IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社片山化学工業研究所の特許一覧 ▶ ナルコジャパン合同会社の特許一覧

特開2023-184205直接冷却水系の運転方法および油分分離促進剤ならびに直接冷却水系の処理設備
<>
  • 特開-直接冷却水系の運転方法および油分分離促進剤ならびに直接冷却水系の処理設備 図1
  • 特開-直接冷却水系の運転方法および油分分離促進剤ならびに直接冷却水系の処理設備 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184205
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】直接冷却水系の運転方法および油分分離促進剤ならびに直接冷却水系の処理設備
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20230101AFI20231221BHJP
   B21B 9/00 20060101ALI20231221BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C02F1/40 A
C02F1/40 D
B21B9/00 A
B22D11/124 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098228
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】荻野 哲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅敏
【テーマコード(参考)】
4D051
4E004
【Fターム(参考)】
4D051AA01
4D051AB03
4D051BA02
4D051CA22
4D051DB01
4D051EA05
4E004MC30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油と酸化鉄、鉄等の金属スケールを含有する直接冷却水から油分と懸濁物質とを効率よく分離し、かつ、油分を簡便に回収可能な直接冷却水系の運転方法を提供する。
【解決手段】スケールスルース1からスケールピット2に至るまでの乱流状態の経路において、直接冷却水系廃水に油分分離促進剤を存在させること、分離した浮上油分をスケールピットの下流側の横流沈殿槽3で除去すること、及び横流沈殿槽で油分が除去された廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用することを含み、横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が横流沈殿槽の底面と離間した状態で横流沈殿槽内に配置され水面から所定の深さまでの位置に仕切り堰を備えると共に、仕切り堰によって浮上油分の流れを堰き止め、かつ仕切り堰の下端下方と横流沈殿槽の底面との間から油分が分離された冷却水廃水を通過させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油と金属スケールとを含有する直接冷却水系の運転方法であって、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態の経路において、当該直接冷却水系廃水に油分分離促進剤を存在させること、
分離した浮上油分をスケールピットの下流側の横流沈殿槽で除去すること、及び
前記横流沈殿槽で油分が除去された前記廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用することを含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で前記横流沈殿槽内に配置され、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れを堰き止め、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間の離間部分から前記油分が分離された廃水を通過させる、
直接冷却水系の運転方法。
【請求項2】
前記仕切り堰は、前記横流沈殿槽の流れ方向に対して斜め又はV字形となるように配置されている、請求項1に記載の直接冷却水系の運転方法。
【請求項3】
油分分離促進剤が、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーである、請求項1に記載の直接冷却水系の運転方法。
【請求項4】
カチオン性の有機凝結剤又はポリマーが、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、請求項3に記載の直接冷却水系の運転方法。
【請求項5】
両性の有機凝結剤又はポリマーが、トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物から選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、請求項3に記載の直接冷却水系の運転方法。
【請求項6】
油と金属スケールとを含有する直接冷却水系の処理設備であって、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態を形成する経路と、
前記冷却水に油分分離促進剤を添加するための油分分離促進剤供給装置と、
スケールピットの下流側に配置され、分離した浮上油分を除去する横流沈殿槽と、を含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、
前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れが堰き止められ、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間の離間部分から前記油分が分離された廃水が通過可能であるように前記横流沈殿槽内に配置されている、直接冷却水系の処理設備。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の直接冷却水系の運転方法を実施するための油分分離促進剤であって、
該油分分離促進剤は、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーからなる、油分分離促進剤。
【請求項8】
カチオン性の有機凝結剤又はポリマーが、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、請求項7に記載の油分分離促進剤。
【請求項9】
両性の有機凝結剤又はポリマーが、トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物から選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、請求項7に記載の油分分離促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製鉄所の連続鋳造や圧延におけるスプレー水などのいわゆる直接冷却水系の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、鋼材の製造中に鋼材の冷却等に用いる直接冷却水等の処理設備より多量のミルスケールが発生する。このようなスケール類は、鋼材より発生する酸化鉄や鉄等の金属が主体であり、油分を含まない金属スケール類については、製銑、製鋼工程等において再利用される有用な資源となる。しかし、連鋳工程や圧延工程中に、圧延油や圧延機等の製造用機械に用いられる潤滑油や圧延油が、スケール類を含む冷却水に混入するため、発生する金属スケール類は多くの場合水と数質量%の油分を含有することになる。その上、圧延ロールの組換え等の作業時に不可避的に油分が混入する場合もある。このような作業を実施するたびに、スケール中の油分濃度が大きく変動し、具体的には1~10数質量%の範囲で変動することがある。
【0003】
このような直接冷却水は、スケールピットや凝集沈殿設備において、有機や無機の凝集剤を用いて処理され、冷却後、冷却水として再使用される。
【0004】
このような直接冷却水系の処理として、直接冷却水に含まれる粒径が50μm以上の金属粉や油分等の粗大な懸濁物質(粗大SS)と粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質(微細SS)とを同一の処理で凝集沈降させ、同時に除去する技術が提案されている(特許文献1~4参照)。この処理方法は、特定のポリマーを添加することにより、スケールピットで油を含む懸濁物質を凝集沈降させ、除去することにより、清澄な処理水を得ようとするものである。
上記の油分等を含む粗大SSと微細SSとを同一処理で凝集沈降させる処理方法の場合、スケールピット等に蓄積するスラッジは油分を含有する。一方、油分を含まないスケール類は、上記のとおり、製鋼工程等において再利用される有用な資源となる。このため、スケールピットに蓄積するスラッジが油分を含有する場合、スラッジを再利用するには油分を分離する必要がある。
【0005】
含油スラッジから油分を分離する方法としては、例えば、含油スラッジに抽出剤として有機溶剤を混合して強撹拌して、含油スラッジから有機溶剤に油分を抽出する方法がある(特許文献5参照)。一方、含油スラッジには水分が含まれているため、このような処理では、安定化したエマルションが形成される。
このような安定化したエマルションを破壊(解乳化)させるには、多重円盤型の遠心分離機が必要となり、高価な投資となる(特許文献6及び7参照)。
【0006】
さらに、含油スラッジは、製鉄所における沈殿池や濃縮層等の層に一時的に貯留され、廃棄のために処理される際や製鉄原料のために処理される際には処理施設に運搬する必要がある。この際、含油スラッジは、含水率が高く、流動しやすいものが多いため、運搬時に含油スラッジ、及びそれに含まれる油分が流出することが懸念される。そのため、含油スラッジは、油分を含有しないスラッジ等のような、そのまま製鉄原料として利用されるスラッジと比べて、運搬の際の運搬量や乾燥等の制限を受けることになる。そこで、含油スラッジを運搬しやすい処理物にすることが必要となる(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許6068112号公報
【特許文献2】特許6374157号公報
【特許文献3】特許6374352号公報
【特許文献4】特許6374351号公報
【特許文献5】特開2015-132011号公報
【特許文献6】特開平3-238059号公報
【特許文献7】特開2005-349371号公報
【特許文献8】特開2019-98327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように含油スラッジは、その処理だけでなく運搬等においても制限を受けることになる。
そこで、本開示は、油と酸化鉄及び鉄等の金属スケールとを含有する直接冷却水から油分とそれ以外の懸濁物質とを効率よく分離し、含油スラッジの発生を抑制しつつ、かつ、油分を簡便に回収可能な直接冷却水系の運転方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一態様において、油と酸化鉄や鉄等の金属スケールとを含有する直接冷却水系の運転方法であって、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態の経路において、当該直接冷却水系廃水に油分分離促進剤を存在させること、
分離した浮上油分をスケールピットの下流側の横流沈殿槽で除去すること、及び
前記横流沈殿槽で油分が除去された前記廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用することを含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で前記横流沈殿槽内に配置され、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れを堰き止め、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間の離間部分から前記油分が分離された廃水を通過させる、直接冷却水系の運転方法に関する。
【0010】
本開示は、その他の態様として、油と金属スケールとを含有する直接冷却水系の処理設備に関する。本開示の処理設備は、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態を形成する経路と、
前記冷却水に油分分離促進剤を添加するための油分分離促進剤供給装置と、
スケールピットの下流側に配置され、分離した油分を除去する横流沈殿槽と、を含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、
前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れが堰き止められ、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間の離間部分から前記油分が分離された廃水が通過可能となるように前記横流沈殿槽内に配置されている。
【0011】
本開示は、さらにその他の態様として、本開示の直接冷却水系の運転方法を実施するための油分分離促進剤であって、該油分分離促進剤は、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーからなる、油分分離促進剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の方法によれば、油と酸化鉄や鉄等の金属スケールとを含有する直接冷却水から油分を効率よく分離し、含油スラッジの発生を抑制しつつ、かつ、水面に浮上させた油分を簡便に回収することができる。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、発生したスラッジに含まれる油分の量を抑制できる。このため、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、油分を含む粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させて除去するという従来の方法では必要であった含油スラッジから油分を分離するための特別な処理等が不要になるという効果を奏しうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、連続鋳造工程の直接冷却水循環系の構成を示す概略図である。
図2図2A及びBは、横流沈殿槽に仕切り堰を配置した形態の一例を説明するための図面であって、図2Aは上面からみた平面図であり、図2Bは2A-2A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、油と酸化鉄や鉄等の金属スケールとを含有する直接冷却水を処理するにあたり、スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態の経路において、当該冷却水に油分分離促進剤を存在させることにより、油分を効率よく分離し、含油スラッジの発生を抑制でき、かつ、分離浮上した油をスケールピットの下流側の、仕切り堰を備える横流沈殿槽で簡便に回収できるという知見に基づく。
【0015】
本開示の一態様によれば、分離した浮上性の油分(浮上油分)を、横流沈殿槽に配置された仕切り堰によって前記浮上油分の流れを堰き止め、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間から前記油分が分離された冷却水廃水を通過させることにより当該処理水を回収し冷却することによって再度直接冷却水として使用することができる。
【0016】
[本開示の運転方法]
本開示は、製鉄所の連続鋳造や圧延におけるスプレー水などのいわゆる直接冷却水系の運転方法に関する。
本開示の運転方法は、以下の(1)~(3)を少なくとも含む。
(1)スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態の経路において、当該冷却水に油分分離促進剤を存在させること
(2)スケールピットの下流側の、仕切り堰を備える横流沈殿槽において、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れを堰き止め該油分を除去し、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間から前記油分が分離された冷却水を通過させること
(3)前記横流沈殿槽で油分が除去された前記廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用すること
【0017】
本開示における「直接冷却水系」とは、一又は複数の実施形態において、対象物に直接噴霧又は対象物を浸漬する冷却水を再冷却して使用する水系のことをいう。本開示における直接冷却水は、油分と金属スケールとを含む。直接冷却水としては、一又は複数の実施形態において、製鉄所の連続鋳造工程や圧延工程の成形過程における鋼材や鋼板等の鋼鉄製品や圧延ロール等に直接スプレー又は浸漬等して、これらの冷却又はスケール落とし等に用いた油と金属スケールとを含有する冷却水等が挙げられる。
金属スケールとしては、一又は複数の実施形態において、酸化鉄及び鉄等が挙げられる。
【0018】
本開示の運転方法は、乱流状態の経路に油分分離促進剤を存在させることを含む。
本開示における「乱流状態」としては、一又は複数の実施形態において、当該冷却水の水流又は渦流が不規則であること、又は、当該冷却水の流速が0.5m/s以上であることが挙げられる。冷却水の流速が0.5m/s以上であれば、金属スケールを含有する冷却水の水流又は渦流は不規則になるからである。
本開示における「スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態の経路」としては、特に限定されない一実施形態において、スケールスルース、スケールピット、及びスケールスルースとスケールピットとの間の配管等が挙げられる。
【0019】
スケールスルースとしては、一又は複数の実施形態において、連続鋳造工程又は圧延工程の直接冷却水を回収する箇所が挙げられる。スケールスルースは、一又は複数の実施形態において、連続鋳造工程又は圧延工程から回収された冷却水を排出して循環させて再使用する機能と、油と酸化鉄や鉄等の金属スケールとを含む冷却水を屋外のスケールピットに移動させる機能とを担いうる。
【0020】
油分分離促進剤としては、一又は複数の実施形態において、カチオン性の有機凝結剤若しくはポリマー又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーが好ましい。カチオン性の有機凝結剤又はポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。両性の有機凝結剤又はポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物、及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物等が挙げられる。
【0021】
油分分離促進剤は、一又は複数の実施形態において、1種類でもあってもよいし、複数種類であってもよい。
本開示の運転方法は、一又は複数の実施形態において、油分分離促進剤とは別に酸化鉄や鉄スケールを凝集沈殿させるために通常用いられている有機や無機の凝集剤を通常の用法で用いることができる。
本開示の運転方法において使用する油分分離促進剤は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤を含んでいてもよいし、無機凝集剤を含んでいなくてもよい。
【0022】
油分分離促進剤の添加量としては、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~5mg/Lが挙げられ、好ましくは0.05mg/L~5mg/Lである。
本開示における特に限定されない一実施形態として、乱流状態の経路における油分分離促進剤の濃度は、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~5mg/Lが挙げられ、好ましくは0.05mg/L~5mg/Lである。
【0023】
本開示の運転方法は、分離した浮上油分を、スケールピットの下流側の、仕切り堰を備える横流沈殿槽で除去することを含む。
仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が横流沈殿槽の底面と離間した状態で横流沈殿槽内に配置されている。これにより、仕切り堰によって浮上した油分(浮上油分)の流れが堰き止められ、かつ仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間(離間部分)から油分が分離された廃水を通過させることができる。
【0024】
仕切り堰によって流れが堰き止められた油分の回収(又は除去)は、一又は複数の実施形態において、スキマーや、横流沈殿槽の水面に浮かせた油分回収装置等を用いて行うことができる。よって、横流沈殿槽は、一又は複数の実施形態において、スキマー及び油分回収装置、並びに回収した油を貯蔵又は処理するための回収槽(タンク)等を備えていてもよい。
【0025】
横流沈殿槽(横流式凝集沈殿槽ともいう)は、一又は複数の実施形態において、槽の長手方向に被処理水が移動する過程(時間)で、油分を浮遊させ、かつそれ以外の懸濁物質を沈殿(又は凝集沈殿)させる。このため、横流沈殿槽の大きさ(特に長さ等)は、分離効率を向上させる観点からは、大きければ大きいほどよい(長ければ長いほどよい)が、設備投資等の費用の点から、直接冷却水系が排出される設備の大きさ及び排出される廃水の量、並びに横流沈殿槽を設置する場所の大きさ等に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
仕切り堰は、一又は複数の実施形態において、流れ方向に対して垂直方向に配置されていてもよい。仕切り堰の形状は、冷却水の流れをスムーズにするとともに油分の回収及び/又は分離をより簡便に又は効率よく行うことができる点から、一又は複数の実施形態において、流れ方向に対して斜め方向であってもよいし、横流沈殿槽の側面から伸びる2つの板状物が流れ方向に沿って閉じるように配置されたV字形であってもよいし、凹字形であってもよい。図2A及びBは、横流沈殿槽3に、仕切り堰10を配置した一例を説明するための図面であって、図2Aは上面から見た図の一例であり、図2Bは2A-2A線に沿った断面図である。図2Aにおいて、仕切り堰10は、横流沈殿槽3の側面から伸びる2つの板状物の交点(頂点)が、横流沈殿槽3の下流側に位置するようにV字形に配置されている。図2A及びBに示すように、横流沈殿槽3は、仕切り堰10に加えて、浮上分離した油分を回収するための油分回収装置11、及び凝集沈殿した懸濁物質を回収するための排泥ポンプ14が配置されていてもよい。油分回収装置11は、一又は複数の実施形態において、フロートを備え、仕切り堰10よりも上流の水面に浮かべて配置する。排泥ポンプ14は、一又は複数の実施形態において、仕切り堰10よりも上流の横流沈殿槽3の底面に配置する。
【0027】
仕切り堰は、一又は複数の実施形態において、図2Aに示すとおり、横流沈殿槽の側面から伸びる2つの板状物によりV字形となるように構成されていてもよく、油分の回収及び/又は分離をより効率よく行うことができる点から、2つの板状物のなす角(θ)が、鋭角になるように配置されてもよいし、仕切り堰で堰き止められた油分の回収がより簡便になることから、鈍角になるように配置されていてもよい。なす角(θ)は、一又は複数の実施形態において、30°以上、40°以上、50°以上、60°以上、70°以上、80°以上、90°以上又は110°以上である。なす角(θ)は、一又は複数の実施形態において、170°以下、160°以下、150°以下、140°以下、130°以下又はは125°以下である。
【0028】
仕切り堰は、一又は複数の実施形態において、水面と仕切り堰の下端との距離(図2Bにおけるd1)が、0.5m以上となるように横流沈殿槽に配置されている。水面と仕切り堰の下端との距離(図2Bにおけるd1)は、一又は複数の実施形態において、1m以上、1.5m以上、又は2m以上である。水面と仕切り堰の下端との距離は、一又は複数の実施形態において、2.5m以下又は2m以下である。仕切り堰は、一又は複数の実施形態において、仕切り堰の下端と横流沈殿槽の底面との距離(仕切り堰の下端と横流沈殿槽の底面との離間部分の長さ)(図2Bにおけるd2)が、0.5m以上となるように横流沈殿槽に配置されている。仕切り堰の下端と横流沈殿槽の底面との距離(図2Bにおけるd2)は、一又は複数の実施形態において、1m以上又は2m以上である。仕切り堰の下端と横流沈殿槽の底面との距離は、一又は複数の実施形態において、3m以下又は2.5m以下である。仕切り堰は、一又は複数の実施形態において、水面と仕切り堰の下端との距離(d1)が、横流沈殿槽の深さ(水面と横流沈殿槽との距離:D)の1/2以上、2/3以上、又は3/4以上となるように配置されてもよい。
【0029】
仕切り堰の上端は、一又は複数の実施形態において、浮上油分の流れを堰き止めることがき、油分が仕切り堰の上端をオーバーフローしない範囲で水面上に突出(露出)していればよい。仕切り堰の上端は、一又は複数の実施形態において、水面から10cm以上、30cm以上、又は50cm以上露出していればよい。
【0030】
仕切り堰の数は、特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、1個であってもよいし、横流沈殿槽の流れ方向に向かって2又は3以上は配置されていてもよい。
【0031】
仕切り堰の配置箇所は、特に限定されるものではなく、一又は複数の実施形態において、横流沈殿槽の下流側の端部から上流側に向かって1/2以下、1/3以下又は1/4以下の位置に配置することができる。
【0032】
本開示の運転方法は、一又は複数の実施形態において、横流沈殿槽で沈殿した油分以外の懸濁物質(金属スケールを含むスラッジ成分)を回収することを含んでいてもよい。本開示の運転方法において、一又は複数の実施形態において、油分は浮上分離させることから、懸濁物質(スラッジ成分)は、油分の含有量が少なく、好ましくは実質的に油分を含んでいない。本開示において「実質的に油分を含んでいない」とは、懸濁物質(スラッジ成分)における油分の量が0.5mg/L未満(検出限界以下)であることをいう。本開示の運転方法における横流沈殿槽は、一又は複数の実施形態において、懸濁物質(スラッジ成分)を回収するためのポンプ(排泥ポンプ等)、及び該ポンプで回収した排泥を貯蔵又は処理するための排泥回収槽(タンク)等をさらに備えていてもよい。
【0033】
本開示の運転方法は、横流沈殿槽で油分が除去された前記廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用することを含む。
本開示の運転方法により処理された含油廃水(直接冷却水)は、一又は複数の実施形態において、濾過機及び冷却塔を経て、圧延工場等における直接冷却水として使用されうる。
本開示の運転方法は、一又は複数の実施形態において、直接冷却水の処理方法ということもできる。また、本開示の運転方法は、一又は複数の実施形態において、本開示における直接冷却水系の処理設備の運転又は操業方法ということもできる。
【0034】
[本開示の処理設備]
本開示は、その他の態様として、油と金属スケールとを含有する直接冷却水系の処理設備に関する。本開示の処理設備は、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態を形成する経路と、
前記冷却水に油分分離促進剤を添加するための油分分離促進剤供給装置と、
スケールピットの下流側に配置され、分離した浮上油分を除去する横流沈殿槽と、を含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、
前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で前記横流沈殿槽内に配置されおり、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れが堰き止められ、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間から前記油分が分離された廃水が通過可能である。本開示の処理設備によれば、本開示の直接冷却水系の運転方法を効率よく行うことができる。
【0035】
本開示の処理設備における、スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態を形成する経路、横流沈殿槽及び仕切り堰等のそれに付帯する設備は、本開示の運転方法と同様である。
【0036】
[本開示の油分分離促進剤]
本開示は、さらにその他の態様として、本開示の直接冷却水系の運転方法を実施するための油分分離促進剤であって、該油分分離促進剤は、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーからなる、油分分離促進剤に関する。
本開示の油分分離促進剤における、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーは、本開示の運転方法と同様である。
【0037】
本開示の特に限定されない一実施形態を、図1を参酌しながら説明する。本開示の運転方法の一実施形態は、以下の(1)~(4)を含む。
(1)スケールスルース1において、直接冷却水系廃水に両性の有機凝結剤又はポリマーを添加する。
(2)スケールピット2において、直接冷却水系廃水にカチオン性の有機凝集剤又はポリマー及び無機凝結剤を添加する。
(3)仕切り堰を備える横流沈殿槽3において、前記薬剤が添加された廃水中の油分を浮遊させ、かつそれ以外の懸濁物質(スラッジ成分)を凝集沈殿させる。
(4)油分が除去された廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用する。
以下に、(1)~(4)の各工程について詳述する。
【0038】
(1)スケールスルース1において、薬剤添加装置7により直接冷却水系廃水に両性の有機凝結剤又はポリマーを添加する。
両性の有機凝結剤又はポリマーの添加量としては、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~5mg/Lが挙げられ、好ましくは0.05mg/L~5mg/Lである。また、スケールスルースにおける廃水中の両性の有機凝結剤又はポリマーの濃度は、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~5mg/Lが挙げられ、好ましくは0.05mg/L~5mg/Lである。
【0039】
(2)スケールピット2において、薬剤添加装置(図示せず)により直接冷却水系廃水にカチオン性の有機凝集剤又はポリマー及び無機凝結剤を添加する。
カチオン性の有機凝集剤又はポリマー及び無機凝結剤は、それぞれ別々に添加してもよいし、混合して添加してもよい。カチオン性の有機凝集剤又はポリマー及び無機凝結剤の添加位置は、スケールピットの同じ位置であってもよく、異なる位置であってもよい。
カチオン性の有機凝集剤又はポリマーの添加量としては、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~5mg/Lが挙げられ、好ましくは0.05mg/L~5mg/Lである。また、スケールスルースにおける廃水中のカチオン性の有機凝集剤又はポリマーの濃度は、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~5mg/Lが挙げられ、好ましくは0.05mg/L~5mg/Lである。
無機凝結剤の添加量としては、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~20mg/Lが挙げられ、好ましくは0.1mg/L~10mg/Lである。また、スケールスルースにおける廃水中のカチオン性の有機凝集剤又はポリマーの濃度は、一又は複数の実施形態において、0.001mg/L~20mg/Lが挙げられ、好ましくは0.1mg/L~10mg/Lである。
【0040】
(3)仕切り堰を備える横流沈殿槽3において、前記薬剤が添加された廃水中の油分を浮遊させ、かつそれ以外の懸濁物質(スラッジ成分)を凝集沈殿させる。
前記薬剤が添加されかつ横流沈殿槽3に導入された廃水中の油分は、廃水から分離され、水面に浮上する。浮上した油分(浮上油分)は横流沈殿槽に設けられた仕切り堰でその流れが堰き止められる。堰き止められた油分は、例えば、スキマーや水面上に配置した油分回収装置によって、簡便に回収することができる。また、油分以外の懸濁物質(スラッジ成分)は、横流沈殿槽3において凝集沈殿し、例えば、排泥ポンプ等で回収することができる。このため、仕切り堰の下端と横流沈殿槽の底面との間から油分及びそれ以外の懸濁物質が除去された廃水を通過させることができる。
【0041】
(4)油分が除去された廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用する。
【0042】
上記実施形態では、両性の有機凝結剤又はポリマーをスケールスルース1で添加し、カチオン性の有機凝結剤又はポリマー及び無機凝結剤をスケールピット2で添加した形態を例にとり説明したが、本開示の運転方法において使用する薬剤の種類及び添加位置はこれに限定して解釈されるものではない。
【0043】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
[1] 油と金属スケールとを含有する直接冷却水系の運転方法であって、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態の経路において、当該直接冷却水系廃水に油分分離促進剤を存在させること、
分離した浮上油分をスケールピットの下流側の横流沈殿槽で除去すること、及び
前記横流沈殿槽で油分が除去された前記廃水を回収し、冷却して再度直接冷却水として使用することを含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で前記横流沈殿槽内に配置され、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れを堰き止め、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間の離間部分から前記油分が分離された廃水を通過させる、
直接冷却水系の運転方法。
[2] 前記仕切り堰は、前記横流沈殿槽の流れ方向に対して斜め又はV字形となるように配置されている、[1]に記載の直接冷却水系の運転方法.
[3] 油分分離促進剤が、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーである、[1]又は[2]に記載の直接冷却水系の運転方法。
[4] カチオン性の有機凝結剤又はポリマーが、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、[3]に記載の直接冷却水系の運転方法。
[5] 両性の有機凝結剤又はポリマーが、トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物から選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、[3]に記載の直接冷却水系の運転方法。
[6] 油と金属スケールとを含有する直接冷却水系の処理設備であって、
スケールスルースからスケールピットに至るまでの乱流状態を形成する経路と、
前記冷却水に油分分離促進剤を添加するための油分分離促進剤供給装置と、
スケールピットの下流側に配置され、分離した浮上油分を除去する横流沈殿槽と、を含み、
前記横流沈殿槽は、仕切り堰を備え、
前記仕切り堰は、上端が水面から突出し、かつ下端が前記横流沈殿槽の底面と離間した状態で、前記仕切り堰によって前記浮上油分の流れが堰き止められ、かつ前記仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽の底面との間の離間部分から前記油分が分離された廃水が通過可能であるように前記横流沈殿槽内に配置されている、直接冷却水系の処理設備。
[7] [1]~[5]のいずれかに記載の直接冷却水系の運転方法を実施するための油分分離促進剤であって、
該油分分離促進剤は、カチオン性又は両性の有機凝結剤若しくはポリマーからなる、油分分離促進剤。
[8] カチオン性の有機凝結剤又はポリマーが、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、[7]に記載の油分分離促進剤。
[9] 両性の有機凝結剤又はポリマーが、トリアルキルアミンとアクリル酸の共重合物及びジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸の共重合物から選ばれた一種以上の有機凝結剤又はポリマーである、[7]又は[8]に記載の油分分離促進剤。
【0044】
以下、実施例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例0045】
図1及び2に示すような、連続鋳造工程の直接冷却水循環系(循環水量:1400m/h)において、スラッジ成分を除去する処理を行った。図1に示す直接冷却水循環系は、スケールスルース1、スケールピット2、横流沈殿槽3、濾過機4及び冷却塔5を備える。圧延工程で鋼材の冷却に使用された冷却水は、鋼材圧延ラインの下に設けられたスケールスルース1から、配管(トラフ、樋)6を通じてスケールピット2に導入される。スケールスルース1は、薬剤添加装置7を備える。横流沈殿槽3は、仕切り堰10、油分回収装置11、油分回収槽(タンク)8、排泥ポンプ14及び排泥回収槽(タンク)9を備え、油分回収装置11で回収された油分は油分回収槽(タンク)8に貯蔵され、排泥ポンプ14で回収された懸濁物質(スラッジ成分)は排泥回収槽(タンク)9に回収される。
【0046】
スラッジ成分を除去する処理は、以下の手順で2ヶ月間実施した。
スケールスルース1
・添加する油分分離促進剤:ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸との共重合体(重量平均分子量:約400,000、ナルコカンパニー社製)
・添加量:循環水に対して0.5mg/L
スケールピット2
・添加する薬剤:PAC(ポリ塩化アルミニウム)6mg/L
カチオン系有機凝集剤((株)片山化学工業研究所製、商品名「フロクラン(登録商標)SC-640」)1mg/L
上記のとおりスケールスルース1において、油分分離前の循環水に油分分離促進剤を添加し、スケールピット2において上記のPACとカチオン系有機凝集剤とを添加し、横流沈殿槽3において油分を浮遊させ、かつそれ以外の懸濁物質(スラッジ成分)を凝集沈殿させた。
スケールピット2の下流側の横流沈殿槽3にV字型の仕切り堰(水面と下端との距離(d2):1m、水面と上端との距離:30cm、θ:120°)を、横流沈殿槽3の端部から上流側に向かって排泥ポンプ14後方1mの位置に配置し、仕切り堰の下端と前記横流沈殿槽3の底面との間から前記油分が分離された冷却水を通過させた。
仕切り堰の上流側の水面付近と仕切り堰の下流側の水面付近から試験水を採取し、試験水の含有する油分をJIS K 0102に基づきN-ヘキサン抽出物質測定法によって測定した。
仕切り堰10の上流側の水面付近(図2Aの▽12)から採取した試験水の油分は、最高値52mg/L、最低値15mg/L、平均値35mg/Lで推移したのに対して、仕切り堰10の下流側の水面付近(図2Aの▽13)から採取した試験水の油分は、最高値3.5mg/L、最低値0.5mg/L未満、平均値0.7mg/Lで推移した。
また、横流沈殿槽3で凝集沈殿されたスラッジの油分は不検出(0.5mg/L未満)であった。
これらの結果から明らかなように、本開示の運転方法を実施することにより、油と酸化鉄及び鉄等の金属スケールとを含有する直接冷却水から油分を効率よく分離でき、処理された処理水はそのまま冷却して直接冷却水として使用することができ、かつ、発生したスラッジに含まれる油分の量を抑制できるという効果を奏し得る。
図1
図2