(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184249
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】エゼクタ、エゼクタの高圧通路及び吸気ハウジング
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20231221BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F02M25/08 N
F02M25/08 Q
F02M35/10 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098291
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長山 司
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓也
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144AA03
3G144GA22
3G144GA25
3G144GA30
(57)【要約】
【課題】接続通路から低圧通路へと流れ込むガスの量の変化を抑制する。
【解決手段】エゼクタ部220は、高圧通路221と、低圧通路222と、接続通路223と、を備えている。低圧通路222は、高圧通路221の下流端に接続している。接続通路223は、高圧通路221及び低圧通路222の合流箇所に接続している。高圧通路221の上流端には、高圧の気体が流通する還流通路56が接続されている。高圧通路221は上流端から下流端までの間で、1箇所以上で屈曲している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続される高圧通路と、
前記高圧通路の下流端に接続された低圧通路と、
前記高圧通路及び前記低圧通路の合流箇所に接続する接続通路と、
を備え、
前記高圧通路は、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲している
エゼクタ。
【請求項2】
前記高圧通路における前記下流端を含む一部分を下流部分としたとき、
前記下流部分の少なくとも一部分の流路断面積は、前記下流端に向かうほど小さくなっている
請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項3】
前記低圧通路は、直線状に延びており、
前記高圧通路における前記下流端を含む一部を下流部分とし、前記高圧通路における前記上流端を含む一部を上流部分としたとき、
前記上流部分は、前記低圧通路の流路軸線に直交する仮想平面と平行に延びる部分を有する
請求項1又は2に記載のエゼクタ。
【請求項4】
高圧の気体が流通する前記通路として、前記高圧通路に対して可撓性が高い管体を備える
請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項5】
上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続され、
前記上流端から下流端までの間で、1箇所以上で屈曲している
エゼクタの高圧通路。
【請求項6】
内燃機関の吸気通路の一部を区画する吸気ハウジングであって、
前記吸気通路を区画する本体部と、
蒸発燃料が流通する接続通路を区画するエゼクタ部と、
を備え、
前記エゼクタ部は、
上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続される高圧通路と、
前記高圧通路の下流端に接続された低圧通路と、
前記高圧通路及び前記低圧通路の合流箇所に接続する前記接続通路と、
を備え、
前記高圧通路は、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しており、
前記エゼクタ部の少なくとも一部は、前記本体部との一体成形物である
吸気ハウジング。
【請求項7】
前記高圧通路における前記上流端を含む一部分を上流部分とし、
前記エゼクタ部のうち、前記上流部分の前記上流端を含む一部を区画する部分を、連結部分としたとき、
前記連結部分は、中心軸線が直線の筒状であり、
前記本体部は、前記連結部分と間隔を空けて向かい合い、且つ、前記連結部分の中心軸線に対して平行な対向面を有する
請求項6に記載の吸気ハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エゼクタ、エゼクタの高圧通路及び吸気ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蒸発燃料処理装置に適用されるエゼクタが開示されている。エゼクタは、内部に、高圧通路、低圧通路、及び接続通路を有している。高圧通路は、低圧通路に接続している。高圧通路及び低圧通路は、同一直線上に位置している。高圧通路の流路断面積は、低圧通路側に向かうにつれて小さくなっている。接続通路は、高圧通路と低圧通路との合流箇所に接続している。接続通路の中心軸は、高圧通路及び低圧通路の中心軸に対して直交している。すなわち、高圧通路、低圧通路、及び接続通路は、全体としてT字状の形状である。
【0003】
上記エゼクタの低圧通路は、内燃機関の吸気通路のうちの、ターボチャージャのコンプレッサから視て上流側に接続される。エゼクタの高圧通路は、内燃機関の吸気通路のうちの、ターボチャージャのコンプレッサから視て下流側に接続される。エゼクタの通路は、蒸発した燃料を捕集するキャニスタに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のようなエゼクタは、高圧通路の下流端から低圧通路へと勢いよく高圧のガスが噴射される。このように、高圧通路内のガスの流速に比して低圧通路内のガスの流速が大きいことから、高圧通路及び低圧通路の合流箇所、すなわち接続通路の接続箇所において負圧が生じる。そして、この負圧によって、接続通路内のガスが低圧通路へと流れ込む。したがって、接続通路から低圧通路へと流れ込むガスの量は、高圧通路の下流端から低圧通路へと噴射されるガスの流速に応じる。その一方で、高圧通路の下流端に変形が生じると、高圧通路の下流端から低圧通路へと噴射されるガスの流速が変化する。そのため、高圧通路の下流端に変形が生じると、接続通路から低圧通路へと流れ込むガスの量が大幅に変化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続される高圧通路と、前記高圧通路の下流端に接続された低圧通路と、前記高圧通路及び前記低圧通路の合流箇所に接続する接続通路と、を備え、前記高圧通路は、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しているエゼクタである。
【0007】
上記構成によれば、高圧通路は、1箇所以上で、屈曲している。そして、高圧通路内をガスが流通する場合には、この屈曲している箇所においてガスの流速が低下する。この流速の変化に伴い、高圧通路と低圧通路の接続箇所において生じる負圧の大きさが変化する。つまり、上記構成では、高圧通路と低圧通路との接続箇所において生じる負圧の大きさは、高圧通路の下流端近傍の形状だけでなく、高圧通路における屈曲箇所の形状にも影響される。仮に、高圧通路に屈曲がない構成の場合、高圧通路から低圧通路へと噴射されるガスの流速は、高圧通路の下流端の近傍が変形した場合に大きな影響を受ける。その一方で、上記構成によれば、高圧通路の屈曲による影響が加味されるため、高圧通路の下流端の近傍に変形が生じても、負圧の大きさが大幅に変動することを抑制できる。すなわち、接続通路から低圧通路へと流れ込むガスの量が大きく変化することを抑制できる。
【0008】
上記構成において、前記高圧通路における前記下流端を含む一部分を下流部分としたとき、前記下流部分の少なくとも一部分の流路断面積は、前記下流端に向かうほど小さくなっているエゼクタとしてもよい。
【0009】
上記構成によれば、高圧通路の流路断面積が小さくなることに伴って高速でガスが噴射される。したがって、接続通路から低圧通路へと流れるガスの量として充分な量を確保できる。
【0010】
上記構成において、前記低圧通路は、直線状に延びており、前記高圧通路における前記下流端を含む一部を下流部分とし、前記高圧通路における前記上流端を含む一部を上流部分としたとき、前記上流部分は、前記低圧通路の流路軸線に直交する仮想平面と平行に延びる部分を有するエゼクタとしてもよい。上記構成によれば、低圧通路及び高圧通路の長さが同じであれば、低圧通路の流路軸線に沿う方向でのエゼクタの寸法を小さくできる。
【0011】
上記構成において、高圧の気体が流通する前記通路として、前記高圧通路に対して可撓性が高い管体を備えるエゼクタとしてもよい。上記構成によれば、高圧の気体が流通する通路を湾曲させる等して、当該通路を任意に引き回しやすくできる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明は、上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続され、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しているエゼクタの高圧通路である。
【0013】
上記構成によれば、高圧通路の屈曲による影響が加味される。そのため、高圧通路を低圧通路及び接続通路に接続した際には、高圧通路の下流端の近傍に変形が生じても、負圧の大きさが大幅に変動することを抑制できる。すなわち、接続通路から低圧通路へと流れ込むガスの量が大きく変化することを抑制できる。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明は、内燃機関の吸気通路の一部を区画する吸気ハウジングであって、前記吸気通路を区画する本体部と、蒸発燃料が流通する接続通路を区画するエゼクタ部と、を備え、前記エゼクタ部は、上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続される高圧通路と、前記高圧通路の下流端に接続された低圧通路と、前記高圧通路及び前記低圧通路の合流箇所に接続する前記接続通路と、を備え、前記高圧通路は、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しており、前記エゼクタ部の少なくとも一部は、前記本体部との一体成形物である吸気ハウジングである。
【0015】
上記構成によれば高圧通路は、1箇所以上で、屈曲している。そして、高圧通路内をガスが流通する場合には、この屈曲している箇所においてガスの流速が低下する。この流速の変化に伴い、高圧通路と低圧通路の接続箇所において生じる負圧の大きさが変化する。つまり、上記構成では、高圧通路と低圧通路との接続箇所において生じる負圧の大きさは、高圧通路の下流端近傍の形状だけでなく、高圧通路における屈曲箇所の形状にも影響される。仮に、高圧通路に屈曲がない構成の場合、高圧通路から低圧通路へと噴射されるガスの流速は、高圧通路の下流端の近傍が変形した場合に大きな影響を受ける。その一方で、上記構成によれば、高圧通路の屈曲による影響が加味されるため、高圧通路の下流端の近傍に変形が生じても、負圧の大きさが大幅に変動することを抑制できる。すなわち、接続通路から低圧通路へと流れ込むガスの量が大きく変化することを抑制できる。また、エゼクタ部の少なくとも一部を本体部と一体成形できるため、エゼクタ部の全体を本体部とは別に成形する場合に比較して、製造コストの低下が期待できる。
【0016】
上記構成において、前記高圧通路における前記上流端を含む一部分を上流部分とし、前記エゼクタ部のうち、前記上流部分の前記上流端を含む一部を区画する部分を、連結部分としたとき、前記連結部分は、中心軸線が直線の筒状であり、前記本体部は、前記連結部分と間隔を空けて向かい合い、且つ、前記連結部分の中心軸線に対して平行な対向面を有する吸気ハウジングとしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、エゼクタ部の連結部分が、本体部の外面に対して一定の間隔を空けて配置されている。したがって、連結部分に他のホース又は配管等の通路を接続する際に、作業スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、エゼクタ部を含む吸気ハウジングが適用される機関システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、エゼクタ、エゼクタの高圧通路及び吸気ハウジングの一実施形態を、図面を参照して説明する。
<機関システムについて>
図1に示すように、機関システム100は、内燃機関10を備えている。内燃機関10は、気筒11、吸気通路12、及び排気通路13を備えている。
【0020】
内燃機関10は、車両の駆動源である。気筒11は、吸気と燃料との混合気が燃焼する空間である。吸気通路12は、吸気の流通通路である。吸気通路12の下流端は、内燃機関10における気筒11に接続している。排気通路13は、排気の流通通路である。排気通路13の上流端は、内燃機関10の気筒11に接続している。
【0021】
機関システム100は、エアクリーナ21、ターボチャージャ22、インタークーラ23及びスロットルバルブ24を備えている。
エアクリーナ21は、吸気に含まれる異物を取り除くための装置である。エアクリーナ21は、吸気通路12の途中に位置している。
【0022】
ターボチャージャ22は、コンプレッサ22Aと、タービン22Bと、を有している。コンプレッサ22Aは、吸気通路12におけるエアクリーナ21から視て下流側に位置している。コンプレッサ22Aは、吸気通路12におけるコンプレッサ22Aよりも下流側に、圧縮した吸気を供給する。タービン22Bは、排気通路13の途中に位置している。タービン22Bは、シャフトを介してコンプレッサ22Aに連結している。タービン22Bが排気の流れによって回転すると、コンプレッサ22Aがタービン22Bと一体回転する。
【0023】
インタークーラ23は、吸気通路12におけるコンプレッサ22Aから視て下流側に位置している。インタークーラ23は、コンプレッサ22Aにおいて圧縮された高温の空気を冷却する。スロットルバルブ24は、吸気通路12におけるインタークーラ23から視て下流側に位置している。スロットルバルブ24は、吸気通路12を流通する吸気量を調整する。
【0024】
機関システム100は、燃料タンク51、キャニスタ52、ベーパ通路53、パージ通路54、分流通路55、還流通路56、及び吸気ハウジング200を備えている。
燃料タンク51は、内燃機関10に供給される燃料を貯留する。ベーパ通路53は、燃料タンク51内で発生した蒸発燃料が流通する通路である。ベーパ通路53の上流端は、燃料タンク51に接続している。キャニスタ52は、ベーパ通路53の下流端に接続している。キャニスタ52は、蒸発燃料を吸着する。パージ通路54は、キャニスタ52内の蒸発燃料を、コンプレッサ22Aから視て下流側の吸気通路12内に導くための通路である。パージ通路54の上流端は、キャニスタ52に接続している。パージ通路54の下流端は、吸気通路12においてスロットルバルブ24から視て下流側の吸気通路12に接続している。
【0025】
分流通路55は、キャニスタ52内の蒸発燃料を、コンプレッサ22Aから視て上流側の吸気通路12内に導くための通路である。分流通路55は、パージ通路54から分岐している。すなわち、分流通路55の上流端はパージ通路54の途中に接続している。分流通路55の下流端は、吸気ハウジング200に接続している。なお、吸気ハウジング200については後述する。
【0026】
還流通路56は、コンプレッサ22Aから視て下流側の吸気通路12と、コンプレッサ22Aから視て上流側の吸気通路12と、を繋ぐ通路である。具体的には、還流通路56の上流端は、インタークーラ23から視て上流側、且つコンプレッサ22Aかから視て下流側の吸気通路12に接続している。還流通路56の下流端は、吸気ハウジング200に接続している。
【0027】
<吸気ハウジングについて>
図1に示すように、吸気ハウジング200は、吸気通路12のうちエアクリーナ21から視て下流側、且つコンプレッサ22Aから視て上流側の一部を区画している。
図2に示すように、吸気ハウジング200は、本体部210と、エゼクタ部220と、を備えている。
【0028】
本体部210は、吸気通路12を区画している部分である。本体部210は、第1ピース211、第2ピース212、及び第3ピース213を備えている。第1ピース211、第2ピース212、及び第3ピース213の材質は、いずれも合成樹脂である。
【0029】
第1ピース211及び第2ピース212は、互いに接合されている。第1ピース211及び第2ピース212は、吸気通路12の一部を区画している。第2ピース212及び第3ピース213は、互いに接合されている。第2ピース212及び第3ピース213は、レゾネータ空間を区画している。図示は省略するが、第2ピース212及び第3ピース213が区画するレゾネータ空間は、第1ピース211及び第2ピース212が区画する吸気通路12と繋がっている。したがって、吸気通路12内の圧力変動は、レゾネータ空間に伝播する。そして、吸気通路12内の圧力変動は、レゾネータ空間内において減衰する。
【0030】
図4に示すように、第2ピース212及び第3ピース213は、エゼクタ部220を備えている。エゼクタ部220は、吸気ハウジング200のうち、分流通路55の下流端、及び還流通路56の下流端が接続される部分である。
【0031】
エゼクタ部220は、高圧通路221、低圧通路222、及び接続通路223を有している。高圧通路221の上流端は、還流通路56の下流端に接続している。すなわち、高圧通路221の上流端には、高圧の気体が流通する還流通路56が接続されている。なお、還流通路56は、合成ゴム製の管体である。一方で、高圧通路221の材質は、合成樹脂である。還流通路56は高圧通路221に対して可撓性が高い。
【0032】
高圧通路221の下流端は、低圧通路222に接続している。低圧通路222は、直線状に延びている。低圧通路222の下流端は、吸気通路12のうち第1ピース211及び第2ピース212によって区画された部分に接続している。接続通路223は、直線状に延びている。接続通路223の下流端は、高圧通路221及び低圧通路222の合流箇所に接続している。つまり、接続通路223の下流端は、高圧通路221の下流端の近傍に位置している。接続通路223の上流端は、分流通路55の下流端に接続している。接続通路223は、低圧通路222に対して直交している。
【0033】
高圧通路221は、さらに、上流端から順に、第1通路221A、第2通路221B、第3通路221C、第4通路221D、及び第5通路221Eを有している。
第1通路221Aは、直線状に延びている。第1通路221Aの上流端は、高圧通路221の上流端である。したがって、高圧通路221の上流端を含む一部である第1通路221Aは、高圧通路221の上流部分に相当する。第1通路221Aの流路断面積は、上流端から下流端に至るまで一定である。
【0034】
第2通路221Bは、直線状に延びている。第2通路221Bの上流端は、閉塞している。第2通路221Bは、当該第2通路221Bの上流端の近傍において第1通路221Aの下流端と接続している。ここで、各流路において、流路断面の中心を辿った軌跡を含む直線を流路軸線とする。第2通路221Bの流路軸線A2は、第1通路221Aの流路軸線A1に対して直交している。第2通路221Bの流路断面積は、第1通路221Aの流路断面積と同じである。また、第2通路221Bの流路断面積は、上流端から下流端に至るまで一定である。
【0035】
第3通路221Cは、直線状に延びている。第3通路221Cの上流端は、第2通路221Bの下流端に接続している。第3通路221Cの流路軸線A3は、第2通路221Bの流路軸線A2に対して直交している。また、第3通路221Cの下流端は、第1通路221Aの上流端に対して略反対方向を向いている。第3通路221Cの流路断面積は、第1通路221Aの流路断面積と同じである。また、第3通路221Cの流路断面積は、上流端から下流端に至るまで一定である。
【0036】
第4通路221Dは、直線状に延びている。第4通路221Dの上流端は、第3通路221Cの下流端に接続している。第4通路221Dの流路軸線A4は、低圧通路222の流路軸線Bと一致している。また、第4通路221Dの流路軸線A4は、第3通路221Cの流路軸線A3に対して直交している。また、第4通路221Dの下流端は、第2通路221Bの下流端と略同一方向を向いている。第4通路221Dの流路断面積は、第1通路221Aの流路断面積と同じである。また、第4通路221Dの流路断面積は、上流端から下流端に至るまで一定である。
【0037】
第5通路221Eは、直線状に延びている。第5通路221Eの上流端は、第4通路221Dの下流端に接続している。第5通路221Eの流路軸線A5は、第4通路221Dの流路軸線A4と一致している。第5通路221Eの上流端での流路断面積は、第1通路221Aの流路断面積と略同じである。第5通路221Eの途中の部分は、当該第5通路221Eの下流端に向かうほど流路断面積が小さくなっている。第5通路221Eの下流端は、高圧通路221の下流端である。したがって、高圧通路221における下流端を含む一部である第5通路221Eは、高圧通路221の下流部分である。そして、下流部分としての第5通路221Eの一部の流路断面積は、下流端に向かうほど小さくなっている。
【0038】
上述のとおり、第4通路221Dの流路軸線A4及び第5通路221Eの流路軸線A5は、低圧通路222の流路軸線Bと一致している。その一方で、第3通路221Cの流路軸線A3は、第4通路221Dの流路軸線A4に対して直交している。このことから、第1通路221A~第3通路221Cは、低圧通路222の流路軸線B上にない。すなわち、高圧通路221は、上流端から下流端までの間で、3箇所で屈曲している。
【0039】
吸気ハウジング200は、エゼクタ部220の各通路を区画している。具体的には、第2ピース212は、エゼクタ部220の各通路のうち、低圧通路222及び接続通路223を区画している。第3ピース213は、エゼクタ部220の各通路のうち、高圧通路221を区画している。つまり、エゼクタ部220の各部は、本体部210を区画する第2ピース212又は第3ピース213との一体成形物である。
【0040】
また、第2ピース212及び第3ピース213が接合された状態では、第3ピース213のうちの第5通路221Eを区画する部分が、第2ピース212が区画する低圧通路222の上流端に挿入されている。
【0041】
ここで、
図2及び
図3に示すように、第3ピース213において、第1通路221Aを区画する部分を連結部分213Aとする。連結部分213Aは、円筒状になっている。連結部分213Aの中心軸線は、流路軸線A1である。図示は省略するが、連結部分213Aは、還流通路56を区画する管体に挿入されている。
【0042】
図3に示すように、第3ピース213は、連結部分213Aと、他の部材を介することなく向かい合う第1外面214及び第2外面215を有している。第1外面214は、第2外面215に対して垂直である。第1外面214及び第2外面215は、連結部分213Aと対向する対向面である。第1外面214は、連結部分213Aの中心軸線、すなわち、流路軸線A1に対して平行である。なおかつ、第2外面215は、流路軸線A1に対して平行である。
【0043】
<本実施形態の作用>
エゼクタ部220の高圧通路221には、還流通路56を経由して、コンプレッサ22Aによって加圧された吸気が流入する。高圧通路221は、第1通路221Aと第2通路221Bとの境界、第2通路221Bと第3通路221Cとの境界、及び第3通路221Cと第4通路221Dとの境界で、それぞれ90度屈曲している。すなわち、高圧通路221は、3つの屈曲箇所を有している。したがって、高圧通路221に流入した吸気は、3回屈曲して低圧通路222に到達する。また、高圧通路221内には、コンプレッサ22Aによって加圧された高圧、高温の吸気が流通する。そのため、高圧通路221において変形が生じ得ることがある。
【0044】
<本実施形態の効果>
(1)上記実施形態において、高圧通路221内を吸気が流通する場合には、屈曲している3箇所において吸気の流速が低下する。当該流速の変化に伴い、高圧通路221と低圧通路222の接続箇所において生じる負圧の大きさが変化する。つまり、上記実施形態では、高圧通路221と低圧通路222の接続箇所において生じる負圧の大きさは、高圧通路221の下流端近傍の形状だけでなく、高圧通路221における3つの屈曲箇所の形状にも影響される。仮に、高圧通路221に屈曲がない構成の場合、高圧通路221から低圧通路222へと噴射されるガスの流速は、高圧通路221の下流端の近傍が変形した場合に大きな影響を受ける。一方で、上記実施形態の構成によれば、高圧通路221の屈曲による影響が加味されるため、高圧通路221の下流端の近傍に変形が生じても、負圧の大きさが大幅に変動することを抑制できる。すなわち、接続通路223から低圧通路222へと流れ込むガスの量が大きく変化することを抑制できる。
【0045】
(2)上記実施形態において、第5通路221Eの流路断面積の一部は、下流端に向かうほど小さくなっている。上記実施形態によれば、高圧通路221の流路断面積が小さくなることに伴って低圧通路222に高速でガスが噴射されることから、高圧通路221と低圧通路222の接続箇所において生じる負圧が大きくなる。したがって、接続通路223から低圧通路222へと流れるガスの量として充分な量を確保できる。
【0046】
(3)上記実施形態において、低圧通路222の流路軸線Bに直交する仮想平面を想定したとする。このとき、高圧通路221の上流部分である第1通路221Aは、上記仮想平面と平行に延びている。また、同様に、第3通路221Cは、仮想平面に平行に延びている。この構成によれば、低圧通路222及び高圧通路221の長さが同じであれば、低圧通路222の流路軸線Bに沿う方向でのエゼクタ部220の寸法を小さくできる。
【0047】
(4)上記構成において、還流通路56は高圧通路221に対して可撓性が高い。この構成によれば、還流通路56を湾曲させる等して、還流通路56を任意に引き回しやすくできる。
【0048】
(5)上記実施形態において、エゼクタ部220は、本体部210との一体成形物である。この構成によれば、エゼクタ部220を本体部210と一体成形できるため、エゼクタ部220の全体を本体部210とは別に成形する場合に比較して、製造コストの低下が期待できる。
【0049】
(6)上記実施形態において、本体部210の第1外面214及び第2外面215は、連結部分213Aと間隔を空けて向かい合っている。第1外面214は、連結部分213Aの中心軸線、すなわち、第1通路221Aの流路軸線A1に対して平行である。また、第2外面215は、連結部分213Aの中心軸に対して平行である。この構成によれば、連結部分213Aに、還流通路56といった配管等を接続する際に、作業スペースを確保できる。
【0050】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・機関システム100の構成は、上記実施形態の例に限定されない。機関システム100は、吸気ハウジング200を備えていればよい。実施形態として例示した機関システム100は、あくまでも例示であり、機関システム100がさらに他の装置及び部材等を備えていても構わない。
【0052】
・吸気ハウジング200の本体部210は、上記実施形態のように3つのピースで形成される構成に限定されない。本体部210は、1つのピース、または、2つのピースで構成されていてもよい。また、本体部210は、4つ以上のピースを組み合わせて構成されていてもよい。
【0053】
・吸気ハウジング200は、レゾネータ空間を区画していなくてもよい。吸気ハウジング200は、少なくとも吸気通路12の一部を区画していればよい。
・本体部210は、連結部分213Aと間隔を空けて向かい合い、且つ、連結部分213Aの流路軸線A1に対して平行な対向面を有していなくてもよい。連結部分213Aが他の管などと連結可能であれば、連結部分213Aは、本体部210のいずれかの面と接触していてもよいし、本体部210のいずれかの面と交差していてもよい。
【0054】
・エゼクタ部220は、吸気ハウジング200の一部分としてではなく、吸気ハウジング200とは別の部品、すなわちエゼクタとして構成されていてもよい。その場合でも、上記(1)~(3)に記載の効果が得られる。
【0055】
・高圧通路221の形状は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、エゼクタ部220の高圧通路221の屈曲箇所は、4つ以上でもよいし2つ以下でもよい。高圧通路221のうち下流端を含み且つ流路軸線B上を延びる部分を下流部分としたとき、高圧通路221の上流端から下流端に至るまでに、少なくとも1箇所で屈曲していればよい。
【0056】
・高圧通路221において、屈曲する角度は90度でなくてもよい。また、高圧通路221は、円弧状に湾曲していてもよい。接続通路223から低圧通路222へガスが流れることのできる負圧を生み出せるなら、屈曲の角度、湾曲の曲率半径等は、適宜に設計すればよい。
【0057】
・高圧通路221の材質、及び還流通路56の材質は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、高圧通路221の材質は、合成樹脂であってもよい。なお、還流通路56は、高圧通路221に対して可撓性が高いと好ましい。一方で、還流通路56が高圧通路221に対して同等の可撓性、又は低い可撓性であっても上記(1)に記載の効果は得られる。
【0058】
・エゼクタ220部において、第5通路221Eは、流路断面積が変化する部分を有していなくてもよい。仮に、第5通路221Eの流路断面積が一定であっても、上記(1)に記載の効果は得られる。
【0059】
・第1通路221A~第4通路221Dの流路断面積は同じでなくてもよい。例えば、第1通路221Aの流路断面積と第2通路221Bの流路断面積が異なっていてもよい。また、第1通路221A~第4通路221Dから選ばれる1以上の通路において、流路断面積が低圧通路222に向かうほど小さくなっていてもよい。
【0060】
・接続通路223の流路軸線は、第5通路221Eの流路軸線A5及び低圧通路222の流路軸線Bと直交していなくてもよい。すなわち、接続通路223は、高圧通路221及び低圧通路222に対して斜めに接続していてもよい。
【0061】
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
[1]上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続される高圧通路と、前記高圧通路の下流端に接続された低圧通路と、前記高圧通路及び前記低圧通路の合流箇所に接続する接続通路と、を備え、前記高圧通路は、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しているエゼクタ。
【0062】
[2]前記高圧通路における前記下流端を含む一部分を下流部分としたとき、前記下流部分の少なくとも一部分の流路断面積は、前記下流端に向かうほど小さくなっている[1]に記載のエゼクタ。
【0063】
[3]前記低圧通路は、直線状に延びており、前記高圧通路における前記下流端を含む一部を下流部分とし、前記高圧通路における前記上流端を含む一部を上流部分としたとき、前記上流部分は、前記低圧通路の流路軸線に直交する仮想平面と平行に延びる部分を有する[1]又は[2]に記載のエゼクタ。
【0064】
[4]高圧の気体が流通する前記通路として、前記高圧通路に対して可撓性が高い管体を備える[1]~[3]のいずれか1つに記載のエゼクタ。
[5]上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続され、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しているエゼクタの高圧通路。
【0065】
[6]内燃機関の吸気通路の一部を区画する吸気ハウジングであって、前記吸気通路を区画する本体部と、蒸発燃料が流通する接続通路を区画するエゼクタ部と、を備え、前記エゼクタ部は、上流端が、高圧の気体が流通する通路に接続される高圧通路と、前記高圧通路の下流端に接続された低圧通路と、前記高圧通路及び前記低圧通路の合流箇所に接続する前記接続通路と、を備え、前記高圧通路は、前記上流端から前記下流端までの間で、1箇所以上で屈曲しており、前記エゼクタ部の少なくとも一部は、前記本体部との一体成形物である吸気ハウジング。
【0066】
[7]前記高圧通路における前記上流端を含む一部分を上流部分とし、前記エゼクタ部のうち、前記上流部分の前記上流端を含む一部を区画する部分を、連結部分としたとき、前記連結部分は、中心軸線が直線の筒状であり、前記本体部は、前記連結部分と間隔を空けて向かい合い、且つ、前記連結部分の中心軸線に対して平行な対向面を有する[6]に記載の吸気ハウジング。
【符号の説明】
【0067】
12…吸気通路
55…分流通路
56…還流通路
200…吸気ハウジング
210…本体部
213A…連結部分
214…第1外面
215…第2外面
220…エゼクタ部
221…高圧通路
221A…第1通路
221E…第5通路
222…低圧通路
223…接続通路