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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184236
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231221BHJP
   G06F 8/65 20180101ALI20231221BHJP
【FI】
G05D1/02 P
G06F8/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098275
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰
(72)【発明者】
【氏名】西川 智晶
(72)【発明者】
【氏名】川波 絢佳
(72)【発明者】
【氏名】位田 章太
【テーマコード(参考)】
5B376
5H301
【Fターム(参考)】
5B376CA15
5B376CA27
5H301AA02
5H301BB05
5H301DD07
5H301EE02
5H301EE17
5H301KK02
5H301KK04
5H301KK08
5H301KK12
5H301KK13
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL12
(57)【要約】
【課題】物品の搬送効率を低下させないようにしつつ、区間制御装置のソフトウェアの更新を実行する。
【解決手段】更新処理部1は、複数の区間制御装置2のうち、更新対象の区間制御装置2である対象制御装置2に対して、区間制御ソフトウェアの更新用データを配信し、更新用データを受信した対象制御装置2は、更新用データを用いて区間制御ソフトウェアを更新するソフトウェア更新を実行する。上位制御装置10は、対象制御装置2によるソフトウェア更新の実行中、対象制御装置2に代わって、当該対象制御装置2に対応する特定区間を走行する搬送車を制御する代替制御を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する経路であって、当該経路の分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を複数備えた走行経路と、
複数の前記特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、
前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
複数の前記区間制御装置のそれぞれが、当該区間制御装置にインストールされた区間制御ソフトウェアに従って動作するように構成された物品搬送設備であって、
前記区間制御ソフトウェアの更新処理手順を実行する更新処理部を備え、
前記更新処理部は、複数の前記区間制御装置のうち、更新対象の前記区間制御装置である対象制御装置に対して、前記区間制御ソフトウェアの更新用データを配信し、
前記更新用データを受信した前記対象制御装置は、前記更新用データを用いて前記区間制御ソフトウェアを更新するソフトウェア更新を実行し、
前記上位制御装置は、前記ソフトウェア更新の実行中、前記対象制御装置に代わって、当該対象制御装置に対応する前記特定区間を走行する前記搬送車を制御する代替制御を実行する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記更新処理部は、複数の前記区間制御装置を同時期に前記対象制御装置として設定して各対象制御装置に前記更新用データの配信を行う、複数配信を実行可能であり、
前記複数配信が実行された場合には、前記更新用データを受信した複数の前記対象制御装置のそれぞれが前記ソフトウェア更新を実行すると共に、前記上位制御装置が前記ソフトウェア更新を実行している複数の前記対象制御装置に関する前記代替制御を実行する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記区間制御装置は、前記搬送車の制御を行う通常モードと、前記搬送車の制御を行わず前記ソフトウェア更新のための処理を行う更新モードと、にモード移行可能に構成され、
前記対象制御装置は、前記更新モードにおいて前記ソフトウェア更新が完了した場合には前記上位制御装置へ更新完了通知を送信し、
前記上位制御装置は、前記対象制御装置が前記更新モードになったことを条件として前記代替制御を開始し、前記対象制御装置から前記更新完了通知を受信した場合には当該対象制御装置に対して前記更新モードから前記通常モードへ移行させる移行指令を送信し、前記対象制御装置が前記通常モードになったことを条件として前記代替制御を終了する、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記区間制御ソフトウェアを構成する複数の既存ファイルのそれぞれが、既存バージョン情報を有しており、
前記更新処理部は、前記更新用データを構成する複数のファイルのそれぞれのバージョン情報と、前記対象制御装置の前記区間制御ソフトウェアを構成する複数の前記既存ファイルのそれぞれの前記既存バージョン情報とを比較し、バージョンが異なる同一種類のファイル、及び、前記更新用データを構成する複数の前記ファイルのうち前記既存ファイルに存在しない前記ファイルをまとめたデータを、前記対象制御装置に配信するための前記更新用データとして生成する、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記更新処理部は、前記上位制御装置と、当該上位制御装置と通信可能に接続された更新制御端末と、を含み、
前記更新処理手順の実行の有無の決定、前記対象制御装置の決定、及び、前記対象制御装置への前記更新用データの配信が、前記更新制御端末により行われ、
前記対象制御装置に対する通信及び指令が、前記上位制御装置により行われる、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する搬送車と、複数の特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開第2006-313462号公報(特許文献1)には、搬送台車システムにおいて搬送経路のマップデータを更新するための技術が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に開示された搬送台車システムは、処理対象物を搬送する複数の台車(1)と、台車(1)が移動する搬送経路(2)と、搬送経路(2)の所定領域内にある台車(1)を制御する複数のゾーンコントローラ(3)と、全てのゾーンコントローラ(3)を制御する統合コンピュータ(7)と、を備えている。統合コンピュータ(7)は、更新用のマップデータをゾーンコントローラ(3)に送信する。ゾーンコントローラ(3)は、統合コンピュータ(7)から受け取った更新用のマップデータを、自らが管理する所定領域内にある台車(1)に対して送信する。
【0004】
特許文献1に開示された搬送台車システムは、マップデータの更新を行う台車(1)については他の台車(1)の走行の妨げとならない場所で停止させ、マップデータの更新を行わない台車(1)については通常の搬送作業を継続させる。これにより、同システムでは、システム全体として物品の搬送作業を中断させることなく、各台車(1)に新たなマップデータを更新させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2006-313462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような技術分野では、搬送車の走行経路に、経路が分岐する分岐箇所や経路が合流する合流箇所などが設けられることがある。そして、このような分岐箇所や合流箇所が設けられた特定区間には、区間制御装置が設けられることがある。区間制御装置は、特定区間を走行する搬送車を制御するように構成され、特定区間において複数の搬送車が互いに干渉することの無く円滑に走行できるようにする。区間制御装置による制御は、予めインストールされたソフトウェアに従って行われることが多いが、ソフトウェアの修正やアップデートを行う場合などには、区間制御装置にソフトウェアを更新する必要が生じ得る。しかしながら、当該ソフトウェアの更新中は、通常、区間制御装置による搬送車の制御を行うことはできない。そのため、区間制御装置のソフトウェアの更新中、搬送車を停止させたり特定区間を迂回させたりする必要が生じるなど、物品の搬送効率が低下する場合があった。
【0007】
上記実状に鑑みて、物品の搬送効率を低下させないようにしつつ、区間制御装置のソフトウェアの更新を実行することが可能な技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する経路であって、当該経路の分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を複数備えた走行経路と、
複数の前記特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、
前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
複数の前記区間制御装置のそれぞれが、当該区間制御装置にインストールされた区間制御ソフトウェアに従って動作するように構成された物品搬送設備であって、
前記区間制御ソフトウェアの更新処理手順を実行する更新処理部を備え、
前記更新処理部は、複数の前記区間制御装置のうち、更新対象の前記区間制御装置である対象制御装置に対して、前記区間制御ソフトウェアの更新用データを配信し、
前記更新用データを受信した前記対象制御装置は、前記更新用データを用いて前記区間制御ソフトウェアを更新するソフトウェア更新を実行し、
前記上位制御装置は、前記ソフトウェア更新の実行中、前記対象制御装置に代わって、当該対象制御装置に対応する前記特定区間を走行する前記搬送車を制御する代替制御を実行する。
【0009】
本構成によれば、対象制御装置による区間制御ソフトウェアの更新中に、上位制御装置が当該対象制御装置に代わって特定区間を走行する搬送車の制御を行う。従って、区間制御装置によるソフトウェア更新を実行しつつ、特定区間における搬送車の制御を適切に行うことが可能となる。また、区間制御装置がソフトウェア更新を実行中であっても特定区間における搬送車の走行を継続させることができるため、設備全体として物品の搬送効率を低下させないようにできる。
【0010】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】制御ブロック図
図3】特定区間を走行する搬送車の制御を示す図
図4】フローチャート
図5】更新用データの生成及びバックアップデータの生成についての説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、物品搬送設備の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、物品搬送設備100は、物品を搬送する搬送車Vと、搬送車Vが走行する経路であって、当該経路の分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間Sを複数備えた走行経路Rと、複数の特定区間Sのそれぞれに対応して設けられ、特定区間Sを走行する搬送車Vの制御を行う区間制御装置2と、搬送車V及び複数の区間制御装置2を制御する上位制御装置10と、を備えている。
【0014】
物品搬送設備100は、複数の搬送車Vを備えている。各搬送車Vは、走行経路Rに沿って走行して各所に物品を搬送するように構成されている。搬送車Vとしては、床面に沿って走行する無人搬送車や、天井付近を走行する天井搬送車などを例示することができる。
【0015】
物品搬送設備100で取り扱われる物品としては、様々なものがある。例えば、物品搬送設備100が半導体製造工場に用いられる場合には、ウェハを収容するウェハ収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)などが、物品とされる。この場合、搬送車Vは、ウェハ収容容器やレチクル収容容器などの物品を、走行経路Rに沿って各工程間に亘って搬送する。
【0016】
走行経路Rは、直線経路及び曲線経路を含むと共に、複数の経路が交差する交差部を含む。交差部は、1つの経路が複数の経路に分岐する分岐箇所と、複数の経路が合流する合流箇所と、を含む。上述のように、特定区間Sは、このような分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む。特定区間Sは、1つ以上の分岐箇所、1つ以上の合流箇所、又は、それらの組み合わせを含む。図1に示す例では、特定区間Sは、走行経路Rにおける、複数の分岐箇所および複数の合流箇所を含む範囲に設定されている。特定区間Sの範囲は、任意に定めることができる。
【0017】
上位制御装置10は、複数の搬送車Vおよび複数の区間制御装置2を制御するように構成されている。例えば、上位制御装置10は、各搬送車Vに対して、物品の搬送元と搬送先とを指定した搬送指令を行うように構成されている。上位制御装置10は、各搬送車Vと通信可能に構成されており、各搬送車Vの現在位置を把握可能となっている。また、上位制御装置10は、各区間制御装置2と通信可能に構成されており、各区間制御装置2から各特定区間Sに関する状況報告(交通状況などの報告)を受けることにより、各特定区間Sの状況を把握可能となっている。
【0018】
各区間制御装置2は、自らが担当する特定区間Sにおいて、当該特定区間Sを走行する搬送車Vの制御を行うように構成されている。具体的には、区間制御装置2は、自らが担当する特定区間Sにおいて複数の搬送車Vを互いに干渉しないように走行させる。例えば図3は、分岐箇所と合流箇所とを含む特定区間Sにおいて、当該特定区間Sを2台の搬送車V(一方を第1搬送車V1、他方を第2搬送車V2とする。)が走行している状態を示している。区間制御装置2は、第1搬送車V1と第2搬送車V2とが同一の合流箇所を通過する予定である場合に、両者を異なるタイミングで通過させる。図3に示す例では、区間制御装置2は、第1搬送車V1を先に合流箇所を通過させ、第2搬送車V2を減速或いは停止させるなどして第1搬送車V1よりも後に合流箇所を通過させるように、両者の走行を制御する。
【0019】
複数の区間制御装置2のそれぞれが、当該区間制御装置2にインストールされた区間制御ソフトウェアに従って動作するように構成されている。これにより、区間制御装置2は、自らが担当する特定区間Sにおける搬送車Vの制御を実現する。
【0020】
上位制御装置10及び区間制御装置2は、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各処理または各機能が実現される。
【0021】
図2に示すように、物品搬送設備100は、区間制御ソフトウェアの更新処理手順を実行する更新処理部1を備えている。本実施形態では、更新処理部1は、上位制御装置10と、当該上位制御装置10と通信可能に接続された更新制御端末11と、を含む。更新処理部1は、上位制御装置10及び更新制御端末11以外のハードウェアやソフトウェアを含んで構成されていてもよい。本例では、物品搬送設備100は、更新処理部1と区間制御装置2とのデータの送受信を中継する中継装置3(例えば、ファイル転送サーバ)を更に備えている。
【0022】
更新制御端末11は、作業者Wによって操作される操作部と、各種情報を表示する表示部を備えている。例えば、作業者Wによって更新制御端末11に入力された情報は、上位制御装置10に送信される。また、上位制御装置10から受信された情報は、更新制御端末11の表示部に表示される。
【0023】
本実施形態では、更新処理部1は、複数の区間制御装置2のうち、更新対象の区間制御装置2である対象制御装置2に対して、区間制御ソフトウェアの更新用データDuを配信する。本例では、更新制御端末11が、作業者Wの操作によって、更新用データDuを中継装置3に送信する。中継装置3は、更新制御端末11から受信した更新用データDuを記憶する。そして、区間制御装置2は、必要に応じて、中継装置3から更新用データDuを取得する。本例では、このようにして、更新制御端末11が、中継装置3を介して区間制御装置2に更新用データDuを配信する。但し、このような構成に限定されることなく、更新制御端末11は、区間制御装置2に対して直接的に更新用データDuを配信してもよい。或いは、更新制御端末11は、上位制御装置10を介することにより、区間制御装置2に対して間接的に更新用データDuを配信してもよい。
【0024】
更新用データDuを受信した対象制御装置2は、更新用データDuを用いて区間制御ソフトウェアを更新するソフトウェア更新を実行する。これにより、ソフトウェアの更新前に各区間制御装置2が用いていた既存の区間制御ソフトウェアが、アップデートされる。例えば、設備のレイアウト変更や設備運用の変更などに応じて、区間制御ソフトウェアが更新され得る。
【0025】
本実施形態では、更新処理手順の実行の有無の決定、対象制御装置2の決定、及び、対象制御装置2への更新用データDuの配信が、更新制御端末11により行われる。そして、対象制御装置2に対する通信及び指令(制御指令等)が、上位制御装置10により行われる。
【0026】
以上のようにして、区間制御装置2において区間制御ソフトウェアの更新が行われる。しかし、区間制御装置2は、ソフトウェア更新を実行中は、自らが担当する特定区間Sにおいて搬送車Vの制御をすることはできない。
【0027】
そこで、本開示に係る物品搬送設備100では、上位制御装置10は、対象制御装置2(区間制御装置2)によるソフトウェア更新の実行中、対象制御装置2に代わって、当該対象制御装置2に対応する特定区間Sを走行する搬送車Vを制御する代替制御を実行する。これにより、区間制御装置2によるソフトウェア更新を実行しつつ、特定区間Sにおける搬送車Vの制御を適切に行うことが可能となる。また、区間制御装置2がソフトウェア更新を実行中であっても特定区間Sにおける搬送車Vの走行を継続させることができるため、設備全体として物品の搬送効率を低下させないようにできる。
【0028】
図2に示すように、本実施形態では、更新処理部1は、複数の区間制御装置2を同時期に対象制御装置2として設定して各対象制御装置2に更新用データDuの配信を行う、複数配信を実行可能に構成されている。本例では、更新制御端末11が、中継装置3を介して、複数配信を実行するように構成されている。複数配信が実行された場合には、更新用データDuを受信した複数の対象制御装置2(区間制御装置2)のそれぞれがソフトウェア更新を実行すると共に、上位制御装置10がソフトウェア更新を実行している複数の対象制御装置2に関する代替制御を実行する。これにより、複数の区間制御装置2の区間制御ソフトウェアを同時並行して更新することができる。従って、設備全体として、比較的短時間で区間制御ソフトウェアの更新を行うことができる。
【0029】
図4に示すように、本実施形態では、区間制御装置2は、搬送車Vの制御を行う通常モードと、搬送車Vの制御を行わずソフトウェア更新のための処理を行う更新モードと、にモード移行可能に構成されている。上位制御装置10は、対象制御装置2が更新モードの状態で、当該対象制御装置2が担当する特定区間Sにおいて代替制御を実行する。本例では、上位制御装置10は、対象制御装置2が通常モードから更新モードに移行するのと同時に代替制御を開始し、当該対象制御装置2が更新モードから通常モードに移行するのと同時に代替制御を終了する。換言すれば、上位制御装置10が代替制御を実行する期間と、区間制御装置2が通常モードの状態である期間とが連続するように、上位制御装置10は代替制御を実行する。これにより、特定区間Sにおいて搬送車Vの制御が行われない空白の期間が生ずることを回避することができる。
【0030】
次に、図4を参照して制御の流れについて説明する。図4における縦軸が時間軸である。
【0031】
図4に示すように、更新制御端末11は、上位制御装置10に対して、ソフトウェア更新の対象となる区間制御装置2(すなわち対象制御装置2)を設定するように要求する(ステップ#1)。これと同時に、図示の例では、更新制御端末11は、対象制御装置2に配信する更新用データDuを、中継装置3に対して送信する。但し、中継装置3に対する更新用データDuの送信は、予め行われていてもよい。例えば、対象制御装置2は、作業者W等により決定される。更新制御端末11は、作業者Wにより入力された対象制御装置2の識別情報を上位制御装置10に送信する。
【0032】
上位制御装置10は、更新制御端末11により要求された区間制御装置2を対象制御装置2として設定する(ステップ#2)。例えば、上位制御装置10は、更新制御端末11から受信した区間制御装置2の識別情報に基づいて、複数の区間制御装置2の中から対象制御装置2を設定する。
【0033】
上位制御装置10は、対象制御装置2に対して、通常モードから更新モードへ移行させる移行指令を送信する(ステップ#3)。この移行指令には、更新用データDuを取得させるデータ取得指令が含まれる。後述もするが、本例では、対象制御装置2は、中継装置3から更新用データDuを取得する。
【0034】
対象制御装置2は、通常モードから更新モードへ移行させる移行指令を上位制御装置10から受信した場合には、通常モードから更新モードへモード移行する(ステップ#4)。また、対象制御装置2は、上位制御装置10からのデータ取得指令に応じて、中継装置3から更新用データDuを取得する。更新用データDuの取得は、ソフトウェア更新の実行前(図示の例では、モード移行の実行後であってソフトウェア更新の実行前)に行われる。本実施形態では、対象制御装置2は、通常モードから更新モードへのモード移行と同時に、又は通常モードから更新モードへモード移行した上で、上位制御装置10に対して移行完了通知を送信する(ステップ#5)。そして、上位制御装置10は、対象制御装置2から移行完了通知を受け取るのと同時に、代替制御を開始する(ステップ#6)。すなわち本実施形態では、上位制御装置10は、対象制御装置2が更新モードになったことを条件として代替制御を開始する。
【0035】
本実施形態では、対象制御装置2は、通常モードから更新モードへモード移行した後、更新用データDuに基づいて自動的にソフトウェア更新を実行する(ステップ#7)。
【0036】
対象制御装置2は、更新モードにおいてソフトウェア更新が完了した場合には上位制御装置10へ更新完了通知を送信する(ステップ#8)。本実施形態では、対象制御装置2は、上位制御装置10へ更新完了通知を送信した後であって、更新モードから通常モードへ移行させる移行指令を上位制御装置10から受信するまでの間は、更新モードを継続する。そして、対象制御装置2が更新モードを継続している間は、上位制御装置10は代替制御を継続する。
【0037】
上位制御装置10は、対象制御装置2から更新完了通知を受信した場合には当該対象制御装置2に対して更新モードから通常モードへ移行させる移行指令を送信する(ステップ#9)。
【0038】
対象制御装置2は、更新モードから通常モードへ移行させる移行指令を上位制御装置10から受信した場合には、更新モードから通常モードへモード移行する(ステップ#10)。本実施形態では、対象制御装置2は、更新モードから通常モードへのモード移行と同時に、又は通常モードから更新モードへモード移行した上で、上位制御装置10に対して移行完了通知を送信する(ステップ#11)。そして、上位制御装置10は、対象制御装置2から移行完了通知を受け取るのと同時に、代替制御を終了する(ステップ#12)。すなわち本実施形態では、上位制御装置10は、対象制御装置2が通常モードになったことを条件として代替制御を終了する。
【0039】
次に、図5を参照して、更新用データDuの生成について説明する。図5はデータのイメージ図である。
【0040】
図5に示すように、本実施形態では、区間制御ソフトウェアを構成する複数の既存ファイルFeのそれぞれが、既存バージョン情報Ieを有している。
【0041】
また、本実施形態では、更新用データDuを構成する複数のファイルFのそれぞれが、バージョン情報Iを有している。
【0042】
本実施形態では、更新処理部1(図2等参照)は、更新用データDuを構成する複数のファイルFのそれぞれのバージョン情報Iと、対象制御装置2の区間制御ソフトウェア(以下、「既存データDe」と称する。)を構成する複数の既存ファイルFeのそれぞれの既存バージョン情報Ieとを比較し、バージョンが異なる同一種類のファイルF、及び、更新用データDuを構成する複数のファイルFのうち既存ファイルFeに存在しないファイルFをまとめたデータを、対象制御装置2に配信するための更新用データDu(図5において白抜き矢印の先に示された更新用データDu)として生成する。換言すれば、更新用データDuにおける既存データDeと異なる部分のみが、対象制御装置2に配信するための更新用データDuとして生成される。これにより、対象制御装置2に配信する更新用データDuのデータ量を小さく抑え易く、更新処理部1と区間制御装置2(対象制御装置2)との間で行われる通信量を少なく抑えることができる。なお、本実施形態では、対象制御装置2に配信するための更新用データDuの生成は、更新制御端末11によって行われるが、上位制御装置10によって行われてもよい。或いは、更新制御端末11と上位制御装置10との協働によってそれが行われてもよい。
【0043】
本実施形態では、更新処理部1は、対象制御装置2の区間制御ソフトウェア(既存データDe)を構成する複数の既存ファイルFeのそれぞれの既存バージョン情報Ieと、更新用データDuを構成する複数のファイルFのそれぞれのバージョン情報Iとを比較し、バージョンが異なる同一種類の既存ファイルFe、及び、複数の既存ファイルFeのうち更新用データDuのファイルFに存在しない既存ファイルFeをまとめたデータ(図5において白抜き矢印の先に示された既存データDe)を、バックアップデータとして生成する。換言すれば、既存データDeにおける更新用データDuと異なる部分のみが、バックアップデータとして生成される。このように生成されたバックアップデータは、更新処理部1の記憶部に記憶される。これにより、対象制御装置2から受信するバックアップデータのデータ量を小さく抑え易く、更新処理部1の記憶部の容量を少なく抑えることができる。例えば、対象制御装置2がソフトウェア更新に失敗した場合には、上記バックアップデータに基づいて原状回復のための処理を行うことができる。なお、既存データDeにおける全ての既存ファイルFeをバックアップデータとして生成してもよい。
【0044】
以上説明した物品搬送設備100によれば、物品の搬送効率を低下させないようにしつつ、区間制御装置2のソフトウェアの更新を適切に実行することができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0046】
(1)上記の実施形態では、更新処理部1が、上位制御装置10と、当該上位制御装置10と通信可能に接続された更新制御端末11と、を含む例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、上位制御装置10及び更新制御端末11の何れか一方のみによって、更新処理部1が構成されていてもよい。
【0047】
(2)上記の実施形態では、更新処理手順の実行の有無の決定、対象制御装置2の決定、及び、対象制御装置2への更新用データDuの配信が、更新制御端末11により行われる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、更新処理手順の実行の有無の決定、対象制御装置2の決定、及び、対象制御装置2への更新用データDuの配信のうち全部または一部が、上位制御装置10により行われてもよい。
【0048】
(3)上記の実施形態では、対象制御装置2は、通常モードから更新モードへモード移行した後、更新用データDuに基づいて自動的にソフトウェア更新を実行する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、対象制御装置2は、通常モードから更新モードへモード移行した後、上位制御装置10又は更新制御端末11からの指示によってソフトウェア更新を実行してもよい。
【0049】
(4)上記の実施形態では、更新用データDuにおける既存データDeと異なる部分のみが、対象制御装置2に配信するための更新用データDuとして生成される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、更新用データDuの全部が、対象制御装置2に配信するための更新用データDuとして生成されてもよい。
【0050】
(5)上記の実施形態では、既存データDeにおける更新用データDuと異なる部分のみが、バックアップデータとして生成される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、既存データDeの全部が、バックアップデータとして生成されてもよい。
【0051】
(6)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0052】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0053】
物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車が走行する経路であって、当該経路の分岐箇所及び合流箇所の少なくとも一方を含む特定区間を複数備えた走行経路と、
複数の前記特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、
前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備え、
複数の前記区間制御装置のそれぞれが、当該区間制御装置にインストールされた区間制御ソフトウェアに従って動作するように構成された物品搬送設備であって、
前記区間制御ソフトウェアの更新処理手順を実行する更新処理部を備え、
前記更新処理部は、複数の前記区間制御装置のうち、更新対象の前記区間制御装置である対象制御装置に対して、前記区間制御ソフトウェアの更新用データを配信し、
前記更新用データを受信した前記対象制御装置は、前記更新用データを用いて前記区間制御ソフトウェアを更新するソフトウェア更新を実行し、
前記上位制御装置は、前記ソフトウェア更新の実行中、前記対象制御装置に代わって、当該対象制御装置に対応する前記特定区間を走行する前記搬送車を制御する代替制御を実行する。
【0054】
本構成によれば、対象制御装置による区間制御ソフトウェアの更新中に、上位制御装置が当該対象制御装置に代わって特定区間を走行する搬送車の制御を行う。従って、区間制御装置によるソフトウェア更新を実行しつつ、特定区間における搬送車の制御を適切に行うことが可能となる。また、区間制御装置がソフトウェア更新を実行中であっても特定区間における搬送車の走行を継続させることができるため、設備全体として物品の搬送効率を低下させないようにできる。
【0055】
前記更新処理部は、複数の前記区間制御装置を同時期に前記対象制御装置として設定して各対象制御装置に前記更新用データの配信を行う、複数配信を実行可能であり、
前記複数配信が実行された場合には、前記更新用データを受信した複数の前記対象制御装置のそれぞれが前記ソフトウェア更新を実行すると共に、前記上位制御装置が前記ソフトウェア更新を実行している複数の前記対象制御装置に関する前記代替制御を実行する、と好適である。
【0056】
本構成によれば、複数の区間制御装置の区間制御ソフトウェアを同時並行して更新することができる。従って、設備全体として、比較的短時間で区間制御ソフトウェアの更新を行うことができる。
【0057】
前記区間制御装置は、前記搬送車の制御を行う通常モードと、前記搬送車の制御を行わず前記ソフトウェア更新のための処理を行う更新モードと、にモード移行可能に構成され、
前記対象制御装置は、前記更新モードにおいて前記ソフトウェア更新が完了した場合には前記上位制御装置へ更新完了通知を送信し、
前記上位制御装置は、前記対象制御装置が前記更新モードになったことを条件として前記代替制御を開始し、前記対象制御装置から前記更新完了通知を受信した場合には当該対象制御装置に対して前記更新モードから前記通常モードへ移行させる移行指令を送信し、前記対象制御装置が前記通常モードになったことを条件として前記代替制御を終了する、と好適である。
【0058】
本構成によれば、区間制御装置が更新モードとなっている間は上位制御装置により代替制御を適切に行うことができる。また、区間制御装置が通常モードとなっている場合には上位制御装置による代替制御を行わないため、特定区間を走行する搬送車に対する制御が、上位制御装置と区間制御装置とで重複することを適切に回避することができる。
【0059】
前記区間制御ソフトウェアを構成する複数の既存ファイルのそれぞれが、既存バージョン情報を有しており、
前記更新処理部は、前記更新用データを構成する複数のファイルのそれぞれのバージョン情報と、前記対象制御装置の前記区間制御ソフトウェアを構成する複数の前記既存ファイルのそれぞれの前記既存バージョン情報とを比較し、バージョンが異なる同一種類のファイル、及び、前記更新用データを構成する複数の前記ファイルのうち前記既存ファイルに存在しない前記ファイルをまとめたデータを、前記対象制御装置に配信するための前記更新用データとして生成する、と好適である。
【0060】
本構成によれば、更新用データのデータ量を小さく抑え易い。従って、更新処理部と区間制御装置との間で行われる通信量を少なく抑えることができる。
【0061】
前記更新処理部は、前記上位制御装置と、当該上位制御装置と通信可能に接続された更新制御端末と、を含み、
前記更新処理手順の実行の有無、前記対象制御装置の決定、及び、前記対象制御装置への前記更新用データの配信が、前記更新制御端末により行われ、
前記対象制御装置に対する通信及び各種指令が、前記上位制御装置により行われる、と好適である。
【0062】
本構成によれば、例えば作業者による選択に基づいて更新処理手順の実行の有無や対象制御装置の決定を行う場合であっても、作業者による操作の容易性を確保し易い。その上で、複数の区間制御装置との通信や各種指令は上位制御装置が行うため、上位制御装置と各区間制御装置との既存の通信経路を有効活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示に係る技術は、物品を搬送する搬送車と、複数の特定区間のそれぞれに対応して設けられ、前記特定区間を走行する前記搬送車の制御を行う区間制御装置と、前記搬送車及び複数の前記区間制御装置を制御する上位制御装置と、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 :物品搬送設備
1 :更新処理部
10 :上位制御装置
11 :更新制御端末
2 :区間制御装置(対象制御装置)
R :走行経路
S :特定区間
V :搬送車
Du :更新用データ
F :ファイル
Fe :既存ファイル
I :バージョン情報
Ie :既存バージョン情報
図1
図2
図3
図4
図5