(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018410
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】レーザによる孔形成方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20230201BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122521
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】518334668
【氏名又は名称】JFE鋼材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】猪砂 利次
(72)【発明者】
【氏名】前原 憲治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 大輔
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA23
4E168DA28
4E168FB02
4E168JA02
4E168KA07
(57)【要約】
【課題】鋼材に形成される丸孔の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生することを回避して孔径の精度を向上させることができる、レーザによる孔形成方法を提供する。
【解決手段】レーザによる孔形成方法は、レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成するレーザによる孔形成方法であって、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから切り出して、円周経路11上の第1点P1に半径R1が1.0mm以下の円弧13で接して入るように切断するとともに、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R2が1.0mm以下の円弧16で接して出るように切り逃げる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法であって、
前記丸孔に切断すべき円周経路以外の前記鋼材の部分を切り出し位置とし、該切り出し位置から直線状に切り出して、前記円周経路上の第1点に半径が1.0mm以下の円弧で接して入るように切断するとともに、前記第1点から前記円周経路に沿って一周回って前記第1点に至るまで切断し、その後、前記第1点から半径が1.0mm以下の円弧で接して出るように切り逃げることを特徴とするレーザによる孔形成方法。
【請求項2】
レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法であって、
前記丸孔に切断すべき円周経路以外の前記鋼材の部分を切り出し位置とし、該切り出し位置から直線状に切り出して、前記円周経路上の第1点に、該第1点に接する接線に対して直角に入るように切断するとともに、前記第1点から前記円周経路に沿って一周回って前記第1点に至るまで切断し、その後、前記第1点から半径が1.0mm以下の円弧で接して出るように切り逃げることを特徴とするレーザによる孔形成方法。
【請求項3】
レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法であって、
前記丸孔に切断すべき円周経路以外の前記鋼材の部分を切り出し位置とし、該切り出し位置から直線状に切り出して、前記円周経路上の第1点に、該第1点に接する接線に対して直角に入るように切断するとともに、前記第1点から前記円周経路に沿って一周回って前記第1点に至るまで切断し、その後、前記第1点から該第1点に接する接線に対して直角に直線状に出るように切り逃げることを特徴とするレーザによる孔形成方法。
【請求項4】
前記切り出し位置から前記第1点まで定常速度で切断するとともに、前記第1点から切断速度を前記定常速度から減速して前記第1点から前記円周経路上の進行方向に所定距離進んだ第2点まで切断し、前記第2点から前記定常速度まで切断速度を加速して一周回って前記第1点まで切断した後、前記定常速度で切り逃げることを特徴とする請求項2又は3に記載のレーザによる孔形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鋼構造物の生産は、工場で加工した部材を現場に搬入し、ボルトや溶接で接合して組み立てることによって行われる。ここで、主要な部材のボルト接合に用いられるのが高力ボルトである。
高力ボルト用の孔には厳格な基準があり、従来、鋼材に高力ボルト用の孔を形成するに際しては、ドリルによる孔加工が行われてきた(非特許文献1参照)。しかし、ドリルによる孔加工設備は、レーザ切断設備とは異なるため、ドリルによる孔加工作業では、工程間の運搬や設定、重複した片づけなどの作業が発生し、工程負荷増やコスト増になり改善が求められていた。
【0003】
この問題を解決するため、同一のレーザ切断設備でのレーザによる孔あけが試行されてきた。しかし、鋼材に対し通常のレーザ孔あけ加工を行うと、孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチと呼ばれるノッチ状の傷を生じる(非特許文献2、3参照)。つまり、丸孔に切断すべき円周経路以外の鋼材の部分を切り出し位置として当該切り出し位置から円周経路上の切断始端部まで切断し、当該切断始端部から1周切断して切断終端部から切り逃げる場合において、切断終端部手前の切断線が入る領域で、既切断線と近接する距離が長くなり、あるいは、切断終端部から切り逃げる際の切断線が出る領域で既切断線と近接する距離が長くなることで、切断始端部と切断終端部とが重なる領域周辺における製品側の孔周上の円孔壁面(切断面)が温度上昇し、その温度上昇により製品側の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが生じるのである。このように、孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生すると、孔径の精度不良になるとともに、荷重の方向によっては疲労寿命が低下することが分かってきた(非特許文献3参照)。
【0004】
ここで、高力ボルトを用いた接合部には、様々な荷重が作用し、それらに耐えうる接合部性能が求められる。 通常の構造物の作用荷重は、自重、積載荷重、地震荷重、風荷重などであるが、用途によっては、繰り返し荷重が作用する構造物がある。例えば、工場のクレーンガーダーや橋梁の桁梁などである。これらクレーンガーダーや橋梁の桁梁などにおける高力ボルトを用いた接合部には、繰り返し荷重に対して耐えうる性能が求められ、鋼材に形成される高力ボルト用の孔には、ドリル加工と同程度の疲労特性が必要とされるのである。
【0005】
孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に発生した溶損ノッチを回復するためには、溶接による肉盛によって溶損ノッチを補修することが考えられる。しかし、ショートビードとなるばかりでなく、新たな欠陥の温床となるため、この溶接による肉盛は推奨できない(非特許文献2参照)。
一方、溶損ノッチをなくすために、積極的に切断始端部と切断終端部とを合さずに切り残して突起部を残す方法が提案されている(非特許文献2参照)。しかしながら、その突起部を残したままでは、孔径が小さくなり、工事段階で高力ボルトが通常よりも挿入しづらい、という問題が発生する。この問題を回避するために、切り残した突起部をグラインダーなどで削除することも考えられるが、全ての孔につきグラインダーで処理するためには多大な労力が発生するという問題があった。
【0006】
ここで、厚板(鋼材)に環状のレーザ切断加工を行うとき、切断終了領域における環状の穴の内周面に生じる傾向にある凹部の発生を抑制するものとして、従来、例えば、特許文献1に示すレーザ切断加工方法が知られている。
この特許文献1に示すレーザ切断加工方法は、アシストガスとして酸素を使用し、ピアス加工位置から環状に切断すべき環状経路に達した位置をA位置とし、このA位置からレーザ切断加工の進行方向に所定距離の位置をB位置とする。また、A位置からレーザ進行方向の逆方向への所定距離の位置をC位置とする。このとき、A位置からB位置を経てC位置へレーザ切断加工を行った後、C位置からA位置を経てB位置までレーザ切断加工を行う際、A位置からC位置までのレーザ出力、切断速度に対してレーザ出力を小出力にすると共に切断速度を低速にしてC位置からB位置までのレーザ切断加工を行い、B位置においてレーザ出力を零にするものである。
【0007】
この特許文献1に示すレーザ切断加工方法によれば、ワークに環状の切断加工を行うとき、環状の切断経路に沿ってレーザ切断を開始した位置からレーザ切断加工が進行し、レーザ切断の開始位置に達する前にレーザ出力を小さくし、レーザ切断速度を低速に制御する。これにより、切抜き片が傾斜して環状の内周面に接触した場合、切抜き片から内周面へ反射されるレーザ光は小出力であり、内周面に大きな凹部が形成されることを抑制することができる。
【0008】
また、例えば9mmなどの比較的板厚の厚い鋼板においても高品質のレーザによる穴あけを実現できるものとして、従来、例えば、特許文献2に示すレーザ穴明け方法が知られている。
特許文献2に示すレーザ穴明け方法は、レーザ発振器より発生したレーザ光を被加工物に照射して穴明けを行なうレーザ穴明け方法であって、レーザ光の出力条件パラメータであるレーザ出力とパルスデューティ、及び加工条件パラメータである切断速度と加工ガス圧を、穴明け切断位置に応じて同時に適正値に制御して穴明け加工するようにしたものである。
この特許文献2に示すレーザ穴明け方法によれば、穴内周の一部に生じる欠落をなくしたり、逆に切り残しのための穴内周の一部に生じる突起部が発生しないようにして、例えば9mmなどの比較的板厚の厚い鋼板の穴明けの高品質化を目的とした加工が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-115899号公報
【特許文献2】特開平4-33788号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本建築学会、建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2018
【非特許文献2】日本建築学会、鉄骨工事技術指針-工場製作編、P263-264、2018年1月
【非特許文献3】土木学会、レーザ加工孔を有する高力ボルト摩擦接合継手のすべり耐力と疲労強度、構造工学論文集 Vol.55A、2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これら特許文献1に示すレーザ切断加工方法及び特許文献2に示すレーザ穴明け方法にあっては、いずれの方法においても、切断終端部手前の切断線が入る領域における既切断線と近接する距離の長さ及び切断終端部から切り逃げる際の切断線が出る領域における既切断線と近接する距離の長さについて十分な考察がなされておらず、切断始端部と切断終端部とが重なる領域周辺における製品側の孔周上の円孔壁面(切断面)の温度上昇を十分に回避できず、製品側の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生するのを十分に回避できなかった。
従って、本発明は、鋼材に形成される丸孔の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生することを回避して孔径の精度を向上させることができる、レーザによる孔形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るレーザによる孔形成方法は、レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法であって、前記丸孔に切断すべき円周経路以外の前記鋼材の部分を切り出し位置とし、該切り出し位置から切り出して、前記円周経路上の第1点に半径が1.0mm以下の円弧で接して入るように切断するとともに、前記第1点から前記円周経路に沿って一周回って前記第1点に至るまで切断し、その後、前記第1点から半径が1.0mm以下の円弧で接して出るように切り逃げることを要旨とする。
【0013】
また、本発明の別の態様に係るレーザによる孔形成方法は、レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法であって、前記丸孔に切断すべき円周経路以外の前記鋼材の部分を切り出し位置とし、該切り出し位置から直線状に切り出して、前記円周経路上の第1点に、該第1点に接する接線に対して直角に入るように切断するとともに、前記第1点から前記円周経路に沿って一周回って前記第1点に至るまで切断し、その後、前記第1点から半径が1.0mm以下の円弧で接して出るように切り逃げることを要旨とする。
【0014】
更に、本発明の別の態様に係るレーザによる孔形成方法は、レーザ光を鋼材に照射して丸孔を形成するレーザによる孔形成方法であって、前記丸孔に切断すべき円周経路以外の前記鋼材の部分を切り出し位置とし、該切り出し位置から直線状に切り出して、前記円周経路上の第1点に、該第1点に接する接線に対して直角に入るように切断するとともに、前記第1点から前記円周経路に沿って一周回って前記第1点に至るまで切断し、その後、前記第1点から該第1点に接する接線に対して直角に直線状に出るように切り逃げることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るレーザによる孔形成方法によれば、切断終端部手前の切断線が入る領域における既切断線と近接する距離の長さを短くするとともに、切断終端部から切り逃げる際の切断線が出る領域における既切断線と近接する距離の長さを短くし、切断始端部と切断終端部とが重なる領域周辺における孔周上の円孔壁面(切断面)の温度上昇を回避してその温度上昇により孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生することを回避して孔径の精度を向上させることができる、レーザによる孔形成方法を提供できる。
【0016】
これにより、鋼材の外側を切断するレーザ切断設備と同一のレーザ切断設備において、本発明に係るレーザによる孔形成方法によって鋼材に孔あけ加工することにより、ドリル孔あけ加工との併用による工程間の運搬や設定、片付けなどの重複作業がなくなり、レーザ孔あけ加工による溶損ノッチの発生を回避し孔径の精度が向上することで、グラインダー処理をしないと高力ボルトが通常よりも挿入しづらいという問題を解決し、疲労寿命が荷重方向によらずドリル加工によるボルト孔と同等に優れたレーザ孔を得ることができる。このため、ボルト接合部のコストダウンや工期短縮、省力化を図ることができ、鋼構造物の競争力の強化や生産性向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1乃至第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法が適用されるレーザ孔あけ装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示すレーザ孔あけ装置の基本構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法を説明するための図である。
【
図4】レーザによる孔形成方法の第1参考例を説明するための図である。
【
図5】レーザによる孔形成方法の第2参考例を説明するための図である。
【
図6】レーザによる孔形成方法の第3参考例を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るレーザによる孔形成方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法を説明するための図である。
【
図9】本発明の効果を検証するための実施例において作成したサンプル(鋼材)を説明するための平面図である。
【
図10】サンプルに形成された丸孔の座標基準による内径の測定方法を説明するための図である。
【
図11】サンプルに形成された丸孔の溶損ノッチ基準による内径の測定方法を説明するための図である。
【
図12】サンプルに形成された丸孔の座標基準による内径及び溶損ノッチ基準による内径を測定する際の直角度を説明するための図である。
【
図13】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果を示すグラフである。
【
図14】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果を示すグラフである。
【
図15】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果を示すグラフである。
【
図16】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果を示すグラフである。
【
図17】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果を示すグラフである。
【
図18】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果を示すグラフである。
【
図19】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果を示すグラフである。
【
図20】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果を示すグラフである。
【
図21】鋼材の板厚が6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果を示すグラフである。
【
図22】比較例1による孔形成方法を説明するための図である。
【
図23】比較例2による孔形成方法を説明するための図である。
【
図24】比較例3による孔形成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るレーザによる孔形成方法について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0019】
(レーザ孔あけ装置の構成)
図1には、本発明の第1乃至第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法が適用されるレーザ孔あけ装置の概略構成が示され、
図2には、
図1に示すレーザ孔あけ装置の基本構成が示されている。
図1及び
図2に示すレーザ孔あけ装置1は、レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成するものである。レーザ孔あけ装置1は、孔あけ対象となる鋼材Sの両端の外側に設置される一対のレール2上をX軸方向に走行可能な一対のX軸方向移動部材3と、一対のX軸方向移動部材3間を連結するY軸方向延伸部材4と、Y軸方向延伸部材4に沿ってY軸方向に移動可能なレーザ加工ヘッド5とを備えている。レーザ加工ヘッド5は、X軸方向移動部材3がX軸方向に沿って走行することでX軸方向に移動し、Y軸方向延伸部材4に沿って移動することでY軸方向に移動し、また、Z軸方向にも移動可能となっている。また、レーザ孔あけ装置1は、X軸方向移動部材3のX軸方向の走行及びレーザ加工ヘッド5のY軸方向及びZ軸方向の移動を制御するとともに、後述するレーザ発振器7の出力等を制御する制御装置を内蔵した制御ボックス6を備えている。
【0020】
そして、レーザ孔あけ装置1のレーザ加工ヘッド5は、
図2に示すように、レーザ発振器7から発振されたレーザ光LBを、内装した集光レンズ8によって集光して鋼材Sに照射する。また、レーザ加工ヘッド5には、鋼材Sに対して丸孔を形成する際に、アシストガスを鋼材Sへ噴射するためのアシストガス供給手段9が接続されている。レーザ発振器7は、CO
2レーザ発振器あるいはファイバーレーザ発振器である。また、アシストガスは、酸素である。
【0021】
(第1実施形態)
次に、
図1及び
図2に示すレーザ孔あけ装置1を用いて、レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成する本発明の第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法について、
図3を参照して説明する。
孔あけの対象となる鋼材Sの板厚は、特に限定されないが、本実施形態では、6mm~16mm程度とする。また、鋼材Sの材質は、炭素鋼、ステンレス鋼など特に限定されない。
レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成するに際し、レーザ加工ヘッド5のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の移動を制御することで、次のように切断する。
先ず、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとする。
【0022】
次いで、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に半径R1が1.0mm以下の円弧13で接して入るように切断する。本実施形態では、具体的に、半径R1が1.0mmの円弧13で第1点P1に接して入るように切断する。
次いで、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断する。
その後、第1点P1から半径R2が1.0mm以下の円弧16で接して直線状に出るように切り逃げる。本実施形態では、具体的に、半径R2が1.0mmの円弧13で第1点P1から出るように切断する。
【0023】
これにより、鋼材Sに丸孔H(
図2に示すように鋼材Sを貫通する貫通孔)が形成される。
この丸孔Hの形成における切り出し位置CPから最後までの切断線は、切り出し位置CPから円弧13に至るまでの直線状の切断線12、円弧13、第1点P1から円周経路11上に沿って180°進行した所定点に至るまでの切断線14、この所定点から第1点P1に至るまでの切断線15、円弧16、及びこの円弧16の端部から最後までの直線状の切断線17となる。
【0024】
なお、レーザ光LBによる切断速度は、鋼材Sの板厚に応じて適宜決定され、本実施形態においては、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで一定の速度(例えば、1200mm/min)で切断を行う。また、レーザ発振器7の出力は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで一定の出力(例えば、3000kw)である。また、レーザ発振器7の周波数は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで一定の周波数(例えば、1000Hz)である。また、レーザ発振器7のデューティ比は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで一定のデューティ比(例えば、60%)である。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで一定のガス圧(例えば、27KPa)である。
【0025】
このように、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に半径R1が1.0mm以下の円弧13で接して入るように切断する。そして、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R2が1.0mm以下の円弧16で接して出るように切り逃げる。
【0026】
これにより、切断終端部(第1点P1)手前の切断線15が入る領域における既切断線12及び円弧13と近接する距離の長さを短くするとともに、切断終端部(第1点P1)から切り逃げる際の円弧16及び切断線17が出る領域における既切断線14と近接する距離の長さを短くし、切断始端部(第1点P1)と切断終端部(第1点P1)とが重なる領域周辺における丸孔Hの孔周上の円孔壁面(切断面)の温度上昇を回避してその温度上昇により製品側の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生するのを回避して孔径の精度を向上させることができる。
【0027】
これにより、鋼材Sの外側を切断するレーザ切断設備と同一のレーザ切断設備において、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法によって鋼材Sに孔あけ加工することにより、ドリル孔あけ加工との併用による工程間の運搬や設定、片付けなどの重複作業がなくなり、レーザ孔あけ加工による溶損ノッチの発生を回避し孔径の精度が向上することで、グラインダー処理をしないと高力ボルトが通常よりも挿入しづらいという問題を解決し、疲労寿命が荷重方向によらずドリル加工によるボルト孔と同等に優れたレーザ孔を得ることができる。このため、ボルト接合部のコストダウンや工期短縮、省力化を図ることができ、鋼構造物の競争力の強化や生産性向上に寄与する。
【0028】
ここで、切り出し位置CPから切り出して、円周経路11上の第1点P1に半径R1が1.0mmより大きな円弧13で接して入るように切断すると、所定点から第1点P1に至るまでの切断線15が、切断済みの切り出し位置CPから円弧13に至るまでの切断線12及び円弧13と近接状態にある距離が長くなる。このため、切断終端部(第1点P1)周辺で、急激な温度上昇によるセルフバーニング現象が発生し、切断線15の外側(製品側)の切断面に溶損ノッチや凹凸が発生し、切断面の粗さが著しく低下する。このため、切り出し位置CPから切り出して、円周経路11上の第1点P1に半径R1が1.0mm以下の円弧13で接して入るように切断する。
【0029】
また、第1点P1から半径R2が1.0mmよりも大きな円弧16で接して出るように切り逃げるとすると、円弧16及び円弧16の端部から最後までの直線状の切断線17が、切断済みの第1点P1から円周経路11上に沿って180°進行した所定点に至るまでの切断線14と近接状態にある距離が長くなる。このため、溶損ノッチが発生し易く、また、切断線14の外側(製品側)の孔内壁への熱影響が大きくなることで、表面形状を損ねることになる。このため、第1点P1から半径R2が1.0mm以下の円弧16で接して出るように切り逃げる。
【0030】
次に、
図4に示す第1参考例に係るレーザによる孔形成方法について、説明する。
第1参考例に係るレーザによる孔形成方法の場合、先ず、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとする。
次いで、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の前述の第1点P1よりも進行方向に所定距離離れた点P11に比較的大きな半径の円弧112で接して入るように切断する。
次いで、点P11から円周経路11に沿って一周回って前述の第1点P1に対し進行逆方向に所定距離離れた点P12に至るまで切断する。
その後、点P12から比較的大きな半径の円弧115で接して直線状に出るように切り逃げる。
【0031】
この第1参考例に係るレーザによる孔形成方法の場合、
図4に示すように、丸孔Hの孔周上の切断始端部(点P11)の周辺と切断終端部(点P12)の周辺とが重なることが回避されているので、丸孔Hの孔周上の円孔壁面に溶損ノッチが発生することはない。しかし、円弧112と円弧115との間に突起部116が形成されるので、レーザによる孔形成後に突起部116を除去する必要がある。この突起部116をグラインダーなどで除去する場合、全ての孔につきグラインダーで処理するためには多大な労力が発生する。
これに対して、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法の場合、丸孔Hを形成した後に丸孔Hの内周面に突起部が残ることはないので、グラインダーなどで除去する必要はない。
【0032】
次に、
図5に示す第2参考例に係るレーザによる孔形成方法について、説明する。
第2参考例に係るレーザによる孔形成方法の場合、先ず、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分であって前述の第1点P1に対して進行方向と反対側の部分を切り出し位置CPとする。
次いで、切り出し位置CPから曲線状に切り出して、円周経路11上の前述の第1点P1よりも進行方向に所定距離離れた点P13に比較的大きな半径の円弧118で接して入るように切断する。
次いで、点P13から円周経路11に沿って一周回って前述の第1点P1に対し進行逆方向に所定距離離れた点P14に至るまで切断する。
その後、点P14から比較的大きな半径の円弧121で接して曲線状に前述の第1点P1に対して進行方向側に出るように切り逃げる。
【0033】
この第2参考例に係るレーザによる孔形成方法の場合、
図5に示すように、丸孔Hの孔周上の切断始端部(点P13)の周辺と切断終端部(点P14)の周辺とが重なることが回避されているので、丸孔Hの孔周上の円孔壁面に溶損ノッチが発生することはない。しかし、円弧118と円弧121との間に突起部122が形成されるので、レーザによる孔形成後に突起部122を除去する必要がある。この突起部122をグラインダーなどで除去する場合、全ての孔につきグラインダーで処理するためには多大な労力が発生する。
【0034】
次に、
図6に示す第3参考例に係るレーザによる孔形成方法について、説明する。
第3参考例に係るレーザによる孔形成方法の場合、先ず、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとする。
次いで、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の前述の第1点P1に半径0mmの円弧である直角に入るように切断する。
次いで、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に対し進行逆方向に所定距離離れた点P15に至るまで切断し、切断を終了する。
【0035】
この第3参考例に係るレーザによる孔形成方法の場合、
図6に示すように、丸孔Hの孔周上の切断始端部(第1点P1)の周辺と切断終端部(点P15)の周辺とが重なることが回避されているので、丸孔Hの孔周上の円孔壁面に溶損ノッチが発生することはない。しかし、第1点P1と点P15との間に突起部126が形成されるので、この突起部126を叩いて削除する必要がある。全ての孔につき突起部126を叩いて削除するためには多大な労力が発生する。
これに対して、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法の場合、丸孔Hを形成した後に丸孔Hの内周面に突起部が残ることはないので、グラインダーなどで除去する必要はない。
【0036】
(第2実施形態)
次に、
図1及び
図2に示すレーザ孔あけ装置1を用いて、レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成する本発明の第2実施形態に係るレーザによる孔形成方法について、
図7を参照して説明する。
孔あけの対象となる鋼材Sの板厚及び材質は、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法の孔あけの対象となる鋼材Sと同様である。
レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成するに際し、レーザ加工ヘッド5のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の移動を制御することで、次のように切断する。
先ず、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法と同様に、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとする。
【0037】
次いで、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断する。
次いで、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断する。
その後、第1点P1から半径R3が1.0mm以下の円弧21で接して直線状に出るように切り逃げる。本実施形態では、具体的に、半径R3が1.0mmの円弧21で第1点P1から出るように切断する。
【0038】
これにより、鋼材Sに丸孔H(
図2に示すように鋼材Sを貫通する貫通孔)が形成される。
この丸孔Hの形成における切り出し位置CPから最後までの切断線は、切り出し位置CPから第1点P1に至るまでの直線状の切断線18、第1点P1から円周経路11上に沿って180°進行した所定点に至るまでの切断線19、この所定点から第1点P1に至るまでの切断線20、円弧21、及びこの円弧21の端部から最後までの直線状の切断線22となる。
【0039】
なお、レーザ光LBによる切断速度につき説明すると、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度(例えば、1200mm/min)で切断する。この定常速度は、鋼材Sの板厚に応じて適宜決定される。そして、第1点P1から切断速度を定常速度から減速(例えば、90%程度減速≒110mm/minまで減速)して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(例えば、2mm程度)進んだ第2点P2まで切断する。その後、第2点P2から切断速度を前述の定常速度まで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、前述の記定常速度で切り逃げる。
【0040】
また、レーザ発振器7の出力は、定常速度で切断する場合及び減速した速度で切断する場合とも、一定の出力(例えば、3000kw)である。また、レーザ発振器7の周波数は、定常速度で切断する場合が一定の周波数(例えば、1000Hz)、減速した速度で切断する場合が一定の周波数(例えば、10Hz)である。また、また、レーザ発振器7のデューティ比は、定常速度で切断する場合が、一定のデューティ比(例えば、60%)、減速した速度で切断する場合、一定のデューティ比(例えば、25%)である。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、定常速度で切断する場合が、一定のガス圧(例えば、27KPa)、減速した速度で切断する場合、一定のガス圧(例えば、35KPa)である。
【0041】
このように、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断する。そして、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R3が1.0mm以下の円弧21で接して出るように切り逃げる。
【0042】
これにより、切断終端部(第1点P1)手前の切断線20が入る領域における既切断線18と近接する距離の長さを短くするとともに、切断終端部(第1点P1)から切り逃げる際の円弧21及び切断線22が出る領域における既切断線19と近接する距離の長さを短くし、切断始端部(第1点P1)と切断終端部(第1点P1)とが重なる領域周辺における丸孔Hの孔周上の円孔壁面(切断面)の温度上昇を回避してその温度上昇により製品側の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生するのを回避して孔径の精度を向上させることができる。
【0043】
これにより、鋼材Sの外側を切断するレーザ切断設備と同一のレーザ切断設備において、第2実施形態に係るレーザによる孔形成方法によって鋼材Sに孔あけ加工することにより、ドリル孔あけ加工との併用による工程間の運搬や設定、片付けなどの重複作業がなくなり、レーザ孔あけ加工による溶損ノッチの発生を回避し孔径の精度が向上することで、グラインダー処理をしないと高力ボルトが通常よりも挿入しづらいという問題を解決し、疲労寿命が荷重方向によらずドリル加工によるボルト孔と同等に優れたレーザ孔を得ることができる。このため、ボルト接合部のコストダウンや工期短縮、省力化を図ることができ、鋼構造物の競争力の強化や生産性向上に寄与する。
【0044】
ここで、切り出し位置CPから切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対し直角に入るように切断するので、所定点から第1点P1に至るまでの切断線20が、切断済みの切り出し位置CPから第1点P1に至るまでの切断線18と近接状態にある距離がほとんどない。このため、切断終端部(第1点P1)周辺で、急激な温度上昇によるセルフバーニング現象が発生することはなく、切断線20の外側(製品側)の切断面に溶損ノッチや凹凸が発生することが回避され、切断面の粗さが著しく低下することはない。
なお、円周経路11上の第1点P1に、接線30に対し直角に入るように切断するのが好ましいが、若干鋭角になったり鈍角になっても構わない。
【0045】
また、第1点P1から半径R3が1.0mmよりも大きな円弧21で接して出るように切り逃げるとすると、円弧21及び円弧21の端部から最後までの直線状の切断線22が、切断済みの第1点P1から円周経路11上に沿って180°進行した所定点に至るまでの切断線19と近接状態にある距離が長くなる。このため、溶損ノッチが発生し易く、また、切断線14の外側(製品側)の孔内壁への熱影響が大きくなることで、表面形状を損ねることになる。このため、第1点P1から半径R3が1.0mm以下の円弧21で接して出るように切り逃げる。
【0046】
また、第2実施形態に係るレーザによる孔形成方法では、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度で切断するとともに、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法と異なり、第1点P1から切断速度を定常速度から減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離進んだ第2点P2まで切断する。これにより、機体の一次停止状態から切断に移行する際の、急激な速度変化による、切断面品質の不良抑制という効果が得られる。
【0047】
なお、第1点P1から第2点P2までの切断における減速する速度は、切り出し位置CPから第1点P1に至るまでの切断における定常速度に対し、5.0%~10.0%まで減速することが好ましい。10.0%超えへの減速では、減速すると同時にレーザビームのデューティ比を落として鋼板にかかる熱量を落としているため、速度のわりに熱量が不足して、切断面品質が悪化するというデメリットがある。一方、5.0%未満への減速では、通常切断速度との差異が大きくなって、通常切断速度に加速する際の速度差がより大きくなり、切り替え時の切断面品質が悪化するリスクが増大するというデメリットがある。
そして、第2実施形態に係るレーザによる孔形成方法では、第2点P2から定常速度まで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、定常速度で切り逃げる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、
図1及び
図2に示すレーザ孔あけ装置1を用いて、レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成する本発明の第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法について、
図8を参照して説明する。
孔あけの対象となる鋼材Sの板厚及び材質は、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法の孔あけの対象となる鋼材Sと同様である。
レーザ光LBを鋼材Sに照射して丸孔Hを形成するに際し、レーザ加工ヘッド5のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の移動を制御することで、次のように切断する。
【0049】
先ず、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法と同様に、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとする。
次いで、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断する。
次いで、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断する。
その後、第1点P1から第1点P1に接する接線30に対して直角に直線状に出るように切り逃げる。
【0050】
これにより、鋼材Sに丸孔H(
図2に示すように鋼材Sを貫通する貫通孔)が形成される。
この丸孔Hの形成における切り出し位置CPから最後までの切断線は、切り出し位置CPから第1点P1に至るまでの直線状の切断線23、第1点P1から円周経路11上に沿って180°進行した所定点に至るまでの切断線24、この所定点から第1点P1に至るまでの切断線25、及びこの第1点P1から最後までの直線状の切断線26となる。
【0051】
なお、レーザ光LBによる切断速度につき説明すると、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度(例えば、1200mm/min)で切断する。この定常速度は、鋼材Sの板厚に応じて適宜決定される。そして、第1点P1から切断速度を定常速度から減速(例えば、90%程度減速≒110mm/minまで減速)して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(例えば、2mm程度)進んだ第2点P2まで切断する。その後、第2点P2から切断速度を前述の定常速度まで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、前述の記定常速度で切り逃げる。
【0052】
また、レーザ発振器7の出力は、定常速度で切断する場合及び減速した速度で切断する場合とも、一定の出力(例えば、3000kw)である。また、レーザ発振器7の周波数は、定常速度で切断する場合が一定の周波数(例えば、1000Hz)、減速した速度で切断する場合が一定の周波数(例えば、10Hz)である。また、また、レーザ発振器7のデューティ比は、定常速度で切断する場合が、一定のデューティ比(例えば、60%)、減速した速度で切断する場合、一定のデューティ比(例えば、25%)である。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、定常速度で切断する場合が、一定のガス圧(例えば、27KPa)、減速した速度で切断する場合、一定のガス圧(例えば、35KPa)である。
【0053】
このように、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断する。そして、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から第1点P1に接する接線30に対して直角に直線状に出るように切り逃げる。
【0054】
これにより、切断終端部(第1点P1)手前の切断線25が入る領域における既切断線23と近接する距離の長さを短くするとともに、切断終端部(第1点P1)から切り逃げる際の切断線26が出る領域における既切断線24と近接する距離の長さを短くし、切断始端部(第1点P1)と切断終端部(第1点P1)とが重なる領域周辺における丸孔Hの孔周上の円孔壁面(切断面)の温度上昇を回避してその温度上昇により製品側の孔周上の切断始端部と切断終端部との会合位置の円孔壁面に溶損ノッチが発生するのを回避して孔径の精度を向上させることができる。
【0055】
これにより、鋼材Sの外側を切断するレーザ切断設備と同一のレーザ切断設備において、第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法によって鋼材Sに孔あけ加工することにより、ドリル孔あけ加工との併用による工程間の運搬や設定、片付けなどの重複作業がなくなり、レーザ孔あけ加工による溶損ノッチの発生を回避し孔径の精度が向上することで、グラインダー処理をしないと高力ボルトが通常よりも挿入しづらいという問題を解決し、疲労寿命が荷重方向によらずドリル加工によるボルト孔と同等に優れたレーザ孔を得ることができる。このため、ボルト接合部のコストダウンや工期短縮、省力化を図ることができ、鋼構造物の競争力の強化や生産性向上に寄与する。
【0056】
ここで、切り出し位置CPから切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断するので、所定点から第1点P1に至るまでの切断線25が、切断済みの切り出し位置CPから第1点P1に至るまでの切断線23と近接状態にある距離がほとんどない。このため、切断終端部(第1点P1)周辺で、急激な温度上昇によるセルフバーニング現象が発生することはなく、切断線25の外側(製品側)の切断面に溶損ノッチや凹凸が発生することが回避され、切断面の粗さが著しく低下することはない。
なお、円周経路11上の第1点P1に、接線30に対し直角に入るように切断するのが好ましいが、若干鋭角になったり鈍角になっても構わない。
【0057】
また、第1点P1から第1点P1に接する接線30に対して直角に直線状に出るように切り逃げるので、第1点P1から最後までの直線状の切断線26が、切断済みの第1点P1から円周経路11上に沿って180°進行した所定点に至るまでの切断線24と近接状態にある距離がほとんどない。このため、溶損ノッチが発生し難く、また、切断線24の外側(製品側)の孔内壁への熱影響が小さくなることで、表面形状を損ねることはない。
ここで、第1点P1から第1点P1に接する接線30に対して直角に直線状に出るように切り逃げるのが好ましいが、若干鋭角になったり鈍角になっても構わない。
【0058】
また、第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法では、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度で切断するとともに、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法と異なり、第1点P1から切断速度を定常速度から減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離進んだ第2点P2まで切断する。これにより、機体の一時停止状態から切断に移行する際の、急激な速度変化による、切断面品質の不良抑制という効果が得られる。
【0059】
なお、第1点P1から第2点P2までの切断における減速する速度は、切り出し位置CPから第1点P1に至るまでの切断における定常速度に対し、5.0%~10.0%まで減速することが好ましい。10.0%超えへの減速では、減速すると同時にレーザビームのデューティ比を落として鋼板にかかる熱量を落としているため、速度のわりに熱量が不足して、切断面品質が悪化するというデメリットがある。一方、5.0%未満への減速では、通常切断速度との差異が大きくなって、通常切断速度に加速する際の速度差がより大きくなり、速度切り替え時の切断面品質が悪化するリスクが増大するというデメリットがある。
【0060】
そして、第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法では、第2点P2から切断速度を定常速度まで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、定常速度で切り逃げる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、切断速度、レーザ発振器7の出力、レーザ発振器7の周波数、レーザ発振器7のデューティ比、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、説明した例に限られない。
また、第2実施形態及び第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法において、第1点P1から定常速度を減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離進んだ第2点P2まで切断しているが、第1点P1から第2点まで切断速度を減速せずに定常速度で切断しても良い。
【実施例0061】
本発明の効果を検証すべく、鋼材Sの材質が規格SS400、鋼材Sの板幅Wが150mm、鋼材Sの板長Lが300mm、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれの鋼材Sにつき、
図9に示すように、実施例1による孔形成方法によって2つ、実施例2による孔形成方法によって丸孔2つ、実施例3による孔形成方法によって丸孔4つを形成したサンプル(合計3つ)を作成した。
各サンプルにおいて、表面処理は黒皮のままであった。
【0062】
また、実施例1による孔形成方法、実施例2による孔形成方法、及び実施例3による孔形成方法によって形成される丸孔は、真円でそれぞれの孔径はΦ21.65mmであり、レーザ孔あけ装置として、CO
2レーザ切断機を用いた。
実施例1による孔形成方法は、第1実施形態に係るレーザによる孔形成方法(
図3参照)に対応し、先ず、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に半径R1が1.0mmの円弧13で接して入るように切断する。そして、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R2が1.0mmの円弧16で接して直線状に出るように切り逃げた。
【0063】
この実施例1による孔形成方法におけるレーザ光LBによる切断速度は、板厚Tが6mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1200mm/minで切断を行い、板厚Tが9mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1100mm/minで切断を行い、板厚Tが12mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1000mm/minで切断を行った。また、レーザ発振器7の出力は、板厚Tが6mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで3000kwであり、板厚Tが9mmのサンプルでも切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで3000kwであり、板厚Tが12mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで3200kwであった。また、レーザ発振器7の周波数は、板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルで、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1000Hzであった。また、レーザ発振器7のデューティ比は、板厚Tが6mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで60%であり、板厚Tが9mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで65%であり、板厚Tが12mmのサンプルでは、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで65%であった。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、板厚Tが6mm、9mm、12mmとも、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで27KPaであった。
【0064】
実施例2による孔形成方法は、第2実施形態に係るレーザによる孔形成方法(
図7参照)に対応し、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断する。そして、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R3が1.0mm以下の円弧21で接して直線状に出るように切り逃げた。
【0065】
この実施例2による孔形成方法におけるレーザ光LBによる切断速度は、板厚Tが6mmのサンプルでは、切り出し位置CPから第1点P1まで1200mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を110mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から前述の1200mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1200mm/minで切り逃げた。また、板厚Tが9mmのサンプルでは、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度1100mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を95mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から前述の1100mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1100mm/minで切り逃げた。また、板厚Tが12mmのサンプルでは、切り出し位置CPから第1点P1まで1000mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を75mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から前述の1000mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1000mm/minで切り逃げた。
【0066】
また、レーザ発振器7の出力は、板厚Tが6mm、9mmのサンプルでは、定常速度で切断する場合及び減速した速度で切断する場合とも、3000kwであり、板厚Tが12mmのサンプルでは、定常速度で切断する場合が3200kw、減速した速度で切断する場合が3200kwであった。
また、レーザ発振器7の周波数は、板厚Tが6mm、9mm、12mmの場合とも、定常速度で切断する場合が1000Hz、減速した速度で切断する場合が10Hz)であった。また、レーザ発振器7のデューティ比は、板厚Tが6mmの場合には、定常速度で切断する場合が60%、減速した速度で切断する場合が25%であり、板厚Tが9mm、12mmの場合には、定常速度で切断する場合が65%、減速した速度で切断する場合が25%であった。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、板厚Tが6mm、9mm、12mmの場合とも、定常速度で切断する場合が27KPa、減速した速度で切断する場合が35KPaであった。
【0067】
また、実施例3による孔形成方法は、第3実施形態に係るレーザによる孔形成方法(
図8参照)に対応し、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線30に対して直角に入るように切断する。そして、第1点P1から円周経路11に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から第1点P1に接する接線30に対して直角に直線状に出るように切り逃げた。
【0068】
この実施例3による孔形成方法におけるレーザ光LBによる切断速度は、板厚Tが6mmのサンプルでは、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度1200mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を110mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から前述の1200mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1200mm/minで切り逃げた。また、板厚Tが9mmのサンプルでは、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度1100mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を95mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から前述の1100mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1100mm/minで切り逃げた。また、板厚Tが12mmのサンプルでは、切り出し位置CPから第1点P1まで定常速度1000mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を75mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から前述の1000mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1000mm/minで切り逃げた。
【0069】
また、レーザ発振器7の出力、レーザ発振器7の周波数、レーザ発振器7のデューティ比、及びアシストガスとしての酸素のガス圧力については、実施例2による孔形成方法と同様である。
そして、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルにつき、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔、及び実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔のそれぞれの座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)(
図10及び
図12参照)、溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)、及び溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)(
図11及び
図12参照)を測定した。
【0070】
鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果を表1及び
図13に示す。表1及び
図13における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)のそれぞれの平均値を示している。
【0071】
【0072】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果を表2及び
図14に示す。表2及び
図14における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)のそれぞれの平均値を示している。
【0073】
【0074】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果を表3及び
図15に示す。表3及び
図15における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)のそれぞれの平均値を示している。
【0075】
【0076】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果を表4及び
図16に示す。表4及び
図16における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)のそれぞれの平均値を示している。
【0077】
【0078】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果を表5及び
図17に示す。表5及び
図17における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)のそれぞれの平均値を示している。
【0079】
【0080】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果を表6及び
図18に示す。表6及び
図18における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)のそれぞれの平均値を示している。
【0081】
【0082】
更に、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果を表7及び
図19に示す。表7及び
図19における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)のそれぞれの平均値を示している。
【0083】
【0084】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果を表8及び
図20に示す。表8及び
図20における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)のそれぞれの平均値を示している。
【0085】
【0086】
更に、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果を表9及び
図21に示す。表9及び
図21における測定結果においては、各板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)のそれぞれの平均値を示している。
【0087】
【0088】
そして、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表1、
図13)より算出された当該丸孔の直角度(平均値)及び真円度(平均値)、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果(表4、
図16)から算出された表面側の溶損ノッチの深さ(平均値)、及び当該丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果(表7、
図19)から算出された裏面側の溶損ノッチの深さ(平均値)を、表10に示す。
【0089】
【0090】
また、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表2、
図14)より算出された当該丸孔の直角度(平均値)及び真円度(平均値)、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果(表5、
図17)から算出された表面側の溶損ノッチの深さ(平均値)、及び当該丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果(表8、
図20)から算出された裏面側の溶損ノッチの深さ(平均値)を、表11に示す。
【0091】
【0092】
更に、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについての、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表3、
図15)より算出された当該丸孔の直角度(平均値)及び真円度(平均値)、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果(表6、
図18)から算出された表面側の溶損ノッチの深さ(平均値)、及び当該丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果(表9、
図21)から算出された裏面側の溶損ノッチの深さ(平均値)を、表12に示す。
【0093】
【0094】
(座標基準による内径の測定結果について)
表10に示すように、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表1、
図13)より算出された当該丸孔の直角度(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルにつき、-0.13mm~+0.05mmの範囲であった。また、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表1、
図13)より算出された当該丸孔の真円度(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルにつき、-0.06mm~0.00mmの範囲であった。
【0095】
また、表11に示すように、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表2、
図14)より算出された当該丸孔の直角度(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルにつき、-0.09mm~+0.02mmの範囲であった。また、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表2、
図14)より算出された当該丸孔の真円度(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルにつき、-0.05mm~+0.02mmの範囲であった。
【0096】
更に、表12に示すように、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表3、
図15)より算出された当該丸孔の直角度(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルにつき、-0.11mm~+0.05mmの範囲であった。また、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の座標基準による内径A(表)、B(表)、A(裏)、B(裏)の測定結果(表3、
図15)より算出された当該丸孔の真円度(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのサンプルにつき、-0.06mm~+0.05mmの範囲であった。
【0097】
従って、実施例1乃至3による孔形成方法によって形成された丸孔の直角度(平均値)の絶対値はいずれも0.13mm以下であり、当該丸孔の真円度(平均値)の絶対値はいずれも0.06mm以下であり、当該丸孔の直角度及び真円度はいずれも十分に小さく、表面側、裏面側とも、内径の平坦部の測定結果全体のばらつきは少なかった。
【0098】
(溶損ノッチ基準による内径の測定結果について)
(1)表面側
表10に示すように、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果(表4、
図16)から算出された表面側の溶損ノッチの深さ(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについて、0.00mm~+0.05mmの範囲であった。
【0099】
また、表11に示すように、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果(表5、
図17)から算出された表面側の溶損ノッチの深さ(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについて、-0.04mm~+0.06mmの範囲であった。
【0100】
更に、表12に示すように、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による表側内径C(表凹)、C(表凸)、D(表)、E(表)、F(表)の測定結果(表6、
図18)から算出された表面側の溶損ノッチの深さ(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについて、-0.04mm~+0.06mmの範囲であった。
【0101】
従って、実施例1乃至3による孔形成方法によって形成された丸孔の表面側の溶損ノッチの深さは、-0.04mm~+0.06mmの範囲であり、当該溶損ノッチの深さは十分に小さく、内径の測定結果全体のばらつきは少なかった。なお、JASS6の基準では、溶損ノッチの深さは±0.50mm以下で基準を満たし、正負計では溶損ノッチの深さは1.00mm以下で基準を満たす。
【0102】
(2)裏面側
表10に示すように、実施例1による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果(表7、
図19)から算出された裏面側の溶損ノッチの深さ(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについて、-0.05mm~+0.07mmの範囲であった。
【0103】
また、表11に示すように、実施例2による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果(表8、
図20)から算出された裏面側の溶損ノッチの深さ(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについて、-0.07mm~+0.07mmの範囲であった。
【0104】
更に、表12に示すように、実施例3による孔形成方法によって形成された丸孔の溶損ノッチ基準による裏側内径C(裏凹)、C(裏凸)、D(裏)、E(裏)、F(裏)の測定結果(表9、
図21)から算出された裏面側の溶損ノッチの深さ(平均値)は、鋼材Sの板厚Tが6mm、9mm、12mmのそれぞれのサンプルについて、-0.07mm~+0.07mmの範囲であった。
【0105】
従って、実施例1乃至3による孔形成方法によって形成された丸孔の裏面側の溶損ノッチの深さは、-0.07mm~+0.07mmの範囲であり、当該溶損ノッチの深さは十分に小さく、内径の測定結果全体のばらつきは少なかった。なお、JASS6の基準では、溶損ノッチの深さは±0.50mm以下で基準を満たし、正負計では溶損ノッチの深さは1.00mm以下で基準を満たす。
【0106】
また、本発明の効果を検証すべく、鋼材Sの材質が規格SS400、鋼材Sの板幅Wが150mm、鋼材Sの板長Lが300mm、鋼材Sの板厚Tが12mmの鋼材Sにつき、比較例1による孔形成方法によって丸孔6つ(
図22における半径R4が3mmで切断するもの2つ、半径R4が4.5mmで切断するもの2つ、半径R4が6mmで切断するもの2つ)、比較例2による孔形成方法によって丸孔6つ(
図23における半径R5が3mmで切断するもの2つ、半径R5が4.5mmで切断するもの2つ、半径R5が6mmで切断するもの2つ)、比較例3による孔形成方法によって丸孔6つ(
図24における半径R6及び半径R7が3mmで切断するもの2つ、半径R6及び半径R7が4.5mmで切断するもの2つ、半径R6及び半径R7が6mmで切断するもの2つ)を形成したサンプル(合計9つ)を作成した。
各サンプルにおいて、表面処理は黒皮のままであった。
【0107】
また、比較例1による孔形成方法、比較例2による孔形成方法、及び比較例3による孔形成方法によって形成される丸孔は、真円でそれぞれの孔径はΦ18mmであり、レーザ孔あけ装置として、CO
2レーザ切断機を用いた。
比較例1による孔形成方法は、
図22に示されており、先ず、丸孔Hに切断すべき円周経路以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路上の第1点P1に半径R4がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して入るように切断し、第1点P1から円周経路に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から第1点P1に接する接線に対して直角に直線状に出るように切り逃げた(
図22においては第1点P1に接する接線は省略されている)。
【0108】
この比較例1による孔形成方法におけるレーザ光LBによる切断速度は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1050mm/minで切断を行った。また、レーザ発振器7の出力は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで3600kwであった。また、レーザ発振器7の周波数は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1000Hzであった。また、レーザ発振器7のデューティ比は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで60%であった。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで36KPaであった。
【0109】
比較例2による孔形成方法は、
図23に示されており、丸孔Hに切断すべき円周経路以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路11上の第1点P1に、第1点P1に接する接線に対して直角に入るように切断し、第1点P1から円周経路に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R5がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して直線状に出るように切り逃げた(
図23においては第1点P1に接する接線は省略されている)。
【0110】
この比較例2による孔形成方法におけるレーザ光LBによる切断速度は、切り出し位置CPから第1点P1まで1050mm/minで切断し、第1点P1から切断速度を80mm/minまで減速して第1点P1から円周経路11上の進行方向に所定距離(2mm)進んだ第2点P2まで切断し、第2点P2から切断速度を前述の1050mm/minまで加速して一周回って第1点P1まで切断した後、1050mm/minで切り逃げた。また、レーザ発振器7の出力は、定常速度で切断する場合及び減速した速度で切断する場合とも、3600kwであった。また、レーザ発振器7の周波数は、定常速度で切断する場合が1000Hz、減速した速度で切断する場合が10Hzであった。また、レーザ発振器7のデューティ比は、定常速度で切断する場合が60%、減速した速度で切断する場合が25%であった。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、定常速度で切断する場合が36KPa、減速した速度で切断する場合が37KPaであった。
【0111】
また、比較例3による孔形成方法は、
図24に示されており、丸孔Hに切断すべき円周経路11以外の鋼材Sの部分を切り出し位置CPとし、切り出し位置CPから直線状に切り出して、円周経路上の第1点P1に半径R6がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して入るように切断し、第1点P1から円周経路に沿って一周回って第1点P1に至るまで切断し、その後、第1点P1から半径R7がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して直線状に出るように切り逃げた。
【0112】
この比較例3による孔形成方法におけるレーザ光LBによる切断速度は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1050mm/minで切断を行った。また、レーザ発振器7の出力は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで3600kwであった。また、レーザ発振器7の周波数は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで1000Hzであった。また、レーザ発振器7のデューティ比は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで60%であった。また、アシストガスとしての酸素のガス圧力は、切り出し位置CPの切り出しから最後の切り逃げまで36KPaであった。
【0113】
そして、比較例1による孔形成方法によって丸孔6つ(
図22における半径R4が3mmで切断するもの2つ、半径R4が4.5mmで切断するもの2つ、半径R4が6mmで切断するもの2つ)、比較例2による孔形成方法によって丸孔6つ(
図23における半径R5が3mmで切断するもの2つ、半径R5が4.5mmで切断するもの2つ、半径R5が6mmで切断するもの2つ)、及び比較例3による孔形成方法によって丸孔6つ(
図24における半径R6及び半径R7が3mmで切断するもの2つ、半径R6及び半径R7が4.5mmで切断するもの2つ、半径R6及び半径R7が6mmで切断するもの2つ)のそれぞれの丸孔について、切断面の品質について調査した。
調査結果を表13に示す。
【0114】
【0115】
表13に示すように、比較例1(円周経路上の第1点P1に半径R4がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して入るように切断する場合)及び比較例3(円周経路上の第1点P1に半径R6がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して入るように切断する場合)においては、円弧の半径が1.0mmよりも大きく、1周切断後の切断線が入る領域(
図22及び
図24におけるA領域)で、既切断線と近接する距離が長くなるため、温度上昇により、新切断線の製品側切断面の品質が粗くなり、またノッチやバーニングが発生し、評価が×や△であった。
【0116】
また、比較例2(第1点P1から半径R5がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して直線状に出るように切り逃げた場合)及び比較例3(第1点P1から半径R7がRmm(3mm、4.5mm、6mm)の円弧で接して直線状に出るように切り逃げた場合)においては、1周切断後の切断線が逃げる領域(
図23及び
図24におけるB領域)で、円弧の半径が1.0mmよりも大きく、既切断線と近接する距離が長くなるため、A領域ほどではないものの、温度上昇により、既切断線の製品側切断面の品質が粗くなり、またノッチやバーニングが発生し、評価が×や△であった。
【0117】
なお、切断面の品質における評価は、切断面の粗さ・性状につきWES2801 1級(50μ以下)の場合を○、切断面の粗さ・性状につきWES2801 2級(50μ超え、100μ以下)の場合を△、切断面の粗さ・性状につき100μ超えまたは破面の場合を×とした。
従って、丸孔Hにおける切断面の品質を良好にするためには、切り出し、切り逃げにおける円弧の半径は十分に小さいことが求められることが証明されたため、本発明においては切り出し、切り逃げにおける円弧の半径を1.0mm以下に設定した。