(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184135
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】塗布装置および塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20231221BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231221BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20231221BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231221BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B05C1/02 101
B05C11/10
B05D3/06 Z
B05D3/00 D
B05D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098101
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 透
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博明
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC41
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075BB41X
4D075BB91X
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DC18
4D075DC21
4D075EA05
4F040AA02
4F040AA12
4F040AC01
4F040BA04
4F040CA02
4F040CA09
4F040CA12
4F040CA17
4F040DA02
4F040DA14
4F042AA02
4F042AA06
4F042BA08
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】基板の表面が傾いている場合であっても、安定して高速に塗布材料を基板表面に塗布することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布装置1000は、複数の照射スポットを1画面で撮像するカメラ7と、制御用コンピュータ10とを備える。制御用コンピュータ10は、複数の照射スポットの各々の合焦位置およびXY座標から得られる平面の方程式に基づいて、基板100の表面の複数の塗布点103の空間座標を算出する。制御用コンピュータ10は、対応する空間座標に基づいて、位置決め機構11によって塗布針24の先端の位置のXY座標を位置決めするとともに、位置決め機構11および塗布機構4によって塗布針24の先端の位置のZ座標を位置決めして、液体材料を基板100の表面に付着させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布針を用いて、基板の平坦な表面に液体材料を塗布する塗布装置であって、
出射口に設けられた複数の開口によって制限された光を前記基板の表面に照射する光源と、
前記塗布針を用いて前記液体材料を前記基板の前記表面に付着させる塗布機構と、
前記光の照射中に、前記複数の開口に対応する複数の照射スポットを1画面で撮像する撮像装置と、
3次元の座標をXYZ座標とすると、前記塗布機構のXYZ座標の位置を移動させる位置決め機構と、
前記塗布機構、前記撮像装置および前記位置決め機構を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記撮像装置の前記基板のXY座標上の撮像位置を固定した状態で、前記複数の照射スポットのZ軸方向の複数の合焦位置をそれぞれ検出し、
前記複数の合焦位置と前記複数の照射スポットのXY座標とに基づいて得られる平面の方程式に基づいて、前記基板の表面の少なくとも1つの塗布点の空間座標を算出し、
前記少なくとも1つの塗布点の各々に対して、対応する空間座標に基づいて、前記位置決め機構によって前記塗布針の先端の位置のXY座標を位置決めするとともに、前記位置決め機構および前記塗布機構によって前記塗布針の先端の位置のZ座標を位置決めして、前記液体材料を前記基板の前記表面に付着させる、塗布装置。
【請求項2】
前記複数の開口の数は、前記少なくとも1つの塗布点の数よりも少ない、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの塗布点は、複数の塗布点であり、
前記複数の照射スポットの位置は、前記複数の塗布点の位置にそれぞれ一致する、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記複数の照射スポットの各々の形状は、円形、楕円形および矩形の少なくともいずれか1つである、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記複数の照射スポットは、リング状、放射状、または一定ピッチに配列される、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項6】
塗布針を用いて、基板の平坦な表面に液体材料を塗布する塗布方法であって、
光源から放射され、前記光源の出射口に設けられた複数の開口によって制限された光を前記基板の表面に照射する工程と、
3次元の座標をXYZ座標とすると、前記光の照射中に、前記基板のXY座標上の撮像位置を固定した状態で、前記複数の開口に対応する複数の照射スポットを1画面中に撮影し、前記複数の照射スポットのZ軸方向の複数の合焦位置をそれぞれ検出する工程と、
前記複数の合焦位置と前記複数の照射スポットのXY座標とに基づいて、前記基板の表面に対応する平面の方程式を算出する工程と、
前記平面の方程式に基づいて、少なくとも1つの塗布点の空間座標を算出する工程と、
前記少なくとも1つの塗布点に対して、対応する塗布点の空間座標に基づいて塗布針の先端の位置のXY座標を位置決めした後に前記塗布針の先端位置のZ座標を位置決めして、前記液体材料を前記基板の前記表面に付着させる工程とを備える、塗布方法。
【請求項7】
前記複数の開口の数は、前記少なくとも1つの塗布点の数よりも少ない、請求項6に記載の塗布方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの塗布点は、複数の塗布点であり、
前記複数の照射スポットの位置は、前記複数の塗布点の位置にそれぞれ一致する、請求項6に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記複数の照射スポットの各々の形状は、円形、楕円形および矩形の少なくともいずれか1つである、請求項6に記載の塗布方法。
【請求項10】
前記複数の照射スポットは、リング状、放射状、または一定ピッチに配列される、請求項6に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布装置および塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFIDタグなどの微細な回路を印刷(塗布)方式で描画して形成するプリンテッドエレクトロニクス技術が急速に発展してきている。微細な回路のパターンや電極パターンを形成する方式としては、インクジェット方式、ディスペンサ方式などが一般的であるが、塗布針を用いた方式も広範囲の粘度の材料を用いて微細な塗布が可能な点で、注目されている。
【0003】
塗布針を用いて液体材料の微細な塗布を行なう方法については、たとえば特許第4802027号公報(特許文献1)に開示されている塗布ユニットを用いる方法が提案されている。このような塗布ユニットは、微細パターンの欠陥を修正することを目的とするもので、広範囲な粘度の塗布剤を用いて微細な塗布を行なうことが可能である。塗布動作の際、塗布剤を保持する容器の底部に形成された貫通孔から、1本の塗布針を突出させる。塗布針は、先端に付着している塗布剤を被塗布物に接触させて塗布を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4802027号公報
【特許文献2】特開2019-78866号公報
【特許文献3】特許第4519987号公報
【特許文献4】特許第4802027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記塗布装置において、基板の材料が樹脂や弾性部材の場合、針の接触による対象物の破損等を防止するため、塗布針を接触させず、針先端に付着した液体材料のみを対象物に接触させて転写する場合がある。
【0006】
また、液体材料によっては塗布針を対象物に接触させず、針先端に付着した液体材料のみを対象物に接触させた方が安定して塗布できる場合がある。
【0007】
これらの場合では、塗布針を塗布点上方に高精度に位置決めする必要があるため、塗布点の高さを正確に検出しなければならない。
【0008】
この問題を解決するために、光学式の距離センサを用いて塗布点の高さを高精度に検出する方法が挙げられるが、レーザなどの特殊な光源を用いるため装置が高コストになるという課題がある。
【0009】
低コストで高精度な高さ検出方法としては、画像処理による合焦検出法が挙げられる。塗布装置の観察光学系を利用可能であり、組み込みが容易な点もメリットである。しかしながら、塗布点毎に、毎回焦点位置を検出しなければならないため、処理時間が掛かるという課題がある。また、塗布対象の基板には、必ずしも対象物にテクスチャなどの模様があるわけではなく、画像データ上で識別できる特徴のない均質な表面であっても対象物に焦点を合わせる必要がある。
【0010】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、塗布針によって確実に塗布材料を塗布することができる塗布装置および塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、塗布針を用いて、基板の平坦な表面に液体材料を塗布する塗布装置に関する。塗布装置は、出射口に設けられた複数の開口によって制限された光を基板の表面に照射する光源と、塗布針を用いて液体材料を基板の表面に付着させる塗布機構と、光の照射中に、複数の開口に対応する複数の照射スポットを1画面で撮像する撮像装置と、3次元の座標をXYZ座標とすると、塗布機構のXYZ座標の位置を移動させる位置決め機構と、塗布機構、撮像装置および位置決め機構を制御する制御装置とを備える。制御装置は、撮像装置の基板のXY座標上の撮像位置を固定した状態で、複数の照射スポットのZ軸方向の複数の合焦位置をそれぞれ検出する。制御装置は、複数の合焦位置と複数の照射スポットのXY座標とに基づいて得られる平面の方程式に基づいて、基板の表面の複数の塗布点の空間座標を算出する。制御装置は、複数の塗布点の各々に対して、対応する空間座標に基づいて、位置決め機構によって塗布針の先端の位置のXY座標を位置決めするとともに、位置決め機構および塗布機構によって塗布針の先端の位置のZ座標を位置決めして、液体材料を基板の表面に付着させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の塗布装置によれば、基板が傾斜している場合でも、各塗布点の高さを補正することができるため、塗布針によって確実に塗布材料を塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に従った塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】基板100上の液状材料の転写領域101の位置を示す図である。
【
図5】転写領域101の一部を拡大して転写パターンの形状および配置を示した図である。
【
図6】均質な表面を持つ基板が水平方向に傾斜している様子を示した図である。
【
図9】本実施の形態の塗布装置で実行される塗布動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】基板100の転写領域101の一部をカメラ7で撮影した撮像範囲102の位置を示す図である。
【
図11】撮像範囲102に投影されたスポット光120の形状および配置を示す図である。
【
図12】スポット光毎のコントラスト算出領域を示す図である。
【
図13】一定速度でZ軸テーブル3を移動させているときのコントラスト値の変化を示す図である。
【
図14】微分値Dを計算する対象画素の配置を説明するための図である。
【
図15】スポット光の配置の第1変形例を示す図である。
【
図16】スポット光の配置の第2変形例を示す図である。
【
図17】スポット光の配置の第3変形例を示す図である。
【
図18】スポット光の配置の第4変形例を示す図である。
【
図19】スポット光の配置の第5変形例を示す図である。
【
図20】スポット光の配置の第6変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、本実施の形態に従った塗布装置の全体構成を示す斜視図である。
図1に示す塗布装置1000は、処理室1001と、位置決め機構11と、塗布機構4(
図2)と、観察光学系6と、観察光学系6に接続されたカメラ7と、制御部とを主に備えている。位置決め機構11は、X軸テーブル1と、Y軸テーブル2と、Z軸テーブル3とを含む。制御部は、モニタ9と、制御用コンピュータ10と、操作パネル8とを含む。位置決め機構11と、塗布機構4と、観察光学系6と、カメラ7とは、処理室1001の内部に配置されている。制御部は、処理室の外部に配置され作業者が操作可能である。
【0016】
処理室1001の内部には、処理室1001の底部の上にY軸テーブル2が設置されている。このY軸テーブル2は、Y軸方向に移動可能になっている。具体的には、Y軸テーブル2の下面にガイド部が設置されている。当該ガイド部は、処理室1001の底面に設置されたガイドレールに摺動可能に接続されている。また、Y軸テーブル2の下面にはボールねじが接続されている。当該ボールねじをモータなどの駆動部材により動作させることにより、Y軸テーブル2はガイドレールに沿って(Y軸方向に)移動可能になっている。また、Y軸テーブル2の上部表面上は、処理対象材である基板100を搭載する搭載面となっている。なお、処理対象材である「基板」は、必ずしも板でなくても良く、平坦で一様な表面の物体であれば良い。
【0017】
Y軸テーブル2上には、X軸テーブル1が設置されている。X軸テーブル1は、Y軸テーブル2をX軸方向に跨ぐように設置された構造体上に配置されている。X軸テーブル1には、Z軸テーブル3が接続された移動体がX軸方向に移動可能に設置されている。移動体は、たとえばボールねじを用いてX軸方向に移動可能となっている。なお、X軸テーブル1は上記構造体を介して処理室1001の底面に固定されている。そのため、上述したY軸テーブル2は、X軸テーブル1に対してY軸方向に移動可能になっている。
【0018】
X軸テーブル1に接続された移動体には、上述のようにZ軸テーブル3が設置されている。Z軸テーブル3には、観察光学系6および塗布機構4が接続されている。観察光学系6は塗布対象の基板100の塗布位置を観察するためのものである。カメラ7は、観察した画像を電気信号に変換する。Z軸テーブル3は、これらの観察光学系6および塗布機構4をZ軸方向に移動可能に保持している。
【0019】
X軸テーブル1、Y軸テーブル2、Z軸テーブル3、観察光学系6および塗布機構4を制御するための制御用コンピュータ10および操作パネル8は、処理室1001の外部に設置されている。制御用コンピュータに付随するモニタ9も、処理室1001の外部に設置されている。モニタ9は、上述したカメラ7で変換された画像データや、制御用コンピュータ10からの出力データを表示する。操作パネル8は、制御用コンピュータ10への指令を入力するために用いられる。
【0020】
以下、
図1のZ軸テーブル3に固定された塗布機構4について説明する。
図2は、塗布機構4の正面図である。
図3は、塗布機構4の右側面図である。
【0021】
塗布機構4は、サーボモータ41と、カム43と、軸受44と、カム連結板45と、可動部46と、塗布針ホルダ20と、塗布針ホルダ20に保持された塗布針24と、塗布材料容器21とを主に含んでいる。サーボモータ41は、
図1に示したZ軸方向に沿った方向に回転軸が延びるように設置されている。サーボモータ41の回転軸にはカム43が接続されている。カム43は、サーボモータ41の回転軸を中心として回転可能になっている。
【0022】
カム43のカム面に接するように軸受44が配置されている。固定ピン51,52の間を繋ぐようにバネ50が設置されている。このバネ50による引張り力は、可動部46およびカム連結板45を介して軸受44に作用する。このバネ50の引張り力によって、軸受44はカム43のカム面に押圧された状態を維持している。
【0023】
サーボモータ41の回転軸が回転することでカム43が回転したとき、カム面に接触した状態を保ち、可動部46、塗布針ホルダ固定部47、塗布針ホルダ収納部48はZ軸方向にリニアガイド49沿って移動する。
【0024】
このとき、塗布針24は塗布材料容器21の底部に形成された孔を通り塗布材料容器21の底面から下向きに突出した状態になり、基板100の表面に塗布針24の先端部が接触して、塗布材料を基板100の表面に塗布する。
【0025】
図4は、基板100上の液状材料の転写領域101の位置を示す図である。
図5は、転写領域101の一部を拡大して転写パターンの形状および配置を示した図である。
【0026】
ここでは、
図1に示した塗布装置を使用して、たとえば、
図5に示すように、均質な表面を持つ基板上に、ドット柄の転写パターンとして、ドット状の塗布点103に液体材料を転写する場合の動作について説明する。
【0027】
最初に、
図5の転写パターンを転写する場合の塗布動作を説明する。塗布装置1000のX軸テーブル1およびY軸テーブル2を制御して、観察光学系6を転写領域の中心位置の上方に位置決めする。この中心位置におけるX軸テーブル1およびY軸テーブル2の座標を(X,Y)とおく。
【0028】
次に、塗布装置1000のZ軸テーブル3を制御して、基板表面に焦点を合わせることにより塗布針の下降量Δzを求める。(焦点の探索方法については後述する)
この後、各塗布点のX軸テーブル1、Y軸テーブル2、Z軸テーブル3の座標(px,py,pz)を算出する。
【0029】
次に、塗布機構4を各塗布点の上方に位置決めする。観察光学系6に対する塗布機構4のオフセット座標を(Δx,Δy)とすると、X軸テーブル1、Y軸テーブル2、およびZ軸テーブル3を座標(px+Δx,py+Δy,pz)に移動させる。
【0030】
次に、Z軸テーブル3を制御して、塗布機構4の塗布針24を下降させ、塗布針24の先端に付着した液体材料を均質な表面を持つ基板に転写する。このとき、Z軸テーブル3はΔzだけ移動する。基板の表面が水平であればΔzは各塗布点で共通となる。
【0031】
(基板の傾斜によって転写できない例)
図6は、均質な表面を持つ基板が水平方向に傾斜している様子を示した図である。
図7は、
図6の領域Rを拡大して示した図である。均質な表面を持つ基板上の領域Rの5つの塗布点A~Eに液状材料を塗布する場合、塗布点Aと塗布点EではΔhだけ高さが異なる。
【0032】
このような場合、塗布針24の下降量Δzを各塗布点に対して共通とすると、
図7に示すように、塗布点Eでは塗布針先端の液体材料が基板に付着しない可能性がある。そこで、本実施の形態では、塗布針24の下降量Δzを塗布点毎に変更する方法を提案する。
【0033】
図8は、観察光学系6の構成を示す図である。観察光学系6は、光源111と、遮光部材112と、集光レンズ113と、ハーフミラー114と、対物レンズ115と、カメラ7とを含む。カメラ7は、結像レンズ116と、撮像面117とを含む。
【0034】
本実施の形態では、観察光学系6の光源111の出射口に光を透過する開口が設けられた遮光部材112を配置し、出射光を開口の形状に成形して均質な表面を持つ基板の表面に照射する。
【0035】
図9は、本実施の形態の塗布装置で実行される塗布動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの制御は、
図1に示した制御用コンピュータ10で実行される。
【0036】
まずステップST1において、制御用コンピュータ10は、転写パターン上にカメラ7の撮像範囲102を移動するようにX軸テーブル1およびY軸テーブル2を制御し、スポット光120を照射する。そして、ステップST2において、制御用コンピュータ10は、カメラ7の制御およびZ軸テーブル3の位置制御によって、コントラスト算出領域C1~C5のコントラスト値がピークとなるZ座標z1~z5を検出する。
【0037】
図10は、基板100の転写領域101の一部をカメラ7で撮影した撮像範囲102の位置を示す図である。
図11は、撮像範囲102に投影されたスポット光120の形状および配置を示す図である。
【0038】
図11において、円形のスポット光120は、光源111の出射口に設けられた遮光部材112の開口を通過した光を示す。遮光部材112には5つの微小穴が形成されており、カメラ7の撮像範囲内に5つのスポット光を照射する(ステップST1)。
【0039】
図12は、スポット光毎のコントラスト算出領域を示す図である。以下に、焦点の探索方法について説明する。予め、
図12に示すように、5つのスポット光照射領域(S1~S5)を包含するように、コントラスト値算出領域(四角形の領域C1~C5)を設けておく。
【0040】
焦点探索動作では、最初に、塗布装置1000のZ軸テーブル3を探索開始位置z1に移動した後、Z軸方向に一定速度でZ軸テーブル3を一定距離だけ移動する。
【0041】
Z軸テーブル3が一定速度で移動中、画像を順次撮影し、撮影した画像のコントラスト値算出領域C1~C5毎にコントラスト値を算出する。コントラスト値は合焦位置でピークを示す画像特徴であり、ここでは、コントラスト値算出領域内の微分値を用いる。(微分値算出方法については後述する)
図13は、一定速度でZ軸テーブル3を移動させているときのコントラスト値の変化を示す図である。
図13において、スポット光S1~S5で得られるコントラスト値が上から順に示されており、各グラフの横軸はZ軸テーブル3の座標を示し、縦軸はコントラスト値を示す。
【0042】
図13に示した例では、基板100が
図6および
図7に示すように水平方向に傾斜している場合にZ軸テーブル3の位置を変化させたときのコントラスト値の変化を示されている。画像中心に最も近いスポット光S3のピークにおけるZ軸テーブル3の座標z3を基準として考える。スポット光S2およびS5のピークにおける座標z2およびz5はz3よりも大きいので、スポット光S2およびS5の投影位置は、スポット光S3の投影位置よりも観察光学系6から遠いことが示されている。また、スポット光S1およびS4のピークにおける座標z1およびz4はz3よりも小さいので、スポット光S1およびS4の投影位置は、スポット光S3の投影位置よりも観察光学系6に近いことが示されている。
【0043】
以上の処理により、ステップST2のZ座標z1~z5を求めることができる。
【0044】
このようにスポット光S1~S5の投影位置のZ座標によって、基板表面の平面の傾きを判断できる。
【0045】
ここで、コントラスト値の算出に用いる微分値の定義について説明しておく。
【0046】
コントラスト値算出領域C1~C5の各々のサイズを横Mピクセル×縦Nピクセル、領域内の各画素の水平方向の微分値をΔdx(i,j)(ただし、(i,j)=(0,0)を撮像した画像の左上の点とする)、垂直方向の微分値をΔdy(i,j)とおく。なお、i,jは、コントラスト値算出領域C1~C5の各々の左上の点を起点とする画素の列番号と行番号である)。このとき、微分値Dは、次式(1)で表される。
【0047】
【0048】
図14は、微分値Dを計算する対象画素の配置を説明するための図である。
図14において、Pは微分値D(Δdx,Δdy)を算出する対象の画素を示し、A~Hは、画素Pの周囲8画素の輝度値を示す。ΔdxおよびΔdyは、たとえば、下記式(2),(3)で算出することができる。
【0049】
【0050】
【0051】
再び
図9に戻って、説明を続ける。ステップST2でZ座標z1~z5を検出したら、ステップST3において、制御用コンピュータ10は、基板の表面の傾斜が反映された平面の方程式を求める。以下に平面の方程式の算出方法について説明する。
【0052】
スポット光S3の投影位置の中心を原点(x,y)=(0,0)としたときのS1、S2、S4、S5の投影位置の中心のXY座標をそれぞれ(Δx1,Δy1)、(Δx2,Δy2)、(Δx4,Δy4)、(Δx5,Δy5)とする。また、スポット光S1~S5の投影画像のコントラスト値にピークを与えるZ軸テーブルの座標を、それぞれz1、z2、z3、z4、z5とおく。これら5つのXYZ座標から、平面の方程式0=a×x+b×y+c×z+dの係数(a,b,c,d)を求める。
【0053】
図9のステップST3における平面の方程式が算出されたら、制御用コンピュータ10は、ステップST4において各塗布点の座標(px、py、pz)を算出する。
【0054】
どのように塗布点を配置するかは、ユーザにより予め決められているので、各塗布点の座標(px、py)は、予め制御用コンピュータ10に入力されている。基板の傾き分を補正する必要があるので、制御用コンピュータ10は、以下のようにpzを決定する。
【0055】
図5の各塗布点103の座標は、上記と同様に画像領域の中央のスポット光S3の投影位置の中心を原点(x,y)=(0,0)とした座標とする。塗布点の座標を(px,py)とおくと、塗布点のZ座標pzは下記式(4)で算出できる。
【0056】
【0057】
続いて、
図9のステップST5において、制御用コンピュータ10は、塗布点の座標(px,py,pz)を、塗布針を制御する座標(PX,PY,PZ)に変換する。カメラ7の位置と塗布針24の位置はXY座標上で異なっているので、上記の(px,py)に、転写領域の中心位置におけるX軸テーブル1およびY軸テーブル2の座標(X,Y)(オフセットに相当)を加え、新たなXY座標とする。つまり、XYテーブルを制御するためのXY座標系(PX,PY,PZ)に変換する。なお、PX=px+X,PY=py+Y、PZ=pz、である。この演算は、塗布針の位置を固定した状態で塗布点の数だけ実行すれば良い。なお、塗布針で塗布を行なう毎に演算しても良い。
【0058】
続いて、
図9のステップST6において、制御用コンピュータ10は、座標(PX,PY,PZ)を用いて、塗布点の数だけ塗布を行なう。算出された塗布点の座標(PX,PY,PZ)は、基板の傾斜が考慮された座標であるため、
図6,
図7に示したような傾斜を有する表面上の各塗布点に対しても正常に塗布できる。
(スポット光の別の配置例)
スポット光は、必ずしも、
図12のような配置としなくても良い。
図15~
図20は、スポット光の配置の第1~第6変形例を示す図である。
【0059】
図15に示す配置例では、
図5で説明した転写パターンに一致するようにスポット光120Aを配置している。この場合でも、すべての塗布点をレーザで高さ測定してその都度塗布するよりは早くなる。
【0060】
スポット光の形状は円形である必要はない。
図16に示した配置例では、各スポット光120Bの形状を矩形にしている。なお、矩形は、正方形であっても、長方形であっても良い。また、円形および矩形以外にも三角形や多角形など、遮光部材112に加工できる形状であれば特に限定しない。
【0061】
図17に示した配置例では、円形のスポット光120Cを放射状に配置している。
図18に示した配置例では、矩形のスポット光120Dを放射状に配置している。
【0062】
図19に示した配置例では、円形のスポット光120Eを円形またはリング状放射状に配置している。
図20に示した配置例では、矩形のスポット光120Fを円形またはリング状放射状に配置している。
【0063】
以上説明した本実施の形態の塗布装置によれば、基板が傾斜している場合でも、各塗布点の高さを補正することができるため、高精度に塗布針を位置決めして塗布材料を塗布することが可能である。
【0064】
また、距離センサなど、距離計測に必要な特別なセンサを搭載する必要がないため、低コストで塗布装置を提供できる。
【0065】
(まとめ)
再び、図を参照して、本実施の形態について総括する。
【0066】
本開示は、塗布針24を用いて、基板100の平坦な表面に液体材料を塗布する塗布装置1000に関する。塗布装置1000は、出射口に設けられた複数の開口によって制限された光を基板の表面に照射する光源111と、塗布針24を用いて液体材料を基板100の表面に付着させる塗布機構4と、光の照射中に、複数の開口に対応する複数の照射スポットを1画面で撮像するカメラ7と、3次元の座標をXYZ座標とすると、塗布機構4のXYZ座標の位置を移動させる位置決め機構11と、塗布機構4、カメラ7および位置決め機構11を制御する制御用コンピュータ10とを備える。制御用コンピュータ10は、カメラ7の基板のXY座標上の撮像位置(撮像範囲102)を固定した状態で、複数の照射スポットS1~S5のZ軸方向の複数の合焦位置z1~z5をそれぞれ検出する。制御用コンピュータ10は、複数の合焦位置z1~z5と複数の照射スポットのXY座標とに基づいて得られる平面の方程式(式(4))に基づいて、基板100の表面の少なくとも1つの塗布点103の空間座標を算出する。制御用コンピュータ10は、少なくとも1つの塗布点103の各々に対して、対応する空間座標に基づいて、位置決め機構11によって塗布針24の先端の位置のXY座標を位置決めするとともに、位置決め機構11および塗布機構4によって塗布針24の先端の位置のZ座標を位置決めして、液体材料を基板100の表面に付着させる。なお、本実施の形態では、塗布機構4は、中空でない塗布針24の先端を用いて液体材料を基板100の表面に付着させたが、中空の塗布針を用いても良い。
【0067】
このような構成とすることによって、基板の表面が傾いている場合であっても、安定して高速に塗布材料を塗布針によって基板表面に塗布することができる。
【0068】
好ましくは、
図5および
図12に示すように、複数の開口(S1~S5)の数は、少なくとも1つの塗布点103の数よりも少ない。このようにすれば、照射スポットの数の焦点位置を検出するだけで、後は計算によって各塗布点のZ軸方向の位置を算出できるため、焦点位置を検出する回数を減らすことができる。このため、大幅に処理時間を短縮することができる。
【0069】
好ましくは、少なくとも1つの塗布点は、複数の塗布点である。
図15または
図16に示すように、複数の照射スポットの位置は、複数の塗布点103の位置にそれぞれ一致させてもよい。この場合であっても、レーザ光を使用する光学式の距離センサを使用して各塗布点のZ軸方向の位置を計測する塗布装置よりも、特別な距離センサ不要で、安価かつ高速処理が可能な塗布装置を実現できる。
【0070】
図15~
図20に示したように、複数の照射スポットの各々の形状は、円形、楕円形および矩形の少なくともいずれか1つである。
【0071】
図15~
図20に示したように、複数の照射スポットは、リング状、放射状、または一定ピッチに配列される。
【0072】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 X軸テーブル、2 Y軸テーブル、3 Z軸テーブル、4 塗布機構、6 観察光学系、7 カメラ、8 操作パネル、9 モニタ、10 制御用コンピュータ、11 位置決め機構、20 塗布針ホルダ、21 塗布材料容器、24 塗布針、41 サーボモータ、43 カム、44 軸受、45 カム連結板、46 可動部、47 塗布針ホルダ固定部、48 塗布針ホルダ収納部、49 リニアガイド、50 バネ、51,52 固定ピン、100 基板、101 転写領域、102 撮像範囲、103,A~E 塗布点、111 光源、112 遮光部材、113 集光レンズ、114 ハーフミラー、115 対物レンズ、116 結像レンズ、117 撮像面、1000 塗布装置、1001 処理室。