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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184259
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】封水部材及び排水トラップ
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20231221BHJP
   E03C 1/26 20060101ALI20231221BHJP
   E03C 1/29 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E03C1/28 A
E03C1/26
E03C1/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098311
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 良典
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DD06
2D061DD08
2D061DE15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】排水口の内径が小径な排水トラップ、又は排水口の内径が小径な排水トラップに用いられる封水部材であっても、容易に封水部材をトラップ本体の封水形成位置に配置することが可能な排水トラップ、又は排水トラップに用いられる封水部材を提供する。
【解決手段】排水が流入する排水口2a及び排水口2aからの排水を排出する排出口を備えたトラップ本体1からなる排水トラップ、または排水トラップに係止可能な排水トラップの封水部材3であって、トラップ本体1内の封水形成位置に配置されることで、排水口2aから排出口に至る流路上に満水状態の流路を形成する封水部材本体4と、排水口2a又は排水口2a近傍に係止され排水を通過させる係止体とから成り、係止体を排水口2a又は排水口2a近傍に係止することで、封水部材本体4がトラップ本体1内の封水形成位置に配置されることを特徴とする排水トラップ、または排水トラップの封水部材3。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が流入する排水口及び前記排水口からの排水を排出する排出口を備えたトラップ本体に係止可能な排水トラップの封水部材であって、
前記トラップ本体内の封水形成位置に配置されることで、前記排水口から前記排出口に至る流路上に満水状態の流路を形成する封水部材本体と、
前記排水口又は前記排水口近傍に係止され排水を通過させる係止体とから成り、
前記係止体を前記排水口又は前記排水口近傍に係止することで、前記封水部材本体が前記トラップ本体内の前記封水形成位置に配置されることを特徴とする排水トラップの封水部材。
【請求項2】
前記係止体と前記封水部材本体との間にスペーサーを備えたことを特徴とする請求項1に記載の排水トラップの封水部材。
【請求項3】
前記係止体と前記封水部材本体と前記スペーサーとを一体の部材としたことを特徴とする請求項2に記載の排水トラップの封水部材。
【請求項4】
前記係止体と前記封水部材本体とを別体の部材としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水トラップの封水部材。
【請求項5】
前記封水部材本体を前記トラップ本体内の前記封水形成位置に配置したとき前記トラップ本体内の流路を確保する流路確保構造を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の排水トラップの封水部材。
【請求項6】
前記封水部材本体を前記トラップ本体内の前記封水形成位置に配置したとき前記トラップ本体内の流路を確保する流路確保構造を設けたことを特徴とする請求項4に記載の排水トラップの封水部材。
【請求項7】
前記係止体が、排水中の塵芥を捕集する捕集部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の排水トラップの封水部材。
【請求項8】
前記係止体が、排水中の塵芥を捕集する捕集部を備えることを特徴とする請求項4に記載の排水トラップの封水部材。
【請求項9】
前記封水部材本体を前記係止体に対し適正な位置関係となるように案内するガイド構造を備えたことを特徴とする請求項4に記載の排水トラップの封水部材。
【請求項10】
排水が流入する排水口及び前記排水口からの排水を排出する排出口を備えたトラップ本体と、
前記トラップ本体内の封水形成位置に配置されることで、前記排水口から前記排出口に至る流路上に満水状態の流路を形成する封水部材本体と、
前記排水口又は前記排水口近傍に係止され排水を通過させる係止体とから成り、
前記係止体を前記排水口又は前記排水口近傍に係止することで、前記封水部材本体が前記トラップ本体内の前記封水形成位置に位置決めされ配置されることを特徴とする排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水機器の排水を処理する排水トラップ及び排水トラップの封水部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用によって排水の生じる排水機器には、生じた排水を処理するため、排水口を備えた排水配管が取り付けられている。排水配管は、排水口に流入した排水を、排水配管内に形成した排水流路を介して下水側に排出するように施工される。
また、排水配管には、排水配管に備えられる部材であって、下水側からの臭気を含んだ空気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する部材である排水トラップが備えられる場合が多い。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、流し台に施工される排水トラップに関するものであって、トラップ本体と、封水部材と、捕集部材と、から構成される。
上記排水トラップが取り付けられる流し台の槽体であるシンクの底面には、トラップ本体を取り付けるための取付穴が設けられている。
トラップ本体は、塩化ビニル又はポリプロピレン等硬質樹脂からなる有底略円筒形状の部材であって、上方の開口には排水口を、下端には排水口からの排水を排出する排出口を、それぞれ設けてなる。また、トラップ本体の底面から立ち上がる、内部が排出口に連通する立ち上げ筒を備えてなる。また、トラップ本体の内側面であって、立ち上げ筒の上端に近い高さ位置の3箇所に、内周面に沿って溝部を備えてなる。
封水部材(防臭蓋)は上記トラップ本体と同様に硬質樹脂からなり、逆椀形のオワン部分の外周3箇所に、トラップ本体の溝部と嵌合する小突片を突設してなる。
捕集部材(残滓籠)は排水中の塵芥を捕集する部材であって、小孔を複数備えた金属または樹脂の捕集部と、捕集部の上縁に沿って設けられた、排水口に載置される鍔部分と、からなる。
【0004】
上記従来の排水トラップは、以下のようにして流し台の槽体であるシンクに施工される。
まず、トラップ本体をシンクの取付穴に取着する。
次に、トラップ本体の排出口に接続管を接続し、この接続管を床下配管に接続して排水口からの排水が床下配管を介して下水側に排出できるように構成する。
次に、封水部材を、オワン部分の内部に立ち上げ筒が位置するようにしてトラップ本体内に配置させ、更に封水部材を回転させることでトラップ本体の溝部に小突片を嵌合させて、封水部材をトラップ本体内に係止させる。
更に捕集部材の鍔部を排水口に載置させて排水トラップの流し台への施工が完了する。
【0005】
上記のように排水配管が施工された流し台のシンク内に排水が発生すると、排水は、排水口から捕集部材の捕集部を通過した上でトラップ本体内に流入する。また、捕集部材の捕集部を排水が通過した際に、排水に混入した塵芥は捕集部に捕集され、下水側に排出されることは無い。
トラップ本体内に流入した排水は、トラップ本体の内側面とオワン部分の外側面の間、オワン部分の下方、オワン部分の内側面と立ち上げ筒の外側面の間、を順に通過する。更に立ち上げ筒の上端から立ち上げ筒内、排出口の順に通過し、排出口に接続された接続管から床下配管を介し、下水側に排出される。
また、この排水の処理の際に、トラップ本体の内側面と立ち上げ筒の外側面の間であって、立ち上げ筒の上端の高さまで排水が溜まる。この溜まった排水によって、トラップ本体の内部の流路の一部、トラップ本体の内側面とオワン部分の外側面の間から立ち上げ筒の上端に至る流路上は常に満水の状態となる。
下水側から臭気を含む空気や害虫類が屋内側に侵入しようとする場合、排水の流路を逆流する必要があるが、上記したように排水の流路上の一部は常に満水の状態となっており、臭気を含む空気や害虫類はこの満水状態の流路部分を通過することができないため、屋内側に臭気を含む空気や害虫類が侵入することは無い。
この臭気を含む空気や害虫類が屋内側に侵入することを防止する機能をトラップ機能と呼ぶ。また、排水の流路の一部を満水状態にするために溜められる排水を封水、この封水が溜められる部分を封水部と呼ぶ。特許文献1に記載の排水トラップは、封水によってトラップ機能を生じる封水式排水トラップである。
【0006】
特許文献1の排水トラップのトラップ機能は、封水部材をトラップ本体内の所定の位置に配置した上で封水部に封水(排水)を溜めることで発生するものであり、封水部材をトラップ本体内に配置しても、封水部材のオワン部分の内部に立ち上げ筒が配置されていなければ、排水の流路上に満水の状態となる部分は発生せず、トラップ機能が生じない。
このように、排水トラップがトラップ機能を生じるためには、トラップ本体の適正な位置に封水部材を配置する必要がある。本発明では、封水式排水トラップにトラップ機能を生じさせるために、トラップ本体内の封水部材を配置する位置を「封水形成位置」と記載する。
特許文献1に記載の発明において、トラップ本体の溝部に封水部材の小突片を嵌合させる構成は、封水部材を封水形成位置に配置固定するための構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7-34067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
事務所の給湯室やワンルームマンションなど、余り広くない場所に備え付けられる流し台には、ミニキッチン等と呼ばれる特に水平方向に小型化した流し台が採用される場合が多い。ミニキッチンでは、設備を小型化する関係でシンクの水平方向のサイズも通常より小さなものとなるため、取り付けられる排水トラップも小型化したものとなる。具体的には、通常の流し台の排水トラップの排水口の内径が150ミリメートル程度に対して、ミニキッチンでは排水トラップの排水口の内径を80ミリメートル程度とし、小型化したシンクと組み合わせるのに都合の良い排水トラップとしている。
一方で、ミニキッチンに用いられる排水トラップは、高さ方向については水平方向ほど小型化を行っておらず、結果的に通常の排水トラップに比べ、縦長な形状となっている。
その理由としては、次のようなものがある。
1.シンク下の配管用の空間が高さ方向には狭くなっていないため、排水トラップを縦方向に小型化する必要が無い。
2.配管に用いる管体等の部材が通常の流し台の配管に用いる部材と共有化できると都合が良いが、排水トラップの全高を低くすると配管用の管体の長さが足りなくなり共有化ができなくなる場合がある。このため、ミニキッチン用の排水トラップでも全高はあまり縮小しないように設計する。
3.以前は捕集部材の塵芥を溜める捕集部の容量は大きければ良いとする考えが主流であった。排水口の内径を縮径するミニキッチン用の排水トラップでは、捕集部の容量を増すためにできるだけ捕集部の高さを高いものとしていたため、捕集部材を収納するトラップ本体もその全高を高くする必要があり、水平方向に比べて高さ方向は高いものとなっていた。
しかし、このように構成されたミニキッチン用の排水トラップでは、次のような問題が発生していた。
【0009】
通常の流し台のシンクに施工される排水トラップのように、排水口の内径が充分な大きさ、例えば150ミリメートル程度ある場合には、特許文献1の排水トラップのように、封水部材を把持した手を排水口からトラップ本体内に挿入し、トラップ本体内で取り付ける作業を容易に行うことができ、封水部材をトラップ本体内の封水形成位置に係止又は嵌合させることができる。
しかし、ミニキッチンに採用される小型化した排水トラップの場合、排水口の内径は80ミリメートル程度しかなく、封水部材を把持した手をこの小径の排水口を介してトラップ本体内に挿入することは極めて困難である。
封水部材を配置する封水形成位置を排水口の近傍に設定することで、トラップ本体内に作業者の手を挿入しなくとも、指先をトラップ本体内に挿入するだけで封水部材を係止又は嵌合させることができればこの問題は解決するが、トラップ本体内の封水部材の上方には捕集部材を配置する必要があるため、封水形成位置を排水口の近傍に設定することもできなかった。
結局、ミニキッチン用の排水口が小径な排水トラップでは、封水形成位置を排水口から距離のあるトラップ本体の奥まった位置に設定し、作業者が治具を使うか、トラップ本体内に指先を入れて無理やり取り付け作業を行うかして、排水トラップの奥まった位置に封水部材を取り付け、また取り外しする必要があった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、ミニキッチン用など排水口の内径が小径な排水トラップ、又は排水トラップに用いられる封水部材であっても、容易に封水部材をトラップ本体の封水形成位置に配置することが可能な排水トラップ、又は排水トラップに用いられる封水部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明において、「封水部材本体」とは、「トラップ本体内の封水形成位置に配置されることで封水を形成する」部材又は部分を指し示すものである。
また、「封水部材」とは、「封水部材本体」と「封水部材本体を封水形成位置に配置する機能」を備えた部材を示すものであり、一つの部材に「封水部材本体」と「封水形成位置配置機能」を備えて封水部材としても良いし、「封水部材本体」の機能を備えた部材と「封水形成位置配置機能」を備えた部材とを別々に用意・構成し、両者を組み合わせることで封水部材としても良い。
【0011】
第一の発明は、排水が流入する排水口及び前記排水口からの排水を排出する排出口を備えたトラップ本体に係止可能な排水トラップの封水部材であって、
前記トラップ本体内の封水形成位置に配置されることで、前記排水口から前記排出口に至る流路上に満水状態の流路を形成する封水部材本体と、前記排水口又は前記排水口近傍に係止され排水を通過させる係止体とから成り、
前記係止体を前記排水口又は前記排水口近傍に係止することで、前記封水部材本体が前記トラップ本体内の前記封水形成位置に配置されることを特徴とする排水トラップの封水部材である。
【0012】
第二の発明は、前記係止体と前記封水部材本体との間にスペーサーを備えたことを特徴とする請求項1に記載の排水トラップの封水部材である。
【0013】
第三の発明は、前記係止体と前記封水部材本体と前記スペーサーとを一体の部材としたことを特徴とする請求項2に記載の排水トラップの封水部材である。
【0014】
第四の発明は、前記係止体と前記封水部材本体とを別体の部材としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水トラップの封水部材である。
【0015】
第五の発明は、前記封水部材本体を前記トラップ本体内の前記封水形成位置に配置したとき前記トラップ本体内の流路を確保する流路確保構造を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の排水トラップの封水部材である。
【0016】
第六の発明は前記封水部材本体を前記トラップ本体内の前記封水形成位置に配置したとき前記トラップ本体内の流路を確保する流路確保構造を設けたことを特徴とする請求項4に記載の排水トラップの封水部材である。
【0017】
第七の発明は、前記係止体が、排水中の塵芥を捕集する捕集部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の排水トラップの封水部材である。
【0018】
第八の発明は、前記係止体が、排水中の塵芥を捕集する捕集部を備えることを特徴とする請求項4に記載の排水トラップの封水部材である。
【0019】
第九の発明は、前記封水部材本体を前記係止体に対し適正な位置関係となるように案内するガイド構造を備えたことを特徴とする請求項4に記載の排水トラップの封水部材である。
【0020】
第十の発明は、排水が流入する排水口及び前記排水口からの排水を排出する排出口を備えたトラップ本体と、
前記トラップ本体内の封水形成位置に配置されることで、前記排水口から前記排出口に至る流路上に満水状態の流路を形成する封水部材本体と、
前記排水口又は前記排水口近傍に係止され排水を通過させる係止体とから成り、
前記係止体を前記排水口又は前記排水口近傍に係止することで、前記封水部材本体が前記トラップ本体内の前記封水形成位置に位置決めされ配置されることを特徴とする排水トラップである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の封水部材又は排水トラップによれば、排水口又は排水口近傍に係止される係止体を利用して封水部材本体がトラップ本体内の封水形成位置に位置決めされる構成のため、容易に封水部材本体をトラップ本体内の封水形成位置に配置することができる。
また、係止体と封水部材本体の間にスペーサーを配置することで、係止体又は封水部材本体の長さなど形状を調整し、例えばオワン部分の深さを清掃が容易な浅い形状とすることができる。
係止体及び封水部材本体は、別々の部材として組み合わせた際に封水部材となるように構成しても良く、又は上記スペーサーを含めて一体の封水部材として構成しても良い。
また、封水部材本体を直接係止するのではなく係止体を介して封水形成位置に配置する構成であると、封水部材本体の配置にはある程度の自由度があり封水部材本体が封水を形成するものの排水流路を狭めてしまうような配置となる場合があるが、リブ体や凹部等からなる流路確保構造を採用することで排水流路を確実に好適なものとすることができる。
また、係止体と封水部材本体を別々の部材とした場合には、封水部材本体を係止体に対し適正な位置関係となるように案内するガイド構造を備えるとより施工が容易となって好適である。
また、係止体を排水中の塵芥を捕集する捕集部により構成すれば、係止体の排水口又は排水口近傍への係止が容易となり好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施例の流し台を示す断面図である。
図2】第一実施例の排水トラップを示す断面図である。
図3】第一実施例のトラップ本体の部材構成を示す断面図である。
図4】第一実施例の封水部材の部材構成を示す断面図である。
図5】第一実施例の封水部材本体の平面図である。
図6】第一実施例の封水部材本体の正面図である。
図7】第一実施例の封水部材本体の底面図である。
図8図5のB-B断面図である。
図9図5のC-C断面図である。
図10】第一実施例の捕集部材の、(a)平面図、(b)D-D断面図、(c)斜視図である。
図11図2のA-A断面図である。
図12】第一実施例の排水トラップの、封水部材本体が上昇した状態を示す断面図である。
図13】第二実施例の排水トラップを示す断面図である。
図14】第二実施例の封水部材の断面図である。
図15】第二実施例の封水部材の斜視図である。
図16】第二実施例の封水部材の断面状態での斜視図である。
図17】第二実施例の封水部材の、取手が立ち上がった状態の斜視図である。
図18】第二実施例の封水部材の部材構成を示す断面図である。
図19】第二実施例の封水部材本体の平面図である。
図20】第二実施例の封水部材本体の正面図である。
図21】第二実施例の封水部材本体の底面図である。
図22】第二実施例の捕集部材の、(a)平面図、(b)正面図、(c)右側面である。
図23図13のE-E断面図である。
図24】第三実施例の排水トラップを示す断面図である。
図25】第三実施例の封水部材の側面図である。
図26】第三実施例の封水部材の斜視図である。
図27】第四実施例の排水トラップを示す断面図である。
図28】第四実施例の封水部材の断面図である。
図29】第四実施例の封水部材の断面状態での斜視図である。
図30】他の実施例の排水トラップを示す断面図である。
図31】目隠しプレートを採用した実施例の排水トラップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に記載する本発明の実施例の説明において、「指」又は「指先」とは指の部分のみを示すものであり、「手」とは指のほか、手のひら等、手全体を指し示すものである。例えば、排水口2a等の穴に、指だけであれば挿入可能であるが、手全体を挿入することは不可能な場合、「指は挿入できる」「手は挿入できない」と記載し、指のみが挿入できることを「手が挿入できる」とは記載しない。
また、以下に記載する本発明の実施例の説明において、封水部材3は、ホームセンターでの購入やインターネットによる通販、いわゆるEコマースで購入する場合を想定しており、シンクS等に施工された既設の排水トラップから既設の封水部材3等を取り外し、新規に購入した本発明の封水部材3に交換する場合も想定して構成している。このため、流路確保構造等を利用し、全高や内径等がほぼ同一であるが1~2%前後の寸法差(実際の長さとしては数ミリ程度の寸法差)を有する複数種類のトラップ本体1に共通して取り付け可能な封水部材3として構成している。
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1乃至図12に示した、本発明の第一実施例の排水トラップとその封水部材3は、以下のようにして排水機器としての流し台Nと、その槽体であるシンクSに施工される。
流し台Nは以下に記載するワークトップ部W、キャビネット部C、排水トラップ、接続管9等の部材より構成される。
ワークトップ部Wは金属の板材からなるカウンター部Kと、カウンター部Kに設けられた、上方が開口した箱体形状であるシンクSとからなる。また、シンクSの底面にはトラップ本体1が取り付けられる取付穴S1が設けられてなる。
キャビネット部Cは、上方が開口し、正面に扉が備えられた箱体であって、その内部にトラップ本体1等からなる排水配管が施工される。
排水トラップは、以下に記載するトラップ本体1と封水部材3から構成される。
図2図3等に示したトラップ本体1は、ポリプロピレン等の硬質樹脂からなる有底略円筒形状の部材であって、上方の開口周縁の内側面には雌ネジ部1cを、また周縁の全周に沿って外方向に向かって突出した突縁部1bを、それぞれ設けてなる。また、トラップ本体1の下端には、トラップ本体1内の排水を排出するための排出口1dを設けてなる。また、トラップ本体1の底面に、内部が排出口1dに連通する円筒形状の立ち上げ筒1aを備えてなる。トラップ本体1の側面と立ち上げ筒1aとは平面視同心円となるように構成されてなる。
またトラップ本体1は、以下に記載するフランジ部材2を備えてなる。
フランジ部材2は、円筒形状を成す部材であって、円筒形状の内部上端に排水が流入する排水口2aを形成してなり、また上端の外側面にはフランジ部2bを備えてなる。また、フランジ部2bの下方の側面にはトラップ本体1の雌ネジ部1cと螺合する雄ネジ部2cを備えてなる。また、排水口2aの近傍となる、円筒形状の内側面の下端部分に内周の周縁に沿って、捕集部材6の鍔部6cを載置する突条部2dを設けてなる。
図4に示した封水部材3は、以下に記載する封水部材本体4と、係止体としての捕集部材6とから構成される。即ち、本実施例では、封水部材本体4と係止体である捕集部材6は別体として構成されている。
図5乃至図9に示した封水部材本体4は、トラップ本体1と同様に硬質樹脂からなり、開口を下方に向けたオワン部分4aと、以下に記載する、オワン部分4aに設けたスペーサー7及び流路確保構造から構成される。
スペーサー7は、オワン部分4aの上端から上方に向かって設けたリブ片であって、その上端が係止体である捕集部材6の下端に当接することで、封水部材本体4が封水形成位置から外れる位置まで浮かび上がることが無いように構成している。また、スペーサー7の内部に図6のように開口を設けることで、開口に作業者の指先などを引っ掛けて、封水部材本体4を取り出すことを容易にする封水部材本体4の取手としての機能も備えてなる。
流路確保構造は、以下に記載する上方流路確保用リブ5aと、側方流路確保用リブ5bと、下方流路確保用リブ5cと、から構成される。
上方流路確保用リブ5aは、オワン部分4aの上方の壁面から垂下されたリブ片であって、10ミリメートル程度の幅を備えてなり、施工完了時、オワン部分4aの上方の壁面と立ち上げ筒1aの上端との間に、少なくとも上方流路確保用リブ5a分の幅の流路を確保する。
側方流路確保用リブ5bは、オワン部分4aの底面視90度毎に4個所設けられてなり、オワン部分4aの内側面から中心方向に向かって10ミリメートル程度延出されたリブ片であって、施工完了時、オワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となるように誘導することで、図11のように、オワン部分4a内側面と立ち上げ筒1a外側面が当接して流路が失われることを防止する。また、立ち上げ筒1aとトラップ本体1が同心円状に構成されているため、オワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となるように誘導することは、オワン部分4aとトラップ本体1とが同心円に近い状態の配置となるように誘導することでもあり、オワン部分4a外側面とトラップ本体1内側面が当接して流路が失われることも防止する。
また、側方流路確保用リブ5bの内、2枚のリブは図8より明らかなように上方流路確保用リブ5aと連続している。
また、側方流路確保用リブ5bは、側面視図8図9の断面図にあるように、下方ほどオワン部分4aの側面に近づくような傾斜部8aを備えてなる。
下方流路確保用リブ5cは、オワン部分4aの底面視90度毎に4個所設けられてなり、オワン部分4aの下端から10ミリメートル程度垂下されたリブ片であって、施工完了時、オワン部分4aの下端とトラップ本体1の底面との間に、少なくとも下方流路確保用リブ5c分の幅の流路を確保する。
図10に示した、係止体としての捕集部材6は、排水中の塵芥を捕集する部材であって、小孔6bを複数備えた金属板をオワン形状に加工した捕集部6aと、捕集部6aの上縁に沿って硬質樹脂からなる鍔部6cとを備えてなる。尚、図面の簡略化のため、小孔6bは一部のみ図示している。
また、鍔部6cの側面であって対称となる位置2箇所に突起部6dを備えてなる。2つの突起部6dの先端は、突条部2dの内径より若干幅広に構成している。このため、樹脂弾性を利用して突起部6dを突条部2dの下方に押し込み、鍔部6cを突条部2dに載置することで、鍔部6cと突起部6dとで突条部2dを挟むようにして嵌合した状態となる。これにより、使用者が意図して捕集部材6を抜脱しない限り、排水口2aから捕集部材6が外れることの無い、捕集部材6が排水口2a近傍の突条部2dに係止した状態となる。
また、捕集部材6には、上縁の内径側に捕集部材6の把持を容易にする取手6fを備えてなる。
また、他の配管部材として、排出口1dと床下配管とを接続する直線状の管体からなる接続管9を備えてなる。
【0025】
上記した排水トラップにおいて、トラップ本体1の排水口2aの内径は約80ミリメートル、排水口2aからトラップ本体1の底面までの高さ方向の幅は約190ミリメートル、排水口2aから立ち上げ筒1aの上端までの高さ方向の幅は約130ミリメートルである。
また、排水口2aから突条部2d上面までの高さ方向の幅は約15ミリメートル程度であり突条部2d自体の高さ方向の幅は5ミリメートル程度である。
但し、本発明の封水部材3が取り付けられるトラップ本体1は、全高や内径等がほぼ同一であるが若干の寸法差を有する複数種類のトラップ本体1を想定しており、各部の寸法には1~2ミリメートル程度の寸法差が生じる場合がある。
排水口2aの内径は約80ミリメートルしかないため、排水口2aからトラップ本体1内に手を挿入して作業を行うことは困難であるが、排水口2aから指先のみをトラップ本体1内に挿入することは容易である。また、突条部2dは下端であってもトラップ本体1内に手を入れることなく指のみを挿入して排水口2aから指先が届く、排水口2aの近傍位置にあり、突条部2dの位置の部材に対して排水口2aから作業を行うことは容易である。
また、封水部材3である封水部材本体4及び捕集部材6は、上記した寸法のトラップ本体1に採用されることを想定し、施工完了時、トラップ本体1の排水口2aから封水部材本体4のオワン部分4a上端までの高さ方向の幅は約110ミリメートル、排水口2aからスペーサー7上端までの高さ方向の幅は約50ミリメートルとなるように設計・製造されている。このため、排水トラップの使用者又は作業者は、排水口2aからトラップ本体1内に手を入れなければ封水部材本体4のオワン部分4aに指先が届くことは無く、事実上オワン部分4aに指先が触れることは不可能であるが、排水口2aから指先のみをトラップ本体1内に挿入して、スペーサー7の上方部分を把持するか、あるいは開口に指を掛けることで、封水部材本体4を持ち上げ、排水口2aより容易に取り出すことができる。
また、本実施例における捕集部材6の、鍔部6cの下面から捕集部6aの底面までの高さ方向の幅は約30ミリメートルに構成されており、捕集部材6の鍔部6cをトラップ本体1の突条部2d上に載置させたとき、排水口2aから捕集部6aの底面までの高さの幅は約45ミリメートルとなり、前述した1~2ミリメートル程度の寸法差を考慮しても、施工が完了した状態では封水部材本体4のスペーサー7上端が捕集部6aの底面に干渉することは無い。
【0026】
上記の各部材は、以下のようにして排水機器である流し台の、槽体であるシンクに施工される。尚、特に詳述しないが、必要に応じて接続箇所にはパッキング等を利用し水密的な接続が行われる。
まず、トラップ本体1のフランジ部材2の円筒形状の部分を、シンクの取付穴に挿入するようにして配置し、フランジ部2b下面を取付穴周縁に当接させる。
次に、シンクの下方からトラップ本体1を配置し、フランジ部材2の雄ネジ部2cにトラップ本体1の雌ネジ部1cを螺合させ、フランジ部2bの下面と突縁部1bの上面とで取付穴周縁を挟持することでトラップ本体1をシンクに取り付け固定する。
次に、トラップ本体1の排出口1dに接続管9を接続し、接続管9の下端を床下配管に接続して排出口1dからの排水が接続管9と床下配管を介して下水側に排出されるように排水配管を行う。
次に、封水部材本体4を、オワン部分4aの内部に立ち上げ筒1aが位置するようにして排水口2aからトラップ本体1内に挿入する。挿入の際、立ち上げ筒1aの上端が側方流路確保用リブ5bに干渉しても、側方流路確保用リブ5bの下方に設けた傾斜部8aによって立ち上げ筒1aがオワン部分4aの中央位置に位置するように案内され、挿入に支障は生じない。
更に、捕集部材6を排水口2aから挿入し、排水口2aの下方に位置する突条部2dに突起部6dを弾性嵌合させることで、排水口2aに捕集部材6が係止され、排水トラップを含む、流し台への排水配管の施工が完了する。
【0027】
上記の施工の際に、封水部材本体4がトラップ本体1内に配置されたとき、封水部材3は次のa.またはb.のいずれかの状態となる。a.、b.、いずれの状態になるかは封水部材本体4が挿入されるトラップ本体1の形状(寸法)によって変化する。
a.立ち上げ筒1aの上端に上方流路確保用リブ5aの下端が当接し、トラップ本体1の底面と下方流路確保用リブ5cの下端との間には隙間を生じる。
b.立ち上げ筒1aの上端と上方流路確保用リブ5aの下端との間には隙間が生じ、トラップ本体1の底面に下方流路確保用リブ5cの下端が当接する。
a.、b.、いずれの状態においても、立ち上げ筒1a上端とオワン部分4a上方の壁面との間、及びトラップ本体1底面とオワン部分4a下端との間には排水が通過可能な隙間を確保することができる。
本実施例では、施工が完了した図2の状態において、立ち上げ筒1aの上端に上方流路確保用リブ5aの下端が当接すると共に、トラップ本体1の底面と下方流路確保用リブ5cの下端も当接したような状態となっている。この時、立ち上げ筒1aの上端から封水部材本体4のオワン部分4aの下端までの幅は約50ミリメートルとなっている。
【0028】
また、封水部材本体4は、側方流路確保用リブ5bを備えたことで、オワン部分4aが立ち上げ筒1aに対して極端に偏心した状態、例えばオワン部分4aの内側面と立ち上げ筒1aの外側面が当接した状態となることを防ぎ、図11に示したようにオワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となるように誘導する。また、立ち上げ筒1aとトラップ本体1が同心円状に構成されているため、オワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となることで、オワン部分4aとトラップ本体1も同心円に近い状態の配置となるように誘導される。また、排水時に排水の流れによって封水部材本体4が水平方向に移動する場合にも、オワン部分4aが立ち上げ筒1aに対して極端に偏心した状態となることを防ぐ。
このようにして、オワン部分4a内側面と立ち上げ筒1a外側面が当接して流路が失われること、及びオワン部分4a外側面とトラップ本体1内側面が当接して流路が失われることを防止する。
【0029】
流し台を使用し、シンク内に排水が生じると、排水は排水口2aから捕集部材6の捕集部6aを通過してトラップ本体1内に流入する。
トラップ本体1内に流入した排水は、トラップ本体1の内側面とオワン部分4aの外側面の間、オワン部分4aの下方、オワン部分4aの内側面と立ち上げ筒1aの外側面の間、を順に通過する。更に立ち上げ筒1aの上端から立ち上げ筒1a内、排出口1dの順に通過し、排出口1dに接続された配管から床下配管を介し、下水側に排出される。
【0030】
この排水の処理の際に、トラップ本体1の内側面と立ち上げ筒1aの外側面の間であって、立ち上げ筒1aの上端の高さまで排水が溜まって封水を形成する。この封水によって、トラップ本体1の内部に形成された排水の流路の一部である、トラップ本体1の内側面とオワン部分4aの外側面の間から立ち上げ筒1aの上端に至る流路上は常に満水状態となるため、下水側からの臭気を含んだ空気や害虫類が屋内側に侵入することを防止するトラップ機能を生じる。
封水部材本体4がトラップ機能を生じるためには、上記のように封水部材本体4のオワン部分4a内に立ち上げ管が配置され、立ち上げ筒1aの上端よりオワン部分4aの下端が下方に位置する必要があり、この「封水部材本体4がトラップ本体1内であって、封水部材本体4のオワン部分4a内に立ち上げ管が配置され、立ち上げ筒1aの上端よりオワン部分4aの下端が下方となる位置」が本実施例における封水部材本体4の封水形成位置である。
本実施例においては、封水部材本体4のオワン部分4aの内部に立ち上げ管が配置された上で、更にトラップ本体1の排水口2a近傍に設けられた突条部2dに捕集部材6が係止されたことで、シンクからの排水の際に、排水が大量に発生し、封水部材本体4が水流などによって上昇しても、封水部材本体4のスペーサー7の上端が排水口2a近傍に係止されている捕集部材6の下端に当接してそれ以上の上昇を防ぐように構成されている。段落0025に記載したように、施工完了時において、トラップ本体1の排水口2aから封水部材本体4のスペーサー7上端までの高さ方向の幅は約50ミリメートルに対し、排水口2aから捕集部6aの底面までの高さの幅は約45ミリメートルであり、トラップ本体1における多少の寸法差を考慮しても封水部材本体4が上昇できる高さ方向の幅は10ミリメートル以下である。前述の通り図2の状態において、立ち上げ筒1aの上端からオワン部分4aの下端までの幅は約50ミリメートルのため、封水部材本体4が10ミリメートル上昇しても、オワン部分4aの下端が立ち上げ筒1aの上端を超える位置まで上昇し、封水形成位置から外れることは無い。
このように、本実施例では、係止体としての捕集部材6が排水口2a近傍に設けられた突条部2dに係止されることで、封水部材本体4がトラップ本体1内の封水形成位置に位置決めされた状態で配置され、捕集部材6が突条部2dに係止されている限り、封水部材本体4がトラップ本体1内の封水形成位置から外れることは無い。即ち、本実施例では、封水を形成する封水部材本体4と、封水部材本体4を封水形成位置に配置する機能を備えた係止体としての捕集部材6とを組み合わせることで封水部材3を構成している。
【0031】
また、本実施例の排水トラップにおいて、捕集部材6の捕集部6aに捕集された塵芥を処理する場合は、取手6fを把持して捕集部材6を引き上げ、捕集部材6と突条部2dの係止状態を解除して排水口2aから取り出すことで、容易に捕集部6aに捕集された塵芥を処理することができる。更に、捕集部6aの深さは35ミリメートル程度であるため、捕集部6a内の清掃も、捕集部6a内の底面に指先が容易に届き、捕集部6a内を容易に清掃することができる。また、封水部材本体4を清掃する場合は、捕集部材6を排水口2aから取り外した状態より、更に封水部材本体4の取手としても機能するスペーサー7を把持して排水口2aより引き上げることで、封水部材本体4をトラップ本体1内より容易に取り出し、清掃を行うことができる。これら作業は、作業者がトラップ本体1内に手を入れることなく、指先のみを排水口2a内に挿入することで全て行うことができる。
清掃後は、施工手順と同様の手順で封水部材本体4及び捕集部材6をトラップ本体1に施工することができる。
【0032】
本実施例には、封水部材本体4に、スペーサー7を設け、捕集部材6と封水部材本体4のオワン部分4aの間に配置するように構成している。
段落0008に記載したように、以前は捕集部6aの容量を大容量とし、できる限り塵芥を処理する手間を減らすことが良いとする考えが主流であったが、近年では、1回の調理が完了する都度捕集部6a内に収納した塵芥をゴミ袋等に捨てて処分することで、流し台を衛生的に使用しようとする考えが主流となりつつある。この場合、捕集部6aの高さ方向の幅を大きくし捕集部6aの容量を増やす必要が無く、むしろ高さ方向の幅を狭くし容易に捕集部6aの清掃ができる構造とするほうが好適である。
特に本実施例においては、捕集部6aの底面に封水部材本体4が当接して封水部材本体4が封水形成位置から外れることの無い構成としているため、スペーサー7の無い構成とすると、図30のように捕集部6aをスペーサー7の高さ方向の幅分深くするか、または封水部材本体4のオワン部分4aをスペーサー7の高さ方向の幅分長くする必要がある。
しかし、本実施例の排水口2aの内径は約80ミリメートルしかなく、この排水口2aを介してトラップ本体1内に配置する捕集部材6の捕集部6aの開口や封水部材本体4のオワン部分4aの開口は、80ミリメートルより更に小径となるため、図30の捕集部材6の捕集部6aのように、スペーサー7の長さ分、捕集部6aやオワン部分4aが長くなると、内部の特に奥まった部分に手や指先を入れて清掃等を行うことはほぼ不可能とある。このため、第一実施例のように、スペーサー7を用いて、捕集部6aやオワン部分4aの高さ方向の幅を適切な長さに調整し、容易に清掃等の作業が可能な構成とすると好適である。
【0033】
次に、本発明の第二実施例について、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第二実施例の封水部材3を採用した排水トラップとその封水部材3は、排水機器としての流し台Nと、その槽体であるシンクSに用いられる排水配管として施工される。
尚、本発明の第二実施例について、排水機器である流し台、トラップ本体1、接続管9は第一実施例の同部材と同様のため省略し、封水部材3についてのみ記載する。
図13乃至図16等に示した第二実施例の封水部材3は、トラップ本体1と同様に硬質樹脂からなり、以下に記載する封水部材本体4と捕集部材6とから構成され、後述するように、両者を嵌合させることで一体の部材として構成し、使用する。
図19乃至図21に示した封水部材本体4は、開口を下方に向けたオワン部分4aと、以下に記載する、オワン部分4aに設けたスペーサー7及び流路確保構造から構成される。
スペーサー7は、オワン部分4aの上端から上方に向かって設けた棒状体であって、その上端に嵌合部4bを備えてなる。
流路確保構造は、以下に記載する上方流路確保用リブ5aと、側方流路確保用凹部5dと、下方流路確保用リブ5cと、から構成される。
上方流路確保用リブ5aは、オワン部分4aの上方の壁面から垂下されたリブ片であって、10ミリメートル程度の幅を備えてなり、施工完了時、オワン部分4aの上方の壁面と立ち上げ筒1aの上端との間に、少なくとも上方流路確保用リブ5a分の幅の流路を確保する。
側方流路確保用凹部5dは、オワン部分4aの底面視90度毎に4個所設けられてなり、図18に示したように、オワン部分4aの側面方向の壁面を、中心方向に向かって10ミリメートル程度窪ませることで、施工完了時、オワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となるように誘導し、オワン部分4a内側面と立ち上げ筒1a外側面が当接して流路が失われることを防止する。また、立ち上げ筒1aとトラップ本体1が同心円状に構成されているため、オワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となるように誘導することは、オワン部分4aとトラップ本体1とが同心円に近い状態の配置となるように誘導することでもあり、オワン部分4a外側面とトラップ本体1内側面が当接して流路が失われることを防止する。
また、側方流路確保用凹部5dは、図14の断面図にあるように、オワン部分4aの上端から途中位置(オワン部分4aの全高の約7割程度の高さ)まで設けられてなり、下方は円弧形状からなる円弧部8bを備えてなる。
下方流路確保用リブ5cは、オワン部分4aの底面視90度毎に4個所設けられてなり、オワン部分4aの下端から10ミリメートル程度垂下されたリブ片であって、施工完了時、オワン部分4aの下端とトラップ本体1の底面との間に、少なくとも下方流路確保用リブ5c分の幅の流路を確保する。
図22に示した、係止体としての捕集部材6は、排水中の塵芥を捕集する硬質樹脂からなる部材であって、側面方向には複数の縦リブを、底面には複数の小孔6bを設けることでオワン形状とした捕集部6aと、捕集部6aの上縁に沿って設けた鍔部6cとを備えてなる。また、鍔部6cの側面であって対称となる位置2箇所に突起部6dを備えてなるが、2つの突起部6dの先端は、突条部2dの内径より若干幅広に構成している。このため、樹脂弾性を利用して突起部6dを突条部2dの下方に押し込み、鍔部6cを突条部2dに載置することで、使用者が意図して捕集部材6を抜脱しない限り、排水口2aから捕集部材6が外れることの無い、捕集部材6が排水口2a近傍の突条部2dに係止した状態となる。また捕集部6aの下面の中央部分に、スペーサー7の上端の嵌合部4bと嵌合する被嵌合部6eを備えてなる。
また、捕集部材6には、上縁の内径側に収まるように構成した、回動式の取手6fを備えてなる。
尚、本実施例における捕集部材6の、鍔部6cの下面から捕集部6aの底面までの高さ方向の幅は約40ミリメートルに構成されている。
上記のように、封水部材本体4は嵌合部4bを、係止体である捕集部材6は被嵌合部6eを、それぞれ備えてなり、両者を嵌合させることで、封水部材本体4と捕集部材6は分離不可能となり、一体の部材として機能するように構成されている。封水部材本体4と捕集部材6は工場などで事前に嵌合されて一体の部材として構成された上で出荷され、施工の作業者や流し台Nの使用者は、封水部材本体4と捕集部材6が嵌合され一体の部材となった封水部材3として使用する。即ち、本実施例では、封水部材本体4と係止体である捕集部材6は一体として構成されている。
【0034】
トラップ本体1と継手部材は、第一実施例と同様の方法で流し台NのシンクSに施工される。
次に、トラップ本体1に対して、第二実施例の封水部材3は、封水部材本体4の開口を下方に向け、オワン部分4aの内部に立ち上げ筒1aが位置するようにして排水口2aからトラップ本体1内に挿入する。挿入の際、立ち上げ筒1aの上端が側方流路確保用凹部5dの下端に干渉しても、側方流路確保用凹部5dの下方に設けた円弧部8bによって立ち上げ筒1aがオワン部分4aの中央位置に位置するように案内されるため、そのまま封水部材3を降下させることができる。
更に、封水部材3を排水口2aから挿入し、封水部材3に備えた係止体としての捕集部材6の鍔部6cがフランジ部材2の突条部2dに載置されるまで押し込むことで、突条部2dに突起部6dが弾性嵌合される。これにより、排水口2aに係止体としての捕集部材6が係止され、排水トラップを含む、流し台への排水配管の施工が完了する。
【0035】
上記のように、オワン部分4aの内部に立ち上げ筒1aが配置され、且つフランジ部材2の突条部2d上に捕集部6aの鍔部6cが載置された状態であれば、支障なく排水トラップを使用することができる。
【0036】
また、上記した第二実施例の施工において、フランジ部材2の突条部2d上に捕集部材6の鍔部6cが載置されることなく、立ち上げ筒1aの上端に上方流路確保用リブ5aの下端が当接するか、又はトラップ本体1の底面に下方流路確保用リブ5cの下端が当接し、係止体としての捕集部材6を排水口2a近傍に設けた突条部2dに係止させることができない場合は、この封水部材3が取り付けようとしたトラップ本体1に対して流路を充分に確保することができない形状(寸法)であり、封水部材3を適宜な寸法のものに交換してトラップ本体1に施工する。
【0037】
また、封水部材本体4は、側方流路確保用凹部5dを備えたことで、オワン部分4aが立ち上げ筒1aに対して極端に偏心した状態、例えばオワン部分4aの内側面と立ち上げ筒1aの外側面が当接した状態となることを防ぎ、図23に示したようにオワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となるように誘導する。また、立ち上げ筒1aとトラップ本体1が同心円状に構成されているため、オワン部分4aと立ち上げ筒1aとが同心円に近い状態の配置となることで、オワン部分4aとトラップ本体1も同心円に近い状態の配置となるように誘導される。
このようにして、オワン部分4a内側面と立ち上げ筒1a外側面が当接して流路が失われること、及びオワン部分4a外側面とトラップ本体1内側面が当接して流路が失われることを防止する。
【0038】
流し台を使用し、シンク内に排水が生じると、排水は排水口2aから捕集部材6の捕集部6aを通過してトラップ本体1内に流入する。
トラップ本体1内に流入した排水は、トラップ本体1の内側面とオワン部分4aの外側面の間、オワン部分4aの下方、オワン部分4aの内側面と立ち上げ筒1aの外側面の間、を順に通過する。更に立ち上げ筒1aの上端から立ち上げ筒1a内、排出口1dの順に通過し、排出口1dに接続された接続管9から床下配管を介し、下水側に排出される。
【0039】
この排水の処理の際に、トラップ本体1の内側面と立ち上げ筒1aの外側面の間であって、立ち上げ筒1aの上端の高さまで排水が溜まって封水を形成する。この封水によって、トラップ本体1の内部に形成された排水の流路の一部である、トラップ本体1の内側面とオワン部分4aの外側面の間から立ち上げ筒1aの上端に至る流路上は常に満水状態となるため、下水側からの臭気を含んだ空気や害虫類が屋内側に侵入することを防止するトラップ機能を生じる。
封水部材本体4がトラップ機能を生じるためには、上記のように封水部材本体4のオワン部分4a内に立ち上げ管が配置され、立ち上げ筒1aの上端よりオワン部分4aの下端が下方に位置する必要があり、この「封水部材本体4がトラップ本体1内であって、封水部材本体4のオワン部分4a内に立ち上げ管が配置され、立ち上げ筒1aの上端よりオワン部分4aの下端が下方となる位置」が本実施例における封水部材本体4の封水形成位置である。
本実施例においては、封水部材本体4のオワン部分4aの内部に立ち上げ管が配置された上で、更にトラップ本体1の排水口2a近傍に設けられた突条部2dに捕集部材6が係止しているため、シンクからの排水の際に、排水が大量に発生しても、スペーサー7を介して係止体である捕集部材6と連結している封水部材本体4が上昇等をしてトラップ機能が失われることは無い。
このように、本実施例では、捕集部材6が排水口2a近傍に設けられた突条部2dに係止されることで、封水部材本体4がトラップ本体1内の封水形成位置に位置決めされて配置され、捕集部材6が突条部2dに係止されている限り、封水部材本体4がトラップ本体1内の封水形成位置から外れることは無い。即ち、本実施例では、封水を形成する封水部材本体4と、係止体として封水部材本体4を封水形成位置に配置する機能を備えた捕集部材6とを組み合わせることで封水部材3を構成している。
【0040】
また、本実施例の排水トラップにおいて、捕集部材6の捕集部6aに捕集された塵芥を処理する場合や、封水部材3を清掃やメンテナンスなどで取り出す場合には、図17のように、捕集部材6に備えた取手6fを立ち上げて引き上げ、捕集部材6と突条部2dの係止状態を解除することで、容易に排水口2aから取り出すことができる。
排水口2aから封水部材3を取り出すことで、容易に捕集部6aに捕集された塵芥を処理することができる。更に、捕集部6aの深さは45ミリメートル程度であるため、捕集部6a内の清掃も、捕集部6a内の底面に指先が容易に届き、捕集部6a内を容易に清掃することができる。また、オワン部分4aも排水口2aから取り出した状態であれば、容易に清掃することができる。封水部材3の全高はトラップ本体1に合致したものとする必要があるが、本実施例では、オワン部分4aと捕集部材6の間にスペーサー7を配置したことで、オワン部分4aと捕集部材6の形状(高さ方向の幅)を清掃などに好適なように調整しつつ、封水部材3の全高はトラップ本体1に合致したものとすることができる。
清掃後は、施工手順と同様の手順で封水部材3をトラップ本体1に施工することができる。
【0041】
本発明の実施例は以上であるが、本発明の封水部材3、及び封水部材3を採用した排水トラップは発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。
例えば上記第二実施例では、封水部材本体4と捕集部材6とを別々の部材として成型し、両者を嵌合接続することで一体の部材として構成しているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、図24乃至図26に示した第三実施例の排水トラップと封水部材3のように、封水部材本体4と係止部としての捕集部材6とを樹脂成型等により当初から一体の部材として構成しても構わない。
【0042】
また、上記第一実施例では、図4及び図5より明らかなように、封水部材本体4と係止体としての捕集部材6を別体の部材として構成し、封水部材本体4の上方に配置したスペーサー7を上端が略水平形状の板状に構成し、これに当接する捕集部材6の底面もほぼ平坦としている。
これに対して、図27乃至図29に示した第四実施例の排水トラップと封水部材3のように、封水部材本体4の上方に配置した、封水部材本体4の取手と兼用したスペーサー7を棒状としても良い。
この場合、スペーサー7を封水部材本体4の取手としても使用することから、できる限り長くし、排水口2aに近い位置まで延出すると使い易さが向上する。しかし、スペーサー7の上端の位置を高くした分、干渉しないように係止体である捕集部材6の捕集部6aの底面全体を高くすると、捕集部6aが浅くなりすぎて不具合となる場合がある。このような場合、捕集部材6の捕集部6aの底面にスペーサー7の先端を収める窪み部分を設けることで、施工完了時、スペーサー7の上端が捕集部材6の下端より高い位置となるように構成しても良い。また、この場合、図28及び図29に示した封水部材3のように、窪み部分を円錐形状のガイド構造とし、封水部材本体4の取手と兼用したスペーサー7の先端がこのガイド構造によって適正位置に案内される構造とすれば好適である。尚、図28及び図29に示した封水部材3においては、ガイド構造の頂点部分に通気用の開口を設け、円錐部分内に空気溜まりが生じないように構成している。
【0043】
また、上記各実施例では、係止体を捕集部6を備えた捕集部材6によって構成しているが、本発明の係止体は上記実施例の構成に限定されるものではなく、捕集部材6の鍔部6cを突状部2d上に載置するようにし、捕集部材6の上方に回転ロックにて係止されて排水口2aを覆い隠す目隠しプレート11を用意すると共に、この目隠しプレート11を係止体として排水口2aに係止するように構成することで、捕集部材6を介して目隠しプレート11が封水部材本体4を封水形成位置に位置決めし配置する構成としても良い。
【0044】
また、上記各実施例では、排水口2aを備えた排水機器を、流し台Nとしているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、排水機器を浴室や洗面台としても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 トラップ本体 1a 立ち上げ筒
1b 突縁部 1c 雌ネジ部
1d 排出口 2 フランジ部材
2a 排水口 2b フランジ部
2c 雄ネジ部 2d 突条部
3 封水部材 4 封水部材本体
4a オワン部分 4b 嵌合部
5a 上方流路確保用リブ 5b 側方流路確保用リブ
5c 下方流路確保用リブ 5d 側方流路確保用凹部
6 捕集部材 6a 捕集部
6b 小孔 6c 鍔部
6d 突起部 6e 被篏合部
6f 取手 7 スペーサー
8a 傾斜部 8b 円弧部
9 接続管 10 ガイド構造
11 目隠しプレート C キャビネット部
K カウンター部 N 流し台
S シンク S1 取付穴
W ワークトップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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