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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184101
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231221BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20231221BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20231221BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01F27/36 154
H01F30/10 R
H01F30/10 S
H01F27/32 140
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098040
(22)【出願日】2022-06-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 政喜
【テーマコード(参考)】
5E044
5E058
5H770
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E044CA10
5E058CC15
5E058DB05
5H770AA21
5H770DA01
5H770DA41
5H770JA16Y
5H770QA01
5H770QA25
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】トランスの漏れ磁束による渦電流損を抑制することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】この電力変換装置100は、コア21と、コア21に巻かれたコイル22と、を含むトランス20と、トランス20が取り付けられた樹脂製の基板30と、トランス20に対して基板30とは反対側に配置され、トランス20が収容される凹状のトランス収容部41を含む金属製の筐体40と、を備え、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43には、第2部分80(絶縁層)が設けられている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアに巻かれたコイルと、を含むトランスと、
前記トランスが取り付けられた樹脂製の基板と、
前記トランスに対して前記基板とは反対側に配置され、前記トランスが収容される凹状のトランス収容部を含む金属製の筐体と、を備え、
前記基板と前記筐体とが対向する方向において、前記トランス収容部のうちの前記コイルと対向する部分には、絶縁層が設けられている、電力変換装置。
【請求項2】
前記筐体の前記トランス収容部は、前記コアが配置される枠状の金属製の第1部分と、前記コイルが配置され前記第1部分の内側に設けられ前記絶縁層として構成された第2部分と、を含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記絶縁層として構成された第2部分は、前記基板と前記筐体とが対向する方向から見て、前記コイルと対向する底面部と、前記底面部と連続し、前記基板と前記筐体とが対向する方向に沿って延びるとともに前記コイルを取り囲むように設けられた側面部と、を含む、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記基板と前記筐体とが対向する方向において、前記トランス収容部のうちの前記コイルと対向する部分に形成された孔部に嵌め込まれた絶縁部材により構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記絶縁部材により構成された絶縁層の前記トランスとは反対側の面には、冷却用のフィンが形成されている、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記基板と前記筐体とが対向する方向において、前記トランス収容部のうちの前記コイルと対向する部分に形成された孔部としての空間により構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記トランス収容部に対して前記トランスの反対側において前記筐体を覆うように配置された金属製のカバー部材と、
前記トランス収容部と前記カバー部材との間に設けられ、前記トランスの漏れ磁束を遮蔽するための板状の遮蔽部材と、をさらに備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材は、前記カバー部材よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属、および、フェライトの少なくとも一方により構成されている、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記遮蔽部材は、前記基板と前記筐体とが対向する方向から見て、前記絶縁層と略同じ大きさ以上の大きさを有する、請求項7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスを備える電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、トランスと、トランスを収容する金属製の筐体と、を備える電源装置(電力変換装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-90533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のような電源装置(電力変換装置)では、トランスは金属製の筐体に収容されているので、トランスの漏れ磁束が、金属製の筐体のうちのトランスが収容されている部分に鎖交しやすい。すなわち、トランスの漏れ磁束によって、金属製の筐体のうちのトランスが収容されている部分において渦電流が生じやすい。金属製の筐体のうちのトランスが収容されている部分において渦電流が生じた場合、渦電流損(電力損失)が生じる。このため、トランスの漏れ磁束による渦電流損を抑制することが可能な構成が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、トランスの漏れ磁束による渦電流損を抑制することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電力変換装置は、コアと、コアに巻かれたコイルと、を含むトランスと、トランスが取り付けられた樹脂製の基板と、トランスに対して基板とは反対側に配置され、トランスが収容される凹状のトランス収容部を含む金属製の筐体と、を備え、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分には、絶縁層が設けられている。
【0008】
この発明の一の局面による電力変換装置は、上記のように、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分には、絶縁層が設けられている。これにより、トランスの漏れ磁束が絶縁層を通過したとしても絶縁層には渦電流が生じないので、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分が絶縁層ではなく筐体を構成する金属である場合と比較して、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に渦電流が生じるのを抑制することができる。その結果、トランスの漏れ磁束による渦電流損を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、筐体のトランス収容部は、コアが配置される枠状の金属製の第1部分と、コイルが配置され第1部分の内側に設けられ絶縁層として構成された第2部分と、を含む。このように構成すれば、トランス収容部の絶縁層として構成された第2部分は、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向するので、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に容易に絶縁層を設けることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、絶縁層として構成された第2部分は、基板と筐体とが対向する方向から見て、コイルと対向する底面部と、底面部と連続し、基板と筐体とが対向する方向に沿って延びるとともにコイルを取り囲むように設けられた側面部と、を含む。このように構成すれば、絶縁層として構成された第2部分が側面部を含まず、側面部が筐体を構成する金属製である場合と比較して、トランス収容部において渦電流が生じるのをより抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、絶縁層は、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に形成された孔部に嵌め込まれた絶縁部材により構成されている。このように構成すれば、絶縁部材を孔部に嵌め込むだけで、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に、絶縁部材からなる絶縁層を容易に設けることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、絶縁部材により構成された絶縁層のトランスとは反対側の面には、冷却用のフィンが形成されている。このように構成すれば、絶縁部材のトランスとは反対側の面に冷却用のフィンが形成されていない場合と比較して、絶縁部材を効率的に冷却することができる。その結果、絶縁部材により構成された絶縁層のトランスとは反対側の面に冷却用のフィンが形成されていない場合と比較して、絶縁部材を介して、トランスを効率的に冷却することができる。
【0013】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、絶縁層は、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に形成された孔部としての空間により構成されている。このように構成すれば、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に孔部を形成するだけで、基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する部分に、空気からなる絶縁層を容易に設けることができる。また、絶縁層を絶縁部材により構成する場合と比較して、絶縁部材が不要となるので、部品点数を削減することができる。
【0014】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、トランス収容部に対してトランスの反対側において筐体を覆うように配置された金属製のカバー部材と、トランス収容部とカバー部材との間に設けられ、トランスの漏れ磁束を遮蔽するための板状の遮蔽部材と、をさらに備える。ここで、絶縁層には渦電流が生じないものの、絶縁層はトランスの漏れ磁束を通過させる。このため、トランス収容部に対してトランスの反対側に配置された金属製のカバー部材において、渦電流が生じる場合がある。したがって、上記のように、トランス収容部とカバー部材との間に遮蔽部材が設けられていることによって、遮蔽部材により、トランスの漏れ磁束が、トランス収容部に対してトランスの反対側において筐体を覆うように配置された金属製のカバー部材に鎖交するのを抑制することができる。その結果、トランス収容部とカバー部材との間に遮蔽部材が設けられていない場合と比較して、金属製のカバー部材に渦電流が生じるのを抑制することができるので、渦電流損を低減することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、遮蔽部材は、カバー部材よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属、および、フェライトの少なくとも一方により構成されている。ここで、渦電流損は渦電流が生じる部材の電気抵抗値に比例するので、トランスの漏れ磁束がカバー部材よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属により構成される遮蔽部材に鎖交した場合に遮蔽部材において発生する渦電流による渦電流損は、トランスの漏れ磁束がカバー部材に鎖交した場合にカバー部材において発生する渦電流による渦電流損よりも小さくなりやすい。また、トランスの漏れ磁束は、トランス収容部とカバー部材との間に設けられた遮蔽部材に鎖交した分だけ、カバー部材に鎖交する分が減少する。したがって、上記のように、遮蔽部材が、筐体よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属により構成されることによって、金属製のカバー部材に生じる渦電流による渦電流損を容易に低減することができる。また、フェライトは、磁束を引き寄せる効果があるので、トランス収容部とカバー部材との間にフェライトにより構成される遮蔽部材が設けられた場合、トランス収容部とカバー部材との間にフェライトにより構成される遮蔽部材が設けられていない場合と比較して、トランスの漏れ磁束がカバー部材に鎖交しにくい。したがって、上記のように、遮蔽部材が、フェライトにより構成されることによって、カバー部材にトランスの漏れ磁束が鎖交しにくくなるので、カバー部材に渦電流が生じるのを容易に抑制して、カバー部材に生じる渦電流による渦電流損を容易に低減することができる。
【0016】
上記遮蔽部材を備える構成において、好ましくは、遮蔽部材は、基板と筐体とが対向する方向から見て、絶縁層と略同じ大きさ以上の大きさを有する。このように構成すれば、遮蔽部材が基板と筐体とが対向する方向から見て比較的大きくなるので、金属製のカバー部材側に向かうトランスの漏れ磁束を効果的に遮蔽することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、トランスの漏れ磁束による渦電流損を抑制することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による電力変換装置の回路図である。
図2】本発明の一実施形態による電力変換装置の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による電力変換装置の斜視分解図である。
図4】本発明の一実施形態による電力変換装置の筐体をトランスが収容される側とは反対側から見た斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による電力変換装置のトランスおよび筐体を示した斜視図である。
図6】本発明の一実施形態による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図7】本発明の一実施形態による電力変換装置のトランス収容部を示した斜視図である。
図8】本発明の第1変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図9】本発明の第2変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図10】本発明の第3変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図11】本発明の第4変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図12】本発明の第5変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図13】本発明の第6変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図14】本発明の第7変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
図15】本発明の第8変形例による電力変換装置のトランス収容部の近傍を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図7を参照して、本発明の一実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。
【0021】
(電力変換装置の全体構成)
図1に示すように、電力変換装置100は、電力源(たとえば、バッテリ)110から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに、交流電力の電圧を所定の電圧に変換して負荷120に出力する装置である。具体的には、電力変換装置100は、電力変換部10と、トランス20と、を備える。電力変換部10は、電力源110から供給された直流電力を交流電力に変換する。トランス20は、電力変換部10から出力された交流電力の電圧を変換して負荷120に出力する。電力変換装置100は、たとえば、車両に搭載される車載電源である。
【0022】
以下の説明では、電力変換装置100の左右方向、前後方向および上下方向を、それぞれ、X方向、Y方向およびZ方向とする。また、電力変換装置100の前側および後側を、それぞれ、Y1側およびY2側とする。また電力変換装置100の上側および下側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。
【0023】
図2に示すように、電力変換装置100は、基板30と、筐体40と、上側カバー部材50と、下側カバー部材60と、コネクタ70と、を備える。なお、下側カバー部材60は、特許請求の範囲の「カバー部材」の一例である。
【0024】
図3に示すように、基板30は、板状に形成されている。基板30のZ2側には、電力変換部10を構成する部品やトランス20等の電子部品が取り付けられている。基板30は樹脂製である。なお、図3図5および図7では、基板30に取り付けられた電子部品のうちトランス20以外の図示を省略している。
【0025】
筐体40は、基板30のZ2側に取り付けられた電子部品(トランス20等)に対して、基板30とは反対側(Z2側)に配置されている。筐体40には、基板30に取り付けられた電子部品が収容されている。具体的には、筐体40は、トランス20が収容される凹状のトランス収容部41を含む。トランス収容部41は、筐体40において、Y2側に設けられている。筐体40は、金属(たとえば、アルミニウム)製である。
【0026】
図4に示すように、筐体40のトランス20(図3参照)とは反対側(Z2側)の面には、冷却用のフィン42が複数形成されている。筐体40のZ2側には、ファン(図示しない)により電力変換装置100の外部から取り込まれた空気(冷却用空気)が通過するように構成されている。フィン42が、冷却用空気によって冷却されることによって、筐体40が冷却される。そして、筐体40が冷却されることによって、筐体40に収容された電子部品(トランス20等)が間接的に冷却される。電力変換装置100では、筐体40に収容された電子部品を効率的に冷却するため、Z方向において、トランス20とトランス収容部41との離間距離は比較的小さい。なお、Z方向におけるトランス20とトランス収容部41との離間距離に関しては後述する。
【0027】
図2に示すように、上側カバー部材50は、基板30に対してトランス20の反対側(Z1側)において基板30を覆うように配置されている。また、下側カバー部材60は、トランス収容部41(すなわち、筐体40)に対してトランス20の反対側(Z2側)において筐体40を覆うように配置されている。すなわち、図3に示すように、上側カバー部材50と、基板30と、筐体40と、下側カバー部材60とは、この順に、Z1側からZ2側に向かって並んでいる。上側カバー部材50および下側カバー部材60は、金属(たとえば、鉄)製である。
【0028】
図2に示すように、コネクタ70は、電力変換装置100を、電力変換装置100の外部の装置(電力源110、負荷120等)に接続するための端子である。コネクタ70は、筐体40に対して、Y1側に設けられている。なお、図3では、コネクタ70の図示を省略している。
【0029】
(トランスの構成)
図5に示すように、トランス20は、コア21と、コア21に巻かれたコイル22と、を含む。
【0030】
コア21は、Z方向から見て、四角形形状かつ環状の環状部分21aと、環状部分21aの内側の孔部において、環状部分21aのX方向の一方側の部分と他方側の部分とを接続するようにX方向に延びる接続部分21bと、を含む。これにより、コア21には、接続部分21bのY1側およびY2側の各々にコア21をZ方向に貫通する貫通孔21cが形成されている。コア21は、フェライト等の磁性体によって構成されている。
【0031】
コイル22は、X方向に延びる接続部分21bに対して、YZ平面に沿うように巻かれている。コイル22は、接続部分21bのY1側に形成された貫通孔21c、および、接続部分21bのY2側に形成された貫通孔21cを、Z方向に沿って通過している。コイル22は、一次側コイル22aと、二次側コイル22bと、を含む。一次側コイル22aと二次側コイル22bとは、互いにX方向に並ぶように配置されている。
【0032】
(トランスの漏れ磁束による渦電流損を抑制するための構造)
図6に示すように、トランス20のコイル22と、金属製の上側カバー部材50とは、Z方向において、距離L1だけ離間している。トランス20のコイル22と、筐体40のトランス収容部41とは、Z方向において、距離L2だけ離間している。距離L2は、距離L1よりも小さい。トランス20の漏れ磁束の密度(磁束密度)は、トランス20から離れるにしたがって減衰する。したがって、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43が金属製である場合、トランス20の漏れ磁束がトランス収容部41に鎖交しやすい。すなわち、トランス20の漏れ磁束により、トランス収容部41に渦電流が生じやすい。トランス収容部41において渦電流が生じた場合、渦電流損(電力損失)が生じる。
【0033】
そこで、電力変換装置100では、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43の全体には、絶縁層が設けられている。具体的には、図7に示すように、筐体40のトランス収容部41は、Z方向から見て、コア21が配置される枠状の金属製の第1部分41aと、コイル22が配置され第1部分41aの内側に設けられ絶縁層として構成された第2部分80と、を含む。Z方向から見て、第2部分80が設けられている範囲は、部分43の全てを含み、かつ、部分43よりも広い範囲である。これにより、絶縁層が比較的狭い範囲(たとえば、スリット状)に設けられている場合と異なり、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に渦電流が生じにくい。後述するように、絶縁層は、絶縁部材により構成されている。なお、第1部分41aは、筐体40を構成する金属(たとえば、アルミニウム)製である。
【0034】
絶縁層として構成された第2部分80は、基板30(図6参照)と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、コイル22(図6参照)と対向する底面部81と、底面部81と連続し、基板30と筐体40とが対向する方向に沿って延びるとともにコイル22を取り囲むように設けられた側面部82と、底面部81と連続し、基板30と筐体40とが対向する方向に対して傾斜する傾斜部83と、を含む。第2部分80は、底面部81と側面部82と傾斜部83とにより凹状に構成されている。
【0035】
底面部81は、一対のY方向に延びるY方向延長部分と、一対のY方向延長部分のY方向における中央部同士で接続するように、X方向に延びるX方向延長部分とから構成されている。すなわち、底面部81は、Z方向から見て、H字形状を有する。側面部82は、一対のY方向延長部分の各々に対して、Y1側、Y2側およびX方向における外側に配置されている。傾斜部83は、底面部81のX方向延長部分に対して、Y1側およびY2側の各々に配置されている。図6に示すように、傾斜部83は、コイル22の形状に沿って湾曲した形状を有する。
【0036】
第2部分80(絶縁層)は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に形成された孔部44に嵌め込まれた絶縁部材により構成されている。具体的には、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43には、第2部分80を構成する絶縁部材を嵌め込むための孔部44が形成されている。そして、孔部44に、絶縁部材が嵌め込まれている。すなわち、第2部分80は、金属製の筐体40の一部が、絶縁部材に置き換えられることにより構成されている。第2部分80を構成する絶縁部材は、樹脂(たとえば、PPS(Polyphenylenesulfide))製である。
【0037】
図4に示すように、絶縁部材により構成された第2部分80(絶縁層)のトランス20とは反対側(Z2側)の面には、冷却用のフィン84が形成されている。フィン84は、第2部分80の傾斜部83(図7参照)のZ2側の面に形成されている。フィン42は、筐体40のZ2側の面に形成されたフィン42と同様の機能を有する。
【0038】
図6に示すように、トランス20のコイル22と、金属製の下側カバー部材60とは、Z方向において、距離L3だけ離間している。距離L3は、距離L2よりも大きいものの、距離L1よりも小さい。しかしながら、第2部分80(絶縁層)には渦電流が生じないものの、第2部分80は、トランス20の漏れ磁束を通過させる。したがって、トランス20の漏れ磁束が、トランス収容部41に対してトランス20の反対側(Z2側)に設けられた金属製の下側カバー部材60に鎖交する場合がある。すなわち、下側カバー部材60において、渦電流が生じる場合がある。金属製の下側カバー部材60において渦電流が生じた場合、渦電流損(電力損失)が生じる。
【0039】
そこで、電力変換装置100は、トランス20のZ2側の漏れ磁束を遮蔽するための板状の遮蔽部材90を備える。遮蔽部材90は、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に設けられている。遮蔽部材90は、下側カバー部材60に取り付けられている。すなわち、遮蔽部材90は、トランス収容部41と下側カバー部材60との間において、下側カバー部材60側に設けられている。遮蔽部材90は、下側カバー部材60よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属(たとえば、銅)により構成されている。図3に示すように、遮蔽部材90は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、第2部分80(絶縁層)と略同じ大きさ以上の大きさを有する。なお、図3および図6では、遮蔽部材90が、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、第2部分80と略同じ大きさを有する例を示している。
【0040】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0041】
本実施形態では、上記のように、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43には、絶縁層(第2部分80)が設けられている。これにより、トランス20の漏れ磁束が絶縁層を通過したとしても絶縁層には渦電流が生じないので、基板30と筐体40とが対向する方向において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43が絶縁層ではなく筐体40を構成する金属である場合と比較して、基板30と筐体40とが対向する方向において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に渦電流が生じるのを抑制することができる。その結果、トランス20の漏れ磁束による渦電流損を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、筐体40のトランス収容部41は、コア21が配置される枠状の金属製の第1部分41aと、コイル22が配置され第1部分41aの内側に設けられ絶縁層として構成された第2部分80と、を含む。これにより、トランス収容部41の絶縁層として構成された第2部分80は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向するので、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に容易に絶縁層を設けることができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁層として構成された第2部分80は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、コイル22と対向する底面部81と、底面部81と連続し、基板30と筐体40とが対向する方向に沿って延びるとともにコイル22を取り囲むように設けられた側面部82と、を含む。これにより、絶縁層として構成された第2部分80が側面部82を含まず、側面部82が筐体40を構成する金属製である場合と比較して、トランス収容部41において渦電流が生じるのをより抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、第2部分80(絶縁層)は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に形成された孔部44に嵌め込まれた絶縁部材により構成されている。これにより、絶縁部材を孔部44に嵌め込むだけで、基板30と筐体40とが対向する方向において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に、絶縁部材からなる絶縁層を容易に設けることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、絶縁部材により構成された第2部分80(絶縁層)のトランス20とは反対側(Z2側)の面には、冷却用のフィン84が形成されている。これにより、絶縁部材のトランス20とは反対側の面に冷却用のフィン84が形成されていない場合と比較して、絶縁部材を効率的に冷却することができる。その結果、絶縁部材により構成された第2部分80(絶縁層)のトランス20とは反対側の面に冷却用のフィン84が形成されていない場合と比較して、絶縁部材を介して、トランス20を効率的に冷却することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、電力変換装置100は、トランス収容部41に対してトランス20の反対側において筐体40を覆うように配置された金属製の下側カバー部材60と、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に設けられ、トランス20の漏れ磁束を遮蔽するための板状の遮蔽部材90と、を備える。ここで、第2部分80(絶縁層)には渦電流が生じないものの、第2部分80は、トランス20の漏れ磁束を通過させる。このため、トランス収容部41に対してトランス20の反対側(Z2側)に配置された金属製の下側カバー部材60において、渦電流が生じる場合がある。したがって、上記のように、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に遮蔽部材90が設けられていることによって、遮蔽部材90により、トランス20の漏れ磁束が、トランス収容部41に対してトランス20の反対側において筐体40を覆うように配置された金属製の下側カバー部材60に鎖交するのを抑制することができる。その結果、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に遮蔽部材90が設けられていない場合と比較して、金属製の下側カバー部材60に渦電流が生じるのを抑制することができるので、渦電流損を低減することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、遮蔽部材90は、下側カバー部材60よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属により構成されている。ここで、渦電流損は渦電流が生じる部材の電気抵抗値に比例するので、トランス20の漏れ磁束が下側カバー部材60よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属により構成される遮蔽部材90に鎖交した場合に遮蔽部材90において発生する渦電流による渦電流損は、トランス20の漏れ磁束が下側カバー部材60に鎖交した場合に下側カバー部材60において生じる渦電流による渦電流損よりも小さくなりやすい。また、トランス20の漏れ磁束は、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に設けられた遮蔽部材90に鎖交した分だけ、下側カバー部材60に鎖交する分が減少する。したがって、上記のように、遮蔽部材90が、筐体40よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属により構成されることによって、金属製の下側カバー部材60に生じる渦電流による渦電流損を容易に低減することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、遮蔽部材90は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、第2部分80(絶縁層)と略同じ大きさ以上の大きさを有する。これにより、遮蔽部材90が基板30と筐体40とが対向する方向から見て比較的大きくなるので、金属製の下側カバー部材60側に向かうトランス20の漏れ磁束を効果的に遮蔽することができる。
【0049】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0050】
たとえば、上記実施形態では、遮蔽部材90は、基板30と筐体40とが対向する方向から見て、第2部分80(絶縁層)と略同じ大きさ以上の大きさを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図8の第1変形例による電力変換装置200に示すように、遮蔽部材290は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、第2部分80(絶縁層)と略同じ大きさよりも小さな大きさを有していてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、遮蔽部材90は、下側カバー部材60(カバー部材)よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、遮蔽部材は、フェライトにより構成されていてもよい。ここで、フェライトは、磁束を引き寄せる効果があるので、トランス収容部とカバー部材との間にフェライトにより構成される遮蔽部材が設けられた場合、トランス収容部とカバー部材との間にフェライトにより構成される遮蔽部材が設けられていない場合と比較して、トランスの漏れ磁束がカバー部材に鎖交しにくい。したがって、上記のように、遮蔽部材が、フェライトにより構成されることによって、カバー部材にトランスの漏れ磁束が鎖交しにくくなるので、カバー部材に渦電流が生じるのを容易に抑制して、カバー部材に生じる渦電流による渦電流損を容易に低減することができる。また、本発明では、遮蔽部材は、カバー部材よりも電気抵抗値の小さい非磁性金属、および、フェライトの両方により構成されていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、遮蔽部材90が、下側カバー部材60に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図9の第2変形例による電力変換装置300に示すように、遮蔽部材390が、トランス収容部41に取り付けられていてもよい。また、本発明では、図10の第3変形例による電力変換装置400に示すように、遮蔽部材490が、トランス収容部41と下側カバー部材60との間において、トランス収容部41および下側カバー部材60の両方と離間するように設けられていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、電力変換装置100は、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に設けられ、トランス20の漏れ磁束を遮蔽するための板状の遮蔽部材90を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11の第4変形例に示すように、電力変換装置500は、トランス収容部41と下側カバー部材60との間に設けられ、トランス20の漏れ磁束を遮蔽するための板状の遮蔽部材90を備えないように構成されていてもよい。その場合、トランス収容部41と下側カバー部材60とが比較的大きく離間していることが好ましい。また、本発明では、図12の第5変形による電力変換装置600に示すように、遮蔽部材90をトランス収容部41と下側カバー部材60との間に設ける代わりに、下側カバー部材660のうちのコイル22と対向する部分43が遮蔽部材661に置き換えられていてもよい。なお、下側カバー部材660は、特許請求の範囲の「カバー部材」の一例である。
【0054】
また、上記実施形態では、絶縁部材により構成された第2部分80(絶縁層)のトランス20とは反対側の面には、冷却用のフィン42が形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁部材により構成された絶縁層のトランスとは反対側の面に、冷却用のフィンが形成されていなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、第2部分80(絶縁層)は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に形成された孔部44に嵌め込まれた絶縁部材により構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図13に示す第6変形による電力変換装置700に示すように、絶縁層は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に形成された孔部としての空間Sにより構成されていてもよい。これにより、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に孔部を形成するだけで、基板30と筐体40とが対向する方向において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43に、空気からなる絶縁層を容易に設けることができる。また、絶縁層を絶縁部材により構成する場合と比較して、絶縁部材が不要となるので、部品点数を削減することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、絶縁層として構成された第2部分80は、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)から見て、コイル22と対向する底面部81と、底面部81と連続し、基板30と筐体40とが対向する方向に沿って延びるとともにコイル22を取り囲むように設けられた側面部82と、を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、絶縁層は、基板と筐体とが対向する方向から見て、コイルと対向する底面部を含み、底面部と連続し、基板と筐体とが対向する方向に沿って延びるとともにコイルを取り囲むように設けられた側面部を含まないように構成されていてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、筐体40のトランス収容部41は、コア21が配置される枠状の金属製の第1部分41aと、コイル22が配置され第1部分41aの内側に設けられ絶縁層として構成された第2部分80と、を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図14に示す第7変形による電力変換装置800に示すように、トランス収容部841は、コア21が配置され絶縁層として構成された枠状の第1部分841aと、コイル22が配置され第1部分841aの内側に設けられ絶縁層として構成された第2部分80と、を含むように構成されていてもよい。この場合、第1部分841aと第2部分80とが一体的に構成されていてもよいし、第1部分841aと第2部分80とが別体として構成されていてもよい。なお、図14では、第1部分841aと第2部分80とが一体的に構成されている例を示している。
【0058】
また、上記実施形態では、絶縁層が、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43の全体に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図15に示す第8変形による電力変換装置900に示すように、絶縁層が、基板30と筐体40とが対向する方向(Z方向)において、トランス収容部41のうちのコイル22と対向する部分43の一部に設けられていてもよい。なお、図15では、第2部分980の底面部981のうちのコイル22と対向する部分43の一部が絶縁層として構成されている例を示している。
【符号の説明】
【0059】
20 トランス
21 コア
22 コイル
30 基板
40 筐体
41、841 トランス収容部
41a 第1部分
43 (基板と筐体とが対向する方向において、トランス収容部のうちのコイルと対向する)部分
44 孔部
60、660 下側カバー部材(カバー部材)
80 第2部分(絶縁層)
81、 底面部
82 側面部
84 フィン
90、290、390、661 遮蔽部材
100、200、300、400、500、600、700、800、900 電力変換装置 841a 第1部分(絶縁層)
S 空間(絶縁層)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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