(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184089
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電池監視システム、電池監視装置、電池制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231221BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 25/00 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20231221BHJP
H01Q 13/08 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01Q1/22 Z
H01Q3/24
H01Q25/00
H01Q1/52
H01Q13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098018
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】本多 由宇人
(72)【発明者】
【氏名】松本 翔
(72)【発明者】
【氏名】熱田 隆
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大庭 弘貴
【テーマコード(参考)】
5H030
5J021
5J045
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5H030AA08
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF41
5J021CA03
5J021DB05
5J021EA04
5J045DA10
5J045FA01
5J045JA01
5J045LA03
5J046AA04
5J046UA02
5J047AA04
5J047BG06
5J047EF05
(57)【要約】
【課題】無線通信環境が変化したとしても、電池制御装置と電池監視装置との間で適正な無線通信を行うことができる電池監視システム、電池監視システムを構成する電池監視装置、及び電池監視システムを構成する電池制御装置を提供する。
【解決手段】筐体50の収容部に、各電池ブロック21、各電池監視装置30及び電池制御装置40が収容されている。各電池監視装置30の子機側アンテナは、電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されている。電池制御装置40の親機側アンテナと子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、子機側アンテナの電波指向性は、各電波指向性のうち、無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池(21,21A~21D,200)それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置(30,30A~30D)と、
電池制御装置(40)と、を備え、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が収容される電池監視システムにおいて、
前記電池制御装置は、前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側アンテナ(43)を有し、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側アンテナ(33)を有し、
前記各子機側アンテナにおける電波指向性、及び前記親機側アンテナにおける電波指向性のうち、少なくとも一方の電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される、電池監視システム。
【請求項2】
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合における前記電池制御装置又は前記電池監視装置の受信電力が閾値(Wmin)以上となる電波指向性に設定される、請求項1に記載の電池監視システム。
【請求項3】
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合における前記受信電力が最大となってかつ該受信電力が前記閾値以上となる電波指向性に設定される、請求項2に記載の電池監視システム。
【請求項4】
前記各電池監視装置は、
自身が有する前記子機側アンテナと前記親機側アンテナとの間の無線通信で使用可能な複数のチャネルのそれぞれと、前記各チャネルにおいて前記各電波指向性のうち前記無線通信が行われる場合における前記受信電力が前記閾値以上となる電波指向性とが紐づけられた指向性情報を記憶する子機側記憶部(34)を有し、
記憶された前記指向性情報に基づいて、自身が有する前記子機側アンテナの電波指向性を、前記無線通信で使用されるチャネルと紐付けられた電波指向性に設定する、請求項2に記載の電池監視システム。
【請求項5】
前記電池制御装置は、特定条件が成立したと判定したことを条件として、前記各電池監視装置が有する前記子機側アンテナから各電波指向性に対応する無線信号を送信させる指令を、前記親機側アンテナから前記各電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、自身が有する前記子機側アンテナにより前記指令を受信した場合、自身が有する前記子機側アンテナから前記電池制御装置に無線信号を送信し、
前記電池制御装置は
各電波指向性に対応した前記電池監視装置からの無線信号を前記親機側アンテナにより受信し、前記親機側アンテナが受信した無線信号のチャネル毎の受信電力を測定し、
測定した受信電力に基づいて前記指向性情報を生成し、生成した前記指向性情報を前記親機側アンテナから前記電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、自身が有する前記子機側アンテナにより受信した前記指向性情報を前記子機側記憶部に記憶させる、請求項4に記載の電池監視システム。
【請求項6】
前記電池制御装置は、
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で使用可能な複数のチャネルのそれぞれと、前記各チャネルにおいて前記各電波指向性のうち前記無線通信が行われる場合における前記受信電力が前記閾値以上となる電波指向性とが紐づけられた指向性情報を記憶する親機側記憶部(44)を有し、
記憶された前記指向性情報に基づいて、前記親機側アンテナの電波指向性を、前記無線通信で使用されるチャネルと紐付けられた電波指向性に設定する、請求項2に記載の電池監視システム。
【請求項7】
前記電池制御装置は、特定条件が成立したと判定したことを条件として、前記各電池監視装置が有する前記子機側アンテナから無線信号を送信させる指令を、前記親機側アンテナから前記各電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、自身が有する前記子機側アンテナにより前記指令を受信した場合、自身が有する前記子機側アンテナから前記電池制御装置に無線信号を送信し、
前記電池制御装置は
前記親機側アンテナの電波指向性を複数の電波指向性それぞれに設定した場合において、前記電池監視装置からの無線信号を前記親機側アンテナにより受信し、前記親機側アンテナが受信した無線信号のチャネル毎の受信電力を測定し、
測定した受信電力に基づいて前記指向性情報を生成し、生成した前記指向性情報を前記親機側記憶部に記憶させる、請求項6に記載の電池監視システム。
【請求項8】
前記特定条件は、前記電池監視システムの製造工程又は前記電池監視システムを構成する前記電池のリユース時において、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が収容された後、前記電池監視システムが最初に起動されたとの条件である、請求項5又は7に記載の電池監視システム。
【請求項9】
前記電池監視システムは、ユーザが搭乗可能な移動体(10)に搭載され、
前記特定条件は、前記移動体の移動距離又は前記移動体の移動時間のいずれかが判定値(Lth)を超えたとの条件である、請求項5又は7に記載の電池監視システム。
【請求項10】
前記特定条件は、前記収容部における前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置の配置状態が所定の配置状態からずれたとの条件である、請求項5又は7に記載の電池監視システム。
【請求項11】
前記電池監視システムは、ユーザが搭乗可能な移動体(10)に搭載され、
前記電池制御装置は、ユーザにより前記移動体の始動指示がなされていないとともに、前記移動体が停止状態にされていると判定し、かつ、前記特定条件が成立したと判定した場合、前記指令を前記親機側アンテナから前記各電池監視装置に送信する、請求項10に記載の電池監視システム。
【請求項12】
前記電池監視装置と通信可能に接続される検査装置(300)を備え、
前記特定条件は、前記電池監視装置により監視された前記電池の状態の履歴情報が前記検査装置から要求されたとの条件である、請求項5又は7に記載の電池監視システム。
【請求項13】
前記親機側アンテナ及び前記子機側アンテナのうち電波指向性が選択可能に構成されているアンテナは、
回路基板(61)と、
前記回路基板に設けられたアンテナ部材(67)と、
前記回路基板に設けられ、前記アンテナ部材に電気的に接続されるとともに前記アンテナ部材に給電する複数の給電線(68A~68D,74A~74D)と、
前記回路基板において、隣り合う前記給電線の間に設けられたグランドパターン(69A~69C,72,75)と、
を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池監視システム。
【請求項14】
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合の通信エラー率が閾値(Eth)以下となる電波指向性に設定される、請求項1に記載の電池監視システム。
【請求項15】
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合の前記電池制御装置の受信電力とノイズフロアとの差が閾値(Wth)以上となる電波指向性に設定される、請求項1に記載の電池監視システム。
【請求項16】
複数の電池(21,21A~21D,200)及び電池制御装置(40)を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに配置される電池監視装置(30,30A~30D)において、
前記電池監視装置は、前記各電池に対応して個別に設けられるとともに、前記電池の状態を監視し、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側アンテナ(33)を有し、
前記各子機側アンテナは、電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記電池制御装置が有する親機側アンテナ(43)と前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記子機側アンテナの電波指向性は、前記各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される、電池監視装置。
【請求項17】
複数の電池(21,21A~21D,200)それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置(30,30A~30D)を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに配置される電池制御装置(40)において、
前記電池制御装置は、前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側アンテナ(43)を有し、
前記親機側アンテナは、電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記親機側アンテナと前記電池監視装置が有する子機側アンテナ(33)との間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記親機側アンテナの電波指向性は、各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される、電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池監視システム、電池監視システムを構成する電池監視装置、及び電池監視システムを構成する電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電池それぞれに対応して個別に設けられるとともに電池の状態を監視する電池監視装置と、電池制御装置とを備える電池監視システムが知られている。電池制御装置は、電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側アンテナを有し、各電池監視装置は、電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側アンテナを有している。
【0003】
各電池、各電池監視装置及び電池制御装置は、収容部に収容される。収容部は、少なくとも一部が電波を反射するように構成されている。このため、電池監視装置が無線信号を送信すると、送信した無線信号が収容部の壁面において反射する。その結果、マルチパスが発生し、電池監視装置から電池制御装置に正確な情報を送信できなくなり得る。
【0004】
このような問題に対処すべく、特許文献1には、親機側アンテナ及び子機側アンテナのうち少なくとも一方が、所定の非指向方向に比べて所定の指向方向に強く電波を照射する指向性アンテナである構成が記載されている。指向性アンテナは、電池制御装置又は電池監視装置が設置される電池の面に対して垂直な方向よりも、電池制御装置又は電池監視装置が設置される電池の面に沿った方向に強く電波を照射する。これにより、指向性アンテナの電波指向性を、収容部における電池制御装置と電池監視装置との間の無線通信環境を良好にするものにでき、電池監視装置から電池制御装置に正確な情報を送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
収容部における電池制御装置と電池監視装置との間の無線通信環境は変化し得る。このため、ある無線通信環境において電池監視装置と電池制御装置との間で正確な情報を伝えることができたとしても、別の無線通信環境において正確な情報を伝えることができなくなり得る。
【0007】
本発明は、無線通信環境が変化したとしても、電池制御装置と電池監視装置との間で適正な無線通信を行うことができる電池監視システム、電池監視システムを構成する電池監視装置、及び電池監視システムを構成する電池制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の電池それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置と、
電池制御装置と、を備え、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部に、前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が収容される電池監視システムにおいて、
前記電池制御装置は、前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側アンテナを有し、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側アンテナを有し、
前記各子機側アンテナにおける電波指向性、及び前記親機側アンテナにおける電波指向性のうち、少なくとも一方の電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される。
【0009】
ある無線通信環境において電池監視装置と電池制御装置との間で正確な情報を伝えることができない場合であっても、アンテナの電波指向性の中心の向きを変えることにより、電池監視装置と電池制御装置との間で正確な情報を伝えることができるようになる。
【0010】
この点に鑑み、本発明では、各子機側アンテナにおける電波指向性、及び親機側アンテナにおける電波指向性のうち、少なくとも一方の電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されている。この構成を前提として、親機側アンテナと子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、各電波指向性のうち、無線送信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される。これにより、無線通信環境が変化したとしても、電池制御装置と電池監視装置との間で適正な無線通信を行うことができる。
【0011】
なお、前記チャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線送信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定されるとは、具体的には例えば、前記チャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合における前記電池制御装置又は前記電池監視装置の受電電力が閾値以上となる電波指向性に設定されることである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】筐体内における電池ブロック等の配置態様を示す斜視図。
【
図5】電池ブロックを構成する電池セルの配置態様を示す図。
【
図6】2つの電波指向性を切り替え可能な構成を示す図。
【
図7】電波指向性A,Bに対応する受信電力の周波数特性を示す図。
【
図9】主波、反射波及びそれらの合成波の推移を示すタイムチャート。
【
図10】受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとの対応関係を示す図。
【
図11】受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図12】電池監視装置により実行される電波指向性の切り替え処理の手順を示すフローチャート。
【
図13】指向性を変更可能なアンテナの一例を示す図。
【
図14】指向性を変更可能なアンテナの一例を示す図。
【
図15】指向性を変更可能なアンテナの一例を示す図。
【
図18】車載用途から定置用途への電池のリユース態様を示す図。
【
図19】車載用途における受信電力の周波数特性を示す図。
【
図20】定置用途における受信電力の周波数特性を示す図。
【
図21】定置用途において各チャネルの電波指向性を再設定した場合の受信電力の周波数特性を示す図。
【
図22】電波指向性を切り替える前の受信電力の周波数特性を示す図。
【
図23】電波指向性を切り替えた後の受信電力の周波数特性を示す図。
【
図24】異常発生時における電波指向性の切り替え処理の手順を示すフローチャート。
【
図25】第1実施形態の変形例に係る筐体内における電池ブロック等の配置態様を示す斜視図。
【
図26】第2実施形態に係る受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図27】電池制御装置により実行される電波指向性の切り替え処理の手順を示すフローチャート。
【
図28】第3実施形態に係る携帯端末及びサーバ等を備える検査システムの全体構成図。
【
図29】受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図30】第4実施形態に係る受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図32】第5実施形態に係る受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図33】第6実施形態に係る異常発生時の筐体内における電池ブロック等の配置態様を示す斜視図。
【
図34】受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図35】第7実施形態に係る各チャネル、通信エラー率及び電波指向性の関係を示す特性図。
【
図36】通信エラー率が最小となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図37】第8実施形態に係る各チャネルと、受信電力及びノイズフロアの差との関係を示す特性図。
【
図38】各チャネルと、受信電力及びノイズフロアの差との関係を示す特性図。
【
図39】受信電力及びノイズフロアの差が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理の手順を示すフローチャート。
【
図40】第9実施形態に係る車両のシャーシ内の収容空間における電池パックの配置態様を示す図。
【
図42】第10実施形態に係る電池パックの断面図。
【
図43】第11実施形態に係る電池パックの断面図。
【
図44】第12実施形態に係る車両のシャーシ内の収容空間における電池の配置態様を示す図。
【
図45】その他の実施形態に係る電池を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電池監視システムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。電池監視システムは、回転電機を走行動力源とする電気自動車又はハイブリッド自動車等の車両に搭載される。
【0015】
図1は、車両10の構成を概略的に示した図である。車両10は、電池パック11と、パワーコントロールユニット(以下、「PCU」という)12と、モータ13と、車両ECU14とを備えている。
【0016】
電池パック11は、車両10の駆動電源として車両10に搭載されている。電池パック11は、具体的には例えば、車両10のエンジンルーム、トランクルーム、座席下又は床下等に搭載されている。車両10は、電池パック11に蓄えられた電力を用いて走行する。
【0017】
電池パック11は、
図2に示すように、複数の電池セル22(具体的には二次単電池)の直列接続体を含む組電池20を備えている。組電池20は、モータ13を駆動するための電力を蓄えており、PCU12を通じてモータ13へ電力を供給することができる。また、組電池20は、車両10の制動時等におけるモータ13の回生発電時にPCU12を通じてモータ13の発電電力を受けて充電される。また、組電池20は、
図1に示すように、車両10の外部に設けられた外部充電器CMに接続可能である。外部充電器CMは、例えば定置式の設備である。組電池20は、外部充電器CMから充電される。
【0018】
PCU12は、車両ECU14からの制御信号に基づいて、電池パック11とモータ13との間で双方向の電力変換を実行する。PCU12は、例えば、モータ13を駆動するインバータと、インバータに供給される直流電圧を電池パック11の出力電圧以上に昇圧するコンバータとを含む。
【0019】
モータ13は、交流回転電機であり、例えば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータ13は、PCU12により駆動されて回転駆動力を発生し、モータ13が発生した駆動力は、車両10の駆動輪に伝達される。一方、車両10の制動時には、モータ13は、発電機として動作し、回生発電を行う。モータ13が発電した電力は、PCU12を通じて電池パック11に供給され、電池パック11内の組電池20に蓄えられる。
【0020】
車両ECU14は、CPU、ROM及びRAM、各種信号を入出力するための入出力ポート等を含む。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、車両ECU14の処理が記されている。車両ECU14の主要な処理の一例として、車両ECU14は、電池パック11から組電池20の電圧、電流、SOC(State Of Charge)及びSOH(State Of Health)等の情報を受け、PCU12を制御することにより、モータ13の駆動及び電池パック11の充放電を制御する。
【0021】
図2は、電池パック11の構成を模式的に示す図である。電池パック11は、組電池20と、複数の電池監視装置30と、電池制御装置40と、それらを収容する筐体50とを備え、本実施形態において電池監視システムに相当する。
【0022】
組電池20は、複数の電池ブロック21の直列接続体を備えている。電池ブロック21は、電池スタック又は電池モジュールと称される場合もある。各電池ブロック21は、複数の電池セル22を有する。各電池セル22は、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素二次電池等により構成されている。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池の他、固体の電解質を用いたいわゆる全固体電池も含み得る。なお、組電池20は、複数の電池ブロック21の直列接続体を複数備え、各直列接続体が並列接続されていてもよい。また、組電池20には、スイッチSW(例えばリレー)及び配線16を介してPCU12が接続されている。
【0023】
電池監視装置30は、サテライト・バッテリ・モジュール(SBM:Satellite Battery Module)とも呼ばれ、電池ブロック21毎に設けられている。
図2に示すように、各電池監視装置30は、監視部としての監視IC31と、無線制御部である子機側無線IC32と、無線アンテナである子機側アンテナ33とを備えている。子機側無線IC32及び子機側アンテナ33が、電池制御装置40と通信するための電池監視装置30の「子機側通信部」に相当する。監視IC31は、セル監視回路(CSC:Cell Supervising Circuit)とも呼ばれ、電池ブロック21を構成する各電池セル22又は図示しないセンサから、電池情報を取得する。電池情報は、例えば、各電池セル22の電圧情報、温度情報及び電流情報を含む。また、監視IC31は、自己診断し、自己診断情報を生成する。自己診断情報とは、例えば、電池監視装置30の動作確認に関する情報、つまり、電池監視装置30の異常や故障に関する情報などである。具体的には、電池監視装置30を構成する監視IC31や子機側無線IC32等の動作確認に関する情報である。
【0024】
子機側無線IC32は、監視IC31と有線で接続されており、無線MCU(Micro Control Unit)とRFデバイス(高周波デバイス・モジュール)とを有している。子機側無線IC32は、監視IC31から受け取ったデータを、子機側アンテナ33を介して無線にて送信する。また、子機側無線IC32は、子機側アンテナ33を介して受信したデータを監視IC31に送る。
【0025】
監視IC31は、子機側記憶部34を備えている。子機側記憶部34は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。監視IC31は、取得した電池情報及び自己診断情報を子機側記憶部34に記憶させる。
【0026】
電池制御装置40は、電池ECU又はBMU(Battery Management Unit)とも呼ばれる。電池制御装置40は、各電池監視装置30と無線通信可能に構成されている。詳しくは、電池制御装置40は、電池制御部としての電池制御MCU41と、無線制御部である親機側無線IC42と、無線アンテナである親機側アンテナ43とを備えている。親機側無線IC42及び親機側アンテナ43が、電池監視装置30と通信するための電池制御装置40の「親機側通信部」に相当する。電池制御MCU41は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイコンにより構成されている。電池制御MCU41のCPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、電池制御に関する処理が記されている。
【0027】
主要な処理の一例として、電池制御MCU41は、電池監視装置30に対して電池情報の取得及び送信を指示する。また、電池制御MCU41は、電池監視装置30から受け取った電池情報に基づいて、組電池20、電池ブロック21及び電池セル22の監視を行う。また、電池制御MCU41は、監視結果などに基づいて、組電池20とPCU12やモータ13との通電及び通電遮断状態を切り替えるスイッチSWを制御する。また、電池制御MCU41は、各電池セル22の電圧を均等化させる均等化信号を送信する場合もある。
【0028】
親機側無線IC42は、電池制御MCU41と有線で接続されており、子機側無線IC32と同様に、無線MCUとRFデバイスとを有している。親機側無線IC42は、電池制御MCU41から受け取ったデータを、親機側アンテナ43を介して無線にて送信する。また、親機側無線IC42は、親機側アンテナ43を介して受信したデータを電池制御MCU41に送る。なお、親機側アンテナ43及び子機側アンテナ33としては、例えば、ダイポールアンテナ、八木アンテナ、スロットアンテナ、逆Fアンテナ、逆Lアンテナ、チップアンテナ又は0次アンテナ(例えば0次共振アンテナ)を用いることができる。
【0029】
電池制御MCU41は、親機側記憶部44を備えている。親機側記憶部44は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
【0030】
組電池20、電池監視装置30、電池制御装置40、及びこれらを収容する筐体50を構成部品とする電池監視システムが構成されている。
【0031】
続いて、
図3及び
図4を用いて、筐体50及び筐体50内における電池ブロック21等の配置状態について説明する。
図4は、
図3の4-4線断面図である。
図4に示す一部の構成については、便宜上、断面を示すハッチングの図示が省略されている。
【0032】
筐体50は、底板部51と、底板部51の周縁部に沿って形成された壁部とを備えている。底板部51は、矩形形状をなしており、具体的には長方形状をなしている。壁部は、底板部51の短手方向に延びる一対の第1壁部52と、底板部51の長手方向に延びる一対の第2壁部53とを備えている。
【0033】
筐体50は、カバー54を備えている。カバー54は、第1壁部52及び第2壁部53を上方から覆っている。カバー54は、底板部51及び壁部からなるベース部に対して取り外し可能になっている。カバー54は、例えばボルト等の締結部材によりベース部に固定される。底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54それぞれの内面により収容部55が構成されている。収容部55は、電池ブロック21、電池監視装置30及び電池制御装置40を所定の配置状態で収容する一続きの空間を有している。
【0034】
本実施形態において、底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54は、電波を遮断又は吸収する電磁シールド効果を有する構成になっている。例えば、金属材料(例えばアルミニウム)で構成されることにより、電磁シールド効果を有する構成になる。
【0035】
本実施形態では、直方体形状をなす筐体50の長手方向が車両10の車長方向となるように、筐体50が車両10に搭載されている。
図3及び
図4等には、筐体50の長手方向(車両10の車長方向)をX方向とし、筐体50の短手方向(車両10の車幅方向)をY方向とし、筐体50の高さ方向をZ方向とすることが示されている。例えば、底板部51の下面が車両10の車体に対する設置面となる。
【0036】
各電池ブロック21は、直方体形状をなしており、複数の電池セル22の直列接続体として構成されている。本実施形態において、電池セル22は、扁平な直方体形状をなしている。複数の電池セル22は、
図5(A)に示すように、筐体50の短手方向に並べて積層されている。ちなみに、各電池ブロック21において、複数の電池セル22は、
図5(B)に示すように、筐体50の長手方向に並べて積層されていてもよい。また、各電池ブロック21を構成する複数の電池セル22は、互いに並列接続されていてもよい。
【0037】
各電池ブロック21は、
図3及び
図4に示すように、長手方向が筐体50の短手方向となるように底板部51に並べられている。本実施形態では、便宜上、電池ブロック21が筐体50に4つ収容されることとする。このため、電池監視装置30も、筐体50に4つ収容されている。以降、電池ブロック21を第1~第4電池ブロック21A~21Dと称し、電池監視装置30を第1~第4電池監視装置30A~30Dと称すことがある。なお、各電池ブロック21において、隣り合う電池セル22の正極端子及び負極端子は、バスバーにより電気的に接続されている。
【0038】
収容部55において、底板部51には、ジャンクションボックス15が配置されている。ジャンクションボックス15は、直方体形状をなしており、スイッチSWを収容する。ジャンクションボックス15は、長手方向が電池ブロック21の長手方向と平行になるように、第1電池ブロック21Aに並んで配置されている。ジャンクションボックス15の高さ寸法は、電池ブロック21の高さ寸法よりも小さい。
【0039】
ジャンクションボックス15の上面には、電池制御装置40が配置されている。各電池ブロック21の上面には、電池監視装置30が配置されている。収容部55において、電池制御装置40の配置位置は、各電池監視装置30の配置位置よりも低い位置になっている。
【0040】
本実施形態において、第1電池監視装置30Aは第1電池ブロック21Aを監視対象とし、第2電池監視装置30Bは第2電池ブロック21Bを監視対象とする。また、第3電池監視装置30Cは第3電池ブロック21Cを監視対象とし、第4電池監視装置30Dは第4電池ブロック21Dを監視対象とする。
【0041】
第1~第4電池監視装置30A~30Dは、自身に割り当てられた固有の識別情報を子機側記憶部34に記憶している。第1~第4電池監視装置30A~30Dは、電池情報を電池制御装置40に送信する場合、自身に割り当てられた識別情報を併せて送信する。これにより、電池制御装置40は、どの電池監視装置から送信された電池情報であるかを判別することができる。
【0042】
図6に示すように、各電池監視装置30の子機側アンテナ33は、電波指向性を、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性から選択できるように構成されている。本実施形態の子機側アンテナ33は、電波指向性を2つの電波指向性A,Bから選択できるように構成されている。この構成は、電池制御装置40に対して最適な電波指向性を各子機側アンテナ33において設定するための構成である。
【0043】
図7を用いて、電波指向性を切り替える理由について説明する。
図7には、第1電池監視装置30Aの子機側アンテナ33から電池制御装置40の親機側アンテナ43に無線信号を送信した場合における親機側アンテナ43による無線信号の受信電力を示す。
図7の横軸は、無線通信に用いられるチャネルを示し、チャネルが大きくなるほど周波数が高くなることを示す。1つのチャネルで規定される周波数範囲は、このチャネルの周波数中央値fcと、チャネル幅Δfとで規定される「fc-Δf/2」~「fc+Δf/2」の範囲である。隣接する2つのチャネルのうち、低周波側チャネルの周波数範囲の高周波側と、高周波数側チャネルの周波数範囲の低周波側とは重複し得る。
【0044】
また、
図7に示す受信電力下限値Wminは、電池監視装置30と電池制御装置40との間で正確な情報を伝えることができる受信電力の下限を示す閾値である。親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回る場合、電池監視装置30と電池制御装置40との間で正確な情報を伝えることができなくなる。
【0045】
子機側アンテナ33の電波指向性として電波指向性Aが選択された場合、使用可能な最小チャネル(0ch)から最大チャネル(Nch)までの各チャネルのうち、親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回るチャネルが存在する。以下、この理由について説明する。
【0046】
図8に示すように、金属壁からなる筐体内に送信アンテナAT及び受信アンテナARが配置される場合において、送信アンテナATから無線信号が送信されたとき、送信された信号は、筐体内において乱反射する。その結果、送信アンテナATから送信されてかつ反射しない信号である主波と、送信アンテナATから送信された後に反射した信号である反射波とが干渉し、
図9に示すように、干渉後の信号の振幅が過度に小さくなる。これにより、親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回るチャネルが存在するようになる。
図9に示す例では、反射波と主波の位相差が180度付近となり、受信アンテナARの受信電力が過度に低下している。
【0047】
一方、
図7に示すように、子機側アンテナ33の電波指向性が電波指向性Aから電波指向性Bに切り替えられると、親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回っていたチャネルにおいて、親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wmin以上になる。また、電波指向性Bに切り替えられると、親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回るチャネルが、電波指向性Aが選択された場合のチャネルとは別のチャネルになる。
【0048】
このように、あるチャネルにおいて電池監視装置30と電池制御装置40との間で正確な情報を伝えることができない場合であっても、アンテナの電波指向性を変えることにより、受信電力を受信電力下限値Wmin以上にでき、電池監視装置30と電池制御装置40との間で正確な情報を伝えることができるようになる。
【0049】
そこで、本実施形態では、電池パック11の製造工程において、電波指向性A,Bそれぞれについて、各電池監視装置30から無線送信した場合における電池制御装置40の受信電力(例えばRSSI)の周波数特性が測定される。そして、測定された周波数特性に基づいて、
図10に示すように、各子機側アンテナ33の電波指向性A,Bのうち、無線通信が行われる場合における親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性がどちらであるかが各チャネルにおいて特定される。
【0050】
図11は、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池パック11の製造工程において、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。
【0051】
ステップS10では、各電池監視装置30A~30Dのうちいずれか1つの電池監視装置において、監視IC31は、電波指向性Aを選択した場合の無線信号を子機側記憶部34から送信する。ここでは、第1電池監視装置30Aが選択されるとする。無線信号には、送信元の電池監視装置30の識別情報が含まれている。
【0052】
ステップS11では、送信された無線信号が親機側アンテナ43により受信される。電池制御装置40の電池制御MCU41は、受信信号に基づいて、各チャネルと紐付けた親機側アンテナ43の受信電力の情報である受信電力の周波数特性を算出する。ステップS12では、電池制御MCU41は、算出した周波数特性、電波指向性A、及び無線信号の送信元となる第1電池監視装置30Aの識別情報を紐付ける。
【0053】
ステップS13では、電池制御MCU41は、第1電池監視装置30Aについて、電波指向性A,Bに対応する受信電力の測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS14に進み、第1電池監視装置30Aの子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性Aから電波指向性Bに切り替えさせる。その後、ステップS10~S12の処理により、算出した周波数特性、電波指向性B、及び第1電池監視装置30Aの識別情報が紐付けられる。
【0054】
電池制御MCU41は、ステップS13において完了したと判定した場合、ステップS15に進み、全ての電池監視装置30A~30Dについて電波指向性A,Bに対応する受信電力の測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS16に進み、無線信号の送信元となる電池監視装置を、第1電池監視装置30Aから第2電池監視装置30Bに切り替えさせる。その後、ステップS10~S16の処理により、第2~第4電池監視装置30B~30Dそれぞれについて、算出した周波数特性、電波指向性及び識別情報が紐付けられる。
【0055】
ステップS17では、電池制御MCU41は、ステップS10~S16の処理により得られた紐付け情報に基づいて、各チャネルと、各チャネルにおいて親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と、電池監視装置30の識別情報とを紐付けたマップ情報(「指向性情報」に相当)を生成する。第1電池監視装置30Aを例に説明すると、マップ情報には、第1電池監視装置30Aと無線通信する場合に使用可能な各チャネルにおいて、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる場合における第1電池監視装置30Aの子機側アンテナ33の電波指向性が電波指向性A又は電波指向性Bであるとの情報が含まれる。例えば、周波数中央値が2.40GHzであるチャネルにおいて受信電力が最大となる電波指向性が電波指向性Bであるとの情報、及び周波数中央値が2.42GHzであるチャネルにおいて受信電力が最大となる電波指向性が電波指向性Aであるとの情報がマップ情報に含まれる。
【0056】
電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側記憶部44に記憶させる。
【0057】
ステップS18では、電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側アンテナ43から第1~第4電池監視装置30A~30Dに送信する。この場合、マップ情報の送信に使用されるチャネルにおいて、各子機側アンテナ33の電波指向性が、マップ情報に規定された電波指向性に設定されればよい。
【0058】
ステップS19では、各電池監視装置30A~30Dにおいて、監視IC31は、子機側アンテナ33により受信したマップ情報を子機側記憶部34に記憶させる。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、受信電力が最大となる電波指向性、つまり、通信品質が最高となる電波指向性を特定できる。また、電池パック11を製造工場から出荷した後において、例えば、マップ情報の生成を頻繁に実施する必要がなくなる。
【0060】
なお、子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性A,Bのいずれに設定した場合であっても、各チャネルのうち、親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回るチャネルがあり得る。この場合、受信電力が受信電力下限値Wminを下回るチャネルを無線通信で使用禁止にするとの情報が上記マップ情報に含まれていてもよい。
【0061】
なお、マップ情報は、電池パック11の製造工程ではなく、電池パック11の設計時において予め生成されていてもよい。この場合、電池パック11の製造工程において、生産ラインに設けられた書込装置により、予め生成されたマップ情報を親機側記憶部44及び子機側記憶部34に記憶させてもよい。このマップ情報を生成するための受信電力は、例えば以下のように測定されればよい。
【0062】
外部の測定装置が、電池制御装置40(具体的には例えば親機側アンテナ43)と、電池監視装置30(具体的には例えば子機側アンテナ33)とに電気的に接続される。この接続状態において、測定装置により、各電池監視装置30から個別に無線信号が出力された場合における親機側アンテナ43の受信電力の周波数特性が算出される。詳しくは、測定装置は、子機側アンテナ33から親機側アンテナ43に電波を伝播させた場合における損失電力(例えば通過特性)を測定する。測定装置は、測定した損失電力に、子機側アンテナ33からの送信電力と、親機側無線IC42、親機側アンテナ43、子機側無線IC32及び子機側アンテナ33等における損失電力とを加えることにより、親機側記憶部44の受信電力の周波数特性を算出する。
【0063】
各電池監視装置30は、電池制御装置40と無線通信を行うに先立ち、自身が有する子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性A,Bのいずれかに設定するかをマップ情報に基づいて決定する。電池監視装置30と電池制御装置40との間の無線通信で使用されるチャネルは、各電池監視装置30A~30Dで個別に設定されてもよいし、共通のチャネルに設定されてもよい。
【0064】
図12を用いて、各電池監視装置30の監視IC31により実行される電波指向性の切り替え処理について説明する。
【0065】
ステップS20では、子機側記憶部34からマップ情報を読み出す。
【0066】
ステップS21では、読み出したマップ情報を参照して、電池制御装置40との無線通信で使用するチャネルにおける電波指向性として、電波指向性A,Bのいずれかを選択する。
【0067】
ステップS22では、子機側アンテナ33の電波指向性を、無線通信で使用されるチャネルと紐付けられた電波指向性、つまり、ステップS21で選択した電波指向性に切り替える。
【0068】
続いて、
図13~
図15を用いて、電波指向性の中心の向きを変更可能な子機側アンテナの例を3つ説明する。
【0069】
図13に、1つ目の子機側アンテナ33を示す。1つ目の例は、電波指向性の中心の向きが異なる複数種のアンテナ部材を備え、使用するアンテナ部材を切り替える構成である。
【0070】
子機側アンテナ33は、回路基板61と、回路基板61の板面に設けられたベースバンドIC62と、切り替えスイッチ63と、複数種のアンテナ部材と、複数種のアンテナ部材及び切り替えスイッチ63を電気的に接続する給電線とを備えている。
図13には、アンテナ部材として、第1アンテナ部材64A及び第2アンテナ部材64Bが示されており、給電線として、第1給電線65A及び第2給電線65Bが示されている。
【0071】
ベースバンドIC62は、子機側無線IC32を介して監視IC31と通信する。ベースバンドIC62は、切り替えスイッチ63により、第1給電線65A又は第2給電線65Bに接続される。
図13(A)に示すように、ベースバンドIC62と第1給電線65Aとが切り替えスイッチ63により接続されると、第1アンテナ部材64Aが使用される。この場合、電波指向性は電波指向性Aとなる。一方、
図13(B)に示すように、ベースバンドIC62と第2給電線65Bとが切り替えスイッチ63により接続されると、第2アンテナ部材64Bが使用される。この場合、電波指向性は電波指向性Bとなる。
【0072】
図14に、2つ目の子機側アンテナ33を示す。2つ目の例は、各給電線にベースバンドIC62が個別に接続され、動作させるベースバンドIC62を切り替える構成である。
【0073】
子機側アンテナ33は、回路基板61と、回路基板61の板面に設けられた複数のベースバンドIC62と、切り替えスイッチ63と、複数種のアンテナ部材と、複数種のアンテナ部材及びベースバンドIC62を電気的に接続する給電線とを備えている。
図14には、アンテナ部材として、第1アンテナ部材64A及び第2アンテナ部材64Bが示されており、給電線として、第1給電線66A及び第2給電線66Bが示されている。
【0074】
図15に、3つ目の子機側アンテナ33を示す。3つ目の例は、アンテナ部材に対する給電箇所を変更することにより、電波指向性を変更する構成である。
【0075】
子機側アンテナ33は、回路基板61と、ベースバンドIC62と、切り替えスイッチ63と、アンテナ部材67と、第1~第4給電線68A~68Dとを備えている。アンテナ部材67と、第1~第4給電線68A~68Dとは、回路基板61の板面に設けられている。アンテナ部材67は、0次共振アンテナであり、例えばパッチアンテナである。
【0076】
図15に示す構成では、電波指向性を4通りに変更可能であるが、そのうち2通りについて説明する。
図15(A)に示すように、ベースバンドIC62と第1給電線68Aとが切り替えスイッチ63により接続されると、アンテナ部材67における電波指向性は電波指向性Aとなる。一方、
図15(B)に示すように、ベースバンドIC62と第4給電線68Dとが切り替えスイッチ63により接続されると、アンテナ部材67における電波指向性は電波指向性Bとなる。
【0077】
ここで、各給電線68A~68Dは、回路基板61の板面において並行するように設けられている。回路基板61の板面において、各給電線68A~68Dのうち隣り合う給電線の間には、ハッチングにて示す導電性のグランドパターンが設けられている。グランドパターンは、例えば、ベースバンドIC62のグランドとなる。
図15に示す例では、第1給電線68Aと第2給電線68Bとの間に第1グランドパターン69Aが設けられ、第2給電線68Bと第3給電線68Cとの間に第2グランドパターン69Bが設けられ、第3給電線68Cと第4給電線68Dとの間に第3グランドパターン69Cが設けられている。
【0078】
グランドパターンは、子機側アンテナ33の電波指向性を目標とする電波指向性にするために設けられている。
図16に示す比較例では、グランドパターンが設けられていない。この場合において、第1給電線68Aに電流が流れる状況を例にして説明する。第1給電線68Aと第2給電線68Bとの間に容量結合が発生する。この場合、第1給電線68Aに流れる電流の一部が第2給電線68Bに流れる。その結果、子機側アンテナ33の実際の電波指向性が、目標とする電波指向性からずれてしまう。
【0079】
これに対し、
図15に示すグランドパターンが設けられる構成によれば、隣り合う給電線間の容量結合の発生を抑制できる。その結果、電波指向性が目標とする電波指向性からずれる事態の発生を抑制できる。
【0080】
ちなみに、0次共振アンテナに接続される給電線は、多層基板において異なる層に設けられていてもよい。
図17に示す多層基板70は、一対の表層である第1層71A及び第2層71Bと、一対の表層に挟まれた中間層71Cとを備えている。第1層71Aには、
図15の第1給電線68Aに対応する第1給電線74Aと、第3給電線68Cに対応する第3給電線74Cとが設けられている。第2層71Bと中間層71Cとの間には、第2給電線68Bに対応する第2給電線74Bと、第4給電線68Dに対応する第4給電線74Dとが設けられている。第2層71Bと中間層71Cとの間のうち、第2給電線74B及び第4給電線74D以外には、電気的絶縁性を有する絶縁層73が設けられている。
【0081】
第1層71Aにおいて、第1給電線74Aと第3給電線74Cとの間には、グランドパターン75が設けられている。また、第1層71Aと中間層71Cとの間には、導電性のグランドパターン72が設けられている。この構成においても、電波指向性のずれを抑制することができる。
【0082】
続いて、電波指向性を切り替え可能な構成のメリットについて、2つの例を用いて説明する
1つ目の例は、電池パック11を構成する電池ブロック21のリユース時についての例である。本実施形態の電池パック11は、車両10に搭載されている。電池パック11を構成する電池ブロック21は、車載用途に使用された後、別の用途でリユースされ得る。
図18に示す例では、車載用途から定置式設備の用途にリユースされる。定置式設備の電池パック80を構成する筐体81において、各電池ブロック21、各電池監視装置30、電池制御装置40及びジャンクションボックス15の配置状態は、車載用途の配置状態とは異なる。また、定置式設備の用途の筐体81の形状は、車載用途の筐体50の形状とは異なる。
【0083】
図19に、車載用途で電池パック11が用いられる場合において、
図11の処理により生成されたマップ情報に基づく受信電力の周波数特性を示す。
図19に示す例では、各チャネルにおいて受信電力が最大となる電波指向性が紐付けられている。
【0084】
一方、
図20に、定置式設備の用途にリユースされた電池ブロック21を備える電池パック80が用いられる場合において、車載用途で用いられたマップ情報に基づいて各チャネルの電波指向性を設定したときの周波数特性を示す。車載用途の場合は各チャネルにおいて受信電力が受信電力下限値Wmin以上になっていたとしても、用途が変わって筐体81の形状や筐体81内における配置状態が変わると、筐体81内における子機側アンテナ33と親機側アンテナ43との間の電波伝播経路が大きく変化し、受信電力が受信電力下限値Wminを下回るチャネルが存在するようになる。このように、電池がリユースされる場合、筐体内における電波伝播経路、アンテナの配置及びアンテナの電波指向性の少なくとも1つが最適化されない状態になり、通信品質が低下する。その結果、リユース時において例えばアンテナの取り換えが必要になる。
【0085】
ここで、リユースされて用途が変わった場合であっても、
図11の処理を実行することにより、
図21に示すように、各チャネルにおいて、親機側アンテナ43の受信電力を受信電力下限値Wmin以上にできる電波指向性を設定することができる。リユース先の筐体81に、リユースされる各電池ブロック21、各電池ブロック21に設けられた電池監視装置30及び電池制御装置40等が詰め込まれて電池パック80が製造された後、電池パック80の電池制御装置40が最初に起動される場合に、
図11の処理が実行されればよい。
【0086】
このように、本実施形態によれば、リユース先の筐体形状や筐体内における収容部品の配置状態に依存することなく、また、リユース時に子機側アンテナや親機側アンテナを取り換えることなく、電池制御装置40と電池監視装置30との間で正確な情報を無線通信によりやり取りできる。
【0087】
2つ目の例は、電池パック11の出荷後、その電池パック11が車両10に搭載されている場合の例である。電池監視装置30等、電池パック11の構成部品が故障し得る。また、車両10の乗員が車内で使用する携帯端末からの電波等がノイズとなり、車両10が置かれる通信環境が変化し得る。この場合、
図22に示すように、各チャネルのうち、一部のチャネルが使用不可能になり、使用可能なチャネルにおいて受信電力が受信電力下限値Wminを下回る場合があり得る。この場合であっても、子機側アンテナ33の電波指向性を切り替えることにより、
図23に示すように、使用可能なチャネルにおいて受信電力を受信電力下限値Wmin以上にできる。
【0088】
図24は、2つ目の例に対応する電波指向性の切り替え処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、電池制御MCU41により実行される。
【0089】
ステップS30では、各電池監視装置30との無線通信で使用する各チャネルのうち、使用不可能なチャネルがあるか否かを判定する。
【0090】
ステップS30において使用不可能なチャネルがあると判定した場合には、ステップS31に進み、使用可能チャネルにおいて親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wminを下回っているか否かを判定する。
【0091】
ステップS31において受信電力が受信電力下限値Wmin以上であると判定した場合、又はステップS30において使用不可能なチャネルがないと判定した場合には、ステップS32に進み、電池制御装置40と各電池監視装置30との間の無線通信を許可する。
【0092】
一方、ステップS31において受信電力が受信電力下限値Wminを下回っていると判定した場合には、ステップS33に進み、電波指向性を切り替える。例えば、現在の電波指向性が電波指向性Aに設定されている場合、電波指向性Bに切り替える。
【0093】
ステップS34では、電波指向性の切り替え後において、電池監視装置30から送信された無線信号を親機側アンテナ43により受信し、受信電力を測定する。そして、受信電力に基づいて、使用可能なチャネルにおいて親機側アンテナ43の受信電力が受信電力下限値Wmin以上になっているか否かを判定する。
【0094】
ステップS34において受信電力が受信電力下限値Wmin以上になっていると判定した場合には、ステップS32に進む。一方、ステップS34において受信電力が受信電力下限値Wminを下回っていると判定した場合には、ステップS35に進み、無線通信が不可能であると判定する。そして、上位の制御装置に異常が発生した旨を通知する。
【0095】
このように、本実施形態によれば、例えば無線通信環境が悪化した場合であっても、無線通信のロバスト性を高めることができる。
【0096】
<第1実施形態の変形例>
・筐体50の収容部55における電池制御装置40及び各電池監視装置30の配置態様としては、
図3及び
図4に示した態様に限らない。例えば、
図25に示すように、電池ブロック21の上面に電池制御装置40が取り付けられ、電池ブロック21の各側面に電池監視装置が取り付けられてもよい。なお、
図25では、電池ブロック21等を
図3よりも簡略化して図示している。
【0097】
・底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54のうち、一部の構成が電磁シールド効果を有さない構成になっていてもよい。例えば、合成樹脂で構成されることにより、電磁シールド効果を有さない構成になる。
【0098】
・子機側アンテナは、電波指向性の中心の向きが異なる3つ以上の電波指向性の中から選択可能に構成されていてもよい。この場合、親機側アンテナと子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、各電波指向性のうち、無線送信が行われる場合における親機側アンテナ43の受信電力が最小となる電波指向性以外の電波指向性に設定されていればよい。また、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性に限らず、受信電力が最小及び最大となる電波指向性以外の電波指向性に設定されていてもよい。また、あるチャネルにおいて、受信電力が受信電力下限値Wmin以上となる電波指向性が複数存在する場合、そのチャネルにおいて使用可能な電波指向性を複数設定するようなマップ情報を生成してもよい。
【0099】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、子機側アンテナ33に代えて、電池制御装置40が備える親機側アンテナ43が電波指向性を変更可能な構成になっている。これにより、各電池監視装置30に対して最適な親機側アンテナ43の電波指向性を設定する。本実施形態では、
図13~
図15等に示した構成により、親機側アンテナ43は、電波指向性を電波指向性A,Bのいずれかに切り替えることができるように構成されている。
【0100】
図26は、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池パック11の製造工程において、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。
【0101】
ステップS40では、各電池監視装置30A~30Dにおいて、監視IC31は、無線信号を子機側記憶部34から送信する。無線信号には、送信元の電池監視装置30の識別情報が含まれている。各電池監視装置30A~30Dの無線信号の送信期間は、例えば、重複しないように設定されている。
【0102】
ステップS41では、送信された無線信号が、電波指向性Aに設定された親機側アンテナ43により受信される。電池制御MCU41は、受信信号に基づいて、各電池監視装置30A~30Dについて、親機側アンテナ43の受信電力の周波数特性を算出する。ステップS42では、電池制御MCU41は、算出した各電池監視装置30A~30Dに対応する受信電力の周波数特性と、電波指向性Aとを紐付ける。
【0103】
ステップS43では、電池制御MCU41は、親機側の電波指向性A,Bに対応する受信電力の測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS44に進み、親機側アンテナ43の電波指向性を電波指向性Aから電波指向性Bに切り替える。その後、ステップS40~S42の処理により、算出した各電池監視装置30A~30Dに対応する受信電力の周波数特性と、電波指向性Bとが紐付けられる。
【0104】
電池制御MCU41は、ステップS43において完了したと判定した場合、ステップS45に進み、ステップS40~S44の処理により得られた紐付け情報に基づいて、各チャネルと、各チャネルにおいて親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性とを紐付けたマップ情報(「指向性情報」に相当)を生成する。電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側記憶部44に記憶させる。
【0105】
なお、マップ情報は、電池パック11の製造工程ではなく、電池パック11の設計時において予め生成されていてもよい。この場合、電池パック11の製造工程において、生産ラインに設けられた書込装置により、予め生成されたマップ情報を親機側記憶部44に記憶させてもよい。
【0106】
図27を用いて、電池制御装置40の電池制御MCU41により実行される電波指向性の切り替え処理について説明する。
【0107】
ステップS50では、親機側記憶部44からマップ情報を読み出す。ステップS51では、読み出したマップ情報を参照して、電池制御装置40との無線通信で使用するチャネルにおける電波指向性として、電波指向性A,Bのいずれかを選択する。
【0108】
ステップS52では、親機側アンテナ43の電波指向性を、無線通信で使用されるチャネルと紐付けられた電波指向性、つまり、ステップS51で選択した電波指向性に切り替える。
【0109】
以上説明した本実施形態によっても、電池制御装置40と各電池監視装置30との間で適正な無線通信を行うことができる。
【0110】
<第2実施形態の変形例>
・親機側アンテナ43の受信電力に代えて、子機側アンテナ33の受信電力に基づいて、各チャネルと、各チャネルにおいて子機側アンテナ33の受信電力が最大となる電波指向性とを紐付けたマップ情報が生成されてもよい。このマップ情報は、各電池監視装置30(各子機側アンテナ33)に紐付けて個別に生成される。マップ情報の生成方法について説明すると、電池制御装置40は、電波指向性Aに設定した親機側アンテナ43から各子機側アンテナ33に無線信号を送信する。各電池監視装置30A~30Dにおいて、監視IC31は、子機側アンテナ33の受信信号に基づいて、子機側アンテナ33の受信電力の周波数特性を算出し、算出した受信電力の周波数特性と、電波指向性Aとを紐付ける。各電池監視装置30A~30Dにおいて、監視IC31は、周波数特性及び電波指向性Aを紐付けた情報を子機側アンテナ33から親機側アンテナ43に送信する。電池制御MCU41は、紐付けた情報を親機側アンテナ43により受信する。続いて、電池制御装置40は、電波指向性Bに設定した親機側アンテナ43から各子機側アンテナ33に無線信号を送信する。そして、電波指向性Aの場合と同様に、電池制御MCU41は、周波数特性及び電波指向性Bを紐付けた情報を親機側アンテナ43により受信する。電池制御MCU41は、紐付け情報に基づいて、各チャネルと、各チャネルにおいて子機側アンテナ33の受信電力が最大となる電波指向性とを紐付けたマップ情報を生成する。ちなみに、周波数特性の算出、及び周波数特性と電波指向性との紐付けは、電池監視装置30(監視IC31)ではなく、電池制御装置40(電池制御MCU41)において行われてもよい。
【0111】
・親機側アンテナは、電波指向性の中心の向きが異なる3つ以上の電波指向性の中から選択可能に構成されていてもよい。この場合、親機側アンテナと子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、各電波指向性のうち、無線送信が行われる場合における親機側アンテナ43又は子機側アンテナ33の受信電力が最小となる電波指向性以外の電波指向性に設定されていればよい。また、親機側アンテナ43又は子機側アンテナ33の受信電力が最大となる電波指向性に限らず、受信電力が最小及び最大となる電波指向性以外の電波指向性に設定されていてもよい。また、あるチャネルにおいて、受信電力が受信電力下限値Wmin以上となる電波指向性が複数存在する場合、そのチャネルにおいて使用可能な電波指向性を複数設定するようなマップ情報を生成してもよい。
【0112】
・親機側アンテナに加えて、第1実施形態のように各子機側アンテナの電波指向性が変更可能な構成になっていてもよい。
【0113】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図18に例示したように、リユース品としての電池パック80の製造時において、各子機側アンテナ33の最適な電波指向性を特定するとともに、リユース品である各電池ブロック21の電池状態履歴情報を読み出し可能になっている。
【0114】
図28には、電池監視システムと、そのシステムに適用される携帯端末300(「検査装置」に相当)と、外部のサーバ310とを示す。なお、
図28において、先の
図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0115】
携帯端末300は、電池ブロック21をリユース品として用いることができるか否か等を判断するための機器であり、作業者により用いられる。携帯端末300は、制御部301、無線IC302、アンテナ303、操作部304、表示部305及び記憶部306を備えている。
【0116】
制御部301は、マイコンを主体として構成され、各種処理を行う。無線IC302は、制御部301と有線で接続されており、無線MCUとRFデバイスとを有している。無線IC302は、制御部301から受け取ったデータを、アンテナ303を介して無線にて送信する。また、無線IC302は、アンテナ303を介して受信したデータを制御部301に送る。記憶部306は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
【0117】
操作部304は、作業者により操作され、制御部301と有線で接続されている。操作部304は、例えば、タッチパネルや、タッチディスプレイ、キーボード等のハードウェアキー、マウス等のポインティングデバイスである。
【0118】
表示部305は、制御部301と有線で接続されており、制御部301で処理された処理結果を出力する装置である。表示部305は、例えば、タッチパネルや、タッチディスプレイである。表示部305には、例えば、電池ブロック21に取り付けられた電池監視装置30から無線送信された電池状態の履歴情報が表示される。
【0119】
サーバ310は、制御部311、通信部312及び記憶部313を備えている。制御部311は、制御部311はマイコンを主体として構成され、各種処理を行う。通信部312は、制御部311と有線で接続されている。通信部312は、通信ネットワーク320を介して携帯端末300や電池監視装置30と通信可能である。通信ネットワーク320は、有線ネットワーク及び無線ネットワークの少なくとも一方である。記憶部313は、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。
【0120】
図29は、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、リユース品としての電池パック80の製造工程において、携帯端末300、電池制御MCU41、及び各電池監視装置30の監視IC31により実行される。この処理は、電池制御装置40と携帯端末300とが通信(無線通信又は有線通信)可能に接続されたことを条件に実行される。なお、
図29において、先の
図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0121】
ステップS60では、電池制御MCU41は、携帯端末300から電池状態の履歴情報の送信要求があるか否かを判定する。履歴情報の要求は、作業者が携帯端末300と電池制御MCU41との通信(有線又は無線)可能に接続し、操作部304を操作することにより携帯端末300から電池制御装置40に送信される。電池制御MCU41は、送信要求があると判定した場合、ステップS61に進み、親機側記憶部44に記憶された電池状態の履歴情報を携帯端末300に送信する。履歴情報は、以下の(1)~(6)の少なくとも1つを含む。(1)~(5)の情報は、電池ブロック21の状態の経時的な変化を示す情報であり、(6)の情報は、電池ブロック21の使用履歴に依存しない情報である。
【0122】
(1)電池ブロックの経時的な温度変化を示す温度履歴情報
(2)電池ブロックの経時的な電圧変化を示す電圧履歴情報
(3)電池ブロックの経時的な電流変化を示す電流履歴情報
(4)電池ブロックの健全性を判断するための情報であり、電池ブロックのSOC、SOH、残存電力量、自己放電率の推移情報及び内部抵抗の少なくとも1つ
(5)電池ブロックの期待寿命を決定するための情報であり、電池ブロックの製造日、使用開始日、エネルギー処理能力及び容量処理能力の少なくとも1つ
(6)電池ブロックを上市する経済事業者に関する情報であり、電池ブロックの製造者、電池ブロックの型式、製造場所、製造年月日、定格容量、最小電圧、公称電圧、最大電圧及び使用温度範囲の少なくとも1つ
【0123】
これにより、携帯端末300の表示部305に電池状態の履歴情報が表示される。作業者は、この表示情報に基づいて、電池ブロック21の状態を把握することができる。
【0124】
なお、ステップS61の処理の完了後、ステップS10~S19の処理が実行される。これにより、リユース品である電池パック80において、各子機側アンテナ33の最適な電波指向性を特定したマップ情報が生成される。
【0125】
以上説明した本実施形態によれば、リユース品としての電池パック80の製造時において、各子機側アンテナ33の最適な電波指向性を特定できるとともに、リユース品である各電池ブロック21の状態を把握することができる。
【0126】
<第3実施形態の変形例>
上記(1)~(6)の全ての情報又は一部の履歴情報が、サーバ310の記憶部313に記憶されてもよい。サーバ310には、電池監視装置30から通信ネットワーク320を介してサーバ310に定期的に履歴情報が送信されることにより、サーバ310の記憶部313の履歴情報が定期的にアップデートされればよい。携帯端末300は、上記(1)~(6)の全ての情報又は一部の情報を通信部312、通信ネットワーク320及び無線IC302を介してサーバ310から受信してもよい。
【0127】
電池ブロック21のリユース時において、サーバ310から携帯端末300へと情報送信することにより、リユース品である各電池ブロック21の状態を把握することができる。サーバ310においてブロックチェーン等のデータ改ざん防止対策がなされている場合、信頼性の高い履歴情報を取得することができる。
【0128】
ちなみに、サーバ310の記憶部313に記憶させる履歴情報は、例えば、上記(6)の情報等、更新頻度が低い情報が望ましい。
【0129】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。電波指向性の設定処理は、電池パック11の製造工程に限らず、車両10がユーザの手に渡った後においても実行できる。本実施形態では、車両10が駐車状態である場合又は組電池20が外部充電器CMにより充電されている場合に電波指向性の設定処理の実行が許可される。
【0130】
図30は、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。なお、
図30において、先の
図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0131】
ステップS70では、電池制御MCU41は、車両10が駐車状態であるとの第1条件、又は駐車中の車両10に搭載された組電池20が外部充電器CMにより充電されているとの第2条件のいずれかが成立したか否かを判定する。ステップS70の処理は、親機側アンテナ43の受信電力の測定精度を高めるための処理である。
【0132】
車両10の走行に伴い発生する振動等に起因して、親機側アンテナ43が受信する無線信号の周波数特性が変化し得る。この場合、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の精度が低下したり、マップ情報の生成に要する時間が長くなったりする懸念がある。このため、受信電力の測定は、振動等が発生しない状況で実行されるのが望ましい。そこで、第1条件が設定されている。なお、例えば、車両10の走行を許可又は始動を指示するスイッチであって、ユーザにより操作されるスタートスイッチ又はイグニッションスイッチがオフされていると判定した場合、第1条件が成立していると判定すればよい。
【0133】
組電池20が外部充電器CMにより充電されている場合も、車両10が停車状態であり、振動等が発生しない状況である。この点に鑑み、第2条件が設定されている。
【0134】
電池制御MCU41は、第1条件又は第2条件のいずれも成立していないと判定した場合、マップ情報の生成処理を実行しない。一方、電池制御MCU41は、第1条件又は第2条件のいずれかが成立していると判定した場合、ステップS71に進み、特定条件が成立したか否かを判定する。特定条件は、筐体50内における親機側アンテナ43と各子機側アンテナ33との間の電波伝播経路が、電池パック11の製造工程において
図11の処理により受信電力が測定された状況における電波伝播経路から大きく変化したか否かを判定するための条件である。特定条件は、例えば
図31の(A)~(C)の条件とすることができる。
【0135】
(A)車両10の走行距離(例えば積算走行距離)が判定距離Lthを超えたとの条件。走行距離が長くなると、筐体50のベース部にカバー54を固定するためのボルトの緩み等が発生し、収容部55の空間が変化し得る。この場合、電波伝播経路が大きく変化し、親機側アンテナ43の受信電力の周波数特性が大きく変化し得る。なお、定期的にマップ情報生成処理を実行するために、走行距離が判定距離Lthを超えるたびに、判定距離Lthを段階的に増加させればよい。また、走行距離に代えて、走行時間(積算走行時間)が用いられてもよい。
【0136】
(B)電池ブロック21の温度が判定温度を超えたとの条件。電池ブロック21が高温になると、筐体50等の熱膨張に起因して、電波伝播経路が大きく変化し得る。なお、判定温度は、電池パック11の製造工程において受信電力が測定された状況における電池ブロック21の温度よりも高い値に設定される。
【0137】
(C)車両10のユーザにより車載エアコン装置が操作されたとの条件であり、例えば、車室内設定温度が変更されたとの条件。ユーザがエアコン装置を操作する状況は、電池パック11周囲の温度が電池パック11の製造時における温度からずれ得る状況であり、電波伝播経路が大きく変化し得る。
【0138】
電池制御MCU41により特定条件が成立したと判定された場合、ステップS10の処理が実行される。ここでは、電池制御MCU41は、子機側アンテナ33から無線信号を送信させる指令を、親機側アンテナ43から子機側アンテナ33に送信すればよい。電池監視装置30の監視IC31は、指令を受信したと判定した場合、子機側アンテナ33から無線信号を送信する。
【0139】
なお、ステップS11において、受信電力を測定する場合における収容部55の温度、湿度及び気圧を検出部により検出し、マップ情報において、温度、湿度及び気圧と、電波指向性等とを紐付けてもよい。
【0140】
以上説明した本実施形態によれば、電波伝播経路の変化に応じて各チャネルにおける電波指向性が設定されるため、電池監視装置30と電池制御装置40との間の無線通信の品質を改善することができる。
【0141】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第4実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、車両10が走行中である場合に電波指向性の設定処理の実行が許可される。
【0142】
図32は、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。なお、
図32において、先の
図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0143】
ステップS80では、電池制御MCU41は、車両10の走行中において特定条件が成立したか否かを判定する。ステップS80の処理は、親機側アンテナ43の受信電力の測定精度を高めるための処理である。特定条件は、走行中において親機側アンテナ43と各子機側アンテナ33との間の電波伝播経路が大きく変化したか否かを判定するための条件であり、例えば、走行に伴い発生する振動が大きくなったり、収容部55におけるノイズが大きくなったりすることを把握できる条件である。特定条件は、例えば、組電池20に流れる電流が判定電流を超えたとの条件、又は車両10の加速度を検出する加速度センサにより検出された振動が判定値を超えたとの条件である。
【0144】
電池制御MCU41により特定条件が成立したと判定された場合、ステップS10の処理が実行される。
【0145】
以上説明した本実施形態によれば、車両10の走行中において電波伝播経路が変化した場合であっても、電池監視装置30と電池制御装置40との間の無線通信の品質を改善することができる。
【0146】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第4,第5実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電池パック11に異常が発生している場合にマップ情報を更新する。
【0147】
図33に、異常時の電池パック11を示す。なお、
図33において、先の
図3及び
図4等に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
図33に示す例では、第1電池ブロック21Aの配置位置が、正常時の配置位置からずれた状態になっている。この場合、電池制御装置40と各電池監視装置30A~30Dとの間の電波伝播経路が大きく変化し、親機側アンテナ43の受信電力の周波数特性が、電池パック11の製造工程において測定された周波数特性から大きくずれ得る。
【0148】
そこで、本実施形態では、電波伝播経路が大きく変化したと判定される場合にマップ情報が再度生成されて更新される。
【0149】
図34は、親機側アンテナ43の受信電力が最大となる電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。なお、
図34において、先の
図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0150】
ステップS90では、電池制御MCU41は、電池パック11の異常(例えば、電池パック11の変形異常)が発生しているか否かを判定する。電池パック11の異常には、収容部55における各電池ブロック21、各電池監視装置30及び電池制御装置40の配置状態が所定の配置状態からずれる異常の他に、筐体50のベース部に対するカバー54外れ、電池ブロック21を構成する電池セル22の電圧異常、電池ブロック21への浸水、収容部55における発煙検知、及び車両に備えられたエアバック装置の作動が挙げられる。上記所定の配置状態は、例えば、量産される電池パック11の収容部55における各電池ブロック21、各電池監視装置30及び電池制御装置40の配置状態である。
【0151】
電池制御MCU41により異常が発生したと判定された場合、ステップS10の処理が実行される。
【0152】
以上説明した本実施形態によれば、電池パック11に異常が発生した場合であっても、電池監視装置30と電池制御装置40との間の無線通信の品質低下を極力抑制することができる。
【0153】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、マップ情報の生成時において、受信電力ではなく、親機側アンテナ43と子機側アンテナ33との間で無線通信が行われる場合の通信エラー率が用いられる。通信エラー率は、例えば、パケットエラー率又はビットエラー率である。
【0154】
本実施形態では、電池パック11の製造工程において、電波指向性A,Bそれぞれについて、各電池監視装置30から無線送信した場合において、
図35に示すように、各チャネルの通信エラー率が測定される。そして、測定された通信エラー率に基づいて、各子機側アンテナ33の電波指向性A,Bのうち、無線通信が行われる場合における通信エラー率が閾値Eth以下となる電波指向性が各チャネルにおいて特定される。この際、通信エラー率が閾値Ethを超える電波指向性は用いられない。
【0155】
図35に示す例では、第1チャネルにおいて電波指向性Aが紐付けられ、第2チャネルにおいて電波指向性Bが紐付けられ、第3チャネルにおいて電波指向性A,Bが紐付けられる。
【0156】
図36は、電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池パック11の製造工程において、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。
【0157】
ステップS100では、各電池監視装置30A~30Dのうちいずれか1つの電池監視装置において、監視IC31は、電波指向性Aを選択した場合の無線信号を子機側記憶部34から送信する。ここでは、第1電池監視装置30Aが選択されるとする。無線信号には、送信元の電池監視装置30の識別情報が含まれている。
【0158】
ステップS101では、送信された無線信号が親機側アンテナ43により受信される。電池制御MCU41は、受信信号に基づいて、通信エラー率を測定する。ステップS102では、電池制御MCU41は、測定した通信エラー率、電波指向性A、及び無線信号の送信元となる第1電池監視装置30Aの識別情報を紐付ける。
【0159】
ステップS103では、電池制御MCU41は、第1電池監視装置30Aについて、電波指向性A,Bに対応する通信エラー率の測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS104に進み、第1電池監視装置30Aの子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性Aから電波指向性Bに切り替えさせる。その後、ステップS100~S102の処理により、測定した通信エラー率、電波指向性B、及び第1電池監視装置30Aの識別情報が紐付けられる。
【0160】
電池制御MCU41は、ステップS103において完了したと判定した場合、ステップS105に進み、全ての電池監視装置30A~30Dについて電波指向性A,Bに対応する通信エラー率の測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS106に進み、無線信号の送信元となる電池監視装置を、第1電池監視装置30Aから第2電池監視装置30Bに切り替えさせる。その後、ステップS100~S106の処理により、第2~第4電池監視装置30B~30Dそれぞれについて、測定した通信エラー率、電波指向性及び識別情報が紐付けられる。
【0161】
ステップS107では、電池制御MCU41は、ステップS100~S106の処理により得られた紐付け情報に基づいて、各チャネルと、各チャネルにおいて通信エラー率が閾値Eth以下となる電波指向性と、電池監視装置30の識別情報とを紐付けたマップ情報(「指向性情報」に相当)を生成する。電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側記憶部44に記憶させる。ここでは、各チャネルにおいて、電波指向性A,Bのうち通信エラー率が最小となる電波指向性が紐付けられてもよい。
【0162】
ステップS108では、電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側アンテナ43から第1~第4電池監視装置30A~30Dに送信する。この場合、マップ情報の送信に使用されるチャネルにおいて、各子機側アンテナ33の電波指向性が、マップ情報に規定された電波指向性に設定されればよい。ステップS109では、各電池監視装置30A~30Dにおいて、監視IC31は、子機側アンテナ33により受信したマップ情報を子機側記憶部34に記憶させる。
【0163】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。ちなみに、本実施形態においても、第2~第7実施形態の構成を適用することができる。
【0164】
<第8実施形態>
以下、第8実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、マップ情報の生成時において、受信電力ではなく、受信電力とノイズフロアとの差が用いられる。
【0165】
本実施形態では、電池パック11の製造工程において、電波指向性A,Bそれぞれについて、各電池監視装置30から無線送信した場合において、上記差が測定される。そして、測定された差に基づいて、電波指向性A,Bのうち、差が閾値Wth以上となる電波指向性が各チャネルにおいて特定される。差が大きいほど、ノイズに対する通信の余裕度が大きい。このため、各チャネルにおいて、差が閾値Wthを下回る電波指向性は用いられない。
【0166】
図37には、子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性Aに設定して無線送信した場合における親機側アンテナ43の受信電力と、ノイズフロアとの差の周波数特性を示す。
図38は、子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性Bに設定した場合を示す。
【0167】
図37及び
図38に示す例では、第1チャネルにおいて、電波指向性Aに対応する差ΔWが25dBmであり、電波指向性Bに対応する差ΔWが17dBmである。閾値Wthが20dBmである場合、第1チャネルにおいて電波指向性Aが紐付けられる。
【0168】
第2チャネルにおいて、電波指向性Aに対応する差ΔWが23dBmであり、電波指向性Bに対応する差ΔWが25dBmである。このため、第2チャネルにおいて電波指向性A,Bが紐付けられる。
【0169】
第3チャネルにおいて、電波指向性Aに対応する差ΔWが15dBmであり、電波指向性Bに対応する差ΔWが30dBmである。このため、第3チャネルにおいて電波指向性Bが紐付けられる。
【0170】
図39は、電波指向性と各チャネルとを紐付けたマップ情報の生成処理のフローチャートである。この処理は、電池パック11の製造工程において、電池制御装置40の電池制御MCU41と、各電池監視装置30の監視IC31とにより実行される。
【0171】
ステップS120では、各電池監視装置30A~30Dのうちいずれか1つの電池監視装置において、監視IC31は、電波指向性Aを選択した場合の無線信号を子機側記憶部34から送信する。ここでは、第1電池監視装置30Aが選択されるとする。無線信号には、送信元の電池監視装置30の識別情報が含まれている。
【0172】
ステップS121では、送信された無線信号が親機側アンテナ43により受信される。電池制御MCU41は、受信信号に基づいて、受信電力とノイズフロアとの差ΔWを測定する。差ΔWの測定に用いられるノイズフロアの情報は、例えば、親機側記憶部44に予め記憶されていればよい。ステップS122では、電池制御MCU41は、測定した差ΔW、電波指向性A、及び無線信号の送信元となる第1電池監視装置30Aの識別情報を紐付ける。
【0173】
ステップS123では、電池制御MCU41は、第1電池監視装置30Aについて、電波指向性A,Bに対応する差ΔWの測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS124に進み、第1電池監視装置30Aの子機側アンテナ33の電波指向性を電波指向性Aから電波指向性Bに切り替えさせる。その後、ステップS120~S122の処理により、測定した差ΔW、電波指向性B、及び第1電池監視装置30Aの識別情報が紐付けられる。
【0174】
電池制御MCU41は、ステップS123において完了したと判定した場合、ステップS125に進み、全ての電池監視装置30A~30Dについて電波指向性A,Bに対応する差ΔWの測定が完了したか否かを判定する。電池制御MCU41は、完了していないと判定した場合、ステップS126に進み、無線信号の送信元となる電池監視装置を、第1電池監視装置30Aから第2電池監視装置30Bに切り替えさせる。その後、ステップS120~S126の処理により、第2~第4電池監視装置30B~30Dそれぞれについて、測定した差ΔW、電波指向性及び識別情報が紐付けられる。
【0175】
ステップS127では、電池制御MCU41は、ステップS120~S126の処理により得られた紐付け情報に基づいて、各チャネルと、各チャネルにおいて差ΔWが閾値Wth以上となる電波指向性と、電池監視装置30の識別情報とを紐付けたマップ情報(「指向性情報」に相当)を生成する。電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側記憶部44に記憶させる。ここでは、各チャネルにおいて、電波指向性A,Bのうち差ΔWが最大となる電波指向性が紐付けられてもよい。
【0176】
ステップS128では、電池制御MCU41は、生成したマップ情報を親機側アンテナ43から第1~第4電池監視装置30A~30Dに送信する。この場合、マップ情報の送信に使用されるチャネルにおいて、各子機側アンテナ33の電波指向性が、マップ情報に規定された電波指向性に設定されればよい。ステップS129では、各電池監視装置30A~30Dにおいて、監視IC31は、子機側アンテナ33により受信したマップ情報を子機側記憶部34に記憶させる。
【0177】
以上説明した本実施形態によれば、チャネル毎に受信電力下限値Wminが異なる場合であっても、電池制御装置40と電池監視装置30との間の無線通信の品質を高めることができる。ちなみに、本実施形態においても、第2~第7実施形態の構成を適用することができる。
【0178】
<第9実施形態>
以下、第9実施形態について、上記各実施形態との相違点を中心に、
図40及び
図41を参照しつつ説明する。なお、
図40及び
図41において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、
図41は、
図40の41-41線断面図である。
【0179】
車両は、金属材料で構成された車体としてのシャーシ100と、車輪110とを備えている。シャーシ100は、車長方向に延びるシャーシ底板部101と、側板部102と、シャーシ天板部103と、端板部104とを備えている。側板部102は、シャーシ底板部101のうち車幅方向における端部から上方に延びている。シャーシ天板部103は、側板部102を上方から覆っている。端板部104は、シャーシ底板部101、側板部102及びシャーシ天板部103の両端部を覆っている。シャーシ底板部101、側板部102、シャーシ天板部103及び端板部104の内面により、電池パック11を収容する収容部105が構成されている。
【0180】
筐体50を構成する底板部51が、シャーシ底板部101に配置されている。シャーシ天板部103と筐体50を構成するカバー54との間には、空間が形成されている。本実施形態において、底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54は、合成樹脂で構成されており、電磁シールド効果を有さない構成となっている。このため、親機側アンテナ43や子機側アンテナ33から発信された電波は、筐体50を通り抜ける。ただし、金属材料で構成されたシャーシ100により、電波が反射する。
【0181】
ちなみに、底板部51、第1壁部52、第2壁部53及びカバー54のうち、一部(例えばカバー54)が合成樹脂で構成されていてもよい。
【0182】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。また、リユース等に起因して、収容部105における通信環境も変化し得る。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0183】
<第10実施形態>
以下、第10実施形態について、第9実施形態との相違点を中心に、
図42を参照しつつ説明する。なお、
図42において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0184】
電池制御装置40は、収容部105において、筐体50の外部に配置されている。詳しくは、電池制御装置40は、カバー54の上面に取り付けられている。
【0185】
本実施形態において、カバー54、第1壁部52、第2壁部53及び底板部51は、金属材料で構成されている。この場合、筐体50内に収容された各電池監視装置30A~30Dと電池制御装置40との間で通信を行うために、筐体50の内外を通信接続する構成が要求される。
【0186】
本実施形態の電池パック11は、通信接続する構成として、中継デバイス120を備えている。中継デバイス120は、カバー54の上面側に位置するアンテナ120aと、アンテナ120aから下方に延びてかつアンテナ120aよりも外径寸法が小さい軸部120bとを備えている。カバー54には、軸部120bを挿通するための貫通孔54aが形成されている。本実施形態において、貫通孔54aは、カバー54において、カバー54の長手方向に一列に並んで設けられている。アンテナ120aがカバー54の上面側に位置して、かつ、軸部120bがカバー54に形成された貫通孔54aに挿入された状態で、中継デバイス120が配置されている。中継デバイス120は、各電池監視装置30に対応して個別に設けられている。なお、アンテナ120aは、電波を透過するカバーで覆われていてもよい。
【0187】
貫通孔54aは、中継デバイス120のアンテナ120aにより塞がれている。なお、アンテナ120aとカバー54の上面との間にシール部材が介在していてもよい。
【0188】
電池監視装置30の子機側無線IC32とアンテナ120aとは、軸部120bに設けられた通信配線により電気的に接続されている。これにより、アンテナ120a及び親機側アンテナ43を介して、電池監視装置30と電池制御装置40との間で無線通信を行うことができる。
【0189】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。また、リユース等に起因して、収容部105における通信環境も変化し得る。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0190】
<第11実施形態>
以下、第11実施形態について、第9実施形態との相違点を中心に、
図43を参照しつつ説明する。なお、
図43において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0191】
電池制御装置40は、筐体50内においてジャンクションボックス15の上面に取り付けられている。一方、第1~第4電池監視装置30A~30Dは、収容部105において、筐体50の外部に配置されており、詳しくは、カバー54の上面に取り付けられている。この場合、筐体50内に収容された電池制御装置40と、筐体50外に配置された各電池監視装置30A~30Dとの間で通信を行うために、筐体50の内外を通信接続する構成が要求される。
【0192】
本実施形態の電池パック11は、通信接続する構成として、中継デバイス130を備えている。中継デバイス130は、カバー54の上面側に位置する接続部130bと、接続部130bから下方に延びるアンテナ130aとを備えている。カバー54には、アンテナ130aを挿通するための貫通孔54aが形成されている。貫通孔54aは、カバー54において、カバー54の長手方向に一列に並んで設けられている。中継デバイス130は、各電池監視装置30に対応して個別に設けられている。なお、アンテナ130aは、電波を透過するカバーで覆われていてもよい。
【0193】
貫通孔54aは、中継デバイス130の接続部130bにより塞がれている。なお、接続部130bとカバー54の上面との間にシール部材が介在していてもよい。
【0194】
電池監視装置30の子機側無線IC32とアンテナ130aとは、接続部130bに設けられた通信配線により電気的に接続されている。これにより、アンテナ130a及び親機側アンテナ43を介して、電池監視装置30と電池制御装置40との間で無線通信を行うことができる。
【0195】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。また、リユース等に起因して、収容部105における通信環境も変化し得る。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0196】
<第12実施形態>
以下、第12実施形態について、上記各実施形態との相違点を中心に、
図44を参照しつつ説明する。なお、
図44において、上記各実施形態で説明した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0197】
図44に示すように、筐体50が備えられておらず、各電池ブロック21A~21D、各電池監視装置30A~30D及び電池制御装置40がシャーシ100の収容部105に直接収容される構成であってもよい。この構成は、MTP(Module to Platform)と呼ばれる。
【0198】
以上説明した本実施形態においても、収容部105において電波の乱反射が発生する。また、リユース等に起因して、収容部105における通信環境も変化し得る。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用することができる。
【0199】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0200】
・上記各実施形態では、複数の電池セルを電池ブロックにまとめた上で、各電池ブロックを直列接続する構成が用いられた。この構成に代えて、電池ブロックを作成することなく、複数の電池セルの直列接続体がシャーシ100の収容部105に収容されるいわゆるCTP(Cell to Pack)の構成が用いられてもよい。この場合の一例を
図45に示す。
図45に示す例では、車幅方向に長い長尺状の電池セル200が収容部105に複数収容される。隣り合う各電池セル200のうち、一方の正極端子201と他方の負極端子202とが図示しないバスバーにより電気的に接続される。なお、この場合、例えば、各電池セル200に対応して個別に電池監視装置が設けられればよい。
【0201】
また、CTPの構成に代えて、車両のシャーシに電池セルを収容する収容部が構成され、収容部に複数の電池セルが収容されるいわゆるCTC(Cell to Chassis)の構成が用いられてもよい。
【0202】
CTPやCTCの構成であっても、収容部の少なくとも一部により電波が反射する。また、リユース等に起因して、収容部における通信環境も変化し得る。このため、上記各実施形態で説明した構成を適用するメリットがある。
【0203】
・第2実施形態で説明した親機側アンテナ43が電波指向性を変更可能な構成を、第4実施形態以降の各実施形態に適用することができる。
【0204】
・電池監視システムが搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、制御システムは、移動体に搭載されるシステムに限らず、定置式のシステムであってもよい。
【0205】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0206】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
複数の電池(21,21A~21D,200)それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置(30,30A~30D)と、
電池制御装置(40)と、を備え、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が収容される電池監視システムにおいて、
前記電池制御装置は、前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側アンテナ(43)を有し、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側アンテナ(33)を有し、
前記各子機側アンテナにおける電波指向性、及び前記親機側アンテナにおける電波指向性のうち、少なくとも一方の電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される、電池監視システム。
[構成2]
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合における前記電池制御装置又は前記電池監視装置の受信電力が閾値(Wmin)以上となる電波指向性に設定される、構成1に記載の電池監視システム。
[構成3]
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合における前記受信電力が最大となってかつ該受信電力が前記閾値以上となる電波指向性に設定される、構成2に記載の電池監視システム。
[構成4]
前記各電池監視装置は、
自身が有する前記子機側アンテナと前記親機側アンテナとの間の無線通信で使用可能な複数のチャネルのそれぞれと、前記各チャネルにおいて前記各電波指向性のうち前記無線通信が行われる場合における前記受信電力が前記閾値以上となる電波指向性とが紐づけられた指向性情報を記憶する子機側記憶部(34)を有し、
記憶された前記指向性情報に基づいて、自身が有する前記子機側アンテナの電波指向性を、前記無線通信で使用されるチャネルと紐付けられた電波指向性に設定する、構成2に記載の電池監視システム。
[構成5]
前記電池制御装置は、特定条件が成立したと判定したことを条件として、前記各電池監視装置が有する前記子機側アンテナから各電波指向性に対応する無線信号を送信させる指令を、前記親機側アンテナから前記各電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、自身が有する前記子機側アンテナにより前記指令を受信した場合、自身が有する前記子機側アンテナから前記電池制御装置に無線信号を送信し、
前記電池制御装置は
各電波指向性に対応した前記電池監視装置からの無線信号を前記親機側アンテナにより受信し、前記親機側アンテナが受信した無線信号のチャネル毎の受信電力を測定し、
測定した受信電力に基づいて前記指向性情報を生成し、生成した前記指向性情報を前記親機側アンテナから前記電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、自身が有する前記子機側アンテナにより受信した前記指向性情報を前記子機側記憶部に記憶させる、構成4に記載の電池監視システム。
[構成6]
前記電池制御装置は、
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で使用可能な複数のチャネルのそれぞれと、前記各チャネルにおいて前記各電波指向性のうち前記無線通信が行われる場合における前記受信電力が前記閾値以上となる電波指向性とが紐づけられた指向性情報を記憶する親機側記憶部(44)を有し、
記憶された前記指向性情報に基づいて、前記親機側アンテナの電波指向性を、前記無線通信で使用されるチャネルと紐付けられた電波指向性に設定する、構成2に記載の電池監視システム。
[構成7]
前記電池制御装置は、特定条件が成立したと判定したことを条件として、前記各電池監視装置が有する前記子機側アンテナから無線信号を送信させる指令を、前記親機側アンテナから前記各電池監視装置に送信し、
前記各電池監視装置は、自身が有する前記子機側アンテナにより前記指令を受信した場合、自身が有する前記子機側アンテナから前記電池制御装置に無線信号を送信し、
前記電池制御装置は
前記親機側アンテナの電波指向性を複数の電波指向性それぞれに設定した場合において、前記電池監視装置からの無線信号を前記親機側アンテナにより受信し、前記親機側アンテナが受信した無線信号のチャネル毎の受信電力を測定し、
測定した受信電力に基づいて前記指向性情報を生成し、生成した前記指向性情報を前記親機側記憶部に記憶させる、構成6に記載の電池監視システム。
[構成8]
前記特定条件は、前記電池監視システムの製造工程又は前記電池監視システムを構成する前記電池のリユース時において、前記収容部に前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置が収容された後、前記電池監視システムが最初に起動されたとの条件である、構成5又は7に記載の電池監視システム。
[構成9]
前記電池監視システムは、ユーザが搭乗可能な移動体(10)に搭載され、
前記特定条件は、前記移動体の移動距離又は前記移動体の移動時間のいずれかが判定値(Lth)を超えたとの条件である、構成5又は7に記載の電池監視システム。
[構成10]
前記特定条件は、前記収容部における前記各電池、前記各電池監視装置及び前記電池制御装置の配置状態が所定の配置状態からずれたとの条件である、構成5又は7に記載の電池監視システム。
[構成11]
前記電池監視システムは、ユーザが搭乗可能な移動体(10)に搭載され、
前記電池制御装置は、ユーザにより前記移動体の始動指示がなされていないとともに、前記移動体が停止状態にされていると判定し、かつ、前記特定条件が成立したと判定した場合、前記指令を前記親機側アンテナから前記各電池監視装置に送信する、構成9又は10に記載の電池監視システム。
[構成12]
前記電池監視装置と通信可能に接続される検査装置(300)を備え、
前記特定条件は、前記電池監視装置により監視された前記電池の状態の履歴情報が前記検査装置から要求されたとの条件である、構成5又は7に記載の電池監視システム。
[構成13]
前記親機側アンテナ及び前記子機側アンテナのうち電波指向性が選択可能に構成されているアンテナは、
回路基板(61)と、
前記回路基板に設けられたアンテナ部材(67)と、
前記回路基板に設けられ、前記アンテナ部材に電気的に接続されるとともに前記アンテナ部材に給電する複数の給電線(68A~68D,74A~74D)と、
前記回路基板において、隣り合う前記給電線の間に設けられたグランドパターン(69A~69C,72,75)と、
を有する、構成1~12のいずれか1つに記載の電池監視システム。
[構成14]
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合の通信エラー率が閾値(Eth)以下となる電波指向性に設定される、構成1に記載の電池監視システム。
[構成15]
前記親機側アンテナと前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記各電波指向性のうち、前記無線通信が行われる場合の前記電池制御装置の受信電力とノイズフロアとの差が閾値(Wth)以上となる電波指向性に設定される、構成1に記載の電池監視システム。
[構成16]
複数の電池(21,21A~21D,200)及び電池制御装置(40)を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに配置される電池監視装置(30,30A~30D)において、
前記電池監視装置は、前記各電池に対応して個別に設けられるとともに、前記電池の状態を監視し、
前記各電池監視装置は、前記電池制御装置との間で無線通信を行うための子機側アンテナ(33)を有し、
前記各子機側アンテナは、電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記電池制御装置が有する親機側アンテナ(43)と前記子機側アンテナとの間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記子機側アンテナの電波指向性は、前記各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される、電池監視装置。
[構成17]
複数の電池(21,21A~21D,200)それぞれに対応して個別に設けられるとともに前記電池の状態を監視する電池監視装置(30,30A~30D)を備える電池監視システムに適用され、
少なくとも一部が電波を反射するように構成された収容部(55,105)に、前記各電池及び前記各電池監視装置とともに配置される電池制御装置(40)において、
前記電池制御装置は、前記電池監視装置との間で無線通信を行うための親機側アンテナ(43)を有し、
前記親機側アンテナは、電波指向性が、電波指向性の中心の向きが異なる複数の電波指向性の中から選択可能に構成されており、
前記親機側アンテナと前記電池監視装置が有する子機側アンテナ(33)との間の無線通信で用いられるチャネルにおいて、前記親機側アンテナの電波指向性は、各電波指向性のうち、前記無線通信の通信品質が最低となる電波指向性以外の電波指向性に設定される、電池制御装置。
【符号の説明】
【0207】
11…電池パック、21…電池ブロック、30…電池監視装置、33…子機側アンテナ、40…電池制御装置、43…親機側アンテナ、55…収容部。