(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184210
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】プラント管理装置及びプラント管理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231221BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231221BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G05B23/02 G
G06Q50/04
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098236
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 亮太
(72)【発明者】
【氏名】福永 康治
(72)【発明者】
【氏名】丹藤 順志
(72)【発明者】
【氏名】青山 直哉
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅教
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】沖津 潤
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊明
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF16
3C223FF17
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH02
5L049AA04
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】単位操作の特性を反映して化学プラントによる処理の結果を予測すること。
【解決手段】化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作の情報と、前記単位操作の処理に関連するログデータの情報と、前記単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報と、を記憶する記憶部と、化学プラントにおける第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力する入力部と、前記センサ情報と、前記第一の単位操作に関連する前記ログデータの情報と前記条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成し、当該予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて前記記憶部に格納する演算部と、を備える化学プラント管理装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作の情報と、前記単位操作の処理に関連するログデータの情報と、前記単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報と、を記憶する記憶部と、
化学プラントにおける第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力する入力部と、
前記センサ情報と、前記第一の単位操作に関連する前記ログデータの情報と前記条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成し、当該予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて前記記憶部に格納する演算部と、を備える
ものであるプラント管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント管理装置であって、
前記演算部は、
前記単位操作の特性に基づいて、1以上の前記単位操作がそれぞれ含まれる複数の特性グループを作成し、
前記複数の特性グループのうち、前記入力部に入力された前記センサ情報に関連する前記第一の単位操作が含まれる第一の特性グループを特定し、前記センサ情報と当該第一の特性グループに含まれる1以上の前記単位操作に関連する前記ログデータの情報及び前記条件情報とに基づいて、第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成する
ものであるプラント管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラント管理装置であって、
前記条件情報は、前記単位操作それぞれに関連する所定の数式モデルの情報を含むものであるプラント管理装置。
【請求項4】
請求項2に記載のプラント管理装置であって、
前記単位操作の特性は、前記単位操作の種別の情報であり、
前記演算部は、前記単位操作の種別の情報に基づいて前記複数の特性グループを作成するものであるプラント管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラント管理装置であって、
さらに前記特性グループは、異なる種別の工程にそれぞれ含まれる2以上の単位操作を同一のグループに含むものであるプラント管理装置。
【請求項6】
請求項2に記載のプラント管理装置であって、
前記記憶部は、異なる複数の拠点における前記単位操作の情報及び前記条件情報を記憶しており、
さらに前記特性グループは、異なる拠点における2以上の単位操作を同一のグループに含むものであるプラント管理装置。
【請求項7】
請求項2に記載のプラント管理装置であって、
前記単位操作の特性は、前記単位操作における代表的な特徴量を示す情報であり、
前記演算部は、前記代表的な特徴量を示す情報に基づいて前記複数の特性グループを作成するものであるプラント管理装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプラント管理装置であって、
前記記憶部は、さらに前記第一の単位操作の処理の結果である第一の実績データを格納しており、
前記演算部は、作成した前記予測モデルと前記第一の実績データとに基づいて、前記第一の単位操作に関する前記条件情報を更新するものであるプラント管理装置。
【請求項9】
請求項1に記載のプラント管理装置であって、
前記演算部は、作成した前記予測モデルと前記センサ情報とに基づいて、第一の単位操作における第一の運転条件を出力するものであるプラント管理装置。
【請求項10】
請求項9に記載のプラント管理装置であって、
前記記憶部は、計算機上で前記第一の単位操作を含む工程を模擬した工程モデルが記憶されており、
前記演算部は、前記第一の運転条件の情報を前記工程モデルに入力し演算することによって、前記第一の単位操作における処理の結果を予測する情報を出力するものであるプラント管理装置。
【請求項11】
請求項10に記載のプラント管理装置であって、
前記演算部は、前記第一の単位操作における処理の結果を予測する情報に基づいて、第一の単位操作における第二の運転条件を特定し、
前記第一の単位操作に関連するプラント設備への制御指示であって、前記第二の運転条件を含む制御指示を作成し、当該制御指示を前記プラント設備へ送信するものであるプラント管理装置。
【請求項12】
請求項10に記載のプラント管理装置であって、
前記記憶部は、前記単位操作それぞれに関する異常が発生したことを示す基準の情報である基準情報と、前記単位操作において異常が発生した際の運転条件を前記単位操作に対応付けて記憶した情報である異常関連情報を格納しており、
前記入力部は、前記第一の単位操作における任意の第二の運転条件の入力を受付可能であり、
前記演算部は、前記第二の運転条件の情報を前記工程モデルに入力し演算することによって前記第一の単位操作における処理の結果を出力し、前記基準情報に基づいて出力した前記結果が異常か否かを判定し、異常であると判定された場合に前記第二の運転条件を前記第一の単位操作に対応付けて前記異常関連情報に格納するものであるプラント管理装置。
【請求項13】
請求項1に記載のプラント管理装置であって、
前記演算部は、
前記第一の単位操作と異なる単位操作であって、前記第一の単位操作と関連する第二の単位操作を特定し、
さらに前記第二の単位操作に関連する前記ログデータの情報と前記第二の単位操作に関連する前記条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成するものであるプラント管理装置。
【請求項14】
請求項1に記載のプラント管理装置であって、
前記入力部に入力される前記第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報は、前記第一の単位操作に関連する前記条件情報に基づいて決定される
ものであるプラント管理装置。
【請求項15】
化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の単位操作の情報と、前記単位操作の処理に関連するログデータの情報と、前記単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報と、を記憶する記憶部と、
前記単位操作の特性に基づいて、所定範囲の特性を有する1以上の前記単位操作がそれぞれ含まれる複数の特性グループを作成する処理部と、
化学プラントにおける第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力する入力部と、
前記複数の特性グループのうち、前記入力部に入力された前記センサ情報に関連する前記第一の単位操作が含まれる第一の特性グループを特定し、前記センサ情報と当該第一の特性グループに含まれる1以上の前記単位操作に関連する前記ログデータの情報及び前記条件情報とに基づいて、第一の単位操作における処理の結果を予測する演算部と、を備える
ものであるプラント管理装置。
【請求項16】
化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作に含まれる第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力するステップと、
前記センサ情報と、前記第一の単位操作の処理に関連するログデータの情報と前記第一の単位操作における条件に関する情報である条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成するステップと、
前記予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて所定の記憶装置に格納するステップと、を含む
プラント管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント管理装置、及びプラント管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AI(Artificial Intelligence)などを利用して、プラントの生産物の品質を予測するためのモデルを作成する技術がある。例えば、特許文献1には、「化学プラントから得られるプロセスデータに対し所定の加工処理を行うプロセスデータ加工部と、前記化学プラントから得られるプロセスデータ又は前記プロセスデータ加工部によって加工された前記プロセスデータのうち、説明変数とする第1のプロセスデータと、目的変数とする第2のプロセスデータ又は当該第2のプロセスデータに応じた値との組み合わせを定義する因果関係情報に基づいて、前記化学プラントから得られた前記プロセスデータの特徴を学習した予測モデルを作成する予測モデル作成部と、を備え、前記プロセスデータ加工部は、前記プロセスデータを用いて、所定の期間における処理対象の反応速度に応じた値を求める。」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラントの運転に関するセンサ情報を分析してプラント内の状況を把握または将来予測するために、プラント内におけるログデータに基づいてAIを利用したモデル分析が行われる場合がある。
【0005】
一方で、プラント内には様々な工程とそれぞれの工程に含まれる単位操作が存在し、分析対象のセンサ情報はいずれかの単位操作における情報となる。そして、プラント内の各単位操作には、単位操作特有の運転条件や方法が存在している場合がある。
【0006】
しかしながら、一般に、AIはデータドリブンであり、工程や単位操作の制約の概念や通常時の運転状態とは異なる特殊な運転状態に関する概念がないため、AIによるモデル分析を行う際に、上述の単位操作特有の運転条件や方法が考慮されず、分析効率や分析精度へ影響を与えるという課題が存在することを発明者は見出した。例えば、分析対象のセンサ情報とは無関係なデータを含めて演算が発散してしまって効率的な分析が行えなくなったり、各単位操作における基本的な理論が考慮されずに分析精度が低減してしまうといった例が挙げられる。
そのため、単位操作特有の分析ポリシーや分析条件といった制約を考慮しながら分析対象のセンサ情報を分析するためのモデルを作成可能なシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明のプラント管理装置の一つは、化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作の情報と、前記単位操作の処理に関連するログデータの情報と、前記単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報と、を記憶する記憶部と、化学プラントにおける第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力する入力部と、前記センサ情報と、前記第一の単位操作に関連する前記ログデータの情報と前記条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成し、当該予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて前記記憶部に格納する演算部と、を備える。
また、代表的な本発明のプラント管理方法の一つは、化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作に含まれる第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力するステップと、前記センサ情報と、前記第一の単位操作の処理に関連するログデータの情報と前記第一の単位操作における条件に関する情報である条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成するステップと、前記予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて所定の記憶装置に格納するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単位操作の特性を反映して化学プラントによる処理の結果を予測することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における化学プラントの反応予測についての説明図
【
図7】予測モデルの作成時の動作を示すフローチャート
【
図8】予測モデルの運用時の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら本発明を実施するための代表的な形態を説明する。
図1は、実施形態における化学プラントの反応予測についての説明図である。実施形態に開示するプラント管理装置は、例えば、反応器を用いて行う処理の結果を予測する。
図1では、反応器に投入する原料や、反応器の状態についてセンサを用いてセンサデータを取得している。
【0011】
ここで、単位操作について説明する。単位操作とは、フェーズの開始、編成及び制御に必要なアルゴリズムから構成され、独立な処理を定義する手順要素である。例えば、反応、分留、撹拌、伝熱、分離等は、単位操作として扱うことができる。プラントの工程は、これらの単位操作を1又は複数含む。工程の例として、例えば、特定の生成物の生成工程や、当該生成工程の一部などであっても良い。なお、単位操作及び工程の区分については、化学プラントの設備構成や運用方式、具体的な処理内容に応じて決定されても良い。
【0012】
開示のプラント管理装置は、センサデータに加え、単位操作の条件情報を用いて処理の結果を予測する。
条件情報は、単位操作特有の分析ポリシーや分析条件といった制約を示すものである。条件情報には、単位操作の種別、所定の数式モデル、工程の種別、運転の条件等が含まれる。
単位操作の種別は、例えば反応や分留などである。数式モデルは、例えば反応速度式や伝熱計算式などである。工程の種別は、例えばその工程で生成する生成物の種類などである。運転の条件とは、温度や流量などに関する条件である。一例として、温度や流量などのセンサデータにおける、最大・最小・標準偏差などのしきい値や、固有の値などである。
【0013】
プラント管理装置は、条件情報に基づいて、データの追加、センサデータの削除、センサデータの補正等を行うことで、予測モデルに与えるデータセットを生成する。ここで、単位操作ごとに分析に必要となるセンサデータの種別、期間等は異なるため、条件情報に基づいて予測モデルに与えるデータセットを生成することで、必要なデータのみを利用し、より高精度且つ効率的な予測を行うことが可能となる。そして、予測モデルは、与えられたデータセットを用い、反応器による処理の結果(例えば反応器が生成した生成物の品質)を予測する。
このように、センサから取得したデータ群に対し、条件情報に基づくデータの追加、削除、補正を行うことで、単位操作特有の分析ポリシーや分析条件といった制約を考慮した反応予測が可能となる。
【0014】
図2は、反応予測の具体例の説明図である。プラント管理装置は、例えば、生成物Aの品質を予測する場合に、生成物Aの運転データに加え、生成物Aの生成工程で使用する単位操作の条件情報を説明変数として用いる。このため、生成物Aの運転データのみを説明変数としてAIによるデータ解析を行う場合に比して、高精度なモデル作成と高精度な予測を行うことができる。
【0015】
生成物Aの運転データとしては、過去に生成物Aを生成したときのログデータを用いればよい。条件情報としては、生成物Aに関する反応速度論や反応率などを用いることができる。
【0016】
同様に、生成物Bや生成物Cについても、運転データに加えて条件情報を説明変数として用いることで、品質を予測することができる。
【0017】
AIデータ解析に用いる予測モデルの作成について説明する。プラント管理装置は、センサデータと、単位操作に関連するログデータと条件情報とに基づいて、単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成する。そして、作成した予測モデルを単位操作に対応付けて所定の記憶部に格納する。
【0018】
例えば、単一の生成物を生成する化学プラントであれば、特定の単位操作についての運転データが大量に得られるので、その運転データから予測モデルを作成することができる。
一方、多品種を扱うプラントにおいて、各単位操作の情報を製品ごと、品番個別に分析しようとすると、データが複雑且つ膨大になり分析の効率が低減する上に、必要なデータが不足する可能性がある。
【0019】
そのため、開示のプラント管理装置は、分析対象の単位操作に関して、類似の特性を持つ単位操作をグループ分けして、分析対象のセンサ情報に対応する単位操作について、類似する単位操作の条件や作成済みモデルに基づいて分析を行うことができるようにしている。ここで、類似する単位操作の条件や作成済みモデルを利用することの理由について説明する。各単位操作に紐づく分析ポリシーや分析条件は、単位操作の種別や、化学プラントの設備構成、対象とする原料、中間物、生成物の性質等に応じて、共通又は類似の分析ポリシーや分析条件を含んでいる場合がある。そのため、分析対象の単位操作とは異なる単位操作として管理されているものに関連する条件情報やログデータであっても、分析対象の単位操作における予測モデル作成や、予測のためのデータセット作成に利用できる場合がある。例えば、単位操作特有の分析ポリシーや分析条件は、単独の異なる拠点や異なる工程に含まれる単位操作であっても、同種の単位操作が、共通又は類似の分析ポリシーや分析条件を含んでいる場合がある。また、異なる種別の単位操作であっても、予測モデルや分析において重要となる特徴量の種別や、設備構成に応じて、共通又は類似の分析ポリシーや分析条件を含んでいる場合がある。さらに、各単位操作の処理対象となっている物質の性質に応じて、共通又は類似の分析ポリシーや分析条件を含んでいる場合がある。
【0020】
具体的には、プラント管理装置は、単位操作の特性に基づいて、所定範囲の特性を有する1以上の単位操作がそれぞれ含まれる複数の特性グループを作成する。そして、複数の特性グループのうち、入力されたセンサ情報に関連する単位操作が含まれる特性グループを特定し、センサ情報と当該特性グループに含まれる1以上の単位操作に関連するログデータの情報及び条件情報とに基づいて、単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成する。また、モデルを作成するその他の方法として、入力されたセンサ情報に関連する単位操作が第一の単位操作であった場合、第一の単位操作が含まれる特性グループに含まれる他の単位操作に関して、既に作成された複数の学習モデルを利用して、第一の単位操作に関する予測モデルを作成しても良い。例えば、既存の複数の学習モデルをアンサンブル学習することで、第一の単位操作に関する予測モデルを作成できる。
【0021】
図2では、生成物Aと生成物Bを同一のグループGr1としている。なお、グループGr2は、生成物Cのみが属しているが、このように1のグループに1の単位操作のみが属していてもよい。
グループ分けは、単位操作の種別、工程の種別、化学プラントにおける設備構成の情報、反応の特性、バッチ工程か連続工程かを識別する情報、化学プラントの所在を識別する拠点の情報、単位操作の運転条件における最適な特徴量など、分析の目的に応じて、任意の特性を用いて行うことができる。
また、グループ化について、複数の単位操作について、一通りのグループを作成する場合について説明を行ったが、単位操作に関する複数の特性の種別それぞれについて、その特性の種別ごとにグループを作成しても良い。即ち、一例として、ある2つの特性の種別A、Bに注目する場合、特性の種別Aにおけるグループ分け(パターン1)と、特性の種別Bにおけるグループ分け(パターン2)とがそれぞれ別々に行われる。この場合、分析対象のセンサデータについて入力を受けたならば、種別ごとに類似のグループが特定され、それら特定された複数の類似のグループに含まれる単位操作に関連する条件情報、ログデータまたは作成済み予測モデルに基づいて、予測モデルの作成、または、予測モデルに入力するデータセットの作成を行っても良い。この時、分析の目的に応じて、参照するべきグループ分けのパターンを選択するようにしても良い。
【0022】
図3は、条件情報の有無による違いについての説明図である。センサデータのみを用いると、AIにより選定された領域は、必要十分なデータ範囲に対して過不足が生じる。例えば、反応器内温や撹拌速度は適正に選定されているが、原料組成や触媒流量が選定から漏れ、考慮不要な原料流量が含まれている、といった事態が生じる。このように過不足のあるデータで学習を行った予測モデルでは、予測精度を高くすることは困難である。
【0023】
一方、条件情報を用いれば、単位操作の種別、運転方式が連続方式かバッチ方式か、立上げや立下げの時間に関するデータなどを反映して、必要十分なデータ範囲のデータセットを選定し、予測モデルの学習を行うことができる。このため、予測モデルの予測精度を向上することができる。また、予測モデルに入力するデータの選別に条件情報を用いることで、分析の効率向上や、必要なデータのみを用いることによる分析精度の向上に寄与する。
【0024】
図4は、プラント管理装置の構成を示す構成図である。
図4に示したように、プラント管理装置は、演算装置11、主記憶装置12、ユーザインターフェース13、表示部14、通信インターフェース15、補助記憶装置20を有する。
【0025】
演算装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、特許請求の範囲に記載した演算部として動作する。
主記憶装置12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。演算装置11は、各種のプログラムやデータを主記憶装置12に展開し、プログラムを順次実行することで、プラント管理装置の動作を制御する。
【0026】
ユーザインターフェース13は、例えばキーボードなどであり、管理者からの操作入力を受け付ける。具体的には、ユーザインターフェース13は、生成物のデータの入力等に用いられる。
表示部14は、例えば液晶ディスプレイであり、管理者に対する各種情報の表示出力に用いられる。
【0027】
通信インターフェース15は、データ統合基盤を介して化学プラントの装置と通信する。
図4では、化学プラントは、拠点L1、拠点L2など、複数の場所に建設されている。各拠点の化学プラントには、各種のプラント設備とセンサ装置が設置されている。例えば、拠点L1は、連続方式を採用しており、単位操作ごとにセンサ装置とプラント設備のセットを有している。そして、1又は複数の単位操作が工程を形成し、複数の工程が対象物の生産ラインを形成する。
【0028】
通信インターフェース15は、拠点のセンサ装置からセンサデータを受信し、プラント設備に対して制御指示などを送信することができる。すなわち、通信インターフェース15は、センサデータに関し、特許請求の範囲に記載した入力部として動作する。
【0029】
補助記憶装置20は、各種データを記憶する記憶部であり、特許請求の範囲に記載した記憶部として動作する。補助記憶装置20は、ログデータ21、条件情報データベース22、単位操作データベース23、予測モデルデータベース24、工程モデルデータベース25、基準情報26、異常関連情報27などを記憶する。
【0030】
ログデータ21は、単位操作の処理に関連するログデータであり、例えば、化学プラントの運転データである。各ログデータは、それぞれ関連する単位操作の情報と対応付けて記憶されていても良い。
条件情報データベース22は、単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報を登録したデータベースである。
条件情報は、分析対象の単位操作に関連する物理・化学現象を数式や理論・手法で表現したものであっても良い。物理・化学現象を数式や理論・手法で表現したものは、数式モデルとして格納される。例として、反応速度式、アレニウスの式、伝熱計算式、伝熱面積計算式、蒸留塔段数計算式、圧力損失計算式、攪拌による動力計算式、等を示す数式モデルが挙げられる。
【0031】
単位操作データベース23は、化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作の情報を登録したデータベースである。
予測モデルデータベース24は、単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを登録したデータベースである。
工程モデルデータベース25は、計算機上で単位操作を含む工程を模擬するための工程モデルを登録したデータベースである。
基準情報26は、単位操作それぞれに関する異常が発生したことを示す基準の情報である。
異常関連情報27は、単位操作において異常が発生した際の運転条件を単位操作に対応付けて記憶した情報である。
【0032】
演算装置11は、センサ装置から取得したセンサデータと、ログデータ21と条件情報データベース22とを参照して予測モデルを作成し、当該予測モデルを単位操作に対応付けて予測モデルデータベース24に登録する。
【0033】
また、演算装置11は、単位操作の特性に基づいて、所定範囲の特性を有する1以上の単位操作がそれぞれ含まれる複数の特性グループを作成することができる。そして、複数の特性グループのうち、入力されたセンサデータに関連する単位操作が含まれる特性グループを特定し、センサデータと特性グループに含まれる1以上の単位操作に関連するログデータ及び条件情報とに基づいて、予測モデルを作成することができる。
【0034】
単位操作の特性としては、例えば、単位操作の種別の情報を用いればよい。この場合、演算装置11は、単位操作の種別の情報に基づいて複数の特性グループを作成する。
【0035】
また、異なる種別の工程にそれぞれ含まれる2以上の単位操作が同一のグループに属するよう特性グループを作成することもできる。例えば、生成物Aの生成工程と生成物Bの生成工程に単位操作として「撹拌」が含まれている場合には、生成物Aの撹拌と生成物Bの撹拌を含む特性グループを作成する。異なる工程であっても共通する分析ポリシーや運転方法を含む場合があるため、異なる種別の工程にそれぞれ含まれる2以上の単位操作が同一のグループに属するようにすることで、多品種を扱うプラントであっても、分析に必要なデータを確保しやすくなる。
【0036】
また、異なる複数の拠点における単位操作の情報及び条件情報を記憶に格納している場合には、異なる拠点における2以上の単位操作が同一の特性グループに属するよう特性グループを作成してもよい。例えば、生成物Aを拠点L1で生成したときの撹拌と生成物Aを拠点L2で生成したときの撹拌を含む特性グループを作成する。他拠点であっても共通する分析ポリシーや運転方法を含む場合があるため、異なる拠点における2以上の単位操作が同一の特性グループに属するようにすることで、多品種を扱うプラントであっても、分析に必要なデータを確保しやすくなる。
【0037】
また、単位操作における代表的な特徴量を元に特性グループを作成してもよい。これは、重要となる特徴量が共通する場合、予測モデルの作成において共通の分析ポリシーや運転方法を含むためである。例えば、運転条件において温度が重要な単位操作が同一の特性グループに属するよう特性グループを作成してもよい。
【0038】
演算装置11は、条件情報を更新することも可能である。単位操作の処理の結果である実績データがログデータ21に追加されていったならば、追加後のログデータ21と予測モデルとに基づいて、条件情報を更新することができる。
【0039】
また、演算装置11は、作成した予測モデルとセンサデータとに基づいて、単位操作における運転条件を出力することも可能である。例えば、条件情報に基づいて作成したデータセットを予測モデルへ入力して予測を行った結果の情報と、目標品質の情報とに基づいて、運転条件の変更のリコメンドに関する情報を出力するようにしてもよい。また、予測モデルとセンサデータと目標品質の情報に基づいて、最適条件の探索を行うようにしても良い。
【0040】
さらに、演算装置11は、運転条件の情報を工程モデルに入力し演算することによって、単位操作における処理の結果を予測する情報を出力することができる。このように、工程モデルを用いた処理のシミュレーションを行うことで、実際の処理を行う前に各種評価を行うことができる。
【0041】
演算装置11は、単位操作における処理の結果を予測する情報に基づいて、単位操作における好適な運転条件を特定し、単位操作に関連するプラント設備への制御指示であって、特定した運転条件を含む制御指示を作成し、当該制御指示をプラント設備へ送信することもできる。このように制御指示を送信することで、プラントの自動運転が実現できる。
【0042】
また、ユーザインターフェース13は、単位操作について任意の運転条件の入力を受付可能であり、演算装置11は、受け付けた運転条件の情報を工程モデルに入力し演算することによって単位操作における処理の結果を出力し、基準情報26に基づいて出力した結果が異常か否かを判定することができる。演算装置11は、異常であると判定した場合には、その運転条件を単位操作に対応付けて異常関連情報27に格納する。このように、異常発生をシミュレーションすることで、異常が発生する条件を蓄積することができる。
【0043】
図5は、プラント管理装置の運用についての説明図である。プラント管理装置は、単位操作理解S101、目的変数設定S102、データ選定S103、特徴量追加S104、学習期間設定S105、ソフトセンサ解析実行S106の順に動作を行う。
【0044】
単位操作理解S101では、条件情報データベース22に登録された条件をAIが学習する。AIによる学習は、具体的には、演算装置11による演算によって実現すればよい。
目的変数設定S102は、解析対象の指定を受け付ける。例えば、解析対象として生成物の品質が指定されれば、生成物の品質が目的変数となる。この場合、予測モデルは、生成物の品質をソフトウェアによる演算で取得するソフトウェアセンサとなる。
【0045】
データ選定S103では、データ解析的側面と条件情報の両面から、解析対象と関連性の深いデータをAIが自動で選定する。
特徴量追加S104では、条件情報に基づいて、解析対象のソフトセンシングに効果的な特徴量をAIが自動で追加する。
学習期間設定S105では、条件情報に基づいて、解析対象のソフトセンシングに効果的な解析期間をAIが自動で選定する。
ソフトセンサ解析実行S106では、選定されたデータと期間にて、目的とする解析対象をAIが学習または予測する。
【0046】
図6は、グループ分けの具体例についての説明図である。
単位操作を基準とするグループ分けでは、「理論モデルが類似する反応を同一グループとする」、「分留、一般蒸留、減圧蒸留を統合して蒸留の分類でグループ化する。」といったグループ分けが可能である。
特性を基準とするグループ分けでは、「流体(個体、液体、気体)によってグループ分けする。」ことができる。例えば、「単位操作α、液体」であればGr11に、「単位操作α、気体」であればGr12に分類する、といったグループ分けが可能である。また、「使用する設備によってグループ分けする。」こともできる。例えば、反応を連続方式で行うかバッチ方式で行うかでグループ分けが可能である。
【0047】
つぎに、プラント管理装置の動作について説明する。
図7は、予測モデルの作成時の動作を示すフローチャートである。
演算装置11は、まず、プラントのセンサ装置から取得したセンサデータを入力するセンサデータ入力ステップを実行する(ステップS201)。
【0048】
その後、演算装置11は、センサデータと、ログデータ21と、条件情報データベース22の条件情報とを用い、予測モデルの作成に使用するデータセットを生成する(ステップS202)。
【0049】
演算装置11は、生成したデータセットを用いて機械学習を実行し、単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成する(ステップS203)。以上の構成により、単位操作特有の分析ポリシーや分析条件といった制約を考慮しながら分析対象のセンサ情報を分析するためのモデルを作成可能となる。
そして、作成した予測モデルを単位操作に対応付けて補助記憶装置20の予測モデルデータベース24に格納し(ステップS204)、処理を終了する。
特定の単位操作について蓄積されたセンサデータの数が十分であれば、ステップS201で当該単位操作についてセンサデータのみを入力し、予測モデルを作成することができる。一方、当該、特定の単位操作について蓄積されたセンサデータの数が不十分であっても、当該単位操作が属するグループの他の単位操作について蓄積したデータを用いることで、予測モデルを作成可能である。
【0050】
図8は、予測モデルの運用時の動作を示すフローチャートである。
演算装置11は、まず、プラントのセンサ装置から取得したセンサデータを入力するセンサデータ入力ステップを実行する(ステップS301)。ここで、分析対象のセンサ情報が任意の第一の単位操作に関連するものである場合、入力されるセンサデータ(センサ情報)は、第一の単位操作に関連する条件情報に基づいて決定されても良い。それにより、分析に必要なデータセットを作成するためのデータを、効率良く且つ確実に取得できる。
【0051】
その後、演算装置11は、センサデータと、条件情報データベース22の条件情報とを用い、予測モデルに与えるデータセットを生成する(ステップS302)。単位操作ごとに分析に必要となるセンサデータの種別、期間等は異なるため、条件情報に基づいて予測モデルに与えるデータセットを生成することで、必要なデータのみを利用し、より高精度且つ効率的な予測を行うことが可能となる。
【0052】
演算装置11は、生成したデータセットを説明変数として、予測モデルによる予測を実行する(ステップS303)。このとき、使用する予測モデルは、対象の単位操作のデータのみから作成した予測モデルであってもよいし、対象の単位操作が属するグループのデータを用いて作成した予測モデルであってもよい。
そして、予測結果を出力し(ステップS304)、処理を終了する。
【0053】
図9は、プラントの自動運転についての説明図である。プラント管理装置は、センサ装置が取得したセンサデータと条件情報を用いて、データセットを生成する。このデータセットを予測モデルに与えて反応器の状態をシミュレートすることで、実際の反応器がどのような状態になるかを予測することができる。プラント管理装置は、予測結果に基づいて、単位操作における好適な運転条件を特定し、プラントへの制御指示を生成し、プラント設備へ送信する。このように制御指示を送信することで、プラントの自動運転が実現できる。
【0054】
図4では、拠点L1のプラントが連続方式を採用している状態を示したが、プラントはバッチ方式であってもよい。
図10は、拠点L1がバッチ方式を採用する場合を示している。バッチ方式を採用しているため、拠点L1では、1のプラント設備で複数の単位操作を行い、その後、次の工程の設備に移送することになる。センサ装置は、プラント設備に対応付けて設置されている。すなわち、1のセンサ装置が複数の単位操作で使用される可能性がある。このため、センサ装置の出力に対し、どの単位操作におけるセンサ出力であるかを特定可能な情報を付してプラント管理装置に送信する必要がある。その他の構成及び動作については
図4と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
なお、これまでの説明では、単位操作を複数のグループに分けて予測モデルを作成する方法を例示したが、他の方法を用いることもできる。例えば、演算装置11が、第一の単位操作と異なる単位操作であって、第一の単位操作と関連する第二の単位操作を特定し、さらに第二の単位操作に関連するログデータの情報と第二の単位操作に関連する条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成することも可能である。一例として、ある単位操作について類似する単位操作を探し、類似する単位操作について蓄積したログデータや条件情報を用いて予測モデルを作成することで、予測モデルの作成に使用可能なデータ数を増やすことができる。
【0056】
上述してきたように、開示のプラント管理装置は、化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作の情報と、前記単位操作の処理に関連するログデータの情報と、前記単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報と、を記憶する記憶部としての補助記憶装置20と、化学プラントにおける第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力する入力部としての通信インターフェース15と、前記センサ情報と、前記第一の単位操作に関連する前記ログデータの情報と前記条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成し、当該予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて前記記憶部に格納する演算部としての演算装置11と、を備える。
このような構成及び動作を採用することで、プラント管理装置は、単位操作の特性を反映して化学プラントによる処理の結果を予測することができる。
【0057】
また、演算部は、前記単位操作の特性に基づいて、所定範囲の特性を有する1以上の前記単位操作がそれぞれ含まれる複数の特性グループを作成し、前記複数の特性グループのうち、前記入力部に入力された前記センサ情報に関連する前記第一の単位操作が含まれる第一の特性グループを特定し、前記センサ情報と当該第一の特性グループに含まれる1以上の前記単位操作に関連する前記ログデータの情報及び前記条件情報とに基づいて、第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成することができる。
このため、少量多品種を扱うプラントであっても、効率的に予測モデルを作成することができる。
【0058】
また、前記条件情報は、前記単位操作それぞれに関連する所定の数式モデルの情報を含むことができる。
また、前記単位操作の特性は、前記単位操作の種別の情報であり、前記演算部は、前記単位操作の種別の情報に基づいて前記複数の特性グループを作成するものであってもよい。
また、前記特性グループは、異なる種別の工程にそれぞれ含まれる2以上の単位操作を同一のグループに含むものであってもよい。
また、前記記憶部は、異なる複数の拠点における前記単位操作の情報及び前記条件情報を記憶しており、さらに前記特性グループは、異なる拠点における2以上の単位操作を同一のグループに含むものであってもよい。
また、前記単位操作の特性は、前記単位操作における代表的な特徴量を示す情報であり、前記演算部は、前記代表的な特徴量を示す情報に基づいて前記複数の特性グループを作成するものであってもよい。
このように、条件情報としては任意の条件を用いることができ、また、単位操作は任意のグループ分けが可能である。
【0059】
また、前記記憶部は、さらに前記第一の単位操作の処理の結果である第一の実績データを格納しており、前記演算部は、作成した前記予測モデルと前記第一の実績データとに基づいて、前記第一の単位操作に関する前記条件情報を更新するものであってもよい。
このように、運用によって蓄積されたデータを用いて条件情報を更新することで、予測モデルによる予測の精度を向上することができる。
【0060】
また、演算部は、作成した前記予測モデルと前記センサ情報とに基づいて、第一の単位操作における第一の運転条件を出力するものであってもよい。
さらに、前記記憶部は、計算機上で前記第一の単位操作を含む工程を模擬した工程モデルが記憶されており、前記演算部は、前記第一の運転条件の情報を前記工程モデルに入力し演算することによって、前記第一の単位操作における処理の結果を予測する情報を出力するものであってもよい。
さらに、前記演算部は、前記第一の単位操作における処理の結果を予測する情報に基づいて、第一の単位操作における第二の運転条件を特定し、前記第一の単位操作に関連するプラント設備への制御指示であって、前記第二の運転条件を含む制御指示を作成し、当該制御指示を前記プラント設備へ送信するものであってもよい。
このように、予測モデルによる予測は、適切な運転条件の出力、工程のシミュレーション、自動運転に使用可能である。
【0061】
また、前記記憶部は、前記単位操作それぞれに関する異常が発生したことを示す基準の情報である基準情報と、前記単位操作において異常が発生した際の運転条件を前記単位操作に対応付けて記憶した情報である異常関連情報を格納しており、前記入力部は、前記第一の単位操作における任意の第二の運転条件の入力を受付可能であり、前記演算部は、前記第二の運転条件の情報を前記工程モデルに入力し演算することによって前記第一の単位操作における処理の結果を出力し、前記基準情報に基づいて出力した前記結果が異常か否かを判定し、異常であると判定された場合に前記第二の運転条件を前記第一の単位操作に対応付けて前記異常関連情報に格納するものであってもよい。
このような構成及び動作を採用することで、異常状態をシミュレーションすることで、異常が発生する条件を蓄積することができる。
【0062】
また、前記演算部は、前記第一の単位操作と異なる単位操作であって、前記第一の単位操作と関連する第二の単位操作を特定し、さらに前記第二の単位操作に関連する前記ログデータの情報と前記第二の単位操作に関連する前記条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成するものであってもよい。
このように、グループ分けに限定されることなく、任意の手法で類似する単位操作を特定し、異なる単位操作に関連する情報から予測モデルを作成することができる。
【0063】
また、別の観点では、開示のプラント管理装置は、化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の単位操作の情報と、前記単位操作の処理に関連するログデータの情報と、前記単位操作それぞれにおける条件に関する条件情報と、を記憶する記憶部としての補助記憶装置20と、前記単位操作の特性に基づいて、所定範囲の特性を有する1以上の前記単位操作がそれぞれ含まれる複数の特性グループを作成する処理部としての演算装置11と、化学プラントにおける第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力する入力部としての通信インターフェース15と、を備え、演算装置11は、前記複数の特性グループのうち、前記入力部に入力された前記センサ情報に関連する前記第一の単位操作が含まれる第一の特性グループを特定し、前記センサ情報と当該第一の特性グループに含まれる1以上の前記単位操作に関連する前記ログデータの情報及び前記条件情報とに基づいて、第一の単位操作における処理の結果を予測する演算部としても動作する。
このため、プラント管理装置は、単位操作の特性を反映して化学プラントによる処理の結果を予測することができる。
【0064】
また、開示のプラント管理方法は、化学プラントにおける処理工程に含まれる複数の異なる単位操作に含まれる第一の単位操作に関連するセンサ装置から取得したセンサ情報を入力するステップと、前記センサ情報と、前記第一の単位操作の処理に関連するログデータの情報と前記第一の単位操作における条件に関する情報である条件情報とに基づいて、前記第一の単位操作における処理の結果を予測するための予測モデルを作成するステップと、前記予測モデルを前記第一の単位操作に対応付けて所定の記憶装置に格納するステップと、を含む。
このため、プラント管理方法は、単位操作の特性を反映して化学プラントによる処理の結果を予測することができる。
【0065】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
【符号の説明】
【0066】
11:演算装置、12:主記憶装置、13:ユーザインターフェース、14:表示部、15:通信インターフェース、20:補助記憶装置、21:ログデータ、22:条件情報データベース、23:単位操作データベース、24:予測モデルデータベース、25:工程モデルデータベース、26:基準情報、27:異常関連情報