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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184166
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
F04B49/10 331K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098152
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成澤 伸之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 憲
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA03
3H145AA13
3H145AA26
3H145AA42
3H145BA42
3H145CA04
3H145CA21
3H145CA25
3H145CA29
3H145DA02
3H145DA47
3H145EA13
3H145EA20
3H145EA38
3H145EA50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧縮機を駆動する電動機の電流値の変化によって圧縮機の異常と電源系統の異常とを判別できる圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機本体と、電動機と、電動機の電流値を検出する電流センサと、電動機の駆動を制御する制御装置とを備え、制御装置は、電流センサを介して、電動機の始動から第1時間経過時の電動機の電流値Iと、電動機の始動から第1時間より長い第2時間経過時の電動機の電流値Iを演算するとともに、電動機の始動電流値よりも小さく電動機の定格電流値よりも大きい第1閾値I1limitと、第1閾値I1limitよりも小さく電動機の定格電流値よりも大きい第2閾値I2limitに対して、次式(1)が成立する場合と次式(2)が成立する場合とで異なる態様の報知をする。I<I1limitかつI>I2limit(1)、I>I1limitかつI>I2limit(2)
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体を駆動する電動機と、
前記電動機を制御する制御装置と、
前記電動機の電流値を検出する電流センサとを備え、
前記制御装置は、前記電流センサを介して、前記電動機の始動から第1時間経過時の前記電動機の電流値Iと、前記電動機の始動から前記第1時間より長い第2時間経過時の前記電動機の電流値Iを演算するとともに、前記電動機の始動時の電流値よりも小さく前記電動機の定格電流値よりも大きい第1閾値I1limitと、前記第1閾値I1limitよりも小さく前記電動機の定格電流値よりも大きい第2閾値I2limitに対して、次式(1)が成立する場合と次式(2)が成立する場合とで異なる態様で報知することを特徴とする圧縮機。
<I1limitかつI>I2limit (1)
>I1limitかつI>I2limit (2)
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮機であって、
前記制御装置は、前記式(1)が成立する場合に、電源系統に異常があることを報知することを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮機であって、
前記制御装置は、前記式(2)が成立する場合に、前記圧縮機に異常があることを報知することを特徴とする圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の圧縮機であって、
前記制御装置の指令により前記圧縮機本体の始動負荷の軽減を行うアンローダ装置をさらに有し、
前記制御装置は、前記圧縮機本体の始動時に前記アンローダ装置を作動させない場合に前記式(2)が成立し、かつ、前記圧縮機本体の始動時に前記アンローダ装置を作動させた場合に前記式(2)が不成立の場合、前記圧縮機の吐出弁に異常があることを報知することを特徴とする圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の圧縮機であって、
前記制御装置は、前記電動機の始動回数に対して、前記式(1)または前記式(2)の成立する回数の占める割合が所定値を超えた場合に報知することを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
気体を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体を駆動する電動機と、
前記電動機を制御する制御装置と、
前記電動機の電流値を計測する電流センサとを備え、
前記制御装置は、前記電流センサを介して、前記電動機の始動から所定時間経過時の前記電動機の電流値を前記電動機の始動ごとに記録し、前記電動機の始動回数の増加に従って、前記電動機の始動から所定時間経過時の前記電動機の電流値が大きくなった場合に報知することを特徴とする圧縮機。
【請求項7】
気体を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体を駆動する電動機と、
前記電動機を制御する制御装置と、
前記電動機の電流値を計測する電流センサとを備え、
前記制御装置は、前記電流センサを介して、前記電動機の始動から所定時間経過時の前記電動機の電流値Iを計測するとともに、指定時間内に次式(3)で表されるN回以上前記電動機を始動させた場合に報知することを特徴とする圧縮機。
N∝1/I (3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気等の気体を吸込み、圧縮機本体によって気体を圧縮し、高圧気体を吐出する圧縮機は広く世の中に普及し、特に空気の圧縮機は、工作機やプレス機、エアーブロー等のエア―源として工場ラインや作業現場で多く使用される。
【0003】
この圧縮機を駆動する電動機の電流値を検出し、その変化によって圧縮機の異常を診断する圧縮機が知られている。例えば、特許文献1には、圧縮機の起動時に急上昇した電流(始動電流)が略無負荷電流(電動機の定格電流)に低下するまでの降下時間を測定し、測定した降下時間が規定時間範囲以上の場合に圧縮機の異常と判断して表示部に表示する圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-205140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧縮機自体に異常がなくても、電源系統の異常で電圧降下が生じ始動トルクが低下して、始動電流が略無負荷電流に低下するまでの降下時間が規定時間範囲以上となる場合がある。特許文献1の圧縮機では、このように電源系統の異常で始動電流が略無負荷電流に低下するまでの降下時間が規定時間範囲以上となっても、圧縮機に異常がなく電源系統に異常があると判定できず、圧縮機に異常があるとして判断してしまう。
【0006】
本発明の目的は、圧縮機を駆動する電動機の電流値の変化によって圧縮機の異常と電源系統の異常とを判別できる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、気体を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体を駆動する電動機と、前記電動機の電流値を検出する電流センサと、前記電動機を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記電流センサを介して、前記電動機の始動から第1時間経過時の前記電動機の電流値Iと、前記電動機の始動から前記第1時間より長い第2時間経過時の前記電動機の電流値Iを演算するとともに、前記電動機の始動時の電流値よりも小さく前記電動機の定格電流値よりも大きい第1閾値I1limitと、前記第1閾値I1limitよりも小さく前記電動機の定格電流値よりも大きい第2閾値I2limitに対して、次式(1)が成立する場合と次式(2)が成立する場合とで異なる態様で報知する。
<I1limitかつI>I2limit (1)
>I1limitかつI>I2limit (2)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮機を駆動する電動機の始動から第1時間経過時の前記電動機の電流値Iと、前記電動機の始動から前記第1時間より長い第2時間経過時の前記電動機の電流値Iの各々を閾値I1limit,I2limitと比較することによって圧縮機の異常と電源系統の異常とを判別できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機において前面パネルの一部を透視させた前面図である。
図2】アンロード状態の圧縮機本体の一部断面図である。
図3】ロード状態の圧縮機本体の一部断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の制御回路図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る電動機において、始動時間と、正常時と異常時の始動電流との関係を示すグラフである。
図6】本発明の第2実施形態に係る電動機において、始動時間と異常時の始動電流との関係を示すグラフである。
図7】本発明の第4実施形態に係る電動機の始動電流と始動回数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第5の実施形態に係る圧縮機の構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧縮機10について前面パネルの一部を透視させた前面図である。本実施形態に係る圧縮機10は、例えば、ピストンを往復動させることにより、空気を圧縮する往復動式の空気圧縮機である。
【0012】
図1に示すように圧縮機10には、空気を吸込み圧縮する圧縮機本体11と、圧縮機本体11を駆動する電動機12と、電動機12の起動・停止と過負荷保護を行う電磁開閉器13と、圧縮機10を制御する制御装置14と、圧縮空気を貯蔵するタンク15と、制御装置14の指令により圧縮機本体11の始動負荷の軽減を行うアンローダ装置16と、これらの機器を収容する筐体17と、タンク15内に貯留された圧縮空気を圧縮機10の外に吐出させる配管を開閉する止め弁18とが設けられている。
【0013】
圧縮機本体11は、ピストンを往復動させて、シリンダ11a内に空気を吸込んで圧縮し、圧縮空気をタンク15に吐出する装置である。圧縮機本体11にはシリンダ11aとシリンダヘッド11b(図2,3参照)が設けられている。
【0014】
電動機12は、例えば、インダクタンスモータで、電磁開閉器13を介し電源ACに接続する(図4参照)。電動機12が駆動することにより、電動機12の出力軸に固定されたプーリがタイミングベルト12aを介して、圧縮機本体11のクランクシャフトに固定されたプーリ11cを回転させ、ピストンを往復動させる。
【0015】
電動機12の起動・停止と過負荷保護を行う電磁開閉器13と、圧縮機10を制御する制御装置14の詳細については後述する。
【0016】
タンク15は、圧縮空気を貯留させる装置で、圧縮機本体11から吐出された圧縮空気の脈動を平準化させて顧客の機器に圧縮空気を提供する。タンク15には後述する圧力センサ15a(図4参照)が設けられている。また、タンク15の下部には、タンク15内に溜まった液体を外部へ排出するドレン排出装置15bが設けられている。
【0017】
アンローダ装置16は、圧縮機本体11を無負荷状態(アンロード状態)にするための装置で、三方電磁弁16aと、後述するアンローダ配管16bとアンローダピストン16c(図2,3参照)とを備える。
【0018】
三方電磁弁16aは、制御装置14の指令によって、アンローダ配管16bと連通する箇所を、タンク15と外気とのいずれか一方に切り替える電磁弁である。
【0019】
筐体17は、圧縮機10を六方から覆う複数の略板状の部材で、ベース17a、前面パネル17b、左側面パネル17c、右側面パネル17d、後面パネル17e、及び上面パネル17fを有する。
【0020】
ベース17aの上には、防振ゴムを介し架台17gが固定されている。架台17gには電動機12がボルトにより固定されるとともに取付台17hが溶接されている。そして、取付台17hの上には圧縮機本体11がボルトにより固定されるとともに取付台17hの左にはタンク15がボルトにより固定されている。
【0021】
また、前面パネル17bには、制御装置14の運転・停止スイッチ14bとディスプレイ14cが取り付けられ、左側面パネル17cには止め弁18が取り付けられている。
【0022】
図2はアンロード状態の圧縮機本体11の一部断面図であり、図3はロード状態の圧縮機本体11の一部断面図である。
【0023】
圧縮機本体11は、ピストンが往復動する円筒状のシリンダ11aと、シリンダ11aの先端に取り付けられ空気の吸い込みと圧縮空気の吐出を行うシリンダヘッド11bを備える。
【0024】
シリンダヘッド11bには、フィルターを介して空気を取り入れる空気取入口11baと、圧縮空気を吐き出す空気吐出口11bbが設けられ、吸込弁11bcと吐出弁11bdとアンローダピストン16cとが取り付けられている。
【0025】
吸込弁11bcは、空気取入口11baとシリンダ11aの開口との間に設けられた弁で、ピストンの下降中にシリンダ11aの内圧が空気取入口11baの空気圧より低下するとその圧力差で弁が開き、空気をシリンダの内部に取り込む。
【0026】
吐出弁11bdは、空気吐出口11bbとシリンダ11aの開口との間に設けられた弁で、ピストンの上昇中にシリンダ11aの内圧が空気吐出口11bbの空気圧より上昇するとその圧力差で弁が開き、圧縮空気を空気吐出口11bb側に吐き出す。
【0027】
アンローダピストン16cは、図2に示す閉じた吸込弁11bcを、図3に示すように強制的に開き、圧縮機本体11をアンロード状態にする部品で、後述する突出部16caの先端が吸込弁11bcに接するようにシリンダヘッド11bに固定されている。アンローダピストン16cには、アンローダ配管16bを接続するための配管接続口と、配管接続口から流入した圧縮空気により突出して吸込弁11bcを開口させる突出部16caが設けられている。
【0028】
図4は、本実施形態に係る圧縮機10の制御回路図である。図4に示すように、圧縮機10の制御回路には、タンク15内の圧力を測定する圧力センサ15aと、アンローダ配管16bと連通する箇所を切り替える電磁弁である三方電磁弁16aと、電源ACと電動機12とを電気的に接続する回路を開閉する電磁開閉器13と、三方電磁弁16aと電磁開閉器13等を制御する制御装置14とが設けられている。
【0029】
圧力センサ15aは制御装置14と電気的に接続し、圧力センサ15aにより測定されたタンク15内の圧力値は制御装置14に伝送される。三方電磁弁16aは、電気的に接続する制御装置14の指令によって、アンローダ配管16bと連通する箇所を、タンク15と大気とに切り替える。
【0030】
電磁開閉器13は、電磁石の動作によって回路を開閉するとともに過負荷により回路を遮断する装置で、接点13aと電流センサ13bとサーマルリレー13cとを有し、制御装置14と電気的に接続している。
【0031】
接点13aは、電源ACと電動機12とを電気的に接続する回路を開閉するための接触部分である。本実施形態の接点13aはA接点で、制御装置14の指令により閉じられ電動機12を始動させる。
【0032】
電流センサ13bは、電動機12の運転時に流れる電流を計測する装置である。電流センサ13bの測定値は制御装置14に伝送される。なお、電流センサ13bにより測定する交流電流の位相数は任意である。例えば3相電流の3相全てを測定しても良く、1相だけを選択して測定してもよい。一般的には単相より2相、2相より3相の電流を測定した方が診断精度の向上が期待できる。しかし、位相数を多くしただけ、電流センサ13bが増えてコストが上昇するだけでなく、診断プログラムが複雑化する。
【0033】
サーマルリレー13cは、電動機12を過負荷から保護するために、電流によって生ずる熱により接点の開閉を行うリレーである。電動機12に過大な電流が流れた場合、その焼損などを防止するために接点は開放され回路を切断する(サーマルトリップ)。
【0034】
制御装置14は上述のように三方電磁弁16aや電磁開閉器13等を制御する装置で、制御基板14aと電子回路14dと運転・停止スイッチ14bとディスプレイ14cとを有する。
【0035】
制御基板14aはプリント基板で、運転・停止スイッチ14bとディスプレイ14cと電子回路14dが実装されている。運転・停止スイッチ14bは、停止中の電動機12の運転開始、または、運転中の電動機12の停止をするためのスイッチである。ディスプレイ14cは、文字や画像を表示する。ディスプレイ14cは設定圧力等を表示させたり、電源系統に異常があることや圧縮機本体に異常があること等を表示させたりすることが好ましい。
【0036】
電子回路14dは、電気的に接続する装置を制御する部品で、例えば、IC(マイコンやFPGA等)や電子部品(抵抗やコンデンサ、発振回路等)や電力素子(トランジスタやリレー等)を備える。図4に示すように、電子回路14dには、圧力センサ15aと、三方電磁弁16aと電磁開閉器13と、電磁開閉器13を介して電動機12と電源ACとが電気的に接続されている。
【0037】
次に、制御装置14の制御内容について説明する。
【0038】
まず、制御装置14は、停止中の圧縮機10において、運転・停止スイッチ14bの運転ボタンの操作を検知すると、電動機12を始動させるため、接点13aを接触させるように電磁開閉器13を制御する。
【0039】
電動機12の始動により圧縮機本体11が運転しタンク15内の圧力が上昇していく。制御装置14は、圧縮機10の運転時に圧力センサ15aで検出されたタンク15の圧力値が、予め任意に設定された上限値(停止圧力Poff)を超えたことを検知すると、電磁開閉器13または三方電磁弁16aのいずれかを制御する。このとき、制御装置14が電磁開閉器13を制御する方式は断続運転制御方式と呼ばれ、制御装置14が三方電磁弁16aを制御する方式は連続運転制御方式と呼ばれる。
【0040】
(断続運転制御方式)
制御装置14は、接点13aを離すように電磁開閉器13を制御する。これにより、電動機12への給電が停止され、電動機12は停止し、圧縮機本体11の作動が停止する。
【0041】
圧縮機本体11の停止後、止め弁18に接続された顧客の機器の作動によりタンク15内の圧縮空気が消費される。
【0042】
制御装置14は、電動機12の停止後に圧力センサ15aで検出されたタンク15の圧力値が、下限値(復帰圧力Pon)を下回ったことを検知すると、接点13aを接触させるように電磁開閉器13を制御する。これにより、電動機12は再度始動し、圧縮機本体11が運転を再開する。
【0043】
(連続運転制御方式)
制御装置14は、アンローダ配管16bとタンク15とを連通させるように三方電磁弁16aを制御する。これにより、アンローダ配管16bにタンク15の圧縮空気が流入する。アンローダ配管16bに流入された圧縮空気は、アンローダ配管16bに接続するアンローダピストン16cの突出部16caを押圧し突出させる。突出した突出部16caは吸込弁11bcを強制的に開口させシリンダ11a内を大気と連通させ、シリンダ11a内の空気が空気吐出口11bbからタンク15へ吐出されず、圧縮機本体11のタンク15への圧縮空気の供給が停止する。したがって、圧縮機本体11は、電動機12を停止させることなく、タンク15への圧縮空気の供給を停止する(アンロード運転)。
【0044】
圧縮機本体11のタンク15への圧縮空気の供給の停止後、止め弁18に接続された顧客の機器の作動により空気が消費される。
【0045】
制御装置14は、圧縮機本体11のタンク15への圧縮空気の供給の停止後に圧力センサ15aで検出されたタンク15の圧力値が、復帰圧力Ponを下回ったことを検知すると、アンローダ配管16bを大気と連通させるように三方電磁弁16aを制御する。
【0046】
これにより、アンローダ配管16b内は大気圧となり、アンローダピストン16cの突出部16caは突出しなくなり、吸込弁11bcは強制的に開口されなくなる。そのため、圧縮機本体11のタンク15への圧縮空気の供給が再開する。
【0047】
この連続運転制御方式は、電動機12の始動が繰り返され、電動機12の負荷が大きくなってしまう場合、例えば、顧客の機器の消費空気量に対して圧縮機本体11の吐出する空気量が少ない場合やタンク15の容積が小さい場合に、電動機12の始動の繰り返しを抑制する目的で用いられる。
【0048】
なお、本実施形態の圧縮機10は、断続運転制御方式と連続運転制御方式の各々を用いることができる。また、本実施形態の圧縮機10は、制御装置14により始動サイクルに応じて断続運転制御方式と連続運転制御方式とを自動的に切り替えられることが好ましい。
【0049】
そして、制御装置14は、運転中の圧縮機10において、運転・停止スイッチ14bの停止ボタンの操作を検知すると、電動機12を停止させるため、接点13aを離すように電磁開閉器13を制御する。
【0050】
次に、本実施形態の圧縮機10の効果について説明する。
【0051】
図5は、本実施形態に係る電動機12において、始動時間tsと、正常時と異常時の始動電流Isとの関係を示すグラフである。なお、横軸の経過時間tは電動機12の始動からの経過時間を、縦軸の電流Iは電流センサ13bによって計測された電動機12に流れる電流の実効値を示す。また、始動時間tsは電動機12を始動させてから電動機12が定格電流Irになるまでの経過時間であり、始動電流Isは始動時間tsにおいて電動機12に流れる電流の実効値である。また、始動電流IsNORは正常時、始動電流IsABN1,IsABN2は異常時を示す。
【0052】
圧縮機10は往復動式圧縮機であるため、圧縮機本体11のピストンが一往復する間の負荷トルクは大きく変動する。これに対応するため、圧縮機本体11のクランクシャフトあるいは電動機12の出力軸にフライホイールを設けて慣性モーメントを大きくし、負荷トルクの変動に起因するクランクシャフトと出力軸の回転速度のむらを平滑化させている。
【0053】
しかし、慣性モーメントの増加により電動機12の始動時間tsは長くなり、(電動機12の定格電流Irより大きい)始動電流Isが電動機12に長時間流れ、電動機12に熱が蓄積される。そのため、電動機12の始動回数が増えるたびに蓄熱されサーマルトリップが発生しやすくなる。
【0054】
サーマルトリップがひとたび発生すると圧縮空気の供給が強制的に停止されてしまうため、ユーザの操業状態に重大な影響を及ぼす。そのため、本実施形態の圧縮機10は、始動時間tsと始動電流Isによりサーマルトリップの発生の予兆を制御装置14で判定させ報知する。
【0055】
図5の始動電流IsNORの曲線は、電動機12が正常の場合の曲線の一例である。ここで、制御装置14は、電流センサ13bの検出値に基づいて、電動機12の始動から所定の時間(第1時間t)経過時の電流値Iと、電動機12の始動から第1時間tより長い第2時間t経過時の電動機12の電流値Iを演算し記録する。
【0056】
なお、第1時間tは始動の直後(たとえば0.3秒)で、第2時間tは正常時に電動機12が定格回転速度に到達するまでに時間(正常時始動時間tsNOR)に対し余裕をもった時間(たとえば3秒)であることが好ましい。
【0057】
図5に示すように、正常な電動機12では、第1時間t経過時の電流値I1NORは電動機12の始動開始時の電流値Isに近い値となり、第2時間t経過時の電流値I2NORは電動機12の定格電流値Iとほぼ同じ値となる。
【0058】
このI1NOR,I2NORを正常時の電動機12の正常電流値とするとともに、圧縮機10の個体差などのばらつきを考慮した閾値として、始動電流Iより小さく定格電流Irよりも大きい第1閾値I1limit、第1閾値I1limitより小さく定格電流Iより大きい第2閾値I2limitを規定する。
【0059】
次に、圧縮機10に電気を供給する電源系統に異常があると判断する場合について説明する。図5の始動電流IsABN1の曲線は、電動機12の電源系統に異常がある場合の曲線の一例である。
【0060】
電源系統の異常は、例えば、電源トランスの容量不足、配線長の過不足、電源ACを共有する他の機器と始動タイミングの偶然の一致が考えられ、この場合には電動機12の供給電圧は低下する。
【0061】
電動機12の始動電流Iは電圧に比例するため、図5に示すように、電源系統に異常がある場合の始動電流IsABN1は、正常時の始動電流IsNOR1に対して始動当初において低くなる。その結果、電動機12の始動トルクは低下するため、電動機12が定格回転速度となって電流が定格値Iまで低下する始動時間tSABN1は正常時の始動時間tsNORより長くなる。
【0062】
このとき、電動機12の始動から第1時間t経過時の電流値I(I1ABN1)と,電動機12の始動から第2時間t経過時の電流値I(I2AbN1)とに対して、次式(1)が成立する場合、例えば、ディスプレイ14cの表示により電源系統に異常があること報知する。なお、この報知は後述する式(2)が成立する場合の報知の態様とは異なる。
<I1limitかつI>I2limit (1)
【0063】
式(1)は、電源ACの電圧降下によって始動電流が不足した結果、始動に長い時間がかかってしまい、第2時間t経過時に電動機12の電流I(I2ABN1)が定格値Iまで低下していない場合を表している。この場合、電動機12の定格電流Irより大きい始動電流IsABN1が電動機12に第2時間tよりも長い始動時間tSABN1流れ、電動機12に熱が蓄積される。そのため、サーマルトリップが発生しやすくなっているので、本実施形態の圧縮機10はサーマルトリップの発生の予兆と判断し、電源系統に異常があることを報知することが好ましい。これにより、サーマルトリップの発生に至る前に、電源系統の異常にメンテナンス処理することが可能となり、サーマルトリップの発生によるユーザの操業状態への影響を抑制できる。
【0064】
次に、圧縮機10に異常があると判断する場合について説明する。図5の始動電流IsABN2の曲線は、圧縮機10に異常がある場合の曲線の一例である。圧縮機10に異常がある場合は、例えば、吐出弁11bdのシール性能の低下や、駆動系統の異常がある。
【0065】
吐出弁11bdのシール性能の低下は、吐出弁11bdの破損や腐食、異物の噛み込みの発生によって発生する。この場合、圧縮機10の停止中に圧縮気体がシリンダ11a内に漏れシリンダ11aの内圧を上昇させる。そのため、始動に必要なトルクが増加し、図5に示すように始動時間tsABN2は正常時の始動時間tsNORより長くなる。
【0066】
また、駆動系統による異常は、圧縮機本体11のクランクシャフトや電動機12の出力軸を支持する軸受の故障等によって発生する。この場合、始動に必要なトルクが増加し、図5に示すように始動時間tsABN2は正常時の始動時間tsNORより長くなる。
【0067】
このとき、電動機12の始動から第1時間t経過時の電流値I(I1ABN2),電動機12の始動から第2時間t経過時の電流値I(I2ABN2)に対して、次式(2)が成立する場合、例えば、ディスプレイ14cの表示により圧縮機10に異常があること報知する。なお、この報知は上述した式(1)が成立する場合とは異なる態様、例えば、ディスプレイ14cを式(1)が成立する場合とは異なる表示により報知する。
>I1limitかつI>I2limit (2)
【0068】
式(2)は、電源系統に異常がなく電動機12の始動から第1時間t経過時の電流値I(I1ABN2)は電動機12の始動開始時の電流値Isに近い値となっているが、始動時間tsABN2が長く、第1時間tより長い第2時間tが経過した時の電動機12の電流値I(I2ABN2)が定格値Iまで低下していない状態を表している。
【0069】
この場合、電動機12の定格電流Irより大きい始動電流IsABN2が電動機12に第2時間tよりも長い始動時間tSABN2流れ、電動機12に熱が蓄積される。そのため、サーマルトリップが発生しやすくなっているので、本実施形態の圧縮機10はサーマルトリップの発生の予兆と判断し、圧縮機10に異常があることを報知することが好ましい。これにより、サーマルトリップの発生に至る前に、圧縮機10の異常にメンテナンス処理することが可能となり、サーマルトリップの発生によるユーザの操業状態への影響を抑制できる。
【0070】
また、制御装置14は、上記の通り、式(1)が成立する場合と式(2)が成立する場合とで異なる態様の報知をする。これにより、圧縮機の異常と電源系統の異常とを判別でき、メンテナンスにかかる工数を抑制できる。
【0071】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る圧縮機において、始動時間tsと異常時の始動電流Isとの関係を示すグラフである。図5と同様に、横軸の経過時間tは電動機12の始動からの経過時間を、縦軸の電流Iは電流センサ13bによって計測された電動機12に流れる電流の実効値を示す。また、始動時間tsは電動機12を始動させてから電動機12が定格電流Irになるまでの経過時間であり、始動電流Isは始動時間tsにおいて電動機12に流れる電流の実効値である。
【0072】
また、始動電流IsABN1aは、吐出弁11bdのシール性能の低下による異常が発生した圧縮機をアンロード始動させた場合に電動機12に流れる始動電流を示す曲線である。始動電流IsABN1bは、吐出弁11bdのシール性能の低下による異常が発生した圧縮機をロード始動させた場合に電動機12に流れる始動電流を示す曲線である。IsABN2は、圧縮機本体11の駆動系統による異常が発生した圧縮機をアンロード始動させた場合に電動機12に流れる始動電流を示す曲線である。
【0073】
本実施形態に係る圧縮機が第1実施形態に係る圧縮機10と異なる点は、アンローダ装置16により、始動から所定時間(例えば1秒程度)、圧縮機本体11をアンロード運転により始動(アンロード始動)させる点である。このように制御することで、始動負荷を軽減でき始動時間tsを短くできる。
【0074】
この場合、吐出弁11bdにシール性能の低下による圧縮機の異常が発生してもアンロード運転によって始動負荷が軽減されるため、図6の始動電流IsABN1aの曲線が示すように式(2)が不成立となり異常を検出できない。
【0075】
一方、本実施形態に係る圧縮機においてアンロード始動させる目的は始動負荷の軽減である。そのため、アンロード始動を行わずに始動(ロード始動)させても、始動負荷が軽減されないというだけで、1回のロード始動により直ちにサーマルトリップが発生する可能性は低い。
【0076】
そこで、圧縮機では、例えば、20回の始動のうち1回だけロード始動するというように、定期的にロード始動させて、アンロード始動時とロード始動時の異常の有無を検出する。
【0077】
このとき、アンロード始動時に式(2)が不成立となり異常を検出できなかった吐出弁11bdのシール性能の低下による異常は、ロード始動時において図6の始動電流IsABN1bの曲線が示すように式(2)を成立させる。
【0078】
一方、圧縮機本体11の駆動系統による異常が発生した圧縮機をアンロード始動させた時の電流値Iと電流値Iは、図6の始動電流IsABN2の曲線が示すように式(2)を成立させる。また、圧縮機本体11の駆動系統による異常が発生した圧縮機をロード始動させた時の電流値Iと電流値Iは、図5の始動電流IsABN2の曲線が示すように式(2)を成立させる。
【0079】
これにより、本実施形態の圧縮機は、圧縮機に異常がある場合について、吐出弁11bdのシール性能の低下による異常と、圧縮機本体11の駆動系統による異常とを判別できる。
【0080】
[効果]
本実施形態の圧縮機は、制御装置14の指令により圧縮機本体11の始動負荷の軽減を行うアンローダ装置16をさらに有し、制御装置14が、圧縮機本体11の始動時にアンローダ装置16を作動させない場合に式(2)が成立し、かつ、圧縮機本体11の始動時にアンローダ装置16を作動させた場合に式(2)が不成立の場合、圧縮機の吐出弁11bdに異常があることを、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知することが好ましい。なお、この報知は第1実施形態の報知とは異なる態様の報知であることが好ましい。
【0081】
これにより、サーマルトリップの発生に至る前に、圧縮機の異常が吐出弁11bdにシール性能の低下による異常であることを特定してメンテナンス処理することが可能となるので、メンテナンスにかかる工数を減らすことができる。
【0082】
また、本実施形態の制御装置14は、アンローダ装置16を作動させずに圧縮機本体11を始動させた時において式(2)が成立し、かつ、アンローダ装置16を作動させ圧縮機本体11を始動させた時において式(2)が成立する場合、圧縮機本体11の駆動系統による異常があることを、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知することが好ましい。
【0083】
これにより、サーマルトリップの発生に至る前に、圧縮機の異常が駆動系統による異常であることを特定してメンテナンス処理することが可能となるので、メンテナンスにかかる工数を減らすことができる。
【0084】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る圧縮機が第1実施形態に係る圧縮機10と異なる点は、電動機12の始動回数に対して、式(1)または式(2)の成立する回数の占める割合が所定値を超えた場合に報知する点である。
【0085】
圧縮機の異常が一過性の異常、例えば、吐出弁11bdへの小さな異物の噛み込んだ場合でも式(2)が成立する場合がある。しかし、吐出弁11bdに小さな異物を噛み込んだ場合は、吐出弁11bdが開閉するうちに異物が吐出弁11bdから脱落して自然に解消される場合がある。また、電源系統の異常が偶発的、例えば、他の機器の始動と圧縮機の始動が偶発的に一致し電圧が降下する場合であっても式(1)が成立する。
【0086】
これらの異常はメンテナンス処理が不要であり、これらの異常により報知がなされると報知に基づいてメンテナンス処理がなされ、メンテナンス処理に費やす工数が無駄になってしまう。
【0087】
このようにメンテナンス処理に費やす工数が無駄になってしまう場合を考慮し、本実施形態に係る圧縮機は、電動機12の始動回数に対して、式(1)または式(2)の成立する回数の占める割合が所定値を超えた場合に、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知する。これにより、制御装置がメンテナンス処理不要の異常、例えば、一過性の異常や偶発的異常により報知することを抑制できるので、報知に基づいてメンテナンス処理に費やす工数が無駄になってしまうことを抑制できる。
【0088】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る圧縮機の起動回数と始動電流の関係を示すグラフである。本実施形態に係る圧縮機が第1実施形態に係る圧縮機10と異なる点は、制御装置14が進行性の異常を検知して報知する点である。
【0089】
進行性の異常は、例えば、吐出弁11bdの破損や腐食である。吐出弁11bdの破損や腐食は、吐出弁11bdに異物が挟まった場合のように一過性の異常ではなく経時的に悪化する。このような進行性の異常は、式(1)(2)が成立することなくサーマルトリップの発生に至ってしまう虞がある。
【0090】
そこで、本実施形態に係る圧縮機は、制御装置14によりそのような進行性の異常を検知し、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知する。
【0091】
図7に示すように、進行性の異常がある場合、異常の進行にともなって電流値Iは増加する傾向を示す。例えば、吐出弁11bdの腐食は、その腐食の進行によって圧縮機の停止時にシリンダ11a内への圧縮空気の漏れ量が増加し、始動時間が延びるため、異常の進行にともなって電流値Iは増加する。
【0092】
そのため、本実施形態に係る圧縮機の制御装置は、電流センサ13bを介して、電動機12の始動から所定時間(例えば、第2時間t)経過時の電動機12の電流値(例えば、電流値I)を、電動機12を始動させる度に記録し、電動機12の始動回数の増加と共に電動機12の始動から所定時間t経過時の電動機12の電流値Iが大きくなった場合に、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知をすることが好ましい。
【0093】
制御装置14は、例えば、式(1)(2)を成立した時点以前の電流値I,Iのデータを記憶装置から所定期間(例えば、一月間)または所定始動回数(例えば、10,000回)読み出し、電流値Iに増加傾向が認められる場合に進行性の異常を検知して、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知する。
【0094】
増加傾向の有無の判断としては、例えば、図7における電流値I,Iを直線近似し、その傾きが所定値以上ある場合に増加傾向ありと判断する。または、電流値I,Iのデータのばらつきから相関係数r値を求め、その数値が所定値以上である場合、増加傾向ありと判断する。
【0095】
[効果]
本実施形態に係る圧縮機の制御装置は、電流センサ13bを介して、電動機12の始動から所定時間経過時の電動機12の電流値(例えば、電流値I)を、電動機12を始動させる度に記録し、電動機12の始動回数の増加と共に電動機12の始動から所定時間経過時の電動機12の電流値Iが大きくなった場合に報知することが好ましい。
【0096】
これにより、進行性の異常によってサーマルトリップの発生に至る前に、進行性の異常に対してメンテナンス処理することが可能となり、サーマルトリップの発生によるユーザの操業状態への影響を抑制できる。
【0097】
(第5実施形態)
通常、短時間に繰り返される電動機12の始動・停止に対して、所定時間内に閾値N2limit回以上の始動が行われた場合、サーマルトリップが発生する虞を、例えば、ディスプレイ14cの表示により報知する。しかし、閾値N2limit回は、正常時に始動電流Iが流れる時間tsを考慮し設定されているため、軽微な異常を備える圧縮機には適用できない。
【0098】
具体的には、軽微な異常を備える圧縮機は始動電流Iの流れる時間tsが増加するため、その増加にともない、1回の始動で蓄積される熱量が大きくなり、電動機の始動回数が正常時と比べて少なくてもサーマルトリップの発生に至る虞がある。そのため、閾値N2limit回以下の始動回数で、かつ式(1)(2)のいずれも成立せずに、サーマルリレー13cの蓄熱によってサーマルトリップの発生に至る可能性がある。
【0099】
そこで本発明では、閾値N2limitを次式のように電動機12の始動から所定時間(例えば、第2時間t)経過時の電流値I(例えば、電流値I)の逆数に比例するように変化させる。
N∝1/I (3)
【0100】
即ち、本実施形態に係る圧縮機は、サーマルトリップが発生する虞のある圧縮機の始動回数を、電動機12の電流値Iに反比例させた圧縮機の始動回数Nとして、その始動回数を超えて始動することのないように例えば、ディスプレイ14cの表示により報知する。
【0101】
[効果]
本実施形態に係る圧縮機の制御装置14は、電流センサ13bを介して、電動機12の始動から所定時間(例えば、第2時間t)経過時の電動機12の電流値(例えば、電流値I)を計測するとともに、所定時間(例えば、第2時間t)内において次式(3)で表されるN回以上電動機12を始動させた場合に報知することが好ましい。
N∝1/I (3)
【0102】
これにより、軽微な異常を備える圧縮機において短時間に繰り返される始動・停止によりサーマルトリップの発生に至る前にメンテナンス処理することが可能となり、サーマルトリップの発生によるユーザの操業状態への影響を抑制できる。
【0103】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0104】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサ(マイコン)がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0105】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。例えば、上記実施形態では、圧縮機10として往復動式圧縮機で説明したが、これに限定されるものでなく、スクリュー式あるいはスクロール式等の圧縮機や、外部から1次圧を供給され再圧縮するブースタ圧縮機等でもよい。
【0106】
また、圧縮する気体を空気として説明したが、これに限定されるものでなく、窒素ガス等の他の気体、水その他の液体でもよい。
【0107】
また、上記の実施形態では、アンローダ装置16に吸込弁開放型アンロード方式を用いたがこれに限定されない。例えば、吸込み流路を閉塞させシリンダ内に空気が流入できないようにする方式や、吐出し流路を大気に開放させる方式を用いても良い。
【0108】
また、上記では電動機12の駆動の制御を圧力センサ15aの検出値により電磁開閉器13を操作する方式について述べたがこれに限定されない。例えば、圧力センサ15aの代わりタンク15に設けた圧力開閉器の出力によって電磁開閉器13を操作する方式や、電磁開閉器13の代わりとしてサーマルリレー付きの押し釦スイッチを用いる方式を用いても良い。
【0109】
また、上記の実施形態では、電源系統に異常があることや圧縮機本体に異常があること等をディスプレイ14cで報知したがこれに限定されない。例えば、ランプやブザーで報知しても良い。
【符号の説明】
【0110】
10:圧縮機、11:圧縮機本体、11a:シリンダ、11b:シリンダヘッド、11ba:空気取入口、11bb:空気吐出口、11bc:吸込弁、11bd:吐出弁、12:電動機、13:電磁開閉器、13a:接点、13b:電流センサ、13c:サーマルリレー、14:制御装置、14a:制御基板、14b:運転・停止スイッチ、14c:ディスプレイ、14d:電子回路、15:タンク、15a:圧力センサ、16:アンローダ装置、16a:三方電磁弁、16b:アンローダ配管、16c:アンローダピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7