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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184193
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098203
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将太
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑治
(72)【発明者】
【氏名】西山 昇吾
【テーマコード(参考)】
5G309
【Fターム(参考)】
5G309AA11
(57)【要約】
【課題】防水性能を有しつつも、体格の大型化を抑制できるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス10は、筒状部材50と、筒状部材50を貫通する電線部材20と、自己融着性を有し、電線部材20の外周に巻き付けられたシート材60と、シート材60の外周に巻き付けられた第1テープ部材70とを備える。ワイヤハーネス10は、筒状部材50の軸方向の第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材80を備える。電線部材20は、複数の電線31,41を有する。シート材60は、複数の電線31,41の間の隙間を埋めるように形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材と、
前記筒状部材を貫通する電線部材と、
自己融着性を有し、前記電線部材の外周に巻き付けられたシート材と、
前記シート材の外周に巻き付けられた第1テープ部材と、
前記筒状部材の軸方向の第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記第1テープ部材の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材と、を備え、
前記電線部材は、複数の電線を有し、
前記シート材は、前記複数の電線の間の隙間を埋めるように形成されている、ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第2テープ部材は、前記筒状部材及び前記第1テープ部材から露出する部分の前記電線部材の外周に巻き付けられている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第2テープ部材から露出する部分の前記筒状部材の外周と、前記第2テープ部材の外周と、前記第2テープ部材から露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられた第3テープ部材を更に有する、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
筒状部材と、
前記筒状部材を貫通する電線部材と、
自己融着性を有し、前記電線部材の外周に巻き付けられたシート材と、
前記シート材の外周に巻き付けられた第1テープ部材と、
前記筒状部材の軸方向の第1端部の内側に嵌合するとともに、前記第1テープ部材の外周を包囲する筒状のホルダと、
前記筒状部材の前記第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記ホルダの外周と、前記ホルダから露出する部分の前記第1テープ部材の外周又は前記ホルダから露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材と、を備え、
前記電線部材は、複数の電線を有し、
前記シート材は、前記複数の電線の間の隙間を埋めるように形成されており、
前記ホルダの外周面は、前記第1テープ部材の外周面よりも摩擦係数が低い、ワイヤハーネス。
【請求項5】
前記ホルダは、前記第1テープ部材の外周の全体を覆うように設けられており、
前記第2テープ部材は、前記筒状部材の前記第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記ホルダの外周と、前記ホルダから露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられている、請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記ホルダは、前記ホルダの軸方向におけるホルダ側第1端部及びホルダ側第2端部を有し、
前記ホルダ側第1端部は、前記筒状部材の内部に配置されており、
前記ホルダ側第2端部は、前記筒状部材の外部に配置されており、
前記ホルダ側第1端部は、前記ホルダ側第2端部側から前記ホルダ側第1端部の開口端に向かうに連れて細くなるように形成されている、請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記ホルダ側第2端部は、前記筒状部材の軸方向において、前記筒状部材の軸方向の端面と係合する係合部を有する、請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記ホルダは、第1分割体と、第2分割体とを有し、
前記ホルダは、前記第1分割体と前記第2分割体とが組み合わされて筒状に形成されている、請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記第1テープ部材は、前記シート材の長さ方向の一端部から露出する前記電線部材の外周から、前記シート材の長さ方向の他端部から露出する前記電線部材の外周にわたって巻き付けられている、請求項1又は請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記複数の電線は、複数の第1電線と、前記第1電線とは異なる第2電線とを有し、
前記電線部材は、前記複数の第1電線の外周を包囲する筒状の編組部材を有し、
前記シート材は、前記編組部材の内側において前記複数の第1電線の間の隙間を埋めるとともに前記編組部材と前記第1電線との間の隙間を埋める第1シート材と、前記編組部材の外周を被覆する第2シート材と、前記第2電線と前記第2シート材との間の隙間を埋める第3シート材とが一体化されて形成されている、請求項1又は請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記複数の電線は、第1方向に沿って並んでおり、
前記筒状部材の横断面形状は、前記第1方向と直交する第2方向よりも前記第1方向に長い扁平形状に形成されている、請求項1又は請求項4に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスとしては、車両の床下等の車室外を通るように配索されるものがある。このようなワイヤハーネスとしては、電線と、電線を覆うコルゲートチューブ等の外装部材と、外装部材の外側に取り付けられるゴム製のグロメットとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。グロメットは、外装部材の外周面に密着するように取り付けられることにより、外装部材の内部に水が浸入することを抑制する防水部材として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-015822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記ワイヤハーネスでは、外装部材の外側にグロメットが取り付けられるため、ワイヤハーネスの体格が大きくなるという問題がある。そこで、防水性能を有しつつも、体格の大型化を抑制できるワイヤハーネスの開発が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、防水性能を有しつつも、体格の大型化を抑制できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、筒状部材と、前記筒状部材を貫通する電線部材と、自己融着性を有し、前記電線部材の外周に巻き付けられたシート材と、前記シート材の外周に巻き付けられた第1テープ部材と、前記筒状部材の軸方向の第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記第1テープ部材の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材と、を備え、前記電線部材は、複数の電線を有し、前記シート材は、前記複数の電線の間の隙間を埋めるように形成されている。
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、筒状部材と、前記筒状部材を貫通する電線部材と、自己融着性を有し、前記電線部材の外周に巻き付けられたシート材と、前記シート材の外周に巻き付けられた第1テープ部材と、前記筒状部材の軸方向の第1端部の内側に嵌合するとともに、前記第1テープ部材の外周を包囲する筒状のホルダと、前記筒状部材の前記第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記ホルダの外周と、前記ホルダから露出する部分の前記第1テープ部材の外周又は前記ホルダから露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材と、を備え、前記電線部材は、複数の電線を有し、前記シート材は、前記複数の電線の間の隙間を埋めるように形成されており、前記ホルダの外周面は、前記第1テープ部材の外周面よりも摩擦係数が低い。
【発明の効果】
【0008】
本開示のワイヤハーネスによれば、防水性能を有しつつも、体格の大型化を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図(図3における2-2線断面図)である。
図3図3は、第1実施形態のワイヤハーネスを示す概略横断面図(図2における3-3線断面図)である。
図4図4は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す模式図である。
図5図5は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す概略横断面図(図4における5-5線断面図)である。
図6図6は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す模式図である。
図7図7は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す模式図である。
図8図8は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す模式図である。
図9図9は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す模式図である。
図10図10は、第1実施形態のワイヤハーネスの製造方法を示す模式図である。
図11図11は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図12図12は、第2実施形態のワイヤハーネスを示す概略横断面図(図11における12-12線断面図)である。
図13図13は、第2実施形態の挿入部材を示す概略分解斜視図である。
図14図14は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図15図15は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、筒状部材と、前記筒状部材を貫通する電線部材と、自己融着性を有し、前記電線部材の外周に巻き付けられたシート材と、前記シート材の外周に巻き付けられた第1テープ部材と、前記筒状部材の軸方向の第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記第1テープ部材の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材と、を備え、前記電線部材は、複数の電線を有し、前記シート材は、前記複数の電線の間の隙間を埋めるように形成されている。
【0011】
この構成によれば、自己融着性を有するシート材によって複数の電線の間の隙間が埋められる。これにより、複数の電線の間の隙間を通じて水等の液体が筒状部材の内部に浸入することを抑制できる。また、第2テープ部材は、筒状部材の第1端部の外周と筒状部材の外部に配置された部分の第1テープ部材の外周とにわたって巻き付けられる。この第2テープ部材により、筒状部材の内周面と第1テープ部材の外周面との間の隙間を塞ぐことができる。このため、筒状部材の内周面と第1テープ部材の外周面との間の隙間を通じて液体が筒状部材の内部に浸入することを抑制できる。さらに、防水部材として機能するシート材が電線部材の外周に巻き付けられる構成であり、防水部材として機能する第2テープ部材が筒状部材の外周と第1テープ部材の外周とに巻き付けられる構成である。このため、外装部材の外側にグロメットを設ける従来の構成に比べて、ワイヤハーネス全体の体格が大型化することを抑制できる。したがって、防水性能を有しつつも、ワイヤハーネスの体格の大型化を好適に抑制できる。なお、本明細書における「筒状」は、周方向全周にわたって連続して周壁が形成されたものだけではなく、複数の部品を組み合わせて筒状をなすものも含まれる。本明細書における「筒状」は、外縁形状が円形のもの、外縁形状が扁平形のもの、外縁形状が多角形のものを含み、外縁形状が直線又は曲線で結ばれる任意の閉じた形状からなるものを言う。
【0012】
[2]上記[1]において、前記第2テープ部材は、前記筒状部材及び前記第1テープ部材から露出する部分の前記電線部材の外周に巻き付けられていることが好ましい。
この構成によれば、第2テープ部材が、筒状部材の第1端部の外周と、筒状部材から露出する第1テープ部材の外周と、筒状部材及び第1テープ部材から露出する電線部材の外周とにわたって巻き付けられる。これにより、筒状部材から露出する第1テープ部材の外周の全体が第2テープ部材により被覆され、第1テープ部材と第2テープ部材との間が迷路構造となる。このため、第2テープ部材による防水性を向上できる。
【0013】
[3]上記[1]又は[2]において、前記第2テープ部材から露出する部分の前記筒状部材の外周と、前記第2テープ部材の外周と、前記第2テープ部材から露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられた第3テープ部材を更に有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第3テープ部材が、第2テープ部材の一端から露出する筒状部材の外周から、第2テープ部材の他端から露出する電線部材の外周にわたって巻き付けられる。これにより、第2テープ部材の外周の全体が第3テープ部材により被覆され、第2テープ部材と第3テープ部材との間が迷路構造となる。このため、第2テープ部材及び第3テープ部材によって、筒状部材の内周面と第1テープ部材の外周面との隙間を通じて液体が筒状部材の内部に浸入することを好適に抑制できる。
【0015】
[4]本開示のワイヤハーネスは、筒状部材と、前記筒状部材を貫通する電線部材と、自己融着性を有し、前記電線部材の外周に巻き付けられたシート材と、前記シート材の外周に巻き付けられた第1テープ部材と、前記筒状部材の軸方向の第1端部の内側に嵌合するとともに、前記第1テープ部材の外周を包囲する筒状のホルダと、前記筒状部材の前記第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記ホルダの外周と、前記ホルダから露出する部分の前記第1テープ部材の外周又は前記ホルダから露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材と、を備え、前記電線部材は、複数の電線を有し、前記シート材は、前記複数の電線の間の隙間を埋めるように形成されており、前記ホルダの外周面は、前記第1テープ部材の外周面よりも摩擦係数が低い。
【0016】
この構成によれば、上記[1]と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1テープ部材の外周を包囲するホルダの外周面は、第1テープ部材の外周面よりも摩擦係数が低い。これにより、筒状部材の内部にホルダを挿入する際に、筒状部材の内周面に対してホルダが滑りやすくなる。このため、筒状部材の内部にホルダを挿入する際の作業性を向上できる。
【0017】
[5]上記[4]において、前記ホルダは、前記第1テープ部材の外周の全体を覆うように設けられており、前記第2テープ部材は、前記筒状部材の前記第1端部の外周と、前記筒状部材の外部に配置された部分の前記ホルダの外周と、前記ホルダから露出する部分の前記電線部材の外周とにわたって巻き付けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第1テープ部材の全体がホルダの内部に収容される。また、第2テープ部材は、筒状部材の第1端部の外周と、筒状部材の外部に配置された部分のホルダの外周と、ホルダから露出する部分の電線部材の外周とにわたって巻き付けられる。この第2テープ部材により、筒状部材の内周面とホルダの外周面との間の隙間を塞ぐことができるとともに、ホルダの内周面と電線部材の外周面との間の隙間を塞ぐことができる。このため、筒状部材の内周面とホルダの外周面との間の隙間、及びホルダの内周面と電線部材の外周面との間の隙間を通じて液体が筒状部材の内部に浸入することを抑制できる。
【0019】
[6]上記[4]又は[5]において、前記ホルダは、前記ホルダの軸方向におけるホルダ側第1端部及びホルダ側第2端部を有し、前記ホルダ側第1端部は、前記筒状部材の内部に配置されており、前記ホルダ側第2端部は、前記筒状部材の外部に配置されており、前記ホルダ側第1端部は、前記ホルダ側第2端部側から前記ホルダ側第1端部の開口端に向かうに連れて細くなるように形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ホルダのうち筒状部材の内部に最初に挿入される部分であるホルダ側第1端部が先細り形状に形成される。これにより、筒状部材の内部にホルダを挿入しやすくなる。このため、筒状部材の内部にホルダを挿入する際の作業性を向上できる。
【0021】
[7]上記[6]において、前記ホルダ側第2端部は、前記筒状部材の軸方向において、前記筒状部材の軸方向の端面と係合する係合部を有することが好ましい。
この構成によれば、ホルダ側第2端部に、筒状部材の軸方向の端面と係合する係合部が設けられる。このため、筒状部材の内部にホルダを挿入する際に、筒状部材の軸方向におけるホルダの位置決めを容易に行うことができる。これにより、筒状部材の内部にホルダを挿入する際の作業性を向上できる。
【0022】
[8]上記[4]から[7]のいずれか1つにおいて、前記ホルダは、第1分割体と、第2分割体とを有し、前記ホルダは、前記第1分割体と前記第2分割体とが組み合わされて筒状に形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ホルダが、第1分割体と第2分割体とによって第1テープ部材を包囲する筒状に形成されている。これにより、ホルダを筒状としながらも、ホルダが第1分割体と第2分割体とに分かれていることで、ホルダを電線部材等に対して後付け可能となる。すなわち、ホルダが第1分割体と第2分割体とに分かれていることで、例えば電線部材の外周に対してシート材及び第1テープ部材を巻き付けた後に、その電線部材に対してホルダを取り付けることが可能である。この結果、ワイヤハーネスの組立作業性を向上できる。
【0024】
[9]上記[1]から[8]のいずれか1つにおいて、前記第1テープ部材は、前記シート材の長さ方向の一端部から露出する前記電線部材の外周から、前記シート材の長さ方向の他端部から露出する前記電線部材の外周にわたって巻き付けられていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、シート材の外周の全体を覆うように第1テープ部材が巻き付けられる。この第1テープ部材により、シート材を好適に保護することができる。
[10]上記[1]から[9]のいずれか1つにおいて、前記複数の電線は、複数の第1電線と、前記第1電線とは異なる第2電線とを有し、前記電線部材は、前記複数の第1電線の外周を包囲する筒状の編組部材を有し、前記シート材は、前記編組部材の内側において前記複数の第1電線の間の隙間を埋めるとともに前記編組部材と前記第1電線との間の隙間を埋める第1シート材と、前記編組部材の外周を被覆する第2シート材と、前記第2電線と前記第2シート材との間の隙間を埋める第3シート材とが一体化されて形成されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、第1シート材により、複数の第1電線の間の隙間と、編組部材と第1電線との間の隙間とが埋められる。また、第2シート材により、編組部材の外周が被覆される。さらに、第3シート材により、第2電線と第2シート材との間の隙間が埋められる。そして、第1シート材と第2シート材と第3シート材とが一体化される。これら第1シート材、第2シート材及び第3シート材により、複数の第1電線の間の隙間、編組部材と第1電線との間の隙間や第2電線と第2シート材との間の隙間を通じて液体が筒状部材の内部に浸入することを抑制できる。
【0027】
[11]上記[1]から[10]のいずれか1つにおいて、前記複数の電線は、第1方向に沿って並んでおり、前記筒状部材の横断面形状は、前記第1方向と直交する第2方向よりも前記第1方向に長い扁平形状に形成されていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、筒状部材の横断面形状が、複数の電線が並ぶ第1方向に長い扁平形状に形成される。このため、筒状部材の横断面において第1方向に沿う寸法と第2方向に沿う寸法とが互いに等しい場合に比べて、筒状部材を第2方向に小型化ができる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示している。本明細書における「平行」、「直交」や「垂直」は、厳密に平行、直交や垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行、直交や垂直の場合も含まれる。一部の図面には、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸を図示している。以下の説明では、便宜上、X軸に沿って延びる方向をX軸方向と称し、Y軸に沿って延びる方向をY軸方向と称し、Z軸に沿って延びる方向をZ軸方向と称する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
(第1実施形態)
以下、ワイヤハーネスの第1実施形態について説明する。
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両Vに搭載されるものである。ワイヤハーネス10は、2個以上の電気機器M1,M2,M3,M4を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの前後方向に延びるように長尺状に形成されている。ワイヤハーネス10は、例えば、ワイヤハーネス10の長さ方向の中間部分が車両Vの床下などの車室外を通るように車両Vに配索される。
【0031】
ワイヤハーネス10は、電線部材20と、電線部材20が貫通する筒状部材50とを有している。電線部材20は、例えば、電気機器M1と電気機器M2とを電気的に接続する第1電線部材30と、電気機器M3と電気機器M4とを電気的に接続する第2電線部材40とを有している。
【0032】
第1電線部材30の長さ方向の一端部は電気機器M1と電気的に接続されるとともに、第1電線部材30の長さ方向の他端部は電気機器M2と電気的に接続されている。電気機器M1は、例えば、車両Vの前方寄りに設けられるインバータである。電気機器M2は、例えば、電気機器M1よりも車両Vの後方に設けられる高圧バッテリである。インバータとしての電気機器M1は、車両走行の動力源となる図示しない車輪駆動用のモータと接続される。インバータとしての電気機器M1は、高圧バッテリの直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリとしての電気機器M2は、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0033】
第2電線部材40の長さ方向の一端部は電気機器M3と電気的に接続されるとともに、第2電線部材40の長さ方向の他端部は電気機器M4と電気的に接続されている。電気機器M3は、例えば、車両Vの前方寄りに設けられる電気接続箱である。電気機器M4は、例えば、電気機器M3よりも車両Vの後方に設けられる低圧バッテリである。電気接続箱としては、例えば、リレーボックス、ヒューズボックス、ジャンクションボックスなどが挙げられる。電気接続箱としての電気機器M3は、低圧バッテリから供給された電圧を、車両Vに搭載された各種機器に分配する。低圧バッテリとしての電気機器M4は、高圧バッテリよりも低い電圧(例えば、12ボルトの電圧)を供給可能なバッテリである。
【0034】
図2及び図3に示すように、第1電線部材30と第2電線部材40とは、例えば、筒状部材50の内部においてY軸方向に沿って並んで設けられている。図2に示すように、第1電線部材30と第2電線部材40とは、例えば、筒状部材50の内部においてX軸方向に互いに並列に延びるように設けられている。
【0035】
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、電線部材20の外周に巻き付けられたシート材60と、シート材60の外周に巻き付けられた第1テープ部材70とを有している。ワイヤハーネス10は、筒状部材50の外周と第1テープ部材70の外周とに巻き付けられた第2テープ部材80を有している。ワイヤハーネス10は、例えば、筒状部材50の外周と、第2テープ部材80の外周と、電線部材20の外周とに巻き付けられた第3テープ部材90を有している。第1テープ部材70と第2テープ部材80と第3テープ部材90とは、例えば、基材と、基材の片面に粘着層が積層された粘着テープである。
【0036】
(第1電線部材30の構成)
図2及び図3に示すように、第1電線部材30は、1本又は複数本の電線31を有している。本実施形態の第1電線部材30は、2本の電線31を有している。2本の電線31は、例えば、Y軸方向に沿って並んで設けられている。第1電線部材30は、例えば、複数本の電線31の外周を一括して包囲する筒状の編組部材35を有している。
【0037】
各電線31は、導電性を有する芯線32と、芯線32の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆33とを有する被覆電線である。各電線31は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。各電線31は、例えば、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線31は、ノンシールド電線である。
【0038】
芯線32としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線や単一の導体からなる単芯線などを用いることができる。単芯線としては、例えば、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。芯線32の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0039】
絶縁被覆33は、例えば、芯線32の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆33は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
各電線31の長さ方向と直交する平面によって電線31を切断した断面形状、つまり各電線31の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。各電線31の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状、扁平形状等に形成することができる。図3に示すように、本実施形態の各電線31の横断面形状は、円形状に形成されている。なお、本明細書において、「扁平形状」には、長方形、長円形や楕円形などが含まれる。本明細書における「長方形」は、長辺と短辺とを有するものであり、正方形を除いたものである。本明細書における「長円形」は、2つの略等しい長さの平行線と2つの半円形からなる角丸長方形状である。本明細書における「長円形」は、平行線が延びる長辺と、2つの平行線が並ぶ方向に延びる短辺とを有している。
【0040】
編組部材35は、全体として長尺の筒状をなしている。編組部材35は、例えば、可撓性を有している。編組部材35としては、例えば、複数の金属素線が編成された編組線や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編成された編組線を用いることができる。編組部材35は、複数の網目36を有している。図示は省略するが、編組部材35の長さ方向の両端部は、例えば、電気機器M1,M2(図1参照)などにおいてアース接続されている。このような編組部材35は、電磁シールド部材として機能する。
【0041】
編組部材35の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。編組部材35の横断面形状は、例えば、Z軸方向よりもY軸方向に長い扁平形状に形成されている。本実施形態の編組部材35の横断面形状は、長辺がY軸方向に延びるとともに短辺がZ軸方向に延びる長円形状に形成されている。編組部材35の内周面は、電線31の外周面に直接接触していてもよいし、電線31の外周面に直接接触していなくてもよい。
【0042】
(第2電線部材40の構成)
第2電線部材40は、1本又は複数本の電線41を有している。本実施形態の第2電線部材40は、1本の電線41を有している。
【0043】
電線41は、導電性を有する芯線42と、芯線42の外周を囲うとともに絶縁性を有する絶縁被覆43とを有する被覆電線である。電線41は、例えば、低圧電線である。電線41は、例えば、ノンシールド電線であってもよいし、シールド電線であってもよい。本実施形態の電線41は、ノンシールド電線である。
【0044】
芯線42としては、例えば、撚線や単芯線を用いることができる。芯線42の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
絶縁被覆43は、例えば、芯線42の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆43は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
【0045】
電線41の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。本実施形態の電線41の横断面形状は、円形状に形成されている。電線41の外径は、例えば、各電線31の外径よりも大きい。
【0046】
電線41と複数の電線31とは、例えば、Y軸方向に沿って並んで設けられている。すなわち、電線部材20が有する複数の電線31,41は、Y軸方向に沿って一列に並んで設けられている。
【0047】
(筒状部材50の構成)
筒状部材50は、全体として長尺の筒状をなしている。図1に示すように、筒状部材50は、例えば、電線部材20を部分的に収容している。筒状部材50は、例えば、電線部材20の長さ方向の中間部分を内部に収容している。筒状部材50は、内部に収容した電線部材20を飛翔物や水滴から保護する。筒状部材50としては、例えば、金属製又は樹脂製のパイプや、樹脂製のプロテクタ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。本実施形態の筒状部材50は、樹脂製のパイプである。筒状部材50の材料としては、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂を用いることができる。
【0048】
筒状部材50は、筒状部材50の軸方向における第1端部51及び第2端部52を有している。第1端部51は、筒状部材50の軸方向において、電気機器M1,M3に最も近い位置に設けられた端部である。第2端部52は、筒状部材50の軸方向において、電気機器M2,M4に最も近い位置に設けられた端部である。
【0049】
筒状部材50の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。図3に示すように、筒状部材50の横断面形状は、例えば、Z軸方向よりもY軸方向に長い扁平形状に形成されている。本実施形態の筒状部材50の横断面形状は、長辺がY軸方向に延びるとともに短辺がZ軸方向に延びる長円形状に形成されている。
【0050】
(シート材60の構成)
図2に示すように、シート材60は、例えば、電線部材20の長さ方向の中間部に設けられている。シート材60は、例えば、電線部材20の長さ方向に沿って延びる縦断面形状を有している。シート材60は、例えば、シート材60の長さ方向の一部が筒状部材50の内部に収容されるとともに、シート材60の残りの部分が筒状部材50の第1端部51から筒状部材50の外部に引き出されるように設けられている。
【0051】
シート材60は、例えば、シート状又はテープ状に形成されている。シート材60は、自己融着性を有している。シート材60の材料としては、例えば、ブチルゴムやシリコンゴムを用いることができる。シート材60としては、例えば、シート状をなすブチルシートを用いることができる。シート材60としては、例えば、ブチルテープを用いることもできる。
【0052】
図3に示すように、シート材60は、複数の電線31,41の間の隙間を埋めるように設けられている。シート材60は、例えば、第1電線部材30と第2電線部材40との間の隙間を充填するように設けられている。シート材60は、例えば、複数の電線31の各々の外周を周方向全周にわたって被覆している。シート材60は、例えば、複数の電線31の各々の外周面に周方向全周にわたって隙間無く密着している。シート材60は、例えば、複数の電線31の間の隙間を充填するように設けられている。シート材60は、例えば、編組部材35の内周面を周方向全周にわたって被覆している。シート材60は、例えば、各電線31と編組部材35との間の隙間を充填するように設けられている。シート材60は、例えば、編組部材35の外周面を周方向全周にわたって被覆している。シート材60は、例えば、電線41の外周を周方向全周にわたって被覆している。シート材60は、例えば、電線41の外周面に周方向全周にわたって隙間無く密着している。シート材60は、例えば、編組部材35と電線41との間の隙間を充填するように設けられている。シート材60は、例えば、編組部材35の網目36に入り込むように設けられている。シート材60は、例えば、網目36を充填するように設けられている。シート材60は、例えば、電線部材20の長さ方向の中間部における編組部材35を内包するように設けられている。シート材60は、複数の電線31,41の間の隙間から水等の液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制する防水部材として機能する。
【0053】
シート材60は、例えば、複数のシート材、具体的には第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とが一体化されて形成されている。第1シート材61は、例えば、編組部材35の内部において複数の電線31の間の隙間を埋めるとともに編組部材35と電線31との間の隙間を埋めるように形成されている。第2シート材62は、例えば、編組部材35の外周を被覆するように形成されている。第3シート材63は、例えば、第2シート材62と電線41との間の隙間を埋めるように形成されている。第1シート材61と第2シート材62とは、例えば、編組部材35の網目36を通じて連続して一体に形成されている。第2シート材62と第3シート材63とは連続して一体に形成されている。なお、図3では、第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とを判り易くするため、それらを実線にて区別している。但し、実際には、第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63との界面は消失していることがあり、境界は明確ではないことがある。
【0054】
(第1テープ部材70の構成)
図2に示すように、第1テープ部材70は、例えば、シート材60の外周と、シート材60から露出する部分の電線部材20の外周とにわたって巻き付けられている。第1テープ部材70は、例えば、シート材60の長さ方向の一端部から露出する電線部材20の外周面から、シート材60の長さ方向の他端部から露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的に巻き付けられている。第1テープ部材70は、例えば、シート材60の外周の全体を被覆するように形成されている。
【0055】
第1テープ部材70は、例えば、粘着層を径方向内側に向けた状態で、シート材60と電線部材20との外周面に対して螺旋状に巻き付けられている。図2及び図3では詳細な図示を省略するが、第1テープ部材70は、例えば、第1テープ部材70の幅方向の一部が重なるように、シート材60及び電線部材20の外周面に螺旋状に巻き付けられている。すなわち、第1テープ部材70は、オーバーラップ巻きの構造を有している。ここで、オーバーラップ巻きの構造とは、テープ部材の幅方向における所定部分同士が重なるようにテープ部材を螺旋状に巻き付けた構造である。オーバーラップ巻きの構造においては、先に巻かれた部分の全幅に対して、後に巻かれた部分の幅の割合をラップ代と称する。オーバーラップ巻きとしては、例えば、テープ部材の幅の半分が重ねられるハーフラップ巻き等を採用することができる。なお、ハーフラップ巻きにおけるラップ代は2分の1である。本実施形態の第1テープ部材70は、ハーフラップ巻きの構造を有している。
【0056】
第1テープ部材70は、例えば、第1テープ部材70の長さ方向の一部が筒状部材50の内部に収容されるとともに、第1テープ部材70の残りの部分が第1端部51から筒状部材50の外部に引き出されるように設けられている。第1テープ部材70は、例えば、シート材60を保護する機能を有している。第1テープ部材70は、例えば、粘着性を有するシート材60の外周面を被覆する機能を有している。
【0057】
以上説明した電線部材20とシート材60と第1テープ部材70とによって、筒状部材50の内部に挿入される挿入部材15が構成される。
(第2テープ部材80の構成)
第2テープ部材80は、筒状部材50の第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられている。すなわち、第2テープ部材80は、第1端部51の外周面と、第1端部51から筒状部材50の外部に引き出された第1テープ部材70の外周面とにわたって巻き付けられている。第2テープ部材80は、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐように形成されている。第2テープ部材80は、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間から水等の液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制する防水部材として機能する。本実施形態の第2テープ部材80は、第1テープ部材70から露出する部分の電線部材20の外周面にも巻き付けられている。すなわち、本実施形態の第2テープ部材80は、第1端部51の外周面から、筒状部材50及び第1テープ部材70から露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的に巻き付けられている。本実施形態の第2テープ部材80は、筒状部材50から露出する第1テープ部材70の外周の全体を被覆するように形成されている。
【0058】
第2テープ部材80は、例えば、粘着層を径方向内側に向けた状態で、筒状部材50と第1テープ部材70と電線部材20との外周面に対して螺旋状に巻き付けられている。第2テープ部材80は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。第2テープ部材80は、例えば、第2テープ部材80の長さ方向の大部分においてハーフラップ巻きの構造を有している。第2テープ部材80は、例えば、筒状部材50の外周面から第1テープ部材70の外周面に巻き落としされた巻き落とし部分において、第2テープ部材80の幅の全部が重ねられるように複数回巻き付けられている。すなわち、上記巻き落とし部分における第2テープ部材80は、第1テープ部材70の外周面に対して、ラップ代が1となるオーバーラップ巻きにより複数回巻き付けられている。なお、ラップ代が1となるオーバーラップ巻きの構造では、第1テープ部材70の外周面に対して第2テープ部材80が渦巻状に巻き付けられる。
【0059】
ここで、筒状部材50の外周面と第1テープ部材70の外周面との間には段差が生じるため、その段差に起因して上記巻き落とし部分に巻き付けられた第2テープ部材80に皺が発生しやすくなる。第2テープ部材80に皺が発生すると、第1テープ部材70の外周面と第2テープ部材80の内周面との間に隙間が生じ、第2テープ部材80による防水性が低下する。これに対し、上記巻き落とし部分において第2テープ部材80を渦巻状に複数回巻き付けるようにしたため、第1テープ部材70の外周面と第2テープ部材80の内周面との間に隙間が生じることを好適に抑制できる。
【0060】
図3に示すように、第2テープ部材80は、例えば、筒状部材50の外周面を周方向全周にわたって被覆している。第2テープ部材80は、例えば、第1テープ部材70の外周面を周方向全周にわたって被覆している。第2テープ部材80は、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を周方向全周にわたって塞ぐように形成されている。なお、図3では、第2テープ部材80のオーバーラップ巻きの構造の図示を省略している。
【0061】
(第3テープ部材90の構成)
図2に示すように、第3テープ部材90は、第2テープ部材80と協働して、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐように形成されている。第3テープ部材90は、第2テープ部材80から露出する部分の筒状部材50の外周と、第2テープ部材80の外周と、第2テープ部材80から露出する部分の電線部材20の外周とにわたって巻き付けられている。すなわち、第3テープ部材90は、第2テープ部材80の長さ方向の一端部から露出する筒状部材50の外周面から、第2テープ部材80の長さ方向の他端部から露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的に巻き付けられている。第3テープ部材90は、第2テープ部材80の外周の全体を被覆するように形成されている。
【0062】
第3テープ部材90は、例えば、粘着層を径方向内側に向けた状態で、筒状部材50と第2テープ部材80と電線部材20との外周面に対して螺旋状に巻き付けられている。図2及び図3では詳細な図示を省略するが、第3テープ部材90は、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。本実施形態の第3テープ部材90は、ハーフラップ巻きの構造を有している。
【0063】
このように、筒状部材50の第1端部51には、シート材60と第1テープ部材70と第2テープ部材80と第3テープ部材90とを有する防水構造が設けられる。なお、図1に示した筒状部材50の第2端部52にも、第1端部51に設けた防水構造と同様の防水構造を設けるようにしてもよい。
【0064】
(ワイヤハーネス10の製造方法)
次に、ワイヤハーネス10の製造方法について説明する。
まず、図4に示すように、第1電線部材30と第2電線部材40とを有する電線部材20を準備する。このとき、電線部材20の長さ方向の中間部には、自己融着前のシート材60が取り付けられている。
【0065】
図5に示すように、自己融着前のシート材60は、編組部材35の内側において複数の電線31の外周を包囲する第1シート材61を有している。自己融着前のシート材60は、編組部材35の外周を包囲する第2シート材62を有している。自己融着前のシート材60は、第2シート材62の外周及び電線41の外周を包囲する第3シート材63を有している。なお、自己融着前では、複数の電線31の間の隙間と、電線31と編組部材35との間の隙間と、編組部材35と電線41との間の隙間とがシート材60により充填されていない。
【0066】
続いて、第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とを径方向内側に向かって加圧することにより、自己融着性を利用して第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とを一体化する。これにより、図3に示したシート材60を形成することができる。すなわち、複数の電線31の間の隙間と、電線31と編組部材35との間の隙間と、編組部材35と電線41との間の隙間とを充填するシート材60を形成することができる。例えば、第2シート材62が編組部材35に向かって加圧されると、第2シート材62が編組部材35の網目36に入り込み、網目36を通じて第2シート材62が第1シート材61と一体化される。なお、本工程において、第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とに対して振動を加えてもよいし、第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とを加熱してもよい。
【0067】
次に、図6に示す工程では、第1テープ部材70を、電線部材20の外周面とシート材60の外周面とに巻き付ける。第1テープ部材70を巻き付ける際には、例えば、渦巻状の構造体から第1テープ部材70が引き出され、その引き出された第1テープ部材70が電線部材20及びシート材60の外周面に螺旋状に巻き付けられる。図7に示すように、本実施形態の第1テープ部材70は、シート材60の長さ方向の一端部から露出する電線部材20の外周面から、シート材60の長さ方向の他端部から露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的にハーフラップ巻きされる。以上の工程により、電線部材20とシート材60と第1テープ部材70とを有する挿入部材15が形成される。
【0068】
続いて、図8に示す工程では、筒状部材50の内部に挿入部材15を挿入する。シート材60及び第1テープ部材70の長さ方向の一部が筒状部材50の内部に挿入されるように、挿入部材15を筒状部材50に挿入する。本工程の構造体では、筒状部材50の内周面と、挿入部材15の外周面、具体的には第1テープ部材70の外周面との間に隙間が生じている。
【0069】
次いで、第2テープ部材80を、筒状部材50の第1端部51の外周面と第1端部51から筒状部材50の外部に引き出された挿入部材15の外周面とに巻き付ける。第2テープ部材80は、筒状部材50及び挿入部材15の外周面に対して、電線部材20の長さ方向に沿う進行方向P1に沿って螺旋状に巻き付けられる。すなわち、第2テープ部材80は、筒状部材50及び挿入部材15の外周面に対して、進行方向P1の始端側(図中右側の筒状部材50側)から進行方向P1の終端側(図中左側)に向かって進むように螺旋状に巻き付けられる。図9に示すように、本実施形態の第2テープ部材80は、筒状部材50の第1端部51の外周面から、筒状部材50及び第1テープ部材70から露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的にオーバーラップ巻きされる。本工程により、筒状部材50の内周面と挿入部材15の外周面との間の隙間が第2テープ部材80によって塞がれる。
【0070】
次に、図10に示す工程では、第3テープ部材90を、筒状部材50の外周面と第2テープ部材80の外周面と第2テープ部材80から露出する電線部材20の外周面とに巻き付ける。以上の工程により、本実施形態のワイヤハーネス10を製造することができる。
【0071】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1-1)ワイヤハーネス10は、筒状部材50と、筒状部材50を貫通する電線部材20と、自己融着性を有し、電線部材20の外周に巻き付けられたシート材60と、シート材60の外周に巻き付けられた第1テープ部材70とを備える。ワイヤハーネス10は、筒状部材50の軸方向の第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材80を備える。シート材60は、電線部材20が有する複数の電線31,41の間の隙間を埋めるように形成されている。
【0072】
この構成によれば、自己融着性を有するシート材60によって複数の電線31,41の間の隙間が埋められる。これにより、複数の電線31,41の間の隙間を通じて水等の液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制できる。また、第2テープ部材80は、筒状部材50の第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられる。この第2テープ部材80により、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐことができる。このため、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を通じて液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制できる。さらに、防水部材として機能するシート材60が電線部材20の外周に巻き付けられる構成であり、防水部材として機能する第2テープ部材80が筒状部材50の外周と第1テープ部材70の外周とに巻き付けられる構成である。このため、外装部材の外側にグロメットを設ける従来の構成に比べて、ワイヤハーネス10全体の体格が大型化することを抑制できる。したがって、防水性能を有しつつも、ワイヤハーネス10の体格の大型化を好適に抑制できる。
【0073】
(1-2)第2テープ部材80は、筒状部材50の第1端部51の外周と、筒状部材50から露出する第1テープ部材70の外周と、筒状部材50及び第1テープ部材70から露出する電線部材20の外周とにわたって巻き付けられる。これにより、筒状部材50から露出する第1テープ部材70の外周の全体が第2テープ部材80により被覆され、第1テープ部材70と第2テープ部材80との間が迷路構造となる。このため、第2テープ部材80による防水性を向上できる。
【0074】
(1-3)第3テープ部材90は、第2テープ部材80の一端から露出する筒状部材50の外周から、第2テープ部材80の他端から露出する電線部材20の外周にわたって巻き付けられる。これにより、第2テープ部材80の外周の全体が第3テープ部材90により被覆され、第2テープ部材80と第3テープ部材90との間が迷路構造となる。このため、第2テープ部材80及び第3テープ部材90によって、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との隙間を通じて液体が筒状部材50の内部に浸入することを好適に抑制できる。
【0075】
(1-4)第1テープ部材70は、シート材60の外周の全体を覆うようにシート材60及び電線部材20に巻き付けられる。この第1テープ部材70により、シート材60を好適に保護することができる。また、粘着面となるシート材60の外周面を第1テープ部材70により被覆できるため、シート材60が取り付けられた電線部材20を筒状部材50の内部に挿入する際の作業性を向上できる。
【0076】
(1-5)第1シート材61により、複数の電線31の間の隙間と、編組部材35と電線31との間の隙間とが埋められる。また、第2シート材62により、編組部材35の外周が被覆される。さらに、第3シート材63により、電線41と第2シート材62との間の隙間が埋められる。そして、第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とが一体化されてシート材60が形成される。これら第1シート材61、第2シート材62及び第3シート材63により、複数の電線31の間の隙間、編組部材35と電線31との間の隙間や電線41と第2シート材62との間の隙間を通じて液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制できる。
【0077】
(1-6)筒状部材50の横断面形状は、Z軸方向(第2方向)よりも複数の電線31,41が並ぶY軸方向(第1方向)に長い扁平形状に形成される。このため、筒状部材50の横断面においてY軸方向に沿う寸法とZ軸方向に沿う寸法とが互いに等しい場合に比べて、筒状部材50をZ軸方向に小型化できる。
【0078】
(第2実施形態)
以下、ワイヤハーネスの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態との相違点について主に説明し、第1実施形態と同一の構成もしくは対応する構成に同一の符号を付して、その構成の説明の一部又は全部を省略する場合がある。
【0079】
(ワイヤハーネス10Aの構成)
図11に示すように、ワイヤハーネス10Aは、筒状部材50と、筒状部材50の内部に挿入される挿入部材15Aと、筒状部材50の外周と筒状部材50から露出する部分の挿入部材15Aの外周とに巻き付けられた第2テープ部材80Aとを有している。ワイヤハーネス10Aは、例えば、第2テープ部材80Aの外周の全体を被覆する第3テープ部材90Aを有している。挿入部材15Aは、電線部材20と、シート材60と、第1テープ部材70と、筒状部材50の第1端部51の内側に嵌合する筒状のホルダ100とを有している。第2テープ部材80Aと第3テープ部材90Aとは、例えば、基材と、基材の片面に粘着層が積層された粘着テープである。
【0080】
ホルダ100は、ホルダ100の軸方向におけるホルダ側第1端部101及びホルダ側第2端部102を有している。ホルダ100は、シート材60及び第1テープ部材70が巻き付けられた電線部材20が貫通する収容部103を有している。ホルダ100は、例えば、ホルダ100の軸方向の一部が筒状部材50の内部に収容されるとともに、ホルダ100の残りの部分が筒状部材50の外部に配置されるように設けられている。本実施形態では、ホルダ側第1端部101が筒状部材50の内部に配置されるとともに、ホルダ側第2端部102が筒状部材50の外部に配置されている。
【0081】
ホルダ100の外周面は、第1テープ部材70の外周面よりも摩擦係数が低い。ホルダ100は、例えば、金属製又は樹脂製である。本実施形態のホルダ100は、樹脂製である。ホルダ100の材料としては、例えば、自己潤滑性に優れた合成樹脂を用いることができる。ホルダ100の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタールなどの合成樹脂を用いることができる。ホルダ100は、例えば、押出成形や射出成形などの周知の製造方法によって製造できる。
【0082】
図12に示すように、ホルダ100の収容部103は、第1収容部104と、第2収容部105とを有している。第1収容部104と第2収容部105とは、例えば、互いに連通するように形成されている。第1収容部104は、シート材60及び第1テープ部材70が巻き付けられた第1電線部材30を部分的に収容している。第2収容部105は、シート材60及び第1テープ部材70が巻き付けられた第2電線部材40を部分的に収容している。図11に示すように、本実施形態のホルダ100は、シート材60及び第1テープ部材70の長さ方向の一部を内部に収容している。換言すると、本実施形態の第1テープ部材70は、第1テープ部材70の長さ方向の一部がホルダ100の内部に収容されるとともに、第1テープ部材70の残りの部分がホルダ側第2端部102からホルダ100の外部に引き出されるように設けられている。本実施形態のシート材60は、シート材60の長さ方向の一部がホルダ100の内部に収容されるとともに、シート材60の残りの部分がホルダ側第2端部102からホルダ100の外部に引き出されるように設けられている。
【0083】
図12及び図13に示すように、ホルダ100は、例えば、第1分割体110Aと、第1分割体110Aとは別部品である第2分割体110Bとを有している。第1分割体110Aは、例えば、溝部114Aと凹部115Aと仕切部116Aとを有している。第2分割体110Bは、例えば、溝部114Bと凹部115Bと仕切部116Bとを有している。図12に示すように、ホルダ100は、第1分割体110Aと第2分割体110Bとを重ね合わせることにより、電線部材20とシート材60と第1テープ部材70とを包囲する筒状に形成されている。第1分割体110Aと第2分割体110Bとは、溝部114Aと溝部114Bとが互いに連通するように、且つ凹部115Aと凹部115Bとが互いに連通するように重ね合わされる。第1分割体110Aと第2分割体110Bとが重ね合わされた状態では、溝部114Aと溝部114Bとにより第1収容部104が構成されるとともに、凹部115Aと凹部115Bとにより第2収容部105が構成されている。ここで、第1分割体110Aと第2分割体110Bとは、例えば、互いに同じ構造を有している。このため、以下の説明では、第1分割体110Aの構造について詳述し、第2分割体110Bの構造については説明を割愛する。具体的には、第2分割体110Bの構造については、第1分割体110Aの対応する構成の符号の末尾の「A」を「B」に変更した符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0084】
(第1分割体110Aの構成)
図13に示すように、第1分割体110Aは、例えば、全体として半割筒状に形成されている。溝部114A及び凹部115Aの各々は、第2分割体110Bと対向する面から第2分割体110Bから離れる方向に凹むように形成されている。溝部114A及び凹部115Aの各々は、例えば、ホルダ100の軸方向に沿ってホルダ100の軸方向の全長にわたって延びている。
【0085】
図12に示すように、溝部114Aの内面は、例えば、第1電線部材30の外周面に対応する形状に形成されている。本実施形態の溝部114Aの横断面形状は、半長円状に形成されている。溝部114Aの内面は、例えば、第1電線部材30の外周を被覆するシート材60の外周に巻き付けられた第1テープ部材70の外周面に密着するように形成されている。溝部114Aの内面は、例えば、第1収容部104の周方向全周にわたって、第1テープ部材70の外周面に密着するように形成されている。
【0086】
凹部115Aの内面は、例えば、第2電線部材40の外周面に対応する形状に形成されている。本実施形態の凹部115Aの横断面形状は、半円状に形成されている。凹部115Aの内面は、例えば、第2電線部材40の外周を被覆するシート材60の外周に巻き付けられた第1テープ部材70の外周面に密着するように形成されている。凹部115Aの内面は、例えば、第2収容部105の周方向全周にわたって、第1テープ部材70の外周面に密着するように形成されている。
【0087】
仕切部116Aは、例えば、溝部114Aと凹部115Aとを部分的に仕切るように設けられている。仕切部116Aの一部は溝部114Aの内面により構成されるとともに、仕切部116Aの他の一部は凹部115Aの内面により構成されている。仕切部116Aは、Z軸方向において、仕切部116Bと対向するように設けられている。仕切部116Aの先端面と仕切部116Bの先端面とは、例えば、互いに接触しないように設けられている。仕切部116Aの先端面と仕切部116Bの先端面との間には、例えば、第1電線部材30と第2電線部材40との間の隙間を充填するシート材60が設けられている。仕切部116A及び仕切部116Bの先端面は、例えば、第1テープ部材70の外周面に密着するように形成されている。
【0088】
図11に示すように、ホルダ100のホルダ側第1端部101は、例えば、ホルダ側第2端部102側からホルダ側第1端部101の開口端に向かうに連れて細くなるように形成されている。ホルダ側第1端部101の外周面は、ホルダ側第2端部102側からホルダ側第1端部101の開口端に向かうに連れて、ホルダ100の径方向内側に傾斜する傾斜面121を有している。図13に示すように、傾斜面121は、例えば、ホルダ100の周方向全周にわたって形成されている。
【0089】
図11に示すように、ホルダ側第2端部102は、例えば、筒状部材50の軸方向において、筒状部材50の軸方向の端面と係合する係合部122を有している。係合部122は、ホルダ側第2端部102の外周面からホルダ100の径方向外側に突出するように形成されている。係合部122は、径方向外側に設けられた突出先端面123を有している。突出先端面123は、例えば、ホルダ100が筒状部材50の内側に嵌合した状態において、筒状部材50の第1端部51の外周面と面一になるように形成されている。図13に示すように、係合部122は、例えば、ホルダ100の周方向全周にわたって形成されている。
【0090】
ホルダ100の外周面に沿った横断面形状は、任意の形状とすることができる。図12に示すように、ホルダ100の外周面に沿った横断面形状は、例えば、筒状部材50の内周面に沿った横断面形状と同じである。ホルダ100の外周面に沿った横断面形状は、例えば、Z軸方向よりもY軸方向に長い扁平形状に形成されている。本実施形態のホルダ100の外周面に沿った横断面形状は、長辺がY軸方向に延びるとともに短辺がZ軸方向に延びる長円形状に形成されている。
【0091】
図11に示すように、ホルダ100は、例えば、シート材60及び第1テープ部材70を収容部103に収容した状態で、ホルダ100の軸方向のうちホルダ側第1端部101から筒状部材50の内部に挿入される。このとき、ホルダ100の係合部122が筒状部材50の軸方向の端面に係合されることにより、筒状部材50の軸方向においてホルダ100が位置決めされる。
【0092】
(第2テープ部材80Aの構成)
第2テープ部材80Aは、例えば、筒状部材50の第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分のホルダ100の外周と、ホルダ100から露出する部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられている。すなわち、第2テープ部材80Aは、第1端部51の外周面と、第1端部51から筒状部材50の外部に配置されたホルダ100の突出先端面123と、ホルダ100から露出する第1テープ部材70の外周面とにわたって巻き付けられている。第2テープ部材80Aは、筒状部材50とホルダ100との間の隙間を塞ぐように形成されている。第2テープ部材80Aは、例えば、筒状部材50の軸方向の端面と係合部122との間の隙間、及び筒状部材50の内周面とホルダ100の外周面との間の隙間を塞ぐように形成されている。第2テープ部材80Aは、ホルダ100の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐように形成されている。本実施形態の第2テープ部材80Aは、第1テープ部材70から露出する部分の電線部材20の外周面にも巻き付けられている。すなわち、本実施形態の第2テープ部材80Aは、第1端部51の外周面から、筒状部材50とホルダ100と第1テープ部材70とから露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的に巻き付けられている。本実施形態の第2テープ部材80Aは、筒状部材50及びホルダ100から露出する第1テープ部材70の外周の全体を被覆するように形成されている。
【0093】
第2テープ部材80Aは、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。第2テープ部材80Aは、例えば、第2テープ部材80Aの長さ方向の大部分においてハーフラップ巻きの構造を有している。第2テープ部材80Aは、例えば、ホルダ100の突出先端面123から第1テープ部材70の外周面に巻き落としされた巻き落とし部分において、第2テープ部材80Aの幅の全部が重ねられるように複数回巻き付けられている。すなわち、上記巻き落とし部分における第2テープ部材80Aは、第1テープ部材70の外周面に対して、ラップ代が1となるオーバーラップ巻きにより複数回巻き付けられている。
【0094】
(第3テープ部材90Aの構成)
図11に示すように、第3テープ部材90Aは、第2テープ部材80Aと協働して、筒状部材50とホルダ100との間の隙間、及びホルダ100の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐように形成されている。第3テープ部材90Aは、第2テープ部材80Aから露出する部分の筒状部材50の外周と、第2テープ部材80Aの外周と、第2テープ部材80Aから露出する部分の電線部材20の外周とにわたって巻き付けられている。第3テープ部材90Aは、第2テープ部材80Aの長さ方向の一端部から露出する筒状部材50の外周面から、第2テープ部材80Aの長さ方向の他端部から露出する電線部材20の外周面までの範囲に対して連続的に巻き付けられている。第3テープ部材90Aは、例えば、オーバーラップ巻きの構造を有している。本実施形態の第3テープ部材90Aは、ハーフラップ巻きの構造を有している。
【0095】
以上説明した実施形態によれば、第1実施形態の(1-3)~(1-6)と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(2-1)ワイヤハーネス10Aは、筒状部材50と、筒状部材50を貫通する電線部材20と、自己融着性を有し、電線部材20の外周に巻き付けられたシート材60と、シート材60の外周に巻き付けられた第1テープ部材70とを備える。ワイヤハーネス10Aは、筒状部材50の軸方向の第1端部51の内側に嵌合するとともに、第1テープ部材70の外周を包囲する筒状のホルダ100を備える。ワイヤハーネス10Aは、第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分のホルダ100の外周と、ホルダ100から露出する部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられた第2テープ部材80Aを備える。シート材60は、電線部材20が有する複数の電線31,41の間の隙間を埋めるように形成されている。ホルダ100の外周面は、第1テープ部材70の外周面よりも摩擦係数が低い。
【0096】
この構成によれば、自己融着性を有するシート材60によって複数の電線31,41の間の隙間が埋められる。これにより、複数の電線31,41の間の隙間を通じて水等の液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制できる。また、第2テープ部材80Aは、筒状部材50の第1端部51の外周と、筒状部材50の外部に配置された部分のホルダ100の外周と、ホルダ100から露出する部分の第1テープ部材70の外周とにわたって巻き付けられる。この第2テープ部材80Aにより、筒状部材50とホルダ100との間の隙間を塞ぐことができるとともに、ホルダ100の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐことができる。このため、筒状部材50とホルダ100との間の隙間、及びホルダ100の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を通じて液体が筒状部材50の内部に浸入することを抑制できる。また、防水部材として機能するシート材60が電線部材20の外周に巻き付けられる構成であり、防水部材として機能する第2テープ部材80Aが筒状部材50の外周等に巻き付けられる構成である。このため、外装部材の外側にグロメットを設ける従来の構成に比べて、ワイヤハーネス10A全体の体格が大型化することを抑制できる。したがって、防水性能を有しつつも、ワイヤハーネス10Aの体格の大型化を好適に抑制できる。
【0097】
(2-2)さらに、第1テープ部材70の外周を包囲するホルダ100の外周面は、第1テープ部材70の外周面よりも摩擦係数が低い。これにより、筒状部材50の内部にホルダ100を挿入する際に、筒状部材50の内周面に対してホルダ100が滑りやすくなる。このため、筒状部材50の内部にホルダ100を挿入する際の作業性を向上できる。
【0098】
(2-3)ホルダ100のうち筒状部材50の内部に最初に挿入される部分であるホルダ側第1端部101が先細り形状に形成される。これにより、筒状部材50の内部にホルダ100を挿入しやすくなる。このため、筒状部材50の内部にホルダ100を挿入する際の作業性を向上できる。
【0099】
(2-4)ホルダ側第2端部102には、筒状部材50の軸方向の端面と係合する係合部122が設けられる。このため、筒状部材50の内部にホルダ100を挿入する際に、筒状部材50の軸方向におけるホルダ100の位置決めを容易に行うことができる。これにより、筒状部材50の内部にホルダ100を挿入する際の作業性を向上できる。
【0100】
(2-5)ホルダ100は、第1分割体110Aと第2分割体110Bとによって第1テープ部材70を包囲する筒状に形成されている。これにより、ホルダ100を筒状としながらも、ホルダ100が第1分割体110Aと第2分割体110Bとに分かれていることで、ホルダ100を電線部材20等に対して後付け可能となる。すなわち、ホルダ100が第1分割体110Aと第2分割体110Bとに分かれていることで、例えば電線部材20の外周に対してシート材60及び第1テープ部材70を取り付けた後に、その電線部材20等に対してホルダ100を取り付けることが可能である。この結果、ワイヤハーネス10Aの組立作業性を向上できる。
【0101】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0102】
図14に示すように、第1テープ部材70の外周の全体を包囲するようにホルダ100を設けてもよい。すなわち、第1テープ部材70の外周を第1テープ部材70の長さ方向の全長にわたって包囲するようにホルダ100を設けてもよい。本変更例の挿入部材15Aでは、ホルダ100の外部に第1テープ部材70が露出されない。本変更例の第2テープ部材80Aは、筒状部材50の第1端部51の外周と、筒状部材50から露出するホルダ100の突出先端面123と、筒状部材50及びホルダ100から露出する電線部材20の外周とにわたって巻き付けられる。第2テープ部材80Aは、筒状部材50とホルダ100との間の隙間、及びホルダ100と電線部材20との間の隙間を塞ぐように形成されている。
【0103】
・上記第2実施形態の第2テープ部材80Aが巻き付けられる範囲は特に限定されない。例えば、第2テープ部材80Aは、筒状部材50とホルダ100との間の隙間、及びホルダ100の内周面と第1テープ部材70又は電線部材20の外周面との間の隙間を塞ぐことが可能であれば、その巻き付けられる範囲は特に限定されない。
【0104】
・上記第1実施形態の第2テープ部材80が巻き付けられる範囲は特に限定されない。例えば、第2テープ部材80は、筒状部材50の内周面と第1テープ部材70の外周面との間の隙間を塞ぐことが可能であれば、その巻き付けられる範囲は特に限定されない。
【0105】
例えば図15に示すように、第2テープ部材80を、筒状部材50の第1端部51の外周面から、第1端部51から筒状部材50の外部に引き出された第1テープ部材70の外周面までの範囲に対して巻き付けるようにしてもよい。換言すると、第2テープ部材80は、筒状部材50及び第1テープ部材70から露出する電線部材20の外周面に巻き付けられていなくてもよい。
【0106】
・上記各実施形態の第1テープ部材70が巻き付けられる範囲は特に限定されない。例えば、第1テープ部材70を、シート材60の外周面のみを被覆するように巻き付けるようにしてもよい。換言すると、第1テープ部材70は、シート材60から露出する電線部材20の外周面に巻き付けられていなくてもよい。
【0107】
・上記各実施形態における第1テープ部材70の巻き方は特に限定されない。
・上記各実施形態における第2テープ部材80,80Aの巻き方は特に限定されない。例えば上記各実施形態の第2テープ部材80,80Aは、それら第2テープ部材80,80Aの長さ方向の一部において、ラップ代が1となるオーバーラップ巻きの構造を有するようにしたが、これに限定されない。例えば、第2テープ部材80,80Aは、長さ方向の全長において、ラップ代が1となるオーバーラップ巻きの構造を有さなくてもよい。
【0108】
・上記各実施形態における第3テープ部材90,90Aの巻き方は特に限定されない。例えば、第3テープ部材90,90Aを、第2テープ部材80,80Aと同様に、第3テープ部材90,90Aの長さ方向の一部において、ラップ代が1となるオーバーラップ巻きの構造を有するようにしてもよい。
【0109】
・上記各実施形態における第3テープ部材90,90Aを省略してもよい。
・上記第2実施形態では、ホルダ100の係合部122の突出先端面123を、筒状部材50の外周面と面一になるように形成したが、これに限定されない。例えば、突出先端面123を、筒状部材50の外周面よりも径方向外側に配置するようにしてもよいし、筒状部材50の外周面よりも径方向内側に配置するようにしてもよい。
【0110】
・上記第2実施形態におけるホルダ100の係合部122を省略してもよい。
・上記第2実施形態におけるホルダ100の傾斜面121を省略してもよい。
・上記第2実施形態におけるホルダ100の第1分割体110A及び第2分割体110Bの各々に、第1分割体110Aと第2分割体110Bとが組み合わされた状態を維持するロック構造を設けるようにしてもよい。
【0111】
・上記第2実施形態のホルダ100では、第1分割体110Aと第2分割体110Bとを別部品で構成するようにしたが、これに限定されない。例えば、第1分割体110Aと第2分割体110Bとをヒンジ等を介して一体に形成するようにしてもよい。
【0112】
・上記各実施形態のシート材60は、3枚のシート材、具体的には第1シート材61と第2シート材62と第3シート材63とを一体化して形成するようにしたが、一体化する前のシート材の数は特に限定されない。例えば、4枚以上のシート材を一体化してシート材60を形成するようにしてもよい。また、2枚のシート材を一体化してシート材60を形成するようにしてもよい。
【0113】
・上記各実施形態における電線部材20の構成は特に限定されない。例えば上記各実施形態の第1電線部材30では、電磁シールド部材を編組部材35に具体化したが、電磁シールド部材を金属箔に具体化してもよい。例えば、第1電線部材30の電磁シールド部材を省略してもよい。例えば、第1電線部材30の有する電線31の本数を3本以上としてもよい。例えば、第2電線部材40の有する電線41の本数を2本以上としてもよい。例えば、第2電線部材40を省略し、電線部材20を第1電線部材30のみで構成するようにしてもよい。
【0114】
・車両Vにおける電気機器M1,M2,M3,M4の配置関係は、上記各実施形態に限定されるものではなく、車両Vの構成に応じて適宜変更してもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
10,10A ワイヤハーネス
15,15A 挿入部材
20 電線部材
30 第1電線部材
31 電線(第1電線)
32 芯線
33 絶縁被覆
35 編組部材
36 網目
40 第2電線部材
41 電線(第2電線)
42 芯線
43 絶縁被覆
50 筒状部材
51 第1端部
52 第2端部
60 シート材
61 第1シート材
62 第2シート材
63 第3シート材
70 第1テープ部材
80,80A 第2テープ部材
90,90A 第3テープ部材
100 ホルダ
101 ホルダ側第1端部
102 ホルダ側第2端部
103 収容部
104 第1収容部
105 第2収容部
110A 第1分割体
110B 第2分割体
114A,114B 溝部
115A,115B 凹部
116A,116B 仕切部
121 傾斜面
122 係合部
123 突出先端面
M1,M2,M3,M4 電気機器
P1 進行方向
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15