(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184112
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】監視方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231221BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098066
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悟史
【テーマコード(参考)】
2G051
5F157
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB20
2G051BB20
2G051BC01
2G051CA04
2G051CB01
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB22
5F157BB45
5F157CB15
5F157CE28
5F157CF22
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF52
5F157DC21
(57)【要約】
【課題】処理液の流動状態の微小な変化を検出できる技術を提供する。
【解決手段】処理対象物である基板Wに処理液を供給しつつ、処理液を撮影する。その際、照射部70から明暗パターンを有するパターン光を照射し、処理液の表面におけるパターン光の反射像または投影像をカメラ80により撮影する。そして、カメラ80の撮影結果に基づいて、処理液の流動状態を評価する。パターン光とともに処理液を撮影するため、パターン光の歪みに基づいて、処理液の流動状態の微小な変化を検出できる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物に処理液を供給する処理ユニットの監視方法であって、
a)前記処理対象物に処理液を供給しつつ、前記処理液を撮影する工程と、
b)前記工程a)の撮影結果に基づいて、処理液の流動状態を評価する工程と、
を有し、
前記工程a)では、明暗パターンを有するパターン光を照射し、前記処理液の表面における前記パターン光の反射像または投影像を撮影する、監視方法。
【請求項2】
請求項1に記載の監視方法であって、
前記工程a)では、前記処理液をイベントベースカメラで撮影することにより、輝度値が変化した画素のみの情報で構成されるイベントデータを取得し、
前記工程b)では、前記イベントデータに基づいて、処理液の流動状態を評価する、監視方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の監視方法であって、
前記工程a)では、前記処理液の表面で反射した前記パターン光の反射像を撮影する、監視方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の監視方法であって、
前記工程a)では、前記処理液の表面に投影された前記パターン光の投影像を撮影する、監視方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の監視方法であって、
前記工程a)では、前記処理対象物とは別の投影面に、前記パターン光を照射しつつ、前記処理液の表面で反射する前記投影面の反射像を撮影する、監視方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の監視方法であって、
前記明暗パターンは、1方向において、明領域と暗領域が交互に繰り返し配列されたパターンである、監視方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の監視方法であって、
前記明暗パターンは、互いに直交する2方向において、明領域と暗領域とが交互に繰り返し配列されたパターンを有する、監視方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の監視方法であって、
前記処理対象物は半導体ウェハである、監視方法。
【請求項9】
処理対象物に処理液を供給するノズルと、
明暗パターンを有するパターン光を照射する照射部と、
前記ノズルから前記処理対象物に供給される前記処理液を撮影するカメラと、
前記カメラと通信可能に接続されたコンピュータと、
を備え、
前記照射部が前記パターン光を照射するとともに、前記カメラが前記処理液の表面における前記パターン光の反射像または投影像を撮影し、
前記コンピュータは、前記カメラの撮影結果に基づいて、処理液の流動状態を評価する、製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理ユニットの監視方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の基板に対して精密・微細な処理を行う装置では、僅かな動作のばらつきが、製品の品質を大きく低下させる要因となり得る。このため、従来、装置にカメラを設置し、動作の異常を監視する技術が知られている。例えば、特許文献1には、基板を処理するプロセスをカメラで撮影し、得られた動画に基づいて、異常の発生を検出することが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピンプロセッサと呼ばれる基板の洗浄装置では、高速で回転する基板の上面に、ノズルから処理液が供給される。この処理液の流動状態は、ポンプの駆動誤差や、ノズルの振動などによって変化する。そして、処理液の流動状態が変化すると、基板の処理にムラが生じたり、処理が不十分となったりする。このため、洗浄装置では、基板に供給される処理液の流動状態が正常であるか否かを監視することが求められる。しかしながら、基板に供給される処理液は、無色透明であり、かつ、高速で流動する。このため、処理液の流動状態の微小な変化をカメラで撮影することは難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、処理液の流動状態の微小な変化を検出できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、処理対象物に処理液を供給する処理ユニットの監視方法であって、a)前記処理対象物に処理液を供給しつつ、前記処理液を撮影する工程と、b)前記工程a)の撮影結果に基づいて、処理液の流動状態を評価する工程と、を有し、前記工程a)では、明暗パターンを有するパターン光を照射し、前記処理液の表面における前記パターン光の反射像または投影像を撮影する。
【0007】
本願の第2発明は、第1発明の監視方法であって、前記工程a)では、前記処理液をイベントベースカメラで撮影することにより、輝度値が変化した画素のみの情報で構成されるイベントデータを取得し、前記工程b)では、前記イベントデータに基づいて、処理液の流動状態を評価する。
【0008】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の監視方法であって、前記工程a)では、前記処理液の表面で反射した前記パターン光の反射像を撮影する。
【0009】
本願の第4発明は、第1発明または第2発明の監視方法であって、前記工程a)では、前記処理液の表面に投影された前記パターン光の投影像を撮影する。
【0010】
本願の第5発明は、第1発明または第2発明の監視方法であって、前記工程a)では、前記処理対象物とは別の投影面に、前記パターン光を照射しつつ、前記処理液の表面で反射する前記投影面の反射像を撮影する。
【0011】
本願の第6発明は、第1発明または第2発明の監視方法であって、前記明暗パターンは、1方向において、明領域と暗領域が交互に繰り返し配列されたパターンである。
【0012】
本願の第7発明は、第1発明または第2発明の監視方法であって、前記明暗パターンは、互いに直交する2方向において、明領域と暗領域とが交互に繰り返し配列されたパターンを有する。
【0013】
本願の第8発明は、第1発明または第2発明の監視方法であって、前記処理対象物は半導体ウェハである。
【0014】
本願の第9発明は、処理対象物に処理液を供給するノズルと、明暗パターンを有するパターン光を照射する照射部と、前記ノズルから前記処理対象物に供給される前記処理液を撮影するカメラと、前記カメラと通信可能に接続されたコンピュータと、を備え、前記照射部が前記パターン光を照射するとともに、前記カメラが前記処理液の表面における前記パターン光の反射像または投影像を撮影し、前記コンピュータは、前記カメラの撮影結果に基づいて、処理液の流動状態を評価する。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1発明~第9発明によれば、パターン光とともに処理液を撮影する。これにより、パターン光の歪みに基づいて、処理液の流動状態の微小な変化を検出できる。
【0016】
特に、本願の第2発明によれば、イベントベースカメラにより、処理液の高速な動きを撮影できる。また、イベントデータは、輝度値が変化した画素のみのデータであるため、パターン光が変化した箇所を抽出する処理を別途行う必要がない。
【0017】
特に、本願の第3発明によれば、処理液の表面においてパターン光の投影像が現れにくい場合でも、反射像に基づいて、処理液の流動状態を評価できる。
【0018】
特に、本願の第4発明によれば、処理液の表面においてパターン光が反射しにくい場合でも、投影像に基づいて、処理液の流動状態を評価できる。
【0019】
特に、本願の第5発明によれば、パターン光を照射する照射部の配置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】基板保持部、照射部、およびイベントベースカメラの斜視図である。
【
図4】パターン光の明暗パターンの例を示した図である。
【
図5】パターン光の明暗パターンの例を示した図である。
【
図6】パターン光の明暗パターンの例を示した図である。
【
図7】制御部と処理ユニット内の各部との接続を示したブロック図である。
【
図8】基板の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】監視処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】イベントベースカメラによる撮影の様子を示した図である。
【
図11】イベントベースカメラによる撮影の様子を示した図である。
【
図13】イベントデータを画像化した例を示した図である。
【
図14】変形例に係る撮影の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<1.基板処理装置の全体構成>
図1は、本発明に係る製造装置の一例となる基板処理装置100の平面図である。この基板処理装置100は、半導体ウェハの製造工程において、円板状の基板W(半導体ウェハ)の表面に処理液を供給して、基板Wの表面を処理する装置である。
図1に示すように、基板処理装置100は、インデクサ101と、複数の処理ユニット102と、主搬送ロボット103とを備えている。
【0023】
インデクサ101は、処理前の基板Wを外部から搬入するとともに、処理後の基板Wを外部へ搬出するための部位である。インデクサ101には、複数の基板Wを収容するキャリアが、複数配置される。また、インデクサ101は、図示を省略した移送ロボットを有する。移送ロボットは、インデクサ101内のキャリアと、処理ユニット102または主搬送ロボット103との間で、基板Wを移送する。
【0024】
処理ユニット102は、処理対象物である基板Wを1枚ずつ処理する、いわゆる枚様式の処理部である。複数の処理ユニット102は、主搬送ロボット103の周囲に配置されている。本実施形態では、主搬送ロボット103の周囲に配置された4つの処理ユニット102が、高さ方向に3段に積層されている。すなわち、本実施形態の基板処理装置100は、全部で12台の処理ユニット102を有する。複数の基板Wは、各処理ユニット102において、並列に処理される。ただし、基板処理装置100が備える処理ユニット102の数は、12台に限定されるものではなく、例えば、1台、4台、8台、24台などであってもよい。
【0025】
主搬送ロボット103は、インデクサ101と複数の処理ユニット102との間で、基板Wを搬送するための機構である。主搬送ロボット103は、例えば、基板Wを保持するハンドと、ハンドを移動させるアームとを有する。主搬送ロボット103は、インデクサ101から処理前の基板Wを取り出して、処理ユニット102へ搬送する。また、処理ユニット102における基板Wの処理が完了すると、主搬送ロボット103は、当該処理ユニット102から処理後の基板Wを取り出して、インデクサ101へ搬送する。
【0026】
<2.処理ユニットの構成>
続いて、処理ユニット102の詳細な構成について説明する。以下では、基板処理装置100が有する複数の処理ユニット102のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット102も同等の構成を有する。
【0027】
図2は、処理ユニット102の縦断面図である。
図2に示すように、処理ユニット102は、チャンバ10、基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、遮断板60、照射部70、イベントベースカメラ80、および制御部90を備えている。
【0028】
チャンバ10は、基板Wを処理するための処理空間11を内包する筐体である。チャンバ10は、処理空間11の側部を取り囲む側壁12と、処理空間11の上部を覆う天板部13と、処理空間11の下部を覆う底板部14と、を有する。基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、遮断板60、照射部70、およびイベントベースカメラ80は、チャンバ10の内部に収容される。側壁12の一部には、チャンバ10内への基板Wの搬入およびチャンバ10からの基板Wの搬出を行うための搬入出口と、搬入出口を開閉するシャッタとが、設けられている。
【0029】
基板保持部20は、チャンバ10の内部において、基板Wを水平に(法線が鉛直方向を向く姿勢で)保持する機構である。
図2に示すように、基板保持部20は、円板状のスピンベース21と、複数のチャックピン22とを有する。複数のチャックピン22は、スピンベース21の上面の外周部に沿って、等角度間隔で設けられている。基板Wは、パターンが形成される被処理面を上側に向けた状態で、複数のチャックピン22に保持される。各チャックピン22は、基板Wの周縁部の下面および外周端面に接触し、スピンベース21の上面から僅かな空隙を介して上方の位置に、基板Wを支持する。
【0030】
スピンベース21の内部には、複数のチャックピン22の位置を切り替えるためのチャックピン切替機構23が設けられている。チャックピン切替機構23は、複数のチャックピン22を、基板Wを保持する保持位置と、基板Wの保持を解除する解除位置と、の間で切り替える。
【0031】
回転機構30は、基板保持部20を回転させるための機構である。回転機構30は、スピンベース21の下方に設けられたモータカバー31の内部に収容されている。
図2中に破線で示したように、回転機構30は、スピンモータ32と支持軸33とを有する。支持軸33は、鉛直方向に延び、その下端部がスピンモータ32に接続されるとともに、上端部がスピンベース21の下面の中央に固定される。スピンモータ32を駆動させると、支持軸33がその軸芯330を中心として回転する。そして、支持軸33とともに、基板保持部20および基板保持部20に保持された基板Wも、軸芯330を中心として回転する。
【0032】
処理液供給部40は、基板保持部20に保持された基板Wの上面に、処理液を供給する機構である。処理液供給部40は、上面ノズル41および下面ノズル42を有する。
図1および
図2に示すように、上面ノズル41は、ノズルアーム411と、ノズルアーム411の先端に設けられたノズルヘッド412と、ノズルモータ413とを有する。ノズルアーム411は、ノズルモータ413の駆動により、ノズルアーム411の基端部を中心として、水平方向に回動する。これにより、ノズルヘッド412を、基板保持部20に保持された基板Wの上方の処理位置(
図1中の二点鎖線の位置))と、処理液捕集部50よりも外側の退避位置(
図1中の実線の位置)との間で、移動させることができる。
【0033】
ノズルヘッド412は、処理液を供給するための給液部(図示省略)と接続されている。処理液には、例えば、SPM洗浄液(硫酸と過酸化水素水との混合液)、SC-1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、純水の混合液)、SC-2洗浄液(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)、DHF洗浄液(希フッ酸)、純水(脱イオン水)などが使用される。ノズルヘッド412を処理位置に配置した状態で、給液部のバルブを開放すると、給液部から供給される処理液が、ノズルヘッド412から、基板保持部20に保持された基板Wの上面に向けて吐出される。
【0034】
なお、ノズルヘッド412は、処理液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する、いわゆる二流体ノズルであってもよい。また、1つの処理ユニット102に、複数本の上面ノズル41が設けられていてもよい。
【0035】
下面ノズル42は、スピンベース21の中央に設けられた貫通孔の内側に配置されている。下面ノズル42の吐出口は、基板保持部20に保持された基板Wの下面に対向する。下面ノズル42も、処理液を供給するための給液部に接続されている。給液部から下面ノズル42に処理液が供給されると、当該処理液が、下面ノズル42から基板Wの下面に向けて吐出される。
【0036】
処理液捕集部50は、使用後の処理液を捕集する部位である。
図2に示すように、処理液捕集部50は、内カップ51、中カップ52、および外カップ53を有する。内カップ51、中カップ52、および外カップ53は、図示を省略した昇降機構により、互いに独立して昇降移動することが可能である。
【0037】
内カップ51は、基板保持部20の周囲を包囲する円環状の第1案内板510を有する。中カップ52は、第1案内板510の外側かつ上側に位置する円環状の第2案内板520を有する。外カップ53は、第2案内板520の外側かつ上側に位置する円環状の第3案内板530を有する。また、内カップ51の底部は、中カップ52および外カップ53の下方まで広がっている。そして、当該底部の上面には、内側から順に、第1排液溝511、第2排液溝512、および第3排液溝513が設けられている。
【0038】
処理液供給部40の上面ノズル41および下面ノズル42から吐出された処理液は、基板Wに供給された後、基板Wの回転による遠心力で、外側へ飛散する。そして、基板Wから飛散した処理液は、第1案内板510、第2案内板520、および第3案内板530のいずれかに捕集される。第1案内板510に捕集された処理液は、第1排液溝511を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第2案内板520に捕集された処理液は、第2排液溝512を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第3案内板530に捕集された処理液は、第3排液溝513を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。
【0039】
このように、この処理ユニット102は、処理液の排出経路を複数有する。このため、基板Wに供給された処理液を、種類毎に分別して回収できる。したがって、回収された処理液の廃棄や再生処理も、各処理液の性質に応じて別々に行うことができる。
【0040】
遮断板60は、乾燥処理などの一部の処理を行うときに、基板Wの表面付近における気体の拡散を抑制するための部材である。遮断板60は、円板状の外形を有し、基板保持部20の上方に、水平に配置される。
図2に示すように、遮断板60は、昇降機構61に接続されている。昇降機構61を動作させると、遮断板60は、基板保持部20に保持される基板Wの上面から上方へ離れた上位置と、上位置よりも基板Wの上面に接近した下位置との間で、昇降移動する。昇降機構61には、例えば、モータの回転運動をボールねじにより直進運動に変換する機構が用いられる。
【0041】
また、遮断板60の下面の中央には、乾燥用の気体(以下「乾燥気体」と称する)を吹き出す吹出口62が設けられている。吹出口62は、乾燥気体を供給する給気部(図示省略)と接続されている。乾燥気体には、例えば、加熱された窒素ガスが用いられる。
【0042】
上面ノズル41から基板Wに対して処理液を供給するときには、遮断板60は、上位置に退避する。処理液の供給後、基板Wの乾燥処理を行うときには、昇降機構61により、遮断板60が下位置に降下する。そして、吹出口62から基板Wの上面に向けて、乾燥気体が吹き付けられる。このとき、遮断板60により、気体の拡散が防止される。その結果、基板Wの上面に乾燥気体が効率よく供給される。
【0043】
照射部70は、明暗パターンを有するパターン光を照射する光源である。照射部70は、例えば、基板保持部20に保持された基板Wの斜め上方の位置に設置される。
図3は、基板保持部20、照射部70、およびイベントベースカメラ80の斜視図である。
図3に示すように、本実施形態の照射部70は、基板Wの上面に向けて、斜め下向きに設置されている。照射部70は、基板Wの上面に供給される処理液へ向けて、明暗パターンを有するパターン光を照射する。
【0044】
図4~
図6は、照射部70から照射されるパターン光の明暗パターンの例を示した図である。
図4~
図6のように、明暗パターンは、複数の明領域71と、明領域よりも暗い複数の暗領域72とを有する。明暗パターンは、例えば、
図4のように、1方向において、明領域71と暗領域72が交互に繰り返し配列されたラインアンドスペースパターンとされる。また、明暗パターンは、
図5または
図6のように、互いに直交する2方向において、明領域71と暗領域72とが交互に繰り返し配列された格子パターンまたはチェッカーパターンであってもよい。
【0045】
イベントベースカメラ80は、基板Wの上面に供給される処理液を撮影する装置である。イベントベースカメラ80は、基板保持部20に保持された基板Wの斜め上方の位置に設置される。また、イベントベースカメラ80は、基板Wの中心軸に対して、照射部70と反対側の位置に配置される。イベントベースカメラ80は、基板Wの上面に向けて、斜め下向きに設置されている。イベントベースカメラ80は、ノズルヘッド412から基板Wの上面に処理液を吐出するときに、基板W上の処理液を撮影する。
【0046】
一般的な動画撮影用のカメラ(フレームベースカメラ)は、多数の画素の輝度値の情報をもつフレーム画像が、時系列に配列された動画データを出力する。これに対し、イベントベースカメラ80は、輝度値が変化した画素のみの情報で構成されるイベントデータEを出力する。イベントデータEは、輝度値が変化した場合にのみ生成される複数の単データeにより構成される。
図3に示すように、単データeは、輝度値が変化した画素の座標x,y、輝度値が変化した時刻t、および輝度値の変化方向pの情報により構成される。輝度値の変化方向pは、輝度が明るくなる方向に変化した場合に「1」、輝度が暗くなる方向に変化した場合に「0」となる。
【0047】
このように、イベントベースカメラ80は、輝度値が変化した画素のみの情報を出力する。このため、イベントベースカメラ80から出力されるイベントデータEの情報量は、フレームベースカメラから出力される動画の情報量よりも、小さい。このため、イベントベースカメラ80を使用すれば、フレームベースカメラを使用する場合よりも、データの取得および転送を、高速に行うことができる。また、イベントベースカメラ80は、フレームベースカメラにおけるフレーム画像の時間間隔よりも短い時間間隔で(例えば、数μ秒毎に)、単データeを取得することができる。それゆえ、イベントベースカメラ80を使用すれば、処理液の高速な動きを捉えることができる。
【0048】
イベントベースカメラ80は、撮影により得られたイベントデータEを、制御部90へ送信する。
【0049】
制御部90は、処理ユニット102内の各部を動作制御するための手段である。
図7は、制御部90と、処理ユニット102内の各部との電気的接続を示したブロック図である。
図7中に概念的に示したように、制御部90は、CPU等のプロセッサ91、RAM等のメモリ92、およびハードディスクドライブ等の記憶部93を有するコンピュータにより構成される。
【0050】
記憶部93内には、動作制御プログラムP1と、監視プログラムP2とが、記憶されている。動作制御プログラムP1は、処理ユニット102における基板Wの処理を実行するために、処理ユニット102の各部を動作制御するためのコンピュータプログラムである。監視プログラムP2は、イベントベースカメラ80から得られるイベントデータEに基づいて、処理ユニット102における処理液の流動状態を監視および評価するためのコンピュータプログラムである。
【0051】
図7に示すように、制御部90は、上述したチャックピン切替機構23、スピンモータ32、ノズルモータ413、処理液供給部40のバルブ、処理液捕集部50の昇降機構、遮断板60の昇降機構61、照射部70、およびイベントベースカメラ80と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。また、制御部90は、液晶ディスプレイ等の表示部94とも、電気的に接続されている。制御部90は、記憶部93に記憶された動作制御プログラムP1および監視プログラムP2に従って、上記の各部を動作制御する。これにより、後述するステップS1~S5,S11~S14の処理が進行する。
【0052】
<3.基板処理装置の動作>
次に、上記の処理ユニット102における基板Wの処理について、説明する。
図8は、基板Wの処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
処理ユニット102において基板Wを処理するときには、まず、主搬送ロボット103が、処理対象となる基板Wを、チャンバ10内に搬入する(ステップS1)。チャンバ10内に搬入された基板Wは、基板保持部20の複数のチャックピン22により、水平に保持される。その後、回転機構30のスピンモータ32を駆動させることにより、基板Wの回転を開始させる(ステップS2)。具体的には、支持軸33、スピンベース21、複数のチャックピン22、およびチャックピン22に保持された基板Wが、支持軸33の軸芯330を中心として回転する。
【0054】
続いて、処理液供給部40からの処理液の供給を行う(ステップS3)。ステップS3では、ノズルモータ413の駆動により、ノズルヘッド412が、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動する。そして、処理位置に配置されたノズルヘッド412から、処理液が吐出される。制御部90内の記憶部93には、処理液の吐出速度や吐出時間等のパラメータが、予め設定されている。制御部90は、当該設定に従って、上面ノズル41からの処理液の吐出動作を実行する。
【0055】
なお、ステップS3では、上面ノズル41から処理液を吐出しつつ、上面ノズル41を、処理位置において水平方向に揺動させてもよい。また、必要に応じて、下面ノズル42からの処理液の吐出を行ってもよい。
【0056】
ステップS3の処理液供給工程の間、遮断板60は、上面ノズル41よりも上方の上位置に配置されている。基板Wへの処理液の供給が完了し、上面ノズル41が退避位置に配置されると、制御部90は、昇降機構61を動作させて、遮断板60を上位置から下位置へ移動させる。そして、スピンモータ32の回転数を上げて基板Wの回転を高速化するとともに、遮断板60の下面に設けられた吹出口62から基板Wへ向けて、乾燥用の気体を吹き付ける。これにより、基板Wの表面を乾燥させる(ステップS4)。
【0057】
基板Wの乾燥処理が終了すると、スピンモータ32を停止させて、基板Wの回転を止める。そして、複数のチャックピン22による基板Wの保持を解除する。その後、主搬送ロボット103が、処理後の基板Wを、基板保持部20から取り出して、チャンバ10の外部へ搬出する(ステップS5)。
【0058】
各処理ユニット102は、順次に搬送される複数の基板Wに対して、上述のステップS1~S5の処理を、繰り返し実行する。
【0059】
<4.監視処理について>
本実施形態の基板処理装置100は、上述したステップS3において、基板Wの上面に処理液を供給しながら、処理液の流動状態が正常であるか否かを監視する。以下では、当該監視処理について説明する。
【0060】
図9は、監視処理の流れを示すフローチャートである。監視処理を行うときには、
図9のように、まず、制御部90は、照射部70からのパターン光の照射を開始する(ステップS11)。処理液は、ノズルヘッド412から基板Wの上面の中央付近に吐出され、基板Wの中央から周縁部へ向けて、基板Wの上面に沿って流れる。照射部70は、この基板Wの上面を流れる処理液へ向けて、明暗パターンを有するパターン光を照射する。
【0061】
次に、制御部90は、イベントベースカメラ80による撮影を行う(ステップS12)。すなわち、基板Wに対して処理液が供給され、その処理液にパターン光が照射された状態で、イベントベースカメラ80が、基板W上の処理液を撮影する。イベントベースカメラ80は、撮影によりイベントデータEを生成する。そして、イベントベースカメラ80は、生成されたイベントデータEを制御部90へ出力する。制御部90は、イベントベースカメラ80から出力されたイベントデータEを、記憶部93に記憶する。
【0062】
図10および
図11は、イベントベースカメラ80による撮影の様子を示した図である。
図10の例では、イベントベースカメラ80が、基板Wの中心軸を挟んで、照射部70と反対側に配置されている。そして、イベントベースカメラ80のフォーカスは、基板Wの上面ではなく、基板W上の処理液の表面において反射する照射部70の位置に、合わせられている。このようにすれば、イベントベースカメラ80は、処理液の表面において反射する照射部70の反射像を撮影できる。すなわち、イベントベースカメラ80は、基板Wの上面に供給された処理液を、パターン光の反射像とともに撮影できる。
【0063】
一方、
図11の例では、イベントベースカメラ80のフォーカスが、基板W上の処理液の表面の位置に合わせられている。このようにすれば、イベントベースカメラ80は、処理液の表面に投影されるパターン光の投影像を撮影できる。すなわち、イベントベースカメラ80は、基板Wの上面に供給された処理液を、パターン光の投影像とともに撮影できる。
【0064】
処理対象物が半導体ウェハである場合、基板Wの表面は鏡面となっているため、基板W上の処理液に投影像が現れにくい。そのような場合には、イベントベースカメラ80は、
図10のように、パターン光の反射像を撮影するとよい。一方、処理液の表面においてパターン光が反射しにくい場合には、イベントベースカメラ80は、
図11のように、パターン光の投影像を撮影するとよい。また、
図10のように、反射像を撮影する場合、イベントベースカメラ80は、パターン光の正反射を受ける位置に配置する必要がある。これに対し、
図11のように、投影像を撮影する場合は、イベントベースカメラ80の位置を、必ずしも正反射の位置とする必要はない。したがって、イベントベースカメラ80の配置の自由度を高めることができる。
【0065】
図12は、処理液が供給される基板Wを、通常のフレームベースカメラで撮影した場合のフレーム画像Fの例を示した図である。
図13は、処理液が供給される基板Wを、イベントベースカメラ80で撮影し、得られたイベントデータEを画像化した例を示した図である。
図13では、イベントデータEの単データeが存在する画素を、黒色のドットで示している。
【0066】
通常のフレーム画像Fは、全ての画素に輝度値が規定されている。したがって、通常のフレーム画像Fでは、
図12のように、動きの無い部分も画像として現される。これに対し、イベントデータEは、輝度値が変化した画素のみの情報で構成される。したがって、イベントデータEでは、
図13のように、動きのある部分のみに単データeが存在し、動きの無い部分には単データeが存在しない。
【0067】
制御部90は、イベントデータEに基づいて、処理液の流動状態が正常であるか否かを評価する(ステップS13)。例えば、制御部90は、正常時(例えば装置の出荷時)のイベントデータEを、リファレンスデータとして記憶していてもよい。そして、制御部90は、当該リファレンスデータと、ステップS12において取得したイベントデータEとを比較することにより、処理液の流動状態が正常であるか否かを判定してもよい。より具体的には、上記のリファレンスデータと、ステップS12において取得したイベントデータEとの差が、予め設定された許容範囲を超えた場合に、異常と判定してもよい。これにより、例えば、基板Wの上面における処理液の液面の波打ちや、基板Wの上面における液膜のブレイク(基板面の露出)などを、検出することができる。
【0068】
その後、監視処理を終了する場合、制御部90は、照射部70からのパターン光の照射を停止する(ステップS14)。
【0069】
以上のように、この基板処理装置100では、基板Wの上面に供給される処理液に、パターン光が照射される。このため、処理液の流動状態が乱れると、パターン光の像も乱れる。したがって、当該パターン光を撮影することにより、パターン光の歪みに基づいて、処理液の流動状態の微小な変化を検出できる。特に、処理液が無色透明である場合、処理液自体を撮影することが困難であるが、パターン光の像を撮影することにより、間接的に、処理液の流動状態を検出することが可能となる。
【0070】
また、処理液が高速で供給されている場合、通常のフレームベースカメラでは、高速な動きを撮影しにくい。しかしながら、上記の実施形態のように、イベントベースカメラ80を使用すれば、処理液の高速な動きを撮影できる。また、イベントベースカメラ80により取得されるイベントデータEは、輝度値が変化した画素のみのデータであるため、パターン光の像が変化した箇所を抽出する処理を別途行う必要がない。したがって、監視処理の処理工数を減らすことができる。
【0071】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0072】
<5-1.第1変形例>
図14は、第1変形例に係る撮影の様子を示した図である。
図14の例では、処理ユニット102が、基板Wの表面とは別の投影面73を有する。投影面73は、基板保持部20に保持された基板Wの上部の側方に位置する。投影面73は、鏡面ではない例えば白色の平面である。照射部70は、投影面73に向けてパターン光を照射する。これにより、投影面73にパターン光が投影される。そして、イベントベースカメラ80は、ステップS12において、基板W上の処理液の表面で反射する投影面73の反射像を撮影する。
【0073】
このような形態でも、パターン光とともに処理液を撮影することができる。したがって、パターン光の歪みに基づいて、処理液の流動状態の微小な変化を検出できる。また、
図14の例では、照射部70を、イベントベースカメラ80に対して正反射の位置に配置する必要がない。照射部70の位置は、投影面73にパターン光を投影できる位置であればよい。したがって、
図14の形態を採れば、照射部70の配置の自由度を高めることができる。
【0074】
<5-2.他の変形例>
上記の実施形態では、イベントベースカメラ80により、処理液およびパターン光を撮影した。しかしながら、イベントベースカメラ80に代えて、高速撮影が可能な高感度のフレームベースカメラを使用してもよい。フレームベースカメラを使用する場合であっても、パターン光とともに処理液を撮影することで、パターン光が無い場合よりも、処理液の流動状態の微小な変化を検出できる。ただし、フレームベースカメラを使用する場合は、撮影画像から変化した部分を抽出するための画像処理が、別途必要となる。
【0075】
また、上記の実施形態では、半導体ウェハである基板Wの表面に処理液を供給する場合について、説明した。しかしながら、本発明は、半導体ウェハ以外の処理対象物に処理液を供給する場合において、処理液の流動状態を監視するものであってもよい。
【0076】
ただし、半導体ウェハ等の精密電子部品用の基板Wに対して処理液を供給する装置においては、処理液の流動状態を極めて精密に管理する必要がある。このため、当該基板Wに対して処理液を供給する装置においては、本発明の監視方法を適用する意義が、特に大きい。
【符号の説明】
【0077】
10 チャンバ
20 基板保持部
30 回転機構
40 処理液供給部
41 上面ノズル
50 処理液捕集部
60 遮断板
70 照射部
71 明領域
72 暗領域
73 投影面
80 イベントベースカメラ
90 制御部
100 基板処理装置
101 インデクサ
102 処理ユニット
103 主搬送ロボット
E イベントデータ
F フレーム画像
P1 動作制御プログラム
P2 監視プログラム
W 基板