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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184096
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電池パックおよび電池パックケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6557 20140101AFI20231221BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20231221BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20231221BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231221BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20231221BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20231221BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M50/264
H01M50/291
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6563
H01M50/262 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098030
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】福迫 尚紀
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031KK08
5H040AA14
5H040AA28
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY08
5H040CC01
5H040CC23
5H040CC27
5H040CC34
5H040CC36
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電池スタックの冷却性および剛性に優れた電池パックおよびその電池パックのための電池パックケースを提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る電池パック1は、電池セル4とスペーサーとを交互に積層してなる電池スタック3を電池パックケース2に搭載したものであり、電池パックケース2は、底面部と、側壁面部7と、第1端壁面部および第2端壁面部とを有する形状であり、底面部の上方に収納スペースが形成されており、第1端壁面部および第2端壁面部の上部に結合され電池スタック3の上方に部分的に覆い被さる剛性部材10を有し、剛性部材10と底面部との間に空間13が形成されており、第1端壁面に開口部が形成されており、電池スタック3は、剛性部材10の下方に部分的に入り込んでおり、スペーサーには通気路が形成されているものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルとスペーサーとを交互に積層してなる電池スタックと、前記電池スタックを搭載する電池パックケースとを有する電池パックであって、
前記電池パックケースは、
底面部と、前記電池スタックの積層方向に沿った方向の側壁面部と、前記電池スタックの積層方向の両端の第1端壁面部および第2端壁面部とを有する形状であり、
前記底面部の上方に、前記電池スタックを収納する収納スペースが形成されており、 前記第1端壁面部の上部および前記第2端壁面部の上部に結合され、前記収納スペースに収納されている前記電池スタックの上方に部分的に覆い被さる強度メンバーである剛性部材を有し、
前記剛性部材と前記底面部との間に、前記収納スペースに収納されている前記電池スタックの一方の側面に面する通気空間が形成されており、
前記第1端壁面における前記剛性部材の結合箇所の下方の部位に、前記通気空間を外部空間と繋げる開口部が形成されているものであり、
前記電池スタックは、前記剛性部材の下方に部分的に入り込んだ状態で前記収納スペースに収納されており、
前記スペーサーは、前記通気空間を前記電池セル同士の間の空間を経て外部空間と繋げる通気路が形成されている形状のものである電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記電池パックケースに、複数箇所の前記収納スペースが並んで形成されており、
前記通気空間は、隣接する2箇所の前記収納スペースの間に配置されているとともに、それらの前記収納スペースに収納されている前記電池スタックのいずれに対しても一方の側面に面しており、
前記剛性部材は、隣接する2箇所の前記収納スペースに収納されている前記電池スタックのいずれの上方にも部分的に覆い被さるものである電池パック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池パックであって、
前記剛性部材の下面と前記収納スペースに収納されている前記電池スタックの上部との間に挟み込まれた弾性部材を有する電池パック。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電池パックであって、
前記収納スペースに収納されている前記電池スタックにおける前記通気空間と反対側の側面と前記側壁面部との間に、上方に開口している側方隙間があり、
前記通気路は、前記通気空間と前記側方隙間とを繋ぐものである電池パック。
【請求項5】
複数の電池セルとスペーサーとを交互に積層してなる電池スタックを搭載する電池パックケースであって、
底面部と、搭載される電池スタックの積層方向に沿った方向の側壁面部と、搭載される電池スタックの積層方向の両端の第1端壁面部および第2端壁面部とを有する形状であり、
前記底面部の上方に、電池スタックを収納する収納スペースが形成されており、
前記第1端壁面部の上部および前記第2端壁面部の上部に結合され、前記収納スペースに収納される電池スタックの上方に部分的に覆い被さる強度メンバーである剛性部材を有し、
前記剛性部材と前記底面部との間に、前記収納スペースに収納される電池スタックの一方の側面に面する通気空間が形成されており、
前記第1端壁面における前記剛性部材の結合箇所の下方の部位に、前記通気空間を外部空間と繋げる開口部が形成されている電池パックケース。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パックケースであって、
複数箇所の前記収納スペースが並んで形成されており、
前記通気空間は、隣接する2箇所の前記収納スペースの間に配置されているとともに、それらの前記収納スペースに収納される電池スタックのいずれに対しても一方の側面に面し、
前記剛性部材は、隣接する2箇所の前記収納スペースに収納される電池スタックのいずれの上方にも部分的に覆い被さるものである電池パックケース。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の電池パックケースであって、
前記剛性部材の下面のうち前記収納スペースに収納される電池スタックの上部に覆い被さる部分に設けられた弾性部材を有する電池パックケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電池パックおよび電池パックケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の電池セルを積層して電池スタックとし、さらに電池パックケースに電池スタックを搭載した電池パックが用いられている。特許文献1に記載されている「蓄電装置」は、電池パックの一例である。同蓄電装置は、「下部筺体」(電池パックケース)に2つの「蓄電モジュール」(電池スタック)を配置したものである。同蓄電装置における下部筺体では、その底面に「第1のリブ」と「第2のリブ」とを設けている。第1のリブは2つの蓄電モジュールの間に配置されており、第2のリブは第1のリブと交差する方向に伸びて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-131155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、冷却性の問題があった。電池スタックの各電池セルを十分に冷却するためには、セル間の空間に、電池スタックの一方の側面側から他方の側面側への冷却風を十分に流すことが有益である。しかしながら特許文献1の下部筺体では、電池スタックの側方に第1のリブが存在している。このため、電池スタックの一方の側面側における通気抵抗が大きく、十分な冷却性が得られないのである。上記の下部筺体はまた、電池セルの積層方向への膨張による撓みに対する剛性が低いという問題もあった。冷却性については、電池スタックの下方に通気空間を配置して改善することも考えられる。しかしそれでは、電池パックの全高が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、電池スタックの冷却性および剛性に優れた電池パックおよびその電池パックのための電池パックケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池パックは、複数の電池セルとスペーサーとを交互に積層してなる電池スタックと、電池スタックを搭載する電池パックケースとを有するものであって、電池パックケースは、底面部と、電池スタックの積層方向に沿った方向の側壁面部と、電池スタックの積層方向の両端の第1端壁面部および第2端壁面部とを有する形状であり、底面部の上方に、電池スタックを収納する収納スペースが形成されており、第1端壁面部の上部および第2端壁面部の上部に結合され、収納スペースに収納されている電池スタックの上方に部分的に覆い被さる強度メンバーである剛性部材を有し、剛性部材と底面部との間に、収納スペースに収納されている電池スタックの一方の側面に面する通気空間が形成されており、第1端壁面における剛性部材の結合箇所の下方の部位に、通気空間を外部空間と繋げる開口部が形成されているものであり、電池スタックは、剛性部材の下方に部分的に入り込んだ状態で収納スペースに収納されており、スペーサーは、通気空間を電池セル同士の間の空間を経て外部空間と繋げる通気路が形成されている形状のものである。
【0007】
上記態様における電池パックでは、剛性部材の存在により電池パックケースの剛性が高い。このため使用状況により電池セルが厚み方向に膨らもうとする状況であっても、電池パックケースの変形が少ない。開口部を通じて外部空間から通気空間に空気を送り込むことができる。送り込まれた空気は、主として側方の電池スタックにおける電池セル同士の間の通気路に流れ込む。通気空間から上方への空気の流出が剛性部材により邪魔される一方で、通気空間から側方への空気の流出は特に邪魔されないからである。電池セル同士の間に流れ込んだ空気は電池セルを冷却して最終的には上方へ流出していく。このようにして剛性と冷却性とが両立されている。また、通気空間が電池スタックの側面に面する位置に配置されているので、電池パックの全高を大きくする要因にはならない。
【0008】
本開示技術の別の一態様における電池パックケースは、複数の電池セルとスペーサーとを交互に積層してなる電池スタックを搭載するケースであって、底面部と、搭載される電池スタックの積層方向に沿った方向の側壁面部と、搭載される電池スタックの積層方向の両端の第1端壁面部および第2端壁面部とを有する形状であり、底面部の上方に、電池スタックを収納する収納スペースが形成されており、第1端壁面部の上部および第2端壁面部の上部に結合され、収納スペースに収納される電池スタックの上方に部分的に覆い被さる強度メンバーである剛性部材を有し、剛性部材と底面部との間に、収納スペースに収納される電池スタックの一方の側面に面する通気空間が形成されており、第1端壁面における剛性部材の結合箇所の下方の部位に、通気空間を外部空間と繋げる開口部が形成されているものである。この電池パックケースの収納スペースに電池スタックを収納することで、前記態様の電池パックが得られる。
【0009】
上記態様に係る電池パックにおける電池パックケースおよび前記態様に係る電池パックケースでは、複数箇所の収納スペースが並んで形成されており、通気空間は、隣接する2箇所の収納スペースの間に配置されているとともに、それらの収納スペースに収納される電池スタックのいずれに対しても一方の側面に面し、剛性部材は、隣接する2箇所の収納スペースに収納される電池スタックのいずれの上方にも部分的に覆い被さるものであることが望ましい。このようになっていると、1箇所の通気空間から両側の電池スタックに気流を供給でき、冷却効率がよい。このため、冷却風の分岐経路を設ける必要がない。各電池セルへ供給する冷却風の経路と、2つの電池スタックへの冷却風の分岐とを、同じスペースで実現しており、通気空間のスペース効率が高い。
【0010】
複数箇所の収納スペースが並んで形成されている態様を含めた前述のいずれかの態様に係る電池パックケースでは、剛性部材の下面のうち収納スペースに収納される電池スタックの上部に覆い被さる部分に設けられた弾性部材を有することが望ましい。この電池パックケースに電池スタックを収納した電池パックでは、弾性部材は、剛性部材の下面と電池スタックの上部との間に挟み込まれる。このようになっていると、通気空間から上方への空気の流出に対する通気抵抗がより大きい。このため、開口部から送り込んだ空気をより有効に電池セルの冷却に用いることができる。
【0011】
複数箇所の収納スペースが並んで形成されている態様、弾性部材を有する態様、および複数箇所の収納スペースが並んで形成されておりかつ弾性部材を有する態様を含めた前述のいずれかの態様に係る電池パックでは、収納スペースに収納されている電池スタックにおける通気空間と反対側の側面と側壁面部との間に、上方に開口している側方隙間があり、通気路は、通気空間と側方隙間とを繋ぐものであることが望ましい。このようになっていると、電池セルの幅方向の全体を冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、電池スタックの冷却性および剛性に優れた電池パックおよびその電池パックのための電池パックケースが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る電池パックの斜視図である。
図2】空の状態の電池パックケースの斜視図である。
図3図1の電池パックの断面図である。
図4】空の状態の電池パックケースの平面断面図である。
図5】電池スタックを搭載した状態での電池パックケースの平面断面図である。
図6】スペーサーの正面図である。
図7】スペーサーの側視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態に係る電池パック1を図1に示す。図1の電池パック1は、電池パックケース2に電池スタック3を搭載したものである。電池スタック3は、複数の電池セル4とスペーサー5とを交互に積層したものである。図1の電池パック1では、電池パックケース2に2組の電池スタック3が搭載されている。
【0015】
電池スタック3を搭載する前の空の状態の電池パックケース2を図2に示す。図2に示すように電池パックケース2は、底面部6と、側壁面部7と、第1端壁面部8と、第2端壁面部9とを有している。底面部6は、電池パックケース2の底である略長方形状の部位である。側壁面部7は、電池スタック3の積層方向に沿った方向の壁面部である。側壁面部7は、底面部6の両長辺の上方に設けられている。第1端壁面部8および第2端壁面部9は、電池スタック3の積層方向の両端に位置する壁面部である。第1端壁面部8および第2端壁面部9は、底面部6の両短辺の上方に設けられている。
【0016】
電池パックケース2はさらに、剛性部材10を有している。剛性部材10は、第1端壁面部8と第2端壁面部9とに掛け渡されている長尺状の部材である。剛性部材10は、第1端壁面部8および第2端壁面部9の幅方向中央の上端同士を連結している。本形態における剛性部材10は第1端壁面部8および第2端壁面部9に対して、締結部材12によるネジ止めによって固定されている。電池パックケース2において剛性部材10は強度メンバーである。図1図2に示されるように、第1端壁面部8には、開口部14が形成されている。開口部14が形成されている位置は、剛性部材10が結合されている箇所の下方の位置である。第2端壁面部9には、開口部14に相当する開口部は形成されていない。
【0017】
図1の電池パック1の内部構造を図3により説明する。図3は、電池パック1を、第1端壁面部8と平行な面で電池セル4と電池セル4との間の位置で切断した断面図である。図3中では、底面部6の上に2つの電池セル4が並んで描かれている。2つの電池セル4の一方は図1中の右上側の電池スタック3に属するものであり、もう一方は左下側の電池スタック3に属するものである。
【0018】
図3に示されるように、電池パック1の内部には空間13が設けられている。図3において空間13は、両サイドの電池セル4と電池セル4との間に位置している。空間13はまた、下方の底面部6と上方の剛性部材10との間に位置している。図1の電池パック1において空間13は、電池スタック3の積層方向の全体にわたって、第1端壁面部8の内面側から第2端壁面部9の内面側までに達して存在している。電池パック1において空間13はまた、両サイドの電池スタック3のそれぞれの一方の側面に面している。図3に示されるように、両サイドの電池スタック3における空間13と反対側の側面と側壁面部7との間には隙間がある。この隙間を側方隙間16と呼ぶ。側方隙間16は上方に開口している。空間13と側方隙間16とは、電池セル4同士の間の空間を経て繋がっている。
【0019】
図3で見ると、剛性部材10は両サイドの電池セル4よりも高い位置に存在している。剛性部材10が設けられている位置は第1端壁面部8および第2端壁面部9の幅方向中央の上端付近の位置だからである。また、剛性部材10の横幅は空間13の横幅より広い。このため剛性部材10は、両電池セル4の上方に部分的に覆い被さっている。剛性部材10の下面と両電池セル4の上面との間には、弾性部材11が挟み込まれている。上記のことは電池スタック3に含まれるすべての電池セル4に対していえる。したがって剛性部材10は両サイドの電池スタック3の上方に部分的に覆い被さっている。また、剛性部材10の下面と両電池スタック3の上部との間に弾性部材11が挟み込まれている。
【0020】
図4に、空の状態の電池パックケース2を上方から見た断面図を示す。図4に示されているのは、電池パックケース2を開口部14のレベルの水平面で切断した下側のものである。したがって図4中には剛性部材10は現れていない。図4中には、空間13に相当する範囲を二点鎖線で示している。
【0021】
図4中で、電池パックケース2の範囲内であって空間13の右側および左側の領域は、電池スタック3を収納する収納スペース15である。電池パックケース2内の収納スペース15は、底面部6の上方に形成されているスペースである。電池パックケース2では2箇所の収納スペース15が並んで形成されている。空間13は、各収納スペース15に収納される電池スタック3のいずれに対しても、一方の側面に面する状態となる。収納スペース15に収納される電池スタック3はいずれも、前述のように、一方の側面が空間13に面しもう一方の側面が側方隙間16に面している状態とされる。収納スペース15に収納される電池スタック3はまた、剛性部材10の下方に部分的に入り込んだ状態とされる。
【0022】
剛性部材10は、電池パックケース2の剛性を向上させて変形を抑制する部材である。剛性部材10により抑制される電池パックケース2の変形とは、第1端壁面部8および第2端壁面部9について図4中に二点鎖線で示される形状のことである。電池セル4は、使用状況によって内部の気圧が上昇して厚さ方向に膨らもうとすることがある。そのような状況では電池スタック3が、第1端壁面部8および第2端壁面部9を内側から外向きに圧迫する(矢印F)。この圧迫力が第1端壁面部8および第2端壁面部9を二点鎖線で示される形状に変形させようとする。剛性部材10はこの変形を抑えるのである。電池パックケース2の変形が抑えられることで、電池セル4の膨らみも抑制され、電池セル4の発電性の低下も抑えられる。
【0023】
弾性部材11は、剛性部材10と電池スタック3の上部との間の隙間の通気抵抗を大きくする部材である。弾性部材11は、剛性部材10の下面のうち、収納スペース15に収納される電池スタック3の上部に覆い被さる部分に密着している。弾性部材11と電池スタック3の上部とは、必ずしも全面的に密着していなくてもよいが、その間の隙間はきわめて狭い。弾性部材11はその柔軟性のため、電池スタック3における電池セル4とスペーサー5とによる凹凸形状に倣って変形するからである。
【0024】
電池パック1では、開口部14により、空間13と電池パックケース2の外部空間とが繋がっている。このため、図4中に矢印Aで示すように、開口部14を経て外部から空間13に空気を送り込むことができる。空間13は通気空間である。空間13に送り込まれた空気はその後、矢印Bで示すように左右に分かれて流れていく。反対側の第2端壁面部9には開口部が形成されておらず、また空間13の上方は剛性部材10および弾性部材11により実質的に閉鎖されているからである。それに対して空間13と収納スペース15との間には、気流を妨げるリブのような形状の部位はない。このため空間13から収納スペース15への気流の流入抵抗は小さいからである。
【0025】
電池スタック3を搭載している電池パック1では、左右に分かれた矢印Bの気流は図5に示すように、電池セル4と電池セル4との間の隙間を幅方向外向きに流れていき、側方隙間16に到達する。側方隙間16に到達した空気は、図3中に矢印Cで示されるように上方へ脱出していく。
【0026】
スペーサー5について図6図7により説明する。単体のスペーサー5を正面から見ると図6に示されるように、上辺部17と下辺部18と両側の側辺部19とにより全体としてほぼ長方形の枠状をなしている。この長方形のサイズが電池セル4の縦横サイズとほぼ同じである。スペーサー5はさらに、側辺部19と側辺部19とにわたる複数の桟部20を有している。桟部20と桟部20との間は貫通している窓部21である。
【0027】
図7の断面図は、図6中における幅方向の中央付近の位置での側視断面図である。図7では、スペーサー5に加えてその両隣の電池セル4を二点鎖線で示している。図7に示されるようにスペーサー5は、上記の各部に加えてベンチ部22を有している。ベンチ部22は、下辺部18の下端から片面側に突き出ている平板状の部位である。電池セル4は、ベンチ部22の上方に位置する。前述の窓部21は図7中では、上下方向には桟部20と桟部20とに挟まれ左右方向には電池セル4と電池セル4とに挟まれた領域である。
【0028】
図5に矢印Bで示した気流は、図7中では窓部21の領域を紙面と垂直に流れる。矢印Bの気流(以下、「気流B」という。)は、空間13から側方隙間16まで流れていき、最後は上方へ脱出する(図3の矢印C)。これより、桟部20と桟部20との間の窓部21の空間は、スペーサー5に形成されている、空間13を電池セル4同士の間の空間を経て外部空間と繋げる通気路であるといえる。
【0029】
気流Bは、電池セル4に接しつつ流れていく。また、気流Bによる冷却は、電池セル4の幅方向のほぼ全体にわたって行われる。気流Bの大部分が側方隙間16まで到達するからである。気流Bのうち側方隙間16へ到達する前に上方へ漏れ出てしまう量はごく僅かである。気流Bは桟部20により水平方向に導かれるからである。このため電池パック1では、開口部14から空間13に送り込んだ空気の冷却能力を無駄なく使用することができる。また、1箇所の空間13から両側の電池スタック3に気流を供給できる。したがって電池パック1では、搭載している電池セル4の冷却性が高く、電池セル4のオーバーヒートが起こりにくい。前述のように電池パック1ではさらに、剛性部材10の存在により剛性にも優れている。このように電池パック1は、剛性と冷却性との両方に優れたモジュールである。図7のように気流Bが両側の電池セル4に接するスペーサー5の形状であると、電池セル4は両面から冷却されることとなり、より冷却性が高い。
【0030】
電池パック1の組み立てについては、電池パックケース2に対して、電池スタック3を先に収納してその後に剛性部材10を取り付ける手順でもよいし、逆に、剛性部材10を先に取り付けておいてその後に電池スタック3を収納する手順でもよい。電池パック1は前述のように剛性部材10が部分的に電池スタック3の上方に覆い被さる配置であるが、それでも剛性部材10の取り付けが先であってもよい。側方隙間16の分、収納スペース15は電池スタック3のサイズに対して余裕を持っているからである。仮にこの余裕が少ない場合であっても、電池スタック3を傾斜させて保持して剛性部材10の下部に滑り込ませることにより組み立ては可能である。
【0031】
弾性部材11の取り付け時期についても特に限定はない。剛性部材10の該当箇所にあらかじめ弾性部材11を取り付けておいてもよいし、電池パックケース2に電池スタック3と剛性部材10とをいずれも取り付けた後で電池スタック3と剛性部材10との間に弾性部材11を挿入してもよい。上記より、剛性部材10の取り付け済みの電池パックケース2の製造と、その電池パックケース2に電池スタック3を収納させて電池パック1を製造することとを、別々の事業者により行うことができる。あるいは、剛性部材10および弾性部材11の取り付け済みの電池パックケース2の製造と、その電池パックケース2に電池スタック3を収納させて電池パック1を製造することとを、別々の事業者により行うこともできる。むろん、電池パックケース2の製造と電池パック1の製造とを同一の事業者により一貫して行ってもよい。
【0032】
以上詳細に説明したように本実施の形態に係る電池パック1では、電池パックケース2の収納スペース15に収納されている電池スタック3に対して剛性部材10が部分的に覆い被さる配置を採用している。そして、電池パックケース2の第1端壁面部8に開口部14を設けている。これにより、剛性と、開口部14から送り込んだ空気による優れた冷却性とを両立した電池パック1が実現されている。また、そのための電池パックケース2も実現されている。
【0033】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、剛性部材10の電池パックケース2への取付手段は、締結部材12によるネジ止めに限られない。溶接でもよいし接着剤による固定でもよい。締結部材12による場合であっても、図示したような横向きに限らず上から下向きに締結部材12をねじ込む形態であってもよい。
【0034】
弾性部材11については、その素材に特段の限定はない。ゴム、プラスチック等であって柔軟性のあるものであれば何でもよい。弾性部材11を用いない構成も可能である。例えば、剛性部材10の下面と電池スタック3の上部との間の間隔が十分に狭くそこの通気抵抗が十分に大きい場合には、弾性部材11は不要である。剛性部材10の下面の形状を、電池スタック3の上部における電池セル4およびスペーサー5に合わせた凹凸形状とすることで実質的な隙間を十分に小さくすることもできる。
【0035】
開口部14については、空気を送り込む送風口として用いるばかりでなく、空気を吸い出す吸引口として使用することもできる。この場合には電池パック1内の各部における気流の向きが説明とは逆向きとなる。ただし、冷却の効率に関しては、開口部14を送風口として用いた場合の方が優れている。開口部14を第1端壁面部8と第2端壁面部9との両方に設け、両開口部14からいずれも空気を送り込むこととしてもよい。あるいは、両開口部14からいずれも空気を吸い出す方式も可能である。
【0036】
側方隙間16がほとんどない構成とすることも可能である。その場合、スペーサー5における桟部20を外側端までとせず途中までとすることができる。本形態では電池パック1における電池スタック3の列数を2列としたが、列数はこれに限らない。4列あるいはそれ以上の偶数列の場合には、単純に、複数個の本形態の電池パック1を一体としたものとすることができる。奇数列(1列を含む。)も可能である。3列以上の場合には、1つの電池スタック3の両側に空間13(通気空間)が存在することがある。その場合それらの空間13の一方の一端に送風口としての開口部14を設け、もう一方の空間13の逆側の一端に吸引口としてとしての開口部14を設けるとよい。
【符号の説明】
【0037】
1 電池パック 6 底面部 11 弾性部材
2 電池パックケース 7 側壁面部 13 空間
3 電池スタック 8 第1端壁面部 14 開口部
4 電池セル 9 第2端壁面部 15 収納スペース
5 スペーサー 10 剛性部材 16 側方隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7