(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184107
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ロボットコントローラの冷却装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231221BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098058
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 元
【テーマコード(参考)】
5E322
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB10
5E322BA04
5E322BB04
5E322FA04
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770EA01
5H770HA06X
5H770LA04X
5H770PA02
5H770PA21
5H770PA26
5H770PA28
5H770PA32
5H770PA47
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA40
(57)【要約】
【課題】ロボットコントローラの冷却装置において、サーボドライバに含まれる発熱素子の温度に基づいたきめ細かな制御を行なうことができるようにする。
【解決手段】冷却装置は、発熱素子(IPM41)が取り付けられたフィン部材42と、温度センサ55と、発熱素子で発生した熱を温度センサ55に伝達する熱伝導シート52と、フィン部材52に向かう気流を発生するファン71,72と、温度センサで55の検出値に基づいてファン71,72を制御するファン制御部73,74と、を備える。熱伝導シート52は、サーボドライバ11において回路基板43と発熱素子との間にあって、回路基板43と発熱素子の両方に接する。温度センサ55は、熱伝導シート52によって覆われるように回路基板43に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と発熱素子とを備えるサーボドライバを有するロボットコントローラの冷却装置であって、
前記発熱素子に取り付けられたフィン部材と、
温度センサと、
前記発熱素子で発生した熱を前記温度センサに伝達する熱伝導シートと、
前記フィン部材に向かう気流を発生するファンと、
前記温度センサでの検出値に基づいて前記ファンを制御するファン制御部と、
を備え、
前記熱伝導シートは、前記サーボドライバにおいて前記回路基板と前記発熱素子との間にあって、前記回路基板と前記発熱素子の両方に接し、
前記温度センサは、前記回路基板に設けられて前記熱伝導シートによって覆われている、冷却装置。
【請求項2】
前記ファン制御部は、前記温度センサによって測定される温度が規定値を超えないように、前記ファンによって発生する風量を制御する、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記ロボットコントローラは複数の前記サーボドライバを備え、
1つの前記ファンによって発生する気流が分流して前記複数のサーボドライバの各々の前記フィン部材に沿って流れる、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記ファン制御部は、前記複数のサーボドライバの各々に設けられる前記温度センサによって測定される温度が、いずれも規定値を超えないように、前記ファンによって発生する風量を制御する、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記発熱素子はインバータ回路を構成する半導体素子であり、前記規定値は、前記半導体素子のジャンクション温度についての定格最大値に基づいて定められた値である、請求項2または4に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットコントローラの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットでは、マニピュレータ(ロボット本体)における軸ごとにその軸を駆動するモータが設けられる。マニピュレータの制御を用いられるロボットコントローラは、軸ごとのモータに対応してそのモータを駆動し制御するサーボドライバを備える。マニピュレータが8軸のものであれば、ロボットコントローラも8個のサーボドライバを備える。マニピュレータに設けられるモータは例えば三相モータであるので、サーボドライバは、対応するモータに供給すべき三相交流電力を例えばPWM(パルス幅変調)により発生するインバータ回路を備える。インバータ回路は、モータの相ごとに、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチと呼ばれる2つのスイッチング素子を直列に接続したものを備える。スイッチング素子としては、例えば、パワーMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの半導体素子が使用される。近年では、インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子とスイッチング素子のゲートを駆動するゲート駆動回路と保護回路などを1つのパッケージに収容したIPM(インテリジェントパワーモジュール)が広く使用されている。
【0003】
インバータ回路によって交流電力を発生してモータを駆動する場合、インバータ回路内のスイッチング素子は発熱する。半導体素子であるスイッチング素子はそのジャンクション温度が所定の定格最大値を超えないようにする必要がある。そのため、ヒートシンクとも呼ばれる放熱用のフィン部材をスイッチング素子に取り付け、冷却用のファンによってフィン部材に沿って気流を流すことによって、スイッチング素子を冷却している。IPMを用いる場合も同様の手段によって冷却を行っている。冷却用のファンはファンモータと呼ばれるモータによって回転駆動される。これまでは、ファンを最大風量で常時運転していたが、これは消費電力やファンモータの寿命の観点からは不利であり、必要なときに必要な風量でファンを運転することが提案されている。例えば特許文献1は、サーボドライバに用いられるインバータ回路を冷却するときに、サーボドライバに対する指令により発熱量を求めてファンの回転のオンオフやファンの回転数を制御することを開示している。特許文献2は、インバータ回路などの電力変換回路の出力電流からスイッチング素子において熱として消費される電力を算出して温度を推定し、推定された温度によって冷却用のファンの制御を行なうことを開示している。特許文献3は、インバータ回路からの出力電流とフィン部材での風量とスイッチング素子の周辺温度とに基づいてスイッチング素子のジャンクション温度を推定し、推定されたジャンクション温度に基づいて冷却用のファンの制御を行なうことを開示している。
【0004】
電解コンデンサは、電源回路などにおいて平滑用にしばしば使用されるが、周囲温度が高いと寿命が短くなるという性質を有する。特許文献4は、半導体素子の冷却に用いる冷却用のファンが電解コンデンサも冷却するときに、ファンによる送風量とファンの寿命と電解コンデンサの寿命との関係に基づいて、ファンによる送風量を制御することを開示している。また特許文献5は、半導体素子などの電子部品の温度を正確に測定できる温度センサとして、電子部品とその電子部品が実装される基板またはその電子部品に取り付けられる放熱板との間にこれらに対して密着する熱伝導シートを設け、熱伝導シートに感熱素子を設置したものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-117393号公報
【特許文献2】特許第4796841号公報
【特許文献3】特許第5486434号公報
【特許文献4】特許第6498371号公報
【特許文献5】特開2011-33479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロボットコントローラに設けられるサーボドライバで発生する熱を冷却用のファンを用いて除去するときに特許文献1-4に記載された技術を用いる場合、発熱素子であるスイッチング素子のジャンクション温度を推定するにとどまり、発熱素子の実際の温度に基づいたきめ細かな冷却用のファンを制御が難しい、という課題がある。
【0007】
本発明の目的は、ロボットコントローラの冷却装置であって、ロボットコントローラ内に設けられるサーボドライバに含まれる発熱素子の温度に基づいたきめ細かな制御を行なうことができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の冷却装置は、回路基板と発熱素子とを備えるサーボドライバを有するロボットコントローラの冷却装置であって、発熱素子に取り付けられたフィン部材と、温度センサと、発熱素子で発生した熱を温度センサに伝達する熱伝導シートと、フィン部材に向かう気流を発生するファンと、温度センサでの検出値に基づいてファンを制御するファン制御部と、を備え、熱伝導シートは、サーボドライバにおいて回路基板と発熱素子との間にあって、回路基板と発熱素子の両方に接し、温度センサは、熱伝導シートによって覆われる領域において回路基板に設けられている。
【0009】
一態様の冷却装置では、回路基板上に設けられた温度センサに対して熱伝導シートを介して熱が伝わるので、温度センサは、発熱素子の実際の温度を検出できる。これにより、発熱素子の実際の温度に基づいて冷却用のファンのきめ細かな制御を行なうことが可能になり、ファンでの消費電力の削減とファンの長寿命化とを達成することができる。
【0010】
冷却装置においてファン制御部は、温度センサによって測定される温度が規定値を超えないように、ファンによって発生する風量を制御することが好ましい。このような制御を行なうことによって、発熱素子の温度が過度に上昇することを防ぐことができる。
【0011】
冷却装置では、ロボットコントローラが複数のサーボドライバを備える場合には、1つのファンによって発生する気流が分流して複数のサーボドライバの各々のフィン部材に沿って流れるようにすることができる。このように構成することにより、ファンの数を削減することができるとともに、ロボットコントローラ内の空間を有効に活用することができ、ロボットコントローラの小型化を達成できる。この場合、ファン制御部は、複数のサーボドライバの各々に設けられる温度センサによって測定される温度が、いずれも規定値を超えないように、ファンによって発生する風量を制御することが好ましい。このような制御を行なうことによって、どのサーボドライバにおいてもそのサーボドライバの発熱素子の温度が過度に上昇することを防ぐことができる。
【0012】
一態様の冷却装置において、発熱素子はインバータ回路を構成する半導体素子であり、その場合、風量の制御に用いられる規定値は、半導体素子のジャンクション温度についての定格最大値に基づいて定められた値であることが好ましい。このように規定値を定めることにより、半導体素子のジャンクション温度が定格最大値を超えない範囲でファンの動作を最適化する制御を行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロボットコントローラ内に設けられるサーボドライバに含まれる発熱素子の温度に基づいたきめ細かな制御を行なうことができる、ロボットコントローラ用の冷却装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の一形態のロボットコントローラを示すブロック図である。
【
図3】(a)はサーボドライバの平面図であり、(b)は
図3(a)のB-B線での断面図であり、(c)は
図3(b)のC部の拡大図である。
【
図4】ロボットコントローラにおけるサーボドライバと冷却用のファンの配置を示す概略正面図である。
【
図5】冷却用のファンを制御する機構を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に基づく冷却装置が組み込まれた、本発明の実施の一形態のロボットコントローラの構成を示すブロック図である。このロボットコントローラは、8軸のマニピュレータを制御することが可能なものであり、マニピュレータに設けられる8個のモータ80に対応して、8個のサーボドライバ11~18を備えている。さらにロボットコントローラは、サーボドライバ11~18に対して指令を送る上位制御回路21と、外部電源81から交流電力を受電して整流する主電源回路22とを備えている。サーボドライバ11~18は、いずれも、上位制御回路21からの指令に基づいてモータ80のサーボ制御のための演算を行う制御回路31と、制御回路31の演算結果に基づいてモータ80を駆動するための交流電力を発生するインバータ回路32とを備えている。制御回路31には、対応するモータ80に付属するエンコーダ(不図示)からモータ80の位置を示す信号がフィードバックしている。インバータ回路32には主電源回路22から直流電力が供給される。前述したようにインバータ回路32は、モータ80に供給される三相交流電力を直流電力から生成するために、IGBTなどのスイッチング素子を備えている。本実施形態では、インバータ回路32では、スイッチング素子やそのゲート駆動回路、保護回路などを1つのパッケージに収納したIPM41(
図2参照)が用いられている。スイッチング素子はその動作に伴ってかなりの熱を発生するので発熱素子である。
【0016】
次に、サーボドライバ11~18について説明する。サーボドライバ11~18は同一構成であるので、ここではサーボドライバ11によってサーボドライバ11~18を説明する。
図2はサーボドライバ11の概略斜視図である。発熱素子であってインバータ回路32を構成するIPM41は、放熱用のフィン部材(ヒートシンク)42に対し、ねじ54(
図3(c)参照)により取り付けられている。またフィン部材42は、回路基板43の一方の表面に対して所定の間隔をあけて配置するように、スペーサ44を介して回路基板43に取り付けられている。フィン部材42は、板状の底板に対し、リッジ(尾根)状の複数のフィンを相互に平行となるように設けた形状である。ここで示した例では、フィン部材42の底板は回路基板43と平行になるように配置し、IPM41はフィン部材42の底板に取り付けられている。後述するようにファン71,72(
図4参照)によってフィン部材42に向かう気流が発生し、これにより発熱素子であるIPM41が冷却される。回路基板43の一方の表面には、モータ80に対して交流電力を供給するためのコネクタ45、信号用のコネクタ46,48、及び、主電源回路22からの直流電力を受け入れるためのコネクタ47が設けられている。信号用のコネクタ46,48のうちコネクタ48は、モータ80に付属するエンコーダとの通信と上位制御回路21との通信の両方に用いられるものである。
【0017】
図3(a)はサーボドライバ11の平面図であり、
図3(b)は
図3(a)のB-B線での断面図であり、
図3(c)は
図3(b)のC部の拡大図である。サーボドライバ11では、基本的には、制御回路31は数V以下の論理信号を扱い、インバータ回路32は、モータ80の駆動のために、安全規格で規定された危険電圧を扱う。そのため安全を確保するなどの目的で、
図3(a)に示すように、回路基板43は、領域Pと領域Sとに分割され、インバータ回路32やそれに関連した回路は領域Pに配置され、制御回路31は領域Sに配置されている。大電力を扱うこととなるコネクタ45,47は領域Pに配置されており、信号用のコネクタ46,48は領域Sに配置されている。制御回路31とインバータ回路32との間での信号のやり取りは、領域Pと領域Sとをまたぐように回路基板43に設けられたフォトカプラ49を介して行われる。
【0018】
上述したように回路基板43の一方の表面に対し、スペーサ44を介してフィン部材42が取り付けられ、この状態で、フィン部材42に取り付けられているIPM41は、回路基板43の一方の表面の側を向いている。そして、IPM41の接続ピン53は、回路基板43に向かって延びて回路基板43を貫通しており、その位置で回路基板43にはんだ付けされている。IPM41と回路基板43との間の隙間には、この隙間を埋めるように熱伝導シート52が配置している。そして熱伝導シート52を挟んでIPM41に向かい合うように、回路基板43の一方の表面に温度センサ55が設けられている。温度センサ55は、熱伝導シート52によって覆われている。温度センサ55が設けられる位置は領域Pであって大電力を扱う側であるので、温度センサ55として、測定した温度に基づいてパルス信号を出力するものを用いることが好ましく、温度センサ55の出力結果は、フォトカプラ49などを介して領域Sの側に伝達される。回路基板43の他方の表面には、制御回路31を構成する回路素子群51が設けられている。
【0019】
熱伝導シート52は、粘着性のある絶縁性シートであることが好ましい。一例として熱伝導シート52は、特許文献5に記載されるように、例えばアクリル、シリコンゴム、エラストマー系シリコン、ガラスファイバ、誘電体フィルム、ポリエステルフィルム等の材料であって熱伝導率が比較的大きい材料からなるシートである。熱伝導シート52は、IPM41におけるジャンクション温度を温度センサ55によってより正確に測定することを目的としている。したがって熱伝導シート52は、IPM41の表面にも回路基板43の一方の表面にも接していることが必要であり、密着していることが好ましい。回路基板43の一方の表面に熱伝導シート52が接していると、回路基板43の一方の表面に配置している温度センサ55は、実質的に熱伝導シート52に埋め込まれた状態となる。
【0020】
図4は、ロボットコントローラにおいてサーボドライバ11~18が実際にどのように配置されるかを示している。8個のサーボドライバ11~18は、回路基板43の厚さ方向に向かって等間隔に積み重なるように配置している。そして、冷却用のファン71,72が設けられている。ファン71,72は、ファン71,72によって発生する気流がサーボドライバ11~18ごとに分流して各サーボドライバ11~18のフィン部材42のフィンに沿って流れるように、ファン71,72は配置されている。ファン71,72からの気流は図において矢印で示されている。図示した例では、図示上側の4個のサーボドライバ11~14がファン71により発生する気流によって冷却され、図示下側の4個のサーボドライバ15~18がファン72により発生する気流によって冷却される。このロボットコントローラでは、サーボドライバ11~18にそれぞれ設けられている温度センサ55によって計測された温度に基づいて、ファン71,72の回転量、すなわちファン71,72によって発生する風量が制御される。このような制御を実施するため、ファン71,72として、その駆動電圧を変化させることによって、あるいはファン71,72に供給される制御信号のPWMデューティ比を変化させることによって、発生する風量を変化させることができるものが使用される。以下、温度センサ55によって計測された温度に基づくファン71,72の制御について説明する。
【0021】
図5は、ファン71,72を制御するための機構を示している。サーボドライバ11~18の各々には温度センサ55が設けられているが、図示上側のサーボドライバ11~14の温度センサ55からの信号が入力するファン制御部73と、図示下側のサーボドライバ15~18の温度センサ55からの信号が入力するファン制御部74とが設けられている。ファン制御部73は、サーボドライバ11~14のいずれの温度センサ55で計測された温度も規定値を超えないように、ファン71によって発生する風量を制御する。規定値は、IPM41において規定されたジャンクション温度の定格最大値に基づいて定められた値である。同様にファン制御部74は、サーボドライバ15~18のいずれの温度センサ55で計測された温度も規定値を超えないように、ファン72を駆動するファンモータを制御する。ファン制御部73,74は、ロボットコントローラにおいて、サーボドライバ11~18とは分離して設けられる。上位制御回路21にファン制御部73,74の機能を持たせてもよい。このように構成することによりこのロボットコントローラでは、発熱素子のジャンクション温度が定格最大値を超えないようにしつつファン71,72の駆動を最適化でき、ファン71,72の長寿命化を図ることができるとともに、ファン71,72での消費電力量を削減することができる。
【0022】
本実施形態では、IPM41と回路基板43とに密着する熱伝導シートにより、回路基板43の表面に設けられた温度センサ55に対して熱が伝導する。その結果、温度センサ55によって測定される温度は、インバータ回路32の出力電流などから推定されたジャンクション温度に比べ、IPM41内のスイッチング素子のジャンクション温度をより正確に示していると考えられる。したがって本実施形態では、スイッチング素子のジャンクション温度に基づいてよりきめ細かくファン71,72の駆動の制御を行なうことができ、ファン71,72の寿命を大幅に延ばすことができて、ファン71,72の消費電力量も大幅に削減することができる。特に産業用のロボットの場合、各軸のモータ80は、通常、間欠的にしか駆動されず、サーボドライバ11~18における発熱は時間的に平均すれば小さいので、本実施形態の制御を適用することによる消費電力削減の効果とファンの長寿命化の効果とは著しい。また、ロボットコントローラでは、そこに接続されるロボットごとにモータの仕様が異なってサーボドライバ11~18での発熱が異なることがあるが、本実施形態を適用することにより、接続されるロボットごとに個別にファン71,72の速度を設定しなくても、常に、最適な風量となるようにファン71,72を駆動することができる。
【0023】
回路基板43と、回路基板43に平行に配置された底板を有するフィン部材42とを備えるサーボドライバ11~18は、全体として扁平な形状を有し、フィン部材42は扁平な面に露出することになる。一方、冷却用のファン71,72は、回転する羽根を収容できるような正方形の枠状の形状とされる。扁平なサーボドライバごとに冷却用のファンを設けるとするとロボットコントローラにおける空間の利用効率が低下するが、本実施形態では、1つのファンによって複数のサーボドライバの冷却を行えるようにしているので、ロボットコントローラにおける空間の利用効率を向上させることができる。上述した例では1つのファンによって4個のサーボドライバを冷却しているが、1つのファンが冷却するサーボドライバの数は4に限定されるものではない。ロボットに設けられるモータの数に応じてサーボドライバの数が増減するときは、それに合わせてファンの数も増減させればよい。なお
図4に示した例では、ファン71,72よりも上流側にサーボドライバ11~18を配置してファン71,72によって吸い込まれる気流を発生させ、この気流がフィン部材42に向かうようにしている。しかしながら本発明におけるフィン部材とファンとの位置関係はこれに限定されるものではなく、ファンから排出される気流がそのままフィン部材に向かうようにファンよりも下流側にフィン部材を配置してもよい。
【符号の説明】
【0024】
11~18…サーボドライバ;21…上位制御回路;22…主電源回路;31…制御回路;32…インバータ回路;41…IPM;42…フィン部材;43…回路基板;44…スペーサ;45~48…コネクタ;49…フォトカプラ;51…回路素子群;52…熱伝導シート;53…接続ピン;54…ねじ;55…温度センサ;71,72…ファン;73,74…ファン制御部;80…モータ;81…外部電源。