IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

特開2023-184161エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステム
<>
  • 特開-エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステム 図1
  • 特開-エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステム 図2
  • 特開-エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184161
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B1/18 K
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098144
(22)【出願日】2022-06-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門馬 直秀
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502JA73
3F502JA77
3F502MA03
(57)【要約】
【課題】乗場行先呼び応答後のかご呼び走行による並走を未然に防止する。
【解決手段】群管理制御部は、乗場行先呼び登録部により乗場行先呼びが登録された場合に、複数台のエレベータの乗りかごの現在位置、予測到着時間、登録済みの乗場行先呼びを含むエレベータ情報から各乗場行先呼びを割当てられる乗りかごを決定する割当て制御部と、乗場行先呼びの登録階と目的階とを確認し、複数台のエレベータの乗りかごが乗場行先呼び登録階に応答した後、目的階まで走行する間に隣接する乗りかごと並走が発生しないかを、エレベータ情報から予測するかご呼び並走予測部と、を有し、割当て制御部は、かご呼び並走予測部で並走すると予測された乗りかごがある場合は、当該乗りかごには乗場行先呼びを割当てず、隣接する乗りかごと並走しないと予測された乗りかごに割当てる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場で行先階を指定してエレベータの乗りかごを呼ぶことのできる乗場行先呼びの登録を受け付ける乗場行先呼び登録部と、
前記乗場行先呼びが登録された場合に、前記乗場行先呼びを複数台のエレベータに対する乗りかごの何れかに割当てて応答させる群管理制御を行う群管理制御部と、
を備え、
前記群管理制御部は、
前記乗場行先呼び登録部により乗場行先呼びが登録された場合に、前記複数台のエレベータの乗りかごの現在位置、予測到着時間、登録済みの前記乗場行先呼びを含むエレベータ情報から各乗場行先呼びを割当てられる前記乗りかごを決定する割当て制御部と、
前記乗場行先呼びの登録階と目的階とを確認し、前記複数台のエレベータの乗りかごが乗場行先呼び登録階に応答した後、目的階まで走行する間に隣接する乗りかごと並走が発生しないかを、前記エレベータ情報から予測するかご呼び並走予測部と、
を有し、
前記割当て制御部は、前記かご呼び並走予測部で並走すると予測された乗りかごがある場合は、当該乗りかごには乗場行先呼びを割当てず、隣接する乗りかごと並走しないと予測された乗りかごに割当てる、
ことを特徴とするエレベータ群管理制御装置。
【請求項2】
前記割当て制御部は、乗場行先呼び応答後のかご呼び走行で隣接する乗りかごと並走する場合であっても、ショートランで高速走行しない場合においては、隣接する乗りかごに対しても割り当て可能とする、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ群管理制御装置。
【請求項3】
前記かご呼び並走予測部は、前記乗場行先呼び登録部により乗場行先呼びが登録された場合に加え、乗場呼びがあった場合にこの階に行くであろうという予測である派生かご呼びの情報を基に並走を予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ群管理制御装置。
【請求項4】
前記かご呼び並走予測部は、予測する並走パターンとして、止まっている一の乗りかごの傍を他の乗りかごが高速で通り過ぎる第1のパターン、二つの乗りかごが同一方向に並走する第2のパターン、一の乗りかごと他の乗りかごとがすれ違う第3のパターン、の少なくとも何れか一つを予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ群管理制御装置。
【請求項5】
複数の昇降路に昇降動可能にそれぞれ1台以上配置された乗りかごを有するエレベータと、
前記乗りかごに対する速度制御及びドア開閉制御を行なうエレベータ制御装置と、
請求項1ないし4の何れか一項に記載のエレベータ群管理制御装置と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレベータは、建物の高層化に伴って高速化する一方で、建物内スペース有効活用の要求により昇降路スペースは狭くなっている。そのため、このような狭い昇降路内を乗りかごが高速度で移動すると、乗りかご周辺の空気の流れも高速になるため、エレベータが風切音という大きな風音(騒音)の発生源となる。
【0003】
特に、複数台が並設された昇降路を複数台の乗りかごが同一方向に高速で並走した場合は、著しい風音が発生する。そのため、複数の乗りかごを有する群管理制御エレベータにおいては、上記の風音が発生することを防止するため、複数台が並設された昇降路を複数台の乗りかごが並走しそうなケースにおいて、一方の乗りかごを戸開延長して出発間隔を調整したり、乗場呼びを隣接していない乗りかごに割当てたりすることなどにより、並走を防止する対策を実施することがある。
【0004】
特許文献1には、居室の騒音低減のため、騒音を予測して、騒音が小さい号機への割当て、居室から遠い号機への割当て、速度制御する技術が開示されている。特許文献2には、同一タイミングで同一方向に走行する乗りかごを検出した場合、一方の加速度を上げ下げして、乗りかご間に距離を作る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-286652号公報
【特許文献2】特開2002-326769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術によれば、乗場呼びに応答した後のかご呼び走行による並走は考慮されていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、乗場行先呼び応答後のかご呼び走行による並走を未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、乗場で行先階を指定してエレベータの乗りかごを呼ぶことのできる乗場行先呼びの登録を受け付ける乗場行先呼び登録部と、前記乗場行先呼びが登録された場合に、前記乗場行先呼びを複数台のエレベータに対する乗りかごの何れかに割当てて応答させる群管理制御を行う群管理制御部と、を備える。前記群管理制御部は、前記乗場行先呼び登録部により乗場行先呼びが登録された場合に、前記複数台のエレベータの乗りかごの現在位置、予測到着時間、登録済みの前記乗場行先呼びを含むエレベータ情報から各乗場行先呼びを割当てられる前記乗りかごを決定する割当て制御部と、前記乗場行先呼びの登録階と目的階とを確認し、前記複数台のエレベータの乗りかごが乗場行先呼び登録階に応答した後、目的階まで走行する間に隣接する乗りかごと並走が発生しないかを、前記エレベータ情報から予測するかご呼び並走予測部と、を有する。前記割当て制御部は、前記かご呼び並走予測部で並走すると予測された乗りかごがある場合は、当該乗りかごには乗場行先呼びを割当てず、隣接する乗りかごと並走しないと予測された乗りかごに割当てる、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るエレベータ群管理制御システムの構成図。
図2】エレベータ群管理制御の流れを示すフローチャート。
図3】エレベータ群管理制御の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、エレベータ群管理制御装置およびエレベータシステムの実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るエレベータ群管理制御システムの構成図である。
【0012】
本実施形態に係るエレベータシステム100は、4台のエレベータを備えている。エレベータシステム100が設置されている建物は、20階建てであるものとする。
【0013】
図1に示すように、エレベータシステム100は、昇降路SH1には2台の乗りかご1A(A号機)及び乗りかご1B(B号機)を昇降動可能に配置し、昇降路SH2にも2台の乗りかご1C(C号機)及び乗りかご1D(D号機)を昇降動可能に配置する。これら4台の乗りかご1A,1B,1C,1Dの速度制御及びドア開閉制御等は、エレベータ制御装置2A,2B,2C,2Dにより行われるようになっている。
【0014】
エレベータシステム100の群管理制御は、エレベータ群管理制御装置である群管理制御装置3により行われる。群管理制御装置3は、乗場行先呼び登録部6と、群管理制御部4と、を備える。群管理制御部4は、風音対策制御部5を有する。
【0015】
群管理制御部4は、ハードウェアで実現してもよいし、ソフトウェアで実現してもよく、また、ハードウェアとソフトウェアを両方用いて実現してもよい。
【0016】
乗場行先呼び登録部6は、乗場で行先階を指定して乗りかご1A,1B,1C,1Dを呼ぶことのできる乗場行先呼びの登録を受け付ける。図1に示すように、エレベータシステム100が設置されている建物の1F~20Fの各階床の乗場には、乗場行先呼び釦HB1,HB2,・・・,HB20が設けられている。乗場行先呼び釦HB1,HB2,・・・,HB20は、乗場に行先階をすべて表示して行先階の指定を受け付ける。
【0017】
群管理制御部4は、乗場行先呼び釦HB1,HB2,・・・,HB20、及びエレベータ制御装置2A,2B,2C,2Dとの間でデータ送受信を行い、ある階床の乗場行先呼びに対して4台のうちの最適のエレベータ号機を割り当てるものである。すなわち、群管理制御部4は、乗場行先呼びが登録された場合に、乗場行先呼びを乗りかご1A,1B,1C,1Dの何れかに割当てて応答させる群管理制御を行う。
【0018】
つまり、乗場行先呼び釦HB1,HB2,・・・,HB20のうちのいずれかで行先階が押されると、群管理制御部4は、その乗場呼び信号を受信する。群管理制御部4は、乗りかご1A,1B,1C,1Dの現在位置、予測到着時間、登録済みの乗場行先呼び等のエレベータ情報をエレベータ制御装置2A,2B,2C,2Dから入力する。
【0019】
そして、群管理制御部4は、エレベータ情報に基づき、風音対策制御部5で乗場行先呼び応答後のかご呼び走行による隣接号機との並走を予測して、その予測結果に基づき最も評価値の高いエレベータ号機を算出して、これを最適号機として選択し、応答指令をこの最適号機に係るエレベータ制御装置2A,2B,2C,2Dの何れかに送信する。
【0020】
風音対策制御部5は、割当て制御部51と、かご呼び並走予測部52と、を備える。
【0021】
割当て制御部51は、乗場行先呼び登録部6により乗場行先呼びが登録された場合に、乗りかご1A,1B,1C,1Dの現在位置、予測到着時間、登録済みの乗場行先呼び等のエレベータ情報から各乗場行先呼びを割当てられる乗りかご(割当て号機)を決定する。
【0022】
かご呼び並走予測部52は、乗場行先呼びの登録階と目的階とを確認し、各乗りかご1A,1B,1C,1Dが乗場行先呼び登録階に応答した後、目的階まで走行する間に隣接する乗りかごと並走が発生しないかを、エレベータ情報から予測する。
【0023】
かご呼び並走予測部52は、予測する並走パターンとして、止まっている一の乗りかごの傍を他の乗りかごが高速で通り過ぎる第1のパターン、二つの乗りかごが同一方向に並走する第2のパターン、一の乗りかごと他の乗りかごとがすれ違う第3のパターン、の少なくとも何れか一つを予測する。
【0024】
加えて、割当て制御部51は、かご呼び並走予測部52で並走すると予測された乗りかごがある場合は、当該乗りかごには乗場行先呼びを割当てず、隣接する乗りかごと並走しないと予測された乗りかごに割当てるようにする。
【0025】
ここで、図2はエレベータ群管理制御の流れを示すフローチャートである。
【0026】
エレベータシステム100が稼働を開始すると、群管理制御部4は、乗場行先呼び登録部6から乗場行先呼び釦HB1,HB2,・・・,HB20のうちのいずれかで行先階が押されることに起因する乗場呼び信号を受信すると(ステップS1のYes)、乗りかご1A,1B,1C,1Dの現在位置、予測到着時間、登録済みの乗場行先呼び等のエレベータ情報をエレベータ制御装置2A,2B,2C,2Dから入力する(ステップS2)。
【0027】
次に、群管理制御部4は、エレベータ情報に基づき、風音対策制御部5で乗場行先呼び応答後のかご呼び走行による隣接号機との並走を予測して、その予測結果に基づき最も評価値の高いエレベータ号機を決定する(ステップS3)。
【0028】
次に、群管理制御部4は、応答指令をこの最適号機に係るエレベータ制御装置2A,2B,2C,2Dの何れかに送信する(ステップS4)。
【0029】
ここで、図3はエレベータ群管理制御の一例を示す図である。図3(a)は本実施形態のエレベータ群管理制御の一例を示し、図3(b)は従来のエレベータ群管理制御の一例を示すものである。
【0030】
図3(b)に示すように、従来においては、A号機が3階において7階を目的階として指定されていて3階に向かってかご呼び走行している場合において、2階(登録階)において6階を目的階として指定された場合、乗場行先呼び応答(2階)まではA号機と並走しないため近くのB号機が割り当てられるが、B号機は目的階(6階)へのかご呼び応答時においてA号機と並走することになる。
【0031】
一方、図3(a)に示すように、本実施形態においては、A号機が3階において7階を目的階として指定されていて3階に向かってかご呼び走行している場合において、2階(登録階)において6階を目的階として指定された場合、群管理制御部4(風音対策制御部5)は、B号機は目的階(6階)へのかご呼び応答時においてA号機と並走すると予想し、並走しないD号機に割り当てる。
【0032】
このように本実施形態によれば、乗場行先呼び応答後のかご呼び走行による並走を未然に防止することで、風音による騒音発生を回避でき、結果として利用者の不快感を低減できる。
【0033】
なお、群管理制御部4(割当て制御部51)は、乗場行先呼び応答後のかご呼び走行で隣接号機と並走する場合であっても、ショートランで高速走行しない場合においては、隣接号機に対しても割り当て可能とし、割当て抑制の度合いを弱めるようにしてもよい。群管理制御部4(割当て制御部51)は、例えば、高速走行しないショートランで移動可能な階数を閾値として予め設けておき、閾値を超えない場合は隣接号機に割り当てる。
【0034】
また、群管理制御部4(かご呼び並走予測部52)は、乗場行先呼び登録部6から乗場行先呼び釦HB1,HB2,・・・,HB20のうちのいずれかで行先階が押されることに起因する乗場行先呼びではない場合であっても、乗場呼びに対する派生かご呼びを予測するようにすることで、予測される派生かご呼びの情報を基に並走を予測し、予測結果により割当て制御を行うようにしてもよい。派生かご呼びは、乗場呼びがあった場合にこの階に行くであろうという予測をAIを用いて予測する技術である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1A,1B,1C,1D 乗りかご
2A,2B,2C,2D エレベータ制御装置
3 エレベータ群管理制御装置
4 群管理制御部
6 乗場行先呼び登録部
51 割当て制御部
52 かご呼び並走予測部
100 エレベータシステム
SH1、SH2 昇降路
図1
図2
図3