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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184222
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】汚泥引抜ユニット及び沈殿装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/08 20060101AFI20231221BHJP
   B01D 21/06 20060101ALI20231221BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B01D21/08 C
B01D21/06 A
B01D21/24 G
B01D21/24 N
B01D21/24 P
B01D21/24 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098255
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】奥田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 菜穂
(57)【要約】
【課題】沈殿槽から汚泥を引き抜くために用いられる汚泥引抜管に関して、メンテナンスを行いやすい汚泥引抜ユニットを提供する。
【解決手段】沈殿槽20の内部に垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフト30と、沈殿槽20の内部においてシャフト30の周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェル40と、シャフト30の下部に設けられた掻き寄せ機50とを備える沈殿装置10に取り付けられる汚泥引抜ユニット70である。この汚泥引抜ユニット70は、センターウェル40の内側においてシャフト30の上部に取り付けられる排泥槽74と、排泥槽74に固定されて、沈殿槽20の底部20aから沈殿汚泥Sを上向きに引き抜いて排泥槽74に移送する汚泥引抜管72と、排泥槽74に移送された沈殿汚泥Sをポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管76とを備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿槽の内部に前記沈殿槽の上方から底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、前記沈殿槽の内部において前記シャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、前記シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機とを備える沈殿装置に対して、前記沈殿槽に流入する廃水中の汚泥が前記沈殿槽の前記底部に沈殿した沈殿汚泥を槽外に排出するために取り付けられる汚泥引抜ユニットであって、
前記センターウェルの内側において前記シャフトの上部に取り付けられる排泥槽と、
前記排泥槽に固定されて、前記排泥槽から前記沈殿槽の前記底部まで延びて前記シャフトに平行に設けられ、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を上向きに引き抜いて前記排泥槽に移送する汚泥引抜管と、
前記排泥槽に移送された前記沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管とを備える、汚泥引抜ユニット。
【請求項2】
前記排泥槽は、前記シャフトを中心軸とした環状の槽で前記シャフトの前記上部に固定されて、前記排泥槽及び前記汚泥引抜管が前記シャフトの回転と連動して回転可能に取り付けられる請求項1に記載の汚泥引抜ユニット。
【請求項3】
前記汚泥引抜管は、前記排泥槽内の水位が、前記沈殿槽内における前記排泥槽の外側の水位よりも低い水位差によって、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を引き上げて前記排泥槽に移送する請求項1に記載の汚泥引抜ユニット。
【請求項4】
前記汚泥引抜管は、前記排泥槽に複数本固定され、複数の前記汚泥引抜管のそれぞれは、前記シャフトの周囲に配置される請求項1に記載の汚泥引抜ユニット。
【請求項5】
前記沈殿槽の前記底部の中央付近に窪みで形成された集泥ピットが設けられており、
前記汚泥引抜管は、その下端が前記集泥ピットに達して設けられる請求項1に記載の汚泥引抜ユニット。
【請求項6】
前記廃水は、活性汚泥を用いた生物処理で生じた廃水である請求項1に記載の汚泥引抜ユニット。
【請求項7】
沈殿槽に流入する廃水中の汚泥を前記沈殿槽の底部に沈殿させ、沈殿汚泥を槽外に排出する沈殿装置であって、
前記沈殿槽の内部に、前記沈殿槽の上方から前記底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、
前記沈殿槽の内部において前記シャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、
前記シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機と、
前記沈殿汚泥を引き抜いて前記槽外に排出するための汚泥引抜ユニットと、を備え、
前記汚泥引抜ユニットは、
前記センターウェルの内側において前記シャフトの上部に設けられた排泥槽と、
前記排泥槽に固定されて、前記排泥槽から前記沈殿槽の前記底部まで延びて前記シャフトに平行に設けられ、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を上向きに引き抜いて前記排泥槽に移送する汚泥引抜管と、
前記排泥槽に移送された前記沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管と、を備える沈殿装置。
【請求項8】
前記排泥槽は、前記シャフトを中心軸とした環状の槽で前記シャフトの前記上部に固定されており、
前記排泥槽及び前記汚泥引抜管は、前記シャフトの回転と連動して回転する請求項7に記載の沈殿装置。
【請求項9】
前記汚泥引抜管は、前記排泥槽内の水位が、前記沈殿槽内における前記排泥槽の外側の水位よりも低い水位差によって、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を引き上げて前記排泥槽に移送する請求項7に記載の沈殿装置。
【請求項10】
前記汚泥引抜管は、前記排泥槽に複数本固定されており、複数の前記汚泥引抜管のそれぞれは、前記シャフトの周囲に設けられている請求項7に記載の沈殿装置。
【請求項11】
前記沈殿槽の前記底部の中央付近に窪みで形成された集泥ピットを備えており、
前記汚泥引抜管は、その下端が前記集泥ピットに達して設けられている請求項7に記載の沈殿装置。
【請求項12】
前記廃水は、活性汚泥を用いた生物処理で生じた廃水である請求項7に記載の沈殿装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥引抜ユニット及び沈殿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下水処理場やし尿処理場などでは、廃水の浄化手段として活性汚泥が広く利用されている。また、例えば下水処理場の処理過程や工場の廃液処理過程などでは、廃水中の浮遊物質が凝集して生成した泥状固体(スラッジ)が生じる。そして、下水処理場、産業廃水処理場、及びし尿処理場などにおいては、上記の活性汚泥及びスラッジなどの汚泥を含有する廃水を、汚泥の沈降分離により、汚泥と清浄な処理水とに分離するための沈殿池(沈殿槽)が設けられている。
【0003】
上述の沈殿槽には、例えば特許文献1~3に開示されているように、沈殿槽の中心に設けられた回転軸と、その回転軸の下部に設けられて、沈殿槽の底部に沈殿した汚泥を底部中心付近に掻き寄せる掻き寄せ機(レーキや汚泥回収装置等とも称される。)などを備える沈殿装置が用いられている。また、そのような沈殿装置において、沈殿槽の底部に沈殿した汚泥(沈殿汚泥)は、一般的に、沈殿槽の底部から、底部下の躯体に埋設された汚泥引抜管(汚泥排出管や排泥管とも称される。)を通って取り出されている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-262906号公報
【特許文献2】特開平3-135404号公報
【特許文献3】特開2011-101855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
沈殿装置においては、汚泥が沈殿槽の底部に沈殿することから、沈殿汚泥をそのまま底部から取り出しやすいように、汚泥引抜管は、沈殿槽の底部側の躯体(一般にコンクリート製の躯体)に埋設されていることが一般的である(特許文献1~3参照)。
【0006】
しかし、汚泥引抜管を沈殿装置の底部側の躯体に埋設する場合、いわゆる横引き配管で施工する方法が一般的であり、汚泥引抜管における水平方向の距離が長くなり、沈殿装置の設計によっては形状が複雑になる場合も多い。そのため、汚泥引抜管の管内での汚泥の堆積や固着による閉塞の発生や、腐食による漏水が懸念される。それにも関わらず、汚泥引抜管は、沈殿装置の躯体に埋設されているという設置方法の都合上、汚泥引抜管の洗浄や点検、修理、交換、整備、及び保守などといったメンテナンスを行い難いという実情が存在していた。
【0007】
そこで本発明は、沈殿槽から汚泥を引き抜くために用いられる汚泥引抜管に関して、メンテナンスを行いやすい汚泥引抜ユニット、及びその汚泥引抜ユニットを備える沈殿装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、沈殿槽の内部に前記沈殿槽の上方から底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、前記沈殿槽の内部において前記シャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、前記シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機とを備える沈殿装置に対して、前記沈殿槽に流入する廃水中の汚泥が前記沈殿槽の前記底部に沈殿した沈殿汚泥を槽外に排出するために取り付けられる汚泥引抜ユニットであって、前記センターウェルの内側において前記シャフトの上部に取り付けられる排泥槽と、前記排泥槽に固定されて、前記排泥槽から前記沈殿槽の前記底部まで延びて前記シャフトに平行に設けられ、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を上向きに引き抜いて前記排泥槽に移送する汚泥引抜管と、前記排泥槽に移送された前記沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管とを備える、汚泥引抜ユニットを提供する。
【0009】
また、本発明は、沈殿槽に流入する廃水中の汚泥を前記沈殿槽の底部に沈殿させ、沈殿汚泥を槽外に排出する沈殿装置であって、前記沈殿槽の内部に、前記沈殿槽の上方から前記底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、前記沈殿槽の内部において前記シャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、前記シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機と、前記沈殿汚泥を引き抜いて前記槽外に排出するための汚泥引抜ユニットと、を備え、前記汚泥引抜ユニットは、前記センターウェルの内側において前記シャフトの上部に設けられた排泥槽と、前記排泥槽に固定されて、前記排泥槽から前記沈殿槽の前記底部まで延びて前記シャフトに平行に設けられ、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を上向きに引き抜いて前記排泥槽に移送する汚泥引抜管と、前記排泥槽に移送された前記沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管と、を備える沈殿装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、沈殿槽から汚泥を引き抜くために用いられる汚泥引抜管に関して、メンテナンスを行いやすい汚泥引抜ユニット、及びその汚泥引抜ユニットを備える沈殿装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の一実施形態の汚泥引抜ユニットを表す概略図であって、その汚泥引抜ユニットを上方から視た平面図である。
図1B】本発明の一実施形態の汚泥引抜ユニットを表す概略図であって、その汚泥引抜ユニットの正面図である。
図2A】汚泥引抜ユニットを沈殿装置におけるシャフト及びセンターウェルとともに表した、図1Aに対応する平面図である。
図2B】汚泥引抜ユニットを沈殿装置におけるシャフト及びセンターウェルとともに表した、図1Bに対応する正面図である。
図3】汚泥引抜ユニットを取り付けた本発明の一実施形態の沈殿装置の概要を表す断面図である。
図4】本発明の一実施形態の沈殿装置の主要部の概要を表す斜視図である。
図5】試験例で使用した模擬沈殿試験装置の概略構成図である。
図6】従来の一例の沈殿装置の概要を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
図6は、従来の一例の沈殿装置1の概要を表す断面図である。従来の沈殿装置1は、沈殿槽2の内部に沈殿槽2の上方から底部2aまで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフト3と、沈殿槽2の内部においてシャフト3の周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェル4と、シャフト3の下部に設けられた掻き寄せ機5とを備える。図6では、沈殿装置1の概要を分かりやすく表すための便宜上、シャフト3と、シャフト3を回転駆動させる駆動装置Mと、沈殿槽2の底部2aに沈殿した汚泥(沈殿汚泥)Sを底部2aの中心に掻き寄せる掻き寄せ機5については、正面図で示している。
【0014】
従来の沈殿装置1においては、流入管6から流入してきた廃水中の汚泥が沈殿槽2の底部2aに沈殿することから、沈殿汚泥Sをそのまま底部2aから取り出しやすいように、汚泥引抜管7は、沈殿槽2の底部2a側の躯体2bに埋設されている。汚泥引抜管7の先には、ポンプ(不図示)が接続されており、ポンプの駆動によって沈殿汚泥Sが引き抜かれ、槽外に排出されるようになっている。
【0015】
沈殿槽2の底部2a側の躯体2bに埋設された汚泥引抜管7を備える沈殿装置1においては、汚泥引抜管7の水平方向の距離を沈殿槽2のサイズに起因して長くとった横引き配管とする必要がある。また、沈殿装置1の設計によっては汚泥引抜管7の形状が複雑になる場合もある。そのため、汚泥引抜管7の管内での汚泥の堆積や固着による閉塞が発生する場合があり、また、腐食による漏水も懸念される。したがって、汚泥引抜管7の管内で閉塞を防止するための洗浄、点検、及び整備などや、管内で閉塞や腐食した場合の修理及び交換などのメンテナンスが必要となる。しかし、沈殿槽2の躯体2bは一般的にコンクリート製であることから、メンテナンス作業によっては斫り工事が必要となる場合があり、その際の躯体強度の面からの工事の困難さや長期の工事期間から、メンテナンスを十分に行い難いという問題がある。こうした事情から、汚泥引抜管7を沈殿槽2の底部2a側の躯体2bに埋設した従来の沈殿装置1においては、汚泥引抜管7の管内での沈殿汚泥Sの堆積及び固着による閉塞や腐食がますます懸念される。
【0016】
そこで本発明者は、沈殿槽2から沈殿汚泥Sを引き抜くために用いられる汚泥引抜管7に関して、沈殿槽2の躯体2bの斫り工事などが不要であり、洗浄、点検、修理、交換、整備、及び保守などのメンテナンスを行いやすい構成を検討した。その結果、以下に述べる汚泥引抜ユニットによって、メンテナンスを行いやすい汚泥引抜管を提供できることを見出した。
【0017】
すなわち、本発明の一実施形態の汚泥引抜ユニットは、沈殿装置に対して、沈殿槽の底部に沈殿した汚泥(沈殿汚泥)を槽外に排出するために取り付けられるユニットである。取付対象である沈殿装置は、沈殿槽の内部に沈殿槽の上方から底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、沈殿槽の内部においてシャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機とを備える。汚泥引抜ユニットは、センターウェルの内側においてシャフトの上部に取り付けられる排泥槽を備える。また、汚泥引抜ユニットには、排泥槽に固定されて、排泥槽から沈殿槽の底部まで延びてシャフトに平行に設けられ、沈殿槽の底部から沈殿汚泥を上向きに引き抜いて排泥槽に移送する汚泥引抜管が備え付けられる。汚泥引抜ユニットは、さらに、汚泥引抜管によって排泥槽に移送された沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管を備える。
【0018】
上記の通り、汚泥引抜ユニットは、排泥槽、汚泥引抜管、及び汚泥引抜ポンプサクション管を備えており、汚泥引抜ユニットにおける汚泥引抜管は、沈殿装置におけるシャフトの上部に取り付けられる排泥槽に固定される非埋設型の管である。この汚泥引抜管は、非埋設型とするために、シャフトに平行に、すなわち、沈殿槽の内部に垂直方向の軸線をもって設けられて、沈殿槽の底部にある沈殿汚泥を上向きに引き抜き可能に構成されている。そのため、躯体の斫り工事などを特段必要とすることなく、短期間での取り付け施工が可能であり、かつ、汚泥引抜管の洗浄、点検、修理、交換、整備、及び保守などのメンテナンスを行いやすい汚泥引抜ユニットを提供することができる。
【0019】
したがって、沈殿槽を新設する場において、汚泥引抜ユニットを提供することで、メンテナンスを行いやすく、それにより、閉塞や腐食が生じ難い汚泥引抜管を設けることができる。また、従来の汚泥引抜管が躯体に埋設された既存の沈殿槽において、汚泥引抜管の管内での閉塞や腐食の問題が生じた場合やその問題を今後生じ難くする場合に、躯体の工事や既存設備の改造を要せずに、汚泥引抜ユニットを設置することができる。なお、この場合、既存の埋設型の汚泥引抜管を閉塞して躯体と同化させ、汚泥引抜ユニットを設置すれば、既存の沈殿槽における躯体工事や既存設備の改造を要せずに、汚泥引抜ユニットにおける新規な汚泥引抜管を設けることができる。
【0020】
以下、図1図4を用いて、本実施形態の汚泥引抜ユニット、及びその汚泥引抜ユニットを備えた、本発明の一実施形態の沈殿装置について、詳細に説明する。
【0021】
図1A及び図1B(本明細書において、図1A及び図1Bをまとめて図1と記載することがある。)は、本発明の一実施形態の汚泥引抜ユニット70を表す概略図である。図1Aは汚泥引抜ユニット70を上方から視た平面図であり、図1Bは汚泥引抜ユニット70の正面図である。図2A及び図2B(本明細書において、図2A及び図2Bをまとめて図2と記載することがある。)は、それぞれ、図1A及び図1Bに対応し、汚泥引抜ユニット70を沈殿装置におけるシャフト30及びセンターウェル40とともに表した図である。図3は、汚泥引抜ユニット70を取り付けた本発明の一実施形態の沈殿装置10の概要を表す断面図である。図4は、沈殿装置10の主要部の概要を表す斜視図である。
【0022】
図1に示す通り、本実施形態の汚泥引抜ユニット70は、排泥槽74と、排泥槽74に固定される汚泥引抜管72と、汚泥引抜ポンプサクション管76(以下、単に「サクション管76」と記載することがある。)とを備える。この汚泥引抜ユニット70は、沈殿装置10において、沈殿槽20に流入する廃水中の汚泥が沈殿槽20の底部20aに沈殿した沈殿汚泥Sを槽外に排出するために取り付けられる。
【0023】
図3に示す通り、汚泥引抜ユニット70が取り付けられる対象である沈殿装置10は、沈殿槽20に流入する廃水中の汚泥を沈殿槽20の底部20aに沈殿させ、沈殿汚泥Sを槽外に排出する装置である。この沈殿装置10は、沈殿槽20の内部に、沈殿槽20の上方から底部20aまで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフト30と、沈殿槽20の内部においてシャフト30の周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェル40と、シャフト30の下部に設けられた掻き寄せ機50とを備える。沈殿装置10に汚泥引抜ユニット70が取り付けられた際には、沈殿装置10は、さらに汚泥引抜ユニット70を備える。
【0024】
汚泥引抜ユニット70における排泥槽74は、センターウェル40の内側においてシャフト30の上部に取り付けられる。汚泥引抜ユニット70における汚泥引抜管72は、排泥槽74に固定されて、排泥槽74から沈殿槽20の底部20aまで延びてシャフト30に平行に設けられ、沈殿槽20の底部20aから沈殿汚泥Sを上向きに引き抜いて排泥槽74に移送する。汚泥引抜ユニット70におけるサクション管76は、汚泥引抜管72によって排泥槽74に移送された沈殿汚泥Sを、サクション管76の先に接続されたポンプ(不図示)により、槽外に排出するものである。
【0025】
沈殿槽20は、下水処理場、産業廃水処理場、及びし尿処理場などにおける水処理設備において沈殿池とも称され、底部20aを有する槽である。沈殿槽20の上部は、開放系でもよいし、蓋体などが設けられてもよい。沈殿槽20の上方からの平面視形状は特に制限されず、例えば、円形状、正方形状、及び長方形状などが挙げられる。
【0026】
沈殿槽20の底部20aは、その下方の躯体2bに埋設されていてもよいし、躯体2bに一体に形成されていてもよい。躯体2bは通常、コンクリートにより構築される。沈殿槽20の底部20aは、底部20aの中央付近に向かって下方に傾斜した錐状構造に形成されている。図3に示されているように、沈殿槽20には底部20aの中央付近に窪みで形成された集泥ピット20bを設けることもできる。沈殿槽20の側部には、汚泥を含有する廃水が外部から沈殿槽20(そのセンターウェル40)内に流入する流入管60が設けられている。
【0027】
沈殿槽20の上方には、作業者が設置やメンテナンスなどを行うための作業台(不図示)や、シャフト30、駆動装置M、センターウェル40、及びサクション管76などを設置するための設置台(不図示)、作業台及び設置台を兼用した台などを架設することができる。
【0028】
シャフト30は、沈殿槽20の内部において、沈殿槽20の上方から底部20aまで延びる垂直方向(沈殿槽20の深さ方向)の軸線をもって回転駆動される。通常、沈殿槽20の中央付近にシャフト30を設置することができる。シャフト30を回転駆動させるために、シャフト30の上端側は、モーターなどの駆動装置Mに連結させることができ、駆動装置Mを上述した台などに設置することができる。駆動装置Mによって、駆動装置Mの回転動力を、シャフト30の下部に設けられた掻き寄せ機50や、シャフト30の上部に設けられた排泥槽74に伝え、掻き寄せ機50及び排泥槽74をシャフト30の回転と連動して回転させることができる。シャフト30の下端は、シャフト30が回転可能であり、かつ、安定した回転が得られるように、ベアリング機構(不図示)を介してシャフト設置台20cに設置することができる。なお、シャフト設置台20cは躯体2bに固定することができる。
【0029】
センターウェル40は、沈殿槽20の内部においてシャフト30の周囲に間隔をおいて設けられている。センターウェル40は、好ましくは、シャフト30を中心軸として、その周囲にセンターウェル40の内壁が間隔をおいて配置されるように設けられる。センターウェル40は、例えば、上述した台に吊り下げ型で設置することができる。
【0030】
センターウェル40には流入管60が接続されており、外部から流入管60を通って流入してくる廃水がセンターウェル40内に導かれる。センターウェル40は、流入してきた廃水の水流をセンターウェル40の内壁で落ち着かせることができる。センターウェル40内に流れ込んだ廃水は、センターウェル40内を流下する間に整流作用を受けて、センターウェル40の下部から流出する。このような役割をもっていればセンターウェル40の形状は特に限定されない。本実施形態の沈殿装置10においては、センターウェル40は環状(好ましくは無底円筒形状)に形成されており、周壁に流入管60との接続部41が設けられている。また、センターウェル40の高さは、沈殿槽20の深さの50%程度(例えば40~60%程度)に設計することが好ましい。沈殿槽20の深さ方向(垂直方向)における中央付近から上部付近にかけてセンターウェル40を設置することができる。
【0031】
センターウェル40の下部から流出した廃水は、廃水中の汚泥の沈殿流速と廃水中の水(清澄な処理水)の上昇流速の差により分離される(図3中の汚泥流れ方向を表す破線矢印と、水流れ方向を表す実線矢印を参照)。汚泥は沈殿槽20の底部20aに沈殿し、処理水は沈殿槽20の上側に流れ、上澄水としての水位L2の水面を形成する。上澄水(処理水)は、沈殿槽20から取り出され、自然界に放出されたり、再利用されたりする。沈殿槽20の上部側の内周壁には、その内周壁に沿って、処理水が越流する越流堰22を設けることができる。また、図示を省略するが、越流堰22には、処理水を取り出すための処理水の出口や流出水路を設けることができる。越流堰22に溢れ流れた処理水は、処理水の出口や流出水路を通って後段の処理に送られてもよい。
【0032】
掻き寄せ機50は、シャフト30の下部に設けられている。掻き寄せ機50が、沈殿槽20の底部20a付近において、シャフト30の回転と連動して沈殿槽20の周方向に回転することで、沈殿槽20の底部20aに沈殿して溜まった沈殿汚泥Sが底部20aの中央付近に掻き寄せられる。沈殿槽20の底部20aの中央付近において上述した集泥ピット20bが設けられている場合には、沈殿汚泥Sは、掻き寄せ機50によって、集泥ピット20bに集められる。
【0033】
掻き寄せ機50が上述のような機能を有していれば、掻き寄せ機50の構成は特に制限されない。掻き寄せ機50の好ましい一態様の構成として、沈殿槽20の底部20aにおいて、シャフト30を中心軸として、その中心軸から沈殿槽20の周壁付近まで延びるアームで構成することができる。この場合、掻き寄せ機50は、沈殿槽20の上方からの平面視において、中心軸から2方向に延びるアームで構成されていてもよいし、3方向、又は4方向以上の放射状に延びるアームで構成されていてもよい。
【0034】
沈殿装置10は、沈殿槽20の底部20aに沈殿した沈殿汚泥Sを槽外に排出するための汚泥引抜ユニット70を備える。汚泥引抜ユニット70における排泥槽74は、センターウェル40の内側に配置されており、センターウェル40の内側において、シャフト30の上部に設けられている。排泥槽74は、好ましくは、センターウェル40と同心の位置に設置され、また、排泥槽74の上端部がセンターウェル40の上端部と同程度の高さ位置に設置される。
【0035】
排泥槽74は、排泥槽74に固定された汚泥引抜管72によって、沈殿槽20の底部20aから引き上げられた沈殿汚泥Sを一旦貯留する中継の槽である。排泥槽74は、シャフト30を中心軸とした環状(ドーナツ状)の槽であることが好ましく、有底円環状の槽であることがより好ましい。また、シャフト30を中心軸とした環状の槽である排泥槽74は、シャフト30の上部に固定されていることが好ましく、それにより、シャフト30の回転と連動して回転することができる。この場合、排泥槽74に固定されている汚泥引抜管72も、シャフト30の回転と連動して回転する。排泥槽74の内径は、センターウェル40の内径に対して、0.6~0.8倍(60~80%)であることが好ましく、0.7~0.8倍(70~80%)であることがさらに好ましい。
【0036】
沈殿汚泥Sを貯留する空間が上記環状に形成されている排泥槽74の具体的な構成としては、例えば、排泥槽74の内側の中心にシャフト30の挿通部73を設けることができ、排泥槽74の外側底部の中心にシャフト30の固定部75を設けることができる。また、排泥槽74は汚泥引抜管72の上方に設けられることから、排泥槽74の底部には、排泥槽74の槽内と汚泥引抜管72の管内とを連通させた状態で汚泥引抜管72を連結させる連結部71を設けることができる。
【0037】
排泥槽74の深さは、センターウェル40内への廃水の流入の妨げにならないような深さであることが好ましい。その観点から、排泥槽74は、流入管60が接続されているセンターウェル40の接続部41の位置よりも高い位置に設置されることが好ましい。沈殿槽20の規模にもよるが、例えば、排泥槽74の高さは、好ましくは0.3~1.0m、より好ましくは0.4~0.7mに設計することができる。また、排泥槽74の底面が、センターウェル40における流入管60との接続部41の上端よりも、好ましくは150~250mm、より好ましくは200~250mm高い位置となるように排泥槽74を設置することができる。
【0038】
排泥槽74の材質としては、特に制限されず、例えば、SS400及びSUSなどの鋼材、並びに繊維強化プラスチック(FRP)などを挙げることができ、また、腐食防止を目的としたエポキシ樹脂塗料などの塗装が施されていてもよい。
【0039】
汚泥引抜ユニット70における汚泥引抜管72は、排泥槽74に固定されており、上述の通り、好ましくは、排泥槽74の底部に設けられた連結部71に連結される。汚泥引抜管72は、排泥槽74から沈殿槽20の底部20aまで、すなわち、底部20aの方へ向かって底部20aの近傍まで延びてシャフト30に平行に設けられており、沈殿槽20の底部20aから沈殿汚泥Sを上向きに引き抜いて排泥槽74に移送する。このように、汚泥引抜管72と、ポンプに接続されたサクション管76とを直接繋げずに、シャフト30に設けられた排泥槽74を経由して、排泥槽74からポンプで排泥する機構に構成されている。
【0040】
汚泥引抜管72は、シャフト30に平行に、すなわち、沈殿槽20の内部に垂直方向の軸線をもって設けられることから、汚泥引抜管72には、シャフト30に平行な軸方向を長手方向とするストレート形状の円筒管を用いることができる。これにより、汚泥引抜管72の管内での汚泥の堆積や固着による閉塞を生じ難くすることができる。また、掻き寄せ機50に干渉せずに汚泥引抜管72を容易に設置することもできる。
【0041】
汚泥引抜管72は、排泥槽74内の水位L1が、沈殿槽20内における排泥槽74の外側の水位L2よりも低い水位差によって、沈殿槽20の底部20aから沈殿汚泥Sを引き上げて排泥槽74に移送することができる。水位差は、50mm以下であることが好ましく、例えば10~50mm程度とすることができる。排泥槽74内の液を、サクション管76を介してポンプの作動によって引き抜くことによって、排泥槽74内の水位L1を排泥槽74の外側の水位L2よりも下げることができる。また、排泥槽74内の水位L1を調整することも可能であり、周囲との水圧差で常に一定量貯留することが可能である。排泥槽74の外側の水位L2は、排泥槽74内の下がった水位L1に合わせて下がろうとすることから、沈殿槽20内の液が下方に押され、沈殿槽20の底部20aに圧力がかかり、底部20aに溜まった沈殿汚泥Sが汚泥引抜配管72から引き上げられる。このような圧力差を設けることにより、排泥槽74内の水位L1が下がると、汚泥引抜管72によって沈殿槽20の底部20aから水が引き上げられ、一緒に沈殿汚泥Sも引き上げられることとなる。このように汚泥引抜管72が自吸式ポンプの機能をもって、沈殿汚泥Sを上向きに引き抜くことが可能である。
【0042】
前述の通り、排泥槽74がシャフト30の上部に固定されている好ましい態様の場合、汚泥引抜管72は排泥槽74に固定されていることから、汚泥引抜管72もシャフト30の回転と連動して回転する。汚泥引抜管72がシャフト30と一緒に回転することによって、汚泥引抜管72に沈殿汚泥Sの低速撹拌機能を持たせることができ、それにより、沈殿槽20の底部20aに沈殿汚泥Sが固着することを抑えることが可能となる。この目的のために、従来の沈殿装置1においては、シャフト3の下端部に撹拌羽8を備え付けることが必要であったが(図6参照)、沈殿装置10では、汚泥引抜管72をシャフト30と連動して回転可能な構成とすることで、撹拌羽を不要とすることができる。
【0043】
垂直方向に延びる汚泥引抜管72のブレを抑えて安定してシャフト30と連動回転できるように、汚泥引抜管72は、シャフト30にも固定されていることが好ましい。例えば、汚泥引抜管72とシャフト30とを結束部77にて固定させることができる(図2B及び図3参照)。シャフト30と連動する汚泥引抜管72の回転をより安定させる観点から、結束部77は、汚泥引抜管72及びシャフト30の長手方向(軸方向)における複数箇所に設けることができる。汚泥引抜管72及びシャフト30の長手方向(軸方向)における結束部77間の間隔(固定間隔)は、0.5~1.5mであることがより好ましく、0.8~1.2mであることがさらに好ましい。
【0044】
汚泥引抜管72の数は、1本でもよいし、2本以上の複数でもよい。好ましくは、汚泥引抜管72は排泥槽74に複数本固定されており、複数の汚泥引抜管72のそれぞれは、シャフト30の周囲に設けられている。この場合、汚泥引抜管72の数は、2~6本であることが好ましく、2~4本であることがより好ましい。また、複数の汚泥引抜管72のそれぞれは、シャフト30の周囲に、周方向に等間隔で設けられていることがさらに好ましい。図1図4では、2本の汚泥引抜管72がシャフト30の周囲に周方向に等間隔で設けられている構成が示されている。
【0045】
前述の通り、沈殿槽20の底部20aの中央付近に窪みで形成された集泥ピット20bが設けられている場合、汚泥引抜管72は、その下端が集泥ピット20bの近傍に達して設けられていることが好ましい。沈殿槽20の底部20aにある集泥ピット20bに沈殿汚泥Sが集められることにより、その集泥ピット20bに達する汚泥引抜管72によって沈殿汚泥Sを効率よく引き抜くことができる。汚泥引抜管72の下端と、その下端直下の沈殿槽20の底面との間隔は、0.2~0.6mであることが好ましく、0.2~0.5mであることがより好ましい。
【0046】
汚泥引抜管72の内径は、沈殿槽20の規模、移送する汚泥の流量、及び管内流速などに応じて、適宜決めることができる。管内流速は、0.4~1.5m/秒が好ましく、0.6~1.0m/秒がより好ましい。また、汚泥引抜管72の長さは、沈殿槽20の深さに応じて決めることができ、沈殿槽20の底部20a近くまで達する程度とすることができる。汚泥引抜管72の材質としては、従来から水配管に用いられている材質をいずれも用いることができ、例えば、配管用炭素鋼鋼管(SGP管)、水配管用亜鉛めっき鋼管(SGPW管)、配管用ステンレス鋼管(TP管、TPS管)、硬質ポリ塩化ビニル管(VP管、VU管、HIVP管)、及びポリエチレン管(PE管)などを挙げることができる。
【0047】
汚泥引抜ポンプサクション管76は、汚泥引抜管72に引き上げられて排泥槽74に貯留された沈殿汚泥Sを排出するポンプの吸込み配管であり、ポンプに連結されている。排泥槽74内の沈殿汚泥Sをポンプにより吸引して、サクション管76を介して槽外に排出することができる。
【0048】
サクション管76の内径は、沈殿槽20の規模、及び移送する汚泥の流量などに応じて、適宜決めることができる。また、サクション管76の材質としては、汚泥引抜管72の材質と同様のものを挙げることができる。
【0049】
汚泥引抜管72による沈殿汚泥Sの引き抜きと、ポンプ及びサクション管76による沈殿汚泥Sの吸い込みの観点から、沈殿装置10による処理対象の廃水は、比重が比較的小さいものが好ましい。本発明者が行った予備的な実験による知見から、本実施形態の汚泥引抜ユニット70及び沈殿装置10に適用される廃水の比重は、1.1以下であることが好ましく、1.0~1.1であることがさらに好ましい。また、汚泥を含有し、かつ、比重が比較的小さい好適な廃水としては、例えば、活性汚泥を用いた生物処理により生じた、活性汚泥を含有する廃水を挙げることができる。
【0050】
以上詳述した本実施形態の汚泥引抜ユニット70は、沈殿装置10におけるシャフト30の上部に取り付けられる排泥槽74と、排泥槽74に固定される非埋設型の管である汚泥引抜管72を備える。この汚泥引抜管72は、シャフト30に平行に設けられて、沈殿槽20の底部20aにある沈殿汚泥Sを上向きに引き抜き可能に構成されている。そして、この汚泥引抜ユニット70では、汚泥引抜管72と、ポンプに接続されたサクション管76とを直接繋げずに、シャフト30に設けられた排泥槽74を経由して、排泥槽74からサクション管76を介してポンプで沈殿汚泥Sを槽外に排出する機構に構成されている。
【0051】
そのため、汚泥引抜ユニット70は、躯体2bの斫り工事などを特段必要とすることなく、短期間での取り付け施工が可能であり、かつ、汚泥引抜管72の洗浄、点検、修理、交換、整備、及び保守などのメンテナンスを行いやすいという利点がある。したがって、水処理設備における沈殿槽20を新設する場において、汚泥引抜ユニット70を提供することで、メンテナンスを行いやすく、それにより、閉塞や腐食が生じ難い汚泥引抜管72を設けることができる。また、従来の汚泥引抜管7が躯体2bに埋設された既存の沈殿槽2において、汚泥引抜管7の管内での閉塞や腐食の問題が生じた場合やその問題を生じ難くする場合に、大規模な躯体の工事や既存設備の改造を要せずに、汚泥引抜ユニット70を設置することができる。また、本実施形態の沈殿装置10では、汚泥引抜ユニット70によって沈殿槽20の上部で沈殿汚泥Sの引抜を行えることから、設備のコンパクト化につながり、また、配管腐食などによる漏水の懸念が抑えられる。
【0052】
本発明の一実施形態の汚泥引抜ユニット及び沈殿装置は、以上に述べた構成を適宜組み合わることができ、例えば、以下の構成を採ることが可能である。
[1]沈殿槽の内部に前記沈殿槽の上方から底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、前記沈殿槽の内部において前記シャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、前記シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機とを備える沈殿装置に対して、前記沈殿槽に流入する廃水中の汚泥が前記沈殿槽の前記底部に沈殿した沈殿汚泥を槽外に排出するために取り付けられる汚泥引抜ユニットであって、
前記センターウェルの内側において前記シャフトの上部に取り付けられる排泥槽と、
前記排泥槽に固定されて、前記排泥槽から前記沈殿槽の前記底部まで延びて前記シャフトに平行に設けられ、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を上向きに引き抜いて前記排泥槽に移送する汚泥引抜管と、
前記排泥槽に移送された前記沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管とを備える、汚泥引抜ユニット。
[2]前記排泥槽は、前記シャフトを中心軸とした環状の槽で前記シャフトの前記上部に固定されて、前記排泥槽及び前記汚泥引抜管が前記シャフトの回転と連動して回転可能に取り付けられる上記[1]に記載の汚泥引抜ユニット。
[3]前記汚泥引抜管は、前記排泥槽内の水位が、前記沈殿槽内における前記排泥槽の外側の水位よりも低い水位差によって、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を引き上げて前記排泥槽に移送する上記[1]又は[2]に記載の汚泥引抜ユニット。
[4]前記汚泥引抜管は、前記排泥槽に複数本固定され、複数の前記汚泥引抜管のそれぞれは、前記シャフトの周囲に配置される上記[1]~[3]のいずれかに記載の汚泥引抜ユニット。
[5]前記沈殿槽の前記底部の中央付近に窪みで形成された集泥ピットが設けられており、
前記汚泥引抜管は、その下端が前記集泥ピットに達して設けられる上記[1]~[4]のいずれかに記載の汚泥引抜ユニット。
[6]前記廃水は、活性汚泥を用いた生物処理で生じた廃水である上記[1]~[5]のいずれかに記載の汚泥引抜ユニット。
[7]沈殿槽に流入する廃水中の汚泥を前記沈殿槽の底部に沈殿させ、沈殿汚泥を槽外に排出する沈殿装置であって、
前記沈殿槽の内部に、前記沈殿槽の上方から前記底部まで延びる垂直方向の軸線をもって回転駆動されるシャフトと、
前記沈殿槽の内部において前記シャフトの周囲に間隔をおいて設けられたセンターウェルと、
前記シャフトの下部に設けられた掻き寄せ機と、
前記沈殿汚泥を引き抜いて前記槽外に排出するための汚泥引抜ユニットと、を備え、
前記汚泥引抜ユニットは、
前記センターウェルの内側において前記シャフトの上部に設けられた排泥槽と、
前記排泥槽に固定されて、前記排泥槽から前記沈殿槽の前記底部まで延びて前記シャフトに平行に設けられ、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を上向きに引き抜いて前記排泥槽に移送する汚泥引抜管と、
前記排泥槽に移送された前記沈殿汚泥をポンプにより槽外に排出する汚泥引抜ポンプサクション管と、を備える沈殿装置。
[8]前記排泥槽は、前記シャフトを中心軸とした環状の槽で前記シャフトの前記上部に固定されており、
前記排泥槽及び前記汚泥引抜管は、前記シャフトの回転と連動して回転する上記[7]に記載の沈殿装置。
[9]前記汚泥引抜管は、前記排泥槽内の水位が、前記沈殿槽内における前記排泥槽の外側の水位よりも低い水位差によって、前記沈殿槽の前記底部から前記沈殿汚泥を引き上げて前記排泥槽に移送する上記[7]又は[8]に記載の沈殿装置。
[10]前記汚泥引抜管は、前記排泥槽に複数本固定されており、複数の前記汚泥引抜管のそれぞれは、前記シャフトの周囲に設けられている上記[7]~[9]のいずれかに記載の沈殿装置。
[11]前記沈殿槽の前記底部の中央付近に窪みで形成された集泥ピットを備えており、
前記汚泥引抜管は、その下端が前記集泥ピットに達して設けられている上記[7]~[10]のいずれかに記載の沈殿装置。
[12]前記廃水は、活性汚泥を用いた生物処理で生じた廃水である上記[7]~[11]のいずれかに記載の沈殿装置。
【実施例0053】
以下、模擬的な試験例を挙げて説明するが、本発明は、以下の試験例に限定されない。
【0054】
<模擬試験装置の準備>
図5に、本試験例で使用した模擬試験装置A10の概略構成を示す。模擬試験装置A10は、沈殿槽と兼用させたセンターウェルと、その内部に設けた排泥層とを模した装置である。模擬試験装置A10には、模擬的に沈殿槽とセンターウェルを兼用させた円筒水槽A40(内径2.5m、高さ5.0mの有底円筒型の水槽)と、円筒水槽A40に模擬廃水としての水と汚泥との混合液(汚泥混合液)を送るための混合槽A61(円筒水槽A40の保有水量2/3程度の有底円筒型の水槽)と、排泥槽に見立てたタンクA74(内径2.0m、高さ1.0mの有底円筒型のタンク)を用いた。また、シャフトA30を回転駆動させる駆動装置M(1回転30分程度の能力を有する減速機)と、汚泥を吸引するためのポンプP(0.5m/分の能力を有するポンプ)と、各種配管とを用いた。
【0055】
そして、各種配管を用いて、円筒水槽A40、タンクA74、混合槽A61、駆動装置M、及びポンプPを図5に示すように接続し、模擬試験装置A10を作製した。具体的には、混合槽A61に、模擬廃水を調製するための希釈水を流入させる配管A62(呼び径150A)を設置した。混合槽A61の底部には流入配管A60(呼び径200A)を設け、模擬廃水が混合槽A61から流入配管A60を通って円筒水槽A40に流入するように、流入配管A60を円筒水槽A40の側部に接続した。
【0056】
一方、タンクA74の中心軸の位置に、シャフトA30(長さ約5.5m、呼び径150AのSGP管)をタンクA74の底部に貫通させた状態で固定して取り付けた。また、タンクA74の底部の中心から離れた位置に、2本の汚泥引抜管A72(長さ3.5m、呼び径200AのVP管)を取り付け、タンクA74内と汚泥引抜管A72とを連通させた。汚泥引抜管A72とシャフトA30とは、結束バンド77にて結束させた。そして、シャフトA30及び汚泥引抜管A72を取り付けたタンクA74を、円筒水槽A40の内部に、円筒水槽A40と同心、かつ、上端部が円筒水槽A40の上端部と同程度の高さ位置となるように、また、汚泥引抜管A72の下端が円筒水槽A40の底面から0.5mの位置となるように、設置した。その後、シャフトA30の上端に駆動装置Mを取り付けた。
【0057】
さらに、円筒水槽A40の上部の側部に、沈殿汚泥Sとは分離処理された上澄水(処理水)を排水するための配管A64(呼び径200A)を接続した。また、タンクA74から汚泥を吸引するためのサクション管A76(呼び径150A)を設置し、サクション管A76にポンプPを接続した。サクション管A76及びポンプPを通じて吸引された汚泥は、ポンプPから配管A63(呼び径150A)を通じて混合槽A61に返送し、汚泥を循環使用するように構成した。
【0058】
以上の模擬試験装置A10を用いて、汚泥を含有する模擬廃水を流入配管A60から円筒水槽A40に流入させ、タンクA74内の液を、サクション管A76を通じてポンプPで引き抜くことで、タンクA74内と円筒水槽A40内との水位差による汚泥の引き抜きが可能か否か確認する試験を行った。なお、汚泥の循環を行うと汚泥の濃度が上昇するため、配管A64からの排水量に応じて混合槽A61に配管A62から希釈水を追加し、汚泥濃度を一定に保って試験を行った。
【0059】
はじめに、活性汚泥(MLSS=5,000mg/L)を用意し、活性汚泥と水を混合した汚泥混合液を25m用意した。ポンプPを作動させて模擬試験装置A10を稼働させ、混合槽A61から、汚泥混合液を流速0.5m/秒で3時間通水した。通水開始から1時間後から30分毎の引き抜き汚泥の性状を確認し、評価した。引き抜き汚泥の性状の確認は、配管A63に設けたサンプルコックA65から汚泥含有液を採取し、採取した汚泥含有液について、JIS K0102の規定に準じて、懸濁物質の濃度(MLSS)を測定することにより行った。その結果、MLSS濃度は、1.0時間後で8,500mg/L、1.5時間後で9,300mg/L、2.0時間後で9,900mg/L、2.5時間後で10,000mg/L、3.0時間後で10,000mg/Lであった。
【0060】
例えば、処理水量1Qm/日、返送汚泥水量1Qm/日とすると、円筒水槽A40の流入水量は2Qm/日となる。流入水のMLSS(kg/日)より、返送汚泥のMLSS(kg/日)を求めると、Q×MLSS=2Q×MLSS、MLSS=2MLSS(円筒水槽A40からの汚泥流出は0と仮定する)となる。上記より、流入水MLSSの2倍程度の汚泥が返送できていれば、性状問題なしと判断できる。試験の結果、通水開始から2時間後より、MLSS濃度が10,000mg/L程度の汚泥を引き抜けたため、問題なく、沈殿汚泥Sを引き抜けたことが確認された。
【符号の説明】
【0061】
10 沈殿装置
20 沈殿槽
30 シャフト
40 センターウェル
50 掻き寄せ機
60 流入管
70 汚泥引抜ユニット
72 汚泥引抜管
74 排泥槽
76 汚泥引抜ポンプサクション管
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6