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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184213
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】メスコネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20231221BHJP
   A61J 15/00 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
A61M39/10 120
A61J15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098243
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大石 麻代
(72)【発明者】
【氏名】馬谷 真司
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047CC27
4C047NN15
4C047NN16
4C066AA05
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066JJ05
(57)【要約】
【課題】経腸栄養後のオスコネクタの清掃作業を簡単化または不要にする。
【解決手段】メスコネクタ1は、オス部材71と、外筒75と、外筒に設けられた雌ネジ76とを備えたオスコネクタ70に対して接続及び分離が可能である。メスコネクタ1は、オス部材71を挿抜可能なメス部材11と、メス部材11の外周面に設けられた螺状突起16と、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき雌ネジ76に対向するようにメス部材11に設けられた吸液部材31と、メス部材11と連通し且つチューブ61が接続可能な基管20とを備える。メス部材11の内周面12は、メス部材11とオス部材71との間に液密なシールを形成することができるように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタに対して接続及び分離が可能なメスコネクタであって、前記メスコネクタは、
前記オス部材を挿抜可能な筒形状のメス部材と、
前記雌ネジに螺合可能なように前記メス部材の外周面に設けられた螺状突起と、
前記メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記雌ネジに対向するように前記メス部材に設けられた吸液部材と、
前記メス部材と連通し且つ柔軟なチューブが接続可能な基管とを備え、
前記メス部材の内周面は、前記メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記メス部材と前記オス部材との間に液密なシールを形成することができるように構成されていることを特徴とするメスコネクタ。
【請求項2】
前記吸液部材は、前記メス部材の外周面に設けられている請求項1に記載のメスコネクタ。
【請求項3】
前記吸液部材は、前記螺状突起に設けられている請求項1又は2に記載のメスコネクタ。
【請求項4】
前記吸液部材は、前記螺状突起が沿う螺旋に沿って設けられている請求項1又は2に記載のメスコネクタ。
【請求項5】
前記吸液部材は第1吸液部材であり、
前記メスコネクタは、前記メス部材の先端面に設けられた第2吸液部材を更に備える請求項1又は2に記載のメスコネクタ。
【請求項6】
筒形状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタに対して接続及び分離が可能なメスコネクタであって、前記メスコネクタは、
前記オス部材を挿抜可能な筒形状のメス部材と、
前記雌ネジに螺合可能なように前記メス部材の外周面に設けられた螺状突起と、
前記メス部材の先端面に設けられた吸液部材と、
前記メス部材と連通し且つ柔軟なチューブが接続可能な基管とを備え、
前記メス部材の内周面は、前記メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記メス部材と前記オス部材との間に液密なシールを形成することができるように構成されていることを特徴とするメスコネクタ。
【請求項7】
前記吸液部材が綿である請求項1、2及び6のいずれか一項に記載のメスコネクタ。
【請求項8】
前記メス部材と前記基管との間に、半径方向外向きに突出したフランジを更に備える請求項1、2及び6のいずれか一項に記載のメスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経腸栄養に好ましく使用することができるメスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
食事を口から摂れなくなった患者に栄養剤、流動食(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる)、又は薬剤等を含む液状物を投与する方法として経腸栄養が知られている。経腸栄養では、柔軟なチューブで構成された経腸栄養カテーテル(以下、単に「カテーテル」という)を体外から消化管(例えば胃)内に挿入した状態で患者に留置する。カテーテルとして、患者の鼻から挿入される経鼻カテーテルや、患者の腹に形成された孔(瘻孔)を通って胃に挿入される瘻孔カテーテル等が知られている。液状物を貯留した容器と、患者に留置されたカテーテルとが経腸栄養投与セットを介して接続される。経腸栄養投与セットとカテーテルとを接続するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる接続具が用いられる。経腸栄養では、液状物の流れ方向に関して上流側(容器側)のコネクタとしてメスコネクタが、下流側(患者側)のコネクタとしてオスコネクタが、それぞれ使用される。
【0003】
オスコネクタは、筒形状のオス部材と、オス部材を取り囲む外筒とを備え、外筒の内周面には雌ネジが設けられている(特許文献1の図16A及び図16B参照)。経腸栄養を行った後、オス部材と外筒との間の隙間内に液状物が残留しやすい。オスコネクタが患者に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられている場合には、オスコネクタは当該カテーテルとともに患者に長期にわたって留置される。オスコネクタが、液状物が残留したままで患者に留置され続けると、オスコネクタは不衛生状態に至りうる。
【0004】
特許文献1には、オスコネクタを清掃するための拭き取りチップが記載されている。拭き取りチップは、中空の筒状体と、筒状体の先端近傍の外周面に設けられた拭き取り部材とを備える。拭き取りチップを、オスコネクタのオス部材と外筒との間の隙間に挿入する。拭き取り部材で、外筒の内周面に設けられた雌ネジを清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-159129号公報
【特許文献2】特開2013-180048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の拭き取りチップを用いたオスコネクタの清掃は、経腸栄養を実施後に毎回行う必要がある。これは、作業者の負担が大きい。
【0007】
本発明の目的は、経腸栄養後のオスコネクタの清掃作業を簡単化または不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のメスコネクタは、筒形状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタに対して接続及び分離が可能である。
【0009】
本発明の第1メスコネクタは、前記オス部材を挿抜可能な筒形状のメス部材と、前記雌ネジに螺合可能なように前記メス部材の外周面に設けられた螺状突起と、前記第1メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記雌ネジに対向するように前記メス部材に設けられた吸液部材と、前記メス部材と連通し且つ柔軟なチューブが接続可能な基管とを備える。前記メス部材の内周面は、前記第1メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記メス部材と前記オス部材との間に液密なシールを形成することができるように構成されている。
【0010】
本発明の第2メスコネクタは、前記オス部材を挿抜可能な筒形状のメス部材と、前記雌ネジに螺合可能なように前記メス部材の外周面に設けられた螺状突起と、前記メス部材の先端面に設けられた吸液部材と、前記メス部材と連通し且つ柔軟なチューブが接続可能な基管とを備える。前記メス部材の内周面は、前記第2メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記メス部材と前記オス部材との間に液密なシールを形成することができるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のメスコネクタに設けられた吸液部材は、経腸栄養の実施時にオスコネクタのオス部材と外筒との間の隙間に漏れ出た液状物を吸収し且つ拭き取る。このため、メスコネクタを分離した後のオスコネクタの当該隙間に残存する液状物は少ない。その結果、本発明によれば、経腸栄養後のオスコネクタの清掃作業を簡単化または不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態1にかかるメスコネクタを用いて経鼻経腸栄養を実施する方法を説明する側面図である。
図2図2は、接続前の本発明の実施形態1にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの、オスコネクタ側から見た斜視図である。
図3図3は、接続前の本発明の実施形態1にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの、メスコネクタ側から見た斜視図である。
図4図4は、接続前の本発明の実施形態1にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
図5図5は、互いに接続された本発明の実施形態1にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
図6図6は、接続前の本発明の実施形態2にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの、オスコネクタ側から見た斜視図である。
図7図7は、接続前の本発明の実施形態2にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
図8図8は、互いに接続された本発明の実施形態2にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
図9図9は、接続前の本発明の実施形態3にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの、オスコネクタ側から見た斜視図である。
図10図10は、接続前の本発明の実施形態3にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
図11図11は、互いに接続された本発明の実施形態3にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
図12図12は、接続前の本発明の実施形態4にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの、オスコネクタ側から見た斜視図である。
図13図13は、本発明の実施形態4にかかるメスコネクタの分解斜視図である。
図14図14は、互いに接続された本発明の実施形態4にかかるメスコネクタ及びオスコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)本発明のメスコネクタ(第1メスコネクタ)は、筒形状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタに対して接続及び分離が可能である。前記メスコネクタは、前記オス部材を挿抜可能な筒形状のメス部材と、前記雌ネジに螺合可能なように前記メス部材の外周面に設けられた螺状突起と、前記メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記雌ネジに対向するように前記メス部材に設けられた吸液部材と、前記メス部材と連通し且つ柔軟なチューブが接続可能な基管とを備える。前記メス部材の内周面は、前記メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記メス部材と前記オス部材との間に液密なシールを形成することができるように構成されている。
【0014】
(2)上記(1)項のメスコネクタにおいて、前記吸液部材は、前記メス部材の外周面に設けられていてもよい。かかる態様は、経腸栄養後にオスコネクタの雌ネジに残存する液状物を低減するのに有利である。
【0015】
(3)上記(1)項または上記(2)項のメスコネクタにおいて、前記吸液部材は、前記螺状突起に設けられていてもよい。かかる態様は、経腸栄養後にオスコネクタの雌ネジのネジ溝面に残存する液状物を低減するのに有利である。
【0016】
(4)上記(1)項~上記(3)項のいずれか一項のメスコネクタにおいて、前記吸液部材は、前記螺状突起が沿う螺旋に沿って設けられていてもよい。かかる態様は、経腸栄養後にオスコネクタの雌ネジのネジ溝面に残存する液状物を低減するのに有利である。
【0017】
(5)上記(1)項~上記(4)項のいずれか一項のメスコネクタにおいて、前記吸液部材は第1吸液部材であってもよい。前記メスコネクタは、前記メス部材の先端面に設けられた第2吸液部材を更に備えてもよい。第1吸液部材は、経腸栄養後にオスコネクタの雌ネジに残存する液状物を低減するのに有利である。第2吸液部材は、経腸栄養後にオスコネクタの隙間の深部(底板及びその近傍部分)に残存する液状物を低減するのに有利である。従って、かかる態様は、経腸栄養後にオスコネクタの隙間に残存する液状物を更に低減するのに有利である。
【0018】
(6)本発明のメスコネクタ(第2メスコネクタ)は、筒形状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタに対して接続及び分離が可能である。前記メスコネクタは、前記オス部材を挿抜可能な筒形状のメス部材と、前記雌ネジに螺合可能なように前記メス部材の外周面に設けられた螺状突起と、前記メス部材の先端面に設けられた吸液部材と、前記メス部材と連通し且つ柔軟なチューブが接続可能な基管とを備える。前記メス部材の内周面は、前記メスコネクタを前記オスコネクタに接続したとき前記メス部材と前記オス部材との間に液密なシールを形成することができるように構成されている。
【0019】
(7)上記(1)項~上記(6)項のいずれか一項のメスコネクタにおいて、前記吸液部材(第1吸液部材及び第2吸液部材)が綿であってもよい。かかる吸液部材は、吸液性に優れ、また、メス部材に設けるのが比較的容易である。
【0020】
(8)上記(1)項~上記(7)項のいずれか一項のメスコネクタが、前記メス部材と前記基管との間に、半径方向外向きに突出したフランジを更に備えていてもよい。フランジは、第1に、メスコネクタにメス部材に向かう軸方向の力を加えるのを容易にし、第2に、メスコネクタを把持した指がメス部材(または吸液部材)に触れてこれを汚染するのを防止する。
【0021】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する図面は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の図面に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の図面に示された部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0022】
本発明において、部材(例えばメスコネクタ、メス部材、オスコネクタ等)の「軸」は、当該部材の中心軸を意味する。「軸」は、部材に含まれる円の中心を通り、且つ/又は、部材に含まれる円筒もしくは円錐(テーパ)の中心軸と一致する。以下に示す図面では、図面を簡単化するために「軸」を図示していない。軸に直交する直線に沿った方向を「半径方向」という。半径方向において、軸に近い側を「内」側、軸に遠い側を「外」側という。軸の周りを回転する方向を「周方向」という。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるメスコネクタ1を用いて経鼻経腸栄養を実施する方法を説明する側面図である。患者に投与する経腸栄養剤等を含む液状物は、容器50に貯留されている。容器50は、例えばイルリガードルスタンド(図示せず)に吊り下げられている。容器50の下端に設けられたポート(図1では見えない)に経腸栄養投与セット60が接続されている。経腸栄養投与セット60の上流端には、容器50のポートに接続されるコネクタ63(例えば、特許文献2の図13参照)が設けられている。経腸栄養投与セット60の下流端に、本実施形態1のメスコネクタ1が設けられている。コネクタ63とメスコネクタ1とが、柔軟な中空のチューブ61で接続されている。チューブ61の途中には、液状物の流れを可視化するための点滴筒65、液状物の流量を調整するためのクレンメ67が設けられている。経鼻カテーテル90の上流端にオスコネクタ70が設けられている。経鼻カテーテル90は、柔軟な中空のチューブ91で構成されている。図示していないが、チューブ91は、患者の鼻腔から挿入され、その先端(下流端)が胃に達した状態で、患者に留置されている。経腸栄養を実施する際には、オスコネクタ70にメスコネクタ1が接続される。容器50内の液状物は、重力を利用して、経腸栄養投与セット60及び経鼻カテーテル90を順に流れて患者に投与される。なお、液状物を貯留するための容器50、及び、容器50と経鼻カテーテル90とをつなぐ経腸栄養投与セット60は、図1に示したものに限定されず、任意の構成を有しうる。液状物は、重力ではなく、圧力を加えて移送(いわゆる圧送)されてもよい。
【0024】
図2及び図3は、メスコネクタ1及びオスコネクタ70の斜視図である。図4は、メスコネクタ1及びオスコネクタ70の断面図である。
【0025】
メスコネクタ1は、その一端にメス部材11を備え、その他端に基管20を備える。メス部材11は、中空の略円筒形状を有する。メス部材11の内周面12は、メス部材11の先端に向かって内径が大きくなるテーパ面(いわゆるメステーパ面)を備える。メス部材11の外周面13は円筒面であり、外周面13には螺状突起(雄ネジ)16が設けられている。なお、図2及び図3では螺状突起16は見えない(螺状突起16の外観形状は、後述する図6を参照)。螺状突起16は二条ネジである。吸液部材31が、メス部材11の外周面13及び螺状突起16を覆っている。
【0026】
基管20は、中空の略円筒形状を有し、メス部材11と同軸に配置されている。基管20は、流路19を介してメス部材11と連通されている。基管20に一対のグリップ部25が設けられている。一対のグリップ部25は、基管20の外周面から半径方向外向きに、互いに反対側に向かって突出している。一対のグリップ部25は、作業者がメスコネクタ1を把持し、メスコネクタ1に回転力を加えるのを容易にする。本実施形態1では、各グリップ部25は、略「U」字状の断面形状を有するが、グリップ部25の構成は、これに限定されない。例えば、グリップ部25が、基管20の外周面から半径方向外向きに突出した板形状を有していてもよい。メスコネクタ1がグリップ部25を備えていなくてもよい。基管20に、経腸栄養投与セット60(図1参照)を構成するチューブ61が接続されている。より詳細には、チューブ61は基管20に挿入され、接着剤等を用いて基管20に固定されている。チューブ61はメス部材11と連通している。
【0027】
メス部材11と基管20との間にフランジ27が設けられている。フランジ27は、メス部材11及び基管20よりも半径方向外向きに突出している。本実施形態1では、フランジ27は略円板形状を有している。但し、本発明のフランジは、これに限定されない。軸方向に沿って見たフランジの形状は、楕円形、多角形(例えば正多角形)等の任意の形状を有しうる。フランジ27は以下の作用を奏する。第1に、フランジ27は、基管20及びグリップ部25にてメスコネクタ1を把持したとき、フランジ27に指を当てることにより、メスコネクタ1にメス部材11に向かう軸方向の力を加えるのを容易にする。第2に、フランジ27は、基管20及びグリップ部25にてメスコネクタ1を把持した指が、メス部材11(または吸液部材31)に触れてこれを汚染するのを防止する。
【0028】
メススコネクタ1のうち吸液部材31を除いた部分(これをメスコネクタ本体18と呼ぶ)は、硬質材料を用いて全体を一部品として一体的に成形されうる。硬質材料は、外力によって実質的に変形しない程度の機械的強度(剛性)を有することが好ましい。具体的には、硬質材料として、例えば、ポリプロピレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができる。
【0029】
吸液部材31は、毛細管現象を利用して吸液(または吸水)することができる吸液性(または吸水性)を有する材料(以下「吸液性材料」という)からなることが好ましい。吸液性材料は、外力によって比較的容易に変形可能であり、且つ、外力を取り除くと直ちに変形前の状態(初期状態)に復元するクッション性(または、弾力性、被圧縮性)を有することが好ましい。クッション性を有する吸液性材料として、具体的には、綿(わた)、フォーム材(スポンジ)を例示することができる。綿は、繊維が絡まり合ったものである。綿の材料は、制限されないが、例えば木綿、レーヨン等の吸液性を有する材料が好ましい。フォーム材としては、制限はないが、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、シリコーンなどの樹脂からなる公知のフォーム材(スポンジ)を用いることができる。本発明では、吸液部材31の材料として、綿、特に脱脂綿が好ましい。
【0030】
吸液部材31は、メス部材11の先端からフランジ27までのメス部材11のほぼ全長にわたって、メス部材11の外周面13(螺状突起16を含む)を覆っている。吸液部材31をメス部材11に取り付ける方法に制限はない。吸液部材31が綿(わた)からなる場合、例えば綿棒の製造方法と概略同じ方法で吸液部材31をメス部材11に設けることができる。即ち、所定量の綿状物をメス部材11に押し当てながらメスコネクタ1を回転させて綿状物をメス部材11の外周面13に巻き付ける。PVA(ポリビニルアルコール)等の接着剤を用いて、吸液部材31をメス部材11に固定してもよい。接着剤は、例えば綿状物を巻き付ける前のメス部材11の外周面13に薄く塗布しておくことができる。吸液部材31をメス部材11に固定した後、所定形状の型を用いて吸液部材31を成形してもよい。メス部材11に固定された吸液部材31は、柔らかで弾力性を有していることが好ましい。
【0031】
オスコネクタ70は、その一端にオス部材71及び外筒75を備え、その他端に基管80を備える。オス部材71は、細長い中空の棒形状(または中空円筒形状)を有し、外筒75は、中空の略円筒形状を有する。外筒75は、オス部材71と同軸に配置され、オス部材71から隙間73を介して半径方向に離間してオス部材71を取り囲んでいる。オス部材71の外周面72は、オス部材71の先端に向かって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)を備える。外筒75のオス部材71に対向する内周面には雌ネジ76が設けられている。オス部材71と外筒75とは、オス部材71の基端から半径方向外向きに突出した底板74を介して連結されている。底板74は、本実施形態1では半径方向に沿って延びているが、本発明ではこれに限定されず、例えばオスコネクタ70と同軸の円錐面に沿って延びていてもよい。
【0032】
基管80は、中空の略円筒形状を有し、オス部材71及び外筒75と同軸に配置されている。基管80は、流路79を介してオス部材71と連通されている。基管80に一対のグリップ部85が設けられている。一対のグリップ部85は、メスコネクタ1の一対のグリップ部25と同様に、基管80の外周面から半径方向外向きに、互いに反対側に向かって突出している。一対のグリップ部85は、作業者がオスコネクタ70を把持し、オスコネクタ70に回転力を加えるのを容易にする。本実施形態1では、各グリップ部85は、グリップ部25と同様に、略「U」字状の断面形状を有するが、グリップ部85の構成は、これに限定されない。例えば、グリップ部85が、基管80の外周面から半径方向外向きに突出した板形状を有していてもよい。オスコネクタ70がグリップ部85を備えていなくてもよい。基管80に、経鼻カテーテル90(図1参照)を構成するチューブ91が接続されている。より詳細には、チューブ91は基管80に挿入され、接着剤等を用いて基管80に固定されている。チューブ91はオス部材71と連通している。
【0033】
本実施形態1のメスコネクタ1の使用方法を説明する。
【0034】
図1に示すように、経腸栄養投与セット60が接続された空の容器50を用意する。チューブ61の流路はクレンメ67で閉じられている。容器50を、例えばイルリガードルスタンド(図示せず)に吊り下げる。容器50に、経腸栄養剤等を含む液状物を注ぎ込む。経鼻カテーテル90は、患者に挿入された状態で留置されている。
【0035】
次いで、オスコネクタ70にメスコネクタ1を接続する。図5は、互いに接続されたメスコネクタ1及びオスコネクタ70の断面図である。オス部材71がメス部材11に挿入されている。メス部材11は、オス部材71と外筒75との間の隙間73(図4参照)に挿入されている。オス部材71は、メス部材11の内周面12と嵌合し、オス部材71とメス部材11の内周面12との間に液密なシールが形成される。好ましくは、オス部材71の外周面72に設けられたオステーパ面が、メス部材11の内周面12に設けられたメステーパ面にテーパ嵌合し、オステーパ面とメステーパ面との間に液密なシールが形成される。螺状突起16が、雌ネジ76に、吸液部材31を介して螺合されている。メスコネクタ1の流路19とオスコネクタ70の流路79とが連通する。
【0036】
メスコネクタ1(その外周面13及び螺状突起16)に設けられた吸液部材31は、メス部材11と外筒75との間の隙間にて、これらによって圧縮されている。吸液部材31は、外筒75に設けられた雌ネジ76の表面形状に応じて変形されて、雌ネジ76の表面に密着している。
【0037】
この状態で、経腸栄養投与セット60のクレンメ67(図1参照)を開く。容器50内の液状物は、経腸栄養投与セット60及び経鼻カテーテル90を通って患者に投与される。液状物の投与が終了した後、メスコネクタ1をオスコネクタ70から分離する。以上により、経腸栄養が終了する。
【0038】
経腸栄養では、一般に、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続する直前に(図1参照)、クレンメ67を開いて、容器50内の液状物を経腸栄養投与セット60内に導入する「プライミング」という操作が行われる。このプライミングによって、メスコネクタ1のメス部材11の内腔(図4参照)が液状物で満たされる場合がある。この状態で、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続すると、オス部材71がメス部材11に挿入されることによって、液状物がメス部材11から、オスコネクタ70のオス部材71と外筒75との間の隙間73(図4参照)に溢れ出すことがある。
【0039】
また、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続した状態で(図5)経腸栄養を実施した後にメスコネクタ1をオスコネクタ70から分離する過程で、メスコネクタ1の流路19内の液状物やオス部材71内の液状物が、メス部材11(内周面12)とオス部材71(外周面72)との間の隙間を通ってオスコネクタ70の隙間73(図4参照)に漏れ出ることがある。
【0040】
本実施形態1のメスコネクタ1は、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したときオスコネクタ70の雌ネジ76に対向するようにメス部材11に設けられた吸液部材31を備える。吸液部材31は、図5に示したように、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき、メスコネクタ1の外周面13及び螺状突起16とオスコネクタ70の外筒75(または雌ネジ76)との間に、これらによって圧縮された状態で存在する。このため、吸液部材31は、メスコネクタ1をオスコネクタ70に対して接続及び/又は分離する際に隙間73に漏れ出た液状物を吸収することができる。また、メスコネクタ1をオスコネクタ70に対して接続及び分離するときに、吸液部材31は、圧縮変形された状態で雌ネジ76上を摺動し、雌ネジ76に付着した液状物を拭き取る。メスコネクタ1をオスコネクタ70から分離すると、液状物は、吸液部材31に保持された状態で、オスコネクタ70から除去される。この結果、メスコネクタ1が分離された後にオスコネクタ70の隙間73(特に雌ネジ76)に残存する液状物は少ない。
【0041】
従来は、メスコネクタをオスコネクタ70に対して接続及び/又は分離する際に隙間73に漏れ出た液状物を、経腸栄養後に、例えば特許文献1の拭き取りチップで除去する清掃作業が必要であった。オス部材71と外筒75との間隔は狭い。このため、外筒75の内周面に設けられた雌ネジ76に一旦液状物が付着すると、その除去は困難である。従って、経腸栄養後のオスコネクタ70の清掃作業は、作業者にとって負担であった。清掃が不十分であったり、または清掃作業を忘れたりすると、液状物が隙間73を規定する面(例えば雌ネジ76の表面)上で乾燥し固化してしまう。液状物の固化物は、オスコネクタ70を不衛生状態に至らしめたり、または、その後にオスコネクタ70にメスコネクタを接続するのを困難にしたりする。
【0042】
これに対して、本実施形態1によれば、上述したように、経腸栄養後(メスコネクタ1をオスコネクタ70から分離後)にオスコネクタ70の隙間73(特に雌ネジ76)に残存する液状物は少ない。このため、経腸栄養後のオスコネクタ70の清掃作業を簡単化または不要にすることができる。これは、経腸栄養を行う作業者の負担を軽減させる。
【0043】
図2図5に示した例では、吸液部材31は、メス部材11の先端からフランジ27までのメス部材11のほぼ全長にわたって、螺状突起16を含めてメス部材11の全周囲を覆っている。このため、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき(図5)、メスコネクタ1の外周面13及び螺状突起16とオスコネクタ70の外筒75(または雌ネジ76)との間の狭い隙間が吸液部材31で満たされる。これは、経腸栄養後に、ネジ溝及びネジ山を含む雌ネジ76の全表面に残存する液状物を低減するのに有利である。但し、本発明はこの例に限定されない。吸液部材31は、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき雌ネジ76に対向するようにメス部材11に設けられていればよい。
【0044】
例えば、吸液部材31は、メス部材11の全外周面13を覆っている必要はない。即ち、吸液部材31は、メス部材11の軸方向の全長にわたって延びている必要がなく、例えばメス部材11の外周面13のうち先端近傍の領域のみに設けられていてもよい。あるいは、吸液部材31は、メス部材11の外周面13上を全周にわたって周方向に環状に連続している必要はなく、周方向に分断されていてもよい。吸液部材31がメス部材11の外周面13に局所的に設けられていても、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき吸液部材31は雌ネジ76の溝内に進入して雌ネジ76の表面に密着し、メスコネクタ1をオスコネクタ70に対して接続及び分離するときには、吸液部材31は雌ネジ76上を摺動する。従って、上記の例と同様に、メスコネクタ1が分離された後にオスコネクタ70の隙間73(特に雌ネジ76)に残存する液状物を低減することができる。一般に、吸液部材31が設けられる領域が小さくなると、オスコネクタ70に対してメスコネクタ1を接続及び分離するために必要な回転力が小さくなるので、接続及び分離は容易になる。
【0045】
螺状突起16に設けられた吸液部材31は、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき雌ネジ76のネジ溝内で、雌ネジ76のネジ溝を規定する面(以下、「ネジ溝面」という)に密着するように変形される。雌ネジ76のネジ溝面に一旦液状物が付着すると、その除去は困難である。吸液部材31が螺状突起16に設けられていることは、特に清掃が困難である雌ネジ76のネジ溝面に付着する液状物を除去するのに有利である。
【0046】
吸液部材31は、メス部材11の外周面13に設けられず、螺状突起16のみに設けられていてもよい。この構成は、以下の効果を奏する。第1に、特に液状物の除去が困難である雌ネジ76のネジ溝に液状物が経腸栄養後に残存するのを効率的に防止することができる。第2に、オスコネクタ70に対してメスコネクタ1を接続及び分離するために必要な回転力が小さくなるので、接続及び分離が容易になる。螺状突起16に設けられた吸液部材31は、螺状突起16のネジ山の頂部及びフランクの全てを覆っていてもよいし、これらの一部のみ(例えば頂部のみまたはフランクのみ)を覆っていてもよい。吸液部材31は、螺状突起16の全長にわたって設けられている必要はなく、全長のうちの一部のみに設けられていてもよい。
【0047】
あるいは、吸液部材31は、螺状突起16には設けられず、メス部材11の外周面13のみに設けられていてもよい。この場合であっても、メス部材11の外周面13に設けられた吸液部材31は、メスコネクタ1をオスコネクタ70に接続したとき、雌ネジ76の溝内に進入して雌ネジ76の表面に密着し、メスコネクタ1をオスコネクタ70に対して接続及び分離するときには、吸液部材31は雌ネジ76上を摺動する。このため、上記の例と同様に、メスコネクタ1が分離された後にオスコネクタ70の隙間73(特に雌ネジ76)に残存する液状物を低減することができる。
【0048】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2にかかるメスコネクタ2及びオスコネクタ70の斜視図である。図7は、メスコネクタ2及びオスコネクタ70の断面図である。メスコネクタ2は、吸液部材に関して実施形態1のメスコネクタ1と異なる。具体的には、本実施形態2では、吸液部材32が、メス部材11の先端面14に設けられている。吸液部材32は、先端面14に沿って環状に連続している。吸液部材32として、実施形態1の吸液部材31と同じ吸液性材料を用いることができる。吸液部材32をメス部材11の先端面14に取り付ける方法に制限はない。例えば、あらかじめ先端面14と同一径に成形したリング状の吸液部材32を、接着剤等を用いて先端面14に固定してもよい。吸液部材32をメス部材11に固定した後、所定形状の型を用いて吸液部材32を成形してもよい。
【0049】
本実施形態2のメスコネクタ2の使用方法は、実施形態1のメスコネクタ1と同じである。図8は、互いに接続されたメスコネクタ2及びオスコネクタ70の断面図である。メスコネクタ2に設けられた吸液部材32は、メス部材11(先端面14)と底板74との間の隙間にて、これらによって軸方向に圧縮されている。吸液部材32は、軸方向に圧縮されることによって、半径方向に(即ち、半径方向外向き及び半径方向内向きに)広がる。吸液部材32は、底板74及びその近傍部分(即ち、オス部材71の基端部及び外筒75の基端部)の表面形状に応じて変形されて、これらの表面に密着している。
【0050】
実施形態1で説明したように、メスコネクタ2をオスコネクタ70に対して接続及び/又は分離する際に液状物が隙間73に漏れ出る可能性がある。液状物は、先端面14と底板74との間を通って雌ネジ76に向かって流れる。吸液部材32は、液状物を、液状物が雌ネジ76に付着する前に吸収することができる。メスコネクタ2をオスコネクタ70に対して接続及び分離するときには、吸液部材32は、圧縮変形された状態で底板74上を摺動し、底板74及びその近傍部分に付着した液状物を拭き取る。メスコネクタ2をオスコネクタ70から分離すると、液状物は、吸液部材32に保持された状態で、オスコネクタ70から除去される。この結果、メスコネクタ2が分離された後にオスコネクタ70の隙間73(特に隙間73の深部、即ち底板74及びその近傍部分)に残存する液状物は少ない。
【0051】
底板74は、隙間73の最深部に位置しているため、底板74及びその近傍に一旦液状物が付着すると、その除去は困難である。本実施形態2では、吸液部材32が、メス部材11の先端面14に設けられているので、経腸栄養後(メスコネクタ2をオスコネクタ70から分離後)に特に底板74及びその近傍部分に残存する液状物を低減することができる。更に、吸液部材32が、液状物が雌ネジ76に向かって流れるのを防止するので、経腸栄養後に雌ネジ76に残存する液状物も低減される。このため、本実施形態2によれば、経腸栄養後のオスコネクタ70の清掃作業を簡単化または不要にすることができる。これは、経腸栄養を行う作業者の負担を軽減させる。
【0052】
メスコネクタ2は、実施形態1のメスコネクタ1に設けられていた吸液部材31を備えない。このため、オスコネクタ70に対してメスコネクタ2を接続及び分離するために必要な回転力は、実施形態1に比べて小さく、接続及び分離は容易である。
【0053】
図6図8の例では、吸液部材32は、メス部材11の先端面14の全周にわたって環状に連続していた。但し、本発明はこの例に限定されない。例えば、吸液部材32は、先端面14に、周方向に分断されて設けられていてもよい。吸液部材32が分断された箇所の数は、1つ又は複数であってもよい。
【0054】
本例では、メス部材11の先端面14は、メスコネクタ2の軸に垂直な平坦面であるが、本発明はこれに限定されない。先端面14は、例えば軸と同軸の円錐面や、軸を含む面に沿った断面形状が円弧である曲面(例えば凸曲面)等であってもよい。
【0055】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも同様に適用されうる。
【0056】
(実施形態3)
図9は、本発明の実施形態3にかかるメスコネクタ3及びオスコネクタ70の斜視図である。図10は、メスコネクタ3及びオスコネクタ70の断面図である。メスコネクタ3は、吸液部材に関して実施形態1,2のメスコネクタ1,2と異なる。具体的には、メスコネクタ3は、吸液部材(第1吸液部材)31と吸液部材(第2吸液部材)32とからなる吸液部材33を備える。吸液部材31は、実施形態1の吸液部材31と同様に、メス部材11の外周面13及び螺状突起16を覆っている。吸液部材32は、実施形態2の吸液部材32と同様に、メス部材11の先端面14に設けられている。吸液部材33として、実施形態1,2の吸液部材31,32と同じ吸液性材料を用いることができる。吸液部材33をメス部材11に取り付ける方法に制限はない。例えば、吸液部材31及び吸液部材32を、それぞれ実施形態1及び実施形態2と同様の方法で別個の工程でメス部材11に設けてもよい。あるいは、吸液部材31及び吸液部材32を同じ工程で一体的にメス部材11に設けてもよい。具体的には、吸液部材33が綿(わた)からなる場合、所定量の綿状物をメス部材11に押し当てながらメスコネクタ1を回転させて綿状物をメス部材11の外周面13及び先端面14に巻き付けてもよい。綿状物を巻き付ける前のメス部材11の外周面13及び先端面14に接着剤を薄く塗布しておいてもよい。吸液部材33をメス部材11に固定した後、所定形状の型を用いて吸液部材33を成形してもよい。
【0057】
本実施形態3のメスコネクタ3の使用方法は、実施形態1のメスコネクタ1と同じである。図11は、互いに接続されたメスコネクタ3及びオスコネクタ70の断面図である。
【0058】
メス部材11の外周面13及び螺状突起16に設けられた吸液部材31は、実施形態1(図5参照)と同様に、メス部材11と外筒75との間の隙間にて、これらによって圧縮されている。吸液部材31は、外筒75に設けられた雌ネジ76の表面形状に応じて変形されて、雌ネジ76の表面に密着している。
【0059】
メス部材11の先端面14に設けられた吸液部材32は、実施形態2(図8参照)と同様に、メス部材11(先端面14)と底板74との間の隙間にて、これらによって軸方向に圧縮されている。吸液部材32は、底板74及びその近傍部分(即ち、オス部材71の基端部及び外筒75の基端部)の表面形状に応じて変形されて、これらの表面に密着している。
【0060】
実施形態1で説明したように、メスコネクタ3をオスコネクタ70に対して接続及び/又は分離する際に液状物が隙間73に漏れ出る可能性がある。吸液部材33は、隙間73に漏れ出た液状物を吸収することができる。また、メスコネクタ3をオスコネクタ70に対して接続及び分離するときには、吸液部材33は、圧縮変形された状態で雌ネジ76及び底板74上を摺動し、これらに付着した液状物を拭き取る。メスコネクタ3をオスコネクタ70から分離すると、液状物は、吸液部材33に保持された状態で、オスコネクタ70から除去される。吸液部材31は、実施形態1と同様に、経腸栄養後(メスコネクタ3をオスコネクタ70から分離後)に特に雌ネジ76に残存する液状物を低減するのに有利である。吸液部材32は、実施形態2と同様に、経腸栄養後に特に底板74及びその近傍部分に残存する液状物を低減するのに有利である。本実施形態3によれば、メスコネクタ3が分離された後にオスコネクタ70の隙間73に残存する液状物は更に少ない。従って、経腸栄養後のオスコネクタ70の清掃作業を簡単化または不要にすることができる。これは、経腸栄養を行う作業者の負担を軽減させる。
【0061】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1,2と同じである。実施形態1,2の説明が、本実施形態3にも同様に適用されうる。
【0062】
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4にかかるメスコネクタ4及びオスコネクタ70の斜視図である。図13は、メスコネクタ4の分解斜視図である。メスコネクタ4は、吸液部材及び螺状突起に関して実施形態1~3のメスコネクタ1~3と異なる。具体的には、本実施形態4では、螺状突起416は、実施形態1~3の螺状突起16に比べて、螺状突起416が沿う螺旋に沿った長さが短い。螺旋状の吸液部材341,342が、螺状突起416が沿う螺旋に沿って、メス部材11の外周面13に設けられている。より詳細には、吸液部材(先端側吸液部材)341は、螺状突起416に対して先端面14側に隣接して螺状突起416に連続している。吸液部材(基端側吸液部材)342は、螺状突起416に対して基管20側に隣接して螺状突起416に連続している。吸液部材341,342は、螺状突起416よりも半径方向外側により大きく突出している。吸液部材341,342と螺状突起416との半径方向の突出高さの差に応じた傾斜面341a,342aが、吸液部材341,342の螺状突起416側の端部に設けられている。傾斜面341a,342aは、螺状突起416に近づくにしたがって半径方向内向きに後退するように傾斜している。吸液部材341,342は、制限されないが、螺状突起416より軸方向寸法が大きくてもよい。
【0063】
吸液部材341,342として、実施形態1の吸液部材31と同じ吸液性材料を用いることができる。吸液部材341,342をメス部材11の外周面13に取り付ける方法に制限はない。例えば、あらかじめ所定形状に成形した吸液部材341,342を、接着剤等を用いて外周面13に固定してもよい。吸液部材341,342をメス部材11に固定した後、所定形状の型を用いて吸液部材341,342を成形してもよい。
【0064】
メスコネクタ4のうち吸液部材341,342を除いた部分(メスコネクタ本体418)は、螺状突起416を除いて実施形態1のメスコネクタ本体18と同じである。
【0065】
本実施形態4のメスコネクタ4の使用方法は、実施形態1のメスコネクタ1と同じである。図14は、互いに接続されたメスコネクタ4及びオスコネクタ70の断面図である。メスコネクタ4(その外周面13)に設けられた吸液部材341,342(図14では吸液部材341のみが見える)は、雌ネジ76のネジ溝内で、メス部材11と外筒75とによって半径方向に圧縮されている。吸液部材341,342は、半径方向に圧縮されることによって、軸方向に広がる。吸液部材341,342は、雌ネジ76のネジ溝を規定するネジ溝面の表面形状に応じて変形されて、ネジ溝面に密着している。
【0066】
実施形態1で説明したように、メスコネクタ4をオスコネクタ70に対して接続及び/又は分離する際に液状物が隙間73に漏れ出る可能性がある。液状物は、先端面14と底板74との間を通って雌ネジ76に向かって流れる。吸液部材341,342は、雌ネジ76に流れた液状物を吸収することができる。メスコネクタ4をオスコネクタ70に対して接続及び分離するときには、吸液部材341,342は、圧縮変形された状態で雌ネジ76のネジ溝面上を摺動し、ネジ溝面に付着した液状物を拭き取る。メスコネクタ4をオスコネクタ70から分離すると、液状物は、吸液部材341,342に保持された状態で、オスコネクタ70から除去される。この結果、メスコネクタ4が分離された後にオスコネクタ70の隙間73(特に雌ネジ76)に残存する液状物は少ない。
【0067】
実施形態1で説明したように、雌ネジ76のネジ溝面に一旦液状物が付着すると、その除去は困難である。本実施形態4では、吸液部材341,342が、メスコネクタ4をオスコネクタ70に接続したとき雌ネジ76に対向するように、螺状突起416が沿う螺旋に沿ってメス部材11に設けられているので、経腸栄養後(メスコネクタ4をオスコネクタ70から分離後)に特に雌ネジ76のネジ溝面に残存する液状物を低減するのに有利である。このため、本実施形態4によれば、経腸栄養後のオスコネクタ70の清掃作業を簡単化または不要にすることができる。これは、経腸栄養を行う作業者の負担を軽減させる。
【0068】
図12図14の例では、一対の吸液部材341,342が、螺状突起416を螺旋に沿って挟むように設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、吸液部材341及び吸液部材342のうちのいずれか一方を省略してもよい。好ましくは、吸液部材342を省略しうる。螺状突起416に対して先端面14側の吸液部材341は、吸液部材342に比べて、メスコネクタ4をオスコネクタ70に接続したとき隙間73のより深い位置にまで到達する。従って、吸液部材341は、吸液部材342に比べて経腸栄養後に隙間73(特に雌ネジ76)に残存する液状物を低減するのに有利である。
【0069】
吸液部材341,342は、螺状突起416が沿う螺旋に沿って配置されていればよく、螺状突起416から離間していてもよい。
【0070】
メスコネクタ4は、実施形態1のメスコネクタ1に設けられていた吸液部材31を備えない。このため、オスコネクタ70に対してメスコネクタ4を接続及び分離するために必要な回転力は、実施形態1に比べて小さく、接続及び分離は容易である。
【0071】
但し、本実施形態4のメスコネクタ4において、メス部材11の吸液部材341,342以外の領域に、実施形態1の吸液部材31を設けてもよい。これに加えて、または、これに代えて、メス部材11の先端面14に、実施形態2の吸液部材32を設けてもよい。
【0072】
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態4にも同様に適用されうる。
【0073】
本発明のメスコネクタが接続されるオスコネクタ70は、経腸栄養において従来から使用されているものと同じであってよい。実施形態1~3において、メスコネクタ本体18は、当該オスコネクタ70に適合する従来のメスコネクタ(以下、単に「従来のメスコネクタ」という)と互換性を有していてもよい。この場合、実施形態1~3のメスコネクタ1~3は、従来のメスコネクタに単に吸液部材を設けたものであってもよい。このようなメスコネクタ1~3は、安価に製造できる。
【0074】
但し、メス部材11に吸液部材31を設ける場合には、メスコネクタ本体18は、従来のメスコネクタに対して、メス部材11の外周面13の外径や螺状突起16の外径及び/又は軸方向寸法を縮小するなどの設計変更をしたものであってもよい。このような設計変更をしたメスコネクタ本体18を用いた本発明のメスコネクタは、吸液部材31が設けられているにもかかわらず、オスコネクタ70に対してメスコネクタを接続及び分離するために必要な回転力を、従来のメスコネクタの場合に必要な回転力と同程度に小さく抑えることができる。
【0075】
実施形態4において、メスコネクタ本体418は、従来のメスコネクタにおいて螺状突起を短くしたものであってもよい。但し、本発明はこれに限定されず、螺状突起416が従来のメスコネクタの螺状突起と同じ長さを有していてもよい。即ち、メスコネクタ本体418は、従来のメスコネクタと互換性を有していてもよい。この場合、実施形態4のメスコネクタ4は、従来のメスコネクタに単に吸液部材341,342を設けたものであってもよい。このようなメスコネクタ4は、安価に製造できる。
【0076】
上記の実施形態1~4では、メスコネクタをオスコネクタ70に接続する前に、メスコネクタに設けられた吸液部材は乾燥していた。乾燥した吸液部材は、オスコネクタ70の隙間73に漏れ出た液状物の吸収能が高いので、メスコネクタが分離された後のオスコネクタ70の隙間73に残存する液状物を少なくするのに有利である。但し、本発明はこれに限定されず、メスコネクタをオスコネクタ70に接続する前に、メスコネクタの吸液部材に液体を含浸させておいてもよい。当該液体としては、制限されないが、水(水道水、蒸留水など)や消毒液などを例示しうる。吸液部材に対する液体の含浸量は、制限されないが、吸液部材がオスコネクタ70の隙間73に漏れ出た液状物を吸収できる程度であることが好ましく、例えば吸液部材が液体で湿らされている程度であってもよい。
【0077】
経鼻カテーテル90に設けられたオスコネクタ70は、チューブ91が患者に挿入された状態で、例えば2週間程度の長期間にわたって患者に留置されることがある。経腸栄養を実施後、オスコネクタ70の隙間73に液状物が残存した状態でオスコネクタ70が留置されると、液状物は隙間73を規定する面(例えば雌ネジ76の表面)上で乾燥し固化してしまう。このようにして形成された液状物の固化物は、オスコネクタ70に強固に付着しており、取り除くことは一般に困難である。
【0078】
吸液部材に上記のように液体が含浸されたメスコネクタをオスコネクタ70に接続すると、当該液体は、液状物の固化物に吸収され固化物をふやかして軟化させる。軟化された固化物は、吸液部材に吸収される。メスコネクタをオスコネクタ70から分離すると、固化物は、吸液部材に保持された状態で、オスコネクタ70から除去される。このように、オスコネクタ70の清掃が不十分なまま経腸栄養からしばらく時間が経過し、液状物の固化物がオスコネクタ70に付着してしまっていても、メスコネクタをオスコネクタ70に接続する前に吸液部材に液体を含浸させるだけで固化物をオスコネクタ70から除去することが可能になる。これは、固化物を除去するために従来必要であったオスコネクタ70の特別な清掃作業を簡単化または不要にするのに有利である。
【0079】
上記の実施形態1~4では、本発明のメスコネクタが経腸栄養投与セット60の下流端に設けられ、経鼻カテーテル90の上流端に設けられたオスコネクタ70に対して接続及び分離された(図1参照)。但し、本発明のメスコネクタはこれに限定されない。本発明のメスコネクタは、経腸栄養用延長チューブ等の経腸栄養で使用される任意のチューブに設けられていてもよい。本発明のメスコネクタが接続されるオスコネクタは、経鼻カテーテルに接続された延長チューブ(例えば経腸栄養投与セット、経腸栄養用延長チューブなど)に設けられていてもよい。あるいは、オスコネクタは、経鼻カテーテル以外の経腸栄養カテーテル(例えば瘻孔カテーテル)またはこれに接続された延長チューブ(例えば経腸栄養投与セット、経腸栄養用延長チューブなど)に設けられていてもよい。
【0080】
上記の実施形態1~4では、チューブ61が基管20に挿入されていたが、本発明の基管はこれに限定されない。本発明のメスコネクタの基管は、チューブ61に挿入されるように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、制限されないが、経腸栄養において使用されるメスコネクタとして好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3,4 メスコネクタ
11 メス部材
12 メス部材の内周面
13 メス部材の外周面
14 メス部材の先端面
16,416 螺状突起
20 メスコネクタの基管
31,32,33,341,342 吸液部材
27 フランジ
61 チューブ
70 オスコネクタ
71 オス部材
75 外筒
76 雌ネジ
図1
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