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特開2023-184123プレスカッタと、これを用いたパネル材の切断方法
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  • 特開-プレスカッタと、これを用いたパネル材の切断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184123
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】プレスカッタと、これを用いたパネル材の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20231221BHJP
   B23D 15/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B21D28/00 A
B23D15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098087
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高津 嘉伸
(72)【発明者】
【氏名】松本 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】榊原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 拓也
【テーマコード(参考)】
3C039
4E048
【Fターム(参考)】
3C039AA02
3C039AA25
3C039AA42
4E048AA03
(57)【要約】
【課題】金属製のパネル材の切断時に、切粉の発生を抑えることができるプレスカッタを提供する。
【解決手段】プレスカッタ1は、上刃10と下刃20とを備えている。上刃10は、上刃10の移動方向Dに沿って形成された第一面11と、第一面11と直交し、下方に向いた下平面12とを有している。上刃10の第一面11と下平面12により、上刃10の刃先の角度θ1が直角に形成されている。下刃20は、パネル材Pの切断時に、第一面11と対向し、移動方向Dに沿って形成された第二面21と、下平面と平行となる平面上に形成され、上方を向いた上平面22と、第二面21と上平面22との間において、第二面21と上平面22とに連続して形成され、上平面22に対して傾斜した傾斜平面23と、を有している。下刃20の第二面21と傾斜平面23とにより、下刃20の刃先の角度θ2が鈍角に形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上刃と下刃とを備え、前記下刃に載置した金属製のパネル材に対して、前記上刃を下降させることにより、前記上刃と前記下刃に前記パネル材を挟み込むようにして、前記パネル材を切断するプレスカッタであって、
前記上刃は、
上刃の移動方向に沿って形成された第一面と、
前記第一面と直交し、下方に向いた下平面と、を有し、
前記第一面と前記下平面により、前記上刃の刃先の角度が直角に形成されており、
前記下刃は、
前記パネル材の切断時に、前記第一面と対向し、前記移動方向に沿って形成された第二面と、
前記下平面と平行となる平面上に形成され、上方を向いた上平面と、
前記第二面と前記上平面との間において、前記第二面と前記上平面とに連続して形成され、前記上平面に対して傾斜した傾斜平面と、を有しており、
前記第二面と前記傾斜平面とにより、前記下刃の刃先の角度が鈍角に形成されていることを特徴とするプレスカッタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプレスカッタを用いたパネル材の切断方法であって、
前記下刃の前記上平面に前記パネル材が接触し、前記パネル材のうち前記上刃で前記パネル材から切除される部分が前記下刃からはみ出すように、前記パネル材を前記下刃に配置する配置工程と、
前記上刃を下降させて、前記上刃の前記下平面に前記パネル材を接触させることにより、前記傾斜平面に沿って前記パネル材を変形させた状態で、前記下刃に配置された前記パネル材を前記上刃で切断する切断工程と、
を含むことを特徴とするパネル材の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル材を切断するプレスカッタと、これを用いたパネル材の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、上刃と下刃とを備えたプレスカッタが提案されている。このプレスカッタは、下刃に載置した金属製のパネル材に対して、上刃を下降させることにより、上刃と下刃にパネル材を挟み込むようにして、パネル材を切断している。たとえば、特許文献1には、パネル材の凹凸の形状に応じた刃先形状の上刃と下刃を有したプレスカッタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-272765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すプレスカッタを用いた場合であっても、パネル材の切断時に多くの切粉が発生することがある。特に、パネル材の形状に、刃先の形状が形成されていたとしても、金属製のパネル材に反りが発生した場合には、下刃とパネル材との間に隙間が発生するため、切粉が発生し易くなる。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、金属製のパネル材の切断時に、切粉の発生を抑えることができるプレスカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑みて、本発明に係るプレスカッタは、上刃と下刃とを備え、前記下刃に載置した金属製のパネル材に対して、前記上刃を下降させることにより、前記上刃と前記下刃に前記パネル材を挟み込むようにして、前記パネル材を切断するプレスカッタであって、前記上刃は、上刃の移動方向に沿って形成された第一面と、前記第一面と直交し、下方に向いた下平面とを有し、前記第一面と前記下平面により、前記上刃の刃先の角度が直角に形成されており、前記下刃は、前記パネル材の切断時に、前記第一面と対向し、前記移動方向に沿って形成された第二面と、前記下平面と平行となる平面上に形成され、上方を向いた上平面と、前記第二面と前記上平面との間において、前記第二面と前記上平面とに連続して形成され、前記上平面に対して傾斜した傾斜平面と、を有しており、前記第二面と前記傾斜平面とにより、前記下刃の刃先の角度が鈍角に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、下刃の上平面にパネル材が接触し、パネル材のうち上刃でパネル材から切除される部分が、下刃からはみ出すように、パネル材を下刃に配置する。次に、上刃を下降させる。これにより、上刃の下平面にパネル材を接触し、傾斜平面に沿ってパネル材が変形する。この変形した状態では、刃先を形成する傾斜平面にパネル材が倣った状態で、パネル材が切断される。この結果、下刃に接触したパネル材の部分に、剪断応力による亀裂が発生し難くなり、下刃に接触したパネル材の部分から、切粉が発生することを抑制することができる。これに加えて、上刃の刃先は、直角であるので、上刃の刃先により、パネル材に作用する剪断応力を低減することができるため、上刃に接触する部分からの切粉の発生も抑制することができる。
【0008】
ここで、本発明として、上述したプレスカッタを用いたパネル材の切断方法を開示する。本発明に係る切断方法は、前記下刃の前記上平面に前記パネル材が接触し、前記パネル材のうち前記上刃で前記パネル材から切除される部分が、前記下刃からはみ出すように、前記パネル材を前記下刃に配置する配置工程と、前記上刃を下降させて、前記上刃の前記下平面に前記パネル材を接触させることにより、前記傾斜平面に沿って前記パネル材を変形させた状態で、前記下刃に配置された前記パネル材を前記上刃で切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この切断方法によれば、まず、配置工程において、パネル材のうち上刃でパネル材から切除される部分が下刃からはみ出すように、パネル材を前記下刃に配置する。次に、切断工程において、上刃を下降させて、上刃の下平面に前記パネル材を接触させることにより、傾斜平面に沿ってパネル材を変形させると、パネル材と傾斜平面との間の隙間の発生が抑制される。この結果、下刃に接触したパネル材の部分に、剪断応力による亀裂が発生し難くなり、下刃に接触したパネル材の部分から、切粉の発生することを抑制することができる。これに加えて、上刃の刃先は、直角であるので、上刃の刃先により、パネル材に作用する剪断応力を低減することができるため、上刃に接触する部分からの切粉の発生も抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属製のパネル材を切断時に切粉の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1に示すプレスカッタの模式的斜視図である。
図2図1に示すA方向から視たプレスカッタの平面図である。
図3図1に示すプレスカッタを用いたパネル材の切断方法であり、(a)は、パネル材を下刃に配置する配置工程を説明する模式図であり、(b)は、切断工程においてパネル材が変形した状態を説明するための模式図であり、(c)は、切断工程においてパネル材が変形した状態で、パネル材を切断した状態を説明するための模式図である。
図4】(a)は、比較例1に係るプレスカッタの模式的斜視図であり、(b)は、比較例2に係るプレスカッタの模式的斜視図である。
図5】(a)は、比較例2に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図であり、(b)は、比較例3に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図である。
図6】(a)は、比較例3に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図であり、(b)は、本実施形態に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図であり、(c)は、比較例4に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るプレスカッタを図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
1.プレスカッタ1について
図1および図2に示すプレスカッタ1は、自動車の外板や部品などを下降するためのプレスカッタであり、たとえばプレス成形された金属製の部品(パネル材)を、所望の形状に打ち抜くための装置である。図示しないが、プレスカッタ1は、加工品の形状に応じた上型と下型とを備えている。上型には、加工品の外縁に沿って上刃が設けられており、下型には、上型に応じた位置に下刃が設けられている。
【0014】
本実施形態では、これらの上刃と下刃のうち、パネル材Pの厚さ方向の形状に制約を受けない部分の上刃10と下刃20とを示している。その他の上刃と下刃の部分の形状、および、上型と下型の形状は、一般的に知られた形状であるので、詳細な説明を省略する。
【0015】
図2に示すように、本実施形態で切断されるパネル材Pは、鋼板またはアルミニウムボードが、プレス成形等により加工され、凸部(余肉凸部)Paおよび凹部(ビード凹部)Pbが成形されたものであるが、この形状に特に限定されるものではない。たとえば、パネル材Pは、平板状であってもよく、湾曲した形状であってもよい。
【0016】
図2に示すように、凸部Paおよび凹部Pbを有するパネル材Pでは、凸部Paが上刃に先に接触し易く、凹部Pbは、遅れて上刃に接触することが想定される。また、このような形状でなくても、パネル材Pの反りなどにより、下刃とパネル材Pとの間に、隙間が形成されることがある。これらの切断条件で、通常の上刃と下刃を用いて切断すると、パネル材Pに過大な剪断応力が作用し、切粉が発生し易い。本実施形態では、このような点を解消すべく、プレスカッタ1は、以下の上刃10と下刃20とを有している。
【0017】
本実施形態では、プレスカッタ1は、上刃10と下刃20とを備え、下刃20に載置した金属製のパネル材Pに対して、上刃10を下降させることにより、上刃10と下刃20にパネル材Pを挟み込むようにして、パネル材Pを切断する装置である。上刃10および下刃20は、たとえば工具鋼などからなる。
【0018】
本実施形態では、図1に示すように、上刃10は、第一面11と下平面12とにより刃先15を形成している。第一面11は、上刃10の移動方向Dに沿って形成されており、本実施形態では、第一面11は、鉛直方向に沿って形成された平面である。下平面12は、第一面11と直交し、下方に向いた平面である。本実施形態では、下平面12は、水平方向に対してわずかに傾斜して形成されている。
【0019】
このようにして、上刃10の第一面11と下平面12により、上刃10の刃先15の角度θ1が直角に形成されている。ここで、図2に示すように、上刃10の刃先15は、第一面11と下平面12との稜線であり、上刃10の幅方向Wにおいて、単調的に傾斜している。
【0020】
下刃20は、第二面21と、上平面22と、傾斜平面23と、を備えており、第二面21と、傾斜平面23により、下刃20の刃先25を形成している。第二面21は、パネル材Pの切断時に、第一面11と対向し、移動方向D(垂直方向V)に沿って形成された平面である。
【0021】
上刃10の第一面11と下刃20の第二面21との間には隙間Cが形成されている。この隙間Cは、パネル材Pの厚み等に応じて設定される大きさである。上平面22は、上刃10の下平面12と平行となる平面上に形成され、上方を向いた平面である。本実施形態では、上平面22は、水平方向Hに対してわずかに傾斜して形成されている。
【0022】
さらに、傾斜平面23は、第二面21と上平面22との間において、第二面21と上平面22とに連続して形成され、上平面22に対して傾斜している平面である。傾斜平面23は、上刃10に向いて形成されており、第二面21と傾斜平面23とにより、下刃20の刃先25の角度θ2が鈍角に形成されている。
【0023】
ここで、刃先25の角度θ2は、たとえば、発明者の実験等の結果から、100°~120°の範囲であることが好ましく、本実施形態では、角度θ2は、110°である。ここで、図2に示すように、下刃20の刃先25は、第二面21と上平面22とで形成される稜線であり、下刃20の幅方向Wにおいて、上刃10の刃先15と同じ方向に傾斜している。
【0024】
さらに、図1示す傾斜平面23の幅(第二面21と上平面22との間における水平方向の幅)W1は、上平面22の同じ方向の幅W2以上であることが好ましい。たとえば、傾斜平面23の幅W1は、10mm以上であることが好ましい。傾斜平面23の幅W1を上述した如く設定することにより、上刃10により、パネル材Pが下方に押し込まれた際に、パネル材Pが、傾斜平面23に沿って変形し、傾斜平面23に倣いやすい。この結果、パネル材Pと傾斜平面23との隙間を無くし、剪断応力による切粉の発生を抑えることができる。
【0025】
2.プレスカッタ1を用いたパネル材Pの切断方法について
以下に、本実施形態に係るプレスカッタ1を用いたパネル材Pの切断方法について、図3(a)~(c)を参照しながら説明する。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、配置工程を行う。下刃20の上平面22にパネル材Pが接触し、パネル材Pのうち上刃10でパネル材Pから切除される部分(スクラップ部分)P1が、下刃20からはみ出すように、パネル材Pを下刃20に配置する。このとき、凸部(余肉凸部)Paおよび凹部(ビード凹部)Pbが成形されている場合には、下刃20の上平面22とパネル材Pとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0027】
次に、図3(b)および(c)に示すように、切断工程を行う。具体的には、上刃10を下降させて、上刃10の下平面12にパネル材Pを接触させることにより、傾斜平面23に沿ってパネル材Pを変形させる。ここで、パネル材Pに、凸部Paおよび凹部Pbが形成されている場合には、これらも平面状に塑性変形し、傾斜平面23に倣う。本実施形態では、上刃10の下平面12と平行となる平面上に、下刃20の上平面22を形成したので、上刃10の下降に伴い、パネル材Pが、傾斜平面23に倣い易い。
【0028】
なお、上刃10の荷重により、パネル材Pの浮き上がりを防止するように、下型と対向する部分を除くパネル材Pの一部を押さえる、押さえ機構が設けられていてもよい。押さえ機構は、上型(図示せず)部分に設けられ、上下の移動が拘束されていてもよい。
【0029】
最後に、図3(c)に示すように、傾斜平面23に沿ってパネル材Pが変形した状態で、下刃20に配置されたパネル材Pを上刃10で切断する。これにより、スクラップ部分(切除される部分)P1が、パネル材Pから切除される。
【0030】
以上、本実施形態では、下刃20の上平面22にパネル材Pが接触し、パネル材Pのうち上刃10でパネル材Pから切除される部分P1が、下刃20からはみ出すように、パネル材Pを下刃20に配置する。次に、上刃10を下降させる。
【0031】
これにより、上刃10の下平面12にパネル材Pが接触し、傾斜平面23に沿ってパネル材Pが変形する。この変形した状態は、刃先15を形成する傾斜平面23にパネル材Pが倣った状態であり、この状態で、パネル材Pが切断される。
【0032】
この結果、下刃20に接触したパネル材Pの部分に、剪断応力による亀裂が発生し難くなり、下刃20に接触したパネル材Pの部分から、切粉が発生することを抑制することができる。これに加えて、上刃10の刃先15は、直角であるので、上刃10の刃先15により、パネル材Pに作用する剪断応力を低減することができるため、上刃10に接触する部分からの切粉の発生も抑制することができる。
【0033】
3.実施例について
以下に、図4図6を参照しながら、本発明に至るべく、発明者らが行った実施例を、比較例とともに説明する。図4(a)は、比較例1に係るプレスカッタの模式的斜視図であり、図4(b)は、比較例2に係るプレスカッタの模式的斜視図である。
【0034】
図4(a)に示すように、比較例1に係る上刃50は、第一面51と下平面52とにより刃先55が形成されている。上刃50の刃先55の角度θ1は、80°である。比較例1に係る下刃60は、第二面61と上平面62とにより刃先65が形成されている。比較例1に係る下刃60の刃先65の角度θ2は、90°である。
【0035】
さらに、図4(a)に示す下刃60は、上平面62に、凹部Pbの形状に応じた溝部64が形成された下刃である。一方、図4(b)に示すように、比較例2に係る下刃60が、比較例1と相違する点は、上平面62に溝部64が形成されていない点であり、比較例2に係る上刃50は、比較例1のものと同じである。
【0036】
図4(a)、(b)に示す上刃50と下刃60を用いて、凹部Pbが形成されたパネル材Pの切断を行った。その結果、図4(b)に示す上刃50と下刃60でパネル材Pを切断したものは、図4(a)に示すものに比べて、切粉が多く発生していることがわかった。これは、図4(b)に示す上刃50と下刃60とでパネル材Pを切断する際に、パネル材Pの凹部Pbの部分が、上平面62の形状に合わせて、フラットに変形していないことが理由であると考えられる。
【0037】
さらに、図4(b)に示す比較例2に係る上刃50と下刃60でパネル材Pを切断する状態を図5(a)に示す。この結果、図5(a)に示すように、下刃60の刃先65と上刃50の刃先55により、パネル材Pが変形しようとするが、上刃50の刃先55によりパネル材Pが伸びる部分がほとんどない。これにより、下刃60の刃先65と上刃50の刃先55により、パネル材Pに過剰な剪断応力が作用し、亀裂S1、S2が発生してから、パネル材Pが切断されてしまう。この結果、パネル材Pから、切粉が多量に発生したと考えられる。
【0038】
そこで、図5(b)に示すように、下刃として、本実施形態に係る下刃20を採用した。図5(b)は、比較例3に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図である。なお、比較例3に係るプレスカッタでは、上刃50が、本実施形態のものと異なる。
【0039】
比較例3に係るプレスカッタを用いると、図5(a)に示す場合に比べて、パネル材Pからの切粉の発生量は、減少したことがわかった。ただし、この場合であっても、上刃50の刃先55に接触するパネル材Pの部分から切粉が発生していることが確認された。
【0040】
そこで、図6(a)~(c)に示すように、上刃の刃先の検討を行った。図6(a)は、比較例3に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図である。図6(b)は、本実施形態に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図である。図6(c)は、比較例4に係るプレスカッタにより、切断されるパネル材の状態を説明するための模式図である。
【0041】
図6(a)に示す上刃は、図5(b)と同じ上刃50であり、上刃50の刃先55の角度θ1は、80°である。図6(b)に示す上刃は、本実施形態に係る上刃10であり、上刃10の刃先15の角度θ1は、90°(直角)である。図6(c)に示す上刃は、比較例4に係る上刃70であり、上刃70の刃先75の角度θ1は鈍角である。具体的には、第二面71と下平面72とで形成された刃先75の角度θ1は、110°である。なお、比較例3および4では、下刃は、本実施形態で示す下刃20を用いた。
【0042】
図6(a)~(c)に示す上刃50、10、70を用いてパネル材Pを切断したところ、図6(a)および(c)に示す上刃50、70を用いたものに比べて、図6(b)に示す上刃10を用いて切断したパネル材Pから発生する切粉の量は、最も少なかった。これは、図6(b)に示す上刃10では、パネル材Pに、上刃10の刃先15だけでなく、下平面12も接触するため、パネル材Pに作用する剪断応力が低減されたことによると考えられる。
【0043】
一方、図6(a)に示す上刃50の刃先55は、鋭角であるため、上述した如く、パネル材Pに大きな剪断応力が発生したため、図6(b)に示すものに比べて、パネル材Pから発生する切粉の量は多かったと考えられる。また、図6(c)に示す上刃70の刃先75は、鈍角であるため、刃先75ではないところから、パネル材Pに先に接触する。この結果、上刃70と下刃20との見かけ上のクリアランスが大きくなったため、図6(b)に示すものに比べて、パネル材Pから発生する切粉の量は多かったと考えられる。
【0044】
以上のことから、図6(b)に示すように、上刃10の刃先15の角度が直角で、下刃20の角度θ2が鈍角であるプレスカッタにより、パネル材Pを切断すれば、パネル材Pから発生する切粉の量が抑えられることがわかった。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1:プレスカッタ、10:上刃、11:第一面、12:下平面、20:下刃、21:第二面、22:上平面、P:パネル材
図1
図2
図3
図4
図5
図6