(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184121
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタの画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231221BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41M5/00 132
B41M5/00 134
B41M5/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098081
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】萩森 普
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
(72)【発明者】
【氏名】塚本 紫門
(72)【発明者】
【氏名】千田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 忠
(72)【発明者】
【氏名】両角 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 潔
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB45
2C056EC06
2C056EC37
2C056HA42
2C056HA44
2H186AB02
2H186AB09
(57)【要約】
【課題】画像品質を落とすことなく、処理時間の短縮とメディアのロス低減を図ることができるインクジェットプリンタの画像形成方法を提供すること。
【解決手段】メディアへインクを噴射するインクヘッドと液剤を噴霧するスプレーヘッドを備えた、インクジェットプリンタの画像形成方法であって、インクヘッドからインクを噴射する印刷処理に加えてスプレーヘッドから液剤を噴霧するスプレー処理が「有り」か「無し」か、をパラメータとするジョブリストを作成し、ジョブリストにおいて共通するパラメータを含む複数のジョブをグループ化し、グループ毎にジョブを実行することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアへインクを噴射するインクヘッドと液剤を噴霧するスプレーヘッドを備えた、インクジェットプリンタの画像形成方法であって、
前記インクヘッドから前記インクを噴射する印刷処理に加えて前記スプレーヘッドから前記液剤を噴霧するスプレー処理が「有り」か「無し」か、をパラメータとするジョブリストを作成し、
前記ジョブリストにおいて共通するパラメータを含む複数のジョブをグループ化し、
グループ毎にジョブを実行することを特徴とするインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項2】
前記スプレー処理は、前記インクヘッドから前記インクを噴射する印刷処理の前に行われる前処理と、後に行われる後処理とを含み、
前記グループ化は、スプレー処理の「有り」について、更に、前処理か後処理かで分けられることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項3】
前記スプレー処理の前処理か後処理かの選択は、メディアの種類に基づいて決定されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項4】
前記メディア上における前記グループ化されたジョブの対象となる画像の配置は、グループ毎に異なる配置領域とされたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項5】
前記画像の配置領域分けは、更に前記スプレー処理が前処理か後処理かで分けられて配置されることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項6】
前記ジョブリストの作成は、ユーザーがスプレー処理を実行するタイミングを入力することにより行われることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項7】
前記画像の配置領域内における前記画像のレイアウトは、前記メディアのサイズと前記グループ化された複数の画像サイズとを考慮して行われることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【請求項8】
前記インクヘッドと前記スプレーヘッドを前記メディアに対して各々独立に走査させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディアへのインクの噴射による画像の印刷と処理剤のスプレーによるコーティング処理が可能なインクジェットプリンタの画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクを噴射するインクヘッドを記録用紙などのメディアの幅方向(走査方向)に往復移動させて画像を印刷する装置であるが、メディアの種類、例えばアクリル樹脂やガラスなどのようなインクが定着しにくい材質で構成されたメディアに対して画像の印刷を行う場合には、印刷を行う前または後にメディアの表面に前処理剤(プライマー)または後処理剤(トップコート剤)をスプレーして該表面にコーティング層を形成するコーティング処理がなされる。上記コーティング処理をユーザーが行う場合には、画像が印刷される前のメディアをインクジェットプリンタにセットする前において、或いは画像が印刷されたメディアをインクジェットプリンタから取り外してから、メディアに前処理剤または後処理剤をスプレーして該メディアの表面をコーティング処理する必要があり、ユーザーに多大な手間と時間を掛けてしまう。
【0003】
そこで、インクジェットプリンタに、印刷用のインクを噴射するインクヘッドと処理剤(前処理剤または後処理剤)をスプレーするスプレーヘッドを並設することが考えられる。このような構成を採用するインクジェットプリンタで1つのメディアに対して例えば
図5に示すように印刷前に下地処理用の前処理剤をスプレーする2つのジョブA,Bを実行する場合、先のジョブAにおいてメディアmの表面にスプレーヘッドH1から前処理剤がスプレーされてコーティング層10が形成される。そして、その後にインクヘッドH2からインクが噴射されてメディアmのコーディング層10の上から所要の印刷がなされ、コーティング層10の上に画像20が形成される。
【0004】
そして、その後にジョブAに続けて実行されるジョブBにおいては、先ず、スプレーヘッドH1から下地処理用の前処理剤がメディアmの表面に向けてスプレーされ、メディアmの表面にコーティング層11が形成されるが、このときスプレーされる前処理剤の一部は、メディアmの表面に付着しないでミストとして周囲に飛散し、前のジョブAにおいてメディアm上に形成された画像20に付着して該画像20の品質を低下させるという問題が発生する。
【0005】
上記問題を解決するには、ジョブAとジョブBの印刷間隔を十分確保したり、1つのメディアに1つのジョブの画像のみを印刷したりすることが対策として考えられるが、このような対策では時間とメディアのロスが大きくなってしまう。
【0006】
なお、上記のような問題は、印刷の後に後処理剤をメディアの表面にスプレーする場合においても同様に発生する。すなわち、印刷を行った後に後処理剤をメディアにスプレーするジョブに続けて同様のジョブを実行する場合には、先のジョブにおいてスプレーされた後処理剤の一部がミストとして飛散し、このミストが次のジョブが実行されるメディアmの表面に付着し、印刷のインクのメディアへの定着性が損なわれるという問題が発生する。
【0007】
ところで、インクヘッドとスプレーヘッドとを備えたインクジェットプリンタにおいては、例えば、インクの噴射による印刷と処理剤のスプレーによるコーティング処理の両方を行うジョブと、いずれか一方を行うジョブとが混在していたり、さらにはコーティング処理を印刷の前に行う(前処理)ジョブと、印刷の後に行う(後処理)ジョブとが混在していたりする場合に、一連のジョブを実行すると、ジョブの実行順序によっては、処理時間が長くなるとともに、メディアのロスが大きくなるという問題が発生する。
【0008】
処理時間(スループット時間)の短縮を図るという観点から、特許文献1には、被膜を形成するコーティング処理を行う画像形成装置が提案されている。この画像形成装置は、排出順の画像データにおいて検出部にて検出したコーティングページよりも前に、非コーティングページがある場合には、変更処理部は、コーティングページの画像データの画像形成順を非コーティングページよりも先に画像形成する順序に変更する変更処理を行う。そして、画像形成部は、変更処理部にて変更処理された画像形成順で画像形成を行い、搬送制御部は、画像形成部にて画像処理順に画像形成されてコーティング処理された記録シートの搬送を制御する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1において開示された技術は、コーティングページよりも前に、非コーティングページがある場合の対策として、画像の形成順を逆転させるものである。したがって、印刷の前または後にスプレーによる処理を行う印刷対象が、メディア載置面上に混在するような場合、すなわち、インクジェットプリンタの一つの印刷処理過程の中でスプレー処理の有無が混在するような状況ではその機能を奏することはできない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、画像品質を落とすことなく、処理時間の短縮とメディアのロス低減を図ることができるインクジェットプリンタの画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係るインクジェットプリンタの画像形成方法は、
メディアへインクを噴射するインクヘッドと液剤を噴霧するスプレーヘッドを備えた、インクジェットプリンタの画像形成方法であって、
前記インクヘッドから前記インクを噴射する印刷処理に加えて前記スプレーヘッドから前記液剤を噴霧するスプレー処理が「有り」か「無し」か、をパラメータとするジョブリストを作成し、
前記ジョブリストにおいて共通するパラメータを含む複数のジョブをグループ化し、
グループ毎にジョブを実行することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、ジョブリストにおいてスプレー処理の有無をパラメータとして複数のジョブをグループ化しているので、グループ化した各グループのジョブを一緒に画像形成の過程に乗せることができる。すなわち、スプレー処理の有無で分けられた上記グループ毎に実行するようにしたことで、複数の画像処理を一つの処理過程で印刷する場合でもスプレー処理を行う必要のないメディアに対してスプレーのミストの飛散する状況を回避することができる。具体的には、画像形成過程で載置台に置かれるメディア上の複数の画像が、スプレー処理をするものとしないものとに分けられるので、スプレー処理を行うタイミングを一度に集約することができる。したがって、その前・後に実行されるジョブにおいて印刷される画像が飛散する処理剤のミストによって悪影響を受けることがなく、高い画像品質が確保される。
【0014】
また、グループ化した複数のジョブをグループ毎に実行することによって、各ジョブを個別に行う場合に比べて処理時間を短縮することができるとともに、メディアのロスを最小限に抑えることができる。さらに、複数のジョブを1つのグループにまとめることによって、不要なセットアップ動作などをなくすことができ、このことによっても処理時間が短縮される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インク噴射手段による画像の印刷と液剤のスプレー手段による印刷の処理が可能で、且つ両者の処理が混在する複数の画像の印刷処理に関して、画像品質を落とすことなく、処理時間の短縮とメディアのロス低減を図ることができる。これにより多様化、大量化する画像印刷において品質の向上と処理の迅速化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るジョブリストの一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るジョブパラメータのリスト例を示す図である。
【
図3】(a)~(c)は本発明の実施の形態に係るジョブリストのグループ分けの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るメディアに対する画像印刷のレイアウト例を示す図である。
【
図5】従来の画像形成方法の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
本発明方法が実施される不図示のインクジェットプリンタは、インクを噴射するインクヘッドH2(
図5参照)を記録用紙などのメディアm(
図5参照)の幅方向(主走査方向)に往復移動させて印刷する装置であって、インクヘッドH2の他、処理剤をメディアmに対してスプレー処理により該メディアmの表面上にコーティング層を形成するコーティング処理を行うスプレーヘッドH1(
図5参照)を備えている。スプレーヘッドH1には、図示していない処理剤タンクから処理剤が供給され、図示していないエアコンプレッサから圧縮空気が供給される。スプレーヘッドH1に供給された処理剤は、スプレーヘッドH1に供給された圧縮空気によって微粒化され、スプレーヘッドH1のスプレーノズルから噴霧される。スプレーヘッドH1は、処理剤の種類の数に対応して複数搭載されていてもよい。また、1つのスプレーヘッドH1に供給される処理剤を切り替える機構を備えた構成であってもよい。ここで、インクヘッドH2とスプレーヘッドH1は、メディアmの幅方向に往復移動する不図示のキャリッジに搭載されているが、これらのインクヘッドH2とスプレーヘッドH1は、メディアmに対して各々独立に走査することができるよう構成されている。なお、メディアmは、インクジェットプリンタに設けられた載置台上に配置された状態で、種々の画像について印刷、コーティングなどの処理が行われる。
【0019】
なお、本実施の形態では、コーティング処理を実行する場合には、メディアの種類(材質)、例えば、メディアが塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ガラス、人工皮革などの材料で構成されている場合には、そのメディアの種類によってコーティング処理を実施するか、さらにはコーティング処理を当該メディアにインクヘッドによって画像を印刷する前または後に実施するかが決定される。例えば、アクリル樹脂、ガラス等は前処理が適用され、人工皮革等は後処理が適用される。なお、これは例であって、これに限定されない。
以下、画像を印刷する前に実行されるコーティング処理を「前処理」、画像を印刷した後に実行されるコーティング処理を「後処理」とそれぞれ称するが、前処理には、処理剤としてプライマーが使用され、後処理には、処理剤としてトップコート剤が使用される。
【0020】
このようなインクジェットプリンタ(スプレー&プリント機)においてメディアに所要の画像を形成する場合には、ユーザーは、必要な情報を入力してジョブデータを作成する。ここで、ジョブデータとしては、印刷画像データ、メディアの種類、コーティング処理の有無及びコーティング処理を実行するタイミング(印刷の前か後か)、画像サイズなどのデータをジョブごとに入力する。
【0021】
このユーザーによるジョブデータの入力は、プリンタ本体に接続されたコンピュータの表示操作部(例えば、プリンタドライバによるディスプレイの表示部上の表示画面やキーボード、ポインティングデバイスなど)における選択操作や設定操作によってなされる。したがって、コーティング処理を実行するタイミングをユーザーが任意に設定することができる。なお、ジョブデータの入力は、プリンタ本体に搭載された表示操作部(例えば、プリンタ本体に搭載された液晶画面及び操作キー、あるいはタッチパネル)における選択操作や設定操作によってなされてもよい。
【0022】
また、ユーザーによってメディアの種類が入力された場合には、コーティング処理の要否やタイミング(印刷の前か後か)は、プリンタ本体に接続されたコンピュータやプリンタ本体に搭載されたCPU(Central Processing Unit)によって自動的に決定されるようにしても良い。すなわち、コーティング処理を実行するタイミングや使用する処理剤の種類は、メディアの種類によって予め決定されており、これらのタイミングや処理剤の種類は、プリンタ本体に接続されたコンピュータやプリンタ本体に搭載されたCPU(Central Processing Unit)のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部にジョブデータとして格納されている。したがって、コーティング処理を実行するタイミングと処理剤の種類は、メディアに適したものに自動的に設定される。
【0023】
上述のようにユーザーによってジョブデータが入力されると、プリンタ本体に接続されたコンピュータに設けられたRIP(Raster Image Processor)ソフト上には、ユーザーが印刷したいジョブリストがリストアップされる。ここで、ジョブリストの一例を
図1に示す。なお、RIP(Raster Image Processor)は、プリプレス工程において、文字や画像のデータをラスター・イメージに変換するプロセッサである。RIP処理は、プリンタ本体に搭載されたCPU(Central Processing Unit)で実行されてもよい。
【0024】
図1に示すように、ジョブリストには、「前処理」、「印刷」、「後処理」をパラメータとして各ジョブ(ジョブA~F)がリストアップされており、各ジョブA~Fにおいて印刷される画像のサイズ(横×縦、単位はmm)も併せてリストアップされている。各ジョブA~Fの内容は以下の通りである。
1)ジョブA:
ジョブAにおいては、画像の印刷のみが行われ、印刷される画像のサイズは、200mm×500mmである。
2)ジョブB:
ジョブBにおいては、画像を印刷する前に前処理が実行される。この前処理は、前処理剤(プライマー)をメディアの表面にスプレーすることによって行われる。この前処理の後に印刷される画像のサイズは、200m×200mmである。
3)ジョブC:
ジョブCにおいては、画像を印刷した後に後処理が実行される。この後処理は、後処理剤(トップコート)をメディアの表面にスプレーすることによって行われる。この後処理の前に印刷される画像のサイズは、300m×300mmである。
4)ジョブD:
ジョブDにおいては、ジョブBと同様に画像を印刷する前に前処理が実行される。この前処理の後に印刷される画像のサイズは、200m×150mmである。
5)ジョブE:
ジョブEにおいては、ジョブB,Dと同様に画像を印刷する前に前処理が実行される。この前処理の後に印刷される画像のサイズは、400m×200mmである。
6)ジョブF:
ジョブFにおいては、ジョブAと同様に画像の印刷のみが行われ、印刷される画像のサイズは、300mm×300mmである。
【0025】
ここで、
図1に示すジョブリストにおけるパラメータ(前処理、印刷、後処理)は、
図2に示すジョブパラメータのリストから順次選択される。すなわち、例えば、ジョブA~Fにおいては、「カラー印刷のみ」、「前処理→カラー印刷」、「カラー印刷→後処理」、「前処理→カラー印刷→後処理」の項目が順次選択される(
図1に示すジョブリスト参照)。
【0026】
ところで、
図1に示すジョブリストには、パラメータ(前処理、印刷、後処理)が異なるジョブが無秩序に混在しているが、本発明に係る画像形成方法においては、
図3(a)に示すジョブリスト(
図1に示すものと同じ)の各ジョブA~Fの順番を
図3(b)に示すように並び替える。すなわち、共通するパラメータを含む複数のジョブ、具体的には、共通するパラメータ(前処理→印刷)を含むジョブB,D,Eを1つのグループにまとめてジョブリストの上3段に移動し、その下にジョブA,C,Fが位置するようにジョブA~Fを並べ替える。
【0027】
そして、
図3(c)に示すように、1つのグループとしてまとめたジョブB,D,Eを最初にまとめて実行し、その次にジョブA,C,Fを個別に順次実行するようにしている。すなわち、ジョブB,D,Eの対象となるメディアを載置台上に設置される。
【0028】
ここで、1つのグループとしてまとめたジョブB,D,Eにおける画像の印刷においては、
図4に示すように、サイズが450mm×450mmのメディア上にサイズが異なる3つの画像B,D,Eをレイアウトし、これらの画像をまとめて印刷する。ここで、
図4における幅方向(主走査方向)と、
図5の幅方向(主走査方向)は同じ方向であり、この方向と直交する方向が前後方向(副主査方向)である。なお、これらの画像B,D,Eのメディア上におけるレイアウトは、プリンタ本体に接続されたコンピュータあるいはプリンタ本体に搭載されたCPUによって自動的になされる。
【0029】
以上のように、画像B,D,Eの印刷の前に前処理として前処理剤(プライマー)をメディアにスプレーする工程を含むジョブB,D,Eをまとめて実行するようにすれば、前処理剤のミストが飛散するタイミングを一度に集約することができるため、その後に実行されるジョブ(本実施の形態では、コーティング処理を行わないジョブA)において印刷される画像に前処理剤のミストが悪影響を与える可能性を低減することができ、高い画像品質が確保される。
【0030】
また、ジョブB,D,Eをまとめて行うようにすれば、これらのジョブB,D,Eを個別に行う場合に比べて処理時間を短縮することができるとともに、メディアのロスを最小限に抑えることができる。さらに、複数のジョブB,D,Eを1つのグループにまとめることによって、不要なセットアップ動作などをなくすことができ、このことによっても処理時間が短縮される。
【0031】
その他、本実施の形態では、前述のようにインクヘッドとスプレーヘッドは、メディアに対して各々独立に走査することができるよう構成されているため、スプレーヘッドから処理剤がスプレーされているときにインクヘッドをホームポジションに退避させておけば、スプレーされる処理剤のミストのインクヘッドへの付着を抑えることができ、インクヘッドの目詰まりなどの不具合の発生を防ぐことができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、1つのグループにまとめたジョブB,D,Eを実行した後にジョブA,C,Fを個別に順次実行するようにしたが、処理剤のスプレー後に飛散したミストを回収するクリーニングなどのメンテナンスにかかる時間を考慮すれば、前処理剤をスプレーした後に印刷するジョブB,D,Eは、処理剤のスプレーを行わないジョブA,Fや印刷後に後処理剤をスプレーするジョブCよりも後に実行することが望ましい。すなわち、処理剤のスプレーを行わないジョブA,Fを最初に実行した後にジョブC実行し、最後にジョブB,D,Eをまとめて実行することが望ましい。
【0033】
本実施形態では、グループ化されたジョブB,D,Eを1つのメディアに印刷し、ジョブA,C,Fは別のメディアに印刷する場合を説明したが、ジョブA~Fを1つのメディアに印刷しても良い。この場合、グループ化された画像B,D,Eは
図4のように近傍に配置し、画像A,C,Fはグループ化された画像B,D,Eと所定の距離離れた位置に配置することが望ましい。
【0034】
また、以上の実施の形態では、パラメータに「前処理」と「印刷」を共通に含むジョブB,D,Eを1つのグループにまとめて実行するようにしたが、パラメータとして「印刷」と「後処理」を共通に含むジョブA,Fを1つのグループにまとめて実行するようにしても良い。この場合、グループ化された画像B,D,Eとグループ化された画像A,Fと画像Cとは、所定の距離離れた位置に配置することが望ましい。
また、本発明は基本的には、スプレー処理の「有り」、「無し」をパラメータとしてグループ化してジョブリストを作成することで、まずは、一つの画像形成処理において、スプレー処理の「有り」、「無し」のジョブが混在することを回避することができる。これだけのグループ化によった例示は上記実施の形態には記載されていないが、スプレー処理の「有り」、「無し」だけのグループ分けでも基本的な作用効果を奏することが可能で有ることは勿論である。
【0035】
更に、上述のように、スプレー処理の「有り」、「無し」によるジョブのグループ化によって画像形成処理のタイミングをずらすだけでなく、スプレー処理の有る印刷対象と無い印刷対象とが、載置台上で混在している状態でもジョブの配置位置を分けることで発明の作用効果を奏することが可能である。また、更に、スプレー処理の「有り」のジョブグループにおいて、「後処理」であるか「前処理」であるかによって上記の画像の領域分けをすることで更にスプレーのミストによる悪影響の回避が達成される。
【0036】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10 画像
20 コーティング層
A~F ジョブ(画像)
H1 スプレーヘッド
H2 インクヘッド
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