(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184212
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】無人航空機、無人航空機の制御方法、プログラム、及びシステム
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20231221BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231221BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20231221BHJP
G01C 21/24 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64C39/02
G08G5/00 A
G01C21/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098242
(22)【出願日】2022-06-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月16日 一般社団法人セキュアドローン協議会ウェブサイトにて公開(https://www.secure-drone.org/news/2022/0616-drone_security_guide_r3/)
(71)【出願人】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】吉里 光喜
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA11
2F129BB03
2F129BB22
2F129BB26
2F129CC06
2F129CC16
2F129CC17
2F129DD16
2F129DD20
2F129DD65
2F129EE52
2F129EE95
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF72
2F129HH02
2F129HH04
2F129HH12
2F129HH18
2F129HH21
5H181AA26
5H181BB13
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF32
5H181FF33
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】 飛行制限領域を二重に設定し、飛行時における無人航空機の安全を確保する無人航空機、無人航空機の制御方法、プログラム、及びシステムを提供する。
【解決手段】 無人航空機は、無人航空機の飛行制御をする飛行制御部と、
飛行制御部からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した第一の飛行制限領域と、無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する飛行制限領域設定部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機の飛行制御をする飛行制御手段と、
前記飛行制御手段からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した前記第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する飛行制限領域設定手段と、
を有する無人航空機。
【請求項2】
前記飛行制限領域設定手段は、前記無人航空機が前記第二の飛行制限領域の境界線に到達したことを検知した場合、前記第二の飛行制限領域に関連付けられた異常回避制御をするために用いる異常回避制御情報を前記飛行制御手段に送信し、前記飛行制御手段に前記異常回避制御をさせる
請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記設定情報は、前記第二の飛行制限領域の境界線を、前記第一の飛行制限領域の境界線の内側又は外側に設定する情報と、前記第一の飛行制限領域の境界線からの距離を表す情報とを有する
請求項2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記設定情報は、前記第二の飛行制限領域の高さ制限を設定する情報を有する
請求項3に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記設定情報は、あらかじめ設定された前記無人航空機の自動飛行経路の情報と、前記自動飛行経路からの距離を表す情報とを有する
請求項2に記載の無人航空機。
無人航空機
【請求項6】
無人航空機の制御方法であって、
前記無人航空機は、飛行制御手段と飛行制限領域設定手段とを有し、
前記飛行制御手段は、無人航空機の飛行制御をし、
前記飛行制限領域設定手段は、前記飛行制御手段からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した前記第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する
無人航空機の制御方法。
【請求項7】
無人航空機の飛行制限領域設定するコンピュータに、
あらかじめ設定された第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定するプログラムと、
を有するプログラム。
【請求項8】
無人航空機と情報処理装置とを有するシステムであって、
前記無人航空機は、
前記無人航空機の飛行制御をする飛行制御手段と、
前記飛行制御手段からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した前記第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する飛行制限領域設定手段と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記飛行制限領域設定手段に前記第二の飛行制限領域と異常回避制御との関連付けを設定するための設定情報を送信する
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人航空機、無人航空機の制御方法、プログラム、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンのフライトコントローラには、ドローンの飛行制限領域を設定するジオフェンス機能が設けられている。ところが、フライトコントローラのジオフェンス機能だけでは、ドローンの飛行の安全性を確保することが困難である。
【0003】
関連する技術して特許文献1には、鉄道事業者が土地を所有する鉄道線路が敷設された範囲を利用して飛行経路を作成することで、容易かつ安全に無人飛行体を飛行させることができる管理装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に開示されているドローンは、ドローンの飛行が許可された鉄道線路が敷設された鉄道施設の範囲を示す境界線データをもとに、ジオフェンス機能を実現する。すなわち、飛行制御部は、軌道(レール)あるいは軌道上方に架設された電線の追尾が外れたとしても、境界線データが示す範囲外に移動しないように飛行を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、フライトコントローラにより設定した飛行制限領域しか設定できない。すなわち飛行制限領域内に、更に飛行制限領域を設定できない。
【0007】
本開示の目的の一例は、飛行制限領域を二重に設定し、飛行時における無人航空機の安全を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における無人航空機は、
無人航空機の飛行制御をする飛行制御部と、
前記飛行制御部からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した前記第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する飛行制限領域設定部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本開示の一側面における無人航空機の制御方法であって、
前記無人航空機は、飛行制御部と飛行制限領域設定部とを有し、
前記飛行制御部は、無人航空機の飛行制御をし、
前記飛行制限領域設定部は、前記飛行制御部からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した前記第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する
することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本開示の一側面におけるプログラムは、
無人航空機の飛行制限領域設定するコンピュータに、
あらかじめ設定された第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定させる
ことを特徴とする。
【0011】
さらに、上記目的を達成するため、本開示の一側面における無人航空機と情報処理装置とを有するシステムは、
前記無人航空機は、
前記無人航空機の飛行制御をする飛行制御部と、
前記飛行制御部からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した前記第一の飛行制限領域と、前記無人航空機の外部に設けられた情報処理装置から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、前記第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する飛行制限領域設定部と、を有し、
前記情報処理装置は、
前記飛行制限領域設定部に前記第二の飛行制限領域と異常回避制御との関連付けを設定するための設定情報を送信する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
一つの側面として、飛行制限領域を二重に設定し、飛行時における無人航空機の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、無人航空機の一例を説明するための図である。
【
図2】
図2は、飛行制限領域の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第二の飛行制限領域の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第二の飛行制限領域の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、フェイルセーフ情報のデータ構造の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、無人航空機を有するシステムの一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、地上局の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第二の飛行制限領域の設定の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、異常回避制御の動作の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施形態における飛行制御部、飛行制限領域設定部、地上局を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下で説明する図面において、同一の機能又は対応する機能を有する要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0015】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態における無人航空機10の構成について説明する。
図1は、無人航空機の一例を説明するための図である。
【0016】
[装置構成]
図1に示す無人航空機10は、飛行制限領域を二重に設定し、飛行時における無人航空機の安全を確保する装置である。また、
図1に示すように、無人航空機10は、飛行制御部11と、飛行制限領域設定部12とを有する。
【0017】
飛行制御部11は、無人航空機10の飛行制御をする。飛行制御部11は、例えば、フライトコントローラなどである。
【0018】
具体的には、飛行制御部11は、無人航空機10の本体に取り付けられた複数のセンサそれぞれが計測した計測情報と、無人航空機10を制御するための制御情報と、に基づいて無人航空機10の飛行制御をする。
【0019】
飛行制御部11は、プロポコントローラ(操縦機又は送信機)、又は、地上局(無人航空機10の外部に設けられた情報処理装置)から無線で送信された制御信号を、通信部(不図示)を介して受信する。
【0020】
制御情報は、制御信号に含まれる情報(指令)である。飛行制御は、例えば、無人航空機10の姿勢を制御する姿勢制御、手動飛行制御、自動飛行制御などの制御である。手動飛行制御は、プロポコントローラを用いて利用者により行われる無人航空機10の制御である。自動飛行制御とは、例えば、姿勢保持、高度保持、位置保持、ウェイポイント飛行、自動帰還(RTL)などの制御である。
【0021】
姿勢保持は、無人航空機10のピッチ、ロール、ヨーの姿勢を保持する機能である。高度保持は、無人航空機10の高度を自動的に保持する機能である。位置保持は、無人航空機10の位置をホバリングにより保持する機能である。ウェイポイント飛行は、あらかじめ設定したポイント順に無人航空機10を飛行させる機能である。自動帰還は、飛行開始点に無人航空機10を自動的に帰還させる機能である。
【0022】
(第一のジオフェンスの設定)
飛行制御部11は、第一の飛行制限領域(フライトコントローラに設定されたジオフェンス)を設定する。
【0023】
第一の飛行制限領域は、例えば、飛行前に、利用者により、フライトコントローラにあらかじめ設定されたジオフェンスを表す情報である。第一の飛行制限領域は、複数の二次元座標(緯度,経度)を用いて第一の飛行制限領域の境界線を設定する。
【0024】
第一の飛行制限領域に、更に、高さ制限を追加してもよい。高さ制限は、例えば、地面から10[m](メートル)以内を飛行しないようにする設定である。高さ制限を設定する場合、上述した複数の二次元座標に高さを加え、複数の三次元座標(緯度,経度,高度)を用いて、第一の飛行制限領域を設定する。
【0025】
図2は、飛行制限領域の一例を説明するための図である。
図2の例では、地
図M1に、第一の飛行制限領域F1(ジオフェンス(実線範囲))を設定している。ただし、第一の飛行制限領域F1の形状は四角形に限定されるものではなく、第一の飛行制限領域F1の形状は多角形、円形、楕円形などの形状としてもよい。
【0026】
さらに、飛行制御部11は、飛行制限領域設定部12に第二の飛行制限領域を設定させるために、飛行制御部11にあらかじめ設定されている第一の飛行制限領域(フライトコントローラに設定されたジオフェンス)を、飛行制限領域設定部12に出力する。
【0027】
(第一のフェイルセーフアクション)
飛行制御部11は、無人航空機10の現在の位置を表す位置情報が、第一の飛行制限領域の境界線に到達したことを検知した場合、第一の飛行制限領域に関連付けられている異常回避制御をする。
【0028】
なお、第一の飛行制限領域の境界線への到達の判定は、常に所定の時間間隔(例えば、サンプリング間隔など)で行われている。
【0029】
また、無人航空機10が第一の飛行制限領域の境界線に到達したとは、無人航空機10の現在位置が第一の飛行制限領域の境界線を表す位置に一致した場合、又は、無人航空機10の現在位置が第一の飛行制限領域の境界線の周辺(境界線に所定の距離)に近づいた場合である。所定の距離は、利用者があらかじめ設定される値で、実験、シミュレーションなどにより決定した値である。
【0030】
異常回避制御は、例えば、地上局に異常を通知する制御、無人航空機10を自動帰還(RTL)させる制御、無人航空機10を着陸(LAND)させる制御、無人航空機10の位置をホバリングにより保持(動きを止める)する制御、無人航空機10の高度を下げる制御、無人航空機10の機能(モータの機能)を強制停止させる制御、無人航空機10に搭載されているパラシュートを開く制御、無人航空機10に搭載されているエアバッグを開く制御、無人航空機10をパージ(空中で機体を分解)させる制御などである。
【0031】
(第二のフェイルセーフアクション)
無人航空機10が第二の飛行制限領域の境界線に到達したことを検知した場合、飛行制御部11は、異常回避制御をするために用いる異常回避制御情報を、飛行制限領域設定部12から受信し、受信した異常回避制御情報に基づいて異常回避制御をする。なお、第二の飛行制限領域については後述する。
【0032】
なお、第二の飛行制限領域の境界線への到達の判定は、常に所定の時間間隔(例えば、サンプリング間隔など)で行われている。
【0033】
また、無人航空機10が第二の飛行制限領域の境界線に到達したとは、無人航空機10の現在位置が第二の飛行制限領域の境界線を表す位置に一致した場合、又は、無人航空機10の現在位置が第二の飛行制限領域の境界線の周辺(境界線に所定の距離)に近づいた場合である。所定の距離は、利用者があらかじめ設定される値で、実験、シミュレーションなどにより決定した値である。
【0034】
異常回避制御情報は、例えば、上述した異常回避制御を、飛行制御部11にさせるための情報である。
【0035】
(第二のジオフェンスの設定)
飛行制限領域設定部12は、飛行制御部11からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得し、取得した第一の飛行制限領域と、地上局(無人航空機10の外部に設けられた情報処理装置)から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を設定する。
【0036】
飛行制限領域設定部12は、例えば、コンパニオンコンピュータなどである。飛行制限領域設定部12は、飛行制御部11と電気的に接続されている。接続は、有線で接続することが好適である。
【0037】
第二の飛行制限領域は、例えば、飛行前又は飛行中(コンパニオンコンピュータからのジオフェンスは飛行中でも設定可能)に、利用者により、コンパニオンコンピュータに設定されるジオフェンスを表す情報である。第二の飛行制限領域は、第一の飛行制限領域と同様に、複数の二次元座標(緯度,経度)を用いて第二の飛行制限領域の境界線を設定する。
【0038】
第二の飛行制限領域に、更に、第一の飛行制限領域と同様に、高さ制限を追加してもよい。高さ制限は、例えば、地面から10[m](メートル)以内を飛行しないようにする設定である。高さ制限を設定する場合、上述した複数の二次元座標に高さを加え、複数の三次元座標(緯度,経度,高度)を用いて、第二の飛行制限領域を設定する。
【0039】
図2の例では、地
図M1に、第一の飛行制限領域F1の内部に、第二の飛行制限領域F2(ジオフェンス(破線範囲))を設定している。
【0040】
ただし、第二の飛行制限領域F2は、第一の飛行制限領域F1の内部への設定に限定されるものではなく、第一の飛行制限領域F1の外部に第二の飛行制限領域F2を設定してもよい。
【0041】
また、
図2の例では、第二の飛行制限領域F2を一つ設定しているが、複数の第二の飛行制限領域を設定してもよい。
【0042】
さらに、第二の飛行制限領域F2の形状は、
図2に示したような形状(四角形)に限定されるものではない。
図3は、第二の飛行制限領域の一例を説明するための図である。例えば、
図3に示すような第二の飛行制限領域F3のような形状(六角形)でもよい。
【0043】
また、第二の飛行制限領域の形状は、多角形、円形、楕円形などの形状に設定してもよい。
【0044】
第二の飛行制限領域の生成は、第一の飛行制限領域と設定情報とに基づいて生成(展開)する。具体的には、飛行制限領域設定部12は、設定情報に示されている、第二の飛行制限領域の境界線を第一の飛行制限領域の境界線の内側又は外側に設定するかを表す情報と、第一の飛行制限領域の境界線からの距離を表す情報とに基づいて、第二の飛行制限領域の境界線を設定する。
【0045】
図2の例では、飛行制限領域設定部12は、設定情報に含まれる、第一の飛行制限領域F1(四角形)の境界線の内側に設定する情報と、第一の飛行制限領域F1の境界線(四つの線分)からの距離を表す情報L1、L2、L3、L4とに基づいて、第二の飛行制限領域F2の境界線が設定する。
【0046】
また、飛行制限領域設定部12は、設定情報に示されている、第二の飛行制限領域の高さ制限を設定する情報に基づいて、第二の飛行制限領域の境界線を設定する。
【0047】
また、飛行制限領域設定部12は、設定情報に示されている、利用者によりあらかじめ設定された無人航空機10の自動飛行経路(ウェイポイント)の情報と、自動飛行経路からの距離を表す情報とに基づいて、第二の飛行制限領域の境界線を設定してもよい。
【0048】
自動飛行経路は、地上局で利用者により生成され、地上局から無線で飛行制限領域設定部12に送信され、飛行制限領域設定部12に記憶される情報である。また、自動飛行経路は、複数の二次元座標又は複数の三次元座標により表される情報である。
【0049】
図4は、第二の飛行制限領域の一例を説明するための図である。
図4の例では、自動飛行経路W1(飛行開始点Sから飛行終了点Eまでの実線矢印)と、自動飛行経路W1からの距離を表す情報L5、L6とに基づいて、第二の飛行制限領域F4の境界線を設定している。なお、自動飛行経路W1からの距離を表す情報L5、L6は同じ距離(L5=L6)としてもよい。
【0050】
(第二のフェイルセーフアクション)
飛行制限領域設定部12は、無人航空機10が第二の飛行制限領域に到達したことを検知した場合、第二の飛行制限領域に関連付けられた異常回避制御をするために用いる異常回避制御情報を飛行制御部11に送信し、飛行制御部11に異常回避制御をさせる。
【0051】
具体的には、飛行制限領域設定部12は、無人航空機10の現在の位置を表す位置情報が、第二の飛行制限領域の境界線に到達したことを検知した場合、フェイルセーフ情報を参照し、第二の飛行制限領域に関連付けられた異常回避制御情報を飛行制御部11に送信する(フェイルセーフに関する通信をする)。
【0052】
その後、異常回避制御情報を受信した飛行制御部11は、異常回避制御情報に基づいて異常回避制御をする(フェイルセーフアクションをする)。
【0053】
フェイルセーフ情報は、第二の飛行制限領域と、第二の飛行制限領域に対応する異常回避制御情報とが関連付けられた情報である。
【0054】
図5は、フェイルセーフ情報のデータ構造の一例を説明するための図である。
図5の例は、
図2に示した第二の飛行制限領域「F1」と、第二の飛行制限領域「F1」に対応する異常回避制御情報「AvS1」とが関連付けられたフェイルセーフ情報を示している。
【0055】
なお、第二の飛行制限領域が複数ある場合、第二の飛行制限領域ごとに異常回避制御情報を設定してもよい。
【0056】
このように、実施形態においては、飛行制限領域を二重に設定することで、無人航空機10に異常が発生した場合でも、異常回避制御情報を飛行制限領域設定部12(コンパニオンコンピュータ)から飛行制御部11(フライトコントローラ)に送信し、飛行制御部11に異常回避制御をさせるので、無人航空機10の安全を確保できる。
【0057】
なお、異常の原因は、飛行制御部11の無人航空機10の手動飛行制御を実行する機能の不具合、又は、ウェイポイント飛行と自動帰還の制御を実行する機能の不具合、又は、無人航空機10が乗っ取られたことなどが想定される。
【0058】
[システム構成]
図6を用いて、実施形態における無人航空機10の構成をより具体的に説明する。
図6は、無人航空機を有するシステムの一例を説明するための図である。
【0059】
図6に示すように、システム100は、無人航空機10と、プロポコントローラ20と、地上局30(Ground Control System:GCS)とを有する。
【0060】
無人航空機10は、飛行制御部11(フライトコントローラ)と、飛行制限領域設定部12(コンパニオンコンピュータ)と、複数のセンサ13と、複数のロータ駆動部14と、通信部15と、安全装置16とを有する。
【0061】
飛行制御部11、飛行制限領域設定部12については、既に上述したので、飛行制御部11、飛行制限領域設定部12の説明は省略する。
【0062】
複数のセンサ13(13a、13b・・・)は、無人航空機10の本体に取り付けられている。複数のセンサ13それぞれは、計測した計測情報を飛行制御部11へ送信する。
【0063】
複数のセンサ13は、例えば、機体制御用センサなどである。ただし、無人航空機10には機体制御用センサ以外のセンサも取り付けてもよい。なお、機体制御用センサは、上述したセンサのうち、いずれか一つ以上のセンサを無人航空機10に取り付ければよい。
【0064】
機体制御用センサは、例えば、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、磁気センサ、角速度センサ、加速度センサ、電圧センサ、電流センサ、障害物検知センサ、超音波センサ、画像認識センサ、位置検出センサ、モータ回転数センサなどである。
【0065】
温度センサは温度を計測して温度情報を出力する。湿度センサは湿度を計測して湿度情報を出力する。気圧センサは気圧を計測して気圧情報(又は高度情報)を出力する。磁気センサは方位を計測して方位情報を出力する。角速度センサは無人航空機10の傾きの角度を検出して角速度情報を出力する。加速度センサは無人航空機10の加速度を計測して加速度情報を出力する。
【0066】
電圧センサはバッテリの電圧を計測して電圧情報を出力する。電流センサはバッテリに流れる電流を計測して電流情報を出力する。障害物検知センサは前方の障害物を検知して障害物検知情報を出力する。超音波センサは障害物との衝突を回避するために距離を算出して障害物距離情報を出力する。画像認識センサは認識した画像を画像認識情報として出力する。位置検出センサ(GPS受信機)は位置を検出して位置情報を出力する。モータ回転数センサはモータの回転数を測定してモータ回転数情報を出力する。
【0067】
計測情報は、例えば、上述した温度情報、湿度情報、気圧情報(又は高度情報)、方位情報、角速度情報、加速度情報、電圧情報、電流情報、障害物検知情報、障害物距離情報、位置情報、モータ回転数情報などである。
【0068】
複数のロータ駆動部14は、
図6の例では、無人航空機10は四つのロータ駆動部14a、14b、14c、14dを示したが、ロータ駆動部14の数は四つに限定されるものではない。
【0069】
また、ロータ駆動部14それぞれは、ロータ141と、モータ142と、モータ駆動部143とを有している。
図6には一例として、一つのロータ駆動部14aが、ロータ141aと、モータ142aと、モータ駆動部143aとを有していることを示した。
【0070】
ロータ141は揚力と推進力とを得るための羽を有する。モータ142はロータ141を回転させる。モータ駆動部143はモータ142を駆動する。モータ駆動部143は、例えば、ESC(Electric Speed Controller)などが考えられる。
【0071】
通信部15は、プロポコントローラ20と地上局30とに搭載されている通信部と、アンテナ15aを介して通信をする。
【0072】
安全装置16は、例えば、パラシュート、エアバッグなどの、無人航空機10が墜落した場合に、無人航空機10を保護するための装置である。
【0073】
プロポコントローラ20は、操縦者が、無線通信により、無人航空機10の操作をするために用いる装置である。
【0074】
地上局30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプログラマブルなデバイス、又はGPU(Graphics Processing Unit)、又はそれらのうちのいずれか一つ以上を搭載した回路、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、モバイル端末などの情報処理装置である。
【0075】
図7は、地上局の一例を説明するための図である。地上局30は、通信部31と、入力部32と、出力部33と、処理部34とを有する。
【0076】
通信部31は、無人航空機10に搭載されている通信部15と通信をする。入力部32は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。入力部32は、地上局30を操作する際に用いる。出力部33は、例えば、液晶、有機EL(Electro Luminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた画像表示装置などである。さらに、画像表示装置は、スピーカなどの音声出力装置などを備えていてもよい。
【0077】
処理部34は、利用者が入力部32を用いて入力された情報に基づいて設計情報を生成し、生成した上述した設計情報を、通信部31を介して無人航空機10に送信する。
【0078】
具体的には、処理部34は、まず、無人航空機10を飛行させる地域の地図(例えば
図2のM1)を出力部33に表示させる。
【0079】
続いて、利用者は、地図を参照して、自動飛行経路と、飛行制限領域設定部12が第二の飛行制限領域を生成(展開)するために用いる設計情報とを作成する。
【0080】
また、利用者は、第二の飛行制限領域に対して設定する異常回避制御情報を決定し、上述したフェイルセーフ情報を生成する。
【0081】
次に、処理部34は、自動飛行経路と、設計情報と、フェイルセーフ情報とを、通信部31を介して無人航空機10に送信する。
【0082】
なお、飛行制御部11に第一の飛行制限領域が設定されていない場合、又は、変更する場合には、処理部34は、通信部31を介して第一の飛行制限領域も無人航空機10に送信する。
【0083】
さらに、処理部34は、無人航空機10にウェイポイント飛行させるために、ウェイポイント、飛行ルート、飛行高度、飛行速度などを設定するための設定機能を有する。処理部34は、無人航空機10の状態(例えば、バッテリ残量、姿勢、速度など)を確認するための確認機能を有する。処理部34は、無人航空機10に搭載された撮像装置(カメラ)に撮影をさせるための撮像機能を有する。
【0084】
[装置動作]
(第二のジオフェンスの設定)
実施形態における第二の飛行制限領域の設定について図を用いて説明する。
図8は、第二の飛行制限領域の設定の一例を説明するための図である。以下の説明においては、適宜図を参照する。また、実施形態では、無人航空機に、第二の飛行制限領域を設定させることによって、無人航空機の制御方法が実施される。よって、実施形態における無人航空機の制御方法の説明は、以下の無人航空機の動作説明に代える。
【0085】
図8に示すように、飛行制限領域設定部12は、まず、飛行制御部11からあらかじめ設定された第一の飛行制限領域を取得する(ステップA1)。次に、飛行制限領域設定部12は、第一の飛行制限領域と、地上局30から送信された第二の飛行制限領域を設定するための設定情報とに基づいて、第一の飛行制限領域の内部又は外部に一つ以上の第二の飛行制限領域を生成して、飛行制限領域設定部12のメモリに記憶する(ステップA2)。
【0086】
(第二のフェイルセーフアクション)
実施形態における無人航空機の動作について図を用いて説明する。
図9は、異常回避制御の動作の一例を説明するための図である。以下の説明においては、適宜図を参照する。また、実施形態では、無人航空機に、異常回避制御の動作させることによって、無人航空機の制御方法が実施される。よって、実施形態における無人航空機の制御方法の説明は、以下の無人航空機の動作説明に代える。
【0087】
飛行制限領域設定部12は、まず、無人航空機10の現在の位置情報を取得する(ステップB1)。次に、飛行制限領域設定部12は、無人航空機10が第二の飛行制限領域の境界線に到達したか否かを検出する(ステップB2)。
【0088】
そして、飛行制限領域設定部12は、無人航空機10が第二の飛行制限領域の境界線に到達したことを検知した場合(ステップB2:Yes)、第二の飛行制限領域に関連付けられた異常回避制御をするために用いる異常回避制御情報を飛行制御部11に送信する(ステップB3)。
【0089】
次に、飛行制御部11は、異常回避制御情報を取得し、取得した異常回避制御情報に基づいて異常回避制御をする。
【0090】
また、飛行制限領域設定部12は、無人航空機10が第二の飛行制限領域の境界線に到達したことを検知しない場合(ステップB2:No)、ステップB1に移行して処理を継続する。
【0091】
[実施形態の効果]
以上のように実施形態によれば、実施形態においては、飛行制限領域を二重に設定することで、無人航空機10に異常が発生した場合でも、異常回避制御情報を飛行制限領域設定部12(コンパニオンコンピュータ)から飛行制御部11(フライトコントローラ)に送信し、飛行制御部11に異常回避制御をさせるので、無人航空機10の安全を確保できる。
【0092】
第二の飛行制限領域ごとに異常回避制御を設定でるので、無人航空機10の飛行の柔軟性を高めることができる。
【0093】
第二の飛行制限領域の形状を、無人航空機10が飛行する環境に合わせて設定できる。
【0094】
[プログラム]
実施形態における無人航空機の飛行制限領域設定部12(コンピュータ)のプログラムは、コンピュータに、
図8に示すステップA1、A2、及び、
図9に示すステップB1からB3を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実施形態における無人航空機と無人航空機の制御方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、飛行制限領域設定部12として機能し、処理を行なう。
【0095】
また、実施形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、飛行制限領域設定部12のいずれかとして機能してもよい。
【0096】
[物理構成]
ここで、実施形態におけるプログラムを実行することによって、飛行制御部11、飛行制限領域設定部12、地上局30を実現するコンピュータについて
図10を用いて説明する。
図10は、実施形態における飛行制御部、飛行制限領域設定部、地上局を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0097】
図10に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU、又はFPGAを備えていてもよい。
【0098】
CPU111は、記憶装置113に格納された、実施形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置である。また、実施形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、実施形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。なお、記録媒体120は、不揮発性記録媒体である。
【0099】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置があげられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0100】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0101】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)などの汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)などの磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体があげられる。
【0102】
以上、実施形態を参照して発明を説明したが、発明は上述した実施形態に限定されるものではない。発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
上述した記載によれば、飛行制限領域を二重に設定し、飛行時における無人航空機の安全を確保することができる。また、無人航空機などの安全性の確保が分野において有用である。
【符号の説明】
【0104】
10 無人航空機
11 飛行制御部
12 異常回避制御部
13、13a、13b センサ
14、14a、14d ロータ駆動部
141a ロータ
142a モータ
143a モータ駆動部
15 通信部
15a アンテナ
16 安全装置
20 プロポコントローラ
30 地上局
31 通信部
31a アンテナ
32 入力部
33 出力部
34 処理部
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス