(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018415
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20230201BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20230201BHJP
【FI】
B09B3/00 303Z
B09B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122531
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】山本 柱
(72)【発明者】
【氏名】杉山 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】松田 聡
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA18
4D004AB10
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA12
4D004CA14
4D004CA29
4D004CA40
4D004CB01
4D004DA01
4D004DA02
(57)【要約】
【課題】ラベル付ガラス製品を構成するガラス製品、及びラベルを再活用可能とするラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システムの提供を目的とした。
【解決手段】再活用システム10は、ガラス製品Gに対してラベルLを貼付したラベル付ガラス製品Xを再活用するものである。ラベル付ガラス製品Xは、ラベルLとして、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものである。再活用システム10は、回収されたラベル付ガラス製品Xを構成するガラス製品G及びラベルLを粉砕して、ガラス及びラベルLの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する粉砕処理を行う粉砕部20と、粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とする加熱溶解処理を行う加熱溶解部30と、溶解物を成形する成形処理を行う成形部40と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製品に対してラベルを貼付したラベル付ガラス製品を再活用するためのラベル付ガラス製品の再活用方法であって、
前記ラベルが、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものであり、
前記ラベル付ガラス製品を回収する回収工程と、
前記回収工程において回収された前記ラベル付ガラス製品から、ガラス及び前記ラベルの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する粉砕工程と、
前記粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とする加熱溶解工程と、
前記溶解物を成形する成形工程と、
を含む工程を経てガラス製品を形成すること、を特徴とするラベル付ガラス製品の再活用方法。
【請求項2】
前記加熱溶解工程において、前記粉砕混合物に含まれている前記ラベルに由来する前記カルシウム成分の量に応じて、珪砂、ソーダ灰、石灰の少なくともいずれかを前記ガラス原料として加えること、を特徴とする請求項1に記載のラベル付ガラス製品の再活用方法。
【請求項3】
前記粉砕工程において、前記ガラス製品に対して前記ラベルが付着した状態のまま前記ラベル付ガラス製品を粉砕すること、を特徴とする請求項1又は2に記載のラベル付ガラス製品の再活用方法。
【請求項4】
前記回収工程において回収された前記ラベル付ガラス製品の品質検査を行う品質検査工程と、
前記品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できると判定された前記ラベル付ガラス製品を洗浄する洗浄工程と、
をさらに含み、
前記品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質への回復が不能であると判定された前記ラベル付ガラス製品が、前記粉砕工程において粉砕されること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のラベル付ガラス製品の再活用方法。
【請求項5】
前記品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できると判定された前記ラベル付ガラス製品から前記ラベルを取り外し、前記ラベルと前記ガラス製品とに分離する分離工程と、
前記分離工程において取り外された前記ラベルをリサイクルするラベルリサイクル工程と、
をさらに含み、
前記分離工程において前記ラベルが取り外された前記ガラス製品が、前記洗浄工程において洗浄されること、を特徴とする請求項4に記載のラベル付ガラス製品の再活用方法。
【請求項6】
ガラス製品に対してラベルを貼付したラベル付ガラス製品を再活用するための再活用システムであって、
前記ラベルが、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものであり、
回収された前記ラベル付ガラス製品を構成する前記ガラス製品及び前記ラベルを粉砕して、ガラス及び前記ラベルの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する粉砕処理を行う粉砕部と、
前記粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とする加熱溶解処理を行う加熱溶解部と、
前記溶解物を成形する成形処理を行う成形部と、
を備えていること、を特徴とする再活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記非特許文献1や非特許文献2に開示されているように、ガラスびんは、リユースやリサイクルの形態により再活用されてきた。具体的には、ガラスびんは、非特許文献1に開示されているように、回収した使用済みのびんに洗浄等を施して繰り返し使用する、リユースと呼ばれる形態で再活用することができる。また、ガラスびんは、非特許文献2に開示されているように、使用済みのびんを細かく砕くことによって得られたカレットを、新しいびんなどのガラス製品を作るために活用する、リサイクルと呼ばれる形態でも再活用することができる。そのため、ガラスびんは、環境に対する負荷の少ない容器といえる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ガラスびん3R推進協議会ウェブサイト(https://www.glass-3r.jp/learn/reuse.html)
【非特許文献2】ガラスびん3R推進協議会ウェブサイト(https://www.glass-3r.jp/learn/recycle.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ガラスびんなどのガラス製品に貼付されたラベルは、ガラスのリサイクルに際して不純物となる。そのため、ガラスのリサイクルに際しては、ガラス製品からラベルが取り外され、ガラス製品のリサイクルに活用されていなかった。また、従来技術においては、ラベル付ガラス製品のリユースに際してガラス製品が再利用されるものの、取り外したラベルは資源として活用されていなかった。このように、従来技術においては、ラベル付ガラス製品をリサイクルやリユースにより再活用する際に、ガラス製品は活用できているものの、ラベルまで十分には活用できていないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、ラベル付ガラス製品を構成するガラス製品だけでなく、ラベルまで再活用可能なラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供されるラベル付ガラス製品の再活用方法は、ガラス製品に対してラベルを貼付したラベル付ガラス製品を再活用するためのラベル付ガラス製品の再活用方法であって、前記ラベルが、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものであり、前記ラベル付ガラス製品を回収する回収工程と、前記回収工程において回収された前記ラベル付ガラス製品から、ガラス及び前記ラベルの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する粉砕工程と、前記粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とする加熱溶解工程と、前記溶解物を成形する成形工程と、を含む工程を経てガラス製品を形成すること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明のラベル付ガラス製品の再活用方法では、ラベルとして、カルシウム成分を含む無機物質粉末を配合して成形した成型物を用いたものが用いられている。また、本発明では、粉砕工程において、回収工程において回収されたラベル付ガラス製品からガラス及びラベルの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する。そのため、本発明のラベル付ガラス製品の再活用方法において、ラベルは、ガラスと同様に粉砕され、ガラス及びラベルの粉砕物が混合された粉砕混合物の状態とされる。さらに、本発明においては、加熱溶解工程において粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とした後、成形工程において溶解物を成形してガラス製品を形成する。このように、本発明のラベル付ガラス製品の再活用方法では、ラベル付ガラス製品を構成するガラス製品だけでなく、ラベルまで再活用できる。従って、本発明によれば、従来技術において行われているガラスの再活用方法に比べて、環境負荷の低いラベル付ガラス製品の再活用方法を提供できる。
【0008】
(2)上述したラベル付ガラス製品の再活用方法は、前記加熱溶解工程において、前記粉砕混合物に含まれている前記ラベルに由来する前記カルシウム成分の量に応じて、珪砂、ソーダ灰、石灰の少なくともいずれかを前記ガラス原料として加えること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
かかる方法によれば、粉砕混合物に含まれているラベル由来のカルシウム成分の量に応じて珪砂や、ソーダ灰、石灰の量を調整し、ガラス製品の製造に最適な組成比を有するガラス原料を準備できる。
【0010】
ここで、上述したラベル付ガラス製品の再活用方法は、回収工程において回収されたラベル付ガラス製品からラベルを取り外し、粉砕工程においてガラス製品とラベルとを別々に粉砕してから両者の粉砕物を混合して粉砕混合物を形成することが可能である。しかしながら、ガラス製品からラベルを取り外す作業は、手間を要するものであるため、省略できれば工数の大幅削減に繋がる。
【0011】
(3)かかる知見に基づけば、上述したラベル付ガラス製品の再活用方法は、前記粉砕工程において、前記ガラス製品に対して前記ラベルが付着した状態のまま前記ラベル付ガラス製品を粉砕すること、を特徴とするものであると良い。
【0012】
かかる方法によれば、粉砕工程においてガラス製品とラベルとを別々に粉砕してから両者の粉砕物を混合する方法で粉砕混合物を形成する場合に比べ、粉砕工程において粉砕混合物を形成するための工数を大幅に削減できる。
【0013】
(4)上述したラベル付ガラス製品の再活用方法は、前記回収工程において回収された前記ラベル付ガラス製品の品質検査を行う品質検査工程と、前記品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できる判定された前記ラベル付ガラス製品を洗浄する洗浄工程と、をさらに含み、前記品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質への回復が不能であると判定された前記ラベル付ガラス製品が、前記粉砕工程において粉砕されること、を特徴とするものであると良い。
【0014】
かかる方法によれば、洗浄によって再利用可能な品質に回復できると判定されたラベル付ガラス製品については、洗浄工程において洗浄することにより、ラベル付ガラス製品を再活用できる。また、上述した方法によれば、洗浄により再利用可能な品質への回復が不能であると判定されたラベル付ガラス製品については、粉砕工程において粉砕して再活用することができる。そのため、上述した方法によれば、回収されたラベル付ガラス製品が洗浄によって再利用可能な品質に回復できる状態のものであるか否かにより、適した方法でラベル付ガラス製品を再利用できる。
【0015】
(5)上述したラベル付ガラス製品の再活用方法は、前記品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できる判定された前記ラベル付ガラス製品から前記ラベルを取り外し、前記ラベルと前記ガラス製品とに分離する分離工程と、前記分離工程において取り外された前記ラベルをリサイクルするラベルリサイクル工程と、をさらに含み、前記分離工程において前記ラベルが取り外された前記ガラス製品が、前記洗浄工程において洗浄されること、を特徴とするものであると良い。
【0016】
かかる方法によれば、品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できると判定されたラベル付ガラス製品について、分離工程において取り外されたラベルを、ラベルリサイクル工程においてリサイクルできる。また、分離工程においてラベルを取り外したガラス製品は、洗浄工程において洗浄することにより再利用できる。従って、上述した方法によれば、洗浄により再利用可能なガラス製品に加え、取り外したラベルについても資源として活用できる。
【0017】
(6)上述した課題を解決すべく提供される本発明の再活用システムは、ガラス製品に対してラベルを貼付したラベル付ガラス製品を再活用するための再活用システムであって、前記ラベルが、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものであり、回収された前記ラベル付ガラス製品を構成する前記ガラス製品及び前記ラベルを粉砕して、ガラス及び前記ラベルの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する粉砕処理を行う粉砕部と、前記粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とする加熱溶解処理を行う加熱溶解部と、前記溶解物を成形する成形処理を行う成形部と、を備えていること、を特徴とするものである。
【0018】
本発明の再活用システムは、カルシウム成分を含む無機物質粉末を配合して成形した成型物をラベルとして貼付したラベル付ガラス製品について、回収されたラベル付ガラス製品を構成するガラス製品及びラベルを粉砕部において粉砕し、ガラス及びラベルの粉砕物を含む粉砕混合物を形成できる。また、本発明の再活用システムは、加熱溶解部において、粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解して溶解物とすることができる。さらに、本発明の再活用システムは、加熱溶解部において形成された溶解物を、成形部において成形処理することにより、新たな成形物を得ることができる。このように、本発明の再活用システムは、ラベル付ガラス製品を構成するガラス製品だけでなく、ラベルまで再活用できる。従って、本発明の再活用システムによれば、従来技術において行われているガラスの再活用方法に比べて、環境負荷の低いラベル付ガラス製品の再活用方法を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ラベル付ガラス製品を構成するガラス製品だけでなく、ラベルまで再活用可能なラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システムを示した模式図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係るラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システムを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態に係るラベル付ガラス製品の再活用方法、及びこれを実現するための再活用システム10について説明する。
【0022】
本実施形態のラベル付ガラス製品の再利用方法及び再活用システム10は、ガラスびんなどのガラス製品Gに対してラベルLを付したラベル付ガラス製品Xを処理対象物とし、資源として再活用するものである。本実施形態において処理対象物となるラベル付ガラス製品Xは、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものをラベルLとして採用し、これを貼付などの方法によりガラス製品Gに付したものである。ラベルLを構成する無機物質粉末は、例えば炭酸カルシウム、クレー、シリカ、酸化チタン、タルク、カオリン、水酸化アルミニウムからなる群から選択される一種類以上のものからなるものであると良い。また、ラベルLを構成する熱可塑性樹脂は、例えばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、再生樹脂等とすることができる。前述の熱可塑性樹脂は、これらから選ばれた一種類を単独で用いてもよく、二種以上を混合したものであってもよい。また、ラベルLを構成する補助剤は、例えば、滑剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、着色用顔料、流動性改良材、分散剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の中から選ばれる一種以上のものとすると良い。
【0023】
≪再活用システム10について≫
続いて、
図1を参照しつつ、再活用システム10の構成について説明する。再活用システム10は、ラベル付ガラス製品Xの再利用方法を実現するためのシステムである。再活用システム10は、粉砕部20、加熱溶解部30、及び成形部40を備えている。
【0024】
粉砕部20は、回収されたラベル付ガラス製品Xを構成するガラス製品G及びラベルLを粉砕してガラス製品G及びラベルLの粉砕物を含む粉砕混合物を形成するための処理(粉砕処理)を行うものである。粉砕部20は、ガラス製品GにラベルLが付されたラベル付ガラス製品Xのままの状態で粉砕するものであっても、回収されたラベル付ガラス製品XからラベルLを取り外し、ガラス製品GとラベルLとに分離した状態において別々に粉砕した後、両者の粉砕物を含む粉砕混合物とするものであっても良い。
【0025】
加熱溶解部30は、粉砕部20において得られた粉砕混合物を、ガラス製品を製造するための原料(ガラス原料)の一部又は全部として含むものを加熱溶解して溶解物とする処理(加熱溶解処理)を行うものである。加熱溶解部30は、例えばシーメンス型の連続炉などの大規模なガラス溶解炉や、光学炉や手吹き炉などの小規模な溶解炉などによって構成すると良い。
【0026】
成形部40は、加熱溶解部30において粉砕混合物を含むガラス原料を溶解して得られた溶解物を溶解炉から取り出して、成形して徐冷することにより、例えばガラスびんなどの形態のガラス製品Gや、ガラス製品Gの原料として用いることが可能なカレットの形態とすることができる。
【0027】
≪ラベル付ガラス製品の再活用方法について≫
続いて、ラベル付ガラス製品の再活用方法について説明する。本実施形態のラベル付ガラス製品の再活用方法は、
図1に示すような流れで行われる。具体的には、ガラスびんなどの形態で製造されたガラス製品Gには、ガラス製品Gの製造メーカーや、ガラス製品Gに飲料や食品等を詰めて製品化する飲食料品メーカー等においてラベルLを付す作業(ラベリング)が行われる。これにより、ラベル付ガラス製品Xが形成される。ラベリングが行われる前後の適宜のタイミングで、飲食料品メーカーにおいて飲料や食品等をガラス製品Gに充填して封止(キャッピング)する作業が行われる。このようにして、ラベル付ガラス製品Xに飲食料品等を封入した商品Pは、卸売り業者や小売業者等の販売者を経るなどして、所定の流通経路で消費者の元に届く。商品Pを購入した消費者は、飲料や食品等の消費を終えると、ラベル付ガラス製品Xを廃棄する。廃棄されたラベル付ガラス製品Xは、例えば行政サービスにより行われている廃棄物収集や、産業廃棄物の回収業者による回収業務によって資源化センター等の施設において他の廃棄物と共に回収される。本実施形態のラベル付ガラス製品の再活用方法では、このようにして資源化センター等において回収された廃棄物に含まれているラベル付ガラス製品Xを、再活用システム10によって再活用できる状態にする。
【0028】
具体的には、廃棄物として回収されたラベル付ガラス製品Xは、キャップや異物等を取り除いた状態とされた後、粉砕部20において破砕する工程(破砕工程)が実施される。これにより、ラベル付ガラス製品Xは、ガラス製品G及びラベルLの粉砕物を含む粉砕混合物とされる。その後、粉砕部20において形勢された破砕混合物は、ガラス製品Gを製造するためのガラス原料の一部又は全部として、加熱溶解部30を構成する炉において加熱溶解処理される(加熱溶解工程)。
【0029】
ここで、加熱溶解部30においては、ラベル付ガラス製品Xから形成された粉砕混合物が、新たなガラス製品Gを形成するうえで最適な組成比で各成分を含むものであれば、他の成分を加えることなく加熱溶解すると良い。これにより、成分の全量が使用済みのラベル付ガラス製品X由来のものである、新たなガラス製品Gを得ることができる。また、ラベル付ガラス製品Xから形成された粉砕混合物に含まれる各種成分の組成比が、新たなガラス製品Gを形成するうえで最適なものでない場合には、不足している成分を粉砕混合物に対して追加すると良い。例えば、酸化ケイ素の重量を100としたときに、炭酸カルシウムが重量比で27、炭酸ナトリウムが重量比で28、硫酸ナトリウムが重量比で1.5、炭素(カーボン)が重量比で0.1となる調合比を標準的な調合比とし、製造するガラスの特性(例えば粘性等)に応じて各成分の調合比率を変動させることにより、原料の調合を行う。このようにして原料の調合を行う際に、ラベル付ガラス製品Xの破砕物に加えて、不足している成分を追加することにより、新たなガラス製品Gを形成するためのガラス原料の一部としてラベル付ガラス製品Xの粉砕物を活用できる。
【0030】
また、ラベルLについては、カルシウム成分を含む無機物質粉末を所定量(所定比)で含むものである。そのため、粉砕混合物に含まれているラベルLの量、及びラベルLに含まれているカルシウム成分の含有量(含有比)に基づいて、ラベルL由来のカルシウム成分の量を把握できる。従って、加熱溶解部30において粉砕混合物をガラス原料の一部又は全部とする場合には、ラベルLの再活用により得られるカルシウム成分を導出し、その量に応じて、珪砂、ソーダ灰、石灰の少なくともいずれかをガラス原料として加えることにより、新たなガラス製品Gを形成するためのガラス原料の組成比の調整を行うと良い。
【0031】
上述したようにして加熱溶解部30において得られた溶解物を取り出し、成形部40において成形して徐冷する工程(成形工程)を経ることにより、例えばガラスびんなどの形態のガラス製品Gを得ることができる。このように、本実施形態のラベル付ガラス製品の再活用方法、及び再活用システム10によれば、使用済みのラベル付ガラス製品Xを、新たなガラス製品Gとして再活用することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態では、ラベル付ガラス製品X以外の廃棄物も回収される資源化センター等の施設において回収されたラベル付ガラス製品Xを、ガラス製品Gを得るために再活用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、再活用システム10にラベル付ガラス製品Xを回収するための回収部50を組み込み、回収部50において回収されたラベル付ガラス製品Xについて、上記実施形態において例示したのと同様にして再活用するようにすると良い。これにより、例えばラベルL以外の樹脂製や紙製のラベルを付したガラス製品Gや、その他の異物が混入する可能性を抑制し、ラベル付ガラス製品Xの再活用をより一層スムーズに行えるようになる。また、ラベル付ガラス製品Xを回収するための回収部50を設けることにより、ラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)の製造、回収、及び再活用に至る一連の流れを管理しやすくなり、使用済みのラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)を、新たなラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)を製造するための原料として確保しやすくなる。
【0033】
[第二実施形態]
続いて、
図2を参照しつつ、第二実施形態に係るラベル付ガラス製品の再活用方法、及びこれを実現するための再活用システム100について説明する。なお、第二実施形態に係る再活用方法、及び再活用システム100において、上述した第一実施形態のものと共通する部分においては同一の符号を付すなどして、説明を省略することがある。
【0034】
≪再活用システム100について≫
図2に示すように、再活用システム100は、第二実施形態に係るラベル付ガラス製品Xの再利用方法を実現するためのシステムである。再活用システム100は、上述した再活用システム10と同様に、粉砕部20、加熱溶解部30、及び成形部40を備えている。これらに加えて、再活用システム100は、品質検査部110、分離部120、洗浄部130を備えている。
【0035】
品質検査部110は、回収されたラベル付ガラス製品Xの品質検査を行うものである。品質検査部110は、ラベル付ガラス製品Xをなすガラス製品Gが、洗浄により再使用(リユース)可能なものであるか否かの検査を行うものである。品質検査部110は、回収されたラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)におけるキズ、ヒビの有無等の検査項目に則って検査を行う。分離部120は、回収されたラベル付ガラス製品Xをなすガラス製品GからラベルLを分離する部分である。洗浄部130は、ラベル付ガラス製品Xをなすガラス製品Gを洗浄するためのものである。洗浄部130は、例えば洗びん機等を備えたものとされる。
【0036】
≪ラベル付ガラス製品の再活用方法について≫
続いて、本実施形態のラベル付ガラス製品の再活用方法について説明する。本実施形態の再活用方法は、上記実施形態のものと同様に、ラベル付ガラス製品Xを回収する回収工程、ラベル付ガラス製品Xを粉砕して粉砕混合物を形成する粉砕工程、砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解して溶解物とする加熱溶解工程、及び溶解物を成形する成形工程を含んでいる。本実施形態の再活用方法は、これらの工程に加えて、品質検査工程、分離工程、及び洗浄工程を含んだものとされている。
【0037】
品質検査工程は、回収工程において回収されたラベル付ガラス製品Xの品質検査を行う工程である。品質検査工程は、回収工程よりも後であって、粉砕工程よりも前の段階で行われる工程である。品質検査工程においては、回収されたラベル付ガラス製品Xの品質検査が、品質検査部110において行われる。これにより、ラベル付ガラス製品Xをなすガラス製品Gが、洗浄により再使用(リユース)可能なものと、キズやヒビを有する等して再使用に適さないものとに選別される。
【0038】
分離工程及び洗浄工程は、上述した品質検査工程において、洗浄により再使用(リユース)可能との検査結果が得られたガラス製品Gを再活用するために行われる工程である。分離工程は、上述した品質検査工程において、洗浄により再利用可能なものと判定されたラベル付ガラス製品XからラベルLを取り外し、ガラス製品GとラベルLとに分離する工程である。また、洗浄工程は、上述した品質検査工程において、洗浄により再利用可能なものと判定されたラベル付ガラス製品Xを洗浄する工程である。分離工程及び洗浄工程は、いずれの工程が先に行われても良いが、図示例では分離工程を行った後に洗浄工程を行うこととしている。
【0039】
また、本実施形態では、回収工程において回収されたラベル付ガラス製品Xのうち、品質検査工程において洗浄による再使用(リユース)に適さないとされたものが、破砕工程において破砕して、新たなガラス製品Gを作るために再利用(リサイクル)するための原料として用いられる。そのため、本実施形態の再活用方法は、第一実施形態において例示した再活用方法のようい回収されたラベル付ガラス製品Xの全数をガラス製品Gを作るために再利用(リサイクル)するのではなく、可能な限り洗浄による再使用(リユース)する点において相違する。本実施形態においては、品質検査工程で洗浄による再使用(リユース)に適さないとされたものについて、上記第一実施形態において例示したのと同様に、粉砕工程、加熱溶解工程、及び成形工程を経て、新たなガラス製品Gを作るために使用される。
【0040】
本実施形態において例示したような流れにより、ラベル付ガラス製品の再活用方法を実施する場合、回収工程、品質検査工程、分離工程、及び洗浄工程を、ガラスびんなどのガラス製品Gを利用して飲料や食品等を詰めて製品化する飲食料品メーカー等が行うようにしても良いが、これらの工程のうち、少なくともいずれか一つをガラス製品Gの製造元が行うようにすると良い。これにより、ラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)の製造、回収、及び再活用に至る一連の流れを管理しやすくなり、使用済みのラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)を、新たなラベル付ガラス製品X(ガラス製品G)を製造するための原料として確保しやすくなる。
【0041】
また、本実施形態において例示したラベル付ガラス製品の再活用方法は、分離工程において使用済みのラベル付ガラス製品Xから取り外されたラベルLをリサイクルする工程(ラベルリサイクル工程)を追加しても良い。また、かかる再活用方法を実現すべく、再活用システム100は、ラベルリサイクル工程を担うためのラベルリサイクル部140をさらに備えたものとすると良い。これにより、分離工程において取得された使用済みのラベルLを、ガラス製品Gをリサイクルする際の原料等として活用することができる。
【0042】
上述した第一実施形態、及び第二実施形態において例示したラベル付ガラス製品の再活用方法や、再活用システム10,100によれば、例えば以下の(1)~(6)に示すような効果が得られる。
【0043】
(1)上記第一実施形態、及び第二実施形態において例示したラベル付ガラス製品Xの再活用方法は、ラベルLとして、カルシウム成分を含む無機物質粉末を配合して成形した成型物を用いたものが用いられたラベル付ガラス製品Xを処理対象物としている。また、上記実施形態のラベル付ガラス製品Xの再活用方法では、粉砕工程において、回収工程において回収されたラベル付ガラス製品Xからガラス及びラベルLの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する。そのため、上記実施形態のラベル付ガラス製品Xの再活用方法において、ラベルLは、ガラスと同様に粉砕され、ガラス及びラベルLの粉砕物が混合された粉砕混合物の状態とされる。さらに、上記実施形態においては、加熱溶解工程において粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とした後、成形工程において溶解物を成形してガラス製品Gを形成する。このように、上記実施形態のラベル付ガラス製品Xの再活用方法では、ラベル付ガラス製品Xを構成するガラス製品Gだけでなく、ラベルLまで再活用できる。従って、上記実施形態によれば、従来技術において行われているガラスの再活用方法に比べて、環境負荷の低いラベル付ガラス製品Xの再活用方法を提供できる。
【0044】
(2)上述したラベル付ガラス製品Xの再活用方法は、加熱溶解工程において、粉砕混合物に含まれているラベルLに由来するカルシウム成分の量に応じて、珪砂、ソーダ灰、石灰の少なくともいずれかをガラス原料として加えること、を特徴とするものとされている。これにより、粉砕混合物に含まれているラベルL由来のカルシウム成分の量に応じて珪砂や、ソーダ灰、石灰の量を調整し、ガラス製品Gの製造に最適な組成比を有するガラス原料を準備できる。その結果、ラベル付ガラス製品Xの再活用しつつ、ガラスを構成するための組成物が最適な配合比で配合されたガラス製品Gを製造可能となる。
【0045】
(3)上述したラベル付ガラス製品Xの再活用方法は、粉砕工程において、ガラス製品Gに対してラベルLが付着した状態のままラベル付ガラス製品Xを粉砕すること、を特徴とするものである。これにより、粉砕工程においてガラス製品GとラベルLとを別々に粉砕してから両者の粉砕物を混合する方法で粉砕混合物を形成する場合に比べ、粉砕工程においてラベルLをガラス製品Gから取り外すための手間を解消し、その分だけラベル付ガラス製品Xの再活用に要する工数や費用を抑制できる。
【0046】
なお、上記実施形態のラベル付ガラス製品Xの再活用方法は、粉砕工程において、ラベルLをガラス製品Gから取り外し、ラベルLとガラス製品Gとを別々に粉砕した後、両者を混合して粉砕混合物とすることも可能である。これにより、ラベルLの粉砕物とガラス製品Gの粉砕物との混合比を最適化しやすくなる。
【0047】
(4)上記第二実施形態に係るラベル付ガラス製品Xの再活用方法は、回収工程において回収されたラベル付ガラス製品Xの品質検査を行う品質検査工程と、品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できる判定されたラベル付ガラス製品Xを洗浄する洗浄工程と、をさらに含み、品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質への回復が不能であると判定されたラベル付ガラス製品Xが、粉砕工程において粉砕されること、を特徴とするものである。かかる再活用方法によれば、洗浄によって再利用可能な品質に回復できると判定されたラベル付ガラス製品Xについては、洗浄工程において洗浄することにより、ラベル付ガラス製品Xを再活用できる。また、かかる再活用方法によれば、洗浄により再利用可能な品質への回復が不能であると判定されたラベル付ガラス製品Xについては、粉砕工程において粉砕して再活用することができる。そのため、第二実施形態に係るラベル付ガラス製品Xの再活用方法によれば、回収されたラベル付ガラス製品Xが洗浄によって再利用可能な品質に回復できる状態のものであるか否かに応じて、適した方法でラベル付ガラス製品Xを再利用できる。
【0048】
(5)上述したように、第二実施形態に係るラベル付ガラス製品Xの再活用方法は、品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できる判定されたラベル付ガラス製品XからラベルLを取り外し、ラベルLとガラス製品Gとに分離する分離工程と、分離工程において取り外されたラベルLをリサイクルするラベルLリサイクル工程と、をさらに含み、分離工程においてラベルLが取り外されたガラス製品Gが、洗浄工程において洗浄されること、を特徴とするものであると良い。かかる再活用方法によれば、品質検査工程において洗浄により再利用可能な品質に回復できると判定されたラベル付ガラス製品Xについて、分離工程において取り外されたラベルLを、ラベルLリサイクル工程においてリサイクルできる。また、分離工程においてラベルLを取り外したガラス製品Gは、洗浄工程において洗浄することにより再利用できる。従って、上述した方法によれば、洗浄により再利用可能なガラス製品Gに加え、取り外したラベルLについても資源として活用できる。
【0049】
(6)上記実施形態の再活用システム10,100は、ガラス製品Gに対してラベルLを貼付したラベル付ガラス製品Xを再活用するためのものであって、ラベルLが、カルシウム成分を含む無機物質粉末、熱可塑性樹脂、補助剤を所定の配合率で配合して成形した成型物を用いたものであり、回収されたラベル付ガラス製品Xを構成するガラス製品G及びラベルLを粉砕して、ガラス及びラベルLの粉砕物を含む粉砕混合物を形成する粉砕処理を行う粉砕部と、粉砕混合物を含むガラス原料を加熱溶解した溶解物とする加熱溶解処理を行う加熱溶解部と、溶解物を成形する成形処理を行う成形部と、を備えていること、を特徴とするものである。再活用システム10,100は、このような構成とされているため、ラベル付ガラス製品Xを構成するガラス製品Gだけでなく、ラベルLまで再活用できる。従って、上記実施形態の再活用システム10,100によれば、従来技術において行われているガラスの再活用方法に比べて、環境負荷の低いラベル付ガラス製品Xの再活用方法を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、例えばガラスびんなどのガラス製品全般について、リサイクルやリユースによる再活用を行うために好適に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 :再活用システム
20 :粉砕部
30 :加熱溶解部
40 :成形部
50 :回収部
100 :再活用システム
110 :品質検査部
120 :分離部
130 :洗浄部
140 :ラベルリサイクル部
G :ガラス製品
L :ラベル
P :商品
X :ラベル付ガラス製品