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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184147
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ケーブル組立構造体及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6593 20110101AFI20231221BHJP
   H01R 9/05 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01R13/6593
H01R9/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098123
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】舛永 貴司
【テーマコード(参考)】
5E021
5E077
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA11
5E021FB02
5E021FB11
5E021FC21
5E021LA06
5E077BB07
5E077BB09
5E077BB23
5E077BB31
5E077CC01
5E077DD01
5E077JJ17
(57)【要約】
【課題】電磁波の漏洩又は混入を抑制することができるケーブル組立体及びコネクタを提供する。
【解決手段】ケーブル組立構造体10において、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2は、互いの同軸ケーブル3の延在方向を揃え、それぞれの先端部からリセプタクルコネクタ30が見える状態で、延在方向かつ同軸ケーブル3の配列方向に直交する方向に複数段に積層される。積層される方向にリセプタクルコネクタ30と嵌合するプラグコネクタ20に組み込まれている。1段目の第1ケーブル組立体1では、第1グランドバー4A,4Bが、同軸ケーブル3とシェル24との隙間の第1位置P1で同軸ケーブル3を挟持している。第2ケーブル組立体2では、第2グランドバー5A,5B,6A,6Bが、同軸ケーブル3とシェル24との隙間の第2位置P2と、第2位置P2よりも先端部寄りの第3位置P3とで同軸ケーブル3を挟持する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の接点及び前記接点の周囲に配置された導電性のカバー部材を備え、相手コネクタと嵌合するコネクタの一部を構成するケーブル組立構造体であって、
前記接点と接触する芯線が露出する先端部を揃えた状態で一列に配列された複数のケーブルと、前記カバー部材に電気的に接続するとともに前記ケーブルの外部導体が露出する部分で前記ケーブルを挟持する導電性の一対のグランド部材と、を備えるケーブル組立体を有し、
前記ケーブル組立体は、互いの前記ケーブルの延在方向を揃え、それぞれの前記先端部から前記相手コネクタが見える状態で、前記延在方向かつ前記ケーブルの配列方向に直交する方向に複数段に積層されるとともに、積層される方向に前記相手コネクタと嵌合する前記コネクタに組み込まれ、
複数段の前記ケーブル組立体のうち、前記相手コネクタ寄りの1段目の第1ケーブル組立体では、前記一対のグランド部材としての第1グランド部材が、前記ケーブルと前記カバー部材との隙間の第1位置で前記ケーブルを挟持し、
複数段の前記ケーブル組立体のうち、前記第1ケーブル組立体を除く第2ケーブル組立体では、前記一対のグランド部材としての第2グランド部材が、前記ケーブルと前記カバー部材との隙間の第2位置と、前記第2位置よりも前記先端部寄りの第3位置とで前記ケーブルを挟持する、
ケーブル組立構造体。
【請求項2】
前記第2ケーブル組立体は、
前記第2グランド部材として、
前記第2位置で前記ケーブルを保持する第1部材と、前記第3位置で前記ケーブルを保持する第2部材とを備える、
請求項1に記載のケーブル組立構造体。
【請求項3】
前記第1グランド部材と前記第1部材とが、半田で電気的に接続されている、
請求項2に記載のケーブル組立構造体。
【請求項4】
前記第1グランド部材と前記第1部材とが、前記カバー部材を介して電気的に接続されている、
請求項2に記載のケーブル組立構造体。
【請求項5】
前記第2グランド部材は、
前記第2位置から前記第3位置まで延びる部材で構成されている、
請求項1に記載のケーブル組立構造体。
【請求項6】
前記第1グランド部材と前記第2グランド部材とが、半田で電気的に接続されている、
請求項5に記載のケーブル組立構造体。
【請求項7】
前記第1グランド部材と前記第2グランド部材とが、前記カバー部材を介して電気的に接続されている、
請求項5に記載のケーブル組立構造体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のケーブル組立構造体を備えるコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル組立構造体及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸ケーブルを1列に並べて組み立てられた同軸ケーブル組立体を2段重ねとした多極同軸ケーブルコネクタ組立体を備えるコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4068092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたコネクタは、外周が電磁波遮蔽部材であるシェルで囲まれているが、特許文献1の図1に示すように、例えば、第2導電性シェル45の端部における同軸ケーブル2との間には隙間ができるため、そこからの電磁波の漏洩又は混入が懸念される。
【0005】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、電磁波の漏洩又は混入を抑制することができるケーブル組立構造体及びコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るケーブル組立構造体は、
導電性の接点及び前記接点の周囲に配置された導電性のカバー部材を備え、相手コネクタと嵌合するコネクタの一部を構成するケーブル組立構造体であって、
前記接点と接触する芯線が露出する先端部を揃えた状態で一列に配列された複数のケーブルと、前記カバー部材に電気的に接続するとともに前記ケーブルの外部導体が露出する部分で前記ケーブルを挟持する導電性の一対のグランド部材と、を備えるケーブル組立体を有し、
前記ケーブル組立体は、互いの前記ケーブルの延在方向を揃え、それぞれの前記先端部から前記相手コネクタが見える状態で、前記延在方向かつ前記ケーブルの配列方向に直交する方向に複数段に積層されるとともに、積層される方向に前記相手コネクタと嵌合する前記コネクタに組み込まれ、
複数段の前記ケーブル組立体のうち、前記相手コネクタ寄りの1段目の第1ケーブル組立体では、前記一対のグランド部材としての第1グランド部材が、前記ケーブルと前記カバー部材との隙間の第1位置で前記ケーブルを挟持し、
複数段の前記ケーブル組立体のうち、前記第1ケーブル組立体を除く第2ケーブル組立体では、前記一対のグランド部材としての第2グランド部材が、前記ケーブルと前記カバー部材との隙間の第2位置と、前記第2位置よりも前記先端部寄りの第3位置とで前記ケーブルを挟持する。
【0007】
前記第2ケーブル組立体は、
前記第2グランド部材として、
前記第2位置で前記ケーブルを保持する第1部材と、前記第3位置で前記ケーブルを保持する第2部材とを備える、
こととしてもよい。
【0008】
前記第1グランド部材と前記第1部材とが、半田で電気的に接続されている、
こととしてもよい。
【0009】
前記第1グランド部材と前記第1部材とが、前記カバー部材を介して電気的に接続されている、
こととしてもよい。
【0010】
前記第2グランド部材は、
前記第2位置から前記第3位置まで延びる部材で構成されている、
こととしてもよい。
【0011】
前記第1グランド部材と前記第2グランド部材とが、半田で電気的に接続されている、
こととしてもよい。
【0012】
前記第1グランド部材と前記第2グランド部材とが、前記カバー部材を介して電気的に接続されている、
こととしてもよい。
【0013】
本発明の第2の観点に係るコネクタは、
第1の観点に係るケーブル組立構造体を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電磁波の漏洩又は混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1における第1ケーブル組立体及び第2ケーブル組立体の外観を示す斜視図である。
図2】嵌合前のコネクタ対の外観を示す斜視図である。
図3】プラグコネクタの外観を示す斜視図である。
図4】(A)は、嵌合後のコネクタ対の外観を示す斜視図である。(B)は、(A)のコネクタ対の平面図である。
図5】(A)は、図4(B)のVA-VA線断面図である。(B)は、図4(B)のVB-VB線断面図である。
図6】(A)は、シェルと同軸ケーブルとの間にグランドバーが配置されていない場合のEMI(Electro Magnetic Interference)の解析結果である。(B)は、シェルと同軸ケーブルとの間にグランドバーが配置されている場合のEMIの解析結果である。
図7】(A)は、本発明の実施の形態2におけるコネクタ対の図4(B)のVA-VA線断面図に相当する断面図である。(B)は、図4(B)のVB-VB線断面図に相当する断面図である。
図8】ケーブル組立構造体の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0017】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態1では、まず、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2を備えるケーブル組立構造体10(図1参照)について説明する。続いて、ケーブル組立構造体10を備えるプラグコネクタ20と、リセプタクルコネクタ30と、について説明する(図2参照)。さらに、プラグコネクタ20と、リセプタクルコネクタ30と、を備えるコネクタ対50(図2参照)について説明する。ケーブル組立構造体10は、コネクタ対50の内部と外部との間での電磁波の漏出又は混入を抑制する構造を提供する。
【0018】
[第1ケーブル組立体]
図1に示すように、第1ケーブル組立体1は、複数の同軸ケーブル3と、第1グランド部材としての一対の第1グランドバー4A,4Bと、を備える。図1では、同軸ケーブル3の一端寄りの一部のみが示され、他の部分の図示は省略されている。
【0019】
[同軸ケーブル]
複数の同軸ケーブル3は、例えば、互いに同径、同型のケーブルである。複数の同軸ケーブル3は、向きを揃えて一列に配列されている。図1では、同軸ケーブル3が延びる延在方向をX軸方向と規定し、同軸ケーブル3が配列される配列方向をY軸方向と規定している。また、上記延在方向及び上記配列方向の両方に直交する方向をZ軸方向と規定している。以下では、このXYZ軸直交座標系を参照して説明を行う。
【0020】
図1に示すように、同軸ケーブル3は、延在方向に延びる芯線3aと、芯線3aの延在方向に延びる外周面を覆う誘電体3bと、誘電体3bの延在方向に延びる外周面を覆う外部導体3cと、外部導体3cの延在方向に延びる外周面を覆う外被3dとで構成されている。外部導体3cは、後述のように接地されており、芯線3aと外部導体3cとの間は、誘電体3bにより絶縁されている。芯線3aと外部導体3cとの電位差で、同軸ケーブル3において伝送される信号の電圧レベルが決定される。
【0021】
芯線3aを中心とする半径方向の周囲は、誘電体3bを挟んで外部導体3cで覆われている。このため、外部導体3cにより、芯線3aと外界との間で、電磁波の混入及び漏出のレベルを低減することができる。
【0022】
同軸ケーブル3は、2本で1組となっている。1組の同軸ケーブル3が差動信号を伝送する。第1ケーブル組立体1では、1組の同軸ケーブル3が、複数組、具体的には、8組配列されている。各組の同軸ケーブル3の間は、ケーブル1本程度の間隔があけられている。1組の同軸ケーブル3の芯線3a同士の電位差が、伝送される差動信号の電圧レベルとなる。
【0023】
同軸ケーブル3では、その延在方向における一端(同軸ケーブル3の中央を基準として、X軸の負に位置する端部)から、芯線3a、誘電体3b、外部導体3c及び外被3dの順で延在方向に延びる外周面が露出している。露出する芯線3aの長さは、各同軸ケーブル3について同じであり、後述するプラグコネクタ20の信号コンタクト22との半田付けに十分な長さとなっている。露出する外部導体3cの延在方向の長さは、各同軸ケーブル3について同じであり、後述する第1グランドバー4A,4BのX軸方向の幅と同じかそれ以上となっている。複数の同軸ケーブル3は、延在方向に関して露出する芯線3a、誘電体3b及び外部導体3cを揃えた状態で、配列方向に配列される。
【0024】
[第1グランドバー]
図1に示すように、第1グランドバー4A,4Bは、同軸ケーブル3の配列方向に延びる、導電性の素材(例えば金属)で形成された矩形かつ平板状の部材である。第1グランドバー4A,4Bは、必ずしも矩形である必要はない。第1グランドバー4A,4Bは、同軸ケーブル3の配列方向に延びて全ての同軸ケーブル3の外部導体3cに接触していればよい。
【0025】
第1グランドバー4Aは、同軸ケーブル3の配列方向を長手方向とし、その板厚方向に、複数の外部導体3cの露出面と+Z側(X軸を基準として、Z軸の正の側:上方)から接触する状態で配置される。第1グランドバー4Bは、同軸ケーブル3の配列方向を長手方向とし、その板厚方向に、複数の外部導体3cの露出面に-Z側(X軸を基準として、Z軸の負の側:下方)から接触する状態で配置される。第1グランドバー4A,4Bの配列方向の長さは、複数の同軸ケーブル3の配列方向の長さ以上となっている。
【0026】
このように、一対の第1グランドバー4A,4Bは、外部導体3cと接触して複数の同軸ケーブル3をZ軸方向に挟持する。第1グランドバー4A,4Bが外部導体3cを挟持する位置であって、延在方向に関する位置を、第1位置P1とする。
【0027】
第1グランドバー4Aは、外部導体3cと接触する平板部4aと、隣接する同軸ケーブル3において露出する芯線3aの間を仕切る導電性のグランド接続部4bと、を備える。グランド接続部4bは、露出する芯線3aが延びる延在方向に沿って延びている。グランド接続部4bは、平板部4aにおける同軸ケーブル3の一端(同軸ケーブル3の延在方向の中央を基準として、X軸の負に位置する一端)寄りの外辺から、隣接する同軸ケーブル3の露出する芯線3aの間に延出し、第1グランドバー4A,4Bが対向する向きに折れ曲がった後、同軸ケーブル3の芯線3aの延在方向に沿ってさらに延びている。
【0028】
第1グランドバー4Bは、外部導体3cと接触する平板状の部材である。第1グランドバー4Aの平板部4aと第1グランドバー4Bとの間に形成される隙間には、半田が充填される。これにより、半田部4cが形成される。
【0029】
[第2ケーブル組立体]
図1に示すように、第2ケーブル組立体2は、複数の同軸ケーブル3と、第2グランド部材としての導電性の一対の第2グランドバー5A,5Bと、同じく第2グランド部材としての一対の第2グランドバー6A,6Bと、を備える。複数の同軸ケーブル3は、互いに同径、同型である。なお、本実施の形態1では、複数の同軸ケーブル3を第1ケーブル組立体1の同軸ケーブル3と同径、同型としたが、これに限定されない。
【0030】
第2ケーブル組立体2において、同軸ケーブル3は、第1ケーブル組立体1の同軸ケーブル3と同じ向きに並んでおり、互いの延在方向が一致するよう配置されている。さらに、第2ケーブル組立体2では、同軸ケーブル3は、芯線3aが露出する先端部を揃えた状態で、第1ケーブル組立体1での同軸ケーブル3の配列方向と一致するように配列されている。
【0031】
第1ケーブル組立体1では、外部導体3cが露出する部分は1カ所であるが、第2ケーブル組立体2では、外部導体3cが露出する部分が2カ所設けられている。この2カ所について同軸ケーブル3の延在方向に関する基端(同軸ケーブル3の延在方向の中央を基準として、X軸の正に位置する端部)寄りの位置を第2位置P2とし、先端(同軸ケーブル3の延在方向の中央を基準として、X軸の負に位置する端部)寄りの位置を第3位置P3とする。
【0032】
第2グランドバー5A,5Bは、第2位置P2で同軸ケーブル3を挟持する。第2グランドバー6A,6Bは、第3位置P3で同軸ケーブル3を挟持する。なお、第2グランドバー6Aには、第1グランドバー4Aと同様にグランド接続部4bが設けられているが、第2グランドバー5Aには、グランド接続部4bは設けられていない。
【0033】
第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2は、互いの同軸ケーブル3の延在方向を揃え、それぞれの先端部から相手コネクタ、すなわちリセプタクルコネクタ30が見える状態で、延在方向かつ配列方向に直交する方向(Z軸方向)に複数段に積層される。したがって、Z軸方向を積層される方向との意味で積層方向ともいう。
【0034】
先端部からリセプタクルコネクタ30が見える状態とは、積層方向で上方に位置するケーブル組立体の先端部が、下方に位置するケーブル組立体の先端部よりも延在方向で先にある状態(例えば、積層方向で上方に位置するケーブル組立体の先端部が、X軸において小さな値を示す状態)をいい、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2のそれぞれの同軸ケーブル3の先端部が、リセプタクルコネクタ30と対向するプラグコネクタ20の下面で露出している必要はない。積層方向に関して、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2の同軸ケーブル3の芯線3aが露出する部分同士が重ならずに2段目の第2ケーブル組立体2の先端部が、1段目の第1ケーブル組立体1の先端よりも延在方向で先に張り出していればよい(図5(A),(B)参照)。
【0035】
また、本実施の形態では、延在方向に関して、第1位置P1と第2位置P2が一致するように第1ケーブル組立体1と第2ケーブル組立体2とが積層される。これにより、第2グランドバー5Bと、第1グランドバー4Aとは対向する位置に配置される(図1参照)。
【0036】
本実施の形態では、第1グランドバー4Aと第2グランドバー5Bとが、それぞれ半田で電気的に接続されている。また、第1グランドバー4Aと第2グランドバー5Bとが、プラグコネクタ20のカバー部材としてのシェル24を介して電気的に接続されている(図5(A),(B)参照)。
【0037】
この積層により、ケーブル組立構造体10が形成される。第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2は、図2に示すように、プラグコネクタ20に組み込まれる。このように、第1ケーブル組立体1と第2ケーブル組立体2とを複数段に構成することで、プラグコネクタ20及びリセプタクルコネクタ30の配列方向の長さを短くすることができ、結果的に、コネクタ対50の実装面積を小さくすることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、第1ケーブル組立体1と第2ケーブル組立体2とで、同軸ケーブル3の数を同じとしているが、同じである必要はない。また、同軸ケーブル3のY軸方向の位置を同じ位置にしているが、例えば、半ピッチずらすようにしてもよい。
【0039】
[コネクタ対]
図2に示すように、コネクタ対50は、プラグコネクタ20と、リセプタクルコネクタ30と、を備える。ケーブル組立構造体10は、コネクタとしてのプラグコネクタ20に実装され、リセプタクルコネクタ30は、基板7に実装される。
【0040】
図2に示すように、リセプタクルコネクタ30には、Z軸の+向き方向に向けて開口した差込口30aが設けられている。差込口30aは、矩形枠状の凹部である。これに対して、図3に示すように、プラグコネクタ20には、Z軸の-向き方向に突き出す挿入部20aが設けられている。挿入部20aは、矩形枠状の凸部である。この挿入部20aが差込口30aに差し込まれることにより、プラグコネクタ20と、リセプタクルコネクタ30とが嵌合する。
【0041】
図4(A)及び図4(B)に示すように、プラグコネクタ20とリセプタクルコネクタ30とがZ軸方向に嵌合することにより、プラグコネクタ20に実装されたケーブル組立構造体10の同軸ケーブル3と基板7の電気回路とが電気的に接続される。このように、プラグコネクタ20とリセプタクルコネクタ30とは、第1ケーブル組立体1と第2ケーブル組立体2との積層方向、すなわちZ軸方向を嵌合方向としている。
【0042】
[プラグコネクタ]
プラグコネクタ20について説明する。図5(A)及び図5(B)に示すように、プラグコネクタ20は、上述のケーブル組立構造体10と、絶縁性の部材で構成されたハウジング21と、導電性の接点としての信号コンタクト22と、同じく導電性の接点としての導電性のグランドコンタクト23と、カバー部材としての導電性のシェル24と、リセプタクルコネクタ30との嵌合状態を維持する係止部25と、を備えている。
【0043】
ハウジング21は、例えば絶縁性の樹脂で構成されたプラグコネクタ20の筐体である。このハウジング21に信号コンタクト22及びグランドコンタクト23が圧入又はインサート成形によって組み付けられている。信号コンタクト22及びグランドコンタクト23は、同軸ケーブル3の配列方向に配列されている。信号コンタクト22及びグランドコンタクト23の配列は、第1ケーブル組立体1の同軸ケーブル3の芯線3aと接続する第1列と、第2ケーブル組立体2の同軸ケーブル3の芯線3aと接続する第2列との2列から形成されている。
【0044】
第1列において、信号コンタクト22は、第1ケーブル組立体1における同軸ケーブル3の芯線3aと接触するように配置されている(図5(A)参照)。グランドコンタクト23は、第1ケーブル組立体1におけるグランド接続部4bと接触するように配置されている(図5(B)参照)。グランドコンタクト23は、2本1組の信号コンタクト22の配列方向の両側に配置される。
【0045】
第2列において、信号コンタクト22は、第2ケーブル組立体2における同軸ケーブル3の芯線3aと接触するように配置されている(図5(A)参照)。グランドコンタクト23は、第2ケーブル組立体2におけるグランド接続部4bと接触するように配置されている(図5(B)参照)。グランドコンタクト23は、2本1組の信号コンタクト22の配列方向の両側に配置される。
【0046】
シェル24は、図3に示すように、信号コンタクト22及びグランドコンタクト23から絶縁された状態で、信号コンタクト22及びグランドコンタクト23の周囲に配置されている。シェル24には、接触片形成部24aが設けられている(図4(A),(B)参照)。接触片形成部24aには、第2ケーブル組立体2の第2グランドバー5A,6Aと接触する接触片が設けられている。図5(B)に示すように、シェル24は、第1ケーブル組立体1の第1グランドバー4Bにも接触している。シェル24は、後述するように、リセプタクルコネクタ30のシェル34と接触することにより基板7に接地される。シェル24により、信号コンタクト22及びグランドコンタクト23を囲む電磁波シールドが形成され、外界との間の電磁波の漏洩又は混入が抑制されている。
【0047】
係止部25は、シェル24に対して回動可能に取り付けられている。係止部25には、リセプタクルコネクタ30と係止するロック部25aと、ロック解除部25bと、が設けられている(図2参照)。ロック部25a及びロック解除部25bは、配列方向の両端に設けられている。プラグコネクタ20とリセプタクルコネクタ30とが嵌合すると、ロック部25aは、リセプタクルコネクタ30の被係止部35と係止する。ロック解除部25bは、手動操作により、ロック部25aと被係止部35との間のロック状態を解除可能である。ロック状態が解除されれば、プラグコネクタ20をリセプタクルコネクタ30から取り外すことができる。
【0048】
[リセプタクルコネクタ]
続いて、リセプタクルコネクタ30について説明する。図2に示すように、リセプタクルコネクタ30は、絶縁性のハウジング31と、導電性の信号コンタクト32と、導電性のグランドコンタクト33と、導電性のシェル34と、被係止部35と、を備える。
【0049】
ハウジング31は、例えば絶縁性の樹脂で形成されたリセプタクルコネクタ30の筐体である。このハウジング31に信号コンタクト32及びグランドコンタクト33が圧入又はインサート成形によって組み付けられている。信号コンタクト32及びグランドコンタクト33は、同軸ケーブル3の配列方向に配列されている。
【0050】
信号コンタクト32及びグランドコンタクト33の配列は、第1ケーブル組立体1の同軸ケーブル3の芯線3aと接続する信号コンタクト22及びグランドコンタクト23と接続する第1列と、第2ケーブル組立体2の同軸ケーブル3の芯線3aと接続する信号コンタクト22及びグランドコンタクト23と接続する第2列との2列から形成されている。
【0051】
第1列において、信号コンタクト32は、信号コンタクト22と接触するように配置されるとともに、基板7の信号電極7aに半田付けされる。グランドコンタクト33は、グランドコンタクト23と接触するように配置されるとともに、基板7の接地電極7bに半田付けされる。グランドコンタクト23は、2本1組の信号コンタクト22の配列方向の両側に配置される。
【0052】
第2列において、信号コンタクト32は、信号コンタクト22と接触するように配置されるとともに、基板7の信号電極7aに半田付けされる。グランドコンタクト33は、グランドコンタクト23と接触するように配置されるとともに、基板7の接地電極7bに半田付けされる。グランドコンタクト23は、2本1組の信号コンタクト22の配列方向の両側に配置される。
【0053】
シェル34は、図2に示すように、信号コンタクト32及びグランドコンタクト33の周囲に配置されている。シェル34は、プラグコネクタ20のシェル24と接触する位置に設けられている。シェル34は、基板7に接地される基板接続部34aを有している。シェル34により、信号コンタクト32及びグランドコンタクト33と、外界との間の電磁波の漏洩又は混入が抑制される。
【0054】
被係止部35は、配列方向の両端に設けられている。プラグコネクタ20の係止部25のロック部25aと係合する。
【0055】
[伝送経路]
プラグコネクタ20及びリセプタクルコネクタ30により、同軸ケーブル3と基板7との間の伝送線路が形成される。図5(A)に示すように、第1ケーブル組立体1の同軸ケーブル3の芯線3a、信号コンタクト22、信号コンタクト32、基板7の信号電極7aがこの順で接続されて、第1列の信号の伝送線路が形成される。さらに、第2ケーブル組立体2の同軸ケーブル3の芯線3a、信号コンタクト22、信号コンタクト32、基板7の信号電極7aがこの順で接続されて、第2列の信号の伝送線路が形成される。上述のように、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2では、2本の同軸ケーブル3が1組となって差動信号を伝送しているため、コネクタ対50においても、差動信号を伝送する2つの信号伝送用の伝送線路が1組となって形成される。
【0056】
また、図5(B)に示すように、第1ケーブル組立体1の同軸ケーブル3の外部導体3c、第1グランドバー4Aの平板部4a及びグランド接続部4b、グランドコンタクト23、グランドコンタクト33、基板7の接地電極7bがこの順で接続されて、第1列の接地用の伝送線路が形成される。また、第2ケーブル組立体2の同軸ケーブル3の外部導体3c、第1グランドバー6Aの平板部4a及びグランド接続部4b、グランドコンタクト23、グランドコンタクト33、基板7の接地電極7bがこの順で接続されて、第2列の接地用の伝送線路が形成される。これらの接地用の伝送線路は、Y軸方向(配列方向)において、上述の2本1組の信号伝送用の伝送線路の両側に形成される。
【0057】
また、図5(B)に示すように、第1グランドバー4A,4B、第2グランドバー5A,5B及び第2グランドバー6A,6Bは、シェル24に接触している。さらに、プラグコネクタ20のシェル24は、リセプタクルコネクタ30のシェル34に接触している。リセプタクルコネクタ30のシェル34の基板接続部34aは、基板7のXY平面(主面)に、信号コンタクト32及びグランドコンタクト33の周囲を囲むように配置されており、基板7の接地電極7bに半田付けにより接続されている。したがって、このシェル24,34により、上述の信号伝送用の伝送線路の四方を囲む電磁シールドが形成される。
【0058】
図5(A)及び図5(B)に示すように、第1グランドバー4A,4Bは、シェル24と同軸ケーブル3との隙間である第1位置P1に配置されている。また、第2グランドバー5A,5Bは、シェル24と同軸ケーブル3との隙間である第2位置P2に配置されている。さらに第1グランドバー4Aと、第2グランドバー5Bとの間は、半田で接続されている。したがって、第1グランドバー4A,4B及び第2グランドバー5A,5Bは、シェル24と同軸ケーブル3との隙間を通る電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽材として機能とする。
【0059】
図6(A)に、シェル24と同軸ケーブル3との間に第1グランドバー4A,4B及び第2グランドバー5A,5Bが配置されていない場合、具体的には、従来のケーブル組立体のように、第1ケーブル組立体1に第1グランドバー4A,4Bが配置され、第2ケーブル組立体2に第2グランドバー5A,5Bが配置されていない場合のEMIの解析結果が示されている。図6(B)には、シェル24と同軸ケーブル3との間に第1グランドバー4A,4B及び第2グランドバー5A,5Bが配置されている場合の本実施の形態に係るコネクタ対50のEMIの解析結果が示されている。図6(A)及び図6(B)では、電磁波の強度が大きくなればなるほど、色が明るくなるように示されている。
【0060】
図6(A)及び図6(B)を比較するとわかるように、第2グランドバー5A,5Bを備えていることにより、シェル24と同軸ケーブル3との隙間を通って電磁波の漏洩が抑制されている。この解析結果からすれば、シェル24と同軸ケーブル3との隙間を通ってコネクタ対50の内部への電磁波の混入についても、同様に抑制できるのは明らかである。
【0061】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、プラグコネクタ20において、シェル24と同軸ケーブル3との間の隙間が、第1グランドバー4A,4B及び第2グランドバー5A,5Bで塞がれているため、電磁波の漏洩又は混入を抑制することができる。
【0062】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係るケーブル組立構造体10の構成は、第2ケーブル組立体2の構成が異なる他は、上記実施の形態1に係るケーブル組立構造体10の構成と同じである。
【0063】
上記実施の形態1では、第2ケーブル組立体2が、第2グランドバー5A,5B及び第2グランドバー6A,6Bを備える。これに対して、図7(A)及び図7(B)に示す本実施の形態に係る第2ケーブル組立体2では、第2グランドバー5A,5Bが第2位置P2から第3位置P3まで延びており、第2グランドバー6A,6Bが、設けられていない点が上記実施の形態1と異なる。
【0064】
本実施の形態でも、プラグコネクタ20において、シェル24と同軸ケーブル3との間の隙間が、導電性の第1グランドバー4A,4B及び第2グランドバー5A,5Bとで塞がれているため、電磁波の漏洩又は混入をより高いレベルで遮断することができる。また、第2ケーブル組立体2では、第2グランドバー5A,5Bが、同軸ケーブル3の外部導体3cが露出されている部分を覆うことで、その部分でのインピーダンス整合をとることが可能となる。
【0065】
なお、本実施の形態でも、第1グランドバー4Aと第2グランドバー5Bとが、半田で電気的に接続されていてもよい。また、第1グランドバー4Aと第2グランドバー5Bとが、シェル24を介して電気的に接続されているようにしてもよい。このようにすれば、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2との隙間を遮断し、電磁波の漏洩又は混入をより高いレベルで遮断することができる。
【0066】
また、図8に示すように、ケーブル組立体を3段積層してケーブル組立構造体10を構成するようにしてもよい。この場合、1段目の第1ケーブル組立体1の上に、2段目の第2ケーブル組立体2が積層され、さらにその上に、3段目の第2ケーブル組立体8が積層されている。第2ケーブル組立体8も、第2ケーブル組立体2と同様に、同軸ケーブル3とシェル24との隙間の第2位置P2で同軸ケーブル3を挟持する第2グランドバー5A,5Bと、第2位置P2よりも先端部寄りの第3位置P3’で同軸ケーブル3を挟持する第2グランドバー6A,6Bと、を備えている。
【0067】
なお、第2ケーブル組立体8の同軸ケーブル3の先端部からリセプタクルコネクタ30が見える状態とするために、X軸方向において、第3位置P3’は、第3位置P3とは異なる位置となっている。また、ケーブル組立体を4段以上積層してケーブル組立構造体10を構成することも可能である。この場合も、すべてのケーブル組立体の先端部からリセプタクルコネクタ30が見える状態に、各ケーブル組立体が配置される。
【0068】
なお、上記実施の形態では、第1ケーブル組立体1の第1グランドバー4Aと、第2ケーブル組立体2の第2グランドバー5Bとが接するようにしている。しかしながら、これには限られない。例えば、第1グランドバー4Aと、第2グランドバー5Bとの間に、導電性の部材を挿入するようにしてもよい。このようにしても、第1グランドバー4A,4Bと、第2グランドバー5A,5Bと、挿入される部材とで、電磁波遮蔽部材が構成されるようにすればよい。
【0069】
上記実施の形態では、同軸ケーブル3の一方端の構成についてのみ説明している。しかしながら、同軸ケーブル3の他方端の構成も、同じ構成とすることができる。同軸ケーブル3の他方端についても、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2を構成し、第1ケーブル組立体1及び第2ケーブル組立体2を備えるプラグコネクタ20と、リセプタクルコネクタ30とを嵌合させて、他の基板と接続することができる。
【0070】
上記実施の形態では、差動信号を伝送するケーブル組立構造体10、プラグコネクタ20及びコネクタ対50について説明している。しかしながら、これには限られない。シングルエンド信号を伝送するケーブル組立構造体に本発明を適用するようにしてもよい。
【0071】
なお、上記実施の形態では、2本1組の同軸ケーブル3を8組備えることとしている。しかしながら、これには限られない。同軸ケーブル3の本数には制限はない。
【0072】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば同軸ケーブルで基板間を接続するのに適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 第1ケーブル組立体、2 第2ケーブル組立体、3 同軸ケーブル、3a 芯線、3b 誘電体、3c 外部導体、3d 外皮、4A,4B 第1グランドバー(第1グランド部材)、4a 平板部、4b グランド接続部、4c 半田部、5A,5B,6A,6B 第2グランドバー(第2グランド部材)、7 基板、7a 信号電極、7b 接地電極、8 第2ケーブル組立体、10 ケーブル組立構造体、20 プラグコネクタ(コネクタ)、20a 挿入部、21 ハウジング、22 信号コンタクト(導電性の接点)、23 グランドコンタクト(導電性の接点)、24 シェル(カバー部材)、24a 接触片形成部、25 係止部、25a ロック部、25b ロック解除部、30 リセプタクルコネクタ(相手コネクタ)、30a 差込口、31 ハウジング、32 信号コンタクト、33 グランドコンタクト、34 シェル、34a 基板接続部、35 被係止部、50 コネクタ対
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