(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184116
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】タンニン含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20231221BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20231221BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A23F3/16
A23L2/52
A23L2/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098073
(22)【出願日】2022-06-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-13
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真由美
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB08
4B027FB11
4B027FC02
4B027FK02
4B027FK09
4B027FP85
4B117LC02
4B117LG17
4B117LK06
(57)【要約】
【課題】本発明は、タンニンを含有する飲料において、ナトリウムを20mg/100ml以上含有させたときに感じられるタンニン由来の渋味を軽減することを目的とする。
【解決手段】タンニンを100ppm以上含有する飲料において、飲料中のナトリウムの含有量を20~120mg/100mlに調整し、飲料中のヌートカトンの含有量を50~2000ppbに調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンを100ppm以上含有する飲料であって、
(a)飲料中のナトリウムの含有量が20~120mg/100mlであり、
(b)飲料中のヌートカトンの含有量が50~2000ppbである、
上記飲料。
【請求項2】
タンニンが茶抽出物由来である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
紅茶飲料である、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
β-カリオフィレンを含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
炭酸ガスを含有しない、請求項1に記載の飲料。
【請求項6】
飲料中のナトリウムの含有量が40mg/100ml以上である、請求項1に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンニンを含有する飲料に関し、より具体的には、タンニン由来の渋味が軽減された飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
タンニンは、茶抽出物やコーヒー豆、一部の果実(例えば、ブドウ、柿等)に含まれるポリフェノールであり、様々な飲料に存在する成分である。タンニンは、抗酸化作用、抗がん作用、殺菌作用、抗ウイルス作用などさまざまな薬効を有することが知られている。タンニンはまた、血中のコレステロール値を下げて、動脈硬化や高血圧、心臓疾患、脳血管障害などを防ぐ消炎作用を有することや、脂肪を分解してエネルギーに変える働きがあることから肥満予防にも有効であることが知られている。
【0003】
しかしながら、タンニンは渋味を有するため、場合によってはその渋味が飲料の飲みやすさを妨げることがある。タンニン由来の渋味は、タンニンが舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して変性させる収斂作用によって生じると言われている。
【0004】
タンニン等のポリフェノールを配合した飲料の苦味や渋味を抑制する方法として、各種のマスキング剤を添加することが検討されている。例えば、高甘味度甘味料であるソーマチン(特許文献1)、グリチルリチン(特許文献2)、スクラロース(特許文献3、4)などを用いる方法、さらには高甘味度甘味料である羅漢果抽出物(特許文献5)やアスパルテームなど(特許文献6)を用いる方法が挙げられる。しかし、これらの方法では、飲料に甘味が付与されるため、対象となる飲料が限られている。
【0005】
一方、ナトリウムは、発汗などによって崩れやすいイオンバランスを保ち、ミネラル分と水分の補給を効果的に行う点から、一定量のナトリウムイオンを配合した飲料が知られている。特に熱中症対策などには、基本的に水分とナトリウムイオンの補給が有効であり、一定量のナトリウムイオンを配合した経口補水液やスポーツドリンク、麦茶飲料などがよく市販されている。しかしながら、紅茶や緑茶といったタンニンを含む茶飲料に関しては、製造用剤として炭酸水素ナトリウム等のナトリウム塩が添加された、ごくわずかな量のナトリウムが含まれている容器詰め飲料製品は市販されているものの、一定量のナトリウムイオンを配合した熱中症対策飲料は市場にほとんど存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-17834号公報
【特許文献2】特開2008-17835号公報
【特許文献3】特開平10-262601号公報
【特許文献4】特開2008-99677号公報
【特許文献5】特開2014-82960号公報
【特許文献6】特開平10-248501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、飲料の研究開発過程において、タンニンを含有する飲料に所定量のナトリウムを配合すると、タンニン由来の渋味が増強するという問題が生じることを見出した。タンニン由来の渋味は、タンニンが舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して変性させることにより生じることから、詳細なメカニズムは不明であるが、ナトリウムにはその変性作用を増強する効果があると考えられた。そこで、本発明は、タンニンを含有する飲料において、ナトリウムを20mg/100ml以上含有させたときに感じられるタンニン由来の渋味を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、種々の成分の中からヌートカトンに着目し、ナトリウムによって増強されたタンニン由来の渋味に対して所定量のヌートカトンの配合が有効であることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
(1)タンニンを100ppm以上含有する飲料であって、
(a)飲料中のナトリウムの含有量が20~120mg/100mlであり、
(b)飲料中のヌートカトンの含有量が50~2000ppbである、
上記飲料。
(2)タンニンが茶抽出物由来である、(1)に記載の飲料。
(3)紅茶飲料である、(1)又は(2)に記載の飲料。
(4)β-カリオフィレンを含有する、(1)~(3)のいずれか1に記載の飲料。
(5)炭酸ガスを含有しない、(1)~(4)のいずれか1に記載の飲料。
(6)飲料中のナトリウムの含有量が40mg/100ml以上である、(1)~(5)のいずれか1に記載の飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タンニンを含有する飲料において、ナトリウムを20mg/100ml以上含有させたときに感じられるタンニン由来の渋味を軽減することができる。本発明の技術を利用することにより、例えば熱中症対策飲料のような、一定量のナトリウムイオンを配合した茶飲料を、タンニン由来の渋味が感じられにくいものとして提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の飲料及び関連する方法について、以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppb」及び「ppm」は、重量/容量(w/v)のppb及びppmをそれぞれ意味する。また、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値~上限値」は、それら下限値及び上限値を包含するものとする。例えば、「1~2」により表される範囲は、1及び2を含む。
【0012】
本発明の一態様は、タンニンを100ppm以上含有する飲料であって、
(a)飲料中のナトリウムの含有量が20~120mg/100mlであり、
(b)飲料中のヌートカトンの含有量が50~2000ppbである、
上記飲料である。
【0013】
(タンニン)
本発明の飲料は、タンニンを含有する。タンニンとは、カテキン類、没食子酸、そのエステル及びそれらの縮合物を包含する名称である。飲料中のタンニンの濃度は、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)分析マニュアル」(令和4年2月)に記載の方法(酒石酸鉄吸光光度法)を用いて測定した値である。当該方法では、発色剤として酒石酸鉄試薬が用いられ、当該試薬により発色させた成分について波長540nmで吸光度を測定することによりタンニンの量を調べることができる。標準物質として没食子酸エチルを用いて検量線を作成し、その検量線から試料の吸光度に相当する没食子酸エチル量を求め、得られた数値を換算してタンニンの量とすることができる。
【0014】
本発明においてタンニンは、特に限定されないが、例えば茶抽出物やその濃縮物の形態で好適に用いることができる。タンニンを含有する植物の抽出物又はその濃縮物は、紅茶、緑茶、烏龍茶、プーアル茶などのカメリア・シネンシスに属する茶葉類等を原料として用い、調製することができる。中でも、本発明の効果の側面から、紅茶葉より得られる抽出物を好適に用いることができる。タンニンは、茶抽出物由来であることが好ましく、紅茶抽出物由来であることがより好ましい。本発明の飲料は、茶抽出物(好ましくは紅茶抽出物)を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の飲料におけるタンニンの含有量は、100ppm以上であり、好ましくは200~1000ppm、より好ましくは400~900ppm、さらに好ましくは500~800ppmである。飲料中のタンニンの含有量が100ppm以上の場合、所定量のナトリウムの存在によって飲料におけるタンニン由来の渋味が顕著に感じられるため、本発明によるタンニン由来の渋味軽減効果を得る上で好ましい。また、飲料中のタンニンの含有量が1000ppmを超える場合、本発明による渋味の軽減効果は得られるが、渋味が十分に軽減しないおそれがある。
【0016】
(ナトリウム)
本発明の飲料は、ナトリウムを含有する。本発明においてナトリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはナトリウムを豊富に含む海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本発明で用いることができるナトリウムの塩としては、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明においてナトリウムは、これらのナトリウム塩に由来することができる。本発明の飲料は、好ましくは塩化ナトリウムを含有する。本発明においてナトリウムは、好ましくは塩化ナトリウム由来である。
【0017】
本発明の飲料におけるナトリウムの含有量は20~120mg/100mlであり、好ましくは35~80mg/100mlであり、より好ましくは40~60mg/100mlであり、さらに好ましくは40~50mg/100mlである。飲料中のナトリウムの含有量が20mg/100ml以上の場合、タンニン由来の渋味が顕著に増強される。また、ナトリウムの含有量が120mg/100mlを超える場合、ナトリウム由来のぬめりが目立って、飲料の嗜好性が低下するおそれがある。
【0018】
本発明において、飲料中のナトリウムの含有量は、ナトリウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で算出することができる。また、飲料中のナトリウムの含有量は、ICP発光分光分析装置や原子吸光光度計を用いて公知の方法により測定することができる。
【0019】
(ヌートカトン)
本発明の飲料は、ヌートカトンを含有する。ヌートカトンは、分子式C15H22Oで表されるセスキテルペンケトン類の一種である。ヌートカトンは香気成分の一種であり、交感神経を活発にする機能を有することが知られている。
【0020】
本発明で用いるヌートカトンは、特に限定されないが、精製品の他、粗製品であってもよい。例えば、ヌートカトンを含有する天然物又はその加工品(植物抽出物、精油、植物の発酵物、これらの濃縮物等)であってもよい。より具体的な例として、ヌートカトンを含有する香料の他、果汁やエキス等を挙げることができる。飲料への添加が少量で済むことから、香料であることが好ましい。また、本発明で用いるヌートカトンは、光学異性体の点でd体とl体のいずれであってもよい。
【0021】
本発明の飲料におけるヌートカトンの含有量は50~2000ppbである。飲料中のヌートカトンの含有量がこの範囲にある場合、ナトリウムによって増強されたタンニン由来の渋味を効果的に軽減することができる。本発明において、飲料におけるヌートカトンの含有量は、好ましくは100~1500ppb、より好ましくは150~1000ppb、最も好ましくは200~800ppbである。
【0022】
飲料中のヌートカトンの含有量は、公知の方法によって定量することができる。例えば、GC/MS測定装置を用いる場合、以下の条件で分析することができる。
<ヌートカトンの分析条件>
バイアル瓶(容量20ml)に試料溶液5gを量り取り、Gerstel社製Twister(PDMS)を入れて室温で30分、香気成分を抽出後、加熱脱着装置付きGC/MS測定に供する。定量値は標準添加法で算出する。分析条件の詳細は、以下の通りである。
・GC:Agilent Technologies社製GC6890N
・MS:Agilent Technologies社製5975B
・加熱脱着装置:Gerstel社製TDU
・カラム:Inertcap Pure-WAX 30m×0.25mm(カラムの内径)、膜厚(カラム液相の厚さ)=0.25μm
・定量イオン:m/z=147
・温度条件:40℃(5分)~10℃/分~260℃
・キャリアガス流量:He 1.2ml/分
・TDU温度:260℃
・IF温度:260℃
・イオン源温度:230℃
【0023】
本発明の飲料において、タンニン含有量に対するヌートカトン含有量の比率(ヌートカトン含有量/タンニン含有量)は、特に限定されないが、例えば0.0001~0.15であり、好ましくは0.001~0.01、より好ましくは0.002~0.005である。
【0024】
(β-カリオフィレン)
本発明の飲料は、β-カリオフィレンを含むことができる。β-カリオフィレンは、(E)-(1R,9S)-4,11,11-トリメチル-8-メチリデンビシクロ[7.2.0]ウンデカ-4-エン等とも称される化合物であり(CAS登録番号:87-44-5)、ホップやイランイラン、クローブなどの植物精油に含まれることが知られている。本発明においてβ-カリオフィレンは、合成されたもの又は天然物から抽出・単離されたものとして飲料に配合してもよく、また、β-カリオフィレンを含む精油又は香料として飲料に配合してもよい。
【0025】
β-カリオフィレンを含有させることにより、ナトリウムによって増強されたタンニン由来の渋味の軽減効果をより高めることができる。本発明の飲料におけるβ-カリオフィレンの含有量は、特に限定されないが、例えば5~2000ppbであり、好ましくは10~1000ppb、より好ましくは100~500ppbである。飲料中のβ-カリオフィレンの含有量は、公知の方法によって定量することができ、例えば、GC/MS装置を用いてβ-カリオフィレンの含有量を測定することができる。
【0026】
(その他原料)
本発明の飲料には、上記に示した各種成分に加えて、飲料に一般的に用いられる成分を配合することができる。例えば、限定されないが、香料、糖類、酸味料、栄養強化剤、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、食物繊維、品質安定剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0027】
(酸度)
本発明の飲料の酸度は、特に限定されないが、例えば0.02~1.00g/100gであり、好ましくは0.10~0.7g/100g、より好ましくは0.15~0.35g/100gである。酸度が1.00g/100gを超えると酸味が強すぎて、タンニン由来の渋味が知覚されない場合がある。一方、酸度が0.02g/100gを下回ると、ナトリウム由来のぬめりが知覚されやすくなり、飲料の嗜好性が損なわれる可能性がある。
【0028】
本明細書において用いる酸度とは、酸の含有量の指標となる値であり、一定量の飲料(試料)に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する際の、中和に要した(pH8.1)アルカリの量から計算により求めることができる。酸度の測定には、自動滴定装置(京都電子工業、AT-710/CHA-700など)を用いることができる。本発明において、酸度は、クエン酸量に換算した値(中和量から、飲料に含まれている酸が全てクエン酸であると仮定して計算して求める)を用いる。
【0029】
本発明の飲料の酸度は、いずれの酸を用いて調整してもよい。例えば、クエン酸、リン酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、硫酸、塩酸、フマル酸、フィチン酸、イタコン酸、又はその他の酸を用いて飲料の酸度を調整することができるが、これに限定されない。また、本発明において酸度は、果汁(透明果汁及び混濁果汁のいずれであってもよい)や食品添加物基準の酸味料等を用いて調整することもできる。
【0030】
(Brix)
本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。理論に拘束されないが、Brixが3以上である場合、ナトリウム由来のぬめりが目立たなくなるので好ましい。Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である。単位は「°Bx」、「%」又は「度」で表示される。
【0031】
(飲料)
本発明の飲料は、清涼飲料であれば特に限定されない。例えば、栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料、茶系飲料(紅茶、ウーロン茶、緑茶等)、コーヒー飲料などいずれであってもよい。なお、本発明においては、炭酸の刺激によってタンニン由来の渋味軽減効果が得られにくくなることから、本発明の飲料は、炭酸ガスを含まない飲料(すなわち、非炭酸飲料)であることが好ましい。
【0032】
本発明の飲料は、一実施形態において、茶飲料であることが好ましい。ここで「茶飲料」とは、茶葉の抽出物を主成分として含有する飲料であり、具体的には、緑茶、ジャスミン茶、紅茶、ウーロン茶などが挙げられる。本発明において特に好ましい茶飲料は、紅茶飲料である。
【0033】
(容器詰め飲料)
本発明の飲料は、加熱殺菌され、容器に詰められた状態の容器詰飲料とすることができる。飲料に香気成分(特に、エステル系の香気成分)が含まれる場合、飲料が加熱殺菌されるとそのような香気成分は加熱劣化により減少してしまい、飲料中のタンニン由来の渋味が知覚されやすくなる傾向にある。本発明の飲料は、かかるタンニン由来の渋味が軽減されていることから、香気成分(特に、エステル系の香気成分)が含まれる飲料は好適な態様の一つである。
【0034】
加熱殺菌の手段は特に限定されないが、例えばUHT殺菌及びレトルト殺菌等、公知のいずれの手段も用いることができる。飲料を充填する容器は、特に限定されないが、例えば、PETボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶などを用いることができる。手軽ないし利便性の側面からみれば、軽量で持ち運びが容易であり、かつ再栓が可能である容器、例えば、PETボトルのような容器が好ましい。
【0035】
(製造方法)
ある態様では、本発明は飲料の製造方法である。より具体的には、本発明の一態様は、タンニンを100ppm以上含有する飲料の製造方法であって、
飲料中のナトリウムの含有量を20~120mg/100mlに調整する工程、
飲料中のヌートカトンの含有量を50~2000ppbに調整する工程、及び
飲料を容器詰めする工程、
を含む、上記製造方法である。
【0036】
本発明の飲料は、タンニン、ナトリウム及びヌートカトン以外の上述した各種成分を適宜配合したり、飲料中のその含有量を調整したりすることによって製造されてもよい。すなわち、本発明の製造方法は、上述した成分を配合する工程や、飲料中の当該成分の含有量を調整する工程を含むことができる。また、本発明の製造方法は、飲料の酸度を調整する工程や、Brix値を調整する工程等も含むことができる。本発明の製造方法では、上記の各工程をどの順序で行ってもよく、最終的に得られた飲料における含有量などが所要の範囲にあればよい。なお、本発明の飲料の製造における飲料中の成分の種類やその含有量等の各種要素については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。
【0037】
また、本発明の飲料の製造方法においては、必要に応じて飲料を加熱殺菌する工程が含まれてもよい。加熱殺菌を行う条件は上記に説明した通りであるが、特に限定されるわけではない。
【実施例0038】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
(参考例)
タンニンとして、紅茶エキスパウダー(Instant Black Tea(James Finlay Kenya Limited);タンニン含量5%)を用いた。タンニン濃度が200ppmとなるように水に紅茶エキスパウダーを添加して飲料を調製し、ナトリウム含有量が下表に示された数値となるよう、食塩を添加した(サンプル1~3)。
【0040】
それぞれの飲料について、タンニン由来の渋味の官能評価を行った。官能評価は6名の専門パネルにて行い、以下の基準に沿って専門パネル各自が1~5点の間で小数点第一位まで点数付けを行い、得られた点数の平均値を最終的な評価点とした。
1点:タンニン濃度2000ppmの水溶液で感じられる渋味
2点:タンニン濃度1000ppmの水溶液で感じられる渋味
3点:タンニン濃度500ppmの水溶液で感じられる渋味
4点:タンニン濃度300ppmの水溶液で感じられる渋味
5点:タンニン濃度200ppmの水溶液で感じられる渋味
【0041】
【0042】
結果は上記の通りであり、20mg/100ml以上の濃度でナトリウムを添加することで、タンニン由来の渋味が強く感じられることがわかった。
【0043】
(実験例1)
水に、上記参考例で使用した紅茶エキスパウダーと、食塩又はクエン酸三ナトリウムとを添加し、さらにヌートカトンとβ-カリオフィレンを添加して、各種成分の最終濃度が下表に示した数値となるよう各飲料を調製した。調製した飲料を500ml容量のPET容器に充填し、官能評価を行った。評価は、専門パネル6名が上記参考例と同様の基準及び方法で行い、各自で評価した点数の平均値を最終的な評価点とした。
【0044】
【0045】
結果は上記の通りであり、タンニンとナトリウムとを含む飲料に、所定量のヌートカトンを添加すると、ナトリウムにより増強されたタンニン由来の渋味が軽減されることがわかった。また、ヌートカトンに加えてβ-カリオフィレンも添加すると、その効果がさらに高まることがわかった。
【0046】
(実験例2)
紅茶エキスとしてインスタント紅茶(Goodricke Group LTD.)(タンニン含量20%)を使用し、各種成分の最終濃度が下表に示した数値となるように2種の紅茶飲料を調製した。調製した飲料は、加熱殺菌後に500ml容量のPET容器に充填した。得られた飲料について専門パネル6名で官能評価を行ったところ、全員一致で、サンプル2-1と比較してサンプル2-2の方がタンニン由来の渋味が軽減されているとの結果が得られた。
【0047】