐体50の高さ方向をZ方向とすることが示されている。例えば、底板部51の下面が車両10の車体に対する設置面となる。
【0035】
各電池ブロック21は、直方体形状をなしており、複数の電池セル22の直列接続体として構成されている。本実施形態において、電池セル22は、扁平な直方体形状をなしている。複数の電池セル22は、
図5(A)に示すように、筐体50の短手方向に並べて積層されている。ちなみに、各電池ブロック21において、複数の電池セル22は、
図5(B)に示すように、筐体50の長手方向に並べて積層されていてもよい。また、各電池ブロック21を構成する複数の電池セル22は、互いに並列接続されていてもよい。
【0036】
各電池ブロック21は、
図3及び
図4に示すように、長手方向が筐体50の短手方向となるように底板部51に並べられている。本実施形態では、便宜上、電池ブロック21が筐体50に4つ収容されることとする。このため、電池監視装置30も、筐体50に4つ収容されている。以降、電池ブロック21を第1~第4電池ブロック21A~21Dと称し、電池監視装置30を第1~第4電池監視装置30A~30Dと称すことがある。また、
図3及び
図4では、各電池ブロック21において、隣り合う電池セル22の正極端子及び負極端子を電気的に接続するバスバー等の図示が省略されている。
【0037】
収容部55において、底板部51には、ジャンクションボックス15が配置されている。ジャンクションボックス15は、直方体形状をなしており、スイッチSWを収容する。ジャンクションボックス15は、長手方向が電池ブロック21の長手方向と平行になるように、第1電池ブロック21Aに並んで配置されている。ジャンクションボックス15の高さ寸法は、電池ブロック21の高さ寸法よりも小さい。
【0038】
ジャンクションボックス15の上面には、電池制御装置40が配置されている。各電池ブロック21の上面には、電池監視装置30が配置されている。収容部55において、電池制御装置40の配置位置は、各電池監視装置30の配置位置よりも低い位置になっている。
【0039】
第1~第4電池監視装置30A~30Dは、自身に割り当てられた固有の識別情報を子機側記憶部34に記憶している。第1~第4電池監視装置30A~30Dは、電池情報を電池制御装置40に送信する場合、自身に割り当てられた識別情報を併せて送信する。これにより、電池制御装置40は、どの電池監視装置から送信された電池情報であるかを判別することができる。
【0040】
続いて、第1~第4電池監視装置30A~30Dが、各電池ブロック21のうちどの電池ブロックを監視対象としているかを電池制御装置40が特定する方法について説明する。
【0041】
図6に、電波が反射しない環境に置かれた送信アンテナA1及び第1,第2受信アンテナB1,B2を示す。送信アンテナA1から無線信号が送信された場合、第1,第2受信アンテナB1,B2により受信された無線信号の強度は、
図7に示すような周波数特性となる。
図7に示すように、信号強度は、送信アンテナA1からの距離が長いほど、減衰により小さくなる。この場合における信号強度は、周波数依存性がほぼない。このため、信号強度の大きさを測定することにより、その信号を送信した電池監視装置30を特定することができ、ひいてはその電池監視装置30が監視対象とする電池ブロック21を特定することができる。
【0042】
図8に、筐体内に配置された送信アンテナA1及び第1,第2受信アンテナB1,B2を示す。送信アンテナA1から無線信号が送信された場合、送信された信号は、筐体内において乱反射する。その結果、マルチパスが発生し、第1,第2受信アンテナB1,B2により受信された無線信号の強度は、
図9に示すような周波数特性となる。
図9に示すように、信号強度は、送信アンテナA1からの距離が長いほど、減衰により小さくなるものではない。例えば、周波数によっては受信電力の大幅低下が発生し得る。このため、電池制御装置40との距離が長い電池監視装置30からの受信信号の強度が、電池制御装置40との距離が短い電池監視装置30からの受信信号の強度よりも大きくなり得る。このように、乱反射が生じる空間では、周波数によっては、送信アンテナと受信アンテナとの間の距離と、受信信号の減衰量との間に比例関係がみられなくなる。このため、単純な信号強度の比較のみでは、信号を送信した電池監視装置30を特定することは困難である。
【0043】
そこで、本実施形態では、電池パック11の製造工程において、電池監視装置30からの無線信号強度の周波数特性が測定される。そして、測定された無線信号強度と、電池パック11の設計時等において事前に測定された無線信号強度との相関係数に基づいて、各電池監視装置30が監視対象とする電池ブロック21が特定される。
【0044】
詳しくは、まず、電池パック11の開発段階である設計時等において、筐体50に電池ブロック21、電池監視装置30、電池制御装置40及びジャンクションボックス15が筐体50内に所定の配置状態で配置される。所定の配置状態とは、量産される電池パックにおける電池ブロック21等の配置状態である。
【0045】
図10に示すように、電池制御装置40(具体的には例えば親機側アンテナ43)と電池監視装置30(具体的には例えば子機側アンテナ33)とに外部の測定装置MAが電気的に接続された状態において、測定装置MAにより、各電池監視装置30から個別に無線信号が出力された場合における信号強度の周波数特性が測定される。詳しくは、測定装置MAは、子機側アンテナ33から親機側アンテナ43に電波を伝播させた場合における損失電力(例えば通過特性)を測定する。測定装置MAは、測定した損失電力に、子機側アンテナ33からの送信電力と、親機側無線IC42、親機側アンテナ43、子機側無線IC32及び子機側アンテナ33等における損失電力とを加えることにより、電池制御装置40における受信電力の周波数特性、つまり信号強度の周波数特性を算出する。
図11において、SLAは第1電池監視装置30Aからの無線信号を電池制御装置40が受信する場合における信号強度の周波数特性を示し、SLBは第2電池監視装置30Bからの無線信号を電池制御装置40が受信する場合における信号強度の周波数特性を示す。SLCは第3電池監視装置30Cからの無線信号を電池制御装置40が受信する場合における信号強度の周波数特性を示し、SLDは第4電池監視装置30Dからの無線信号を電池制御装置40が受信する場合における信号強度の周波数特性を示す。このように、事前に測定された信号強度の周波数特性を、以下、基準強度と称すことがある。ちなみに、測定装置MAを使用することなく、電池制御装置40により受信電力を測定してその測定結果を読みだし、読みだした測定結果に基づいて算出した信号強度の周波数特性を基準強度として取り扱ってもよい。
【0046】
電池パック11の製造工程において、生産ラインに設けられた書込装置は、電池パック11に電気的に接続される。書込装置は、基準強度の情報を電池制御装置40の親機側記憶部44に記憶させる。なお、基準強度の情報は、電池パック11の部品である電池制御装置40の製造工程において、書込装置により親機側記憶部44に記憶させてもよい。
【0047】
電池パック11の製造工程において、無線信号の送信期間が重複しないように、第1~第4電池監視装置30A~30Dに無線信号を順次送信させる。なお、
図12に、第4電池監視装置30Dから無線信号が送信された場合において電池制御装置40により受信された信号の強度の一例を示す。
【0048】
続いて、電池制御装置40に特定処理を行わせる。特定処理について説明すると、電池制御MCU41は、1つ目の電池監視装置の受信信号の強度と、第1~第4電池監視装置30A~30Dに紐付けられた第1~第4基準強度SLA~SLDとの相関係数を算出する。電池制御MCU41は、算出した4つの相関係数のうち、最大の相関係数の算出に用いた基準強度に紐づく電池監視装置の監視対象となる電池ブロックが、最大の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置の監視対象であると特定する。
【0049】
例えば、1つ目の受信信号について、第1電池監視装置30Aに紐付けられた第1基準強度SLAとの相関係数が0.3であり、第2電池監視装置30Bに紐付けられた第2基準強度SLBとの相関係数が0.5であり、第3電池監視装置30Cに紐付けられた第3基準強度SLCとの相関係数が0.4であり、第4電池監視装置30Dに紐付けられた第4基準強度SLDとの相関係数が0.7であるとする。この場合、最大の相関係数は0.7である。電池制御MCU41は、0.7の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置30の監視対象が、第4電池監視装置30Dが取り付けられた第4電池ブロック21Dであると特定する。
【0050】
続いて、電池制御MCU41は、2つ目の受信信号の強度と、第1~第4基準強度SLA~SLDのうち残り3つとの相関係数を算出する。電池制御MCU41は、算出した3つの相関係数のうち、最大の相関係数の算出に用いた基準強度に紐づく電池監視装置の監視対象となる電池ブロックが、最大の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置の監視対象であると特定する。
【0051】
続いて、電池制御MCU41は、3つ目の受信信号の強度と、第1~第4基準強度SLA~SLDのうち残り2つとの相関係数を算出する。電池制御MCU41は、算出した2つの相関係数のうち、最大の相関係数の算出に用いた基準強度に紐づく電池監視装置の監視対象となる電池ブロックが、最大の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置の監視対象であると特定する。また、電池制御MCU41は、算出した2つの相関係数のうち、小さい方の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置30の監視対象が、残り1つの基準強度に紐づく電池監視装置の監視対象となる電池ブロックであると特定する。
【0052】
監視対象となる電池ブロックが特定されていくに従い、算出すべき相関係数の数が減るため、電池制御MCU41の処理負荷が軽減される。
【0053】
相関係数の算出に用いる信号強度の周波数範囲は、少なくとも1つのチャネルで規定される周波数範囲とする。1つのチャネルで規定される周波数範囲は、例えば、このチャネルの周波数中央値fcと、チャネル幅Δfとで規定される「fc-Δf/2」~「fc+Δf/2」の範囲である。複数のチャネルで規定される周波数範囲は、例えば、複数のチャネルのうち最低周波数のチャネルの周波数中央値fLcと、複数のチャネルのうち最高周波数のチャネルの周波数中央値fHcと、チャネル幅Δfとで規定される「fLc-Δf/2」~「fHc+Δf/2」の範囲である。相関係数の算出に用いる信号強度の周波数範囲が広いほど、監視対象の特定精度を高めることができる。一方、周波数範囲が狭いほど、特定に要する時間を短縮できる。
【0054】
図13に、製造工程において電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、電池制御MCU41が「特定部」に相当する。
【0055】
ステップS10では、電池監視装置30から無線信号を受信する。無線信号には、送信元の電池監視装置30の識別情報が含まれている。
【0056】
ステップS11では、周波数と関係付けた受信信号の強度(RSSI)を算出し、算出した強度と、受信信号に含まれる識別情報とを紐付ける。
【0057】
ステップS12では、全ての電池監視装置30A~30Dから無線信号を受信したか否かを判定する。
【0058】
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS13に進み、上述した相関係数を用いた特定方法により、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0059】
ステップS14では、第1~第4電池監視装置30A~30Dと、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21との対応関係の情報を、電池制御装置40の親機側記憶部44に記憶させる。これにより、例えば、電池パック11を製造工場から出荷した後において、上記対応関係を都度特定することが不要となる。
【0060】
監視IC31は、上述したように、監視対象とする電池ブロック及び自身のうち少なくとも一方を判定対象とする自己診断情報を生成することができ、生成した自己診断情報を識別情報とともに電池制御装置40に送信する。例えば判定対象を電池ブロックとする場合、電池制御装置40は、異常が発生した電池ブロック21の情報を親機側記憶部44に記憶させる。親機側記憶部44に記憶された上記対応関係の情報及び異常が発生した電池ブロック21の情報は、例えば、車両の修理工場や整備工場において、異常が発生した電池ブロックの交換作業時に用いられる。以下、
図14のフローチャートを用いて、異常電池の特定方法について説明する。
【0061】
ステップS20では、工場の作業者により、電池制御装置40と、工場の検査装置とが通信可能なように接続される。検査装置は、例えばダイアグテスターである。なお、このステップにおける接続は、電池制御装置40と検査装置との無線接続又は有線接続である。
【0062】
ステップS21では、作業者が検査装置を操作することにより、電池制御装置40の親機側記憶部44から、第1~第4電池監視装置30A~30Dと、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21との対応関係の情報、及び異常が発生した電池ブロック21の情報を読み取る。
【0063】
ステップS22では、検査装置は、読み取った情報に基づいて、第1~第4電池ブロック21A~21Dのうち異常が発生した電池ブロックがどれであるかを作業者に通知する。この通知は、例えば、検査装置の表示部への表示又は検査装置からの音声により実施されればよい。
【0064】
ステップS23では、作業者は、筐体50のカバー54を開け、異常が発生した電池ブロックを取り出す。そして、作業者は、新品の電池ブロック又はリユースされた電池ブロックを取り付け、カバー54を閉じる。これにより、電池ブロックの交換作業が完了する。
【0065】
なお、作業者は、カバー54を閉じた後、検査装置を操作することにより、上記特定処理を電池制御MCU41に再度実行させてもよい。また、自己診断情報における判定対象に電池監視装置30が含まれる場合、異常が発生した電池監視装置30を特定し、正常な電池監視装置30に交換することができる。電池監視装置30の異常には、監視IC31の異常が含まれる。
【0066】
以上詳述した本実施形態によれば、マルチパスが発生し得る収容部55を備える構成において、各電池監視装置30と、各電池監視装置30の監視対象となる電池ブロック21との対応関係を電池制御装置40が把握することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、電池パック11の製造工程において特殊な管理を行うことなく、監視対象となる電池ブロック21を特定できる。
【0068】
<第1実施形態の変形例>
・筐体50の収容部55における電池制御装置40及び各電池監視装置30の配置態様としては、
図3及び
図4に示した態様に限らない。例えば、
図15に示すように、電池ブロック21の上面に電池制御装置40が取り付けられ、電池ブロック21の各側面に電池監視装置が取り付けられてもよい。
【0069】
・底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54のうち、一部の構成が電磁シールド効果を有さない構成になっていてもよい。例えば、合成樹脂で構成されることにより、電磁シールド効果を有さない構成になる。
【0070】
・監視対象の特定処理において、電池制御装置40に対する第1~第4電池監視装置30A~30Dの無線信号の送信期間の少なくとも一部が重複してもよい。この場合、送信期間が重複する電池監視装置のうち、一方が使用する送信周波数と、他方が使用する送信周波数とが大きくずらされていればよい。
【0071】
・監視対象とする電池ブロック21を特定するためのパラメータとしては、無線信号の強度に限らず、例えば、電池制御装置40と電池監視装置30との間の無線通信における通信エラー率であってもよい。通信エラー率は、例えば、パケットエラー率又はビットエラー率である。通信エラー率が用いられる場合、電池制御装置40の親機側記憶部44には、各電池監視装置30と紐付けられた通信エラー率が記憶されている。電池制御装置40は、電池監視装置30から受信した無線信号と、親機側記憶部44に記憶された通信エラー率とに基づいて、受信した無線信号の送信元となる電池監視装置30が監視対象とする電池ブロック21を特定すればよい。
【0072】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1~第4電池監視装置30A~30Dと、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21との対応関係の情報が、電池制御装置40ではなく、各電池監視装置30の子機側記憶部34に記憶される。
【0073】
図16に、製造工程において電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図16において、先の
図13に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0074】
ステップS13の完了後、ステップS15では、第1~第4電池監視装置30A~30Dと、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21との対応関係の情報を、第1~第4電池監視装置30A~30Dに送信する。
【0075】
図17に、製造工程において第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視IC31により実行される処理の手順を示す。
【0076】
ステップS30では、電池制御装置40からの上記対応関係の情報を受信したか否かを判定する。ステップS30において肯定判定した場合、ステップS31に進み、電池監視装置30の子機側記憶部34に上記対応関係の情報を記憶させる。
【0077】
以上説明した本実施形態によれば、親機である電池制御装置40が故障した場合であっても、各電池監視装置30の監視対象を判別することができる。また、電池制御装置40の親機側記憶部44のメモリ使用量を削減できる。なお、本実施形態において、基準強度の情報は、電池パック11の部品である電池監視装置30の製造工程において、書込装置により子機側記憶部34に記憶させてもよい。
【0078】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。各電池監視装置30がどの電池ブロック21を監視対象にしているかを特定する処理は、電池パック11の製造工程に限らず、車両10がユーザの手に渡った後においても実行できる。本実施形態では、車両10が駐車状態である場合又は組電池20が外部充電器CMにより充電されている場合に特定処理の実行が許可される。
【0079】
図18に、電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図18において、先の
図13に示した処理と同一の処理又は対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0080】
ステップS16では、車両10が駐車状態であるとの第1条件、又は駐車中の車両10に搭載された組電池20が外部充電器CMにより充電されているとの第2条件のいずれかが成立しているか否かを判定する。ステップS20の処理は、各電池監視装置30の監視対象となる電池ブロックの特定精度を高めるための処理である。
【0081】
車両10の走行に伴い発生する振動等に起因して、電池制御装置40が受信する無線信号の強度の周波数特性が変化し得る。この場合、監視対象となる電池ブロックの特定精度が低下したり、特定に要する時間が長くなったりする懸念がある。このため、特定処理は、振動等が発生しない状況で実行されるのが望ましい。そこで、第1条件が設定されている。なお、例えば、車両10の走行を許可又は始動を指示するスイッチであって、ユーザにより操作されるスタートスイッチ又はイグニッションスイッチがオフされていると判定した場合、第1条件が成立していると判定すればよい。
【0082】
組電池20が外部充電器CMにより充電されている場合も、車両10が停車状態であり、振動等が発生しない状況である。この点に鑑み、第2条件が設定されている。
【0083】
以上説明した本実施形態によれば、監視対象となる電池ブロックの特定精度を高めることができる。
【0084】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図19に示すように、電池監視装置30の配置態様に特徴がある。
図19は、筐体50のカバー54を取り外した状態の電池パック11の平面図である。なお、
図19において、先の実施形態に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0085】
収容部55には、筐体50の長手方向かつ水平方向に延びる基準軸線LPに対して線対称となるように、各電池ブロック21A~21D、各電池監視装置30A~30D及び電池制御装置40が配置されている。親機側アンテナ43における電波指向性の中心の向きは、電池ブロック21の方を向いており、基準軸線LPが延びる向きである。
【0086】
各電池監視装置30A~30Dのうち、基準軸線LPが延びる方向において電池制御装置40(具体的には親機側アンテナ43)からの距離が同じ位置に配置された第1,第2電池監視装置30A,30Bを構成する第1,第2子機側アンテナ33A,33Bにおける電波指向性の中心の向きは、基準軸線LPに対して線対称の向きにならないようにされている。
【0087】
また、基準軸線LPが延びる方向において電池制御装置40からの距離が同じ位置に配置された第3,第4電池監視装置30C,30Dを構成する第3,第4子機側アンテナ33C,33Dにおける電波指向性の中心の向きも、基準軸線LPに対して線対称の向きにならないようにされている。本実施形態では、第1,第3子機側アンテナ33A,33Cにおける電波指向性の中心の向きは、第2,第4子機側アンテナ33B,33Dにおける電波指向性の中心の向きから180度ずれている。また、第1子機側アンテナ33A及び第3子機側アンテナ33Cにおける電波指向性の中心の向きが同じであり、第2子機側アンテナ33B及び第4子機側アンテナ33Dにおける電波指向性の中心の向きが同じである。
【0088】
図19に示す配置によれば、
図20に示すように、電池制御装置40により受信される各電池監視装置30A~30Dの無線信号強度の周波数特性を大きく異ならせることができる。その結果、特定処理において監視対象となる電池ブロックの特定精度を高めることができる。
【0089】
これに対し、
図21に示す比較例では、基準軸線LPが延びる方向において電池制御装置40からの距離が同じ位置に配置された第1,第2子機側アンテナ33A,33Bにおける電波指向性の中心の向きは、基準軸線LPに対して線対称の向きにされている。このため、
図22に示すように、電池制御装置40により受信される第1,第2電池監視装置30A,30Bの無線信号強度の周波数特性が略同じになってしまう。その結果、特定処理による監視対象の特定が困難になってしまう。
【0090】
また、基準軸線LPが延びる方向において電池制御装置40からの距離が同じ位置に配置された第3,第4子機側アンテナ33C,33Dにおける電波指向性の中心の向きも、基準軸線LPに対して線対称の向きにされている。このため、
図22に示すように、電池制御装置40により受信される第3,第4電池監視装置30C,30Dの無線信号強度の周波数特性も略同じになってしまう。
【0091】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図23に示すように、基準軸線LPが延びる方向(つまり、筐体50の長手方向)において電池制御装置40からの距離が同じ位置に配置された第1,第2電池監視装置30A,30Bは、筐体50の短手方向において基準軸線LPからの距離が異なる位置に配置されている。第3,第4電池監視装置30C,30Dも同様である。なお、
図23において、先の
図19に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0092】
第1,第2電池監視装置30A,30Bを構成する第1,第2子機側アンテナ33A,33Bにおける電波指向性の中心の向きは、基準軸線LPに対して線対称の向きにされている。この場合であっても、筐体50の短手方向において基準軸線LPからの距離が第1電池監視装置30Aと第2電池監視装置30Bとで異なっているため、電池制御装置40により受信される第1,第2電池監視装置30A,30Bの無線信号強度の周波数特性を大きく異ならせることができる。なお、第3,第4電池監視装置30C,30Dを構成する第3,第4子機側アンテナ33C,33Dにおける電波指向性の中心の向きも、基準軸線LPに対して線対称の向きにされている。
【0093】
ちなみに、各電池監視装置30A~30D及び子機側アンテナ33A~33Dの配置態様は、
図23に示すものに限らず、例えば
図24に示す態様であってもよい。この態様では、筐体50の短手方向において基準軸線LPからの距離が各電池監視装置30A~30Dで異なっている。なお、
図24に示す構成において、電池制御装置40は、筐体50の短手方向において中央位置に配置される以外に、筐体50の短手方向における右端位置又は左端位置に配置されてもよい。
【0094】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態の各子機側アンテナ33A~33Dは、電波指向性の中心の向きを複数の向きの中から選択して変更可能に構成されている。
図25には、各電池監視装置30A~30Dのうち、第4電池監視装置30Dのみ図示されている。
【0095】
第4子機側アンテナ33Dは、電波指向性の中心の向きを2つの向きの中から選択して変更可能に構成されている。指向性Aが選択された場合、電波指向性の中心の向きは、筐体50の長手方向の向きになる。一方、指向性Bが選択された場合、電波指向性の中心の向きは、筐体50の短手方向の向きになる。
【0096】
電波指向性を変更可能な構成は、監視対象の特定精度を高めるための構成である。
図26(A)は、指向性Aが選択された場合において電池制御装置40が第4電池監視装置30Dから受信した無線信号強度の周波数特性を示す。
図26(B)は、指向性Aが選択された場合において第2,第4電池監視装置30B,30Dと紐付けられた第2,第4基準強度SLB,SLDを示す。この場合、
図26(A)の無線信号強度に基づいて、監視対象が、第2電池監視装置30Bが取り付けられた第2電池ブロック21Bであるのか、第4電池監視装置30Dが取り付けられた第4電池ブロック21Dであるのかを特定することが困難となる。
【0097】
このような場合に備えて、指向性Bに切り替え可能になっている。
図27(A)は、指向性Bが選択された場合において電池制御装置40が第4電池監視装置30Dから受信した無線信号強度の周波数特性を示す。
図27(B)は、指向性Bが選択された場合において第2,第4電池監視装置30B,30Dと紐付けられた第2,第4基準強度SLB,SLDを示す。この場合、
図27(A)の無線信号強度に基づいて、監視対象が、第4電池監視装置30Dが取り付けられた第4電池ブロック21Dであることを容易に特定できる。
【0098】
本実施形態の親機側記憶部44には、指向性A,Bと紐付けられた第1~第4基準強度SLA~SLDが記憶されている。電池制御MCU41は、例えば、特定処理において、値が最大となる相関係数と、その次に大きい相関係数との差が所定値以下であると判定した場合、指向性をAからBに切り替えて監視対象を特定すればよい。
【0099】
以下、
図28及び
図29を用いて、電波指向性の中心の向きを変更可能な子機側アンテナの例を2つ説明する。
【0100】
図28に、1つ目の子機側アンテナ60を示す。1つ目の例は、電波指向性の中心の向きが異なる複数のアンテナを備え、使用するアンテナを切り替える構成である。
【0101】
子機側アンテナ60は、回路基板61と、回路基板61の板面に設けられたベースバンドIC62、切り替えスイッチ63、複数のアンテナ、第1給電線65A及び第2給電線65Bとを備えている。
図28には、アンテナとして、第1アンテナ64A及び第2アンテナ64Bが示されている。
【0102】
ベースバンドIC62は、子機側無線IC32を介して監視IC31と通信する。ベースバンドIC62は、切り替えスイッチ63により、第1給電線65A又は第2給電線65Bに接続される。
図28(A)に示すように、ベースバンドIC62と第1給電線65Aとが切り替えスイッチ63により接続されると、第1アンテナ64Aが使用される。この場合、電波指向性は指向性Aとなる。一方、
図28(B)に示すように、ベースバンドIC62と第2給電線65Bとが切り替えスイッチ63により接続されると、第2アンテナ64Bが使用される。この場合、電波指向性は指向性Bとなる。
【0103】
図29に、2つ目の子機側アンテナ60を示す。2つ目の例は、アンテナに対する給電箇所を変更することにより、指向性を変更する構成である。なお、
図29において、先の
図28に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0104】
子機側アンテナ60は、アンテナ66と、第1~第4給電線67A~67Dとを備えている。アンテナ66と、第1~第4給電線67A~67Dとは、回路基板61の板面に設けられている。アンテナ66は、例えばパッチアンテナである。
【0105】
図29に示す構成では、指向性を4通りに変更可能であるが、そのうち2通りについて説明する。
図29(A)に示すように、ベースバンドIC62と第1給電線67Aとが切り替えスイッチ63により接続されると、アンテナ66における電波指向性は指向性Aとなる。一方、
図29(B)に示すように、ベースバンドIC62と第4給電線67Dとが切り替えスイッチ63により接続されると、アンテナ66における電波指向性は指向性Bとなる。
【0106】
なお、以上説明した切り替えスイッチ63を備える構成に代えて、各給電線にベースバンドIC62が個別に接続され、動作させるベースバンドIC62を切り替えることにより、電波指向性を変更してもよい。
【0107】
以上説明した本実施形態によれば、監視対象の特定精度を高めることができる。
【0108】
<第6実施形態の変形例>
子機側アンテナに代えて又は加えて、電池制御装置40が備える親機側アンテナ43が電波指向性を変更可能な構成であってもよい。
【0109】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。第1実施形態では、各電池監視装置30の監視対象となる電池ブロック21を特定するために相関係数が用いられた。本実施形態では、電池パック11に異常が発生しているか否かを判定するために相関係数が用いられる。
【0110】
図30に、正常時の電池パック11を示し、
図31に、異常時の電池パック11を示す。
図30及び
図31では、各電池ブロック21において、隣り合う電池セル22の正極端子及び負極端子を電気的に接続するバスバーが図示されている。なお、
図30及び
図31において、先の
図3及び
図4等に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0111】
図31に示す例では、第1電池ブロック21Aの配置位置が、正常時の配置位置からずれた状態になっている。この場合、
図32に示すように、例えば、電池制御装置40により受信された第1電池監視装置30Aからの無線信号の強度が正常時の強度から大きくずれる。このずれを利用して、電池パック11に異常が発生していることを判定する。なお、電池パック11の異常には、その他に例えば、電池監視装置30の配置位置のずれ又はカバー54外れが挙げられる。
【0112】
図33に、電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図33において、先の
図13に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0113】
ステップS12において肯定判定した場合、ステップS17において、先のステップS13で説明した方法と同じ方法により、相関係数を算出する。そして、算出した相関係数に基づいて、異常が発生しているか否かを判定する。例えば、第1~第4基準強度SLA~SLDそれぞれと受信した無線信号強度との相関係数を算出し、算出した4つの相関係数が判定値以下である場合、異常が発生していると判定すればよい。判定値は、相関が弱いことを示す値(例えば0.4)又は相関がほどんどないことを示す値(例えば0.2)に設定することができる。
【0114】
ステップS18では、異常が発生しているか否かを判定する。異常が発生していないと判定した場合、ステップS13に進む。一方、異常が発生していると判定した場合、ステップS19に進み、異常が発生している旨を通知する処理を行う。
【0115】
以上説明した本実施形態によれば、電池パック11内の異常を判定することができる。
【0116】
<第8実施形態>
以下、第8実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、相関係数に代えて、各電池監視装置30A~30Dから受信した無線信号の特定周波数における強度の大小関係を、特定周波数における第1~第4基準強度SLA~SLDの大小関係と比較することにより、各電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0117】
図34を用いて、特定周波数をf1とする場合における特定処理について説明する。
【0118】
特定周波数f1における第1基準強度SLAが-10dBmであり、第2基準強度SLBが-20dBmであり、第3基準強度SLCが-30dBmであり、第4基準強度SLDが-40dBmであるとする。特定周波数f1における各基準強度SLA~SLDは、親機側記憶部44に記憶されている。
【0119】
電池制御MCU41は、電池監視装置30A~30Dから受信した4つの無線信号強度を取得する。第1電池監視装置30Aから受信した無線信号強度が-22dBmであり、第2電池監視装置30Bから受信した無線信号強度が-28dBmであり、第3電池監視装置30Cから受信した無線信号強度が-38dBmであり、第4電池監視装置30Dから受信した無線信号強度が-55dBmであるとする。
【0120】
基準強度の大小関係は「SLA>SLB>SLC>SLD」である。取得した強度の大小関係は「30Aの強度>30Bの強度>30Cの強度>30Dの強度」である。電池制御MCU41は、基準強度の大小関係と、取得した強度の大小関係とが同じになるように監視対象の電池ブロック21を特定する。詳しくは、電池制御MCU41は、第1電池監視装置30Aの監視対象が第1基準強度SLAと紐付けられた第1電池ブロック21Aであると特定し、第2電池監視装置30Bの監視対象が第2基準強度SLBと紐付けられた第2電池ブロック21Bであると特定する。また、電池制御MCU41は、第3電池監視装置30Cの監視対象が第3基準強度SLCと紐付けられた第3電池ブロック21Cであると特定し、第4電池監視装置30Dの監視対象が第4基準強度SLDと紐付けられた第4電池ブロック21Dであると特定する。
【0121】
なお、特定周波数としてf1を例示したが、例えば、f1よりも高周波側のf2を特定周波数にしてもよい。また、特定周波数は、予め定められた固定値に限らず、電池制御装置40により算出された無線信号強度の周波数特性に基づいて選択された周波数であってもよい。
【0122】
図35に、製造工程において電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図35において、先の
図16に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0123】
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS30に進み、上述した大小関係を用いた特定方法により、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0124】
以上説明した本実施形態によれば、監視対象の特定に必要な周波数の数を削減できるため、特定に要する時間を短縮できる。
【0125】
<第9実施形態>
以下、第9実施形態について、第8実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各電池監視装置30A~30Dから受信した無線信号と基準強度との特定周波数における差分に基づいて、各電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0126】
先の
図34を用いて、特定周波数をf1とする場合における特定処理について説明する。
【0127】
特定周波数f1における第1基準強度SLAが-10dBmであり、第2基準強度SLBが-20dBmであり、第3基準強度SLCが-30dBmであり、第4基準強度SLDが-40dBmであるとする。特定周波数f1における各基準強度SLA~SLDは、親機側記憶部44に記憶されている。
【0128】
電池制御MCU41は、1つ目の電池監視装置の受信信号の特定周波数における強度と、第1~第4基準強度SLA~SLDの特定周波数における値との差分を算出する。ここでは、受信信号の特定周波数における強度が-22dBmであるとする。このため、第1基準強度SLAとの差分は12dBmであり、第2基準強度SLBとの差分は2dBmであり、第3基準強度SLCとの差分は8dBmであり、第4基準強度SLDとの差分は18dBmである。
【0129】
電池制御MCU41は、算出した4つの差分のうち、最小の差分の算出に用いた第2基準強度SLBに紐づく第2電池監視装置30Bの監視対象となる第2電池ブロック21Bが、最小の差分の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置の監視対象であると特定する。なお、電池制御MCU41は、算出した2つの差分が同じ値である場合、他の電池監視装置からの受信信号に基づいて、他の電池監視装置の監視対象を優先して特定すればよい。
【0130】
電池制御MCU41は、同様の方法を用いて、残りの受信信号に基づいて監視対象となる電池ブロック21を順次特定する。
【0131】
図36に、製造工程において電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図36において、先の
図35に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0132】
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS31に進み、上述した差分を用いた特定方法により、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0133】
以上説明した本実施形態によれば、監視対象の特定に必要な周波数の数を削減できるため、特定に要する時間を短縮できる。
【0134】
ちなみに、本実施形態の特定方法と第8実施形態の特定方法とを組み合わせることにより、特定精度を高めることができる。
【0135】
<第10実施形態>
以下、第10実施形態について、第8,第9実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各電池監視装置30A~30Dから受信した無線信号の所定周波数範囲における平均値と、第1~第4基準強度SLA~SLDの所定周波数範囲における平均値とに基づいて、各電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。所定周波数範囲は、第1~第4基準強度SLA~SLDが大きく異なる周波数範囲であることが望ましい。第1~第4基準強度SLA~SLDの所定周波数範囲における平均値は、親機側記憶部44に記憶されている。
【0136】
電池制御MCU41は、1つ目の電池監視装置の受信信号の所定周波数範囲における平均値を算出する。電池制御MCU41は、算出した平均値と、第1~第4基準強度SLA~SLDの所定周波数範囲における平均値との差分を算出する。
【0137】
電池制御MCU41は、算出した4つの差分のうち、最小の差分の算出に用いた基準強度に紐づく電池監視装置30の監視対象となる電池ブロックが、所定周波数範囲における平均値の算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置の監視対象であると特定する。電池制御MCU41は、同様の方法を用いて、残りの受信信号に基づいて監視対象となる電池ブロック21を順次特定する。
【0138】
図37に、製造工程において電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図37において、先の
図35に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0139】
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS32に進み、上述した平均値の差分を用いた特定方法により、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0140】
<第11実施形態>
以下、第11実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、各電池監視装置30A~30Dから受信した無線信号の所定周波数範囲における傾きと、第1~第4基準強度SLA~SLDの所定周波数範囲における傾きとに基づいて、各電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
図38に示すように、所定周波数範囲Rcは、第1~第4基準強度SLA~SLDの傾きが大きく異なる周波数範囲であることが望ましい。第1~第4基準強度SLA~SLDの所定周波数範囲における傾きは、親機側記憶部44に記憶されている。
【0141】
電池制御MCU41は、1つ目の電池監視装置の受信信号の所定周波数範囲Rcにおける傾きを算出する。電池制御MCU41は、算出した傾きと、第1~第4基準強度SLA~SLDの所定周波数範囲Rcにおける傾きとの差分を算出する。
【0142】
電池制御MCU41は、算出した4つの差分のうち、最小の差分の算出に用いた基準強度に紐づく電池監視装置30の監視対象となる電池ブロックが、所定周波数範囲Rcにおける傾きの算出に用いた無線信号の送信元となる電池監視装置の監視対象であると特定する。電池制御MCU41は、同様の方法を用いて、残りの受信信号に基づいて監視対象となる電池ブロック21を順次特定する。
【0143】
図39に、製造工程において電池制御MCU41により実行される特定処理の手順を示す。なお、
図39において、先の
図35に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0144】
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS33に進み、上述した傾きの差分を用いた特定方法により、第1~第4電池監視装置30A~30Dの監視対象となる電池ブロック21を特定する。
【0145】
以上説明した本実施形態によれば、例えば、受信した無線信号の強度と基準強度とが一致しない場合であっても、監視対象を特定することができる。
【0146】
<第12実施形態>
以下、第12実施形態について、上記各実施形態との相違点を中心に、
図40及び
図41を参照しつつ説明する。なお、
図40及び
図41において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、
図41は、
図40の41-41線断面図である。
【0147】
車両は、金属材料で構成された車体としてのシャーシ100と、車輪110とを備えている。シャーシ100は、車長方向に延びるシャーシ底板部101と、側板部102と、シャーシ天板部103と、端板部104とを備えている。側板部102は、シャーシ底板部101のうち車幅方向における端部から上方に延びている。シャーシ天板部103は、側板部102を上方から覆っている。端板部104は、シャーシ底板部101、側板部102及びシャーシ天板部103の両端部を覆っている。シャーシ底板部101、側板部102、シャーシ天板部103及び端板部104の内面により、電池パック11を収容する収容部105が構成されている。
【0148】
筐体50を構成する底板部51が、シャーシ底板部101に配置されている。シャーシ天板部103と筐体50を構成するカバー54との間には、空間が形成されている。本実施形態において、底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54は、合成樹脂で構成されており、電磁シールド効果を有さない構成となっている。このため、親機側アンテナ43や子機側アンテナ33から発信された電波は、筐体50を通り抜ける。ただし、金属材料で構成されたシャーシ100により、電波が反射する。
【0149】
ちなみに、底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54のうち、一部(例えばカバー54)が合成樹脂で構成されていてもよい。
【0150】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0151】
<第13実施形態>
以下、第13実施形態について、第12実施形態との相違点を中心に、
図42を参照しつつ説明する。なお、
図42において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0152】
電池制御装置40は、収容部105において、筐体50の外部に配置されている。詳しくは、電池制御装置40は、カバー54の上面に取り付けられている。
【0153】
本実施形態において、カバー54、第1壁部52、第2壁部53及び底板部51は、金属材料で構成されている。この場合、筐体50内に収容された各電池監視装置30A~30Dと電池制御装置40との間で通信を行うために、筐体50の内外を通信接続する構成が要求される。
【0154】
本実施形態の電池パック11は、通信接続する構成として、中継デバイス120を備えている。中継デバイス120は、カバー54の上面側に位置するアンテナ120aと、アンテナ120aから下方に延びてかつアンテナ120aよりも外径寸法が小さい軸部120bとを備えている。カバー54には、軸部120bを挿通するための貫通孔54aが形成されている。本実施形態において、貫通孔54aは、カバー54において、カバー54の長手方向に一列に並んで設けられている。アンテナ120aがカバー54の上面側に位置して、かつ、軸部120bがカバー54に形成された貫通孔54aに挿入された状態で、中継デバイス120が配置されている。中継デバイス120は、各電池監視装置30に対応して個別に設けられている。なお、アンテナ120aは、電波を透過するカバーで覆われていてもよい。
【0155】
貫通孔54aは、中継デバイス120のアンテナ120aにより塞がれている。なお、アンテナ120aとカバー54の上面との間にシール部材が介在していてもよい。
【0156】
電池監視装置30の子機側無線IC32とアンテナ120aとは、軸部120bに設けられた通信配線により電気的に接続されている。これにより、アンテナ120a及び親機側アンテナ43を介して、電池監視装置30と電池制御装置40との間で無線通信を行うことができる。
【0157】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0158】
<第14実施形態>
以下、第14実施形態について、第13実施形態との相違点を中心に、
図43を参照しつつ説明する。なお、
図43において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0159】
電池制御装置40は、筐体50内においてジャンクションボックス15の上面に取り付けられている。一方、第1~第4電池監視装置30A~30Dは、収容部105において、筐体50の外部に配置されており、詳しくは、カバー54の上面に取り付けられている。この場合、筐体50内に収容された電池制御装置40と、筐体50外に配置された各電池監視装置30A~30Dとの間で通信を行うために、筐体50の内外を通信接続する構成が要求される。
【0160】
本実施形態の電池パック11は、通信接続する構成として、中継デバイス130を備えている。中継デバイス130は、カバー54の上面側に位置する接続部130bと、接続部130bから下方に延びるアンテナ130aとを備えている。カバー54には、アンテナ130aを挿通するための貫通孔54aが形成されている。貫通孔54aは、カバー54において、カバー54の長手方向に一列に並んで設けられている。中継デバイス130は、各電池監視装置30に対応して個別に設けられている。なお、アンテナ130aは、電波を透過するカバーで覆われていてもよい。
【0161】
貫通孔54aは、中継デバイス130の接続部130bにより塞がれている。なお、接続部130bとカバー54の上面との間にシール部材が介在していてもよい。
【0162】
電池監視装置30の子機側無線IC32とアンテナ130aとは、接続部130bに設けられた通信配線により電気的に接続されている。これにより、アンテナ130a及び親機側アンテナ43を介して、電池監視装置30と電池制御装置40との間で無線通信を行うことができる。
【0163】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0164】
<第15実施形態>
以下、第15実施形態について、上記各実施形態との相違点を中心に、
図44を参照しつつ説明する。なお、
図44において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0165】
図44に示すように、筐体50が備えられておらず、各電池ブロック21A~21D、各電池監視装置30A~30D及び電池制御装置40がシャーシ100の収容部105に直接収容される構成であってもよい。この構成は、MTP(Module to Platform)と呼ばれる。
【0166】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0167】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0168】
・上記各実施形態では、複数の電池セルを電池ブロックにまとめた上で、各電池ブロックを直列接続する構成が用いられた。この構成に代えて、電池ブロックを作成することなく、複数の電池セルの直列接続体がシャーシ100の収容部105に収容されるいわゆるCTP(Cell to Pack)の構成が用いられてもよい。この場合の一例を
図45に示す。
図45に示す例では、車幅方向に長い長尺状の電池セル200が収容部105に複数収容される。隣り合う各電池セル200のうち、一方の正極端子201と他方の負極端子202とが図示しないバスバーにより電気的に接続される。なお、この場合、例えば、各電池セル200に対応して個別に電池監視装置が設けられればよい。
【0169】
また、CTPの構成に代えて、車両のシャーシに電池セルを収容する収容部が構成され、収容部に複数の電池セルが収容されるいわゆるCTC(Cell to Chassis)の構成が用いられてもよい。
【0170】
CTPやCTCの構成であっても、収容部の少なくとも一部により電波が反射するため、上記各実施形態で説明した構成を適用するメリットがある。
【0171】
・電池監視システムが搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、制御システムは、移動体に搭載されるシステムに限らず、定置式のシステムであってもよい。
【0172】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0173】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
複数の電池(21,21A~21D,200)それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置(30,30A~30D)を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに所定の配置状態で配置される電池制御装置(40)において、
前記電池制御装置は、
前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合における前記無線通信の通信品質に関するパラメータであって、前記各電池監視装置と紐付けられたパラメータを記憶する親機側記憶部(44)と、
前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側通信部(42,43)と、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号と、前記記憶部に記憶された前記パラメータとに基づいて、受信した無線信号の送信元となる前記電池監視装置が監視対象とする前記電池を特定する特定処理を行う特定部(41)と、
を有する、電池制御装置。
[構成2]
前記パラメータは、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合において前記電池監視装置から受信した無線信号の強度である、構成1に記載の電池制御装置。
[構成3]
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号と前記パラメータとの相関係数を前記各電池監視装置について算出し、
算出した前記各相関係数のうち、最大の相関係数の算出に用いた前記パラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、前記最大の相関係数の算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、構成2に記載の電池制御装置。
[構成4]
前記特定部は、算出した前記相関係数に基づいて、前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置の前記収容部における配置状態が、前記所定の配置状態からずれている異常が発生しているか否かを判定する、構成3に記載の電池制御装置。
[構成5]
前記特定部は、前記特定処理として、前記各電池監視装置から受信した無線信号の特定周波数における強度の大小関係を、前記各電池監視装置と紐付けられた前記パラメータの前記特定周波数における大小関係と比較することにより、前記各電池監視装置の監視対象となる前記電池を特定する処理を行う、構成2に記載の電池制御装置。
[構成6]
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した無線信号と前記パラメータとの特定周波数における差分を前記各電池監視装置について算出し、
算出した前記各差分のうち、最小の差分の算出に用いた前記パラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、前記最小の差分の算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、構成2に記載の電池制御装置。
[構成7]
前記パラメータは、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合において前記電池監視装置から受信した無線信号の強度の所定周波数範囲における傾きであり、
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号の前記所定周波数範囲における傾きを算出し、
前記各パラメータのうち、算出した傾きとの差分が最小のパラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、傾きの算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、構成1に記載の電池制御装置。
[構成8]
前記パラメータは、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が前記所定の配置状態で配置されている場合において前記電池監視装置から受信した無線信号の強度の所定周波数範囲における平均値であり、
前記特定部は、前記特定処理として、
前記親機側通信部により受信した前記電池監視装置からの無線信号の前記所定周波数範囲における強度の平均値を算出し、
前記各パラメータのうち、算出した平均値との差分が最小のパラメータに紐づく前記電池監視装置の監視対象となる前記電池が、平均値の算出に用いた無線信号の送信元となる前記電池監視装置の監視対象であると特定する処理を行う、構成1に記載の電池制御装置。
[構成9]
前記特定部は、前記各電池監視装置と、前記各電池監視装置の監視対象となる前記電池との対応関係を前記特定処理により特定し、特定した前記対応関係の情報を前記親機側記憶部に記憶させる、構成1~8のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成10]
構成9に記載の電池制御装置と、前記各電池監視装置とを備える前記電池監視システムを用いて、前記収容部に収容された前記各電池のうち異常が発生した電池を特定する異常電池の特定方法において、
前記電池監視装置は、
前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側通信部(32,33)を有し、
自身の監視対象となる前記電池及び自身のうち少なくとも一方である判定対象に異常が発生しているか否かを判定し、
異常が発生していると判定した場合、異常が発生している旨の情報を自身の識別情報とともに前記子機側通信部から前記電池制御装置に送信し、
前記電池制御装置は、
前記異常が発生している旨の情報及び前記識別情報を前記親機側通信部により受信し、
受信した前記異常が発生している旨の情報を前記電池制御装置の前記親機側記憶部に記憶させ、
前記電池制御装置と検査装置とを通信可能に接続する工程と、
前記親機側記憶部から、前記対応関係の情報及び前記異常が発生している旨の情報を前記検査装置により読み出す工程と、
前記検査装置に、前記親機側記憶部から読み出した情報に基づいて、前記収容部に収容された前記各電池のうち異常が発生した電池を特定させる工程と、
を備える異常電池の特定方法。
[構成11]
構成1~8のいずれか1つに記載の電池制御装置と、前記各電池監視装置とを備える前記電池監視システムにおいて、
前記各電池監視装置は、
前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側通信部(32,33)と、
子機側記憶部(34)と、
を有し、
前記特定部は、前記各電池監視装置と、前記各電池監視装置の監視対象となる前記電池との対応関係を前記特定処理により特定し、特定した前記対応関係の情報を、前記親機側通信部から前記各電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、前記子機側通信部により受信した前記対応関係の情報を前記子機側記憶部に記憶させる、電池監視システム。
[構成12]
前記電池監視システムは、ユーザが搭乗可能な移動体(10)に搭載され、
前記特定部は、ユーザにより前記移動体の始動指示がなされておらず、かつ、前記移動体が停止状態にされていることを条件として前記特定処理を行う、構成1~11のいずれか1つに記載の電池制御装置。
[構成13]
構成1~9,11,12のいずれか1つに記載の電池制御装置と、前記各電池監視装置とを備える前記電池監視システムにおいて、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側通信部(32,33)を有し、
前記親機側通信部により受信される無線信号の強度の周波数特性が前記各電池監視装置で異なるように、前記各子機側通信部が有するアンテナ部(33A~33D,60)における電波指向性の中心の向きが設定されている、電池監視システム。
[構成14]
前記各子機側通信部が有する前記アンテナ部(60)は、電波指向性の中心の向きを複数の向きの中から選択して変更可能に構成されており、
前記親機側記憶部は、前記各電池監視装置及び前記各向きと紐付けられた前記パラメータを記憶する、構成13に記載の電池監視システム。
[構成15]
前記各電池(21A~21D)、前記各電池監視装置(30A~30D)、前記電池制御装置及び前記収容部(55)の平面視において、前記親機側通信部が有するアンテナ部(43)を通ってかつ水平方向に延びる基準軸線(LP)に対して、前記各電池、前記各電池監視装置、前記電池制御装置及び前記収容部が線対称となる構成になっており、
前記各電池監視装置のうち、前記基準軸線が延びる方向において前記電池制御装置からの距離が同じ位置に配置された電池監視装置が有するアンテナ部(33A~33D)における電波指向性の中心の向きは、前記基準軸線に対して線対称とならない向きにされている、構成13に記載の電池監視システム。
[構成16]
前記各電池(21A~21D)及び前記収容部(55)の平面視において、前記親機側通信部が有するアンテナ部(43)を通ってかつ水平方向に延びる基準軸線(LP)に対して、前記各電池、前記電池制御装置及び前記収容部が線対称となる構成になっており、
前記基準軸線に対して一方側及び他方側のそれぞれに前記電池監視装置が配置されており、
前記基準軸線に対して一方側に配置された前記電池監視装置(30A,30C)の配置位置と、前記基準軸線に対して他方側に配置された前記電池監視装置(30B,30D)の配置位置とは、前記基準軸線に対して線対称とならない位置になっている、構成13に記載の電池監視システム。
【符号の説明】
【0174】
11…電池パック、21…電池ブロック、30…電池監視装置、40…電池制御装置、41…電池制御MCU、42…親機側無線IC、43…親機側アンテナ、44…親機側記憶部、55…収容部。