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特開2023-184176硫黄含有化合物の混合物およびゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184176
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】硫黄含有化合物の混合物およびゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20231221BHJP
   C08K 5/45 20060101ALI20231221BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20231221BHJP
   C07D 331/02 20060101ALI20231221BHJP
   C07D 341/00 20060101ALI20231221BHJP
   C07D 339/00 20060101ALI20231221BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K5/45
C08L9/00
C07D331/02
C07D341/00
C07D339/00
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098171
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄介
(72)【発明者】
【氏名】知野 圭介
(72)【発明者】
【氏名】芦浦 誠
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA08
3D131AA14
3D131AA15
3D131AA19
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB11
3D131BC31
3D131BC51
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002EV346
4J002FD146
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐リバージョン性、耐熱老化性および耐オーバーキュア性に優れるゴム組成物を得られる硫黄含有化合物の混合物の提供。
【解決手段】本発明の硫黄含有化合物の混合物は、下記式(1):
で表される硫黄含有単量体と、
前記硫黄含有単量体の二分子が硫黄を介して結合した硫黄含有二量体とを含み、
前記硫黄含有単量体の前記硫黄含有二量体に対する含有比が、0.30以上0.85以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(上記式(1)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成し、但し、前記架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、
pは、1~5の整数であり、
qは、1~5の整数であり、
rは、1~5の整数であり、
xは、0~20の整数であり、xが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、
yは、0~20の整数であり、yが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、但し、xおよびyの合計は、1以上の整数である)
で表される硫黄含有単量体と、
前記硫黄含有単量体の二分子が硫黄を介して結合した硫黄含有二量体とを含み、
前記硫黄含有単量体の前記硫黄含有二量体に対する含有比が、0.30以上0.85以下である、硫黄含有化合物の混合物。
【請求項2】
前記硫黄含有単量体が、下記式(2):
【化2】
下記式(3):
【化3】
下記式(4):
【化4】
下記式(5):
【化5】
下記式(6):
【化6】
下記式(7):
【化7】
下記式(8):
【化8】
下記式(9):
【化9】
および
下記式(10):
【化10】
(上記式(2)~(10)中、R、R、R、R、およびR16は、上記式(1)と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
cは、0~2の整数であり、
dは、0または1であり、
eは、0または1であり、
fは、0~3の整数であり、
xは、1~20の整数であり、
yは、1~20の整数である)
からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項3】
前記硫黄含有単量体の三分子以上が硫黄を介して結合した硫黄含有多量体をさらに含む、請求項1に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項4】
前記硫黄含有単量体の含有比率が、前記硫黄含有単量体、前記硫黄含有二量体、および前記硫黄含有多量体の合計に対して、1%以上20%以下である、請求項3に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項5】
前記硫黄含有多量体の含有比率が、前記硫黄含有単量体、前記硫黄含有二量体、および前記硫黄含有多量体の合計に対して、90%以下である、請求項3に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項6】
前記硫黄含有単量体が、脂肪族環含有オレフィンと硫黄との反応生成物である、請求項1に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項7】
前記脂肪族環含有オレフィンが、下記式(11):
【化11】
(上記式(11)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が炭素-炭素二重結合を形成し、但し、炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、
pは、1~5の整数であり、
qは、1~5の整数であり、
rは、1~5の整数である)
で表される、請求項6に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項8】
前記脂肪族環含有オレフィンが、下記式(12):
【化12】
下記式(12):
【化13】
および
下記式(14):
【化14】
(上記式(12)~(14)中、R、R、R、R、およびR16は、上記式(11)と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
cは、0~2の整数であり、
dは、0または1であり、
eは、0または1であり、
fは、0~3の整数である)
からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項9】
前記脂肪族環含有オレフィンが、ノルボルネン環、シクロヘキセン環およびシクロペンテン環からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項10】
ゴム用架橋剤である、請求項1に記載の硫黄含有化合物の混合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の硫黄含有化合物の混合物の製造方法であって、
脂肪族環含有オレフィンと硫黄とを、前記脂肪族環含有オレフィン1モルに対して前記硫黄2モル以上7モル以下で反応させる、製造方法。
【請求項12】
前記反応が、140℃以上180℃以下での加熱反応である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の硫黄含有化合物の混合物およびゴム成分を含む、ゴム組成物。
【請求項14】
請求項13に記載のゴム組成物の架橋物。
【請求項15】
請求項14に記載の架橋物を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有化合物の混合物に関する。また、本発明は、硫黄含有化合物の混合物を含むゴム組成物に関する。さらに、本発明は、該ゴム組成物を用いて製造されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム組成物の加硫には、架橋剤として主に硫黄が使用されてきた。しかし、硫黄で加硫されたゴムの架橋はポリスルフィド結合であることが知られている。このポリスルフィド結合は、その硫黄数が増えるにしたがって、熱的に不安定になるため、耐熱性の点で問題があった。
【0003】
上記の技術的課題に対して、特許文献1では、ジシクロペンタジエンと硫黄を重量比1/1(モル比1/4.1)で仕込み、100℃~130℃で8時間反応させた反応物をゴム用有機硫黄架橋剤として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-335662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のゴム用有機硫黄架橋剤は、耐リバージョン性および耐熱老化性(耐久性)のいずれも改善の余地があった。ここで、リバージョン(加硫戻り)とは、加硫温度が高すぎたり、加硫時間が長すぎたりすることにより架橋部位が切断されることで最適加硫状態に比べゴムが軟化する現象であり、「耐リバージョン性」は加硫反応におけるゴムの軟化しにくさ、すなわち熱劣化しにくさを示す。
【0006】
また、ゴム用架橋剤には、耐オーバーキュア性も要求される。ここで、オーバーキュア(過加硫)とは、最適加硫度よりも過度に加硫した状態であり、オーバーキュア状態のゴムは分解等により機械強度が低下する。すなわち、「耐オーバーキュア性」は過加硫状態における機械強度の低下しにくさを示す。
【0007】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、特定の脂肪族環含有オレフィンと硫黄との反応生成物である硫黄含有単量体と、当該硫黄含有単量体の二分子が硫黄を介して結合した硫黄含有二量体とを含み、当該単量体と二量体の含有比を調節した硫黄含有化合物の混合物を、ゴム用架橋剤として用いることで、耐リバージョン性、耐熱老化性、および耐オーバーキュア性に優れるゴム組成物を得られることを知見した。本発明者らは、かかる知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 下記式(1):
【化1】
(上記式(1)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成し、但し、前記架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、
pは、1~5の整数であり、
qは、1~5の整数であり、
rは、1~5の整数であり、
xは、0~20の整数であり、xが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、
yは、0~20の整数であり、yが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、但し、xおよびyの合計は、1以上の整数である)
で表される硫黄含有単量体と、
前記硫黄含有単量体の二分子が硫黄を介して結合した硫黄含有二量体とを含み、
前記硫黄含有単量体の前記硫黄含有二量体に対する含有比が、0.30以上0.85以下である、硫黄含有化合物の混合物。
[2] 前記硫黄含有単量体が、下記式(2):
【化2】
下記式(3):
【化3】
下記式(4):
【化4】
下記式(5):
【化5】
下記式(6):
【化6】
下記式(7):
【化7】
下記式(8):
【化8】
下記式(9):
【化9】
および
下記式(10):
【化10】
(上記式(2)~(10)中、R、R、R、R、およびR16は、上記式(1)と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
cは、0~2の整数であり、
dは、0または1であり、
eは、0または1であり、
fは、0~3の整数であり、
xは、1~20の整数であり、
yは、1~20の整数である)
からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の硫黄含有化合物の混合物。
[3] 前記硫黄含有単量体の三分子以上が硫黄を介して結合した硫黄含有多量体をさらに含む、[1]または[2]に記載の硫黄含有化合物の混合物。
[4] 前記硫黄含有単量体の含有比率が、前記硫黄含有単量体、前記硫黄含有二量体、および前記硫黄含有多量体の合計に対して、1%以上20%以下である、[3]に記載の硫黄含有化合物の混合物。
[5] 前記硫黄含有多量体の含有比率が、前記硫黄含有単量体、前記硫黄含有二量体、および前記硫黄含有多量体の合計に対して、90%以下である、[3]または[4]に記載の硫黄含有化合物の混合物。
[6] 前記硫黄含有単量体が、脂肪族環含有オレフィンと硫黄との反応生成物である、[1]~[5]のいずれかに記載の硫黄含有化合物の混合物。
[7] 前記脂肪族環含有オレフィンが、下記式(11):
【化11】
(上記式(11)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が炭素-炭素二重結合を形成し、但し、炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、
pは、1~5の整数であり、
qは、1~5の整数であり、
rは、1~5の整数である)
で表される、[6]に記載の硫黄含有化合物の混合物。
[8] 前記脂肪族環含有オレフィンが、下記式(12):
【化12】
下記式(13):
【化13】
および
下記式(14):
【化14】
(上記式(12)~(14)中、R、R、R、R、およびR16は、上記式(11)と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
cは、0~2の整数であり、
dは、0または1であり、
eは、0または1であり、
fは、0~3の整数である)
からなる群から選択される少なくとも1種である、[6]または[7]に記載の硫黄含有化合物の混合物。
[9] 前記脂肪族環含有オレフィンが、ノルボルネン環、シクロヘキセン環およびシクロペンテン環からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[6]~[8]のいずれかに記載の硫黄含有化合物の混合物。
[10] ゴム用架橋剤である、[1]~[9]のいずれかに記載の硫黄含有化合物の混合物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の硫黄含有化合物の混合物の製造方法であって、
脂肪族環含有オレフィンと硫黄とを、前記脂肪族環含有オレフィン1モルに対して前記硫黄2モル以上7モル以下で反応させる、製造方法。
[12] 前記反応が、140℃以上180℃以下での加熱反応である、[11]に記載の製造方法。
[13] [1]~[10]のいずれかに記載の硫黄含有化合物の混合物およびゴム成分を含む、ゴム組成物。
[14] [13]に記載のゴム組成物の架橋物。
[15] [14]に記載の架橋物を含む、タイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明による硫黄含有化合物の混合物をゴム用架橋剤として用いることで、耐リバージョン性、耐熱老化性、および耐オーバーキュア性に優れるゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で用いた原料(脂肪族環含有オレフィン)のH-NMRスペクトルである。
図2】実施例1で得られた反応生成物(硫黄含有化合物の混合物)のH-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[硫黄含有化合物の混合物]
本発明による硫黄含有化合物の混合物(以下、単に「混合物」ということがある)は、下記の硫黄含有単量体(以下、単に「単量体」ということがある)と、当該硫黄含有単量体の二分子が硫黄を介して結合した硫黄含有二量体(以下、単に「二量体」ということがある)とを含むものである。混合物は、硫黄含有単量体の三分子以上が硫黄を介して結合した硫黄含有多量体(以下、単に「多量体」ということがある)をさらに含んでもよい。
【0012】
混合物中の単量体の二量体に対する含有比(単量体/二量体)は、0.30以上0.85以下であり、好ましくは0.35以上0.80以下であり、より好ましくは0.40以上0.75以下である。当該含有比(単量体/二量体)が上記数値範囲内であれば、ゴム用架橋剤として用いた際に、耐リバージョン性、耐熱老化性、および耐オーバーキュア性に優れるゴム組成物を得ることができる。
本発明は理論に束縛されるものではないが、ゴムの硫黄架橋においては、架橋剤-ゴム間で形成される結合が、切断されにくく熱安定性に優れるモノスルフィド結合を多く有し、かつスルフィド鎖が短いことが望ましいと推測される。上記含有比(単量体/二量体)が上記数値範囲を満たす混合物はスルフィド鎖が短いものとなるため、ゴム用架橋剤として用いた際にモノスルフィド結合を多く有し、かつスルフィド鎖が短い架橋状態を実現できると考えられる。
【0013】
混合物中の単量体の含有比率は、単量体、二量体、および多量体の合計に対して、好ましくは1%以上20%以下であり、好ましくは3%以上15%以下であり、より好ましくは5%以上13%以下である。単量体の含有比率が上記数値範囲内であれば、ゴム用架橋剤として用いた際に、耐リバージョン性、耐熱老化性、および耐オーバーキュア性を向上させることができる。
混合物中の多量体の含有比率は、単量体、二量体、および多量体の合計に対して、好ましくは90%以下であり、より好ましくは88%以下であり、さらに好ましくは86%以下であり、また、60%以上であってもよく、65%以上であってもよく、70%以上であってもよく、75%以上であってもよい。
本発明において、混合物中の単量体、二量体、および多量体の各含有比率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレン検量線から算出することができる。具体的には、検量線によって、単量体、二量体、および多量体の各分子量(Mw、Mw/Mn)を算出する。その後、単量体、二量体、多量体の各分子量に相当するピークの面積積分値を算出し、単量体、二量体、多量体の合計のピーク面積積分値に対する比率(面積%)をそれぞれ単量体、二量体、多量体の含有比率とした。さらに、単量体および二量体の含有比率から、単量体の二量体に対する含有比(単量体/二量体)を算出した。
【0014】
上記の硫黄含有単量体は、下記式(1):
【化15】
で表される化合物である。
上記式(1)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成し、但し、前記架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、
pは、1~5の整数であり、
qは、1~5の整数であり、
rは、1~5の整数であり、
xは、0~20の整数であり、xが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、
yは、0~20の整数であり、yが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、但し、xおよびyの合計は、1以上の整数である。
【0015】
上記式(1)において、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子であり、
およびRは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表すか、より好ましくは水素原子またはメチル基を表すか、さらに好ましくは水素原子であるか、または、好ましくはRおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表すか、より好ましくは水素原子またはメチル基を表すか、さらに好ましくは水素原子であるか、または、好ましくはRおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が好ましくは-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が好ましくは-S-で表される架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成し、但し、前記架橋構造または炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子であり、
14およびR15は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表すか、より好ましくは水素原子またはメチル基を表すか、さらに好ましくは水素原子であるか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、好ましくは1であり、
bは、好ましくは1であり、
cは、好ましくは0または1であり、
pは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1であり、
qは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1であり、
rは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1であり、
xは、好ましくは0~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~3の整数であり、xが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、
yは、好ましくは0~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~3の整数であり、yが0の場合、炭素-炭素二重結合を形成し、但し、xおよびyの合計は、1以上の整数である。
【0016】
上記式(1)において、炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化16】
【0018】
上記式(2)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化17】
【0019】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化18】
【0020】
上記式(3)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化19】
【0021】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化20】
【0022】
上記式(4)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化21】
【0023】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化22】
【0024】
上記式(5)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化23】
【0025】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【化24】
【0026】
上記式(6)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化25】
【0027】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化26】
【0028】
上記式(7)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化27】
【0029】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【化28】
【0030】
上記式(8)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化29】
【0031】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化30】
【0032】
上記式(9)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化31】
【0033】
硫黄含有単量体の好ましい一態様としては下記式(10)で表される化合物が挙げられる。
【化32】
【0034】
上記式(10)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化33】
【0035】
上記式(2)~(10)中、R、R、R、R、およびR16は、上記式(1)と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
cは、0~2の整数であり、
dは、0または1であり、
eは、0または1であり、
fは、0~3の整数であり、
xは、1~20の整数であり、
yは、1~20の整数である。
【0036】
上記式(2)~(10)中、R、R、R、R、およびR16の好ましい態様は、上記式(1)の好ましい態様と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子であり、
cは、好ましくは0または1であり、
fは、好ましくは1または2であり、より好ましくは1であり、
xは、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~3の整数であり、
yは、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~3の整数である。
【0037】
硫黄含有単量体は、その立体異性体の任意の混合物であってもよい。
【0038】
硫黄含有二量体とは、上記式(1)で表される硫黄含有単量体の二分子が硫黄を介して結合した化合物である。硫黄含有二量体としては、例えば、下記式(15):
【化34】
で表される化合物が挙げられる。式(15)中、R~R16、a、b、およびc、上記式(1)と同様であり、R~R16、a、b、およびcの好ましい態様は、上記式(1)の好ましい態様と同様である。xは、1~20であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~3の整数である。
【0039】
硫黄含有多量体とは、上記式(1)で表される硫黄含有単量体の三分子以上が硫黄を介して結合した化合物である。硫黄含有多量体としては、例えば、上記式(1)で表される化合物(単量体)と上記式(15)で表される化合物(二量体)が硫黄を介して結合した化合物(三量体)が挙げられる。
【0040】
(硫黄含有化合物の混合物の製造方法)
本発明による硫黄含有化合物の混合物の製造方法は、脂肪族環含有オレフィンと硫黄とを加熱しながら反応させる工程を含むものである。当該工程において、脂肪族環含有オレフィンに対する硫黄の添加量は、脂肪族環含有オレフィン1モルに対して、好ましくは硫黄2モル以上7モル以下であり、より好ましくは硫黄2.5モル以上6.5モル以下である。反応温度は、好ましくは140℃以上180℃以下であり、より好ましくは140℃以上170℃以下であり、さらに好ましくは140℃以上160℃以下である。反応温度は、好ましくは1時間以上12時間以下、より好ましくは2時間以上10時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上9時間以下である。当該工程において硫黄添加量および加熱反応の条件を調節することで、混合物中の単量体、二量体、および多量体の各含有比率を調節することができる。
【0041】
上記の脂肪族環含有オレフィンは、下記式(11):
【化35】
で表される化合物である。
上記式(11)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、RおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が炭素-炭素二重結合を形成し、但し、炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
14およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表すか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、
pは、1~5の整数であり、
qは、1~5の整数であり、
rは、1~5の整数である。
【0042】
上記式(11)中、R、R、R、R、R13およびR16は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子であり、
およびRは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表すか、より好ましくは水素原子またはメチル基を表すか、さらに好ましくは水素原子であるか、または、好ましくはRおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびRは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表すか、より好ましくは水素原子またはメチル基を表すか、さらに好ましくは水素原子であるか、または、好ましくはRおよびRは、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
およびR10が炭素-炭素二重結合を形成するか、または、R11およびR12が炭素-炭素二重結合を形成し、但し、炭素-炭素二重結合を形成しないR、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子であり、
14およびR15は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表すか、より好ましくは水素原子またはメチル基を表すか、さらに好ましくは水素原子であるか、または、R14およびR15は、-(CH-で表される架橋構造を形成し、
aは、好ましくは1であり、
bは、好ましくは1であり、
cは、好ましくは0または1であり、
pは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1であり、
qは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1であり、
rは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1である。
【0043】
上記式(11)において、炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0044】
脂肪族環含有オレフィンの好ましい一態様としては下記式(12)で表される化合物が挙げられる。
【化36】
【0045】
上記式(12)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化37】
【0046】
脂肪族環含有オレフィンの好ましい一態様としては下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
【化38】
【0047】
上記式(13)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化39】
【0048】
脂肪族環含有オレフィンの好ましい一態様としては下記式(14)で表される化合物が挙げられる。
【化40】
【0049】
上記式(14)で表される化合物の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【化41】
【0050】
上記式(12)~(14)中、R、R、R、R、およびR16は、上記式(11)と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10のアルキル基を表し、
cは、0~2の整数であり、
dは、0または1であり、
eは、0または1であり、
fは、0~3の整数である。
【0051】
上記式(12)~(14)中、R、R、R、R、およびR16の好ましい態様は、上記式(11)の好ましい態様と同様であり、
、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、それぞれ独立して、好ましくは水素原子若しくは炭素数1~4のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはメチル基を表し、さらに好ましくは水素原子であり、
cは、好ましくは0または1であり、
fは、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。
【0052】
上記の脂肪族環含有オレフィンは、硫黄との反応性の観点から、ノルボルネン環、シクロヘキセン環およびシクロペンテン環からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの環状構造中の炭素-炭素二重結合は、硫黄との反応性が高いことから好ましい。
【0053】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、少なくとも、上記の硫黄含有化合物の混合物およびゴム成分を含むものである。上記の硫黄含有化合物の混合物は、ゴム成分に対する反応性が高く、ゴム用架橋剤として好適に用いることができ、耐リバージョン性、耐熱老化性および耐オーバーキュア性に優れるゴム組成物を得ることができる。上記の硫黄含有化合物の混合物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは2~25質量部であり、さらに好ましくは3~22質量部である。
【0054】
(ゴム成分)
ゴム成分としては、特に限定されないが、ジエン系ゴムを含むことが好ましい。ゴム成分中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%である。
【0055】
ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、等、およびこれらの変性ジエン系ゴムが挙げられる。変性ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性、水素添加等の変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基等の各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。これらの中でも、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、および天然ゴム(NR)の1種以上を用いることが好ましい。
【0056】
ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。
【0057】
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴム、植物成分発酵ゴム等が挙げられる。さらにこれらの天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴム、スルホン酸変性天然ゴム、スルホン酸亜鉛変性天然ゴム等の変性天然ゴム等も、天然ゴムに含まれる。
【0058】
また、天然ゴムおよび合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率は、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量は500~3000000、分子量分布は1.5~15が好ましい。
【0059】
ゴム成分としては、ジエン系ゴム以外にも非ジエン系ゴムも配合してもよい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。具体的な例としては、エチレン・プロピレンゴム(EPM)等のオレフィン系ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(VMQ、PVMQ、FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)が挙げられる。
【0060】
また、本発明のゴム組成物には、その機能を損なわない範囲で、上記のゴム成分以外にもエラストマーを配合することもできる。エラストマーとしては、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)、それらの水添物(SEBS,SEPS,SEEPS)等のポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及び、ポリアミド系エラストマーのからなる群より選択される熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0061】
(その他の加工助剤)
本発明のゴム組成物は、その機能を損なわない範囲で、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、酸化防止剤、軟化剤、着色剤、及び無機材料等のその他の加工助剤を含んでいてもよい。
【0062】
加硫剤としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等の硫黄系加硫剤や酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リサージ、p-キノンジオキシム、p-ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ-p-ベンゾキノン、ポリ-p-ジニトロベンゼン、メチレンジアニリン、フェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂、塩素化アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。加硫剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。
【0063】
加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)等のチウラム系、ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒド・アンモニア系、ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)等のチアゾール系、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアマイド(BBS)等のスルフェンアミド系、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)等のジチオカルバミン酸塩系挙げられる。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。
【0064】
加硫促進助剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸等の脂肪酸、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、マレイン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛、およびそれらの塩である脂肪酸亜鉛塩、ならびに酸化亜鉛等が挙げられる。加硫促進助剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。
【0065】
老化防止剤としては、例えば、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。老化防止剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。
【0066】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。酸化防止剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。
【0067】
軟化剤としては、従来公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、アロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル等の石油系軟化剤や、パーム油、ひまし油、綿実油、大豆油等の植物系軟化剤等が挙げられる。使用の際にはこれらの中から1種単独で又は2種以上を適宜選択使用すればよい。軟化剤を含有する場合には、取り扱い容易性の観点から、上述した軟化剤の中でも、25℃等の常温で液体であるもの、例えば、アロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイル等の石油系軟化剤を含有することが好ましく、特にアロマオイルが好ましい。軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して好ましくは10~200質量部であり、より好ましくは20~100質量部である。
【0068】
着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。着色剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。
【0069】
無機材料としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレイおよびタルク等が挙げられる。これらの無機材料は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。無機材料の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上500質量部以下であり、より好ましくは、5質量部以上400質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以上300質量部以下であり、さらにより好ましくは20質量部以上200質量部以下である。
【0070】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、少なくとも、上記のゴム成分と、上記の硫黄含有化合物の混合物(架橋剤)とを混練する工程を含んでなる。当該混練工程では、カーボンブラックおよび/またはシリカ、ならびに上記のその他の加工助剤を適宜配合してもよい。
【0071】
ゴム組成物の製造には、従来公知の混練装置を用いることができ、混練温度や時間、配合順序等を適宜選択することができる。
【0072】
[タイヤ]
本発明のゴム組成物を用いて、従来公知の方法および当業者に広く知られた技術常識によりタイヤを製造することができる。例えば、ゴム組成物を押し出し、次いで、タイヤ成型機を用いて成形した後、加硫機を用いて加熱、加圧することにより架橋が形成され、タイヤを製造することができる。
【0073】
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられる。これらの中でも、乗用車用タイヤおよび重荷重用タイヤに好適に使用できる。
【0074】
タイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、本発明のゴム組成物はタイヤの各部に適用することができる。タイヤの適用部としては、特に制限はなく、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部など、目的に応じて適宜選択することができる。
【0075】
[ゴム製品]
本発明のゴム組成物を用いて、タイヤ以外のゴム製品を製造することもできる。タイヤ以外のゴム製品としては、自動車用ゴム部品(外装、内装、ウェザーストリップ類、ブーツ類、マウント類、シール類、シーラー類、ガスケット類)、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー等が挙げられる。
【実施例0076】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[硫黄含有化合物の混合物の調製例]
[実施例1]
200mLのナスフラスコに、硫黄(1.2mоl、38.48g、3.0当量)および5-ビニル-2-ノルボルネン(0.4mоl、48.04g、1.0当量)、撹拌子を入れ、ドライ窒素ラインを繋げた安全用の還流管を取り付けた後、窒素ラインから窒素を流して系内を置換し、常圧窒素雰囲気下とした。その後、撹拌しながらオイルバス上で148℃まで昇温させ、反応温度到達から3時間反応させた。反応終了後、室温になるまで放置した後、撹拌を停止した。その後、155℃、20~30分程度の最小限の時間で加熱撹拌し反応物を溶融させ、フラスコから適当な大きさのバットに流出させ、室温になるまで再度放置、冷却して、目的物である濃褐色粘稠の硫黄含有化合物の混合物1を得た。
【0078】
その後、原料である5-ビニル-2-ノルボルネンおよび上記で得られた反応生成物(硫黄含有化合物の混合物)をそれぞれ、適切な濃度で重クロロホルム溶媒に溶解させて調製したサンプルについて、NMR(Bruker社製AVANCE NEO 600MHz)を用いて、磁場強度600MHzの条件下でH-NMRの測定を行って、H-NMRスペクトルを得た。5-ビニル-2-ノルボルネンのH-NMRスペクトルを図1に示し、反応生成物(硫黄含有化合物の混合物)のH-NMRスペクトルを図2に示した。得られた各H-NMRスペクトルの結果より、反応生成物のH-NMRスペクトルにおいてノルボルネン環の二重結合由来のピーク(5.95~6.2ppm)が全て消失していることを確認した。また、反応生成物のH-NMRスペクトルにおいて5-ビニル-2-ノルボルネンのビニル基由来のピーク(α位1H:5.4~5.9ppm、末端β位2H由来のピーク:5ppm)の一部が残存していることを確認した。すなわち、5-ビニル-2-ノルボルネンのノルボルネン環の二重結合の全てが硫黄と反応しており、ビニル基の一部が硫黄と反応していることを確認した。したがって、反応生成物には、5-ビニル-2-ノルボルネンのビニル基とノルボルネン環の二重結合の両方に硫黄が導入された化合物(単量体)、および5-ビニル-2-ノルボルネンのノルボルネン環のみに硫黄が導入された化合物(単量体)が含まれることを確認した。さらに、下記の分子量測定によって、反応生成物には、これらの単量体が硫黄を介して結合した二量体および多量体が含まれていると推察される。
【0079】
[実施例2]
5-ビニル-2-ノルボルネンの代わりにジシクロペンタジエン(0.4mоl、52.88g、1.0当量)を用いた以外は実施例1と同様にして、反応生成物(硫黄含有化合物の混合物2)を得た。
【0080】
[実施例3]
200mLのナスフラスコに、硫黄(1.2mоl、38.48g、3.0当量)および5-ビニル-2-ノルボルネン(0.4mоl、48.04g、1.0当量)、撹拌子を入れ、ドライ窒素ラインを繋げた安全用の還流管を取り付けた後、窒素ラインから窒素を流して系内を置換し、常圧窒素雰囲気下とした。その後、撹拌しながらオイルバス上で143~145℃まで昇温させ、反応温度到達から3時間反応させた。反応終了後、溶融状態のままフラスコから適当な大きさのバットに流出させ、室温になるまで放置して、目的物である濃褐色粘稠の硫黄含有化合物の混合物3を得た。
【0081】
[実施例4]
200mLのナスフラスコに、硫黄(1.2mоl、38.48g、3.0当量)および5-ビニル-2-ノルボルネン(0.4mоl、48.04g、1.0当量)、撹拌子を入れ、ドライ窒素ラインを繋げた安全用の還流管を取り付けた後、窒素ラインから窒素を流して系内を置換し、常圧窒素雰囲気下とした。その後、撹拌しながらオイルバス上で148℃まで昇温させ、反応温度到達から3時間反応させた。反応終了後、溶融状態のままフラスコから適当な大きさのバットに流出させ、室温になるまで放置し目的物である濃褐色粘稠の硫黄含有化合物の混合物4を得た。
【0082】
[実施例5]
硫黄の添加量を2.4mоl(76.96g、6.0当量)に変更した以外は、実施例4と同様にして、反応生成物(硫黄含有化合物の混合物5)を得た。
【0083】
[実施例6]
5-ビニル-2-ノルボルネンの代わりに5-エチリデン-2-ノルボルネン(0.4mоl、48.04g、1.0当量)を用いた以外は実施例と同様にして、反応生成物(硫黄含有化合物の混合物6)を得た。
【0084】
[比較例1]
200mLのナスフラスコに、硫黄(0.87mоl、55.80g、8.7当量)および5-ビニル-2-ノルボルネン(0.2mоl、24.04g、1.0当量)、撹拌子を入れ、ドライ窒素ラインを繋げた安全用の還流管を取り付けた後、窒素ラインから窒素を流して系内を置換し、常圧窒素雰囲気下とした。その後、撹拌しながらオイルバス上で130℃まで昇温させ、反応温度到達から8時間反応させた。反応終了後、溶融状態のままフラスコから適当な大きさのバットに流出させ、室温になるまで放置し目的物である濃褐色粘稠の硫黄含有化合物の混合物7を得た。
【0085】
[比較例2]
5-ビニル-2-ノルボルネンの代わりにジシクロペンタジエン(0.4mоl、52.88g、1.0当量)を用い、硫黄の添加量を1.64mоl(52.59g、4.1当量)に変更した以外は、比較例1と同様にして、反応生成物(硫黄含有化合物の混合物8)を得た。
【0086】
(硫黄含有化合物の混合物の分子量、組成測定、含有率の測定)
上記で得られた混合物を10g/Lの濃度となるようテトロヒドロフランに溶解させて測定サンプルとした。測定装置として、東ソー社製HLC-8320GPC(使用カラム:TSKgel SuperHZカラムシリーズ)を用いて当該サンプルを測定し、それをAgilent社製ポリスチレンキット(EasiVial PS-MおよびPS-L)によって予め作成した検量線によって、分子量(Mw、Mw/Mn)を算出した。その後、単量体、二量体、多量体の分子量に相当するピークの面積積分値を算出し、単量体、二量体、多量体の合計のピーク面積積分値に対する比率(面積%)をそれぞれ単量体、二量体、多量体の含有比率とした。測定結果を表1に示した。
【0087】
【表1】
【0088】
[ゴム組成物およびゴムシートの製造例]
(実施例1~6、比較例1~7)
下記硫黄含有化合物の混合物および加硫促進剤を除く各成分を、250mLニーダー(東洋精機社製ラボプラストミル)を用いて混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物について160℃でプレス加硫を行い、ゴム組成物からなる厚さ1mmのゴムシートを得た。実施した混練操作の詳細は以下の(i)~(ii)の通りである。
(i)ニーダー混練:150℃に加熱した密閉式加圧ニーダーへゴムを投入し、1分間素練りを行った後、(硫黄および硫黄含有化合物の混合物)以外の残り材料の混合物を適宜投入し、合計で7分間混練後、放出した。
(ii)ロール混練(加硫系添加):放出して十分温度が下がったのち、2軸オープンロールで上述の混練物に硫黄含有化合物の混合物および/または硫黄、加硫促進剤を加え、混錬し、未加硫ゴム組成物を得た。その後、得られた未加硫ゴム組成物の加硫特性を確認の上、160℃条件下、それぞれ適切な加硫時間(t90)で加熱加圧して、厚さ1mmの加硫ゴムシートを得た。
・天然ゴム(RSS#3) 100質量部
・カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名:シーストKH) 50質量部
・酸化亜鉛3号(東邦亜鉛社製、商品名:銀嶺R) 3質量部
・ステアリン酸(新日本理化製、商品名:ステアリン酸300) 1質量部
・老化防止剤(大内新興化学社製、商品名:ノクラック6C) 1質量部
・硫黄含有化合物の混合物 13.5質量部
・加硫促進剤(大内新興化学社製、商品名:ノクセラーCZ) 3質量部
【0089】
(実施例2~6、比較例1~7)
各成分の配合を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム組成物加硫ゴムシートを得た。なお、比較例3~7では、硫黄含有化合物の混合物の代わりに硫黄(細井化学社製、油処理硫黄)を用いた。また、比較例5では、加硫促進剤を添加せずに耐熱老化剤1(Lanxess社製、商品名:Perkalink 900)を添加し、比較例5では、加硫促進剤を添加せずに耐熱老化剤2(Lanxess社製、商品名:Vulcuren)を添加した。
【0090】
[物性評価]
実施例1~6および比較例1~7で得られた未加硫ゴム組成物および加硫ゴムシートを用いて、下記の測定を行った。下記の測定結果を表2に示した。
【0091】
(耐リバージョン性)
上記で得られた未加硫ゴム組成物について、ロータレスレオメータ(東洋精機製作所社製RLR-4)を用い、JIS K6300に準拠し、160℃におけるトルク極大値(MH、[MPa])およびトルク極大値到達後10分後のトルク[MPa]を測定し、トルク極大値到達後10分後のトルクをトルク極大値で除したトルク低下率(%)を算出することにより耐リバージョン性を評価した。低下率の値が低い程、劣化が少なく、耐リバージョン性に優れることを示す。
【0092】
(耐熱老化性)
上記で得られた加硫ゴムシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、熱老化前の破断強度(TB)[MPa]および破断伸び(EB)[%]を室温(23℃)にて測定した。
続いて、同様の試験片を用い、ギヤー・オーブン(東洋精機製作所社製A45A2)中で100℃72時間放置後、熱老化後の破断強度(TB)[MPa]、破断伸び(EB)[%]を測定した。熱老化前後の破断強度及び破断伸びの保持率(%)により耐熱老化性を評価した。破断強度および破断伸びの保持率の値が100%に近い程、耐熱老化性に優れることを示す。
【0093】
(耐オーバーキュア性)
上記で得られた未加硫ゴム組成物について、170℃条件下、t90の10倍の加硫時間で加硫した厚さ1mmの加硫ゴムシートを作成した。続いて、上述の方法で破断強度(EB)および破断伸び(TB)を測定し、通常の160℃加硫ゴムシートの破断強度および破断伸びと比較した保持率(%)により、耐オーバーキュア性を評価した。破断強度および破断伸びの保持率の値が100%に近い程、耐オーバーキュア性に優れることを示す。
【0094】
実施例1~6および比較例1~7の結果から、ゴム成分と本発明の硫黄含有化合物の混合物からなる架橋剤とを混練して得られたゴム組成物およびゴムシートは、耐リバージョン性、耐熱老化性および耐オーバーキュア性に優れていた。
【0095】
【表2】
図1
図2