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  • 特開-洗浄装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184246
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/10 20060101AFI20231221BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B08B3/10 Z
B08B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098288
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉章
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201BB02
3B201BB82
3B201BB92
3B201BB98
3B201CB12
3B201CC01
3B201CD42
3B201CD43
(57)【要約】
【課題】薬剤を低コストで洗浄対象に塗布すること。
【解決手段】洗浄装置1は、発泡成分を含む洗浄液Ccが貯留される内部空間を有する洗浄槽2と、洗浄液Ccを加熱する加熱装置7と、内部空間を減圧する減圧装置8と、内部空間に洗浄対象Sが配置された状態で、内部空間を所定の飽和蒸気圧まで減圧させた後、洗浄液Ccが沸騰するように洗浄液Ccを加熱させる制御装置13と、備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成分を含む洗浄液が貯留される内部空間を有する洗浄槽と、
前記洗浄液を加熱する加熱装置と、
前記内部空間を減圧する減圧装置と、
前記内部空間に洗浄対象が配置された状態で、前記内部空間を所定の飽和蒸気圧まで減圧させた後、前記洗浄液が沸騰するように前記洗浄液を加熱させる制御装置と、を備える、
洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄液は、前記洗浄対象が前記洗浄液に浸からないように前記内部空間に貯留される、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液は、潤滑防錆剤を含み、
前記潤滑防錆剤は、前記発泡成分として界面活性剤を含む、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記沸騰が終了するように、前記内部空間を復圧させる、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液に浸漬される給気ノズルを備え、
前記制御装置は、前記給気ノズルから前記洗浄液へ給気させる、
請求項1に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄装置に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような洗浄器が知られている。特許文献1において、被洗浄物は、潤滑防錆剤が投入された水で仕上げ濯ぎされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-000583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潤滑防錆剤のような薬剤を低コストで洗浄対象に塗布できる技術が要望される。
【0005】
本開示は、薬剤を低コストで洗浄対象に塗布することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、発泡成分を含む洗浄液が貯留される内部空間を有する洗浄槽と、洗浄液を加熱する加熱装置と、内部空間を減圧する減圧装置と、内部空間に洗浄対象が配置された状態で、内部空間を所定の飽和蒸気圧まで減圧させた後、洗浄液が沸騰するように洗浄液を加熱させる制御装置と、を備える、洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、薬剤を低コストで洗浄対象に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る洗浄装置を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係る洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態に係る塗布処理に使用される洗浄液が洗浄槽に貯留された状態を模式的に示す図である。
図4図4は、実施形態に係る塗布処理において洗浄槽の内部空間が減圧され洗浄液が加熱されたときの洗浄装置の状態を模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態に係る塗布処理において洗浄槽の内部空間が復圧されたときの洗浄装置の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
図1は、実施形態に係る洗浄装置1を模式的に示す図である。洗浄装置1は、洗浄液Caを用いて洗浄対象Sを洗浄する。実施形態において、洗浄装置1は、減圧沸騰式洗浄装置である。洗浄装置1の洗浄対象Sとして、医療器具が例示される。医療器具として、メス、鉗子、及びチューブが例示される。
【0011】
洗浄装置1は、洗浄槽2と、支持部材3と、給水装置4と、薬剤供給装置5と、排液装置6と、加熱装置7と、減圧装置8と、液相給気装置9と、気相給気装置10と、圧力センサ11と、温度センサ12と、制御装置13とを備える。
【0012】
洗浄槽2は、洗浄液Caが貯留される内部空間を有する。洗浄槽2の上端部に開口部が設けられる。洗浄対象Sは、洗浄槽2の開口部を介して洗浄槽2の内部空間に搬入される。洗浄対象Sは、洗浄槽2の開口部を介して洗浄槽2の内部空間から搬出される。洗浄槽2の開口部は、蓋14で閉鎖される。洗浄槽2の開口部が蓋14で閉鎖されることにより、洗浄槽2の内部空間が密閉される。
【0013】
支持部材3は、洗浄槽2の内部空間において洗浄対象Sを支持する。支持部材3は、洗浄槽2の内部空間に配置される。洗浄対象Sは、洗浄槽2の内部空間において支持部材3よりも上方に配置される。支持部材3は、網状の部材である。洗浄液Caは、支持部材3を通過することができる。洗浄対象Sは、支持部材3に直接支持されてもよい。洗浄対象Sが網状のバスケットに収容され、バスケットが支持部材3に支持されてもよい。
【0014】
給水装置4は、洗浄槽2の内部空間に水を供給する。給水装置4は、洗浄槽2に接続される給水ライン15と、給水ライン15に配置される給水ポンプ16とを有する。給水ポンプ16の作動により、給水源(不図示)からの水が給水ライン15を介して洗浄槽2の内部空間に供給される。
【0015】
薬剤供給装置5は、洗浄槽2の内部空間に薬剤を供給する。薬剤として、アルカリ性洗剤、酵素配合洗剤、乾燥促進剤、及び潤滑防錆剤が例示される。薬剤供給装置5は、洗浄槽2に接続される薬剤供給ライン17を有する。薬剤が薬剤供給ライン17を介して洗浄槽2の内部空間に供給される。洗浄槽2の内部空間に供給された水に薬剤が供給されることにより、洗浄槽2の内部空間において洗浄液Caが生成される。
【0016】
排液装置6は、洗浄槽2の内部空間から洗浄液Caを排出する。排液装置6は、洗浄槽2に接続される排液ライン18と、排液ライン18に配置される排液ポンプ19とを有する。排液ポンプ19の作動により、洗浄液Caが排液ライン18を介して洗浄槽2の内部空間から排出される。
【0017】
加熱装置7は、洗浄槽2に貯留されている洗浄液Caを加熱する。加熱装置7は、洗浄槽2の内部空間に配置されるヒータ20を含む。ヒータ20は、洗浄槽2の内部空間において洗浄液Caに浸漬される。ヒータ20は、支持部材3よりも下方に配置される。
【0018】
減圧装置8は、洗浄槽2の内部空間を減圧する。減圧装置8は、洗浄槽2の内部空間から気体を排出することにより、洗浄槽2の内部空間を減圧する。減圧装置8は、洗浄槽2に接続される排気ライン21と、排気ライン21に配置される真空ポンプ22とを有する。真空ポンプ22の作動により、洗浄槽2の内部空間から気体が排出され、洗浄槽2の内部空間が減圧される。
【0019】
液相給気装置9は、洗浄槽2に貯留されている洗浄液Caに空気を供給する。液相給気装置9は、洗浄槽2の内部空間に配置される給気ノズル23と、給気ノズル23に接続される液相給気ライン24と、液相給気ライン24に配置されるフィルタ25と、フィルタ25と洗浄槽2と間の液相給気ライン24に配置される液相給気弁26とを有する。給気ノズル23は、洗浄槽2の内部空間において洗浄液Caに浸漬される。給気ノズル23は、支持部材3よりも下方に配置される。洗浄槽2の内部空間が減圧された状態で液相給気弁26が開くと、洗浄槽2の内部空間と外部空間との差圧により、洗浄槽2の外部空間の空気がフィルタ25及び液相給気ライン24を介して給気ノズル23に供給される。フィルタ25は、空気から異物を回収する。給気ノズル23は、複数の給気口27を有する。液相給気ライン24を介して給気ノズル23に供給された空気は、給気口27から洗浄液Caに供給される。
【0020】
気相給気装置10は、洗浄槽2の内部空間の気体空間に空気を供給する。気相給気装置10は、洗浄槽2に接続される気相給気ライン28と、気相給気ライン28に配置されるフィルタ29と、フィルタ29と洗浄槽2との間の気相給気ライン28に配置される気相給気弁30とを有する。洗浄槽2の内部空間が減圧された状態で気相給気弁30が開くと、洗浄槽2の内部空間と外部空間との差圧により、洗浄槽2の外部空間の空気がフィルタ29及び気相給気ライン28を介して洗浄槽2の内部空間に供給される。
【0021】
圧力センサ11は、洗浄槽2の内部空間の圧力を検出する。温度センサ12は、洗浄槽2に貯留されている洗浄液Caの温度を検出する。
【0022】
制御装置13は、コンピュータシステムを含む。制御装置13は、洗浄装置1を制御する。
【0023】
図2は、実施形態に係る洗浄装置1の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、制御装置13は、洗浄対象Sを洗浄する洗浄処理(ステップSP1)と、洗浄処理された洗浄対象Sを濯ぐ濯ぎ処理(ステップSP2)と、濯ぎ処理された洗浄対象Sの表面に薬剤を塗布する塗布処理(ステップSP3)とを実施する。
【0024】
洗浄処理において、洗浄液Caが使用される。濯ぎ処理において、濯ぎ液Cbが使用される。塗布処理において、洗浄液Ccが使用される。洗浄処理に使用される洗浄液Caと、濯ぎ処理に使用される濯ぎ液Cbと、塗布処理に使用される洗浄液Ccとは、異なる。
【0025】
洗浄処理(ステップSP1)について説明する。制御装置13は、洗浄処理として、液相給気パルス洗浄と、気相給気パルス洗浄とを実施することができる。液相給気パルス洗浄とは、洗浄対象Sが配置され且つ洗浄液Caが貯留された洗浄槽2の内部空間を減圧した状態で、洗浄液Caに空気を供給して洗浄液Caを爆発的に沸騰(突沸)させ、突沸により生じた洗浄液Caの激しい流れで洗浄対象Sを洗浄する洗浄方法をいう。気相給気パルス洗浄とは、洗浄対象Sが配置され且つ洗浄液Caが貯留された洗浄槽2の内部空間を減圧した後に、洗浄槽2の内部空間に空気を供給して洗浄槽2の内部空間の圧力を変化させ、洗浄槽2の内部空間の圧力の変化により生じた洗浄液Caの激しい流れで洗浄対象Sを洗浄する洗浄方法をいう。
【0026】
液相給気パルス洗浄を実施する場合、洗浄槽2の開口部を介して洗浄槽2の内部空間に洗浄対象Sが搬入された後、洗浄槽2の開口部が蓋14により閉鎖される。洗浄対象Sは、洗浄槽2の内部空間において支持部材3よりも上方に配置される。洗浄対象Sが洗浄槽2の内部空間に配置された後、制御装置13は、給水装置4から洗浄槽2の内部空間に水を供給させ、薬剤供給装置5から洗浄槽2の内部空間に洗浄処理用の薬剤を供給させる。水と薬剤とが洗浄槽2の内部空間に供給されることにより、洗浄槽2の内部空間において洗浄処理用の洗浄液Caが生成される。洗浄対象Sが洗浄液Caに浸かるまで、水と薬剤とが洗浄槽2の内部空間に供給される。洗浄対象Sが洗浄液Caに浸かるように洗浄液Caが洗浄槽2の内部空間に貯留された後、制御装置13は、洗浄液Caが設定温度まで加熱されるように加熱装置7を制御し、洗浄槽2の内部空間が設定圧力まで減圧されるように減圧装置8を制御する。洗浄液Caが設定温度まで加熱され、洗浄槽2の内部空間が設定圧力まで減圧されることにより、洗浄液Caが沸騰する。例えば洗浄液Caが50℃に加熱された場合、洗浄槽2の内部空間の圧力が約89kPaまで減圧されることにより、洗浄液Caが沸騰する。洗浄液Caの沸騰による攪拌作用により洗浄対象Sが洗浄される。制御装置13は、洗浄液Caが沸騰している状態で、液相給気装置9から洗浄液Caに少量の空気を供給させる。洗浄液Caが沸騰している状態で給気ノズル23の給気口27から洗浄液Caに空気が供給されることにより、供給された空気が沸騰の核となって、洗浄液Caが爆発的に沸騰(突沸)する。突沸により生じた洗浄液Caの激しい流れで、洗浄対象Sの表面が効果的に洗浄される。
【0027】
気相給気パルス洗浄を実施する場合、液相給気パルス洗浄と同様、洗浄槽2の内部空間に配置された洗浄対象Sが洗浄処理用の洗浄液Caに浸かるまで、水と薬剤とが洗浄槽2の内部空間に供給される。洗浄対象Sが洗浄液Caに浸かるように洗浄液Caが洗浄槽2の内部空間に貯留された後、制御装置13は、洗浄液Caが設定温度まで加熱されるように加熱装置7を制御し、洗浄槽2の内部空間が設定圧力まで減圧されるように減圧装置8を制御する。洗浄液Caが設定温度まで加熱され、洗浄槽2の内部空間が設定圧力まで減圧されることにより、洗浄液Caが沸騰する。制御装置13は、洗浄液Caが沸騰している状態で、気相給気装置10から洗浄槽2の内部空間の気体空間に空気を供給する。洗浄槽2に空気が供給されることにより、洗浄槽2の内部空間の圧力が上昇する。洗浄槽2の内部空間の圧力が上昇すると、洗浄対象Sの内部の蒸気が凝縮し、その結果、洗浄液Caが洗浄対象Sの内部に勢い良く流入する。洗浄槽2の内部空間の圧力の変化により生じた洗浄液Caの激しい流れで、洗浄対象Sの内部が効果的に洗浄される。
【0028】
次に、濯ぎ処理(ステップSP2)について説明する。洗浄処理が終了した後、制御装置13は、加熱装置7及び減圧装置8を停止させた状態で、洗浄槽2の内部空間が大気圧まで復圧するように、気相給気装置10を制御する。制御装置13は、洗浄槽2の内部空間が大気圧まで復圧された後、洗浄槽2の内部空間から洗浄液Caが排出されるように、排液装置6を制御する。制御装置13は、洗浄槽2の内部空間から洗浄液Caが排出された後、洗浄対象Sの濯ぎ処理を開始する。濯ぎ処理用の濯ぎ液Cbが水である場合、制御装置13は、洗浄対象Sが水に浸かるまで、給水装置4から洗浄槽2の内部空間に水を供給する。なお、濯ぎ液Cbに所定の薬剤が含まれてもよい。洗浄対象Sが濯ぎ液Cbに浸かるように濯ぎ液Cbが洗浄槽2の内部空間に貯留された後、制御装置13は、液相給気パルス洗浄又は気相給気パルス洗浄と同様の制御を実施する。濯ぎ処理により、洗浄対象Sに残留していた洗浄液Caが洗浄対象Sから除去される。
【0029】
次に、塗布処理(ステップSP3)について説明する。濯ぎ処理が終了した後、制御装置13は、加熱装置7及び減圧装置8を停止させた状態で、洗浄槽2の内部空間が大気圧まで復圧するように、気相給気装置10を制御する。制御装置13は、洗浄槽2の内部空間が大気圧まで復圧された後、洗浄槽2の内部空間から濯ぎ液Cbが排出されるように、排液装置6を制御する。制御装置13は、洗浄槽2の内部空間から濯ぎ液Cbが排出された後、洗浄対象Sの塗布処理を開始する。
【0030】
制御装置13は、給水装置4から洗浄槽2の内部空間に水を供給させ、薬剤供給装置5から洗浄槽2の内部空間に塗布処理用の薬剤を供給させる。実施形態においては、塗布処理において、洗浄対象Sに潤滑防錆剤を塗布することとする。また、洗浄対象Sは、金属製の物品であることとする。薬剤供給装置5から洗浄槽2の内部空間に塗布処理用の薬剤として潤滑防錆剤が供給される。
【0031】
図3は、実施形態に係る塗布処理に使用される洗浄液Ccが洗浄槽2に貯留された状態を模式的に示す図である。図3に示すように、水と塗布処理用の薬剤として潤滑防錆剤とが洗浄槽2の内部空間に供給されることにより、洗浄槽2の内部空間において塗布処理用の洗浄液Ccが生成される。塗布処理用の洗浄液Ccは、潤滑防錆剤を含む。また、洗浄液Ccは、発泡成分を含む。潤滑防錆剤は、発泡成分として界面活性剤を含む。
【0032】
洗浄対象Sが洗浄液Ccに浸からないように、水と薬剤とが洗浄槽2の内部空間に供給される。洗浄液Ccは、洗浄対象Sが洗浄液Ccに浸からないように洗浄槽2の内部空間に貯留される。洗浄対象Sは、支持部材3よりも上方に配置される。洗浄液Ccは、支持部材3よりも下方に貯留される。
【0033】
洗浄対象Sが洗浄液Ccに浸からないように、洗浄液Ccが洗浄槽2の内部空間に貯留された後、制御装置13は、洗浄液Ccが設定温度まで加熱されるように加熱装置7を制御し、洗浄槽2の内部空間が設定圧力まで減圧されるように減圧装置8を制御する。
【0034】
実施形態において、制御装置13は、洗浄槽2の内部空間に洗浄対象Sが配置された状態で、減圧装置8に洗浄槽2の内部空間を所定の飽和蒸気圧まで減圧させた後、洗浄液Ccが沸騰するように加熱装置7に洗浄液Ccを加熱させる。
【0035】
図4は、実施形態に係る塗布処理において洗浄槽2の内部空間が減圧され洗浄液が加熱されたときの洗浄装置1の状態を模式的に示す図である。図4に示すように、洗浄槽2の内部空間が所定の飽和蒸気圧まで減圧され、洗浄液Ccが飽和蒸気圧における沸点以上に加熱されることにより、洗浄液Ccが沸騰する。実施形態において、洗浄槽2の内部空間は、大気圧よりも低い所定の飽和蒸気圧まで減圧される。例えば、洗浄液Ccの沸点が50℃になるように洗浄槽2の内部空間の圧力が減圧され、洗浄液Ccが50℃以上になるように加熱されることにより、洗浄液Ccが沸騰する。
【0036】
洗浄液Ccは発泡成分を含む。上述のように、実施形態において、発泡成分は、潤滑防錆剤に含まれる界面活性剤を含む。洗浄液Ccに発泡成分が含まれているので、洗浄液Ccが沸騰すると、洗浄液Ccの蒸気により大量の泡が生成される。洗浄槽2の内部空間は、洗浄液Ccの泡で満たされる。洗浄液Ccの泡が洗浄対象Sに接触することにより、洗浄対象Sに潤滑防止剤が塗布される。
【0037】
洗浄槽2の内部空間が洗浄液Ccの泡で満たされ、洗浄対象Sに潤滑防止剤が塗布された後、制御装置13は、洗浄液Ccの沸騰が終了するように、洗浄槽2の内部空間を復圧させる。制御装置13は、洗浄槽2の内部空間を復圧させるために、気相給気装置10の気相給気弁30を開ける。洗浄槽2の内部空間が減圧された状態で気相給気弁30が開くと、洗浄槽2の内部空間と外部空間との差圧により、洗浄槽2の外部空間の空気がフィルタ29及び気相給気ライン28を介して洗浄槽2の内部空間に供給される。これにより、洗浄槽2の内部空間が大気圧まで復圧される。
【0038】
図5は、実施形態に係る塗布処理において洗浄槽2の内部空間が復圧されたときの洗浄装置1の状態を模式的に示す図である。泡の内部は、沸騰により生じた洗浄液Ccの蒸気である。そのため、洗浄槽2の内部空間が急激に復圧されると、泡の内部の蒸気が凝縮し、泡の内部が気相から液相に遷移する。すなわち、泡の内部の蒸気が一気に液化する。これにより、図5に示すように、洗浄液Ccの泡が一気に消滅する。
【0039】
以上説明したように、実施形態において、洗浄装置1は、発泡成分を含む洗浄液Ccが貯留される内部空間を有する洗浄槽2と、洗浄液Ccを加熱する加熱装置7と、洗浄槽2の内部空間を減圧する減圧装置8と、洗浄槽2の内部空間に洗浄対象Sが配置された状態で、洗浄槽2の内部空間を所定の飽和蒸気圧まで減圧させた後、洗浄液Ccが沸騰するように洗浄液Ccを加熱させる制御装置13と、を備える。
【0040】
実施形態によれば、洗浄槽2の内部空間を所定の飽和蒸気圧まで減圧させた後、洗浄液Ccが沸騰するように洗浄液Ccを加熱させることにより、洗浄液Ccの泡が生成される。洗浄液Ccの泡が洗浄対象Sに接触することにより、洗浄液Ccに含まれる薬剤が洗浄対象Sに塗布される。洗浄槽2の内部空間の減圧と洗浄液Ccの加熱とを実施するだけでよいので、薬剤は、低コストで洗浄対象Sに塗布される。例えば、洗浄装置1に塗布装置を別途設けなくても済むので、洗浄装置1のイニシャルコストが軽減される。また、洗浄液Ccの泡により、薬剤が洗浄対象Sにムラなく塗布される。
【0041】
洗浄槽2の内部空間の減圧と洗浄液Ccの加熱とが開始される前において、洗浄液Ccは、洗浄対象Sが洗浄液Ccに浸からないように洗浄槽2の内部空間に貯留される。実施形態においては、洗浄液Ccの泡で洗浄対象Sに薬剤を塗布するので、洗浄槽2に貯留される洗浄液Ccの量は少なくて済む。そのため、塗布処理に掛かるランニングコストが軽減される。
【0042】
実施形態において、洗浄液Ccは、潤滑防錆剤を含む。潤滑防錆剤は、発泡成分として界面活性剤を含む。これにより、洗浄対象Sが金属製の物品である場合、潤滑防錆剤が、低コストで洗浄対象Sに塗布される。潤滑防錆剤は、発泡成分として界面活性剤を含むので、洗浄槽2の内部空間の減圧と洗浄液Ccの加熱とにより、洗浄液Ccは、十分に発泡することができる。
【0043】
洗浄対象Sに対する薬剤の塗布が終了した後、制御装置13は、洗浄液Ccの沸騰が終了するように、洗浄槽2の内部空間を大気圧まで復圧させる。洗浄液Ccの泡の内部は洗浄液Ccの蒸気なので、洗浄槽2の内部空間が復圧されることにより、泡の内部の蒸気が一気に液化する。これにより、洗浄液Ccの泡が一気に消滅する。そのため、塗布処理の終了後に、例えば洗浄槽2から泡を除去する作業を実施しなくても済む。
【0044】
なお、上述の実施形態において、塗布処理において、洗浄液Ccは、洗浄対象Sが洗浄液Ccに浸かるように洗浄槽2の内部空間に貯留されてもよい。また、制御装置13は、洗浄液Ccに浸漬される給気ノズル23の給気口27から洗浄液Ccへ給気させてもよい。制御装置13は、例えば洗浄対象Sが洗浄液Ccに浸けられた状態で、洗浄槽2の内部空間の減圧と洗浄液Ccの加熱とを実施した後、洗浄液Ccに浸漬されている給気ノズル23の給気口27から洗浄液Ccへ空気を供給してもよい。
【0045】
なお、上述の実施形態において、洗浄対象Sに塗布される薬剤は、潤滑防錆剤に限定されない。また、発泡成分は、界面活性剤に限定されない。薬剤に発泡成分が含まれていればよい。
【符号の説明】
【0046】
1…洗浄装置、2…洗浄槽、3…支持部材、4…給水装置、5…薬剤供給装置、6…排液装置、7…加熱装置、8…減圧装置、9…液相給気装置、10…気相給気装置、11…圧力センサ、12…温度センサ、13…制御装置、14…蓋、15…給水ライン、16…給水ポンプ、17…薬剤供給ライン、18…排液ライン、19…排液ポンプ、20…ヒータ、21…排気ライン、22…真空ポンプ、23…給気ノズル、24…液相給気ライン、25…フィルタ、26…液相給気弁、27…給気口、28…気相給気ライン、29…フィルタ、30…気相給気弁、Ca…洗浄液、Cb…濯ぎ液、Cc…洗浄液、S…洗浄対象。
図1
図2
図3
図4
図5