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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184199
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スライス装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20231221BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20231221BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20231221BHJP
   B26D 7/06 20060101ALI20231221BHJP
   A22C 25/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B26D3/28 640
B26D7/02 Z
B26D7/26
B26D7/06 F
A22C25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098214
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】小久保 拓実
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
(72)【発明者】
【氏名】田谷 浩二
【テーマコード(参考)】
3C021
4B011
【Fターム(参考)】
3C021CC04
3C021DC01
3C021JA04
3C021JA09
4B011KA01
4B011KE11
4B011KF04
(57)【要約】
【課題】鮮魚の柵から寿司ネタとなる切身を切り出す場合等において、柵のサイズに不足があっても寿司ネタサイズの切身を適切に切り出す上で特に有用となる、スライス装置を実現する。
【解決手段】搬送面1a上を搬送される柵を順次刃物21でスライスして刃物21の刃長方向(X方向)に沿った長手寸法Lの切身1aを柵Aから切り出すものであって、刃物21の刃長方向(X方向)と柵Aの向き(V)とのなす第1のスライス角度θ1を変更する第1のスライス角度変更機構4を設けることとした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして前記刃物の刃長方向に沿った長手寸法の切身を柵から切り出すものであって、前記刃物の刃長方向と前記柵の向きとのなす第1のスライス角度を変更する第1のスライス角度変更機構を設けたことを特徴とする、スライス装置。
【請求項2】
前記第1のスライス角度変更機構が、前記搬送面の搬送方向に延びる壁と、前記搬送面上を移動する柵を前記壁に押し付ける押付手段と、前記搬送方向に対する前記壁の相対角度を可変とすることで前記柵の向きを変更する姿勢変更手段とを備える、請求項1に記載のスライス装置。
【請求項3】
搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして前記刃物の刃幅方向に沿った短手寸法の切身を柵から切り出すためのものであって、前記刃物の刃幅方向と前記搬送面とのなす第2のスライス角度を変更する第2のスライス角度変更機構を設けたことを特徴とする、スライス装置。
【請求項4】
搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして前記刃物の刃幅方向に沿った短手寸法の切身を柵から切り出すためのものであって、前記刃物の刃幅方向と前記搬送面とのなす第2のスライス角度を変更する第2のスライス角度変更機構を設けたことを特徴とする、請求項1に記載のスライス装置。
【請求項5】
前記第2のスライス角度変更機構が、前記刃物の切っ先を搬送面と直交する面から搬送面と平行な面に向かって傾斜させる刃物傾斜手段を備える、請求項3又は4に記載のスライス装置。
【請求項6】
前記刃物の切っ先が角度変更の中心点となるように設定されている、請求項5に記載のスライス装置。
【請求項7】
前記柵のスライス時に当該柵の上部を押さえる押さえ機構を備える、請求項1~4の何れかに記載のスライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮魚の柵から寿司ネタ用の切身を切り出すうえで特に有用となる、スライス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水産加工業界では、魚体の鱗取りや三枚おろし、魚肉を刺身にスライスする工程の機械化が進められている。
このうち、例えば特許文献1には、柵から切身を切り出すにあたり、被切断物である魚体が不整一である場合に、切身として所望の重量の複数部位に分割切断することを可能にする装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-18539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては国内外を問わず、寿司の需要が高まりつつある。しかしながら、寿司ネタの加工は全て人の手で行われており、機械化が進んでいない。特に寿司業界では、労働人口の減少や職人の不足から人手不足に陥っており、繁忙期ならずとも所望の加工量を生産することに苦慮している実情がある。寿司チェーン店も同様の人材確保に課題を持っている。
【0005】
寿司ネタの加工の自動化が進まない理由として、寿司ネタは単に冷凍魚のスライスや刺身のように切身の重量を揃えるだけでは足りず、シャリの上に載せた際にシャリを覆い隠すように撓ませる関係上、刺身とは違って切身の厚みに対して長手寸法や幅寸法が比較的大きい定貫サイズでスライスする必要がある点が挙げられる。
【0006】
すなわち、魚体は大きさがまちまちであって、柵に対して普通に、すなわち柵の長尺方向に対して直角に切り出すと必要な寿司ネタサイズに満たない場合があり、柵の形状によって切り方を変えないといけないが、これまで寿司ネタの加工に必要な職人技を機械で実現できていない。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、柵から寿司ネタとなる切身を切り出す場合等において、柵のサイズに不足があっても寿司ネタサイズの切身を適切に切り出す上で特に有用となる、スライス装置を新たに実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明のスライス装置は、搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして前記刃物の刃長方向に沿った長手寸法の切身を柵から切り出すものであって、前記刃物の刃長方向と前記柵の向きとのなす第1のスライス角度を変更する第1のスライス角度変更機構を設けたことを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、柵から切り出す切身の長手寸法を第1のスライス角度を通じて変更することができるので、柵を普通に切り出せば長手方向が寸足らずになる場合であっても、長手方向の寿司ネタサイズを満たした切身を有効に切り出すことができる。
【0011】
この場合、前記第1のスライス角度変更機構は、前記搬送面の搬送方向に延びる壁と、前記搬送面上を移動する柵を前記壁に押し付ける押付手段と、前記搬送方向に対する前記壁の相対角度を可変とすることで前記柵の向きを変更する姿勢変更手段とを備えることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、刃物と搬送路の位置関係を変えずとも壁の角度を変えるだけで第1のスライス角度を変更することができる。
【0013】
また、本発明の他の構成からなるスライス装置は、搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして前記刃物の刃幅方向に沿った短手寸法の切身を柵から切り出すためのものであって、前記刃物の刃幅方向と前記搬送面とのなす第2のスライス角度を変更する第2のスライス角度変更機構を設けたことを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、柵から切り出す切身の短手寸法を第2のスライス角度を通じて変更することができるので、柵を普通に切り出せば短手方向が寸足らずになる場合であっても、短手方向の寿司ネタサイズを満たした切身を有効に切り出すことができる。
【0015】
この場合、前記第2のスライス角度変更機構は、前記刃物の切っ先を搬送面と直交する面から搬送面と平行な面に向かって傾斜させる刃物傾斜手段を備えることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、搬送路の状態を変えずとも刃物の傾斜を変えるだけで第2のスライス角度を変更することができる。
【0017】
その際、前記刃物の切っ先が角度変更の中心点となるように設定されていることが好適である。
【0018】
このようにすれば、刃物の切っ先が角度変更の中心点となるため、どの角度に変更しても、魚肉の底面を切断する位置は変わらず、柵の切り残しを少なくすることができる。
【0019】
上記において、前記柵のスライス時に当該柵の上部を押さえる押さえ機構を備えていることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、追加する押さえ機構を1つで済ませることができ、機構の小型化につながる。また、柵の横方向に機構を追加しないため、第1のスライス角度変更機構によって変更した柵角度のままで柵を簡単かつ適切に押さえてスライス動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した本発明によれば、柵から寿司ネタとなる切身を切り出す場合等において、柵のサイズに不足があっても寿司ネタサイズの切身を適切に切り出す上で特に有用となる、スライス装置を新たに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るスライス装置を示す模式図。
図2】同スライス装置の刃物と柵、切身の関係を示す図。
図3】同スライス装置における第1のスライス角度変更機構を上から見た図。
図4】同スライス装置における第1のスライス角変更制御フローを示す図。
図5】同スライス装置における第2のスライス角度変更機構を横から見た図。
図6】同スライス装置における第2のスライス角変更制御フローを示す図。
図7】同スライス装置においてスライス角変更後に切身が切り出される様子を示す図。
図8】同スライス装置によって切り出された切身を示す図。
図9】同スライス装置における切身の押さえ機構を示す図。
図10図9の比較例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
この実施形態に係る寿司ネタ用切身のスライス装置は、生鮮魚の魚体より得られる柵から、寿司ネタサイズの切身を自動で切り出すためのものである。この実施形態の柵は、例えば三枚おろしにしたサーモンをブロック状に加工したものである。勿論、スライス対象である柵となる魚の種類は鮭に限定されず、柵を得る工程も三枚おろしに限定されない。
【0025】
図1は柵Aから切身aを生成するスライス装置を示す模式図である。無限軌道を構成するコンベア(ベルトコンベア)1はモータMによって駆動され、搬送用ベルトの搬送面1aに載せられた柵Aはスライス部2に向かって矢印V0の方向に搬送後、スライス部2にてスライスに供される。スライス部2が作動して切身aが切り出される毎に、コンベア1は切身aの厚み相当分だけ間欠的に柵Aの送り動作を行い、次の切身aのスライスに備える。モータMの制御やスライス部2の制御は制御手段3が司る。
【0026】
制御手段3は、CPU、メモリ及びインターフェースからなるマイクロコンピュータユニットを含んで構成され、メモリには所要のプログラムや必要なデータが格納されている。CPUは逐次プログラムを読み込み、周辺ハードリソースと共働して、本実施形態における各種制御を実行する。
【0027】
スライス部2では、コンベア1の搬送方向と交叉する方向を刃長方向(刃渡り方向)とするように刃物21が配置されている。
【0028】
図2(a)は柵Aと刃物21を示し、図2(b)は刃物21によって切り出される切身aを搬送面1aの上から見た図、図2(c)は刃物21によって切り出される切身aを搬送面1aの横から見た図である。これらの図に示されるように、刃物21の刃長方向(刃渡り方向、X方向)が切身aの長手方向(長手寸法L)となり、刃物21の刃幅方向(身幅方向、切っ先方向。Y方向)が切身aの短手方向(短手寸法W)となる。また、1回毎の柵Aの送りピッチが切身aの厚み寸法Dとなる。長手寸法L、短手寸法W及び厚み寸法Dは、図2(d)に示すようにシャリBの上に切身aを載せたときにシャリBを覆い隠すように撓ませる関係上、寸法的に所要の条件を充足する必要がある。
【0029】
しかしながら、魚体の大きさによっては、刃物21の刃長方向(X方向)を図2(b)に示すように柵Aの長尺方向の向き(V方向。通常は搬送面1aの搬送方向V0に一致。)と直交させて切り出した切身aの長手寸法Lが、寿司ネタサイズに満たない場合がある。例えば、約35×70×5mmの切身aを切り出そうとした場合、切身aの長手寸法L(70mm)となる柵Aの対応寸法(刃物21に平行な方向の寸法)は、魚体の腹の部分では充足していても、尻尾に近づくにつれて寸足らずになり易い。
【0030】
そこで図3では、長手寸法Lが不足する場合に備えて、刃物21の刃長方向(X方向)と柵Aの向き(V方向)とのなす相対的なスライス角度θ1を変更する第1のスライス角度変更機構4を設けている。
【0031】
第1のスライス角度変更機構4は、コンベア1の搬送方向に延びる壁41と、コンベア1に沿って移動する柵Aを壁41に押し付ける押付手段42と、コンベア1の搬送方向(V0)に対する壁41の相対角度を可変とすることで柵Aの向き(V方向)を変更する姿勢変更手段43とを備えている。
【0032】
壁41は、コンベア1の搬送面1aに対して紙面垂直方向に摺接するか若しくは僅かに浮いた位置で接近するように配置され、搬送面1aからの高さはスライス対象となる柵Aの側面を押すために十分な寸法に設定されている。
【0033】
押付手段42は、動作端42aを伸縮動作させる第1アクチュエータ42bによって構成されているもので、搬送面1aの一側方から壁41に向かって動作端42aを延伸させている。搬送される柵Aを壁41に寄せられるよう、押し当てる距離は柵Aの形状によって制御手段3により調整される。押し当てる距離は、柵Aの形状より少し壁41寄りになるように設定する(柵Aを少し押し気味の距離にする)。柵Aが柔らかい魚肉であっても、押付手段42で適切に壁41に沿わせることができる。
【0034】
姿勢変更手段43は、一端をコンベア1の他側方の鉛直軸m1回りに軸支されたロッド43aと、ロッド43aの他端側を鉛直軸m2を介してコンベア1の中央に向かって付勢する第2アクチュエータ43bとを備えている。
【0035】
第1、第2アクチュエータ42b、43bには、電動シリンダが用いられている。勿論、壁41の角度を変更できるものであれば、エアシリンダ、回転モータ、ボールベアリングなどを用いてもよい。第1、第2アクチュエータ42b、43bは制御手段3によって制御される。
【0036】
制御手段3には、必要とする切身aの寸法Zを設定するための設定部30が接続され、設定された寸法Z(ここでは長手寸法L0)がメモリに記憶される。
【0037】
また、制御手段3には、柵Aの状態データ(3次元形状、方向など)を測定するための自動計測部5が接続されている。自動計測部5は、例えば画像認識用のカメラやレーザ、赤外線などを用いて柵の計測を行い、計測結果は制御手段3に取り込まれて記憶される。
【0038】
図4は第1のスライス角変更制御フローチャートである。
【0039】
先ず、制御手段3は設定部30を通じた切身aの設定値Z(ここでは長手寸法L0)の設定・入力を受け付ける(ステップS1)。
【0040】
次に、制御手段3はコンベア1を制御して柵Aを自動計測部5に搬送する(ステップS2)。
【0041】
制御手段3は、自動計測部5を通じて柵Aの状態データを計測し、計測結果を取り込む(ステップS3)。
【0042】
制御手段3は、取り込んだ柵Aの状態データと設定値Z(ここでは長手寸法L0)とに基づいて、制御データDを生成する。具体的には、先ず切身aの長手寸法L0が取れるスライス場所を算出する。切身の長手寸法L0が取れるスライス場所とは、姿勢変更せずに長手寸法L0が取れる場所を含むのは勿論のこと、姿勢変更することによって切身aの長手寸法L0が取れる場所も含む。次に、柵Aを複数の切身aに分割したときに状態データに基づきn番目の位置に切り出される切身aに何度の角度変更が必要かを算出する。そして、状態データと紐付いた制御データDを生成する(ステップS4)。
【0043】
制御手段3はその後、制御データDに基づき、コンベア1,スライス部2、第1のスライス角度変更機構4を適宜制御しながら、1柵のスライス加工を一気に完了する(ステップS5)。
【0044】
第1のスライス角度変更機構が作動すると、刃物21に向かう柵Aの向きVが変更されていることから、図7(a)に示すように刃長方向(X方向)と柵Aの向きとのなす角度θ1が図2(b)の状態から変更され、その結果、スライス加工時に、柵のサイズの不足などにより、柵Aの長手寸法Lが、設定部30で設定した切身aの設定値Z(長手寸法L0)よりも小さくなる場合でも、設定値Z(長手寸法L0)の寸法の切身aが切り出すことができる。図8(a)はこのようにして切り出された切身aを示している。
【0045】
壁41や搬送面1aには、生鮮食品である柵Aが粘着せずに表面を滑らかにスライド移動できる程度の滑動性を求められるため、所要箇所に必要な材質が選択され、また必要な表面加工等が施されている。
【0046】
上記の事項は切身aの幅寸法Wについても同様である。魚体の大きさによっては、刃物21の刃幅方向(Y方向)を図2(c)に示すように搬送面1aと直交させて切り出した切身の短手寸法Wが、寿司ネタサイズに満たない場合がある。例えば、上述したように35×70×5mmの切身を切り出そうとした場合、切身の短手寸法W(35mm)となる柵Aの対応寸法(刃物21に平行な方向の寸法)は、魚体の腹の部分では充足していても、尻尾に近づくにつれて寸足らずになり易い。
【0047】
そこで図5では、短手寸法Wが不足する場合に備えて、刃物21の刃幅方向(Y方向)と柵Aの搬送面1aとのなす相対的なスライス角度θ2を変更する第2のスライス角度変更機構6を設けている。
【0048】
第2のスライス角度変更機構6は、刃物21の切っ先を搬送面1aと直交する面から搬送面1aと平行な面に向かって傾斜させる刃物傾斜手段61を備え、刃物傾斜手段61は刃物昇降機構62全体を傾斜させることによって傾斜を実現している。
【0049】
刃物昇降機構62は、レール62a1に沿ってリニアガイド62a2が移動するように構成された一対の上下ガイド部62aと、両端をリニアガイド62aに支持されたアーム62bと、アーム62bに取り付けられて刃物21を保持する刃物取付部62cと、アーム62bを上下ガイド部62aに沿って駆動する駆動手段62dとを備えており、駆動手段62dは制御手段3によって制御される。駆動手段62dには、モータクランク機構やリニアアクチュエータなど、適宜の構成を採用することができる。
【0050】
刃物傾斜手段61は、上下ガイド部62aの下端をベース61aに対して水平軸n回りに回転可能に支持する軸支部61bと、軸支部61aの回りに上下ガイド部62aを回転駆動する駆動手段61cとを備えたもので、刃物21の切っ先の延長線が常に角度変更の中心点nに向かい、その中心点nで搬送面1aと交わるように設定している。駆動手段61cは制御手段3によって制御される。
【0051】
制御手段3には、必要とする切身aの寸法Zを設定するための設定部30が接続され、設定された寸法Z(ここでは短手寸法W0)がメモリに記憶される。
【0052】
制御手段3には、前述したように柵Aの状態データ(3次元形状、方向など)を測定するための自動計測部5が接続されている。自動計測部5は、例えば画像認識用のカメラやレーザ、赤外線などを用いて柵の計測を行い、計測結果は制御手段3に取り込まれて記憶される。
【0053】
図6は第2のスライス角変更制御フローチャートである。
【0054】
前述したように、制御手段3は設定部30を通じた切身aの設定値Z(ここでは短手寸法W0)の設定・入力を受け付ける(ステップS11)。
【0055】
次に、制御手段3はコンベア1を制御して柵A を自動計測部5に搬送する(ステップS12)。
【0056】
制御手段3は、自動計測部5を通じて柵Aの状態データを計測し、計測結果を取り込む(ステップS13)。
【0057】
制御手段3は、取り込んだ柵Aの状態データと設定値Z(ここでは短手寸法W0)とに基づいて、制御データDを生成する。具体的には、先ず切身aの短手寸法W0が取れるスライス場所を算出する。切身の短手寸法W0が取れるスライス場所とは、姿勢変更せずに短手寸法W0が取れる場所を含むのは勿論のこと、姿勢変更することによって切身aの短手寸法W0が取れる場所も含む。次に、柵Aを複数の切身aに分割したときに状態データに基づきn番目の位置に切り出される切身aに何度の角度変更が必要かを算出する。そして、状態データと紐付いた制御データDを生成する(ステップS14)。
【0058】
制御手段3はその後、制御データDに基づき、コンベア1,スライス部2、第2のスライス角度変更機構6を適宜制御しながら、1柵のスライス加工を一気に完了する(ステップS15)。
【0059】
第2のスライス角度変更機構が作動するときには、刃物21の搬送面1aとのなす角度θ2が変更されていることから、図7(b)に示すように刃幅方向(Y方向)と柵Aとのなす角度も図2(c)の状態から変更され、その結果、スライス加工時に、柵のサイズの不足などにより、柵Aの短手寸法Wが、設定部30で設定した切身aの設定値Z(ここでは短手寸法W0)よりも小さくなる場合でも、設定値Z短手寸法W0)の寸法の切身aが切り出すことができる。図8(b)はこのようにして切り出された切身aを示している。
【0060】
図4の制御と図6の制御は、図3の構成と図5の構成を併用して同じスライス対象の柵Aに対して同時に行ってもよい。この場合には、図8(a)、(b)に示すスライス結果が同時に得られることになる。
【0061】
切身aの厚みDは、搬送面1aがスライスを実行するごとに間欠的に送られる搬送面1aの送りピッチで調整され、送りピッチが大きいほど切身aの厚みDが増加する。送りピッチも制御手段3を通じて制御される。
【0062】
なお、柵Aをスライスする際、刃物21を入刀するタイミングで柵Aに力がかかり動いてしまうことで、所定の寿司ネタサイズにスライスできないことに繋がってしまう。そのため、搬送面1aがスライス位置に到来して搬送を停止した時点で、押さえ機構によって柵Aを固定する。
【0063】
その場合、図10(a)に示すように横方向(水平方向)からの押さえ機構70で柵Aを固定することも考えられるが、そのためには柵Aの左右両方向に押さえ機構70が必要になってしまう。また、上記第1のスライス角度変更手段4の角度変更に対応するために、柵Aの角度に合わせて図10(b)に示すように押さえ機構70にも押さえ角度の制御が必要になる。
【0064】
そこで本実施形態は、図9に示すように、上方からの押さえ機構7によって柵Aの上部を押さえる構成を採用している。押さえ機構7はアクチュエータによって昇降され、柵Aの搬送時に上昇し、柵Aのスライス時に降下して柵Aを搬送ベルトの搬送面1aとの間に挟み込んで押さえるように構成される。押さえ機構7も制御手段3によって制御される。
【0065】
以上において、刃物21を左右方向(刃長方向)に揺動させる揺動機構を採用し、刃物21を揺動させた状態で柵Aに対して入刀するように構成してもよい。この場合は例えば、図5に示す刃物取付部62cをスライダを介してアーム62bに取り付け、スライダを駆動要素によってアーム62bの左右方向に揺動させることで、刃物21の揺動を実現することが好適である。
【0066】
以上のように、本実施形態のスライス装置は、搬送面1a上を搬送されてスライス対象とされる柵Aを順次刃物21でスライスして刃物21の刃長方向(X方向)に沿った長手寸法Lの切身1aを柵Aから切り出すものであって、刃物21の刃長方向(X方向)と柵Aの向き(V)とのなす第1のスライス角度θ1を変更する第1のスライス角度変更機構4を設けたことを特徴とする。
【0067】
このようにすれば、柵Aから切り出す切身aの長手寸法Lを第1のスライス角度θ1を通じて変更することができるので、柵Aを普通に切り出したのでは長手方向Lが寸足らずとなる場合であっても、長手方向の寿司ネタサイズを満たした切身aを有効に切り出すことができる。
【0068】
そして、第1のスライス角度変更機構4が、搬送方向に延びる壁41と、搬送面1a上を移動する柵Aを壁41に押し付ける押付手段42と、搬送方向(V0方向)に対する壁41の相対角度を可変とすることで柵Aの向きVを変更する姿勢変更手段43とを備えているので、刃物21と搬送路であるコンベア1の位置関係を変えずとも壁41の角度を変えるだけで第1のスライス角度θ1を変更することができる。よって、例えば柵Aを腹から尻尾に向かってスライスする場合等には、第1のスライド角度θ1を徐々に変化させることで略同一長手寸法Lの切身aの切り出しを有効に実現することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態のスライス装置は、搬送面1a上を搬送される柵Aを順次刃物でスライスして刃物21の刃幅方向(Y方向)に沿った短手寸法Wの切身1aを柵Aから切り出すためのものであって、刃物21の刃幅方向(Y方向)と搬送面1aとのなす第2のスライス角度θ2を変更する第2のスライス角度変更機構6を設けたことを特徴とする。
【0070】
このようにすれば、柵Aから切り出す切身aの短手寸法Wを第2のスライス角度θ2を通じて変更することができるので、柵Aを普通に切り出したのでは短手方向Wが寸足らずとなる場合であっても、短手方向の寿司ネタサイズを満たした切身aを有効に切り出すことができる。
【0071】
この場合、第2のスライス角度変更機構6が、刃物21の切っ先を搬送面1aと直交する面から搬送面1aと平行な面に向かって傾斜させる刃物傾斜手段61を備えているので、搬送路の状態を変えずとも刃物21の傾斜を変えるだけで第2のスライス角度θ2を変更することができる。よって、例えば柵Aを腹から尻尾に向かってスライスする場合等には、第2のスライド角度θ2を徐々に変化させることで略同一短手寸法Wの切身aの切り出しを有効に実現することが可能になる。
【0072】
その際、刃物21の切っ先が角度変更の中心点nとなるように設定されており、刃物21の切っ先が角度変更の中心点となるため、どの角度に変更しても、魚肉の底面を切断する位置は変わらず、柵の切り残しを少なくすることができる。
【0073】
さらに、柵Aのスライス時に当該柵Aの上部を押さえる押さえ機構7を備えているので、追加する押さえ機構7を1つで済ませることができ、機構の小型化につながる。また、柵Aの横方向に機構を追加しないため、第1のスライス角度変更機構θ1によって変更した柵角度のままで柵Aを簡単かつ適切に押さえてスライス動作を行うことができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0075】
例えば、第1のスライド角度変更機構に関し、上記実施形態では壁の角度を変更したが、スライス部に対するコンベアの角度を変え、或いはコンベアに対するスライス部の角度を変えてもよい。また、壁の代わりにベルトコンベアを用いてもよい。その場合、柵の搬送力が増して、重量のある柵でも搬送が可能となる。
【0076】
また、第1のスライド角度変更機構に関し、第1アクチュエータの先端に凹凸がるものをつけることで、アクチュエータの先端と柵の接触面積(接触力)を増やし、柵を確実に捉えて壁に押し付けることができる。
【0077】
また、第1のスライド角度変更機構に関し、上記実施形態では柵を一方から押して壁に押し付ける構成としたが、柵の両方から壁を押し付ける構成としてもよい。
【0078】
また、第2のスライド角度変更機構に関し、上記実施形態では刃物ユニット全体を傾斜させたが、刃物を直接モータに接続して角度を変更させてもよい。
【0079】
また、第2のスライド角度変更機構に関し、上記実施形態では刃物昇降機構全体を傾斜させたが、刃物のみ、もしくはベルトコンベアの角度を変更する構成でも構わない。
【0080】
また、第2のスライド角度変更機構に関し、上記実施形態では軸支部をモータで直接駆動したが、角度変更の軸をシャフトに置き換え、リニアアクチュエータをシャフト軸からずれた位置に設置し、リニアアクチュエータを駆動させて角度を変更してもよい。その場合、リニアアクチュエータとシャフトをスライス部に接続する際の接続構造に特に制約はない。
【0081】
また、押さえ機構に関し、上記実施形態ではコンベアとの間に柵を挟み込んで固定したが、固定するものは搬送用のベルトコンベアでなくても良い。例えば、スライス用のまな板等の台座と押さえ機構で柵を挟み込んで固定することもできる。
【0082】
また、押さえ機構に関し、その形状も図示形状にこだわらない。柵が変形しないことが重要であり形状は自由である。例えば、溝や蛇腹、もしくはスパイクをつける構造としても良い。これによれば、柵の保持力の上昇につながるものとなる。
【0083】
また、押さえ機構に関し、上記実施形態では上押さえで固定しているが、上押さえと横押さえを組み合わせて構成としてもよい。
【0084】
また、押さえ機構については、ベルトコンベアと反対方向から柵を押さえられるものであれば、押さえる構成に制約はなく、例えばベルトを使用して押さえることもできる。
【0085】
また、押さえ機構については、コンベアなどの搬送用部品と押さえが一体化している構造を採用することもできる。
【0086】
また、押さえ機構については、スライス部近傍において柵を吸着することで柵を押さえてもよい。その時の吸着の構成に制限はない。
【0087】
また、押さえ機構を上下に動く構造としても良い。その場合、柵を押さえる際の圧力を調整することができる。上下に動かす駆動源に特に制約はない。
【0088】
また、上記実施形態では、寿司ネタサイズを定貫サイズとしたが、刺身となる切身を適宜の定貫サイズに切り出す場合にも本発明を適用することができる。
【0089】
また、柵をまな板や皿に載せた状態で、スライス角度を変更しながら刃物によるスライスを行うようにしてもよい。このようにすれば、スライス終了後に、切身を、まな板や皿に乗った状態のままで顧客に提供することができる。
また、上記実施形態では特に刃物を揺動させるか否かについては言及していないが、刃物を揺動させずにスライス(普通にスライス)する態様で実施してもよいことは言うまでもない。
【0090】
また、制御手段が実行する制御は上述した手順以外の手順も可能である。
【0091】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1a…搬送面
4…第1のスライス角度変更機構
6…第2のスライス角度変更機構
7…押さえ機構
21…刃物
41…壁
42…押付手段
43…搬送角度変更手段
61…刃物傾斜手段
A…柵
a…切身
L…長手寸法
n…中心点
V…柵の向き
W…短手寸法
X…刃長方向
Y…刃幅方向
θ1…第1のスライス角度
θ2…第2のスライス角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10