(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184216
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】生分解性マルチフィルム
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20231221BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
C08L101/16 ZBP
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098248
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】594099820
【氏名又は名称】柴田屋加工紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋志
(72)【発明者】
【氏名】須藤 晃男
【テーマコード(参考)】
2B024
4J200
【Fターム(参考)】
2B024DB01
2B024DB10
4J200AA06
4J200BA09
4J200BA14
4J200CA01
4J200CA02
4J200DA02
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】畝からめくれてしまうことを抑制できる生分解性農業用マルチフィルムを提供する。
【解決手段】生分解性マルチフィルム1は、一定の幅および一定の厚さを有する帯状のフィルムである。生分解性マルチフィルム1は、第1端部10と、第2端部20と、中央部30と、を有している。第1端部10と中央部30と第2端部20とは、それぞれが帯状であり、この順番で幅方向に並べて配置されている。そして、第1端部10および第2端部20の分解速度は、中央部30の分解速度より遅い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の生分解性マルチフィルムであって、
幅方向の両端部の分解速度が、幅方向の中央部の分解速度より遅いことを特徴とする生分解性マルチフィルム。
【請求項2】
前記両端部および前記中央部が、1つの層または複数の層で構成され、
前記中央部が、第1生分解層のみで構成され、
前記両端部が、第2生分解層のみで構成され、または、前記第1生分解層および前記第2生分解層の組み合わせで構成され、
前記第2生分解層の分解速度が、前記第1生分解層の分解速度より遅い、請求項1に記載の生分解性マルチフィルム。
【請求項3】
前記第1生分解層および前記第2生分解層が、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネートを含む、請求項2に記載の生分解性マルチフィルム。
【請求項4】
前記両端部のそれぞれが含む加水分解抑制剤の量が、前記中央部が含む加水分解抑制剤の量より多い、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の生分解性マルチフィルム。
【請求項5】
前記中央部の幅が、前記生分解性マルチフィルムの幅の10%~80%である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の生分解性マルチフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性マルチフィルムに関し、特に、農業用の生分解性マルチフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ、野菜、果実等の作物を栽培する際に、ポリエチレン製の農業用マルチフィルムで畝を覆うことが行われている。農業用マルチフィルムで畝を覆うことにより、保温、保湿、雑草防止、アブラムシよけ、促成栽培、抑制栽培、地温抑制、雨による畝の流出防止等の効果が得られる。農業用マルチフィルムは、両端部を土に埋めておさえながら畝を覆うように設置され、その後、作物の苗を定植したり、播種したりする。
【0003】
このようなポリエチレン製の農業用マルチフィルムは、作物を収穫した後などに回収する作業が必要になる。そこで、例えば、特許文献1では、農業用マルチフィルムを回収する作業が不要になる生分解性マルチフィルムを開示している。特許文献1の生分解性マルチフィルムは、作物を収穫した後、畑を耕すときに土壌中に一緒にすき込んで土壌中で分解させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9に、生分解性マルチフィルムによる畝の被覆例を示す。
図10に、畝を被覆した生分解性マルチフィルムの断面を模式的に示す。従来の生分解性マルチフィルムは、開口孔が設けられた中央部が畝を覆い、両端部が土に埋まっており、地上にある中央部よりも地中にある両端部の方が先に分解されることが多い。そのため、両端部が分解されることにより風によって農業用マルチフィルムが畝からめくれて、開口孔を通じて伸びている作物が傷ついたり、畝が露出して保温・保湿効果が低下したり、畝に雑草が生えてしまったりすることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、畝からめくれてしまうことを抑制できる生分解性農業用マルチフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る生分解性マルチフィルムは、帯状の生分解性マルチフィルムであって、幅方向の両端部の分解速度が、幅方向の中央部の分解速度より遅いことを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記両端部および前記中央部が、1つの層または複数の層で構成され、前記中央部が、第1生分解層のみで構成され、前記両端部が、第2生分解層のみで構成され、または、前記第1生分解層および前記第2生分解層の組み合わせで構成され、前記第2生分解層の分解速度が、前記第1生分解層の分解速度より遅い、ことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記第1生分解層および前記第2生分解層が、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸およびポリブチレンサクシネートを含むことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記両端部のそれぞれが含む加水分解抑制剤の量が、前記中央部が含む加水分解抑制剤の量より多いことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記中央部の幅が、前記生分解性マルチフィルムの幅の10%~80%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生分解性マルチフィルムが帯状に形成されており、幅方向の両端部の分解速度が、幅方向の中央部の分解速度より遅い。このようにしたことから、両端部が土でおさえられている状態をより長く維持することができる。また、中央部が分解される時期と両端部が分解される時期とのずれを小さくすることができる。そのため、生分解性マルチフィルムが畝からめくれてしまうことを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生分解性マルチフィルムの平面図である。
【
図2】
図1の生分解性マルチフィルムの断面図である。
【
図3】
図1の生分解性マルチフィルムの変形例の断面図である。
【
図4】生分解性マルチフィルムで畝を被覆している様子を示す図である。
【
図5】生分解性マルチフィルムで被覆した畝で作物を生育している様子を示す図である。
【
図6】生分解性マルチフィルムの強度低下および分解状況、ならびに評価結果を示す図である。
【
図7】実施例に係る生分解性マルチフィルムの分解状況の一例を示す図である。
【
図8】比較例に係る生分解性マルチフィルムの分解状況の一例を示す図である。
【
図9】生分解性マルチフィルムで畝を被覆した一例を示す図である。
【
図10】畝を被覆した生分解性マルチフィルムの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る生分解性マルチフィルムについて、
図1~
図5を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る生分解性マルチフィルムの平面図である。
図2は、
図1の生分解性マルチフィルムの断面図である。
図3は、
図1の生分解性マルチフィルムの変形例の断面図である。
図2、
図3において、生分解性マルチフィルムの厚さを強調して模式的に示している。
図4は、生分解性マルチフィルムで畝を被覆している様子を示す図である。
図5は、生分解性マルチフィルムで被覆した畝で作物を生育している様子を示す図である。
【0016】
本実施形態に係る生分解性マルチフィルムは農業に用いられるものである。本明細書において、「生分解性」とは、物質が微生物の働きによって分解され、最終的に二酸化炭素と水になる性質に加えて、物質が水と反応することによって分解される性質(加水分解)も含む。
【0017】
図1に示すように、生分解性マルチフィルム1は、一定の幅および一定の厚さを有する帯状のフィルムである。生分解性マルチフィルム1は、第1端部10と、第2端部20と、中央部30と、を有している。第1端部10と中央部30と第2端部20とは、それぞれが帯状であり、この順番で幅方向(
図1の左右方向)に並べて配置されている。第1端部10と中央部30とが連なっており、第2端部20と中央部30と連なっている。
【0018】
中央部30には、複数の開口孔35が設けられている。開口孔35の形状は、円形、長円形、長方形、ひし形などである。複数の開口孔35は、長さ方向(
図1の上下方向)に等間隔に並べて配置されている。中央部30の幅は、生分解性マルチフィルム1の幅の10%~80%であることが好ましい。生分解性マルチフィルム1は、作物に応じて、第1端部10、第2端部20および中央部30のそれぞれの幅や、開口孔35の形状、大きさ、間隔が設定される。なお、中央部30には、開口孔35が設けられていなくてもよい。中央部30には、開口孔35に代えて、孔を形成するためのミシン目が設けられていてもよい。
【0019】
第1端部10、第2端部20および中央部30は、1つの層または複数の層で構成されている。具体的には、生分解性マルチフィルム1は、第1生分解層40と、第2生分解層50と、を有しており、第1端部10、第2端部20および中央部30は、第1生分解層40、第2生分解層50またはこれら層の組み合わせで構成されている。各層は一体化されている。本実施形態において、第1端部10と第2端部20とは、同一の構成を有する。
【0020】
第2生分解層50は、第1生分解層40に比べて分解速度が抑制されている。第2生分解層50は、例えば、土中に埋めるなど、同一条件下に置いたときに、第1生分解層40より分解速度が遅い。第1端部10および第2端部20は、少なくとも1つの第2生分解層50を有している。第1端部10、第2端部20および中央部30は、同一条件下に置いたときに、第1端部10および第2端部20の分解速度が中央部30の分解速度より遅くなるように構成されている。
【0021】
第1生分解層40および第2生分解層50は、生分解性の樹脂を主成分としている。第1生分解層40および第2生分解層50において、生分解性の樹脂として、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が用いられる。これ以外の生分解性の樹脂を用いてもよい。本実施形態において、第1生分解層40および第2生分解層50は、PBATと、ポリ乳酸と、ポリブチレンサクシネートと、を含む。
【0022】
第2生分解層50は、加水分解抑制剤が添加されている。第1生分解層40は、加水分解抑制剤が添加されていない。なお、第1生分解層40は、加水分解抑制剤が添加されていてもよいが、第2生分解層50より分解速度が遅くならない(分解速度が抑制されすぎない)ようにする。第1生分解層40および第2生分解層50において、加水分解抑制剤として、例えば、カルボジイミド化合物などが用いられる。他の種類の加水分解抑制剤を用いてもよい。
【0023】
中央部30を構成する各層が含む加水分解抑制剤の合計量をa(a≧0)とし、第1端部10を構成する各層が含む加水分解抑制剤の合計量をb(第2端部20の合計量も同じ)としたとき、b>aとなるように、第1端部10、第2端部20および中央部30が構成されている。
【0024】
図2に示すように、本実施形態において、第1端部10および第2端部20は、順に重ねられた第1生分解層40と第2生分解層50との2層で構成されており、中央部30は、第1端部10および第2端部20と同じ厚さを有する1つの第1生分解層40で構成されている。
【0025】
なお、本発明に係る生分解性マルチフィルムは、例えば、
図3(a)~(c)に示す構成を有していてもよい。
図3(a)に示す生分解性マルチフィルム1Aは、
図2に示す構成に第1生分解層40を1つ追加したものであり、第1端部10および第2端部20が、順に重ねられた第1生分解層40と第2生分解層50と第1生分解層40との3層で構成されており、中央部30が、2つの第1生分解層40で構成されている。
図3(b)に示す生分解性マルチフィルム1Bは、第1端部10および第2端部20が、1つの第2生分解層50で構成されており、中央部30が、第1端部10および第2端部20と同じ厚さを有する1つの第1生分解層40で構成されている。
図3(c)に示す生分解性マルチフィルム1Cは、
図3(b)に示す構成に第1生分解層40を2つ追加したものであり、第1端部10および第2端部20が、順に重ねられた第1生分解層40と第2生分解層50と第1生分解層40との3層で構成されており、中央部30が、3つの第1生分解層40で構成されている。これら生分解性マルチフィルム1A~1Cにおいて、第1端部10と中央部30と第2端部20とは同じ厚さである。これら構成以外にも、例えば、第1端部10および第2端部20が、複数の第2生分解層50を含むものであってもよい。
【0026】
生分解性マルチフィルム1はロール状に巻かれており、被覆作業時において、ロール状に巻かれた生分解性マルチフィルム1の長さ方向の一端を土中に埋めることにより固定し、トラクタAに装着されたマルチフィルム張り機Bを使用して、畝を覆うと同時に、風などによって飛んだりしないように幅方向の両端部に重りとなる土Cを被せるようにしながら、生分解性マルチフィルム1を畝に設置する。生分解性マルチフィルム1には、予め開口孔35が設けられており、畝を被覆した後に、開口孔35を通じて畝に作物の苗を定植したり、播種したりする。
【0027】
以上説明したように、生分解性マルチフィルム1は、帯状に形成されており、幅方向の両端部である第1端部10および第2端部20の分解速度が、幅方向の中央部30の分解速度より遅い。このようにしたことから、第1端部10および第2端部20が土でおさえられている状態をより長く維持することができる。また、中央部30が分解される時期と両端部が分解される時期とのずれを小さくすることができる。そのため、生分解性マルチフィルム1が畝からめくれてしまうことを効果的に抑制できる。
【0028】
また、第1端部10、第2端部20および中央部30が、1つの層または複数の層で構成されている。中央部30が、第1生分解層40のみで構成されている。第1端部10および第2端部20が、第1生分解層40および第2生分解層50の組み合わせで構成され、または、第2生分解層50のみで構成されている。そして、第2生分解層50の分解速度が、第1生分解層40の分解速度より遅い。このようにすることで、生分解性マルチフィルム1において、中央部30に対する第1端部10および第2端部20の分解速度を比較的容易に調整することができる。なお、第1端部10および第2端部20の分解速度が、幅方向の中央部30の分解速度より遅ければ、中央部30が、第1生分解層40および第2生分解層50の組み合わせで構成されていてもよい。
【0029】
また、第1端部10および第2端部20のそれぞれが含む加水分解抑制剤の量が、中央部30が含む加水分解抑制剤の量より多い。このようにすることで、生分解性マルチフィルム1において、中央部30に対する第1端部10および第2端部20の分解速度を比較的容易に調整することができる。
【0030】
本発明者らは、生分解性マルチフィルムの分解速度の抑制効果を確認するため、以下に示す生分解性マルチフィルムの実施例1、実施例2および比較例1を作製して評価試験を行った。なお、実施例1、実施例2および比較例1は、幅方向の中央部および両端部が同一の構成を有している。
【0031】
実施例1:PBATを主成分とし、黒色顔料のマスターバッチを6重量%、加水分解抑制剤のマスターバッチを1重量%加えて、厚さ0.018mmの生分解性マルチフィルムを作製した。実施例1において、黒色顔料は、2.1重量%である。実施例1は、加水分解抑制剤の量が比較的少ない第2生分解層50を想定したものである。
【0032】
実施例2:PBATを主成分とし、黒色顔料のマスターバッチを6重量%、加水分解抑制剤のマスターバッチを3重量%加えて、厚さ0.018mmの生分解性マルチフィルムを作製した。実施例2において、黒色顔料は、2.1重量%である。実施例2に含まれる加水分解抑制剤の重量割合は、実施例1に含まれる加水分解抑制剤の重量割合より多い。実施例2は、加水分解抑制剤の量が比較的多い第2生分解層50を想定したものである。
【0033】
比較例1:PBATを主成分とし、黒色顔料のマスターバッチを6重量%加え、加水分解抑制剤を加えずに、厚さ0.018mmの生分解性マルチフィルムを作製した。比較例1において、黒色顔料は、2.1重量%である。比較例1は、加水分解抑制剤を含まない第1生分解層40を想定したものである。
【0034】
なお、実施例1、実施例2および比較例1において、PBAT、黒色顔料のマスターバッチ、および、加水分解抑制剤のマスターバッチは同じものを用いている。
【0035】
露天環境にある畝を実施例1、実施例2および比較例1で被覆し、それぞれの両端部を土に埋めておさえ、被覆してから2か月後、3か月後、4か月後の時点での両端部における引っ張り強度の低下(強度低下)および分解状況を確認した。本評価試験では、引っ張り強度および分解抑制を4か月間維持することを目標としている。
【0036】
引っ張り強度の低下については、評価担当者が両手で引き裂く方向に引っ張ったときの感触に基づき、以下の三段階で評価した。
◎…引っ張り強度の低下がない、または、わずかに低下している。
○…引っ張り強度が低下しているが、畝の保護に必要な引っ張り強度は維持している。
△…引っ張り強度が低下しており、畝を保護できない。
【0037】
分解状況については、評価担当者の目視により、以下の三段階で評価した。
◎…分解がない、または、わずかに分解している。
○…分解しているが、畝を保護できなくなるほど分解は進んでいない。
△…分解しており、畝を保護できない。
【0038】
総合評価は、以下の基準に基づいて評価した。
良好…引っ張り強度の低下および分解状況の評価に「△」を含まない。
不良…引っ張り強度の低下および分解状況の評価に「△」を含む。
【0039】
実施例1、実施例2および比較例1についての、引っ張り強度の低下および分解状況の評価結果、ならびに、総合評価結果を
図6に示す。
【0040】
図6に示すように、実施例1は、各経過期間のいずれにおいても引っ張り強度の低下および分解状況の進行が遅く、畝の保護に影響はない。また、実施例2は、各経過期間のいずれにおいても引っ張り強度の低下および分解状況の進行が非常に遅く、畝の保護に影響はない。一方、比較例1は、各経過期間のいずれにおいても引っ張り強度の低下が進行してしまい、畝の保護に影響が出るおそれがある。また、比較例1は、4か月後に分解してしまい、畝の保護に影響が出るおそれがある。
【0041】
この評価結果から、実施例1または実施例2を第2生分解層50として生分解性マルチフィルムの両端部に含めることで、被覆してから所定期間(例えば4か月)にわたって畝を十分に保護できることが明らかとなった。また、比較例1は、実施例1および実施例2より引っ張り強度の低下および分解が早く進み、畝からめくれてしまい、所定期間継続して畝を保護できないおそれがある。そのため、生分解性マルチフィルムの両端部を実施例1および実施例2のいずれかのみ、または、実施例1または実施例2と比較例1との組み合わせで構成することにより、所定期間にわたって畝を保護できる生分解性マルチフィルムを得ることができる。なお、評価試験では、畝を保護できる期間として4か月間を目標とするものであったが、生分解性マルチフィルムの両端部の構成(層構成や加水分解抑制剤の添加量など)を変えることにより、畝を保護できる期間を調整することが可能である。
【0042】
図7は、実施例2における分解状況の一例を示す図(写真)である。
図8は、比較例1における分解状況の一例を示す図(写真)である。
図7(a)、
図8(a)は、畝を被覆してから2か月後に撮影したものである。
図7(b)、
図8(b)は、畝を被覆してから4か月後に撮影したものである。
図7(a)、(b)に示すように、実施例2では、所定期間を経過した後も端部が形状を維持しており、所定期間にわたって畝を保護可能な状態を維持していることが分かる。一方、
図8(a)、(b)に示すように、比較例1では、2か月後には端部に比較的大きな裂け目がいたるところに生じ、4か月後には端部の大半が分解されてしまい原形を留めていないことが分かる。そのため、比較例1は、所定期間を経過する前に端部が分解されて畝からめくれてしまい、所定期間継続して畝を保護できないおそれがある。
【0043】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明は実施形態の構成に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B、1C…生分解性マルチフィルム
10…第1端部
20…第2端部
30…中央部
35…開口孔
40…第1生分解層
50…第2生分解層