(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184095
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】内装部材
(51)【国際特許分類】
B68G 7/06 20060101AFI20231221BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20231221BHJP
B60N 2/818 20180101ALI20231221BHJP
B60N 2/882 20180101ALI20231221BHJP
【FI】
B68G7/06 A
A47C7/38
B60N2/818
B60N2/882
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098029
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮下 千夏
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB01
3B084DC02
3B084DD04
3B087DC06
(57)【要約】
【課題】新規の内装部材を提供する。
【解決手段】内装部材は、インナー部材と、前記インナー部材を覆い、袋状に形成され、開口を有する表皮と、前記表皮と前記インナー部材との間に位置する発泡体と、前記表皮の前記開口の外側に、前記インナー部材に連続するリブと、を備える。前記表皮の前記開口の周縁は、前記発泡体と前記リブによって挟まれている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナー部材と、
前記インナー部材を覆い、袋状に形成され、開口を有する表皮と、
前記表皮と前記インナー部材との間に位置する発泡体と、
前記表皮の前記開口の外側に、前記インナー部材に連続するリブと、
を備え、
前記表皮の前記開口の周縁は、前記発泡体と前記リブによって挟まれている、
内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、袋状の表皮と、樹脂などで形成されたインナー部材(コア部材)と、インナー部材と表皮の間に位置する発泡体と、を備える内装部材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の内装部材は、自動車のシートに用いるヘッドレストである。このようなヘッドレストは、袋状の表皮にコア部材を挿入したのち、表皮とコア部材の間に発泡材料を注入し、発泡体を形成する。特許文献1は、ガセット(特許文献1の表皮押え部材)とインナー部材との間に表皮を挟み込み、発泡材料が発泡する際に、表皮の切り込みから発泡材料が漏れ出さないようにする点を開示する。しかし、特許文献1は、ガセットを用いずに発泡材料の漏れ出しを防止する点は開示していない。
【0005】
本開示の課題は、新規の内装部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る内装部材は、インナー部材と、前記インナー部材を覆い、袋状に形成され、開口を有する表皮と、前記表皮と前記インナー部材との間に位置する発泡体と、前記表皮の前記開口の外側に、前記インナー部材に連続するリブと、を備える。前記表皮の前記開口の周縁は、前記発泡体と前記リブによって挟まれている。
【0007】
この内装部材によれば、発泡材料が発泡する際に、発泡材料によって表皮をリブに押し付けるため、発泡材料が漏れ出すことを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、新規の内装部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態におけるヘッドレストの構造を示すための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照しながら説明する。本実施形態では、内装部材として、自動車などの車両のシートに取り付けられるヘッドレスト1を例に説明する。以下明細書および図面において、ヘッドレスト1の取り付け方向を基準として、前側を前、後側を後、左側を左、右側を右、上側を上、下側を下と記す。なお、内装部材は、アームレストなど他の内装部材であってもよい。
【0011】
図1に示すように、ヘッドレスト(内装部材の一例)1は、インナー部材2と、表皮4と、発泡体6と、を備える。
【0012】
インナー部材2は、外側が発泡体6および表皮4に覆われる部材である。
図2に示すように、インナー部材2は、前後2つの合成樹脂を反対に組み合わせて形成される、中空の箱状の部材である。本実施形態では、インナー部材2は、左右方向に間隔を空けて配置されるヘッドレストのステー8を格納するヘッドレストコアである。
【0013】
図2に示すようにインナー部材2は、筒状部22と、拡幅部24と、を有する。本実施形態の筒状部22は、円筒形に形成され、内部をステー8が通過する。しかし、筒状部22は、必ずしも円筒形である必要はなく、例えば断面が矩形の筒状部材であってもよい。また、筒状部22を通過する部材は、ステー8以外にも、例えばボタンスイッチなど種々の部品であってもよい。
【0014】
筒状部22の下端には、リブ26が設けられる。リブ26は、表皮4の開口42の下方を、表皮4の開口42の周縁に沿って広がって延び、インナー部材2の筒状部22に連続する。リブ26は、筒状部22の全周に渡って筒状部22と交差する方向に延びる。本実施形態では、リブ26は、筒状部22の下端に筒状部22と一体で形成される。さらに、本実施形態ではリブ26は、筒状部22の下端の周囲から筒状部22と直交する方向に延びる。しかし、リブ26は、筒状部22と別体であってもよい。また、リブ26は必ずしも筒状部22の下端に位置する必要はなく、例えば筒状部22の外周部分のいずれの位置に設けられてもよい。
【0015】
拡幅部24は、筒状部22の上端から筒状部22よりも左右方向、および/または前後方向に拡幅する部分である。拡幅部24は、中空に形成される。拡幅部24の中空部分には、ヘッドレスト1のステー8に対する角度を変更する角度変更機構10が格納される。拡幅部24のインナー部材2の中空部分には、スピーカーやスイッチなどが格納されてもよい。
【0016】
表皮4は、インナー部材2を覆い、袋状に形成される部材である。
図3に示すように、表皮4は、インナー部材2の筒状部22が通過する開口42を有する。本実施形態では、開口42は、表皮4の筒状部22に対応する位置に、筒状部22の外周の形状に沿った形状に形成される。より具体的には、表皮4の下面の筒状部22が通過する位置に、円筒形の筒状部22に沿って円形の開口42が設けられる。表皮4は、シート状の熱可塑性樹脂によって形成されたフィルム層44と、天然または合成樹脂製の皮革やファブリックによって形成された表皮層46と、を有する。本実施形態では、表皮4の厚さはおおむね3mm程度である。表皮4は、このようなシート状の単一または複数の表皮片を縫製し、袋状に形成した部材である。
【0017】
開口42の内径D1は、筒状部22の外径D2以上である。開口42は、ヘッドレスト1の製造時に筒状部22およびリブ26を通過させる必要がある。このため、開口42の内径D1が小さいと、リブ26が通過しにくい。本実施形態では、開口42の内径D1は、筒状部22の外径D2よりも僅かに大きい。これによって、開口42にリブ26を通過させやすい。
【0018】
また、開口42の内径D1は、リブ26の外径D3よりも小さい。開口42は、発泡材料が発泡する際に表皮4がリブ26の外周よりも外側に外れないようにする必要がある。このため、開口42の内径D1は、リブ26の外径D3よりも小さくし、ヘッドレスト1の上下方向にみてリブ26と表皮4の開口42の外周縁部分とが重なる必要がある。リブ26の幅Wは、1mmから20mm程度が好ましい。幅Wが3mmより小さい場合、表皮4とリブ26との重なる幅が小さくなり、発泡圧によって表皮4が伸び、発泡材料が開口42とリブ26の隙間から漏れ出すおそれがある。一方、幅Wが10mmよりも大きいと、リブ26が開口42を通過し難くなる。
【0019】
発泡体6は、表皮4とインナー部材2との間に位置する。発泡体6は、後述のヘッドレスト1の製造方法に示すように、発泡材料を袋状の表皮4の注入口から注入し、発泡させて形成される。このように、発泡材料を発泡させた状態において、発泡体6は、表皮4の開口42の周縁をリブ26との間で挟み込む。さらに本実施形態では、発泡体6および表皮4は、拡幅部24と、リブ26とによって挟まれる。
【0020】
次に、
図4を用いてヘッドレスト1の製造方法について説明する。
【0021】
第1の工程では、表皮片を袋状に縫製した表皮4を用意する。
図4(a)に示すように、表皮4を上下反対にセットする。なお、表皮4は、インナー部材2が挿入できる切り込み部が設けられている。
【0022】
第2の工程では、リブ26を有するインナー部材2を用意する。
図4(b)に示すように、用意したインナー部材2を袋状の表皮4の切り込み部から挿入し、表皮4の内部にインナー部材2をセットする。表皮4の内部にインナー部材2をセットすると、切り込み部を閉じる。なお、切り込み部を閉じる工程は、次の第3の工程の後に行ってもよい。また、切り込み部の閉じ方は、縫い合わせ、接着剤による接着など、種々様々な方法を用いてもよい。
【0023】
図4(c)に示すように、第3の工程では、開口42にリブ26を通過させ、リブ26を表皮4の袋状の内側から外側に通す。そして、ヘッドレスト1を上下反転した状態において表皮4の下面をみたときに、表皮4の開口42がリブ26に隠れる状態にする。
【0024】
次に
図4(d)に示すように、第4の工程では、ヘッドレスト1を上下反転した状態で発泡成形型100にセットする。表皮4の下面(ヘッドレスト1を上下反転させた状態においては上面)には発泡材料を注入する注入孔48が設けられる。なお、注入孔48の位置は、必ずしも表皮4の下面でなくてもよく、例えば表皮4の側面に設けてもよい。また、注入孔48を、表皮4の複数の箇所に設けてもよい。
【0025】
注入器102から注入された発泡材料は、ヘッドレスト1の上面から内部に進み、インナー部材2と表皮4との間に注入される。インナー部材2と表皮4との間に流れた発泡材料は、一端ヘッドレスト1の上面まで到達し、その後、発泡しながらインナー部材2の側面と表皮4との間を通過したのち筒状部22の周囲まで到達し、最終的には表皮4の下面まで到達する。
【0026】
このとき、インナー部材2が拡幅部24を有し、拡幅部24は、開口42の内径D1(
図3参照)よりも広がる方向に拡幅する。これによって、拡幅部24は、ヘッドレスト1の上下方向にみて表皮4およびリブ26と重なる位置まで延びる。このため、発泡材料は、拡幅部24の壁面に沿って、表皮4の下面に向かって発泡し、表皮4をリブ26に向けて押しつける。この結果、表皮4とリブ26の間に発泡材料が侵入することなく、発泡材料によって表皮4とリブ26の隙間が閉じられる。この状態で発泡材料が発泡硬化することによって、発泡材料が表皮4の外側に漏れ出ることなく発泡体6を形成できる。このようにして、インナー部材2と、表皮4との間で発泡体6が形成される。
【0027】
最後に、ヘッドレスト1を発泡成形型100から取り出して、ヘッドレスト1が製造される。
【0028】
以上説明した通り、本開示によれば、発泡材料が漏れ出すことを防止できる新規のヘッドレスト1を提供できる。
【0029】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態ではリブ26は、筒状部22の断面の円形と同心円状に形成される例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。リブ26の形状は、筒状部22の外径D2(
図3参照)よりも大きい形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、開口42を表皮4の下面に設ける例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ヘッドレスト1の側面にボタンなどの機器が設けられる場合、表皮4の側面に開口42を設けてもよい。なお、開口42の設けられる位置は、好ましくは表皮4の下面、側面、または前後面である。これによって、発泡材料によって表皮4をリブに押し付けやすい。
【符号の説明】
【0032】
1 :ヘッドレスト(内装部材の一例)
2 :インナー部材
4 :表皮
6 :発泡体
22 :筒状部
24 :拡幅部
26 :リブ
42 :開口
D1 :内径
D2 :外径
D3 :外径