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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184203
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】含水率調整方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/12 20190101AFI20231221BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20231221BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20231221BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20231221BHJP
   G21F 9/36 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
C02F11/12
B09B5/00 T ZAB
B09C1/08
C02F11/00 Z
G21F9/36 511Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098220
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】田中 真弓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】村木 孝
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB01
4D004AB09
4D004CA47
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA10
4D059AA09
4D059AA21
4D059BF16
4D059DA04
4D059DA51
4D059DA64
4D059DA66
4D059DB11
4D059DB13
4D059DB19
4D059DB20
4D059DB40
4D059EA20
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の含水率を効率よく調整することができる含水率調整方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る含水率調整方法は、フレキシブルコンテナバッグ1の内部に収容された土壌Sに、土壌Sの表面S1から土壌Sの内部に延在する孔Hを形成する工程と、孔Hに吸水性を有する改質材10を充填する工程と、改質材10に土壌Sの内部の水分Wを吸収させることによって水分Wの含水率を低下させる工程と、を備える。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルコンテナバッグの内部に収容された土壌に、前記土壌の表面から前記土壌の内部に延在する孔を形成する工程と、
前記孔に吸水性を有する改質材を充填する工程と、
前記改質材に前記土壌の内部の水分を吸収させることによって前記土壌の含水率を低下させる工程と、
を備える、
含水率調整方法。
【請求項2】
前記改質材は、高吸水性樹脂及びセルロース繊維のいずれかである吸水材を含む、
請求項1に記載の含水率調整方法。
【請求項3】
前記改質材は、砂、砂質土、礫質土及びシルト質土のいずれかである母材を含む、
請求項2に記載の含水率調整方法。
【請求項4】
前記改質材は、高吸水性樹脂であり、
前記改質材を充填する工程の前に、前記高吸水性樹脂に対する前記母材の重量比が0.01以上且つ10000以下となるように、前記高吸水性樹脂と前記母材の量を調整する工程を備える、
請求項3に記載の含水率調整方法。
【請求項5】
前記母材の透水係数が1.0×10-5(m/s)以上である、
請求項3又は4に記載の含水率調整方法。
【請求項6】
前記土壌の含水率を低下させる工程の後に、前記フレキシブルコンテナバッグに収容された前記土壌の硬さを判定する工程を備える、
請求項1又は2に記載の含水率調整方法。
【請求項7】
前記孔を形成する工程の前に、前記フレキシブルコンテナバッグを揚重装置で吊り上げて前記フレキシブルコンテナバッグを正立させる工程を備える、
請求項1又は2に記載の含水率調整方法。
【請求項8】
前記改質材を充填する工程の前に、前記土壌の含水比、及び前記土壌の液性限界を測定し、前記含水比及び前記液性限界から必要な前記土壌の吸水量を算出し、前記吸水量から前記改質材の充填量を決定する工程を備える、
請求項1又は2に記載の含水率調整方法。
【請求項9】
前記改質材を充填する工程の後に、平面視における前記孔の周囲に位置する前記土壌を崩して前記土壌を撹拌する工程を備える、
請求項1又は2に記載の含水率調整方法。
【請求項10】
前記孔を形成する工程では、3つ以上の前記孔を形成し、
3つ以上の前記孔は、平面視において1本の直線上に並ばない位置に形成される、
請求項1又は2に記載の含水率調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の含水率を調整する含水率調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-185539号公報には、水分を多量に含んだ土砂及び汚泥等の水分除去処理対象物から水分を取り除く水分除去装置が記載されている。水分除去装置は、網目素材からなる第1のフレコンと、第1のフレコンを収容する第2のフレコンとを備える。第2のフレコンは、防湿・漏れ防止機能及び気密性を備え、且つ可撓性がある柔軟な素材からなる袋状の包材である。更に、水分除去装置は、第2のフレコンに挿入されるパイプと、パイプを介して第2のフレコンの内部の水分を吸い込む真空ポンプとを備える。真空ポンプが動作すると、第2のフレコンの内部、及び第1のフレコンの内部の水分が吸い出される。
【0003】
特開2016-206003号公報には、不透水性の収納袋に収容された土壌の含水率を低減する含水率低減方法が記載されている。収納袋には、水の比重より高い比重を有する土粒子と、放射性物質と、水分とが収納される。収納袋の内部では、土粒子及び放射性物質が沈降することによって土壌の表面上に上澄み水が発生する。この上澄み水が発生した箇所に吸水材が配置される。この含水率低減方法では、吸水材が上澄み水を吸収及び保持し、その後、収納袋から吸水材が除去されることによって土壌の含水率が低減する。
【0004】
特開2020-111384号公報には、フレキシブルコンテナバッグに収容された土砂等の含水率を低減させる方法が記載されている。このフレキシブルコンテナバッグは、側面に開口部が形成された袋体と、開口部を塞ぎ透水性を有するフィルタとを備える。このフィルタを介して袋体の内部の水分が当該袋体から排出されることにより、土砂等の含水率が低減する。
【0005】
特許第5887637号公報には、含水土の減量化方法が記載されている。この方法では、袋体に充填された含水土に貫入されるストレーナ管が用いられる。ストレーナ管は、3本のストレーナ管本体と、3本のストレーナ管本体を互いに接続する接続管とを有する。接続管の3本のストレーナ管との反対側には真空ポンプが設けられる。この真空ポンプが作動すると、含水土に含まれている水分が吸収されて袋体の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-185539号公報
【特許文献2】特開2016-206003号公報
【特許文献3】特開2020-111384号公報
【特許文献4】特許第5887637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した水分除去装置、及び含水率の減量化方法では、真空ポンプで袋体の内部の水分を吸引することによって、袋体の内部における土壌の含水率を低減させている。前述した含水率低減方法では、上澄み水を吸収することによって土壌の含水率を低減させている。前述したフレキシブルコンテナバッグに収容された土砂等の含水率を低減させる方法では、フィルタから水を排出することによって含水率を低減させている。
【0008】
しかしながら、前述した各方法のように水分を吸引等によって袋体の外部に排出する方法では、水分が有害物質を含む場合に、水の拡散防止対策等の後処理が必要となる。従って、内部に収容された土壌における含水率の調整を効率よく行えないという現状がある。更に、土壌が収容されたフレキシブルコンテナバッグを破って土壌を改質し、その後、再度フレキシブルコンテナバッグに収容する方法が知られている。この方法では、フレキシブルコンテナバッグを破ったり収容したりする手間がかかるため、土壌における含水率の調整を効率よく行えないという問題がある。
【0009】
本開示は、フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の含水率を効率よく調整することができる含水率調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る含水率調整方法は、(1)フレキシブルコンテナバッグの内部に収容された土壌に、土壌の表面から土壌の内部に延在する孔を形成する工程と、孔に吸水性を有する改質材を充填する工程と、改質材に土壌の内部の水分を吸収させることによって土壌の含水率を低下させる工程と、を備える。
【0011】
この含水率調整方法では、フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の表面に、当該表面から土壌の内部に延在する孔を形成する。この孔に吸水性を有する改質材を充填する。そして、孔に充填された改質材に土壌の内部の水分を吸収させることによって土壌の含水率を低下させる。従って、真空ポンプ又はフィルタ等を用いた水分の吸引及び排出をしなくても、土壌の含水率を低下させることができ、且つ後処理を不要にできるので、フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の含水率を効率よく低下させることができる。また、土壌の表面に当該表面から土壌の内部に延びる孔を形成し、この孔に吸水性を有する改質材を充填することにより、フレキシブルコンテナバッグの内部における広い範囲の土壌から水分を吸収することができる。従って、より確実に且つ全体的に土壌の水分を吸収して土壌の含水率を低減させることができるので、土壌の硬度をより確実に高めてフレキシブルコンテナバッグを自立させることができる。すなわち、フレキシブルコンテナバッグの内部の土壌の水分が高くてフレキシブルコンテナバッグが倒れることをより確実に抑制できるので、土壌が収容されたフレキシブルコンテナバッグの搬送及び管理を容易に行うことができる。
【0012】
(2)上記(1)において、改質材は、高吸水性樹脂及びセルロース繊維のいずれかである吸水材を含んでもよい。この場合、吸水材が高吸水性樹脂又はセルロース繊維であることによって、土壌の水分の吸収をより確実に行うことができる。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)において、改質材は、砂、砂質土、礫質土及びシルト質土のいずれかである母材を含んでもよい。この場合、母材として砂、砂質土、礫質土又はシルト質土が用いられることにより、母材を骨格として機能させることができるので、土壌の硬度をより確実に高めることができる。
【0014】
(4)上記(3)において、改質材は、高吸水性樹脂であってもよい。含水率調整方法は、改質材を充填する工程の前に、高吸水性樹脂に対する母材の重量比が0.01以上且つ10000以下となるように、高吸水性樹脂と母材の量を調整する工程を備えてもよい。高吸水性樹脂に対する母材の重量比が0.01以上である場合、母材を一層確実に骨格として機能させることができる。また、高吸水性樹脂に対する母材の重量比が10000以下であることにより、母材が多くなりすぎないようにすることができる。
【0015】
(5)上記(3)又は(4)において、母材の透水係数が1.0×10-5(m/s)以上であってもよい。この場合、母材として透水性が高い材料を用いることができるので、改質材の吸水性を一層高めることができる。
【0016】
(6)上記(1)~(5)のいずれかにおいて、含水率調整方法は、土壌の含水率を低下させる工程の後に、フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の硬さを判定する工程を備えてもよい。この場合、土壌の含水率が低下した後に土壌の硬さを判定することができるので、フレキシブルコンテナバッグをより確実に自立させることができる。
【0017】
(7)上記(1)~(6)のいずれかにおいて、含水率調整方法は、孔を形成する工程の前に、フレキシブルコンテナバッグを揚重装置で吊り上げてフレキシブルコンテナバッグを正立させる工程を備えてもよい。この場合、揚重装置がフレキシブルコンテナバッグを吊り上げてフレキシブルコンテナバッグが正立した状態で孔が形成される。従って、孔の形成を一層容易に行うことができる。
【0018】
(8)上記(1)~(7)のいずれかにおいて、含水率調整方法は、改質材を充填する工程の前に、土壌の含水比、及び土壌の液性限界を測定し、含水比及び液性限界から必要な土壌の吸水量を算出し、吸水量から改質材の充填量を決定する工程を備えてもよい。この場合、孔に改質材を充填する前に改質材の充填量が決定されるので、改質材の充填、及び含水率の低下を一層効率よく行うことができる。特に、数多くのフレキシブルコンテナバッグに対して土壌の含水率の調整を行う場合に、フレキシブルコンテナバッグの土壌への改質材の充填を一層効率よく行うことができる。
【0019】
(9)上記(1)~(8)において、含水率調整方法は、改質材を充填する工程の後に、平面視における孔の周囲に位置する土壌を崩して土壌を撹拌する工程を備えてもよい。この場合、改質材の充填後に土壌が撹拌されるので、土壌に対してより全体的に改質材を行きわたらせることができる。従って、土壌の含水率を一層効率よく低下させてより確実にフレキシブルコンテナバッグを自立させることができる。
【0020】
(10)上記(1)~(9)において、孔を形成する工程では、3つ以上の孔を形成し、3つ以上の孔は、平面視において1本の直線上に並ばない位置に形成されてもよい。この場合、平面視において多角形を成すように形成された3つ以上の孔に改質材が充填されるので、土壌に対する各改質材の水分の吸収によって、硬化した土壌をより確実に安定させることができる。従って、一層確実にフレキシブルコンテナバッグを自立させることができる。母材は、例えば、吸水性を有する材料を含んでいてもよい。この場合、更に効率的に土壌の含水率を低減させることができる。具体例として、母材は、ゼオライト又はパーライト等、細孔を有する鉱物又は岩石であってもよい。この場合、母材が、水を吸着し、改質材及び母材の双方の機能を兼ね備えるため、含水率の低減をより効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、フレキシブルコンテナバッグに収容された土壌の含水率を効率よく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るフレキシブルコンテナバッグを模式的に示す斜視図である。
図2図1のフレキシブルコンテナバッグが吊り上げられている状態を示す図である。
図3図2のフレキシブルコンテナバッグの土壌に穿孔具が挿入されている状態を示す縦断面図である。
図4】(a)は、図3の土壌に孔が形成された状態を示す縦断面図である。(b)は、図4(a)の土壌の平面図である。
図5】(a)は、図4(a)の孔に充填された改質材が土壌の水分を吸収している状態を示す縦断面図である。(b)は、図5(a)の土壌及び改質材の平面図である。
図6】(a)、(b)及び(c)は、変形例に係る含水率調整方法の工程を示す縦断面図である。
図7】更なる変形例に係る含水率調整方法の工程の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る含水率調整方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0024】
例えば、除染現場では、放射性物質を含む土壌の表土を剥ぎ取る作業が行われ、この土壌(汚染土壌とも称される)が一定量ずつ不透水性のフレキシブルコンテナバッグに収容される。土壌を収容するフレキシブルコンテナバッグは、例えば、除染現場に設けられる施工ヤードにおいて積み重ねられた状態で保管されることがある。フレキシブルコンテナバッグには、大量に水分を含んだ土壌が収容されることがある。この場合、土壌の含水率を低減することによって土壌の硬度を高め、フレキシブルコンテナバッグを自立させることが求められる。
【0025】
図1は、本実施形態に係るフレキシブルコンテナバッグ1を模式的に示す斜視図である。フレキシブルコンテナバッグ1は、土壌Sを収容及び運搬するための袋体である。土壌Sは、例えば、放射性物質を含む汚染土壌である。本実施形態において、フレキシブルコンテナバッグ1は有底円筒状を呈する。しかしながら、フレキシブルコンテナバッグの形状は、例えば、有底角筒状であってもよく、特に限定されない。一例として、フレキシブルコンテナバッグ1の高さ及び直径は1mである。
【0026】
例えば、フレキシブルコンテナバッグ1は、不透水性及び可撓性を有する。一例として、フレキシブルコンテナバッグ1はポリプロピレン製である。例えば、フレキシブルコンテナバッグ1は、内袋及び外袋を含む二重構造を有していてもよい。この場合、内袋は、可撓性及び透水性を有し、例えば、ビニル製である。外袋は、例えば、可撓性及び不透水性を有する。外袋は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等の化学繊維によって構成されている。
【0027】
一例として、フレキシブルコンテナバッグ1は、土壌Sを収容する袋体下部2と、袋体下部2の上部に位置しており土壌Sが露出する開口部3bを有する袋体上部3とを有する。フレキシブルコンテナバッグ1は、フレキシブルコンテナバッグ1を吊り上げるための吊りベルト4を有していてもよい。
【0028】
図2は、フレキシブルコンテナバッグ1の吊りベルト4が吊り上げられている状態を模式的に示す斜視図である。図2に示されるように、フレキシブルコンテナバッグ1は、例えば、袋体上部3に固定されており且つ上下方向に延びる吊りベルト4が挿通される開口5bを有するベルト保持部5を有する。例えば、フレキシブルコンテナバッグ1は、複数の吊りベルト4、及び複数のベルト保持部5を有する。
【0029】
例えば、吊りベルト4の下端は袋体下部2に固定されており、袋体下部2から上方に延在する吊りベルト4がベルト保持部5の開口5bに通される。吊りベルト4のベルト保持部5より上方に延びる部分は揚重装置のフックFに引っ掛けられる。フレキシブルコンテナバッグ1は、複数の吊りベルト4が揚重装置で吊り上げられることにより正立することが可能である。「正立」とは、土壌Sが露出するフレキシブルコンテナバッグ1の部分(開口部3b)が上方を向くようにフレキシブルコンテナバッグ1が立った状態を示している。以上、フレキシブルコンテナバッグ1の構成について例示した。しかしながら、フレキシブルコンテナバッグの構成は、前述した例に限られず、適宜変更可能である。
【0030】
本実施形態に係る含水率調整方法では、吸水性を有する改質材が用いられる。「吸水性」とは、水分を吸収する性状を示している。「吸水性を有する」とは、水分を吸収する性質を有することを示しており、例えば、改質材が当該改質材の重量(又は体積)以上の水分を吸収することを示している。「改質」とは、土壌の組成(又は性質)を改良することを示している。「改質材」は、土壌を改質する素材を示している。例えば、改質材は、土壌Sの水分を吸収する吸水材と、吸水材と混合される母材とを含んでいる。「吸水材」は、土壌の水分を吸収する物質を示している。「母材」は、例えば、改質材の骨格となる材料を示している。
【0031】
本実施形態において、例えば、吸水材は高吸水性樹脂である。高吸水性樹脂は、浸透圧によって水分を吸収する樹脂を示している。高吸水性樹脂の内部のイオン濃度は、土壌に含まれる水分のイオン濃度よりも高いので、土壌に高吸水性樹脂が接触すると土壌の水分が高吸水性樹脂の内部に移動する。高吸水性樹脂は、吸収した水分を保持する吸水性ポリマーである。
【0032】
高吸水性樹脂は、例えば、紙おむつ等の衛生材料として用いられる。例えば、高吸水性樹脂は、自重の80倍以上且つ1000倍以下(一例として200倍)の水分を吸収する。高吸水性樹脂は、土壌Sの水分(自由水)を吸い込み、土壌Sの流動性を低下させて土壌Sを改質する。例えば、高吸水性樹脂は、粒状とされており、水分を吸い込んだときに球状に膨らむものであってもよい。例えば、高吸水性樹脂は中性である。
【0033】
高吸水性樹脂は、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシル基、若しくは、それらの塩を有する高分子化合物の部分架橋体、又は、多糖類の部分架橋体等から選択される1以上の高吸水性樹脂を含む。カルボキシル基又はその塩を有する高分子化合物の部分架橋体は、ポリアクリル酸塩架橋体、ポリ(ビニルアルコール/アクリル酸塩)共重合体(架橋体)、澱粉-アクリル酸塩グラフト共重合体(架橋体)、及びポリビニルアルコール-ポリ無水マレイン酸塩グラフト共重合体(架橋体)等を含む。多糖類の部分架橋体は、カルボキシメチルセルロース塩架橋体等を含む。
【0034】
また、上記高吸水性樹脂を構成する「塩」としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、又はアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩、第四級アルキルアンモニウム塩等)等から選択された1以上の塩を含む。例えば、高吸水性樹脂は、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、又はポリアクリル酸ナトリウム架橋体から選択された1以上の高吸水性樹脂を含んでいてもよい。以上の高吸水性樹脂が本実施形態では用いられうる。
【0035】
吸水材は、セルロース繊維を含んでいてもよい。セルロース繊維は、土壌の水分を吸収する微細粒子であってもよい。セルロース繊維としては、ピートモス、バーク、又はおからが用いられうる。セルロース繊維の主原料は、一例として、古紙(一例としてシュレッダー屑)である。
【0036】
吸水材は、セメント、石灰、又は地盤改良材であってもよい。セメントとしては、例えば、土壌Sの水分を吸収する吸水性セメントが用いられうる。石灰としては、高吸水性を有する生石灰、又はペーパースラッジ焼却灰(PS灰)が用いられうる。地盤改良材としては、例えば、吸水性泥土改質材が用いられうる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る土壌Sの含水率調整方法では、改質材が用いられ、改質材としては種々の吸水材を用いることが可能である。ところで、例えば、フレキシブルコンテナバッグ1の開口部3bを開けた状態として土壌Sに前述した高吸水性樹脂が散布される場合、当該高吸水性樹脂が土壌Sの水分を吸収することによって土壌Sを改質することが可能である。
【0038】
しかしながら、上から土壌Sに高吸水性樹脂を散布する場合には、土壌Sの表面(上面)付近は改質されるものの、土壌Sの下の方は改質されないという問題が起こりうる。一方、土壌Sが収容されたフレキシブルコンテナバッグ1を破ってベッセルに土壌Sを取り出し、当該ベッセルの内部で土壌Sと高吸水性樹脂を混合させる方法が考えられる。しかしながら、この方法では、フレキシブルコンテナバッグ1を破る作業、及び改質した土壌Sを再度フレキシブルコンテナバッグ1に収容する作業が必要になると共に、新たなフレキシブルコンテナバッグ1が必要となる。更に、土壌Sを置く施工ヤードが必要になると共に雨天時における作業が困難という問題が生じうる。
【0039】
これに対し、本実施形態に係る含水率調整方法では、土壌Sを全体的に改質できると共に、土壌Sの改質に伴う作業を効率よく行うことができる。以下では、本実施形態に係る含水率調整方法の具体例について説明する。まず、図2に示されるように、土壌Sをフレキシブルコンテナバッグ1に収容し、揚重装置でフレキシブルコンテナバッグ1を吊り上げてフレキシブルコンテナバッグ1を正立させる(フレキシブルコンテナバッグを正立させる工程)。
【0040】
なお、フレキシブルコンテナバッグ1は、フレコンスタンドに正立させてもよい。フレコンスタンドは、複数(一例として4本)の柱状部材と、複数の柱状部材を立設するように支持する複数の梁部材とによって枠状に形成されている。この枠状のフレコンスタンドの内側に入り込むようにフレキシブルコンテナバッグ1を載せることによってフレキシブルコンテナバッグ1を正立させることが可能となる。
【0041】
そして、図3に示されるように、土壌Sの表面S1から土壌Sの内部に延在する孔Hを形成する(孔を形成する工程)。このとき、フレキシブルコンテナバッグ1の内部に収容された土壌Sの表面S1から土壌Sの内部に穿孔具Tを押し込むことによって孔Hを形成する。
【0042】
穿孔具Tは、例えば、棒状を呈する。穿孔具Tは、その長手方向の一端に土壌Sに挿入される挿入部T1を有する。挿入部T1は、穿孔具Tの長手方向の端部に向かうに従って先細りしている。すなわち、挿入部T1は尖っている。この挿入部T1を土壌Sの表面S1に挿し込み、穿孔具Tを下方に押し込む。
【0043】
図4(a)は、土壌Sに形成された孔Hを示す縦断面図である。図4(b)は、孔Hが形成された土壌Sを示す平面図である。図3図4(a)及び図4(b)に示されるように、挿入部T1を下方に向けて穿孔具Tを土壌Sに挿し込み、穿孔具Tを下方に押し込む。穿孔具Tは、例えば、フレキシブルコンテナバッグ1の高さAの半分以上且つ90%以下の深さまで挿入する。そして、下方に押し込んだ穿孔具Tを引き上げることによって孔Hが形成される。
【0044】
穿孔具Tとしては、種々のものを用いることが可能である。上記の例では、挿入部T1を有する穿孔具Tについて説明した。しかしながら、挿入部T1を有しない穿孔具であってもよい。穿孔具Tは、筒状(例えば、円筒状又は角筒状)を呈していてもよい。例えば、穿孔具Tは、(一例として有底筒状の)鋼管である。穿孔具Tは、金属製であってもよい。また、穿孔具Tは、木製であってもよい。穿孔具Tは、木杭であってもよい。また、穿孔具Tは、赤白ポールであってもよい。更に、穿孔具Tは、ドリルであってもよい。ドリルとしては、例えば、土壌Sを掘削するハンドドリルが用いられる。
【0045】
例えば、孔Hの直径Zは、1.5cm以上且つ5cm以下(一例として3cm)である。孔Hの高さは、例えば、フレキシブルコンテナバッグ1の高さAの半分以上且つ90%以下である。一例として、高さAは1mであり、この場合、孔Hの高さは50cm以上且つ90cm以下である。
【0046】
例えば、土壌Sには複数の孔Hが形成される。複数の孔Hは、例えば、平面視におけるフレキシブルコンテナバッグ1の内周に沿って並ぶように形成される。例えば、形成される孔Hの数は3以上且つ10以下である。この場合、3つ以上の孔Hは、平面視において1本の直線上に並ばない位置に形成される。すなわち、平面視において、3つ以上の孔Hは多角形を成すように形成される。
【0047】
図4(b)の例では、4つの孔Hが平面視において四角形状を成すように形成される。平面視において4つの孔Hによって形成される四角形Xは、例えば、長方形状(一例として正方形状)を呈する。平面視における2つの孔Hの間隔Yは、例えば、20cm以上且つ60cm以下(一例として40cm又は50cm)である。
【0048】
孔Hを形成した後には、図5(a)及び図5(b)に示されるように、改質材10の充填を行う(改質材を充填する工程)。改質材10は、前述した吸水材と母材とを含む。例えば、吸水材は高吸水性樹脂及びセルロース繊維のいずれかであり、母材は砂、砂質土、礫質土及びシルト質土のいずれかである。例えば、砂の粒径(平均粒径)は0.075mm以上且つ2mm以下である。砂質土は、砂を多く含む土であり、一例として、粗粒分を50%以上含み、且つ粒径が2mm以下の土である。礫質土は、粗粒分を50%超含み、砂分より礫分が多い土である。シルト質土は、砂より細かく且つ粘土より粗い砕屑土を含んだ土である。
【0049】
改質材10の吸水材は、例えば、前述した高吸水性樹脂である。高吸水性樹脂は、例えば、粒状とされている。高吸水性樹脂の粒径は、例えば、2mm以下(又は1mm以下)である。例えば、高吸水性樹脂の粒径は、母材の粒径と同程度である。この場合、後述する高吸水性樹脂及び母材の撹拌をより効果的に行うことができる。高吸水性樹脂の透水係数、及び改質材10の母材の透水係数は、例えば、共に1.0×10-5(m/s)以上である。
【0050】
まず、改質材10の充填量を決定する(充填量を決定する工程)。このとき、土壌Sの含水比、及び土壌Sの液性限界を測定し、測定した含水比及び液性限界から必要な吸水量を算出する。液性限界とは、土が塑性体から液体に遷移するときの境界値となる含水比を示している。一例として、液性限界は46%以上且つ50%以下であり、46%以下の含水率となるように土壌Sの含水比が調整される。
【0051】
具体例として、1mのフレキシブルコンテナバッグ1の土壌Sにおいて含水比を5%下げたい場合、必要な吸水量は50L(リットル)となる。そして、吸水量から改質材10の充填量を決定する。例えば、1gの高吸水性樹脂が200gの水分Wを吸収する(吸収倍率が200倍である)場合、250gの高吸水性樹脂を用意すれば50Lの水分Wを吸収可能となる。
【0052】
以上のように、例えば、改質材10の吸水材の量を決定する。吸水材が高吸水性樹脂である場合、高吸水性樹脂に対する母材の重量比が0.01以上且つ10000以下(一例として100)となるように、高吸水性樹脂と母材の量が調整される(高吸水性樹脂と母材の量を調整する工程)。前述した例の場合、高吸水性樹脂の量を250gと決定する。
【0053】
そして、改質材10の母材の量を決定する。例えば、高吸水性樹脂と母材との重量比が1:X(Xは、正の実数、一例として100)である場合、高吸水性樹脂のX倍の重量の母材を用意する。そして、高吸水性樹脂と母材とを撹拌して改質材10を作製する。上記のように、改質材10は、吸水材と母材とが混合されて作製される。吸水材と母材の混合は、例えば、フレキシブルコンテナバッグ1を管理する現場で行われる。一例として、吸水材と母材の混合はスコップで撹拌されることによって行われる。
【0054】
以上のように改質材10を作製した後には、作製した改質材10を孔Hに充填する。例えば、複数の孔Hのそれぞれに改質材10を注入する。そして、改質材10に土壌Sの内部の水分を吸収させる。孔Hに充填された改質材10は、例えば、平面視において一定範囲R内の水分Wを吸収する。
【0055】
平面視において、一定範囲Rは円形状を呈する。一定範囲Rの半径は、例えば、約20cmである。孔Hに改質材10を充填して一定時間経過すると、改質材10の水分Wの吸収によって土壌Sの含水率が低下する(含水率を低下させる工程)。上記の一定時間は、例えば、1日である。
【0056】
例えば、改質材10を充填して1日経過した後に、フレキシブルコンテナバッグ1に収容された土壌Sの含水比が低下して土壌Sが硬化する。これにより、フレキシブルコンテナバッグ1を確実に自立させることが可能である。土壌Sの含水率を低下させた後には、フレキシブルコンテナバッグ1に収容された土壌Sの硬さを判定する(土壌の硬さを判定する工程)。
【0057】
土壌Sの硬さの判定は、例えば、土壌硬度試験(一例として、山中式土壌硬度試験)によって行われる。土壌硬度試験では、貫入式土壌硬度計によって土壌Sの硬度を測定する。土壌硬度試験は、地盤工学会基準であるJGS1441の「土壌硬度試験方法」によって行われてもよい。
【0058】
また、土壌Sの硬さの判定は、コーン指数試験によって行われてもよい。この場合、土壌Sにコーンペネトレーターが押し込まれ、コーンペネトレーターが土壌Sの貫入抵抗力を測定する。以上のように、土壌Sの硬度又は貫入抵抗力を測定して、土壌Sの硬さの判定を行う。そして、所定硬さ以上であると判定されたときに一連の工程を終了する。一方、所定硬さ以上でないと判定されたときには、例えば、孔Hの数を増やしてより多くの孔Hに改質材10を充填したり、土壌Sに改質材10を散布したりして更に土壌Sの含水率を低下させ、土壌Sの硬度を更に高めて一連の工程を終了する。
【0059】
次に、本実施形態に係る含水率調整方法から得られる作用効果について詳細に説明する。この含水率調整方法では、フレキシブルコンテナバッグ1に収容された土壌Sの表面S1に、表面S1から土壌Sの内部に延在する孔Hを形成する。孔Hに吸水性を有する改質材10を充填する。そして、孔Hに充填された改質材10に土壌Sの内部の水分Wを吸収させることによって土壌Sの含水率を低下させる。従って、真空ポンプ又はフィルタ等を用いた水分の吸引及び排出をしなくても、土壌Sの含水率を低下させることができ、且つ後処理を不要にできるので、フレキシブルコンテナバッグ1に収容された土壌Sの含水率を効率よく低下させることができる。
【0060】
また、土壌Sの表面S1に表面S1から土壌Sの内部に延びる孔Hを形成し、孔Hに吸水性を有する改質材10を充填することにより、フレキシブルコンテナバッグ1の内部における広い範囲の土壌Sから水分Wを吸収することができる。従って、より確実に且つ全体的に土壌Sの水分Wを吸収して土壌Sの含水率を低減させることができるので、土壌Sの硬度をより確実に高めてフレキシブルコンテナバッグ1を自立させることができる。すなわち、フレキシブルコンテナバッグ1の内部の土壌Sの水分Wが高くてフレキシブルコンテナバッグ1が倒れることをより確実に抑制できるので、土壌Sが収容されたフレキシブルコンテナバッグ1の搬送及び管理を容易に行うことができる。
【0061】
本実施形態において、改質材10は、高吸水性樹脂及びセルロース繊維のいずれかである吸水材と、砂、砂質土、礫質土及びシルト質土のいずれかである母材と、を含んでもよい。この場合、吸水材が高吸水性樹脂又はセルロース繊維であることによって、土壌Sの水分Wの吸収をより確実に行うことができる。また、母材として砂、砂質土、礫質土又はシルト質土が用いられることにより、母材を骨格として機能させることができるので、土壌Sの硬度をより確実に高めることができる。
【0062】
本実施形態において、改質材10は、高吸水性樹脂であってもよい。本実施形態に係る含水率調整方法は、改質材10を充填する工程の前に、高吸水性樹脂に対する母材の重量比が0.01以上且つ10000以下となるように、高吸水性樹脂と母材の量を調整する工程を備えてもよい。高吸水性樹脂に対する母材の重量比が0.01以上である場合、母材を一層確実に骨格として機能させることができる。また、高吸水性樹脂に対する母材の重量比が10000以下であることにより、母材が多くなりすぎないようにすることができる。
【0063】
本実施形態において、母材の透水係数が1.0×10-5(m/s)以上であってもよい。この場合、母材として透水性が高い材料を用いることができるので、改質材10の吸水性を一層高めることができる。更に、改質材10の透水係数が1.0×10-5(m/s)以上であってもよい。この場合、改質材10による水分Wの吸収をより速やかに行うことができる。更に、フレキシブルコンテナバッグ1の下部に溜まっていた水が改質材10(母材)の中を通って上部表面に浮き出てくる場合がある。この場合、浮き出てきた水を吸水バッグ等で吸い込むことでフレキシブルコンテナバッグ1の水の量を低下させることができる。
【0064】
本実施形態に係る含水率調整方法は、土壌Sの含水率を低下させる工程の後に、フレキシブルコンテナバッグ1に収容された土壌Sの硬さを判定する工程を備えてもよい。この場合、土壌Sの含水率が低下した後に土壌Sの硬さを判定することができるので、フレキシブルコンテナバッグ1をより確実に自立させることができる。
【0065】
本実施形態に係る含水率調整方法は、孔Hを形成する工程の前に、フレキシブルコンテナバッグ1を揚重装置で吊り上げてフレキシブルコンテナバッグ1を正立させる工程を備えてもよい。この場合、揚重装置がフレキシブルコンテナバッグ1を吊り上げてフレキシブルコンテナバッグ1が正立した状態で孔Hが形成される。従って、孔Hの形成を一層容易に行うことができる。
【0066】
本実施形態に係る含水率調整方法は、改質材10を充填する工程の前に、土壌Sの含水比、及び土壌Sの液性限界を測定し、含水比及び液性限界から必要な土壌Sの吸水量を算出し、吸水量から改質材10の充填量を決定する工程を備えてもよい。この場合、孔Hに改質材10を充填する前に改質材10の充填量が決定されるので、改質材10の充填、及び含水率の低下を一層効率よく行うことができる。特に、数多くのフレキシブルコンテナバッグ1に対して土壌Sの含水率の調整を行う場合に、フレキシブルコンテナバッグ1の土壌Sへの改質材10の充填を一層効率よく行うことができる。
【0067】
本実施形態において、孔Hを形成する工程では、3つ以上の孔Hを形成し、3つ以上の孔Hは、平面視において1本の直線上に並ばない位置に形成されてもよい。この場合、平面視において多角形を成すように形成された3つ以上の孔Hに改質材10が充填されるので、土壌Sに対する各改質材10の水分Wの吸収によって、硬化した土壌Sをより確実に安定させることができる。従って、一層確実にフレキシブルコンテナバッグ1を自立させることができる。母材は、例えば、吸水性を有する材料を含んでいてもよい。この場合、更に効率的に土壌Sの含水率を低減させることができる。具体例として、母材は、ゼオライト又はパーライト等、細孔を有する鉱物又は岩石であってもよい。この場合、母材が、水を吸着し、改質材及び母材の双方の機能を兼ね備えるため、含水率の低減をより効果的に行うことができる。
【0068】
次に、変形例に係る含水率調整方法について図6(a)、図6(b)及び図6(c)を参照しながら説明する。変形例に係る含水率調整方法の一部の工程は、前述した実施形態に係る含水率調整方法の一部の工程と同一である。従って、以下では、前述した実施形態に係る含水率調整方法の工程と重複する説明を適宜省略する。
【0069】
まず、図6(a)に示されるように、土壌Sに孔Hを形成する。次に、改質材10の一部を孔Hに充填する。このとき、例えば、孔Hの高さの25%以上且つ40%以下の高さまで孔Hに改質材10を充填する(改質材を充填する工程)。そして、図6(b)に示されるように、平面視における孔Hの周囲に位置する土壌Sを崩して土壌Sを撹拌する(土壌を崩して土壌を撹拌する工程)。
【0070】
このとき、例えば、前述した穿孔具Tを土壌Sの表面S1に突き刺し、平面視における孔Hの周囲を穿孔具Tで突いて孔Hの壁面の一部を崩す。そして、孔Hの径を広げると共に土壌Sの一部を撹拌する。そして、孔Hに改質材10を注入する。改質材10の注入後には、図6(c)に示されるように、孔Hの壁面を更に崩して孔Hを拡張し孔Hに改質材10を充填させる。その後は、前述した実施形態と同様、改質材10に土壌Sの含水率を低下させて一連の工程が完了する。
【0071】
以上、変形例に係る含水率調整方法は、改質材10を充填する工程の後に、平面視における孔Hの周囲に位置する土壌Sを崩して土壌Sを撹拌する工程を備える。従って、改質材10の充填後に土壌Sが撹拌されるので、土壌Sに対してより全体的に改質材10を行きわたらせることができる。よって、土壌Sの含水率を一層効率よく低下させてより確実にフレキシブルコンテナバッグ1を自立させることができる。
【0072】
以上、本開示に係る含水率調整方法の実施形態及び変形例について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態又は変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において更に変形することが可能である。すなわち、本開示に係る含水率調整方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。また、本開示に係る含水率調整方法は、実施形態に係る含水率調整方法の一部と変形例に係る含水率調整方法の一部とが組み合わされた方法であってもよい。
【0073】
例えば、図7に示されるように、孔Hを形成する工程と、改質材10を充填する工程とが同時に実行されてもよい。この場合、例えば、前述した穿孔具Tに代えて、挿入部V1に開口V2が形成された穿孔具Vを用いて孔Hの形成を行う。具体的には、開口V2が形成された挿入部V1を下方に向けて穿孔具Vを土壌Sに挿し込み、穿孔具Vを下方に押し込む。
【0074】
例えば、穿孔具Vの内部空間に改質材10を充填して、穿孔具Vによって所定の深さの孔Hが形成された後に穿孔具Vを引き上げながら開口V2から孔Hに改質材10を吐出させる。このように、孔Hからの穿孔具Vの引き抜きと共に改質材10の吐出を行うことによって孔Hに改質材10を充填させてもよい。このように、孔Hの形成のタイミング、及び改質材10の充填のタイミングは適宜変更可能である。
【0075】
例えば、前述の実施形態では、放射性物質を含む土壌Sの表土を剥ぎ取る作業が行われる除染現場において含水率調整方法が実行される例について説明した。しかしながら、本開示に係る含水率調整方法が適用される除染現場は、例えば、湿地又は水田であってもよく、適宜変更可能である。更に、本開示に係る含水率調整方法は、汚染土壌以外の土壌に適用されてもよく、除染現場以外の現場(例えば、浚渫現場)に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…フレキシブルコンテナバッグ、2…袋体下部、3…袋体上部、3b…開口部、4…吊りベルト、5…ベルト保持部、5b…開口、10…改質材、F…フック、H…孔、R…一定範囲、S…土壌、S1…表面、T…穿孔具、T1…挿入部、V…穿孔具、V1…挿入部、V2…開口、W…水分、X…四角形、Y…間隔、Z…直径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7