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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184200
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スライス装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20231221BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20231221BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20231221BHJP
   B26D 5/08 20060101ALI20231221BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20231221BHJP
   A22C 25/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B26D3/28 640
B26D7/02 Z
B26D7/18 D
B26D5/08 D
B26D5/00 Z
A22C25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098215
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】小久保 拓実
(72)【発明者】
【氏名】酒徳 大雅
(72)【発明者】
【氏名】田谷 浩二
(72)【発明者】
【氏名】野見山 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【テーマコード(参考)】
3C021
3C024
4B011
【Fターム(参考)】
3C021CC04
3C024BB05
4B011KA01
4B011KE11
4B011KF04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】柔らかい柵から所望の切身を切り出す上で特に有用となる、スライス装置を新たに実現する。
【解決手段】搬送面1a上を搬送される柵Aを順次刃物でスライスして切身aを切り出すものであって、刃物21を刃長方向(X方向)に柵Aに対して入刀する刃物駆動機構を設けたので、機械的に引き切りのように無理なく切身を切り出すことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして切身を切り出すものであって、前記刃物を刃長方向に柵に対して入刀する刃物駆動機構を設けたことを特徴とする、スライス装置。
【請求項2】
前記刃物駆動機構は、前記刃物を刃長方向に揺動させながら柵に対して入刀する刃物揺動機構である、請求項1に記載のスライス装置。
【請求項3】
前記刃物揺動機構が、刃物を上下方向に駆動する刃物上下駆動部と、刃物を左右方向に駆動する刃物左右駆動部とを備える、請求項2に記載のスライス装置。
【請求項4】
前記刃物揺動機構は、前記刃物上下駆動部を通じて刃物を最下点に降下させて停止した後、前記刃物左右駆動部を引き続き所定時間のあいだ駆動するように制御される、請求項3に記載のスライス装置。
【請求項5】
前記刃物の隣接位置に、前記刃物の入刀に先行して押さえ部を投入することで柵を固定する固定手段を有する、請求項1~4の何れかに記載のスライス装置。
【請求項6】
前記押さえ部が、柵に突き刺さる形状に構成されている、請求項5に記載のスライス装置。
【請求項7】
前記刃物の隣接位置に分離部材を更に備え、刃物が入刀された後に投入されることで切り出した切身を刃物から分離させる、請求項1に記載のスライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮魚の柵から寿司ネタのような切身を切り出すうえで特に有用となる、スライス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水産加工業界では、魚体の鱗取りや三枚おろし、魚肉を刺身にスライスする工程の機械化が進められている。
【0003】
このうち、例えば特許文献1には、柵から切身を切り出すにあたり、被切断物である魚体が不整一である場合に、切身として所望の重量の複数部位に分割切断することを可能にする装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-18539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年においては国内外を問わず、寿司の需要が高まりつつある。しかしながら、寿司ネタの加工は全て人の手で行われており、機械化が進んでいない。特に寿司業界では、労働人口の減少や職人の不足から人手不足に陥っており、繁忙期ならずとも所望の加工量を生産することに苦慮している実情がある。寿司チェーン店も同様の人材確保に課題を持っている。
【0006】
寿司ネタの加工の自動化が進まない理由として、寿司ネタは特に新鮮である必要があるため魚体を冷凍、半解凍の状態でスライスすることができず、柔らかいためにスライスし難い点が挙げられる。加えて、寿司ネタはシャリの上に載せた際にシャリを覆い隠すように撓ませる関係上、刺身とは違って切身の厚み寸法に対する長手寸法や幅寸法を比較的大きくとる必要がある。また、柵の形状によって切り方も変えないといけない。
【0007】
特に、柵のなかにスジや皮の近くの硬い部位がある場合には、切れにくく、切り出しの際に、切身の状態に影響が出る。
【0008】
こうした事情から、これまで寿司ネタに用いるような柔らかい柵に対する加工の機械化を有効に実現できていない。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、柔らかい柵から所望の切身を切り出す上で特に有用となる、スライス装置を新たに実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明のスライス装置は、搬送面上を搬送されてスライス対象とされる柵を順次刃物でスライスして切身を切り出すものであって、前記刃物を刃長方向に柵に対して入刀する刃物揺動機構を設けたことを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、刃物駆動機構によって刃物を刃長方向に入刀することができるため、機械的に引き切りのように無理なく切身を切り出すことができる。このため、切り残しを有効に無くすことができ、所望サイズの切身を適切に生成することができる。
【0013】
前記刃物駆動機構は、前記刃物を刃長方向に揺動させながら柵に対して入刀する刃物揺動機構であることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、刃物の切り込み方向を刃物駆動機構で反転させながら刃物を入刀することができるため、刃物を一方向にのみ移動させてスライスしたり、職人が包丁で引き切りをする際の移動量と比べて、必要な刃の移動量を小さくでき、装置をコンパクトに構成することができる。そして、スライス安定性が確保できることで、昇降速度や揺動速度を上げることができ、生産性向上を図ることが可能になる。
【0015】
前記刃物揺動機構は、刃物を上下方向に駆動する刃物上下駆動部と、刃物を左右方向に駆動する刃物左右駆動部とを備えることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、刃物の上下動作と左右動作を個別に制御することができるので、適切な揺動動作の下にスライスを実現することができる。
【0017】
この場合刃物揺動機構は、前記刃物上下駆動部を通じて刃物を最下点に降下させて停止した後、前記刃物左右駆動部を引き続き所定時間のあいだ駆動するように制御されることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、柵にスジや皮に近い硬い部位があっても無理なく確実に切断を行うことができる。
【0019】
さらに前記刃物の隣接位置に、前記刃物の入刀に先行して押さえ部を投入することで柵を固定する固定手段を有することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、柵を不適切な姿勢にならないように押さえた状態で切身を確実に切り出すことができる。
【0021】
その押さえ部は、柵に突き刺さる形状に構成されていることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、押さえが確実になる。
【0023】
さらに前記刃物の隣接位置に分離部材を備え、刃物が入刀された後に投入されることが望ましい。
【0024】
このようにすれば、切り出した切身を刃物から分離することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した本発明によれば、柔らかい柵から所望の切身を切り出す上で特に有用となる、スライス装置を新たに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るスライス装置を示す模式図。
図2】同スライス装置の刃物と柵、切身の関係を示す図。
図3】同スライス装置の刃物駆動機構を示す模式的な正面図。
図4】同スライス装置の刃物駆動機構を示す模式的な部分側面図。
図5】同スライス装置を制御する制御手順を示す図。
図6】同スライス装置を構成するコンベア、刃物、固定手段及び分離部材に対する駆動信号や動作位置を示すタイムチャート。
図7】同スライス装置を構成する刃物、固定手段及び分離部材の動作位置を搬送方向下流から見た図。
図8】同スライス装置を構成する刃物、固定手段及び分離部材の動作位置を搬送方向と直交する横方向から見た図。
図9】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
この実施形態に係る寿司ネタ用切身のスライス装置は、生鮮魚の魚体より得られる柵から、寿司ネタサイズの切身を自動で切り出すためのものである。この実施形態の柵は、例えば三枚おろしにしたサーモンをブロック状に加工したものである。勿論、スライス対象である柵となる魚の種類は鮭に限定されず、柵を得る工程も三枚おろしに限定されない。
【0029】
図1は柵Aから切身を生成するスライス装置を示す模式図である。無限軌道を構成するコンベア(ベルトコンベア)1はモータMによって駆動され、搬送用ベルトの搬送面1aに載せられた柵Aはスライス部2に向かって矢印V0の方向に搬送後、スライス部2にてスライスに供される。スライス部2が作動して切身aが切り出される毎に、コンベア1は切身aの厚み相当分だけ間欠的に柵Aの送り動作を行い、次の切身aのスライスに備える。モータMの制御やスライス部2の制御は制御手段3が司る。
【0030】
制御手段3は、CPU、メモリ及びインターフェースからなるマイクロコンピュータユニットを含んで構成され、メモリには所要のプログラムや必要なデータが格納されている。CPUは逐次プログラムを読み込み、周辺ハードリソースと共働して、本実施形態における各種制御を実行する。制御手段3には、設定部30を通じて各種スライス条件等の設定値Zが入力される。
【0031】
スライス部2では、コンベア1の搬送方向と交叉する方向を刃長方向(刃渡り方向)とするように刃物が配置されている。
【0032】
図2(a)は柵Aと刃物21を示し、図2(b)は刃物21によって切り出される切身aを搬送面1aの上から見た図、図2(c)は刃物21によって切り出される切身aを搬送面1aの横から見た図である。図2(b)における矢印Vは柵Aの長尺方向の向きで、通常は搬送面1aの搬送方向V0に一致している。これらの図に示されるように、刃物21の刃長方向(刃渡り方向、X方向)が切身aの長手方向(長手寸法L)となり、刃物21の刃幅方向(身幅方向、切っ先方向。Y方向)が切身aの短手方向(短手寸法W)となる。また、1回毎の柵Aの送りピッチが切身aの厚み寸法Dとなる。長手寸法L、短手寸法W及び厚み寸法Dは、図2(d)に示すようにシャリBの上に切身aを載せたときにシャリBを覆い隠すように撓ませる関係上、寸法的に所要の条件を充足する必要がある。
【0033】
ところで、寿司ネタとなる柵Aは新鮮で柔らかいため、柵Aから寿司ネタとして薄肉な切身を切り出す際に柵Aや切身aが動いて不安定になり易い問題、さらには、柵Aのなかにスジや皮があると切れにくく、切り出しの際に、切身の状態に影響が出る問題がある。
【0034】
そこで、図3図4に示すように、刃物21を刃長方向に柵Aに対して入刀する刃物駆動機構Tを設けている。
【0035】
この実施形態の刃物駆動機構Tは、刃物21を刃長方向に揺動させる刃物揺動機構として構成されている。
【0036】
柵Aを刃物21でスライスするにあたり、本実施形態は、スライス時に柵Aを固定する固定手段6と、スライスした切身aが刃物21に粘着しないように刃物21から分離させる分離手段7を併用しており、刃物21の昇降動作と、固定手段6及び分離手段7の昇降動作とを単一の駆動源で連動させている。
【0037】
図3及び図4示すように、刃物揺動機構Tは、刃物21を上下方向に駆動する刃物上下駆動部4と刃物21を左右方向に駆動する刃物左右駆動部5とを含んで構成されている。
【0038】
この実施形態の刃物上下駆動部4は、刃物21を直接上下駆動するのではなく、分離部材7の駆動を利用して間接的な駆動を実現している。このため、先ず分離部材駆動部70について説明する。
【0039】
分離部材駆動部70は、レール71aに沿ってリニアガイド71bが移動するように構成された一対の上下ガイド部71と、両端をリニアガイド71bに上下動可能に支持されたアーム72と、アーム72を上下ガイド部71に沿って駆動する駆動手段73とを備え、アーム72に分離部材7を取り付けている。
【0040】
駆動手段73は、モータ73aと、モータ73aに接続された第1リンク73bと、一端を第1リンク73bの回転端に軸着され他端をリニアガイド71bのフランジ71b1に軸着された第2リンク73cとから構成され、モータ73aの回転に伴って第1リンク73bが回転し、これに伴い第2リンク73cが連動して上下に動作してリニアガイド71bを上下駆動するように構成される。駆動手段73は制御手段3によって制御される。制御手段3は、モータ73aの回転角度を通じて分離部材7の位置を同定することができる。
【0041】
刃物上下駆動部4は、刃物取付部21aと分離部材7との間に設けたバネ20によって実現されている。すなわち、分離部材7が降下すると、バネ20を圧縮して刃物21を駆動するように構成されている。
【0042】
また、刃物左右駆動部5は、刃物取付部21aと刃物21との間を相対移動可能に接続するリニアガイド51と、刃物取付部20に対して刃物21を左右方向に駆動する駆動手段52とを備えている。
【0043】
駆動手段52は、一例としてはリニアガイド51の機能を兼ねたリニアモータを採用することが挙げられる。ただし、刃物21を左右に駆動できればどのような構成を採用しても構わない。
【0044】
固定手段6は、刃物21と略平行にスパイク61aを複数本配列したフォーク状の押さえ部61を含んで構成されている。そして、この固定手段6も、直接上下駆動するのではなく、分離部材7の駆動を利用して間接的な駆動を実現している。具体的に固定手段6はバネ60を介して分離部材7に接続されているもので、バネ60が固定手段駆動機構として機能している。分離部材7が降下すると、バネ60を圧縮して押さえ部61を駆動するように構成されている。
【0045】
分離部材7は、先端71が漸次薄肉となるように構成されており、図8に示すように、刃物21の隣接位置に配置されて、刃物21を入刀した位置とほぼ同じ位置に投入される。
【0046】
図5は制御手段3の実行手順を示すフローチャート、図6はコンベア1、刃物21、固定手段6及び分離部材7に対する駆動信号や動作位置を示すタイムチャート、図7は刃物21、固定手段6及び分離部材7の動作位置を搬送方向下流から見た図、図8は刃物21、固定手段6及び分離部材7の動作位置を搬送方向と直交する横方向から見た図である。
【0047】
先ず、柵Aをコンベア1に配置する(ステップS1)。柵Aは皮に近くて硬い外身側を下にし、骨に近くて柔らかい内身側を上にして、樹脂シート(不図示)に載せた状態で搬送ベルトの搬送面1aに設置する。
【0048】
次に、柵Aをスライス部2に搬送する(ステップS2、時刻t1)。
【0049】
この実施形態では、柵Aは図1に示す自動計測部9で柵Aの3次元形状や向きを把握するために必要な計測がなされ、計測結果は制御手段3に送られる。例えば、自動計測部9に画像認識用のカメラやレーザ、赤外線などを用い、制御手段3が取り込んだデータから柵Aの状態データ(3次元形状、方向など)を計測する構成が挙げられる。制御手段3は、柵Aの厚みから必要に応じて分離部材7に対する駆動量などを算出する。
【0050】
柵Aをスライス定位置に搬送したら、刃物21を左右方向に揺動させる(ステップS3、時刻t2)。揺動は例えば数回/秒の往復動である。
【0051】
その後、分離部材7の降下を開始する(ステップS4、時刻t3)。
【0052】
分離部材7が降下を始めると、先ず、固定手段6がバネ60の圧縮力で駆動され、フォーク状の押さえ部61が柵Aに突き刺さって柵Aを押さえる(時刻t4)。押さえる際はフォーク状の固定手段6を柵Aの皮に近い硬い部分まで到達させて固定する。
【0053】
引き続き、刃物保持部21aがバネ20の圧縮力で駆動され、刃物21を柵Aに入刀する(時刻t4~t5)。
【0054】
刃物21が最下点で搬送ベルトの搬送面1aに到達したら、数秒程度、最下点に止まる。この場合、揺動動作のみ行い、昇降は停止している(時刻t5)。勿論、刃物21が最下点に到達した段階で柵Aのスライスが確実に完了できる場合には、上記数秒は不要である。
【0055】
刃物21が降下して揺動している間に、分離部材7が遅れて最下点に降下する(時刻t6)。
【0056】
最下点で数秒たった後、今度は分離部材7を上昇方向に駆動する(ステップS5、時刻t7)。これにより、前記とは逆に分離部材7、刃物21、固定手段6の順で上昇する(時刻t7~t10)。これにより、切身aが切り出された状態ができあがる。
【0057】
生成した切身aはコンベア1の搬送とともに下流に流す。切身aの搬送とともに、次のスライスのためにスライス厚みDに合わせてコンベア1が所定ピッチ動作して柵Aをスライス部に搬送する(ステップS6、時刻t11)。以降はステップS2~ステップS6、時刻t1~t11の手順及び動作を繰り返し、一柵分のスライスを完成させる。
【0058】
以上のように、本実施形態のスライス装置は、搬送面1a上を搬送されてスライス対象とされる柵Aを順次刃物21でスライスして切身aを切り出すものであって、刃物21を刃長方向(X方向)に柵Aに対して入刀する刃物駆動機構Tを設けたことを特徴とする。
【0059】
このようにすれば、刃物駆動機構Tによって刃物21を刃長方向に入刀することができるため、柵Aが柔らかく切り出す切身aが薄肉であっても、更には柵Aのなかにスジや皮に近い硬い部位があっても、機械的に引き切りのように無理なく切身aを切り出すことができる。このため、切り残しを有効に無くすことができ、所望のサイズの切身を適切に生成することができる。
【0060】
特に本実施形態の刃物駆動機構Tは、刃物21を刃長方向に揺動させながら柵に対して入刀する刃物揺動機構であるので、刃物21を一方向にのみ移動させてスライスしたり、職人が包丁で引き切りをする際の移動量と比べて、必要な刃の移動量を小さくでき、装置をコンパクトに構成することができる。そして、スライス安定性が確保できることで、昇降速度や揺動速度を上げることができ、生産性向上を図ることが可能になる。また、スジや皮が残っても、スライス面の状態が所要の条件を充足する寿司ネタを生成することができる。
【0061】
具体的に刃物揺動機構Tは、刃物21を上下方向に駆動する刃物上下駆動部4と、刃物を左右方向に駆動する刃物左右駆動部5とを備えており、刃物21の上下動作と左右動作を個別に制御することができるので、適切な揺動動作の下にスライスを実現することができる。
【0062】
そのうちの刃物揺動機構Tは、刃物上下駆動部4を通じて刃物21を最下点に降下させて停止した後、刃物左右駆動部5を引き続き所定時間のあいだ駆動するように制御するため、柵Aにスジや皮に近い硬い部位があっても無理なく確実に切断を行うことができる。
【0063】
更に刃物21の隣接位置に、刃物21の入刀に先行して押さえ部61を投入することで柵Aを固定する固定手段6を有しているので、柵Aを不適切な姿勢にならないように押さえた状態で切身aを確実に切り出すことができる。
【0064】
具体的には押さえ部61が、柵Aに突き刺さる形状に構成されているため、押さえが確実であり、また、押さえ部61が刃物21と略平行である事から、固定手段6と刃物21が柵Aに対して隣接位置からアプローチし易いものとなる。
【0065】
また、刃物21とフォーク状の固定手段6がともに柵Aに触れる箇所であり、隣接しているため、衛生管理(洗浄)と保守(刃物のメンテナンスと同時に針、スポーク部分の交換)が可能になる。
【0066】
更に、刃物21の隣接位置に分離部材7を備え、刃物21が入刀された後に投入されることで切り出した切身aを刃物21から分離させるようにしているので、切身aが刃物21に粘着した状態となることを有効に防止することができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0068】
例えば、上記実施形態において、バネ20、60は圧縮力を利用して刃物21や固定手段6を駆動しているが、バネの引張力を利用した駆動や、バネの引張力と圧縮力の組み合わせを利用した駆動によってもよい。
【0069】
例えば、上記実施形態では刃物上下駆動部を、分離部材駆動部の動作を利用して間接的に駆動するように構成したが、刃物上下駆動部も分離部材駆動部のように、モータやリンク、リニアガイド、アーム等によって構成し、アームに刃物支持部を支持して直接駆動するようにしてもよい。
【0070】
また、刃物左右駆動部で揺動運動をさせる駆動源に制約はない。
【0071】
また、刃物左右駆動部はスライダクランク機構等で構成してもよい。
【0072】
刃物左右駆動部の左右運動は紐若しくはワイヤーで引っ張って行わせても良い。
【0073】
また、刃物左右駆動部はバネを左右揺動機構に組み込み、バネ力を駆動の補助エネルギーに使用しても良い。その場合、駆動部が省エネルギー化でき、駆動部分の小型化につながる。
【0074】
また、刃物左右駆動部は、駆動源の運動を左右運動に変換できれば、変換方法に制約はない。
【0075】
また、固定手段に関し、フォーク状の固定手段はコンベア側にあってもよい。このようにすれば、スライス品質の向上が見込めるものとなる。
【0076】
この場合、固定手段をコンベアに配置すると専用のベルトが必要になるため、スライス部分のみの独立した回転ローラを配置して、この回転ローラにフォーク状の固定手段に似た形状のスパイクを用意して柵が移動しないようにしてもよい。
【0077】
また、フォーク状の固定手段の針やスパイクの本数を減らすために、柵Aを固定する固定手段は別の構成でもよい。例えば、図9(a)は柵Aをコンベア1と反対側(上方)から押さえる押さえ部161の例であり、図9(b)は柵Aを横から押さえる押さえ部261の例である。これらを上記実施形態で示したフォーク状の押さえ部61とともに用いても、或いはフォーク状の押さえ部61に代えて用いてもよい。或いは、エア機器を用いて吸引することで柵を固定することもできる。これらの固定手段の押さえ部は、各々単独で用いてもよいし、複合的に用いても構わない。
【0078】
例えば、固定手段であるフォークとともに柵を上から押さえる押さえ部を採用すれば、フォークを抜くときに切身や柵が一緒について上がることを防止することができる。
【0079】
また、フォーク状の固定手段の昇降は電動以外に、例えばリニアモータなどを用いて直接駆動してもよく、或いは、伝達機構を介して動力を入力するようにしてもよい。
【0080】
また、刃物上下駆動部に関し、昇降駆動源のモータを刃物昇降ユニットの上部に配置してもよい。このようにすることで、刃物を直接水洗いすることが可能になる。
【0081】
また、刃物上下駆動部に関し、モータを配置する位置はスライダクランク機構を介してリニアガイドと接続できれば制約はない。
【0082】
また、刃物上下駆動部の昇降駆動源はモータでなくとも、リニア運動を提供できる駆動源であれば制約はない。例えば、シリンダで駆動させてもよい。
【0083】
また、刃物上下駆動部の上下ガイドはリニアモータを用いて直接駆動しても良い。
【0084】
また、刃物上下駆動部は上下ガイドに沿ってアームを紐やワイヤーで引っ張って昇降させてもよい。ワイヤーは直線ではなく、螺旋形状をしていてもよい。紐若しくはワイヤーが引っ張られるならば、引っ張り力の駆動源に制約はない。
【0085】
また、上記実施形態では刃物を上方から下方に動かして柵をスライスしているが、刃物を下から上に動かしてスライスしてもよい。また、刃物の昇降だけでなく、コンベア若しくは柵を直接昇降させても良い。
【0086】
刃物の揺動に関しても同様に、コンベア若しくは柵を揺動させても良い。
【0087】
また、本発明は寿司ネタ用の切身だけではなく、刺身用の切身を、例えば薄造りや糸づくりのような切り方で切り出す場合にも同様に適用することができる。
【0088】
また、上記実施形態では刃物を揺動させたが、スライス対象が比較的スライスし易いものである場合等には、刃物を揺動させずに普通にスライスする構成を採用してもよい。
【0089】
また、押さえ部は、スジや皮の配置によっては突き刺さる必要がない場合もあり、凹凸形状、側面視1つの三角形状、円状として、突き刺さずに押さえる構成といてもよい。
【0090】
また、制御手段が実行する制御は上述した手順以外の手順も可能である。
【0091】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1a…搬送面
4…刃物上下駆動部
5…刃物左右駆動部
6…固定手段
7…分離部材
21…刃物
61…押さえ部
61a…スパイク
A…柵
a…切身
T…刃物駆動機構(刃物揺動機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9