(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184262
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】仕上構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/22 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
E04B9/22 Z
E04B9/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098315
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭章
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拡
(72)【発明者】
【氏名】窪田 龍二
(72)【発明者】
【氏名】堀江 渉
(72)【発明者】
【氏名】北浦 保
(72)【発明者】
【氏名】勝部 貴大
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
(57)【要約】
【課題】開口部に設備機器や構造部材が通された面材の割れを抑制する。
【解決手段】仕上構造は、躯体に固定された支持部材に固定された面材26と、面材26に形成され、構造部材又は設備機器を取囲む開口部20Aと、面材26を、開口部20Aを挟んで2つの部分に分割するスリットVAと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に固定された支持部材に固定された面材と、
前記面材に形成され、構造部材又は設備機器を取囲む開口部と、
前記開口部と連通し、前記面材を、前記開口部を挟む2つの部分に分割するスリットと、
を備えた仕上構造。
【請求項2】
前記スリットと連通された2箇所の前記開口部に挟まれた位置に、前記スリットと連通されていない開口部が形成されている、請求項1に記載の仕上構造。
【請求項3】
前記スリットを被覆する被覆部材を備えた、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記支持部材に固定された状態で弾性変形し、前記スリットに沿って前記面材を押圧している、請求項3に記載の仕上構造。
【請求項5】
前記支持部材は野縁であり、
前記スリットは前記野縁に沿って設けられている、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項6】
前記面材は天井面を形成する、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仕上構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、天井面材を貫通して配置されたチャンバの先端に吹出しグリルを設けた空調設備が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、空調設備等の設備機器や柱等の構造部材は、天井面材を貫通して配置される場合がある。このような場合、天井面材には、設備機器や構造部材が貫通する開口部が形成されている。
【0005】
ここで、建材として用いられるボード類のなかには、湿度変化によって伸縮するものがある。天井面材が伸縮すると、天井面材と共に、設備機器や構造部材を取り囲む開口部も変位する。そして、天井面材が変位する方向において、開口部の後方側にある開口端の面材が設備機器や構造部材に当り、開口端の面材が割れる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、開口部に設備機器や構造部材が通された面材の割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の仕上構造は、躯体に固定された支持部材に固定された面材と、前記面材に形成され、構造部材又は設備機器を取囲む開口部と、前記開口部と連通し、前記面材を、前記開口部を挟んで2つの部分に分割するスリットと、を備える。
【0008】
請求項1の仕上構造においては、面材に構造部材又は設備機器を取囲む開口部が形成されている。
【0009】
ここで、例えば湿度変化等で面材が収縮すると、面材と共に、構造部材又は設備機器を取り囲む開口部も変位する。そして、面材が変位する方向において、開口部の後方側にある開口端の面材が構造部材又は設備機器に当ると、開口端の面材が割れる可能性がある。
【0010】
そこで、請求項1の仕上構造では、面材にスリットを形成して、面材を、開口部を挟む2つの部分に分割している。このため、湿度変化で面材が伸縮したとき、開口部を挟んだ両側の部分で面材同士が引張り合うことが抑制される。これにより、面材及び開口部が変位しても、開口部に対して変位方向後方側の面材が、変位方向前方側の面材から引っ張られることが抑制される。これにより、開口端の面材が割れることが抑制される。
【0011】
請求項2の仕上構造は、請求項1に記載の仕上構造において、前記スリットと連通された2箇所の前記開口部に挟まれた位置に、前記スリットと連通されていない開口部が形成されている。
【0012】
請求項2の仕上構造は、スリットと連通された2箇所の開口部に挟まれた位置に、スリットと連通されていない開口部が形成されている。すなわち、複数配置された構造部材又は設備機器の2スパン毎にスリットが設けられている。
【0013】
このため、例えば湿度変化で面材が縮んだ場合、面材は、スリットと連通されていない開口部の方向へ縮むが、両側のスリットが拡がる。このため、2つのスリットの外側の面材が、2つのスリットの内側の面材から引っ張られることが抑制される。
【0014】
これにより、面材における応力発生が抑制され、スリットと連通された2箇所の開口部に加え、スリットと連通されていない開口部における開口端の面材が割れることも抑制できる。すなわち全ての開口部にスリットを形成しなくても面材の割れを抑制できる。このため、全ての開口部にスリットを形成する場合と比較して、面材の加工が容易である。
【0015】
請求項3の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記スリットを被覆する被覆部材を備える。
【0016】
請求項3の仕上構造は、スリットを被覆する被覆部材を備えている。このため、スリットを介して、躯体側と躯体の外側との間で埃や虫等が移動することを抑制できる。
【0017】
請求項4の仕上構造は、請求項3に記載の仕上構造において、前記被覆部材は、前記支持部材に固定された状態で弾性変形し、前記スリットに沿って前記面材を押圧している。
【0018】
請求項4の仕上構造では、被覆部材が、弾性変形した状態でスリットに沿って面材を押圧している。このため、躯体側と躯体の外側との間で埃や虫等が移動することを抑制できる効果が高い。
【0019】
請求項5の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記支持部材は野縁であり、前記スリットは前記野縁に沿って設けられている。
【0020】
請求項5の仕上構造では、面材が、野縁に固定されている。このため、面材は、野縁の延設方向に対しては相対的に伸縮し難く、野縁の延設方向と直交する方向に対しては相対的に伸縮し易い。そして、スリットが、面材が固定された野縁に沿って設けられていることにより、面材26が大きく伸縮しやすい方向に沿って、面材が分割される。これにより、効率よく面材の割れを抑制できる。
【0021】
請求項6の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記面材は天井面を形成する。
【0022】
請求項6の仕上構造では、面材が天井面を形成している。天井面は壁面と比較して、大面積となりやすい。このため、面材1枚当たりの面積が大きくなり易く、吸水や乾燥による伸縮量が大きくなり易い。この面部材では、このように伸縮量が大きい場合でも、効果的に面材が割れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、開口部に設備機器や構造部材が通された面材の割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造を示す斜視図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る仕上構造の湿度による変形前の状態を示す見上げ図であり、(B)は変形後の状態を示す見上げ図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る仕上構造における被覆部材を示す断面図である。
【
図4】比較例に係る仕上構造の湿度による変形後の状態を示す見上げ図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る仕上構造におけるスリット位置の変形例を示す見上げ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る仕上構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0026】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0028】
<仕上構造>
図1には、本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造が示されている。この天井構造は、支持部材10及び面部材20を備える。
【0029】
(支持部材)
支持部材10は、躯体としてのスラブ(不図示)に固定された吊下げ部材であり、吊りボルト12、ハンガー14、野縁受け16及び野縁18を含んで構成されている。
【0030】
吊りボルト12は、一例として、上端部がスラブの下面に埋設されたアンカーナットなどに捩じ込まれた全ねじボルトであり、上下方向に沿って配置されている。また、吊りボルト12は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)のそれぞれにおいて、所定の間隔で配置されている。
【0031】
ハンガー14は、吊りボルトの下端部にナットを用いて固定された部材である。Y方向に沿って配置された複数のハンガー14には、野縁受け16が架け渡されて固定されている。
【0032】
野縁受け16は、Y方向に沿って配置された長尺部材である。また、野縁受け16は、X方向に所定の間隔(吊りボルト12の間隔と等しい間隔)で配置されている。
【0033】
野縁18は、X方向に沿って配置された長尺部材であり、野縁受け16にクリップ(不図示)を用いて固定されている。また、野縁18は、Y方向に所定の間隔(野縁受け16のX方向における間隔より狭い間隔)で配置されている。
【0034】
(面部材)
面部材20は、下地材22及び仕上材24を含んで構成され、建物の天井面を形成している。下地材22及び仕上材24は、本発明における面材の一例である。本明細書においては、下地材22及び仕上材24をまとめて面材26と称す場合がある。なお、
図1は、支持部材10に対する面部材20の固定構造を示す図であり、後述する開口部20A、20B及び20Cや柱30A、30B及び30C(何れも
図2参照)の図示は省略されている。また、「面部材20」は、下地材22及び仕上材24のほか、後述する開口部20A、20B及び20CやスリットVA及びVCを含む構成であり、「面材26」は下地材22及び仕上材24のみが含まれる構成である。
【0035】
下地材22は、野縁18の下方に配置され、野縁18に固定された板材である。下地材22は、長手方向が、野縁18の延設方向と直交して配置されている。すなわち、下地材22の長手方向はY方向に沿っている。下地材22は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数枚並べて配置されている。
【0036】
また、下地材22は、石膏ボードを用いて形成され、湿度変化によって伸縮する。例えば環境湿度が上昇して含水率が高くなると、下地材22は面内方向に伸びる。一方、環境湿度が低下して含水率が低くなると、下地材22は面内方向に縮む。
【0037】
仕上材24は、下地材22の下方に配置され、接着剤又はタッカーによって下地材22に固定された板材である。仕上材24は、長手方向が、下地材22の長手方向と直交して配置されている。すなわち、仕上材24の長手方向はX方向に沿っている。仕上材24は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数枚並べて配置されている。
【0038】
なお、下地材22の長手方向をX方向に沿う方向としてもよいし、仕上材24の長手方向をY方向に沿う方向としてもよい。さらに、本例では下地材22の長手方向と仕上材24の長手方向とを異なる方向としているが、これらの方向を、X方向又はY方向の何れかに揃えてもよい。
【0039】
仕上材24は、ケイ酸カルシウム板を用いて形成され、湿度変化によって伸縮する。例えば環境湿度が上昇して含水率が高くなると、下地材22は面内方向に伸びる。一方、環境湿度が低下して含水率が低くなると、下地材22は面内方向に縮む。
【0040】
下地材22及び仕上材24の湿度変化よる伸縮率(環境湿度が1%変化した際の伸縮率)は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、仕上材24のほうが、下地材22より伸縮率が大きい。
【0041】
仕上材24の1枚あたりの大きさは、下地材22の1枚あたりの大きさと等しい。但し、例えば天井の端部などにおいては、下地材22及び仕上材24は、天井下空間の面積や形状に合わせて適宜切断して用いられるため、大きさは一定ではない。
【0042】
なお、仕上材24を目視した際の意匠性を考慮して、仕上材24の1枚あたりの大きさや形状は、下地材22の大きさや形状と無関係に決定してもよい。一例として、仕上材24は、所望の大きさで正方形状に形成し、格子状に配置することもできる。また、別の一例として仕上材24は、長方形状に形成し、目地が馬目地状となるように配置することもできる。さらに、仕上材24は、三角形状や六角形状などとしてもよい。
【0043】
(開口部、スリット)
図2(A)には、面部材20によって形成された天井面の見上げ図が示されている。この図に示されるように、面部材20には、開口部20A、20B及び20Cが形成されている。開口部20A、20B及び20Cは、面材26に形成された貫通孔、すなわち、
図1に示した下地材22及び仕上材24に亘って形成された貫通孔である。
【0044】
これらの開口部20A、20B及び20Cは、それぞれ、建物の構造部材としての柱30A、30B及び30Cを取り囲んで形成されている。つまり、面材26において柱30A、30B及び30Cと干渉する部分が切り欠かれて開口部20A、20B及び20Cが形成されている。換言すると、面材26に形成された貫通孔としての開口部20A、20B及び20Cを貫通して、柱30A、30B及び30Cが配置されている。
【0045】
開口部20Aの内縁と柱30Aとの間には、隙間V1が形成されている。開口部20Bの内縁と柱30Bとの間には、隙間V3が形成されている。開口部20Cの内縁と柱30Cとの間には、隙間V2が形成されている。
【0046】
柱30A、30B及び30CはY方向に連続して配置された柱である。建物には、柱30A、30B及び30CのX方向外側や、Y方向外側にもさらに柱が設けられている。面部材20には、これらの柱を取り囲む開口部も形成されている。
【0047】
また、面部材20には、スリットVA、VCが形成されている。このうち、スリットVAは、開口部20Aと連通したスリットであり、かつ、面材26を、開口部20Aを挟む2つの部分(面材26A及び26B)に分割するスリットである。スリットVAは、開口部20Aの内縁と柱30Aとの間の隙間V1において、X方向に沿う部分の延長線上に形成されている。スリットVAは、
図3に示す野縁18に沿って(X方向に沿って)設けられている。
【0048】
一方、スリットVCは、
図2に示すように、開口部20Cと連通したスリットであり、かつ、面材26を、開口部20Cを挟む2つの部分(面材26B及び26C)に分割するスリットである。スリットVCは、開口部20Cの内縁と柱30Cとの間の隙間V2において、X方向に沿う部分の延長線上に形成されている。スリットVCは、野縁18に沿って設けられている。
【0049】
開口部20Bは、スリットVA及びVBと連通された2箇所の開口部20A及び20Cに挟まれた位置に形成された、スリットと連通されていない開口部である。すなわち、複数配置された構造部材としての柱30A、30B、30C・・・の2スパン毎にスリットが設けられている。
【0050】
(被覆部材)
図3に示すように、面部材20は、スリットVAを被覆する被覆部材40を備えている。被覆部材40は、スリットVCにも同様に設けられている。被覆部材40は、本体部材42と、弾性部材48と、を備えて形成されている。なお、
図2においては被覆部材40の図示を省略している。
【0051】
本体部材42は、板状の鋼板を折り曲げて成形されたハット型の長尺部材であり、固定部44及び押圧部46を備えている。このうち、固定部44は、角材16Aにビス等で固定される部分である。角材16Aは、野縁18と平行に配置され、野縁受け16に固定された鋼材である。
【0052】
固定部44は、角材16Aに固定された水平部44Aと、水平部44Aの両端(Y方向の両端)のそれぞれから下方へ延出された延出部44Bと、を備えている。固定部44は、角材16Aに固定された状態で、スリットVAに配置されている。
【0053】
押圧部46は、延出部44Bの下端から水平方向外側に延出された水平部46Aと、水平部46Aの外側端部から斜め上方に向かって延出されて面材26を押圧する押圧部46Bと、を備えている。「外側」とは、スリットVAから見て面材26側のことである。
【0054】
水平部46Aは、スリットVAから面材26に亘って配置されている。水平部46Aにおける面材26を覆う部分と、面材26との間には、弾性部材48が配置されている。弾性部材48は例えばスポンジやゴムなどの弾性材料などを用いて形成され、圧縮された状態で保持されている。
【0055】
押圧部46Bは、面材26に押し付けられることにより、
図3に破線で示した状態から、実線で示した状態に弾性変形して保持されている。これにより、押圧部46Bは、スリットVAに沿って、面材26を押圧している。
【0056】
なお、面材26と被覆部材40とは互いに非固定である。つまり、野縁受け16に固定された被覆部材40に対して、面材26は、乾燥収縮などにより、水平方向へ変位することができる。
【0057】
<作用及び効果>
ここで、本発明の仕上構造の作用及び効果の説明に先立って、比較例について説明する。
【0058】
図4に示すように、比較例に係る面部材200は、湿度変化によって伸縮する面材260を備えている。面材260には、構造部材としての柱30A、30B及び30Cを取囲む開口部200A、200B及び200Cが形成されている。
【0059】
湿度変化で面材260が収縮すると、面材260と共に、柱30A、30B及び30Cを取り囲む開口部200A、200B及び200Cも変位する。そして、
図4に矢印で示すように、面材260が変位する方向において、開口部200Aの後方側にある開口端の部分260Eが柱30A及び30Cに当り、面材260が欠損する可能性がある。
【0060】
これに対して、本発明の実施形態に係る仕上構造は、
図1に示すように、湿度変化によって伸縮する面材26(下地材22及び仕上材24)を備えている。
図2(A)に示すように、面材26には、構造部材としての柱30A、30B及び30Cを取囲む開口部20A、20B及び20Cが形成されている。
【0061】
そして、面部材20では、面材26にスリットVAを形成して、面材26を、開口部20Aを挟む2つの部分(面材26A及び26B)に分割している。同様に、面材26にスリットVCを形成して、面材26を、開口部20Cを挟む2つの部分(面材26B及び26C)に分割している。
【0062】
このため、湿度変化で面材が伸縮したとき、開口部を挟んだ両側の部分で面材26同士が引張合うことが抑制される。
【0063】
すなわち、
図2(B)に矢印で示すように、面材26及び開口部20Aが変位しても、開口部20Aに対して変位方向後方側の面材26Aが、変位方向前方側の面材26Bから引っ張られることが抑制される。これにより、面材26Aにおいて、開口部20Aの開口端の部分が割れることが抑制される。
【0064】
同様に、開口部20Cに対して変位方向後方側の面材26Cが、変位方向前方側の面材26Bから引っ張られることが抑制される。これにより、面材26Cにおいて、開口部20Cの開口端の部分が割れることが抑制される。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造では、スリットVA及びVBと連通された2箇所の開口部20A及び20Cに挟まれた位置に、スリットと連通されていない開口部20Bが形成されている。すなわち、複数配置された構造部材としての柱30A、30B、30C・・・の2スパン毎にスリットが設けられている。
【0066】
このため、例えば湿度変化で面材26が縮んだ場合、面材26Bは、スリットと連通されていない開口部20Bの方向へ縮むが、両側のスリットVA、VCが拡がる。このため、2つのスリットVA、VCの外側の面材26A、26Cが、2つのスリットVA、VCの内側の面材26Bから引っ張られることが抑制される。
【0067】
これにより、面材26における応力発生が抑制され、スリットVA、VCと連通された2箇所の開口部20A、20Cに加え、スリットと連通されていない開口部20Bにおける開口端の面材が割れることも抑制できる。すなわち全ての開口部20A、20B、20Cにスリットを形成しなくても、面材26の割れを抑制できる。このため、全ての開口部20A、20B、20Cにスリットを形成する場合と比較して、面材26の加工が容易である。
【0068】
また、面材26は、野縁18に固定されている。このため、面材26は、野縁18の延設方向に対しては相対的に伸縮し難く、野縁18の延設方向と直交する方向に対しては相対的に伸縮し易い。
図3に示すように、スリットVA及びVBが、野縁18に沿って設けられていることにより、面材26が大きく伸縮しやすい方向に沿って、面材26が分割される。これにより、効率よく面材26の割れを抑制できる。
【0069】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造は、
図3に示すように、スリットVA及びVCを被覆する被覆部材40を備えている。また、被覆部材40の押圧部46Bが、弾性変形した状態でスリットVA及びVBに沿って面材26を押圧している。さらに、被覆部材40と面材26との間には、弾性部材48が圧縮された状態で配置されている。
【0070】
このため、スリットVA及びVCを介して、躯体側(
図1において、面部材20に対して支持部材10側)と躯体の外側(
図1において、面部材20の下方)との間で埃や虫等が移動することを抑制できる。
【0071】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造では、面材26(下地材22及び仕上材24)が天井面を形成している。天井面は壁面と比較して、大面積となりやすい。このため、下地材22及び仕上材24それぞれの1枚当たりの面積が大きくなり易く、吸水や乾燥による伸縮量が大きくなり易い。この仕上構造では、このように伸縮量が大きい場合でも、効果的に面材26が割れることを抑制できる。
【0072】
<その他の実施形態>
本実施形態においては、面材26を下地材22及び仕上材24の2層で形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。面材26は1層でもよく、3層以上で形成してもよい。湿度変化によって伸縮する面材を用いる場合は、面材の層数に関わらず、柱30A等と面材との衝突に起因して面材が割れる可能性がある。しかしながら、スリットVA等を形成することにより、面材の割れを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態においては、
図2に示すように、スリットVAは、開口部20Aの内縁と柱30Aとの間の隙間V1において、X方向に沿う部分の延長線上に形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0074】
例えばスリットVAは、
図5に示すように、開口部20Aの内縁と柱30Aとの間の隙間V1に連通するものであればよく、隙間V1において、X方向に沿う部分の延長線上「以外」の場所に形成してもよい。スリットVCについても同様である。
【0075】
また、本実施形態においては、開口部20Bの内縁と柱30Bとの間の隙間V3に連通するスリットは設けられていないが、この隙間V3に連通するスリットを設けてもよい。また、隙間V3に連通するスリットを設けた場合、隙間V1及びV2に連通するスリットは設けなくてもよい。
【0076】
天井を構成する面部材20において、スリットの本数及び間隔は、柱の本数や位置、柱と開口部の内縁との隙間の幅などに応じて、適宜設定することができる。
【0077】
また、本実施形態における開口部20A及び20Cは、それぞれ構造部材としての柱30A及び30Cを取り囲むものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば面材26に形成される開口部としては、壁などを含むその他の構造部材を取り囲む開口部、天井カセットエアコンやダクトに接続された換気口などの設備機器を取り囲む開口部、など、様々な態様とすることができる。
【0078】
また、本実施形態においては、
図3に示すように、スリットVA及びVBが野縁18に沿って設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。スリットVA及びVBは、野縁18と直交する方向に設けてもよい。この場合、面材26が野縁18に沿う方向に伸縮した場合の割れ抑制に効果的である。また、野縁18に沿うスリットと、野縁18と直交する方向に沿うスリットとは、併用することもできる。
【0079】
また、本実施形態においては、面部材20が天井面を形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばこの面部材20用いて壁面を形成してもよい。この際、面部材20が固定される支持部材は、一例として、躯体である壁体に固定された角型のスタッド材などである。
【符号の説明】
【0080】
10 支持部材
16 野縁受け(支持部材)
18 野縁(支持部材)
20 面部材
20A 開口部
20B 開口部
20C 開口部
22 下地材
24 仕上材
26 面材
40 被覆部材
VA スリット
VC スリット