(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184124
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置
(51)【国際特許分類】
H05B 41/24 20060101AFI20231221BHJP
B60Q 3/30 20170101ALI20231221BHJP
B60Q 3/80 20170101ALI20231221BHJP
B60Q 3/68 20170101ALI20231221BHJP
【FI】
H05B41/24
B60Q3/30
B60Q3/80
B60Q3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098088
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】毛利 晋也
(72)【発明者】
【氏名】石川 達章
(72)【発明者】
【氏名】長野 信久
【テーマコード(参考)】
3K040
3K072
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040AA04
3K040CA06
3K040DB11
3K040DC03
3K040EA04
3K040EB01
3K040JA04
3K072AA16
3K072AC01
3K072EA03
3K072EA06
3K072EB04
3K072GB12
3K072HA10
(57)【要約】
【課題】回路部品の温度上昇を抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る放電ランプ用点灯装置は、放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加する点灯装置である。前記放電ランプ用点灯装置は、前記放電ランプの一方の電極に電気的に接続された第1のトランスと;前記放電ランプの他方の電極に電気的に接続された第2のトランスと;共振用コンデンサを介して、前記第1のトランスの一次側巻線と、前記第2のトランスの一次側巻線と、に電気的に接続され、PWM制御により、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と;前記PWM制御に用いるPWM信号を前記スイッチング出力回路に入力するLLC制御回路と;雰囲気温度が所定の値以上となった場合には、温度に応じて前記PWM信号におけるデューティ比を変化させる温度補償回路と;を具備している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加する点灯装置であって、
前記放電ランプの一方の電極に電気的に接続された第1のトランスと;
前記放電ランプの他方の電極に電気的に接続された第2のトランスと;
共振用コンデンサを介して、前記第1のトランスの一次側巻線と、前記第2のトランスの一次側巻線と、に電気的に接続され、PWM制御により、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と;
前記PWM制御に用いるPWM信号を前記スイッチング出力回路に入力するLLC制御回路と;
雰囲気温度が所定の値以上となった場合には、温度に応じて前記PWM信号におけるデューティ比を変化させる温度補償回路と;
を具備した放電ランプ用点灯装置。
【請求項2】
前記温度補償回路は、前記温度が高くなるほどパルス期間におけるOFF時間を長くする請求項1記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項3】
前記第1のトランス、および前記第2のトランスの、少なくともいずれかの出力状態を検出する検出部と;
前記検出部により検出された前記出力状態と、基準値と、を比較して、前記直流電圧の変動に起因する、前記駆動電圧の変動量を検出するコンパレータと;
をさらに具備し、
前記LLC制御回路は、前記コンパレータにより検出された、前記駆動電圧の変動量に基づいて、前記PWM信号におけるデューティ比を変化させる請求項1または2に記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項4】
前記LLC制御回路は、前記スイッチング出力回路を間欠制御する請求項1または2に記載の放電ランプ用点灯装置。
【請求項5】
車両に設けられる車両用照射装置であって;
放電ランプと;
前記放電ランプと電気的に接続された、請求項1記載の放電ランプ用点灯装置と;
を具備した車両用照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプを点灯させる点灯装置がある。例えば、エキシマランプなどの誘電体バリア放電ランプを点灯させる点灯装置として、パルス点灯回路を有する点灯装置が提案されている。パルス点灯回路を用いれば、点灯時に、放電ランプの電流波形に休止区間を設けることができるので、放電ランプの発光効率を向上させることができる。また、放電ランプの発光効率をさらに向上させるために、フライバック回路を用いたパルス点灯回路も提案されている。
【0003】
しかしながら、一般的なパルス点灯回路は、トランスとスイッチング素子における電力ロスが大きいので、回路効率が悪い。回路効率が悪いとパルス点灯回路に設けられた回路部品の発熱量が多くなるので、回路部品の温度が高くなる。
【0004】
またさらに、車両用照射装置に用いられる放電ランプ用点灯装置の場合には、放電ランプ用点灯装置が85℃程度の雰囲気に設けられることを考慮する必要がある。そのため、回路部品の温度がさらに高くなるおそれがある。また、車両用照射装置に用いられる放電ランプ用点灯装置は、小型化が望まれており、回路部品同士の熱干渉などにより回路部品の温度がさらに高くなるおそれもある。回路部品の温度が高くなり過ぎると、回路部品の機能が低下したり、回路部品が故障したりするおそれがある。
そこで、回路部品の温度上昇を抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、回路部品の温度上昇を抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る放電ランプ用点灯装置は、放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加する点灯装置である。前記放電ランプ用点灯装置は、前記放電ランプの一方の電極に電気的に接続された第1のトランスと;前記放電ランプの他方の電極に電気的に接続された第2のトランスと;共振用コンデンサを介して、前記第1のトランスの一次側巻線と、前記第2のトランスの一次側巻線と、に電気的に接続され、PWM制御により、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と;前記PWM制御に用いるPWM信号を前記スイッチング出力回路に入力するLLC制御回路と;雰囲気温度が所定の値以上となった場合には、温度に応じて前記PWM信号におけるデューティ比を変化させる温度補償回路と;を具備している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、回路部品の温度上昇を抑制することができる放電ランプ用点灯装置、および車両用照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る車両用照射装置を例示するための模式斜視図である。
【
図2】
図1における車両用照射装置のA-A線方向の模式断面図である。
【
図4】温度補償回路を例示するための回路図である。
【
図5】
図4における温度補償回路の作用を例示するためのタイミングチャートである。
【
図6】他の実施形態に係る点灯装置を例示するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放電ランプ用点灯装置の用途には特に限定はないが、例えば、自動車や鉄道などの車両に設けられる車両用照射装置に用いることができる。そのため、以下においては、一例として、放電ランプ用点灯装置が車両用照射装置に設けられる場合を説明する。
【0011】
車両用照射装置は、例えば、自動車の車室内やトランクルームなどに設けたり、鉄道車両の車室内などに設けたりすることができる。ただし、車両用照射装置の設置場所は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る車両用照射装置100を例示するための模式斜視図である。
図2は、
図1における車両用照射装置100のA-A線方向の模式断面図である。
図1および
図2に示すように、車両用照射装置100には、例えば、放電ランプ用点灯装置1(以下、単に、点灯装置1と称する)、筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、配線6、窓7、およびシールド8が設けられている。
【0013】
まず、本実施の形態に係る点灯装置1について例示する。
図2に示すように、点灯装置1は、筐体2の内部に設けられている。点灯装置1は、例えば、基板3の、放電ランプ4が設けられる側の面に設けられている。放電ランプ4と点灯装置1が基板3の同じ側の面に設けられていれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。点灯装置1は、例えば、配線コードや金属板などの配線部材を用いて、放電ランプ4が装着される一対の端子ホルダ41と電気的に接続されている。そのため、放電ランプ4を一対の端子ホルダ41に装着することで、点灯装置1と放電ランプ4とを電気的に接続することができる。
【0014】
点灯装置1は、放電ランプ4に、所定の周波数の駆動電圧を印加する。放電ランプ4に駆動電圧が印加されると、例えば、放電ランプ4に設けられた一対の電極間に放電が生じて、放電ランプ4から紫外線などの光が放射される。
【0015】
図3は、点灯装置1を例示するための回路図である。
図3に示すように、点灯装置1は、例えば、スイッチング出力回路11、トランス12(第1のトランスおよび第2のトランスの一例に相当する)、共振用コンデンサ13、検出部14、制御回路15、および温度検出素子16を有する。
【0016】
スイッチング出力回路11は、共振用コンデンサ13を介して、2つのトランス12の一次側巻線に電気的に接続されている。スイッチング出力回路11は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。例えば、スイッチング出力回路11は、直流電源200からの直流電圧を所定の周波数の交流電圧、例えば、擬似的な正弦波電圧に変換する。また、スイッチング出力回路11は、トランス12の一次側巻線に印加する電圧を変化させる。直流電源200は、例えば、電池や、自動車などの車両に搭載されたバッテリーなどである。
【0017】
図3に例示をしたスイッチング出力回路11は、ハーフブリッジ回路である。ハーフブリッジ回路であるスイッチング出力回路11は、例えば、スイッチング素子11a、スイッチング素子11b、および駆動回路11cを有する。
【0018】
スイッチング素子11aおよびスイッチング素子11bは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor Field effect transistor)である。スイッチング素子11aおよびスイッチング素子11bが、電圧駆動形素子であるMOSFETであれば、回路の電力ロスを小さくすることができる。また、スイッチング素子11aおよびスイッチング素子11bが、MOSFETであれば、スイッチングの高速化や、スイッチングロスの低減を図ることができる。
【0019】
駆動回路11cは、例えば、制御回路15からの制御信号(PWM信号)に基づいて、スイッチング素子11aのゲート電極への電圧の印加と、スイッチング素子11bのゲート電極への電圧の印加と、を交互に切り替えて、直流電源200からの直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。例えば、周波数は、100kHz~300kHz程度である。
【0020】
また、駆動回路11cは、制御回路15からのPWM信号に基づいて、デューティ比を変化させることで、出力電圧(トランス12の一次側巻線に印加する電圧)を変化させる。
なお、スイッチング出力回路11がハーフブリッジ回路である場合を例示したが、スイッチング出力回路11は、例えば、フルブリッジ回路などであってもよい。
【0021】
トランス12は、2つ設けられている。前述した様に、2つのトランス12の一次側巻線は、スイッチング出力回路11に電気的に接続されている。一方のトランス12の二次側巻線は、放電ランプ4の一方の電極と電気的に接続されている。他方のトランス12の二次側巻線は、放電ランプ4の他方の電極と電気的に接続されている。すなわち、トランス12の中点をグランド(基準)とした両高圧放電の形態となっている。
【0022】
ここで、直流電源200からの直流電圧が大きく変動する場合がある。例えば、車両用照射装置100に設けられた点灯装置1には、自動車などの車両に設けられた直流電源200(例えば、バッテリー)が電気的に接続される。一般的には、自動車などの車両に設けられる直流電源200の定格電圧は13.5V程度である。
【0023】
ところが、実際には、直流電源200の電圧は、バッテリーの電圧低下、オルタネーターの動作、回路の影響などにより、例えば、9V~16Vの範囲で変動する場合がある。点灯装置1に入力される電圧の変動が大きくなると、点灯装置1から出力され放電ランプ4に印加される駆動電圧の変動が大きくなる。駆動電圧の変動が大きくなると、放電ランプ4から照射される光や紫外線などの光量が不安定になるおそれがある。
【0024】
そこで、点灯装置1には、検出部14、および制御回路15が設けられている。
検出部14は、トランス12の出力状態を検出する。検出部14は、例えば、2つのトランス12のそれぞれに設けることができる。検出部14は、例えば、トランス12に設けられた補助巻線とすることができる。検出部14が補助巻線であれば、補助巻線に流れる電流を検出することで、トランス12の二次側巻線に流れている電流(トランス12の出力状態)を検出することができる。
【0025】
制御回路15は、検出部14により検出されたトランス12の出力状態に基づいて、スイッチング出力回路11(駆動回路11c)に、適切なPWM信号を入力する。
【0026】
制御回路15は、例えば、PWM制御回路15a、コンパレータ15b、基準電圧部15c、およびLLC制御回路15dを有する。
【0027】
PWM制御回路15aは、PWM信号を生成する。
コンパレータ15bは、検出部14により検出されたトランス12の出力状態と、基準電圧部15cからの基準値と、を比較して、直流電圧の変動に起因する、駆動電圧の変動量を検出する。例えば、コンパレータ15bは、検出部14により検出された電流に基づく電圧と、基準電圧部15cからの基準電圧を比較する。この様にすれば、直流電源200の電圧変動に起因する、放電ランプ4に印加される駆動電圧の変動量を検出することができる。
【0028】
LLC制御回路15dは、スイッチング出力回路11を間欠制御する。LLC制御回路15dは、PWM制御に用いるPWM信号をスイッチング出力回路11(駆動回路11c)に入力する。LLC制御回路15dは、コンパレータ15bにより検出された、放電ランプ4に印加される駆動電圧の変動量に基づいて、PWM制御回路15aにより生成されたPWM信号におけるデューティ比を変化させる。例えば、LLC制御回路15dは、放電ランプ4に印加される駆動電圧が基準値より低くなった場合(直流電源200の電圧が低下した場合)には、PWM信号におけるデューティ比を、放電ランプ4に印加される駆動電圧の減少量に応じて高くする。例えば、LLC制御回路15dは、放電ランプ4に印加される駆動電圧が基準値より高くなった場合(直流電源200の電圧が増加した場合)には、PWM信号におけるデューティ比を、放電ランプ4に印加される駆動電圧の増加量に応じて低くする。すなわち、制御回路15は、検出部14により検出されたトランス12の出力状態に基づいて、スイッチング出力回路11(駆動回路11c)をフィードバック制御する。
【0029】
本実施の形態に係る点灯装置1には、検出部14および制御回路15が設けられているので、直流電源200の電圧が変動したとしても、放電ランプ4に印加される駆動電圧の変動を抑制することができる。そのため、直流電源200の電圧が変動したとしても、放電ランプ4から照射される光や紫外線などの光量を安定させることができる。
【0030】
また、スイッチング出力回路11、トランス12、および共振用コンデンサ13を有するLLC共振回路を、PWM制御により間欠動作させているので、直流電源200の電圧が変動したとしても、放電ランプ4に印加される駆動電圧の波高値を維持することができる。そのため、放電ランプ4から照射される光や紫外線などの光量を安定させることができる。
【0031】
また、点灯装置1には、スイッチング出力回路11、トランス12、および共振用コンデンサ13を有するLLC共振回路が設けられているので、回路のスイッチングロスを低減させることができる。そのため、放電ランプ4を、単に正弦波の交流で点灯させる場合に比べて、回路効率を向上させることができる。回路効率を向上させることができれば、点灯装置1に設けられた回路部品の発熱量が少なくなるので、回路部品の温度上昇を抑制することができる。回路部品は、例えば、スイッチング素子11a、スイッチング素子11b、駆動回路11cに設けられた素子、トランス12、共振用コンデンサ13、検出部14に設けられた素子、および制御回路15に設けられた素子などである。
【0032】
ところが、車両用照射装置100に用いられる点灯装置1の場合には、点灯装置1が85℃程度の雰囲気に設けられることを考慮する必要がある。また、車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに設けられる場合が多いので、点灯装置1の小型化が望まれている。点灯装置1が小型化されると、回路部品同士の間の距離が短くなって、熱干渉などにより回路部品の温度が高くなり易くなる。回路部品の温度が高くなり過ぎると、回路部品の機能が低下したり、回路部品が故障したりするおそれがある。
【0033】
そこで、点灯装置1には、温度検出素子16、および温度補償回路15eがさらに設けられている。
温度検出素子16は、温度補償回路15eと電気的に接続されている。温度検出素子16は、点灯装置1が設けられる雰囲気の温度を検出する。温度検出素子16は、例えば、筐体2の内部に設けることができる。温度検出素子16は、例えば、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体などとすることができる。ただし、温度検出素子16は、例示をしたものに限定されるわけではなく、温度情報を電気信号に変換可能なものであればよい。
【0034】
温度補償回路15eは、PWM制御回路15aと電気的に接続されている。温度補償回路15eは、例えば、制御回路15に設けることができる。温度補償回路15eは、雰囲気温度が所定の値以上となった場合には、温度に応じてPWM信号におけるデューティ比を変化させる。例えば、温度補償回路15eは、温度が高くなるほどパルス期間におけるパルス幅(デューティ幅)を小さくする。すなわち、温度補償回路15eは、温度が高くなるほどOFF時間(休止区間)を長くする。OFF時間が長くなれば、回路部品の発熱量が少なくなるので、雰囲気温度が高くなったとしても、回路部品の温度上昇を抑制することができる。そのため、雰囲気温度が高くなったとしても、回路部品の機能が低下したり、回路部品が故障したりするのを抑制することができる。
【0035】
図4は、温度補償回路15eを例示するための回路図である。
なお、
図4は、温度検出素子16がサーミスタの場合である。
図4に示すように、温度補償回路15eは、例えば、電圧発生回路15e1、スイッチング素子15e2、三角波発生回路15e3,およびコンパレータ15e4を有する。
【0036】
電圧発生回路15e1は、雰囲気温度が所定の値(例えば、60℃)以上の場合には、スイッチング素子15e2のベースBに所定の電圧を印加する。
スイッチング素子15e2のベースBに所定の電圧が印加されると、スイッチング素子15e2がON状態となって、温度検出素子16(サーミスタ)に電流が流れる。
温度検出素子16(サーミスタ)は、温度に応じて抵抗が変化するので、コンパレータ15e4の反転入力(V-)に入力される電圧が変化する。
三角波発生回路15e3は、三角波の電圧をコンパレータ15e4の非反転入力(V+)に印加する。
【0037】
コンパレータ15e4は、非反転入力(V+)の電圧(三角波の電圧)が反転入力(V-)の電圧(A点の電圧)よりも高ければ、所定の電圧を出力する。
コンパレータ15e4は、非反転入力(V+)の電圧(三角波の電圧)が反転入力(V-)の電圧(A点の電圧)よりも低ければ、電圧を出力しない。
【0038】
温度補償回路15e(コンパレータ15e4)の出力は、PWM制御回路15aに入力される。PWM制御回路15aは、温度補償回路15e(コンパレータ15e4)からの入力に応じて、PWM信号におけるデューティ比を変化させる。
【0039】
図5は、
図4における温度補償回路15eの作用を例示するためのタイミングチャートである。
図5は、雰囲気温度が60℃以上の場合には、温度補償回路15eによるPWM信号の温度補償を行い、雰囲気温度が60℃未満の場合には、温度補償回路15eによるPWM信号の温度補償を行わない場合である。なお、切り替えの温度は、60℃に限定されるわけではなく、回路部品の温度マージンなどに応じて変更することができる。
【0040】
図5に示すように、雰囲気温度が60℃以上の場合には、三角波の電圧が、A点の電圧よりも高くなった期間、コンパレータ15e4から所定の電圧が出力される。PWM制御回路15aは、コンパレータ15e4からの入力に応じて、LLC制御回路15dに入力するPWM信号のデューティ比を変化させる。
【0041】
この場合、雰囲気温度が変化すれば、A点の電圧が変化するので、コンパレータ15e4から所定の電圧が出力される期間が変化する。
例えば、
図5に示すように、60℃以上の範囲において、雰囲気の温度が低下すれば、A点の電圧が低下するので、コンパレータ15e4から所定の電圧が出力される期間が長くなる。コンパレータ15e4から所定の電圧が出力される期間が長くなれば、PWM信号のデューティ比が高くなる。
【0042】
これに対して、雰囲気の温度が上昇すれば、A点の電圧が上昇するので、コンパレータ15e4から所定の電圧が出力される期間が短くなる。コンパレータ15e4から所定の電圧が出力される期間が短くなれば、PWM信号のデューティ比が低くなる。そのため、回路部品の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
すなわち、本実施の形態に係る温度補償回路15eとすれば、雰囲気の温度が所定の値以上となった場合に、温度の変化に応じて、PWM信号のデューティ比を変化させることができる。そのため、回路部品の温度が適切な範囲内となるようにすることができる。
【0044】
雰囲気温度が所定の値未満の場合には、温度補償回路15eによるPWM信号の温度補償を行わない様にすることができる。例えば、コンパレータ15e4から所定の電圧が出力されない期間(OFF期間)が所定の値よりも長い場合には、PWM制御回路15aは、例えば、予め定められたPWM信号を生成することができる。
【0045】
図6は、他の実施形態に係る点灯装置1aを例示するための回路図である。
図6に示すように、点灯装置1aは、例えば、スイッチング出力回路11、トランス12、共振用コンデンサ13、検出部14、制御回路15、および温度検出素子16を有する。制御回路15は、例えば、PWM制御回路15a、コンパレータ15b、基準電圧部15c、LLC制御回路15d、および温度補償回路15eを有する。
点灯装置1aの構成は、前述した点灯装置1の構成と同じとすることができる。ただし、前述した点灯装置1の場合には、検出部14が、2つのトランス12のそれぞれに設けられている。これに対して、点灯装置1aの場合には、検出部14が、2つのトランス12のいずれか一方に設けられている。すなわち、検出部14は、2つのトランス12の、少なくともいずれかの出力状態を検出するものであればよい。
【0046】
例えば、トランス12の特性が安定している場合などには、1つのトランス12の出力状態に基づいて、前述したフィードバック制御を行えば良い。
この様にすれば、点灯装置1aの小型化と低コスト化を図ることができる。
【0047】
次に、
図1および
図2に戻って、車両用照射装置100に設けられた筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、配線6、窓7、およびシールド8について例示する。
図1および
図2に示すように、筐体2は、箱状を呈し、内部に、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯装置1を収納する空間を有する。筐体2の厚み寸法Tは、筐体2の平面寸法よりも小さくすることができる。車両用照射装置100は、車室内などの狭いスペースに、車両の運行などに用いられる電子機器と一緒に設けられる場合がある。そのため、筐体2の厚み寸法Tが小さければ、車両用照射装置100の設置が容易となる。
【0048】
また、筐体2は、筐体2の厚み方向において、第1の部分21と第2の部分22とに分割されている。第1の部分21は、例えば、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯装置1が取り付けられるベースとすることができる。第2の部分22は、例えば、第1の部分21の開口側を覆うカバーとすることができる。第2の部分22には、紫外線や光を出射させるための孔22aを設けることができる。孔22aは、放電ランプ4と対向する位置に設けることができる。
【0049】
第2の部分22は、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。例えば、第1の部分21と第2の部分22は、開口部分同士を嵌め合わせることで発生させた弾性力により、着脱可能に接続されている。
【0050】
第1の部分21と第2の部分22は、例えば、絶縁性を有する樹脂から形成される。この場合、第2の部分22の材料は、第1の部分21の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1の部分21と第2の部分22が絶縁性を有していれば、第1の部分21および第2の部分22の内壁と、放電ランプ4および点灯装置1などとの距離を短くすることができる。そのため、筐体2の小型化や薄型化が容易となる。
【0051】
基板3は、板状を呈している。基板3は、例えば、スペーサ31などを介して、第1の部分21に設けられる。なお、スペーサ31に代えて、第1の部分21に設けられた凸部に基板3を設けてもよい。
【0052】
放電ランプ4は、基板3と第2の部分22との間に位置している。放電ランプ4は、第2の部分22の孔22aに対向する位置に設けることができる。放電ランプ4は、一対の端子ホルダ41に着脱可能に設けられる。一対の端子ホルダ41は、例えば、基板3に設けられる。なお、
図2、
図3、
図6においては、1つの放電ランプ4が設けられる場合を例示したが、複数の放電ランプ4が設けられるようにしてもよい。放電ランプ4は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0053】
放電ランプ4は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、誘電体バリア放電ランプなどとすることができる。ただし、放電ランプ4は、例示をしたものに限定されるわけではなく、紫外線や光(例えば、可視光)を照射可能なものであればよい。
【0054】
ランプカバー5は、基板3と第2の部分22との間に位置している。ランプカバー5は、例えば、基板3に設けることができる。ランプカバー5は、箱状を呈し、基板3側とは反対側の端部が開口している。ランプカバー5の開口5aは、第2の部分22の孔22aに対向している。ランプカバー5の内部には、放電ランプ4と一対の端子ホルダ41を設けることができる。例えば、ランプカバー5は、絶縁性を有する樹脂から形成される。ランプカバー5の材料は、例えば、筐体2の材料と同じとすることができる。ただし、ランプカバー5は、放電ランプ4から照射された紫外線に曝される場合があるので、筐体2の材料よりも紫外線に対する耐性の高い材料を用いることが好ましい。
【0055】
ランプカバー5が設けられていれば、放電ランプ4から照射された紫外線や光が、筐体2の内壁、基板3、および点灯装置1に入射するのを抑制することができる。そのため、これらが紫外線などにより劣化するのを抑制することができる。
【0056】
また、ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせることもできる。例えば、ランプカバー5を白色などの樹脂から形成したり、ランプカバー5の内壁に反射膜を形成したり、ランプカバー5の内壁を曲面としたりすることができる。ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせれば、放電ランプ4から照射された紫外線や光の利用効率を向上させることができる。
【0057】
配線の一端は、筐体2の内部において、点灯装置1と電気的に接続されている。配線の他端は、筐体2の外部に引き出され、例えば、直流電源200に電気的に接続される。
【0058】
窓7は、筐体2(第2の部分22)の孔22aが設けられた部分に設けられている。例えば、窓7は、第2の部分22の内壁に設けられ、孔22aを覆っている。窓7は、放電ランプ4から照射された紫外線や光を透過させる。窓7は、例えば、複数の開口を有する。窓7は、例えば、複数の線材を編み込んで形成したもの、エッチング加工やプレス加工などにより複数の開口を形成したものなどとすることができる。
【0059】
ここで、放電ランプ4を点灯させた際に、放電ランプ4の電極間において放電が生じると、紫外線や光とともに、電磁波が放射される場合がある。また、放電ランプ4を点灯させた際に、点灯装置1に設けられたスイッチング素子11a、11bやスイッチング素子11a、11bに電気的に接続された配線などから電磁波が放射される場合がある。
【0060】
シールド8は、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制する。シールド8は、導電性を有し、例えば、筐体2の外壁に設けることができる。導電性を有するシールド8とすれば、シールド8における反射損失を大きくすることができるので、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。
【0061】
また、前述した様に、窓7には放電ランプ4から照射された紫外線や光を透過させる複数の開口が設けられている。そのため、窓7に設けられた複数の開口を介して、電磁波が筐体2の外部に放射されるおそれがある。そのため、窓7は、導電性を有する材料から形成される。
【0062】
導電性を有する窓7およびシールド8は、例えば、アルミニウムなどの金属から形成することができる。また、窓7およびシールド8は、車両のグランド(例えば、車両のフレーム)に電気的に接続される。
【0063】
導電性を有する窓7およびシールド8が設けられていれば、車両用照射装置100と車両の運行などに用いられる電子機器との間の距離を短くしても、電磁波が電子機器に入射するのを抑制することができる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0065】
また、本発明の1つの実施形態において、点灯装置1を具備した車両用照射装置100を説明したが、点灯装置1の変形例(例えば、点灯装置1a)も車両用照射装置100に適用することができる。
【0066】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0067】
(付記1)
放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加する点灯装置であって、
前記放電ランプの一方の電極に電気的に接続された第1のトランスと;
前記放電ランプの他方の電極に電気的に接続された第2のトランスと;
共振用コンデンサを介して、前記第1のトランスの一次側巻線と、前記第2のトランスの一次側巻線と、に電気的に接続され、PWM制御により、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換するスイッチング出力回路と;
前記PWM制御に用いるPWM信号を前記スイッチング出力回路に入力するLLC制御回路と;
雰囲気温度が所定の値以上となった場合には、温度に応じて前記PWM信号におけるデューティ比を変化させる温度補償回路と;
を具備した放電ランプ用点灯装置。
【0068】
(付記2)
前記温度補償回路は、前記温度が高くなるほどパルス期間におけるOFF時間を長くする付記1記載の放電ランプ用点灯装置。
【0069】
(付記3)
前記第1のトランス、および前記第2のトランスの、少なくともいずれかの出力状態を検出する検出部と;
前記検出部により検出された前記出力状態と、基準値と、を比較して、前記直流電圧の変動に起因する、前記駆動電圧の変動量を検出するコンパレータと;
をさらに具備し、
前記LLC制御回路は、前記コンパレータにより検出された、前記駆動電圧の変動量に基づいて、前記PWM信号におけるデューティ比を変化させる付記1または2に記載の放電ランプ用点灯装置。
【0070】
(付記4)
前記LLC制御回路は、前記スイッチング出力回路を間欠制御する付記1~3のいずれか1つに記載の放電ランプ用点灯装置。
【0071】
(付記5)
車両に設けられる車両用照射装置であって;
放電ランプと;
前記放電ランプと電気的に接続された、付記1~4のいずれか1つに記載の放電ランプ用点灯装置と;
を具備した車両用照射装置。
【符号の説明】
【0072】
1 点灯装置、1a 点灯装置、2 筐体、4 放電ランプ、11 スイッチング出力回路、11a スイッチング素子、11b スイッチング素子、11c 駆動回路、12 トランス、13 共振用コンデンサ、14 検出部、15 制御回路、15a PWM制御回路、15b コンパレータ、15c 基準電圧部、15d LLC制御回路、15e 温度補償回路、15e1 電圧発生回路、15e2 スイッチング素子、15e3 三角波発生回路,15e4 コンパレータ、16 温度検出素子、100 車両用照射装置、200 直流電源